[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る車両用電源制御システムが適用される車両の電源供給回路の概略構成を示す回路図である。
図1に示す本実施の形態の車両用電源制御システムS1(請求項中の電源制御システムに相当)は、不図示の車両に搭載して用いられるもので、負荷3に対する電源VBからの電力供給を制御するシステムである。負荷3は、図1では省略して1つのみ示しているが、実際には複数存在している。
そして、車両用電源制御システムS1は、ECU5a〜5e、電力供給路7、個別供給路9a〜9d、スイッチ11、バイパススイッチ13、電流センサ15、電流供給路17a〜17d、電流供給スイッチ19a〜19d、及び、監視用コントローラ21(請求項中の異常判定部に相当)を有している。
本実施の形態の車両用電源制御システムS1において、各負荷3に対する電力供給は、対応するECU5a〜5e(請求項中のコントローラに相当)によって制御される。
電源VBは、不図示の車両に搭載されたバッテリであり、電源VBに接続された電力供給路7とその下流側の個別供給路9a〜9dとを介して、各ECU5a〜5eに電源VBからの電力が供給される。負荷3には、各ECU5a〜5eとは別の経路で電源VBからの電力が供給される。
負荷3に対する電源VBからの電力供給経路には、負荷3に対応するECU5a〜5eの制御によってオンオフされる電力供給制御用のスイッチ11が設けられている。
各ECU5a〜5eには、不図示のセンサやスイッチ類が接続されており、それらの状態に応じて各ECU5a〜5eは、対応する負荷3の電力供給経路のスイッチ11をオンオフさせる。不図示のスイッチ類には、車両のイグニッションスイッチも含まれている。
なお、センサやスイッチ類に対応する負荷3に対する電力供給を制御するのが他のECU5a〜5eである場合は、センサやスイッチ類の状態を示すデータが、車内に構築された例えばCAN(Control Area Network)等の車内LANを介して各ECU5a〜5e間で転送される。
電力供給路7には、個別供給路9a〜9dを経由した各ECU5a〜5eに対する電源VBからの電力供給を停止するためのバイパススイッチ13が設けられている。また、電力供給路7のバイパススイッチ13と個別供給路9a〜9dの分岐箇所との間の箇所には、シャント抵抗Rsensが設けられている。バイパススイッチ13を挟んだシャント抵抗Rsensの両端には電流センサ15(請求項中の電流測定部に相当)が接続されている。電流センサ15は、シャント抵抗Rsensにおける電圧降下から電力供給路7を流れる電流を測定する。
電力供給路7の電源VBとバイパススイッチ13との間の箇所には、電流供給路17a〜17dが分岐接続されている。この電流供給路17a〜17dは、各ECU5b〜5eにそれぞれ個別に接続されている。つまり、電流供給路17a〜17dは、電力供給路7、バイパススイッチ13、シャント抵抗Rsens、及び、個別供給路9a〜9dの直列回路と並列に接続されている。
なお、ECU5bに接続された電流供給路17aには、起動状態やスリープ状態に移行する条件がECU5bと同じECU5aが分岐接続されている。各電流供給路17a〜17dには、電流供給スイッチ19a〜19dが設けられている。
電力供給路7のバイパススイッチ13は、通常はオン状態とされている。したがって、電源VBの電力は、電力供給路7や個別供給路9a〜9dを介して各ECU5a〜5eに供給される。電源VBの電力が供給されるECU5a〜5eは、起動状態において、不図示のセンサやスイッチ類の状態に応じて負荷3に対する電力の供給を制御する。また、ECU5a〜5eは、対応する負荷3に対する電力の供給を全て停止しているときに、スリープ状態に移行する。スリープ状態に移行したECU5a〜5eは、不図示のセンサやスイッチ類の状態が変化すると起動状態に復帰する。
バイパススイッチ13は、ECU5a〜5eがウエイク状態であるときには、監視用コントローラ21の制御によりオン状態とされ、ECU5a〜5eが全てスリープ状態となるシステムオフモードになると、監視用コントローラ21の制御によりオフ状態に切り替えられる。これにより、電力供給路7及び個別供給路9a〜9dを経由した各ECU5a〜5eに対する電力供給が強制停止される。
監視用コントローラ21は、例えば、A/D変換器を内蔵したポートを有するマイクロコンピュータによって構成され、予め定められたプログラムにしたがって、各種の処理を実行する。
例えば、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13がオン状態であり、かつ、各ECU5a〜5eが全てスリープ状態となったシステムオフモードであるときに、電流センサ15が測定する電力供給路7の電流が暗電流の異常状態判定用のしきい値を超えたか否かによって、暗電流の異常状態の発生を判定する。
システムオフモードであるか否かは、例えば、不図示のイグニッションスイッチのポジション(LOCK、OFF、ACC、ON、START)から、監視用コントローラ21が判断することができる。
そして、暗電流の異常状態発生と判定した場合に監視用コントローラ21は、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常の検出処理を行う。
スリープ状態への移行異常の検出処理では、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13をオン状態としたまま、電流供給スイッチ19a〜19dを1つずつ順にオフ状態からオン状態に切り替える。
電流供給スイッチ19a〜19dが全てオフ状態のときには、各ECU5a〜5eに対する電源VBの電力の供給経路は、図2の回路図の太線で示すように、全て、電力供給路7及び個別供給路9a〜9dとなる。ここで、例えば、電流供給スイッチ19aをオン状態に切り替えると、図3の回路図の太線で示すように、ECU5a,5bに対する電源VBの電力の供給経路が、電力供給路7及び個別供給路9aから電流供給路17aに切り替わる。なお、図2及び図3の回路図では、負荷3やスイッチ11等の図示を書略している。
ECU5a,5bに対する電源VBの電力の供給経路が切り替わると、電力供給路7を流れる電流が、ECU5a,5bに供給される電力の電流分だけ減少する。このため、電流センサ15が測定する電力供給路7の電流の大きさからその減少分を検出することで、監視用コントローラ21は、ECU5a,5bに流れる電流を認識することができる。そして、その電流が、スリープ状態のECU5a,5bを流れる暗電流に見合った大きさであるか否かによって、監視用コントローラ21は、ECU5a,5bにスリープ状態への移行異常が発生しているか否かを判定することができる。
なお、その後、監視用コントローラ21は、電流供給スイッチ19b〜19dを順次オン状態に切り替えながら、その都度、電力供給路7を流れる電流の減少分を検出する。そして、検出した電流の減少分が、対応するECU5c〜5eを流れる暗電流に見合った大きさであるか否かを確認する。これにより、監視用コントローラ21は、ECU5c〜5eにスリープ状態への移行異常が発生しているか否かをそれぞれ判定することができる。
次に、監視用コントローラ21が行うECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常の検出処理について説明する。
まず、監視用コントローラ21は、図4のフローチャートに示すように、不図示のイグニッションスイッチのLOCKからOFFへのポジション移行等に伴い、初期設定として、バイパススイッチ13(B_SW)及び各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をシステムオフモードのスイッチパターンとする(ステップS1)。システムオフモードのスイッチパターンでは、バイパススイッチ13(B_SW)はオン状態となり、各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])はオフ状態となる。
次に、監視用コントローラ21は、不図示のセンサやスイッチ類の状態等から、ECU5a〜5eの少なくとも1つにスリープ状態(SLEEP)から起動状態(WAKE)への移行条件が成立したか否かを確認する(ステップS3)。
条件が成立していない場合は(ステップS3でNO)、後述するステップS11に移行し、条件が成立した場合は(ステップS3でYES)、バイパススイッチ13(B_SW)及び各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])を起動状態(WAKE)のスイッチパターンとする(ステップS5)。起動状態(WAKE)のスイッチパターンでは、バイパススイッチ13(B_SW)はオフ状態となり、各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])はオン状態となる。
続いて、監視用コントローラ21は、「WAKE中回路地絡判定」処理を行う(ステップS7)。この「WAKE中回路地絡判定」処理とは、負荷3やECU5a〜5eにおける過電流状態の発生監視を行う処理のことである。この処理は、車両用電源制御システムS1とは別に設けられた、例えば、電力供給路7や個別供給路9a〜9dの地絡を判定する不図示の地絡判定回路等によって行われる。したがって、ステップS7の「WAKE中回路地絡判定」処理において、監視用コントローラ21は、例えば、不図示の地絡判定回路等からの過電流状態の発生通知を受け取った場合にそれに対応した必要な処理等を行う。
その後、監視用コントローラ21は、不図示のセンサやスイッチ類の状態等から、全てのECU5a〜5eのスリープ状態となるシステムオフモードへの移行条件が成立したか否かを確認する(ステップS9)。成立していない場合は(ステップS9でNO)、条件が成立するまでステップS9をリピートし、成立した場合は(ステップS9でYES)、ステップS1にリターンする。
また、ステップS3において、ECU5a〜5eの少なくとも1つにスリープ状態(SLEEP)から起動状態(WAKE)への移行条件が成立していない場合(NO)に進むステップS11では、監視用コントローラ21は、「暗電流正常判定」処理を行う。
この「暗電流正常判定」処理とは、ECU5a〜5eにおける暗電流の異常状態の発生監視を行う処理のことである。したがって、監視用コントローラ21は、電流センサ15が測定する電力供給路7の電流の大きさと暗電流の異常状態判定用のしきい値との比較による暗電流の異常状態の判定を行う。
そして、暗電流の状態が正常である場合は(ステップS11でYES)、ステップS3にリターンし、正常でない場合は(ステップS11でNO)、「チャンネル(Ch)チェック」処理を行う(ステップS13)。
この「チャンネル(Ch)チェック」処理とは、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を検出する処理のことである。したがって、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13をオン状態としたまま、電流供給スイッチ19a〜19dを1つずつ順にオフ状態からオン状態に切り替える。
そして、監視用コントローラ21は、切り替えのときに電流センサ15が測定する電力供給路7の電流の減少分から、切り替えた電流供給スイッチ19a〜19dに対応するECU5a〜5eに流れる電流を認識する。さらに、監視用コントローラ21は、認識した電流が対応するECU5c〜5eを流れる暗電流に見合った大きさであるか否かによって、ECU5a〜5eにスリープ状態への移行異常が発生しているか否かを判定する。
次に、ステップS13の「チャンネル(Ch)チェック」処理の具体的な手順の概略を、図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、監視用コントローラ21は、図5に示すように、全体初期化処理を行う(ステップS21)。全体初期化処理では、監視用コントローラ21は、システムオフモードへの移行を実行した回数を示すカウンタのカウント値Retryを、「0」に設定する。
次に、監視用コントローラ21は、初期化処理を行う(ステップS23)。初期化処理では、オフ状態からオン状態に切り替える電流供給スイッチ19a〜19dを特定するために設けた内部メモリ(例えばRAM)のカウンタのカウント値iを、電流供給スイッチ19aに対応する「1」に設定し、バイパススイッチ13(B_SW)をオン状態とすると共に、各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をオフ状態とする。
なお、カウント値i=「2」は電流供給スイッチ19b、カウント値i=「3」は電流供給スイッチ19c、カウント値i=「4」は電流供給スイッチ19dにそれぞれ対応している。したがって、カウント値iの最大値(Ch_max)は、本実施の形態では「4」である。
続いて、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13(B_SW)をオン状態とすると共に、各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をオフ状態とした、現在の状態におけるシャント抵抗Rsensの電圧降下値(電流センサ15の測定電流値Isensにシャント抵抗Rsensの抵抗値を乗じた値)Vsensを基準電圧Vsens_baseとして確認する(ステップS25)。
そして、監視用コントローラ21は、カウンタのカウント値iに対応する電流供給スイッチ19a〜19dをオン状態に切り替え(ステップS27)、この時点におけるシャント抵抗Rsensの電圧降下値Vsensに基づいて、暗電流Iecu[i]を計算する(ステップS29)。
なお、暗電流Iecu[i]の計算式は、この時点におけるシャント抵抗Rsensの電圧降下値VsensとステップS25で確認した基準電圧Vsens_baseとの差分をシャント抵抗Rsens(の抵抗値)で除した、
Iecu[i]=(Vsens_base−Vsens)/Rsens
によって表すことができる。計算した暗電流Iecu[i]は、カウンタのカウント値iに対応付けて内部メモリに記憶する。
次に、監視用コントローラ21は、ステップS27でオン状態に切り替えた、カウンタのカウント値iに対応する電流供給スイッチ19a〜19dを、オフ状態に切り替える(ステップS31)。そして、監視用コントローラ21は、オン状態とする電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])の切り替えにより、暗電流Iecu[i]を測定する対象のECU5a〜5eを切り替える(判定Ch移動)ために、カウンタのカウント値iを「1」インクリメントする(ステップS33)。
続いて、監視用コントローラ21は、全てのECU5a〜5eの暗電流Iecu[i]を測定したかを、カウンタのカウント値iが最大値(Ch_max)を超えたか否かによって確認する(ステップS35)。
カウント値iが最大値(Ch_max)を超えていない(暗電流Iecu[i]を測定していないECU5a〜5eがある)場合は(ステップS35でNO)、ステップS27にリターンする。また、カウント値iが最大値(Ch_max)を超えている(暗電流Iecu[i]を測定していないECU5a〜5eがない)場合は(ステップS35でYES)、監視用コントローラ21は、カウンタのカウント値iを「1」に設定するチェック回路の初期化処理を行う(ステップS37)。
このチェック回路の初期化処理は、これから行うスリープ状態への移行異常判定の対象とするECU5a〜5eを、それに接続された個別供給路9a〜9dや電流供給スイッチ19a〜19dを介して特定するカウント値iを、「1」に初期化するために行う。
次に、監視用コントローラ21は、図6に示すように、カウンタのカウント値iに対応して内部メモリに記憶された暗電流Iecu[i]が、暗電流の異常状態判定用のしきい値Ith[i]を超えているか否かを確認する(ステップS39)。ここで、暗電流の異常状態判定用のしきい値Ith[i]は、カウント値iに対応する電流供給スイッチ19a〜19dを設けた個別供給路9a〜9dに接続されているECU5a〜5eを正常な場合に流れる暗電流の値に基づいて設定されている。各しきい値Ith[i]は、カウント値iに対応付けて内部メモリに記憶されている。
暗電流Iecu[i]がしきい値Ith[i]を超えている場合は(ステップS39でYES)、対応するECU5a〜5eを流れる暗電流が異常でスリープ状態への移行異常が生じているものとして、カウント値iに対応する電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をオフ状態にする(ステップS41)。
一方、暗電流Iecu[i]がしきい値Ith[i]を超えていない場合は(ステップS39でNO)、対応するECU5a〜5eを流れる暗電流が正常でスリープ状態への移行異常が生じていないものとして、カウント値iに対応する電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をオン状態にする(ステップS43)。
続いて、監視用コントローラ21は、スリープ状態への移行異常判定の対象とするECU5a〜5eを切り替える(設定Ch移動)ために、カウンタのカウント値iを「1」インクリメントする(ステップS45)。
次に、監視用コントローラ21は、全てのECU5a〜5eについてスリープ状態への移行異常判定を行ったかを、カウンタのカウント値iが最大値(Ch_max)を超えたか否かによって確認する(ステップS47)。
カウント値iが最大値(Ch_max)を超えていない(スリープ状態への移行異常判定を行っていないECU5a〜5eがある)場合は(ステップS47でNO)、ステップS39にリターンする。また、カウント値iが最大値(Ch_max)を超えている(スリープ状態への移行異常判定を行っていないECU5a〜5eがない)場合は(ステップS47でYES)、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13(B_SW)をオフ状態に切り替える(ステップS49)。
これにより、ステップS41でオフ状態にした電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])を設けた個別供給路9a〜9dに接続されているECU5a〜5eは、暗電流Iecu[i]の供給停止により強制シャットダウンされることになる。
続いて、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13(B_SW)のオフ状態への切り替えから、暗電流Iecu[i]の供給停止により強制シャットダウンされたECU5a〜5eがリセットされるのに十分な初期化時間が経過したか否かを確認する(ステップS51)。
初期化時間が経過していない場合は(ステップS51でNO)、経過するまでステップS51をリピートし、初期化時間が経過した場合は(ステップS51でYES)、監視用コントローラ21は、「復帰確認」処理を行う(ステップS53)。この「復帰確認」処理とは、強制シャットダウンされたECU5a〜5eをスリープ状態に戻すための処理であり、監視用コントローラ21は、バイパススイッチ13(B_SW)をオン状態とすると共に、各電流供給スイッチ19a〜19d(SW_[1]〜[4])をオフ状態とする。
次に、監視用コントローラ21は、図4のステップS11と同様の、「暗電流正常判定」処理を行う(ステップS55)。即ち、監視用コントローラ21は、電流センサ15が測定する電力供給路7の電流の大きさと暗電流の異常状態判定用のしきい値との比較による暗電流の異常状態の判定を行う。
そして、暗電流の状態が正常でない場合は(ステップS55でNO)、システムオフモードへの移行が失敗したと判定し、移行の実行回数を示すカウンタのカウント値Retryを「1」インクリメントした後(ステップS57)、図5のステップS23にリターンする。一方、暗電流の状態が正常である場合は(ステップS55でYES)、「チャンネル(Ch)チェック」処理を終了し、図4のステップS3にリターンする。
以上に説明した処理の、特に、ステップS23乃至ステップS35の処理を(ステップS25乃至ステップS35は繰り返し)実行することで、個別供給路9a〜9dに接続されているECU5a〜5eにスリープ状態への移行異常が発生しているかどうかが判定される。
このように、本実施の形態の車両用電源制御システムS1によれば、ECU5a〜5eが負荷3に対する電力供給を停止させて自らもスリープ状態に移行するシステムオフモードにおいて、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を判定する際に、バイパススイッチ13がオンされたままの状態で電流供給スイッチ19a〜19dが順次オンされる。
すると、シャント抵抗Rsensが途中に存在する電力供給路7よりも電流供給路17a〜17dの方が低抵抗であるため、ECU5a〜5eに対する暗電流は専ら電流供給路17a〜17dを流れるようになる。つまり、スリープ状態のECU5a〜5eへの暗電流の供給は継続されるが、供給経路が電力供給路7及び個別供給路9a〜9dから電流供給路17a〜17dに切り替わる。そして、ECU5a〜5eに対する暗電流が流れなくなる分、電力供給路7を流れる電流Isensが減る。
そこで、バイパススイッチ13のオン中に電流供給スイッチ19a〜19dをオンさせたときの電流センサ15が測定する電力供給路7の電流Isensの変化量から、ECU5a〜5eに流れる暗電流を把握することができる。そして、把握した暗電流が通常の暗電流の大きさよりも大きいかどうかによって、監視用コントローラ21がECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を判定することができる。
また、ECU5a〜5eが負荷3に対する電力供給を制御する起動状態にあるときには、電力供給路7及び個別供給路9a〜9dによりECU5a〜5eに対して電源VBの電力を供給することができる。
したがって、自己の状態がスリープ状態であるか起動状態であるかを監視用コントローラ21に通知する通信機能をECU5a〜5eが持っていなくても、ECU5a〜5eが制御上スリープ状態となっているときに、電力供給路7の電流Isensから、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を判定することができる。
さらに、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を判定するために、電力供給路7の電流とは別に電流供給路17a〜17dを流れる電流を測定する必要がないので、電流測定系の回路構成が複雑化したり、それにより電流測定系の消費電力が上昇するのを防止することができる。
また、本実施の形態の車両用電源制御システムS1によれば、複数のECU5a〜5eに対応する電流供給路17a〜17d及び電流供給スイッチ19a〜19dの組によって対応する各ECU5a〜5eに、電力供給路7及び個別供給路9a〜9dとは別の経路で暗電流を供給できる構成とした。このため、システムオフモードにおいて、バイパススイッチ13のオン中に各電流供給スイッチ19a〜19dを順次オンさせることで、各ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常を個別に判定することができる。
なお、本実施の形態では、負荷3が複数存在し、それに対応して負荷3に対する電力供給を制御するコントローラとしてのECU5a〜5eが複数存在するものとしたが、コントローラが1つだけである場合にも本発明は適用可能である。
[第2の実施の形態]
(構成例について)
次に、図7〜図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る車両用電源制御システムS2の構成例について説明する。
なお、第2の実施の形態に係る車両用電源制御システムS2の回路構成は、第1の実施の形態に係る車両用電源制御システムS1と同様であるので、回路構成については前出の図1〜図3を流用して重複した説明は省略する。
第2の実施の形態に係る車両用電源制御システムS2が解決しようとする課題は、次の通りである。
即ち、図1等に示すECU(コントローラ)5a〜5eは、スリープ動作中にも、インターバル動作のために時々ウェイクアップ状態(起動状態)に移行する。そのため、各ECU5a〜5eについて、瞬間的な短時間の電流値の変化のみではスリープ状態への移行異常であるか否かを正確に判定することができず、誤判定となる虞があるという課題があった。
ここで、図7および図8を参照して、誤判定を招来する例について説明する。
図7は、駐車中等のスリープ状態時のECUの消費電流の例を示す。
ECUはスリープ(待機)時の消費電流を低減させるため、不要な機能等への電源供給の停止や、動作速度の低下等を実施している。即ち、例えば、図7に示すようにスリープ電流Isまで電流値を下げた状態としている。
一方、車両の所定機能(例えば、セキュリティ機能等)を実現させるため、図7に示すように、ECUは時々ウェイクアップ(起動状態に移行してウェイクアップ電流Iwを消費する状態)してECUの入出力の確認等を実施している。
ここで、図8に示すように、所定のサンプリングタイミングTsで暗電流異常が発生していないかを確認する場合に、例えば、タイミングt10で、サンプリングタイミングTsとECUがウェイクアップしたタイミングとが偶然一致すると、実際にはこのECUでは暗電流異常を生じていないにも拘らず、暗電流異常であると誤って判定されてしまう。
また、このような誤判定を無くすために、複数回の電流サンプリングを実施することが考えられる。しかしながら、回数や時間の制限をしない場合には、消費電流が高くなってしまうという別の問題を生じる。
そこで、第2の実施の形態に係る車両用電源制御システムS2では、図9に示すように、暗電流の確認開始時taから終了時tbまでの時間(暗電流確認時間)T2を、各ECU5a〜5eのウェイクアップ時間Twよりも長くするという判定条件(即ち、T2>Twとする判定条件)により、上記課題を解決している。なお、図9において、T1は暗電流確認待機時間、T2は暗電流確認時間、Twはウェイクアップ時間、Itは暗電流異常判定電流である。
また、上記判定条件に加えて、離散的にサンプリングするデータがウェイクアップ状態を判断可能な時間を上限とするとよい。
即ち、サンプリングを連続的に行う場合にはT2>Twの関係でもよいが、実際にはTA間隔での離散的なサンプリングを実施しており、図17(a)に示すようにT2>Twの関係を満たしたとしても、サンプリングポイントでは全てIwの状態をサンプリングするため、誤検知となってしまう。
また、T2はサンプリング以外の処理時間を除くと、T2=TA×n(n:自然数)の関係となるが、上述の図17(a)に示すような状態にしないためには、図17(b)に示すように、少なくともTw+TA<T2の関係とする必要がある。
ここで、図9のタイムチャートを参照して、暗電流異常を判定の例(ケースC1〜C3)について説明する。
まず、図9に示すケースC1では、所定電流(暗電流異常判定電流(閾値))の電流値を超える時間幅Twのウェイクアップ電流(何れかのECUから出力される)P1aは、時間幅T2の暗電流確認時間外の暗電流確認待機時間T1中に発生しているので、スリープ状態への移行異常であるとは判定されない。
また、ケースC2では、時間幅Twのウェイクアップ電流P1bは、時間幅T2の暗電流確認時間から一部が外れているので、スリープ状態への移行異常であるとは判定されない。
なお、ケースC3においても、時間幅Twのウェイクアップ電流P1bは、時間幅T2の暗電流確認時間内に発生しているものの、T2>Twとなる条件を満たし、スリープ状態への移行異常であるとは判定されない。
一方、図18に示すようなケースにおいては、時間幅T2の暗電流確認時間の全てでウェイクアップ状態となり、T2≦Twであるため、スリープ状態への移行異常であると判定される。
このように、各ECU5a〜5eの一時的なウェイクアップ時間Twと、暗電流検出開始時から暗電流検出終了時までの時間(暗電流確認時間)T2との関係が、T2>Twとなる条件を付加してスリープ状態への移行異常を判定することにより、ECU5a〜5eのスリープ状態への移行異常をより精度よく判定することができる。
なお、詳細な処理手順の例については後述する。
一方、図10は、図9における暗電流の確認開始時taから終了時tbまでの時間(暗電流確認時間)T2を拡大して示すタイムチャートである。
ここで、T1は暗電流確認待機時間、T2は暗電流確認時間、TAは電流サンプリング間隔、Twはウェイクアップ時間である。
図10に示す例では、暗電流確認時間T2内に電流のサンプリングを、電流サンプリング間隔TAで複数回実施している。
そして、複数回サンプリングした各ECU5a〜5eの電流値が下記の判定条件1〜判定条件3の何れかの条件を満たす場合に、暗電流異常と判定するようにできる。
判定条件1:平均電流が所定電流(異常判定値)より大きい場合
判定条件2:所定電流より大きい電流が流れている時間が所定時間以上の場合
判定条件3:所定電流より小さい電流が流れていない場合
このような判定条件を適用することにより、より精度よく暗電流異常を判定することができる。
(電流サンプリング処理について)
次に、図11のフローチャートを参照して、第2の実施の形態に係る車両用電源制御システムS2で実行される電流サンプリング処理の処理手順について説明する。
図11のフローチャートに示す電流サンプリング処理では、暗電流確認待機時間T1が経過するまで待機し、T1時間が経過した後に、電流サンプリングを実施している。
そして、電流サンプリングは、複数回実施し、その間の間隔はTA時間毎に行っている。 また、電流サンプリングを複数回実施することの確認は、サンプリング終了ごとにカウントし、その回数が所定回数(Cnt_A)となった時点で処理を終了している。
そして、複数回実施した電流サンプリング結果に基いて、後述する図12、図14、図15のフローチャートに示す暗電流異常判定処理を実施している。
図11のフローチャートを参照して、各ステップについて説明する。
電流サンプリング処理が開始されると、まず、ステップS61で、クリア処理として、TINT=0として、ステップS62に移行する。
ステップS62では、TINT≧T1か否かが判定される。ここで、T1は、暗電流確認待機時間である(図9等参照)。
そして、判定結果が「No」の場合には当該判定を繰り返し、「Yes」の場合にはステップS63に移行する。
ステップS63では、クリア処理として、Tsamp=0として、ステップS64に移行する。
なお、TINTは暗電流確認待機時間確認用のタイマ、Tsampはサンプリング間隔時間確認用のタイマである。
ステップS64では、Tsamp≧TAであるか否かが判定される。なお、TAは電流サンプリング間隔である。
そして、判定結果が「No」の場合には当該判定を繰り返し、「Yes」の場合にはステップS65に移行する。
ステップS65では、クリア処理として、再度、Tsamp=0として、ステップS66に移行する。
ステップS66では、電流サンプリングを実施して、ステップS67に移行する。
ステップS67では、Cnt=Cnt+1を実行し、カウント(Cnt)を「1」インクリメントしてステップS68に移行する。
ステップS68では、Cnt≧Cnt_Aであるか否かが判定される。なお、Cnt_Aは、予め設定される所定回数である。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS64に戻り、「Yes」の場合にはステップSB1の暗電流異常判定処理のサブルーチンを実行して処理を終了する。
なお、暗電流異常判定処理の具体例(第1〜第3の暗電流異常判定処理)については、後述する。
(暗電流異常判定処理の具体例)
図12〜図15を参照して、暗電流異常判定処理の具体例について説明する。
(第1の暗電流異常判定処理)
まず、図12のフローチャートおよび図13のタイムチャートを参照して、暗電流異常判定処理の具体例としての第1の暗電流異常判定処理について説明する。
第1の暗電流異常判定処理では、複数回サンプリングした電流の平均値を求め、その平均値と予め設定される所定電流1とを比較し、所定電流1以上の場合には、暗電流に異常ありと判定する処理を行っている。
即ち、図12のフローチャートのステップS71では、まず、平均電流値の算出処理を行う。なお、平均電流値は、サンプリングした電流値の総和を、サンプリング回数で割った値である。
ここで、「所定電流1」は、スリープ中のECUの消費電流が、例えば図13に示すような特性を示す場合に、下記式を満たす電流である。
(I1×T3+I1×Tw)/(T3+Tw)<I<I2
但し、I1は暗電流値、I2はECUのウェイクアップ時の消費電流、T3はウェイクアップ電流Iw間の時間、TwはECUが一時的に消費電流が増大する時間である。
なお、上記式には誤差要因等は含まれていないので、誤差要因等がある場合には、上記式に所定の補正項を追加するとよい。
次いで、ステップS72では、平均電流値<所定電流1であるか否かが判定される。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS73に移行して、「暗電流異常なし」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
一方、判定結果が「Yes」の場合にはステップS74に移行して、「暗電流異常あり」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
(第2の暗電流異常判定処理)
次に、図14のフローチャートを参照して、暗電流異常判定処理の具体例としての第2の暗電流異常判定処理について説明する。
第2の暗電流異常判定処理では、複数回サンプリングした電流のうち、予め設定される所定電流2よりも大きい電流値のサンプリング数をカウントし、そのカウント数が所定値(サンプリング回数)以上であった場合に、暗電流異常ありと判定する処理を行っている。
即ち、図14のフローチャートのステップS81では、まず、i=0,Cnt_U=0とする初期化処理を行ってステップS82に移行する。なお、「i」は、サンプリング回数を計数するカウンタのカウント値、「Cnt_U」は、予め設定される所定電流2よりも大きい電流値のサンプリング数を計数するカウンタのカウント値である。
ステップS82では、サンプリング電流[i]>所定電流2であるか否かが判定される。 そして、判定結果が「No」の場合には、ステップS84に移行し、「Yes」の場合には、ステップS83に移行する。
ステップS83では、Cnt_U=Cnt_U+1の処理が行われ、カウント値Cnt_Uを「1」インクリメントして、ステップS84に移行する。
ステップS84では、i=i+1の処理が行われ、カウント値iを「1」インクリメントして、ステップS85に移行する。
ステップS85では、i≧Cnt_Aか否かが判定され、「No」の場合にはステップS82に戻り、「Yes」の場合にはステップS86に移行する。
ステップS86では、Cnt_U≧Cnt_Bであるか否かが判定される。
ここで、Cnt_Aは、サンプリング回数のカウンタ、Cnt_Bは、Cnt_Uのカウント値から異常判定を行なうための判定値である。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS87に移行して、「暗電流異常なし」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
一方、判定結果が「Yes」の場合にはステップS88に移行して、「暗電流異常あり」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
(第3の暗電流異常判定処理)
次に、図15のフローチャートを参照して、暗電流異常判定処理の具体例としての第3の暗電流異常判定処理について説明する。
第3の暗電流異常判定処理では、複数回サンプリングした電流のうち、所定電流2よりも小さい電流値のサンプリング数をカウントし、そのカウント数が0回であった場合に、暗電流異常ありと判定する処理を行っている。
即ち、図15のフローチャートのステップS91では、まず、i=0,Cnt_U=0とする初期化処理を行ってステップS92に移行する。なお、「i」は、サンプリング回数を計数するカウンタのカウント値、「Cnt_U」は、予め設定される所定電流2よりも小さい電流値のサンプリング数を計数するカウンタのカウント値である。
ステップS92では、サンプリング電流[i]<所定電流2であるか否かが判定される。 そして、判定結果が「No」の場合には、ステップS94に移行し、「Yes」の場合には、ステップS93に移行する。
ステップS93では、Cnt_U=Cnt_U+1の処理が行われ、カウント値Cnt_Uを「1」インクリメントして、ステップS94に移行する。
ステップS94では、i=i+1の処理が行われ、カウント値iを「1」インクリメントして、ステップS95に移行する。
ステップS95では、i≧Cnt_Aか否かが判定され、「No」の場合にはステップS92に戻り、「Yes」の場合にはステップS96に移行する。
ステップS96では、Cnt_U≧1であるか否かが判定される。
そして、判定結果が「No」の場合にはステップS97に移行して、「暗電流異常なし」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
一方、判定結果が「Yes」の場合にはステップS98に移行して、「暗電流異常あり」と判定して、図11のメイン処理にリターンする。
(スリープ失敗判定処理)
図16のフローチャートを参照して、スリープ失敗判定処理の処理手順について説明する。
スリープ失敗判定処理では、パワーオンリセットの繰り返し回数の上限(Retry_max)よりも少ない場合には、ECUのパワーオンリセットのリトライを実施する処理である。
そして、パワーオンリセットの繰り返し回数の上限に達した場合には、暗電流異常が発生した系統を記録し、ユーザ等への通知を行うようにできる。
また、その系統が常時給電必須対象か否かにより、バッテリ上りが発生する可能性があるか、その系統への給電を実施するか、遮断するかを判定している。即ち、その系統への給電をバッテリ上りよりも優先するか、バッテリ上り防止を優先するかを判定している。
このような常時給電必須対象としては、セキュリティシステムなど車の使用における影響度が大きいものや、スマートエントリーシステムなど、ユーザが他の故障であると判断をしてしまう虞があるものを例示することができる。
具体的な処理手順としては、図16にフローチャートに示すように、まず、ステップS101で、ECUのパワーオンリセットのリトライ回数(Retry)について、Retry=Retry+1として、「1」インクリメントしてステップS102に移行する。
ステップS102では、Retry>Retry_maxであるか否かが判定される。
そして、判定結果が「No」の場合には、ECUのパワーオンリセットのリトライ処理を実施する。
なお、リトライ処理の実施後、異常状態が継続(スリープ失敗判定)した場合には、ステップS101に戻る。その場合には、リトライ処理数をカウントして、Retry_max以上となった場合には、対象により遮断/通電継続の判断をし、リトライ処理は行わない。
一方、異常状態から正常状態に復帰した場合は、ステップS101には戻らず、処理を終了する。
また、判定結果が「Yes」の場合には、ステップS103に移行して、異常発生系統記録処理を実施してからステップS104に移行する。
ステップS104では、常時給電必須対象であるか否かが判定される。
そして、判定結果が「Yes」の場合には処理を終了し、「No」の場合にはステップS105に移行する。
ステップS105では、異常系統電源供給停止処理を実施して、処理を終了する。
これにより、パワーオンリセットの繰り返し回数の上限に達した場合には、暗電流異常が発生した系統を記録し、ユーザ等への通知を行うようにでき、利便性を向上させることができる。
(その他)
上述した実施の形態では、車両に搭載された負荷3に対する電力供給を制御するシステムに本発明を適用した場合を例に取って説明した。しかし、本発明は、車両以外の分野においても、負荷に対する電力供給をコントローラを用いて制御する電源制御システムに広く適用可能である。