JP6533735B2 - リチウムイオン電池用正極活物質粉末、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極活物質粉末、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質粉末、リチウムイオン電池用正極、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法に関する。
リチウムイオン電池の正極活物質粉末には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを改良・複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
上述のように、従来、リチウム二次電池用の正極活物質粉末としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等の使用が一般的であるが、現在はこれらに加えてオリビンと呼ばれるLiFePO4、三元系と呼ばれるLi(Ni、Co、Mn)O2が使用されてきている。オリビン以外の正極活物質粉末を製造する際に、通常はLi2CO3やLiOH・H2Oなどのリチウム塩と、Ni・Mn・Coの酸化物・水酸化物・炭酸塩とを混合して焼成するプロセスが含まれ、ここで最終製品のおおよその結晶構造が確定する。
特開平10−144291号公報 特開平11−250900号公報 WO2012/144021 特開2015−26559号公報
この際、例えばMe(ここで、MeはNi、Co、Mnの1種以上)の酸化物Me34とLi2CO3を用い、モル比Li/Me=1で反応させたとすると、6Li2CO3+4Me34+O2→12LiMeO2+6CO2で示される反応式で反応し、1molのO2を吸収して6molのCO2を排出することになる。反応が進行すればするほどCO2が発生するため、ローラーハースキルン等の連続炉における焼成時には、O2の分圧が低くなり反応が停止する。すると、CO2の発生が止まり、新たに流入する空気によりO2が供給され、CO2が再び発生し、CO2が増加する。CO2が増加すると、新たに投入される焼成原料が反応を開始してO2分圧が低くなる。このように、連続炉による焼成工程の反応系では、O2とCO2との濃度振動が起こっている。
一方、バッチ炉での焼成時にはO2とCO2の濃度がある程度バランスしたところで反応が進行する。連続炉及びバッチ炉においては、どちらの炉でも、前述の理由のため焼成時の生成物(中間体含む)がCO2によって低O2分圧にさらされ、製造条件によっては粒子表面の酸素量が粒子内部に比べて少なくなってしまい、その後の反応や一次粒子形成にかなりの影響を与えてしまっていた。例えば前述のように、Meの酸化物とLi2CO3をモル比Li/Me=1で配合したとしても、原料のLi2CO3が反応しないまま残ってしまうか、蒸気となって揮発してしまう物質量が、CO2を発生しないような他の焼成反応に比べて多くなってしまっていたため、Li/Meが高くなるように原料を仕込むことで完全なLiMeO2を製造できるようにするのが当業者にとって当然の技術になっている。
この結果、焼成時のCO2発生はますます多くなり、連続焼成炉においては高温部まで流れ込むCO2の量が増え、反応部に次いでO2分圧の必要な高温部でO2分圧が少なくなり、焼成物に酸素が入っていかないか焼成物から酸素が抜けてしまう。こうして正極活物質粉末の中に酸欠が発生すると、その正極活物質粉末を用いた電池の容量またはサイクル維持率が減少する、あるいは保存特性やレート特性が悪くなる等の問題が生じる。このため、特にリチウムニッケル複合酸化物・リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物・リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物について焼成後の正極活物質粉末の中に過剰に酸欠が発生しないような焼成条件の検討が不可欠になっていた。
しかしながら、原料にLi2CO3を用い、O2を取り込む反応をする限りは多量の酸欠の発生は不可避であり、例えば特許文献4に記載されているように、アルカリ土類金属の過酸化物などの酸化剤を用いるか、あらかじめ原料を酸化しておくかしかないが、前者は完全にO2取り込みをなくそうとすると、計算上は酸化剤の添加量が非常に多くなり、それに従って容量が低下するという問題が生じる。また、後者は取扱いが難しいこと及び反応時間が非常に長くなることが判明したため実際に実施されている例は少ない(通常、反応時間が長くなる、つまり焼成時間を長くすると、粒子表面の凹凸が多くなり、サイクル特性に極めて悪影響を及ぼす)。このように、どちらの例でも電池特性を同等以上にしようとすると酸欠の問題が完全には解消しない。
この問題を解決するためには水酸化リチウムを用いることが一般的となっているが、これも未反応アルカリの上昇は避けられず、電極作製時にゲル化してしまうため、酸欠はある程度なくなるものの炭酸リチウムを原料とした時のようなゲル化の極めて抑制された正極活物質粉末を作製することができず、酸欠とアルカリとのトレードオフになっているのが現状である。この場合も、電池特性を同等以上にしようとした時の酸欠低減には限界がある。また、水熱法などで正極活物質粉末を作製する場合、反応中の酸素脱離が避けられず、焼成法よりも酸欠が多く発生する。従来の方法では、いずれの方法を用いたとしても、粒末全体の酸欠を抑制し、0.00005mol/g以下に平均非化学量論的酸素欠陥量を低減した正極活物質粉末は存在しなかった。
そこで、本発明は、酸欠状態が極めて抑制された、電池特性が良好なリチウムイオン電池を作製することが可能なリチウムイオン電池用正極活物質粉末を提供することを課題とする。
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、組成式:Li2Mz25+αまたはLiMzO2+α(ただし、−0.01≦α≦0.01であり、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)
で表され、平均非化学量論的酸素欠陥量が0.00002mol/g以下であるリチウムイオン電池用正極活物質粉末である。
本発明は別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質粉末を有するリチウムイオン電池用正極である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極を有するリチウムイオン電池である。
本発明は別の一側面において、LiとMz(ただし、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)とを含むリチウム複合酸化物に、1〜4MeVのエネルギーを持つ酸素イオンを注入する工程を含む、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法である。
本発明によれば、酸欠状態が極めて抑制された、電池特性が良好なリチウムイオン電池を作製することが可能なリチウムイオン電池用正極活物質粉末を提供することができる。
(リチウムイオン電池用正極活物質粉末の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質粉末は、組成式:Li2Mz25+αまたはLiMzO2+α(ただし、−0.01≦α≦0.01であり、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)で表され、平均非化学量論的酸素欠陥量が0.00002mol/g以下である。また、本発明の正極活物質粉末と、他の材料とを複合化させて複合粉末または複合成形物として用いてもよいが、以下では便宜上のため、当該複合粉末中または複合成形物の本発明に係る部分について「正極活物質粉末」と記載する。
本発明で規定されている平均非化学量論的酸素欠陥量について説明する。本発明の正極活物質粉末の組成式はLi2Mz25+αまたはLiMzO2+α(ただし、−0.01≦α≦0.01であり、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)で表されている。組成式は定比例の法則や倍数比例の法則から決まっているものである(ただし、カチオンミキシングなどが起こっている場合、整数比にならない場合がある)が、現実的にはある程度欠陥を生成する方が自由エネルギーが小さくなるため、どんな物質も一定の欠陥構造を持っている。そして、リチウムイオン電池用の酸化物正極活物質粉末の場合、酸素が不足した結果として本来あるべき価数よりも低い金属成分があることが、電池特性を悪化させているのではないか、という議論が特にLiMn24においてあった。他の酸化物でも同様の現象が発生していると考えられる。そこで、化学量論からの酸素量のズレをイオンクロマトグラフ、ICP、酸素窒素水素分析装置、価数滴定及びメスバウアー分光装置において分析調査し、その量を平均非化学量論的酸素欠陥量とし、この量の低減を図った。なお、平均非化学量論的酸素欠陥量は、正極活物質の粒末全体における非化学量論的酸素欠陥量の平均値である。後述するが、この平均非化学量論的酸素欠陥量の低減と同時に、あるべき価数よりも低い金属成分の低減も行われる。
ここで、平均非化学量論的酸素欠陥量の具体的な計算方法について説明する。Liについてはイオンクロマトグラフ、その他の金属イオンについてはICP分析の結果として得られた、正極活物質粉末質量に対するLiの量をa(質量%)、Mgの量をb(質量%)、Ni(II)の量をc(質量%)、Ni(III)の量をd(質量%)、Mnの量をe(質量%)、Fe(III)の量をf(質量%)、Fe(IV)の量をg(質量%)、Coの量をh(質量%)とし、完全結晶仮定の酸素量を下記式(1)に従って算出する。
式(1):完全結晶仮定の酸素量(mol/g)=(0.5*a/6.941+b/24.305+c/58.6934+1.5*d/58.6934+2*e/54.93805+1.5*f/55.845+2*g/55.845+1.5*h/58.9332)/100
これとは別に、酸素窒素水素分析装置において測定した実際の酸素量i(質量%)から、平均非化学量論的酸素欠陥量を下記式(2)のように計算する。
式(2):平均非化学量論的酸素欠陥量(mol/g)=完全結晶仮定の酸素量−i/15.9994/100
ただし、Niについては、まず正極活物質粉末中のNi総質量百分率を最初にICPで分析しておき、次の方法でdを求め、正極活物質粉末中のNi総質量百分率からdを引くことによってcを求める。すなわち、正極活物質粉末0.2gを0.25MのFeSO4の3.6N硫酸溶液に溶解し、濃燐酸(関東化学リン酸特級、濃度85%以上)2mlを加えた後、0.1Nの過マンガン酸カリウムで滴定する。同様に空試験を行い、下記式(3)よりdを求める。式(3)においてfは0.1Nの過マンガン酸カリウム溶液のファクター、X0は空試験滴定量(ml)、Xは滴定量(ml)、mは正極活物質粉末量(g)、Bは正極活物質粉末中のNi総質量百分率(質量%)、Aは5.871である。
式(3):d(質量%)=〔fX(X0−X)×A×10〕/(m×B)
ただし、純粋な正極活物質粉末として分離することが難しく、常に正極活物質以外の物質が含まれる場合は、上記の「正極活物質粉末0.2g」を「試料として正味の正極活物質として0.2gとなるような重量をとり、当該重量分」と読みかえ、mについては正味の正極活物質重量分とする。すなわち、例えば正極活物質粉末0.2025g、アセチレンブラック0.0380g、PVdF0.0127gからなる混合物の場合、試料としての採取重量は0.2501gとなり、mは0.2000gとなる。
また、Feについては、まず正極活物質粉末中のFe総質量百分率を最初にICPで分析しておき、57Feメスバウアー分光測定を行って、同位体シフトでピークトップが+0.300〜+0.370(mm/s)にあるピークの面積αとピークトップが+0.00〜+0.10(mm/s)にあるピークの面積βとから、下記式(4)及び(5)のようにしてf、gを求めた。
式(4):f(質量%)=(α/(α+β))×(活物質中のFe総質量百分率)
式(5):g(質量%)=(β/(α+β))×(活物質中のFe総質量百分率)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質粉末は、平均非化学量論的酸素欠陥量が0.00002mol/g以下と極めて少なく制御されている。このため、酸欠が解消され、より完全な結晶構造となり、より完全に充放電できる化合物となり、従来は利用できなかったLiについて、より多くを充放電に用いることができ、容量・サイクル維持率等の電池特性が良好となる。なお、LiFeO2についてはほとんど充放電できないのにLi2Fe25だと充放電できる理由は、O2-に対してはFe3+がd5のハイスピン(t2g=3電子、eg=2電子)となるため電子伝導性に難があるが、Fe4+の場合はd4のロースピン(t2g=4電子、eg=0電子)となって電子伝導性が確保できるためである(Zaanen−Sawatzky−Allen相図の左下側、負電荷移動エネルギー絶縁体の真下に位置すると推定される)。
(リチウムイオン電池用正極及びそれを有するリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質粉末と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を有する。
(リチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法について詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法は、LiとMz(ただし、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)とを含むリチウム複合酸化物の粉末に、1〜4MeVのエネルギーを持つ酸素イオンを注入する工程を含む。
正極活物質粉末中の酸欠といわれているものは様々なものがあるが、いわゆる本来あるべき価数よりも低い状態の金属と、非化学量論的に酸素がない(カチオン過剰)状態とがある。この低価数金属が多いほどカチオン過剰状態も多くなるという相関関係があり、焼成中に焼結と酸素取り込みとを同時に進行させる結果、このような相関関係が生まれてしまうと考えられる。上記のような注入工程を経ることで、低価数金属とカチオン過剰状態とを同時に減らすことができる。
正極としては、その中の正極活物質粉末において酸欠が無く、より完全な結晶に近づくほどより容量・サイクル維持率の良い材料を提供することができる。この酸欠は、粒子表面はもちろん、粒子内部にも存在するため、粒子内部まで酸素を押し込む技術が必要である。そのため、本発明では、正極活物質粉末等に酸素イオンを注入し、平均非化学量論的酸素欠陥量を一定の値より少なくした正極活物質粉末を作製し、これを用いて正極を作製し、負極、電解液、セパレーターと組み合わせてかしめることで、酸素イオンを注入しない正極活物質粉末を用いた電池より充放電時の平均電位が高く、容量、サイクル特性等の電池特性が良好な電池を作製することができる。この際、酸素イオンにある程度のエネルギーを与えることになるが、特許文献1〜3に記載されているような1MeVを下回るエネルギーでは、酸素イオンは表面層にのみ注入されるだけであり、また粒子に入った酸素イオンが粒子自体を破壊してしまってサイクル特性がさほど改善しない。このため、注入エネルギーとして1〜4MeVを持つ酸素イオンを注入する。このようにすることで、酸素イオンが粒子内部まで注入され、かつ粒子自体の破壊を防ぐことができる。また、単に注入しただけでは、アモルファス化するおそれがあるため、100〜300℃程度の温度をかけながら酸素イオンの注入を実施するのが好ましい。ただし、この温度は被注入物質からの酸素脱離が起こらない範囲で適宜変更可能である。
注入するイオンとしては、O-イオンまたはO+イオンを使用することができる。また、酸素イオンの注入方法としては、LiとMz(ただし、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)とを含むリチウム複合酸化物の粉末を金型へ敷き、そこへ樹脂を流し込んで固めてモールドを形成し、その表裏からそれぞれ例えば半分ずつ酸素イオンを注入してもよい。或いは、LiとMz(ただし、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)とを含むリチウム複合酸化物の粉末を転動または揺動させながら一度に全部の酸素イオン量を注入してもよく、このようにすると、粉末全体により均一に注入できる。なお、この場合、注入できなかった酸素イオンがある可能性があるので、引き出す酸素イオン量はあらかじめ多めに設定するのが好ましい。酸素イオンの引き出しに用いる装置には特に指定はないが、例えばデュオビガトロンなどを用いた酸素イオン注入装置を使用することができる。また、1〜4MeVまで酸素イオンを加速する方法についても特に指定はないが、例えばタンデム方式などで加速するのがよい。
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。また、実施例中の「樹脂溶解」に記載された項目および「電池特性の評価」に記載された項目の内、アルゴングローブボックスに入れる前までの項目については、正極活物質粉末試料の水和や還元を防止するため、露点が−50℃以下の乾燥空気中で取り扱った。従って、実施例1〜8、比較例6については、「正極活物質粉末組成の評価」に記載された項目で用いる分を除き、樹脂溶解以降は通常の大気に触れていない。「正極活物質粉末組成の評価」に記載された項目で用いる分についても、上記の正極活物質粉末試料の水和や還元を防止するため、測定直前に露点が−50℃以下である雰囲気から取り出した。具体的には、露点が−50℃以下である雰囲気から測定装置までの正極活物質粉末試料の運搬は、露点が−50℃以下である雰囲気にてまずアルミラミネート袋に被測定正極活物質試料を入れ、当該アルミラミネート袋をシール機でシールし、測定直前に出している。
(実施例1)
<前処理>
まず、組成式:LiNi0.8Co0.1Mn0.12で表される平均粒径10μmの粉末を用意し、これを内径が8インチで厚さが0.725mmの金型の底に敷き詰めた。敷き詰めた粉末の量は27.8gである。この際、個々の粒子が互いに重ならないようにばらけさせた。そして、この中に耐熱接着剤を流し込み、しばらく静置して固めることで8インチ径の厚さ0.725mmのモールドを作製した。この時、モールドにおいて、底側を粒子側、天井側を樹脂側と便宜的に称する。
<イオン注入>
モールドの粒子側を、酸素イオンが注入される側として酸素イオン注入装置にセットし、1.39×1021(ions/cm2)のO-イオンを250℃で注入した。この際、O-イオンの加速はタンデム方式で行い、注入エネルギーが1MeVとなるように加速した。終了後、樹脂側を粒子が表面にほぼむき出しになるまで研磨し(ただし、粒子自体は研磨していない)、その後、粒子側に耐熱接着剤を流し込んで再び0.725mmのモールドを形成した。つまり、それまでの粒子側が新たな樹脂側、それまでの樹脂側が新たな粒子側となる。この新たな粒子側を注入される側として再び酸素イオン注入装置にセットし、再び1.39×1021(ions/cm2)のO-イオンを前述のように250℃で注入した。注入後、当該酸素イオン注入装置からモールドを露点が−60℃の乾燥空気の中に取り出してアルミラミネート袋に入れ、その雰囲気の中でシール機を用いてシールした。
<樹脂溶解>
モールドをアルミラミネート袋から取り出し、2−エチルヘキサン酸トリグリセライドとアセトンとの体積比3:7混合溶媒中に入れ、撹拌することによってモールド中の有機成分を混合溶媒中にすべて溶解させた。これらを吸引ろ過し、エタノールで洗浄した。洗浄終点は、ろ液のIRスペクトル中の1710〜1780cm-1のカルボニル基起因の吸収がなくなった点とした。ろ紙上のケーキを、80℃で乾燥し、軽く乳鉢で解砕して正極活物質粉末とした。
<繰り返し回数>
組成式:LiNi0.8Co0.1Mn0.12で表される別の平均粒径10μmの粉末において、モールド作製から両側へのイオン注入・モールド中の有機成分の溶解・エタノール洗浄・乾燥までを、上記と同様の条件にて3回以上行い、80g以上の正極活物質粉末を確保した。
(実施例2)
注入する際の注入エネルギーを、全て4MeVとしたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例3)
前記粉末について、組成式がLiNi0.5Co0.2Mn0.32で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例4)
前記粉末について、組成式がLiCoO2で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例5)
前記粉末について、組成式がLiNiO2で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例6)
前記粉末について、組成式がLiFeO2で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例7)
前記粉末について、組成式がLi(Li0.010Ni0.594Co0.198Mn0.198)O2で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(実施例8)
前記粉末について、組成式がLi(Fe0.981Mg0.008Ni0.011)O1.996で表される粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(比較例1)
実施例1で用いた前記粉末について、組成式がLiNi0.8Co0.1Mn0.12で表される平均粒径10μmの粉末を、酸素注入せずに、そのまま正極活物質粉末とした。
(比較例2)
実施例3で用いた前記粉末について、組成式がLiNi0.5Co0.2Mn0.32で表される平均粒径10μmの粉末を、酸素注入せずに、そのまま正極活物質粉末とした。
(比較例3)
実施例4で用いた前記粉末について、組成式がLiCoO2で表される平均粒径10μmの粉末を、酸素注入せずに、そのまま正極活物質粉末とした。
(比較例4)
実施例5で用いた前記粉末について、組成式がLiNiO2で表される平均粒径10μmの粉末を、酸素注入せずに、そのまま正極活物質粉末とした。
(比較例5)
実施例6で用いた前記粉末について、組成式がLiFeO2で表される平均粒径10μmの粉末を、酸素注入せずに、そのまま正極活物質粉末とした。
(比較例6)
注入時の注入エネルギーを全て50keVとしたこと以外は実施例1と同様にして正極活物質粉末を作製した。
(評価)
こうしてできた実施例及び比較例の各正極活物質粉末を用いて下記の条件にて各評価を実施した。
−正極活物質粉末組成の評価−
各正極活物質粉末中の金属含有量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)およびイオンクロマトグラフで測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。また、平均非化学量論的酸素欠陥量は、酸素窒素水素分析装置とICPとイオンクロマトグラフと価数滴定とメスバウアー分光を用いてそれぞれ酸素量、遷移金属量、リチウム量を分析し、上述の方法に従って算出した。
−電池特性の評価−
正極活物質粉末80g、アセチレンブラック粉末15g、10質量%の濃度でPVdFをNMPに溶解させたもの50g、純NMP50gを混合し、アルミニウム箔上に塗布して200℃で乾燥し、線荷重10kN/cmで加圧して正極とした。同様に、黒鉛粉末90g、10質量%の濃度でPVdFをNMPに溶解させたもの100gを混合し、銅箔上に塗布して200℃で乾燥し、線荷重10kN/cmで加圧して負極とした。電解質として1mol/Lのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含むエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとの6:7:7混合溶媒を用い、2032型コインセルに充填できるように前述の正極、前述の負極、市販のセパレーターを切り出してアルゴングローブボックス中に入れ、セパレーターに前記電解質を含浸させ、正極および負極にも電解質を滴下してしみこませた。これらを2032型コインセル部材と組み合わせてかしめ、2032型コインセルを作製した。これを3.0〜4.8Vで室温にて充放電を行い、平均放電電位(放電曲線の中間点での電位)、初期放電容量、10サイクル後の放電容量を測定した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0006533735

Claims (4)

  1. 組成式:Li2Mz25+αまたはLiMzO2+α(ただし、−0.01≦α≦0.01であり、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)
    で表され、平均非化学量論的酸素欠陥量が0.00002mol/g以下であるリチウムイオン電池用正極活物質粉末。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質粉末を有するリチウムイオン電池用正極。
  3. 請求項2に記載のリチウムイオン電池用正極を有するリチウムイオン電池。
  4. LiとMz(ただし、MzはMn、Fe、Co、Ni、Li、Mgから選択される1種以上であり、Mzの内、遷移金属元素が99mol%以上である。)とを含むリチウム複合酸化物に、1〜4MeVのエネルギーを持つ酸素イオンを注入する工程を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質粉末の製造方法。
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