以下、実施形態によるブレーキ制御装置およびブレーキシステムを4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、図3に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。
図1において、車両は、車体1、前輪2L,2R、後輪3L,3Rを含んで構成されている。車体1は、車両のボディを構成する。車体1の下側(路面側)には、左側および右側の前輪2L,2Rと、左側および右側の後輪3L,3Rとからなる合計4個の車輪が設けられている。
前輪2L,2Rには、それぞれ前輪側ホイールシリンダ4L,4Rが設けられている。後輪3L,3Rには、それぞれ後輪側ホイールシリンダ5L,5Rが設けられている。これら各ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rは、それぞれの車輪2L,2R,3L,3Rに制動力を付与するホイールブレーキ機構となるもので、例えば、液圧式のディスクブレーキ、または、ドラムブレーキにより構成されている。
ブレーキペダル6は、車体1のフロントボード側に設けられている。ブレーキペダル6は、車両に制動力を与えるための力を発生する制動アクチュエータとしての電動倍力装置8、ESC14等によって運転者(ドライバ)が制動力を操作するための制動操作機構を構成している。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作され、この操作に基づいて、電動倍力装置8等は各ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに圧力を供給する。これにより、車輪2L,2R,3L,3Rには、制動力が付与される。なお、制動操作機構は、ブレーキペダル6に限らず、運転者によって操作可能なレバー、スイッチ等によって構成してもよい。
ブレーキ操作量センサ7は、ブレーキペダル6に設けられている。ブレーキ操作量センサ7は、運転者のブレーキ操作量(ペダル操作量)を検出する。ブレーキ操作量センサ7は、例えばブレーキペダル6のストローク量(ペダルストローク)を検出するストロークセンサ(変位センサ)によって構成されている。ブレーキ操作量センサ7は、ブレーキ操作量に応じた検出信号を、車両を制動するための目標となる減速度が示される制動指令信号として第1のECU11に出力する。これに加えて、ブレーキ操作量センサ7の検出信号は、第1のECU11を介して車両データバス12に出力される。さらに、ブレーキ操作量センサ7の検出信号は、例えば、第1のECU11と第2のECU16とを接続する通信線13を介して第2のECU16に出力される。
なお、ブレーキ操作量センサ7は、ストロークセンサに限らず、例えば、ペダル踏力を検出する力センサ、ブレーキペダル6の回転角を検出する角度センサ等、ブレーキペダル6の操作量を検出できる各種のセンサによって構成してもよい。この場合、ブレーキ操作量センサ7は、1個(1種類)のセンサにより構成してもよく、複数(複数種類)のセンサにより構成してもよい。
電動倍力装置8は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ9との間に設けられている。電動倍力装置8は、車両に制動力を与えるための力を発生する第1の制動アクチュエータを構成している。電動倍力装置8は、ブレーキペダル6の踏込み操作時に、踏力(ブレーキ操作力)を増力してマスタシリンダ9に伝える倍力機構を構成している。マスタシリンダ9内に発生したブレーキ液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して、液圧供給装置14に送られる。
電動倍力装置8は、マスタシリンダ9内の圧力(ブレーキ液圧)を調整(加圧または減圧)可能なブースタピストン(図示せず)と、該ブースタピストンを駆動する電動モータ8Aとを含んで構成されている。電動倍力装置8は、電動モータ8Aの駆動に基づいてブースタピストンによりマスタシリンダ9内に圧力(マスタシリンダ圧)を発生させる。これにより、電動倍力装置8は、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5R内の圧力(ホイールシリンダ圧)を調整(加圧・減圧)する。
例えば、電動倍力装置8は、運転者のブレーキ操作量(踏込み量)に応じて、電動モータ8Aを駆動し、ブースタピストンによりマスタシリンダ9の圧力を増大させる。これにより、電動倍力装置8は、運転者のブレーキペダル6の操作力(踏力)を増大して、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5R内を増圧することができる。
さらに、電動倍力装置8は、運転者のブレーキ操作がなくても、自動的に制動力(自動ブレーキ)を付与する自動ブレーキ付与機構を構成している。即ち、自動減速判定装置26から自動ブレーキを付与する旨の車両を制動するための目標となる減速度が示される制動指令信号Sabが出力されると、電動倍力装置8は、制動指令信号Sabに応じて電動モータ8Aを駆動し、ブースタピストンによりマスタシリンダ9内に液圧を発生させる。これにより、電動倍力装置8は、運転者のブレーキ操作の有無に拘わらず、各ホイールシリンダ4L,4R,5L,5R内の圧力を加圧し、車両に対して自動的に制動力を付与することができる。
電動倍力装置8は、第1のECU11からの指令(駆動電流)に基づいて電動モータ8Aが駆動することにより、マスタシリンダ9内に発生するブレーキ液圧を可変に制御する。即ち、電動倍力装置8は、第1のECU11に接続され、第1のECU11により制御される。
第1のECU11は、制御装置28の一部を構成し、運転者がブレーキペダル6に基づく制動力を車両に与えるために、制動アクチュエータとしての電動倍力装置8を制御する。第1のECU11は、電動倍力装置8(電動モータ8A)を電気的に駆動制御する制動アクチュエータ制御装置としての電動倍力装置用コントロールユニットを構成している。第1のECU11は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。第1のECU11の入力側は、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量センサ7と、他の車両機器のECU16,21や自動ブレーキ制御装置27からの信号の授受を行う車両データバス12と、第2のECU16との間で通信を行う通信線13とに接続されている。車両データバス12は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車両に搭載された多数の電子機器の間で多重通信を行うものである。一方、第1のECU11の出力側は、電動モータ8Aと、車両データバス12と、通信線13とに接続されている。
第1のECU11は、ブレーキ操作量センサ7から出力される検出信号からなる制動指令信号(ペダル操作量)と、自動減速判定装置26から出力される自動ブレーキ用の制動指令信号Sab(制動指令値)とに応じて、電動倍力装置8を制御する。即ち、第1のECU11は、ペダル操作量、制動指令値に従って電動モータ8Aを駆動し、ブースタピストンによりマスタシリンダ9内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御する。
液圧供給装置14(以下、ESC14という)は、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rとマスタシリンダ9との間に設けられている。ESC14は、電動倍力装置8と共に、または単体で、車両に制動力を与えるための力を発生する第1の制動アクチュエータを構成している。ESC14は、マスタシリンダ9内に発生したブレーキ液圧を、車輪2L,2R,3L,3R毎のホイールシリンダ圧(W/C圧)として可変に制御して、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに個別に供給する。即ち、ESC14は、マスタシリンダ9からシリンダ側液圧配管10A,10Bを介して出力される液圧を、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dを介してホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに分配、供給する。また、ESC14は、マスタシリンダ9で液圧が発生していない状態でも、マスタシリンダ9のブレーキ液を後述の液圧ポンプによってホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに送液することで、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rを加圧することが可能になっている。
ここで、ESC14は、複数の制御弁と、ブレーキ液をホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに供給する液圧ポンプ(いずれも図示せず)と、該液圧ポンプを駆動する電動モータ14Aと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(図示せず)とを含んで構成されている。ESC14の各制御弁の開,閉と電動モータ14Aの駆動は、第2のECU16により制御される。
なお、ブレーキペダル6により液圧を発生する機構は、上記の構成に限るものではなく、ブレーキペダル6の操作に応じて液圧を発生する機構、例えば、ブレーキバイワイヤ方式の機構等であってもよい。
第2のECU16は、制御装置28の一部を構成し、運転者がブレーキペダル6に基づく制動力を車両に与えるために、制動アクチュエータとしてのESC14を制御する。第2のECU16は、ESC14を電気的に駆動制御する制動アクチュエータ制御装置としての液圧供給装置用コントロールユニットを構成している。第2のECU16は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。第2のECU16の入力側は、液圧センサ17、車両データバス12、および、通信線13に接続されている。第2のECU16の出力側は、各制御弁、電動モータ14A、車両データバス12、および、通信線13に接続されている。
第2のECU16は、ESC14の各制御弁、電動モータ14A等を個別に駆動制御する。これにより、第2のECU16は、ブレーキ側配管部15A,15B,15C,15Dからホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに供給するブレーキ液圧を減圧、保持、増圧または加圧する制御を、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5R毎に個別に行う。これにより、種々のブレーキ制御、例えば、倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロック制御(ABS制御)、トラクション制御、車両安定化制御(横滑り防止を含む)、坂道発進補助制御、自動運転制御等が実行される。
なお、第2のECU16は、自動減速判定装置26から出力される自動ブレーキ用の制動指令信号Sab(制動指令値)に応じて、ESC14を制御してもよい。即ち、第2のECU16は、制動指令値に従って電動モータ14A等を駆動し、ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに供給するブレーキ液圧を可変に制御してもよい。
液圧センサ17は、例えばシリンダ側液圧配管10Aに設けられている。液圧センサ17は、マスタシリンダ9で発生する圧力(ブレーキ液圧)、より具体的には、シリンダ側液圧配管10A内の液圧を検出する。液圧センサ17は、第2のECU16に電気的に接続されると共に、液圧センサ17による検出信号は、第2のECU16から通信線13を介して第1のECU11に送信することができる。なお、図1では、液圧センサ17は、第2のECU16だけに接続されているが、第1のECU11にも接続される構成としてもよい。即ち、液圧センサ17は、第1のECU11と第2のECU16とに接続する構成としてもよい。
電動駐車ブレーキ18L,18Rは、後輪側ホイールシリンダ5L,5Rにそれぞれ設けられている。電動駐車ブレーキ18L,18Rは、車両を停車維持させるための第2の制動アクチュエータを構成している。電動駐車ブレーキ18L,18Rは、動力源となる電動モータ19と、電動モータ19の駆動力に基づいて制動力を発生させる駐車ブレーキ機構20(以下、PKB20という)とを備えている。PKB20は、例えば、電動モータ19の回転動作を直線動作に変換する直動機構を含んで構成される。電動駐車ブレーキ18L,18Rは、第3のECU21からの作動信号Spkbに基づいて電動モータ19が回転駆動し、PKB20を動作させる。これにより、電動駐車ブレーキ18L,18Rは、制動力の発生、保持または解除をすることができる。
第3のECU21は、電動駐車ブレーキ18L,18R(電動モータ19)を電気的に駆動制御する電動PKB制御装置としての電動駐車ブレーキ用コントロールユニットを構成している。第3のECU21は、制御装置28の一部を構成し、自動ブレーキ制御装置27と協働して、車両が停車したときに停車を維持する制動力に切り換える。
第3のECU21は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。第3のECU21の入力側は、駐車ブレーキスイッチ22および車両データバス12等に接続されている。第3のECU21の出力側は、電動モータ19および車両データバス12等に接続されている。
第3のECU21は、駐車ブレーキスイッチ22の操作に応じて電動モータ19に電流(作動信号Spkb)を供給して電動駐車ブレーキ18L,18Rを制御する。これにより、第3のECU21は、電動駐車ブレーキ18L,18Rを制動状態または制動解除状態に切り換える。第3のECU21は、駐車ブレーキスイッチ22からの信号を車両データバス12に出力する。また、自動減速判定装置26からの制動指令信号Sabに基づいて自動ブレーキが付与されて、自動ブレーキ制御装置27が車両の停止を検出したときも、第3のECU21は、電動駐車ブレーキ18L,18Rに作動信号Spkbを出力する。
車輪速センサ23は、車両の速度を検出する車両速度検出手段を構成している。車輪速センサ23は、例えば前輪2L,2Rと後輪3L,3Rとにそれぞれ近接して設けられ、各車輪の回転速度を車速として検出する。車輪速センサ23は、例えば車両データバス12等を介して自動ブレーキ制御装置27に接続されている。車輪速センサ23は、速度検出値(車輪速V)に応じた検出信号を自動ブレーキ制御装置27に出力する。なお、車両速度検出手段は、車輪速センサ23に限らず、車両の速度を検出する車速センサでもよい。
前後加速度センサ24は、車両加速度検出手段を構成し、車両の前後方向の加速度(前後加速度)または減速度(前後減速度Db)を検出する。前後加速度センサ24は、車体1に設けられ、例えば車両データバス12等を介して自動ブレーキ制御装置27に接続されている。前後加速度センサ24は、減速度検出値(前後減速度Db)に応じた検出信号を自動ブレーキ制御装置27に出力する。なお、車両加速度検出手段は、前後加速度センサ24に限らず、車両の前後方向の加速度を直接的または間接的に検出できるものが適用可能である。
先行車検知装置25は、車両の先行車を検知する先行車検知手段を構成している。このため、先行車検知装置25は、例えば他の車両等の先行車が自車の前方(進行方向の前側)に存在したときに、この先行車を検知する。先行車検知装置25は、自動減速判定装置26に接続されている。先行車検知装置25は、例えば、ステレオカメラ、シングルカメラ等のカメラ(例えば、デジタルカメラ)、および/または、レーザレーダ、赤外線レーダ、ミリ波レーダ等のレーダ(例えば、半導体レーザ等の発光素子およびそれを受光する受光素子)によって構成されている。先行車検知装置25は、先行車を検出したときに、この検出結果に応じた信号を出力する。
自動減速判定装置26は、先行車検知装置25によって車両の減速または停止を判定する。自動減速判定装置26の入力側は、先行車検知装置25に接続されている。自動減速判定装置26の出力側は、自動ブレーキ制御装置27に接続されている。
自動減速判定装置26は、先行車検知装置25の検出結果(情報)に基づいて、車両の減速または停止が必要か否かを判定する。具体的には、自動減速判定装置26は、先行車検知装置25の検出結果に基づいて、例えば、前方の物体との距離等を算出すると共に、この距離と現在の車両の走行速度等に基づいて、付与すべき制動力に対応する制動指令値を算出する。自動減速判定装置26は、算出された制動指令値を制動指令信号Sabとして、自動ブレーキ制御装置27に出力する。
自動ブレーキ制御装置27は、制御装置28の一部を構成し、自動減速判定装置26からの制動指令信号Sabに基づいて、制動アクチュエータとしての電動倍力装置8、ESC14、電動駐車ブレーキ18L,18R等を制御する。自動ブレーキ制御装置27は、第1,第2,第3のECU11,16,21と同様にマイクロコンピュータを含んで構成され、図3に示す自動ブレーキ制御処理のプログラムを実行する。
自動ブレーキ制御装置27の入力側は、車輪速センサ23、前後加速度センサ24、自動減速判定装置26に接続されている。自動ブレーキ制御装置27の出力側は、例えば車両データバス12等を介してECU11,16,21に接続されている。
自動ブレーキ制御装置27は、自動減速判定装置26からの制動指令信号Sabに基づいて、電動倍力装置8を制御する。具体的には、自動ブレーキ制御装置27は、制動指令信号Sabに基づく制動力を車両に与えるために、車両を制動するための目標となる減速度が示される制動指令信号Sabを第1のECU11に出力する。
このとき、第1のECU11は、車両データバス12を介して自動減速判定装置26からの制動指令信号Sabを取得すると、この取得した制動指令信号Sabに基づいて、電動倍力装置8の電動モータ8Aを駆動する。即ち、第1のECU11は、制動指令信号Sabに基づいて、マスタシリンダ9内に液圧を発生させ、各ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rを加圧することにより、車輪2L,2R,3L,3Rに制動力を付与する(自動ブレーキを付与する)。
なお、実施形態では、自動減速判定装置26で算出された制動指令信号Sabを第1のECU11で取得し、第1のECU11により電動倍力装置8を制御することにより、自動ブレーキを付与する構成としている。本発明はこれに限らず、自動減速判定装置26で算出された制動指令信号Sabを、第2のECU16で取得し、第2のECU16によりESC14を制御することにより、車輪2L,2R,3L,3Rに制動力を付与する(自動ブレーキを付与する)構成としてもよい。
また、自動ブレーキ制御装置27は、車輪速センサ23と前後加速度センサ24に接続され、車輪速センサ23および前後加速度センサ24の検出信号に基づいて、車両が停止していることを検出する。自動ブレーキ制御装置27は、車両が停車していることを検出したときには、停車を維持する制動力を車両に与えるように、電動倍力装置8、ESC14、電動駐車ブレーキ18L,18R等を制御する。
具体的には、自動ブレーキ制御装置27は、車両が停車していることを検出したときには、停車を維持する制動力を車両に与えるように、ECU11,16,21に指令を出力する。これにより、例えば第1,第2のECU11,16は、電動倍力装置8、ESC14によってホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rのブレーキ液圧を制御し、予め決められた停車保持用の制動力を車両に与える。
また、第3のECU21は、電動駐車ブレーキ18L,18Rを作動させるための作動信号Spkbを出力する。これにより、電動駐車ブレーキ18L,18Rの電動モータ19は作動信号Spkbに基づいて駆動し、電動駐車ブレーキ18L,18Rは制動解除状態から制動状態に切り換わる。
なお、停車保持用の制動力は、電動倍力装置8、ESC14と、電動駐車ブレーキ18L,18Rとの両方で発生させる構成としてもよく、いずれか一方だけで発生させる構成としてもよい。
本実施形態によるブレーキ制御装置およびブレーキシステムは上述のような構成を有するもので、次に、自動ブレーキ制御装置27による自動ブレーキ制御処理について、図3を参照しつつ説明する。なお、図3の処理は、自動ブレーキ制御装置27に通電している間、所定時間毎に(所定の制御周期で)繰り返し実行される。
図3の処理動作がスタートすると、自動ブレーキ制御装置27は、S1で、車輪速センサ23からの検出信号に基づいて、車輪速V(車速)が0(零)であるか否かを判定する。S1で「YES」、即ち車輪速Vが0であると判定された場合は、車両は極低速での移動状態(極低速状態)または停車状態であると考えられるため、S2に進む。一方、S1で「NO」、即ち車輪速Vが0でないと判定された場合は、車両は走行状態であると考えられるため、S5に進む。
S2では、自車位置での路面の勾配加速度Asを検出する。具体的には、自動ブレーキ制御装置27は、制動指令信号Sabに応じた目標減速度Da(減速度目標値)と、前後加速度センサ24によって検出した前後減速度Db(減速度検出値)との差分によって、勾配加速度Asを算出する(As=Da−Db)。
なお、車両が段差地点に移動したときや車両が停車したときには、前後加速度(前後減速度Db)に振れが生じて、勾配加速度Asが正しく算出されない可能性がある。このような問題を回避するために、例えば目標減速度Daの変化量に対して、前後加速度センサ24による前後減速度Dbの変化量が閾値以内である場合に限って、勾配加速度Asを算出してもよい。
S3では、自車両が減速中か否かを判定する。具体的には、自動ブレーキ制御装置27は、目標減速度Daと勾配加速度Asとを比較する。このとき、目標減速度Daが勾配加速度Asを上回っていれば、降板路においても、自車両は減速していると考えられる。このため、目標減速度Daが勾配加速度Asを上回っている場合(Da>As)は、S3で「YES」と判定し、S4に進む。一方、目標減速度Daが勾配加速度As以下である場合(Da≦As)は、車両は等速度運動または加速度運動を行っているものと考えられる。このため、S3で「NO」と判定し、S5に進む。
S4では、前後加速度センサ24によって検出した前後減速度Db(減速度検出値)が閾値となる所定値DT以下であるか否かを判定する。例えば前後減速度Dbが勾配加速度Asに対応した値になる(Db=−As)と、車両は停止状態になると考えられる。このため、自動ブレーキ制御装置27は、前後減速度Dbが勾配加速度Asに応じた所定値DT以下であるか否かを判定する。所定値DTは、例えば勾配加速度Asに応じた減速度(−As)に所定幅ΔDの半分を加算したもの(DT=−As+ΔD/2)が相当する。なお、所定幅ΔDは一定値である必要はなく、状況に応じて適宜変化させてもよい。このため、所定値DTは、上述したものに限らず、勾配加速度Asに基づいて適宜設定される。
但し、車両が停止した直後は、車両が振動して、前後減速度Dbに減衰振動が生じる。また、例えば極低速で走行している車両が下り坂にさしかかったときには、前後減速度Dbが一時的に所定値DTよりも低下することがある。このように、前後減速度Dbに一時的な変動が生じたときでも、車両の停車を適切に判定し、誤判定を抑制するのが好ましい。そこで、自動ブレーキ制御装置27は、前後減速度Dbの振れ幅(変化幅)が所定幅ΔD以内である状態が一定時間T0継続したときに、前後減速度Dbが所定値DT以下になったものと判定する。
このとき、所定幅ΔDは、例えば前後加速度センサ24からの検出信号に誤差が生じる範囲の値に設定してもよい。また、継続性を判定する時間T0は、車両の停止状態を十分に把握できる値である。このため、継続性を判定する時間T0は、予め決められた一定時間に限らず、変化させてもよい。例えば、車輪速V(車速)が検出不能となる直前の車輪速または車速と前後減速度Dbとに基づいて車両が停止するまでの制動時間を推定し、この制動時間の推定結果に基づいて、継続性を判定する時間を短縮または延長してもよい。
なお、例えばローパスフィルタ等によって前後減速度Dbの急激な変化分や振動分を除去できるのであれば、自動ブレーキ制御装置27は、前後加速度センサ24によって検出した前後減速度Dbが所定値DT以下であるか否かを、そのまま判定してもよい。
S4で「YES」と判定したときには、車両は停車していると考えられるから、S6に進む。S6では、停車保持制御をオンにする。これにより、自動ブレーキ制御装置27は、自車両が停車を維持する制動力を車両に与えるように、ECU11,16,21に指令を出力する。
このとき、第1のECU11は、電動倍力装置8を駆動して、マスタシリンダ9内に液圧を発生させる。これにより、各ホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rを加圧することにより、車輪2L,2R,3L,3Rに制動力を付与する。この場合、自動ブレーキ制御装置27は、第1のECU11に代えて第2のECU16に指令を出力し、自車両が停車を維持する制動力を車両に与えるように、ESC14を制御してもよい。また、第3のECU21は、作動信号Spkbを出力して、電動駐車ブレーキ18L,18Rを駆動させ、車輪2L,2R,3L,3Rに停車保持用の制動力を付与する。
一方、S1,S3,S4で「NO」と判定したときには、車両は走行中または極低速で移動していると考えられるから、S5に進む。S5では、停車保持制御をオフにする。このとき、第1,第2のECU11,16は、目標減速度Daに基づく制動力が車両に付与されるように、電動倍力装置8、ESC14を制御する。第3のECU21は作動信号Spkbの出力を停止し、電動駐車ブレーキ18L,18Rを制動解除状態にする。
このような本実施形態による自動ブレーキの動作について、図4ないし図6を参照して説明する。
図4は、平坦路面での特性を示している。先行車検知装置25によって先行車の停止を検知すると、自動減速判定装置26は、車両を停止させるために制動指令信号Sabを出力する。このとき、自動ブレーキ制御装置27およびECU11,16は、制動指令信号Sabに応じた目標減速度Daが得られるように、電動倍力装置8およびESC14を駆動させる。これにより、電動倍力装置8およびESC14は、目標減速度Daに応じた制動力を車両に付与する。この制動力によって、車速は徐々に低下する。
車輪速センサ23によって車輪速Vが0と検出される極低速になる時点t01では、自動ブレーキ制御装置27は、自車位置の路面による勾配加速度Asを検出する。このとき、平坦路面では、目標減速度Daと前後減速度Dbとがぼぼ同じ値になるから、目標減速度Daと前後減速度Dbとの差分によって算出される勾配加速度As(As=Da−Db)は、ほぼ0となる(As≒0)。このため、目標減速度Daが勾配加速度Asを上回る(Da>As)から、車両は減速中であると判定される。この状態で、自動ブレーキ制御装置27は、前後減速度Dbが所定値DT以下であるか否かを判定する。
時点t01以降も継続して制動力が付与されるから、時点t02で、実際の車両はほぼ停車状態になり、前後減速度Dbが所定値DT以下になる(Db≦DT)。このとき、前後減速度Dbは、0付近で振動することになり、前後減速度Dbの振れ幅は徐々に減少する。時点t03で前後減速度Dbの振れ幅が所定幅ΔD以内になるから、自動ブレーキ制御装置27は、この状態が一定時間T0継続するまで待機する。時点t04で一定時間T0が経過したから、自動ブレーキ制御装置27は、車両の停止状態を検出し、停車保持の処理を実行する。具体的には、電動倍力装置8およびESC14によって停車保持用の制動力を発生させる、または、電動駐車ブレーキ18L,18Rによって停車保持用の制動力を発生させる。これにより、時点t01から時間差Δt0が経過した時点t04で、車両は停車が保持された状態になる。
図5は、上り勾配路面での特性を示している。平坦路面と同様に、先行車検知装置25によって先行車の停止を検知すると、自動減速判定装置26は、車両を停止させるために制動指令信号Sabを出力する。このとき、平坦路面の場合と同様に、電動倍力装置8およびESC14は、目標減速度Daに応じた制動力を車両に付与する。この制動力によって、車速は徐々に低下する。但し、上り勾配路面では、勾配加速度Asが車両を減速させる方向に作用する。このため、平坦路面に比べて早い時点t11で車両は極低速になり、車輪速センサ23は車輪速Vが0であると検出する。
このとき、自動ブレーキ制御装置27は、自車位置の路面による勾配加速度Asを検出する。上り勾配路面では、車両に対して減速方向の勾配加速度Asが作用する。このため、目標減速度Daよりも前後減速度Dbが大きくなる(Da<Db)から、目標減速度Daと前後減速度Dbとの差分によって算出される勾配加速度Asは、減速側を示す負側の値(As<0)になる。これにより、目標減速度Daは減速方向の勾配加速度Asを上回る(Da>As)から、車両は減速中であると判定される。この状態で、自動ブレーキ制御装置27は、前後減速度Dbが所定値DT以下であるか否かを判定する。
時点t11以降も継続して制動力が付与されるから、時点t12で、実際の車両はほぼ停車状態になる。これにより、前後減速度Dbは、勾配加速度Asに応じた値(−As)付近まで低下し、所定値DT以下になる(Db≦DT)。このとき、前後減速度Dbは、勾配加速度Asに応じた値(−As)付近で振動することになり、前後減速度Dbの振れ幅は徐々に減少する。時点t13で前後減速度Dbの振れ幅が所定幅ΔD以内になるから、自動ブレーキ制御装置27は、この状態が一定時間T0継続するまで待機する。時点t14で一定時間T0が経過したから、自動ブレーキ制御装置27は、車両の停止状態を検出し、停車保持の処理を実行する。このとき、上り勾配路面では、時点t14と時点t11との間の時間差Δt1は、平坦路面での時間差Δt0よりも短くなる。
図6は、下り勾配路面での特性を示している。平坦路面と同様に、先行車検知装置25によって先行車の停止を検知すると、自動減速判定装置26は、車両を停止させるために制動指令信号Sabを出力する。このとき、平坦路面の場合と同様に、電動倍力装置8およびESC14は、目標減速度Daに応じた制動力を車両に付与する。この制動力によって、車速は徐々に低下する。但し、下り勾配路面では、勾配加速度Asが車両を加速させる方向に作用する。このため、平坦路面に比べて遅い時点t21で車両は極低速になり、車輪速センサ23は車輪速Vが0であると検出する。
このとき、自動ブレーキ制御装置27は、自車位置の路面による勾配加速度Asを検出する。下り勾配路面では、車両に対して加速方向の勾配加速度Asが作用する。このため、目標減速度Daよりも前後減速度Dbが小さくなる(Da>Db)から、目標減速度Daと前後減速度Dbとの差分によって算出される勾配加速度Asは、加速側を示す正側の値(As>0)になる。このとき、目標減速度Daが減速方向の勾配加速度Asを上回る(Da>As)と、勾配加速度Asよりも大きな制動力が作用するから、車両は減速中であると判定される。この状態で、自動ブレーキ制御装置27は、前後減速度Dbが所定値DT以下であるか否かを判定する。
時点t21以降も継続して制動力が付与されるから、時点t22で、実際の車両はほぼ停車状態になる。これにより、前後減速度Dbは、勾配加速度Asに応じた値(−As)付近まで低下し、所定値DT以下になる(Db≦DT)。このとき、前後減速度Dbは、勾配加速度Asに応じた値(−As)付近で振動することになり、前後減速度Dbの振れ幅は徐々に減少する。時点t23で前後減速度Dbの振れ幅が所定幅ΔD以内になるから、自動ブレーキ制御装置27は、この状態が一定時間T0継続するまで待機する。時点t24で一定時間T0が経過したから、自動ブレーキ制御装置27は、車両の停止状態を検出し、停車保持の処理を実行する。このとき、下り勾配路面では、時点t24と時点t21との間の時間差Δt2は、平坦路面での時間差Δt0よりも長くなる。
かくして、本実施形態では、自動ブレーキ制御装置27は、車輪速センサ23による速度検出値(車輪速V)が0である状態で、前後加速度センサ24による減速度検出値(前後減速度Db)と制動指令信号Sabによる減速度目標値(目標減速度Da)とから車両が路面から受ける勾配加速度Asを算出し、この勾配加速度Asによる車両の走行トルクが減速度目標値(目標減速度Da)に基づく制動トルクよりも小さく、かつ、前後加速度センサ24による減速度検出値(前後減速度Db)が所定値DT以下の場合に、車両が停車していることを検出する。このため、運転者の制動操作に基づくことなく、自動減速判定装置26からの制動指令信号Sabに基づくときでも、自車両の停車を判定することができる。
また、自動ブレーキ制御装置27は、車輪速センサ23による車輪速Vが0である状態であっても、勾配加速度Asと前後減速度Dbが所定の条件を満たすときに、車両が停車していることを判定する。このため、車輪速センサ23が車両の走行を検出できない極低速の状態でも、自車両の停車を判定することができる。
これに加え、自動ブレーキ制御装置27は、路面勾配により発生する勾配加速度Asを検出し、この勾配加速度Asに基づいて車両が減速しているか否かを判定する。このため、勾配路で車両が加速しているときに誤って車両の停車を判定することがなく、路面の勾配に基づく誤判定を防止することができる。
また、自動ブレーキ制御装置27は、前後加速度センサ24による前後減速度Db(減速度検出値)の振れ幅(変化幅)が所定幅ΔD以下の状態が所定時間T0継続したときに、前後加速度センサ24による前後減速度Dbが所定値DT以下の場合であると判定する。これにより、例えば車両の停車直後に車両に振動が生じるときでも、このような振動が十分に減衰したときに、車両の停車を判定することができる。このため、前後減速度Dbの振動に伴う停車の誤判定を、抑制することができる。
さらに、自動ブレーキ制御装置27は、車両が停車していることを検出したときには、停車を維持する制動力を車両に与えるように、電動倍力装置8、ESC14や電動駐車ブレーキ18L,18Rを制御する。このとき、車両が勾配路にある状態でも、実際に車両が停車したときに、停車保持用の制動力を発生させることができる。このため、走行から停車させるまでの制動力から停車保持用の制動力に切り換えるまでの時間が長くなったり、短くなったりすることがなく、円滑な停車維持制御を実現することができる。
これに加えて、例えば上り勾配の路面のように、車両が早期に停車したときでも、速やかに停車保持用の制動力に切り換えることができる。これにより、必要以上に大きな制動力を発生させることがなく、消費電力の低減や発熱の抑制を図ることができる。
さらに、例えば、車両が停車していることを検出したときには、停車を維持する制動力を車両に与えるように、第3のECU21は作動信号Spkbを出力する。これにより、電動駐車ブレーキ18L,18Rは、停車保持用の制動力を発生させる。この場合、電動駐車ブレーキ18L,18Rは、停車を保持している間は、電力を消費しない。このため、円滑な制動力の切り換えによって、車両に停車保持用の制動力を与えることができると共に、その停車状態を維持する間の電力削減および発熱を防止することができる。
なお、前記実施形態では、液圧式のディスクブレーキやドラムブレーキからなるホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに適用した場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えば液圧の供給が不要の電動式ディスクブレーキにより構成してもよい。
前記実施形態では、車両に制動力を与えるための力を発生する第1の制動アクチュエータとして、電動倍力装置8およびESC14の両方を備えた場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えば自動ブレーキによる制動力をESC14によって発生させる場合には、電動倍力装置8に代えて気圧式の倍力装置を用いてもよい。また、ESC14を省いて、電動倍力装置8によるブレーキ液圧をホイールシリンダ4L,4R,5L,5Rに供給してもよい。
前記実施形態では、車両を停車維持させるための第2の制動アクチュエータとして、電動駐車ブレーキ18L,18Rを例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばオートマティックトランスミッション車両では、パーキングレンジで動作するパーキングロックポールによって第2の制動アクチュエータを構成してもよい。
前記実施形態では、後輪側に電動駐車ブレーキ18L,18Rを設けるものとしたが、前輪側に設けてもよく、全ての車輪(4輪全て)に設けてもよい。電動駐車ブレーキ18L,18Rは、ホイールシリンダ5L,5Rに設けるものとしたが、車輪に制動力が付与できればよく、例えば車軸等に設けてもよい。
前記実施形態では、第1ないし第3のECU11,16,21および自動ブレーキ制御装置27によって、制動アクチュエータを制御する制御装置28を構成するものとした。本発明はこれに限らず、例えば第1ないし第3のECU11,16,21のうち少なくともいずれか1つが自動ブレーキ制御装置27による自動ブレーキの制御機能を備える場合には、自動ブレーキ制御装置27を省いて制御装置を構成してもよい。このように、制御装置の具体的な構成は、ブレーキシステムの構成に応じて適宜変更することができる。
前記実施形態は、例示であり、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
次に、上記の実施形態に含まれる概念について記載する。本実施形態のブレーキ制御装置では、制御装置は、車両速度検出手段からの速度検出値に基づいて車両速度を0と判定した状態で、車両加速度検出手段による減速度検出値と制動指令信号による減速度目標値とから車両が路面から受ける勾配加速度を算出し、該勾配加速度による前記車両の走行トルクが前記減速度目標値に基づく制動トルクよりも小さく、かつ、前記車両加速度検出手段による減速度検出値が所定値以下の場合に、前記車両が停車していることを検出する。
このため、運転者の制動操作に基づくことなく、自動減速判定装置からの制動指令信号に基づくときでも、自車両の停車を的確に判定することができる。また、制御装置は、車両速度検出手段による速度検出値が0である状態で、勾配加速度と減速度検出値が所定の条件を満たすときに、車両が停車していると判定する。このため、車両速度検出手段が車両の走行を検出できない極低速の状態でも、自車両の停車を判定することができる。さらに、制御装置は、路面勾配により発生する勾配加速度を検出し、この勾配加速度に基づいて車両が減速しているか否かを判定する。このため、勾配路で車両が加速しているときに誤って車両の停車を判定することがなく、路面の勾配に基づく誤判定を防止することができる。
本実施形態のブレーキ制御装置では、前記制御装置は、前記車両加速度検出手段による減速度検出値の変化幅が前記所定値以下の状態が所定時間継続したときに、前記車両加速度検出手段による減速度検出値が前記所定値以下の場合であると判定する。これにより、車両の停車直後に車両に振動が生じるときでも、このような振動が十分に減衰したときに、車両の停車を判定することができる。このため、減速度検出値の振動に伴う停車の誤判定を、抑制することができる。
実施形態のブレーキ制御装置では、前記制御装置は、前記車両速度検出手段からの速度検出値に基づいて車両速度を0と判定した状態で、前記車両加速度検出手段による減速度検出値と前記制動指令信号による減速度目標値とから前記車両が路面から受ける勾配加速度を算出し、該勾配加速度による前記車両の走行トルクが前記減速度目標値に基づく制動トルクよりも小さく、かつ、前記車両加速度検出手段による減速度検出値が所定値以下の場合に、前記車両が停車していることを検出して前記停車を維持する制動力を前記車両に与えるように前記制動アクチュエータを制御する。
このとき、車両が勾配路にある状態でも、実際に車両が停車したときに、停車保持用の制動力を発生させることができる。このため、走行中の制動力から停車保持用の制動力に切り換えるまでの時間が長くなったり、短くなったりすることがなく、円滑な停車維持制御を実現することができる。これに加えて、例えば上り勾配の路面のように、車両が早期に停車したときでも、速やかに停車保持用の制動力に切り換えることができる。これにより、必要以上に大きな制動力を発生させることがなく、消費電力の低減や発熱の抑制を図ることができる。
本実施形態のブレーキシステムでは、前記制御装置は、前記第1の制動アクチュエータによる車両の制動中に前記車両速度検出手段からの速度検出値に基づいて車両速度を0と判定した状態で、前記車両加速度検出手段による減速度検出値と前記制動指令信号による減速度目標値とから前記車両が路面から受ける勾配加速度を算出し、該勾配加速度による前記車両の走行トルクが前記減速度目標値に基づく制動トルクよりも小さく、かつ、前記車両加速度検出手段による減速度検出値が所定値以下の場合に、前記車両が停車していることを検出して前記第2の制動アクチュエータに前記作動信号を出力する。
即ち、制御装置は、車両が停車していることを検出したときに、停車を維持する制動力を車両に与えるように、作動信号を出力する。これにより、第2の制動アクチュエータは、停車保持用の制動力を発生させる。この場合、第2の制動アクチュエータとして駐車ブレーキやミッションパーキングロックを用いたときには、停車を保持している間は、電力を消費しない。このため、円滑な制動力の切り換えによって、車両に停車保持用の制動力を与えることができると共に、その停車状態を維持する間の電力削減および発熱を防止することができる。