JP6530000B2 - クラッチ構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸と、円筒状部材と、これらの間に介在するクラッチ部とを備えるクラッチ構造体に関する。
従来、回転自在に設けられた回転軸と、該回転軸の外側において同一軸線上で回転自在に配置された円筒状部材と、この円筒状部材に対する回転軸の相対回転を許容する切断状態と該相対回転を阻止する接続状態とを切り換えるクラッチ部とを備えるクラッチ構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1のクラッチ構造体におけるクラッチ部は、回転軸としての入力軸の外周に、軸線方向に摺動し得るように設けられたクラッチピストンと、作動油が供給される油室をクラッチピストンとの間で構成するように、環状の環状内縁部が入力軸の外周に固定されたクラッチカバーとを備える。
従来、このような回転軸に対するクラッチカバーの固定方法として、クラッチカバーの環状の環状内縁部を回転軸の外周に嵌合させるとともに、回転軸の外周に設けられた環状クリップ溝にサークリップ(「止め輪」とも呼ばれる)を取り付けることによって固定する方法が知られている。この場合、油室を密閉するために、回転軸とクラッチカバーとの間が、Oリングによってシールされる。
特開2014−181744号公報
しかしながら、上記特許文献1のクラッチ構造体によれば、その駆動に伴ってピストンカバーと回転軸との間で相対的な回転が生じる場合がある。この相対的な回転によりOリングが磨耗し、その機能が劣化するおそれがある。
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、クラッチ構造体において、ピストンカバーと回転軸との相対回転によるOリングなどのシール部材の磨耗を防止することにある。
第1発明に係るクラッチ構造体(例えば、実施形態のクラッチ構造体1。以下同一。)は、
回転自在に支持された回転軸(例えば、実施形態の回転軸2。以下同一。)と、
前記回転軸の外側において同一軸線上で回転自在に配置された円筒状部材(例えば、実施形態のアウタードラム3。以下同一。)と、
前記回転軸に対する前記円筒状部材の相対回転を許容する切断状態と該相対回転を阻止する接続状態とを切り換えるクラッチ部(例えば、実施形態のクラッチ部4。以下同一。)とを備えるクラッチ構造体であって、
前記クラッチ部は、
前記回転軸の外周に、軸線方向に摺動し得るように設けられたクラッチピストン(例えば、実施形態のクラッチピストン5。以下同一。)と、
前記クラッチピストンを作動させるための作動油が供給される油室(例えば、実施形態の油室7。以下同一。)を前記クラッチピストンとの間で構成するように前記回転軸の外周に固定されたクラッチカバー(例えば、実施形態のクラッチカバー6。以下同一。)と、
前記回転軸と前記クラッチカバーとの間を密封するシール部材(例えば、実施形態のOリング8b。以下同一。)とを備え、
前記クラッチカバーは、
前記回転軸の外周に対して軸線方向に沿った嵌合方向に嵌合される環状内縁部(例えば、実施形態の環状内縁部12。以下同一。)と、
前記環状内縁部の前記嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がった環状のカバー側当接面(例えば、実施形態のカバー側当接面13。以下同一。)とを有し、
前記回転軸は、
前記クラッチカバーの環状内縁部が外側に嵌合される外周嵌合面(例えば、実施形態の外周嵌合面14。以下同一。)と、
前記外周嵌合面の前記嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がって前記カバー側当接面に当接する軸側当接面(例えば、実施形態の軸側当接面15。以下同一。)と、
前記外周嵌合面に嵌合しかつ前記軸側当接面に当接した前記クラッチカバーの環状内縁部を該軸側当接面と反対側から押さえて固定するサークリップ(例えば、実施形態のサークリップ16。以下同一。)が取り付けられる環状クリップ溝(例えば、実施形態の環状クリップ溝17。以下同一。)と、
前記外周嵌合面に、軸線方向に沿って設けられた係合溝(例えば、実施形態の係合溝18。以下同一。)とを備え、
前記クラッチカバーは、さらに、該クラッチカバーが前記回転軸に対して回転するのを阻止するように、前記環状内縁部の内周面から径方向内方に突出して前記係合溝に係合する係合凸部(例えば、実施形態の係合凸部19。以下同一。)を備え、
前記円筒状部材の相対回転を許容する切断状態において、前記クラッチカバーと前記クラッチピストンが軸方向で当接可能であることを特徴とする。
第1発明において、従来は、クラッチカバーの係合凸部及びこれに係合する回転軸の係合溝を有していないため、クラッチカバーが回転軸に対して回転する場合がある。この場合、クラッチカバーと回転軸との間のシール部材が磨耗し、その機能が劣化するおそれがある。また、サークリップの合口部分の段差や捩れにより、サークリップとこれを収容した環状クリップ溝との間の接触面圧に不均一が生じて応力が環状クリップ溝の一部に集中し、環状クリップ溝に疲労破損が発生するおそれがある。
この点、第1発明によれば、クラッチカバーの係合凸部が回転軸の係合溝に係合して回転軸とクラッチカバーとの相対回転が阻止されるので、上記のシール部材の磨耗や環状クリップ溝の疲労破損を防止することができる。
第2発明に係るクラッチ構造体は、第1発明において、
前記クラッチカバーの環状内縁部には、前記係合凸部が存在する周方向の範囲において、前記サークリップが該クラッチカバーに接触するのを回避する凹部(例えば、実施形態の凹部20。以下同一。)が設けられることを特徴とする。
第2発明において、ピストンカバーからの軸線方向の荷重は、回転軸の環状クリップ溝のクラッチカバーと反対側の内壁に負荷される。そして、この荷重の負荷は、該内壁が回転軸の係合溝の部分において欠けているので、係合溝の近傍により多く集中する。さらに、この荷重の負荷の片寄りは、サークリップの合口部分と係合溝との位置関係によっても変化し、合口部分が係合溝に近い場合には、係合溝の近傍にさらに多くの負荷が集中する。
この点、第2発明によれば、上述のサークリップがクラッチカバーに接触するのを回避する凹部を、係合溝と係合するクラッチカバーの係合凸部が存在する周方向の範囲に設けたので、この範囲においては、クラッチカバーからの荷重が環状クリップ溝の側壁に直接的に負荷されることなはない。
これにより、環状クリップ溝の係合溝近傍における応力の集中を緩和し、環状クリップ溝の疲労破損を防止することができる。また、その分、環状クリップ溝の底の径を縮小して深さを増加させることもできる。これにより、サークリップの掛かり代を増加させることができるので、サークリップの径及び幅を低減させ、クラッチ構造体のコンパクト化を図ることができる。
本発明の一実施形態に係るクラッチ構造体の要部の断面図である。 図1のクラッチカバーが取り付けられた回転軸の部分の斜視図である。 図1のクラッチ構造体のクラッチカバーを軸線方向外側から見た様子を示す正面図である。 図3のクラッチカバーの要部の斜視図である。 従来の問題点を説明するための説明図である。 従来のさらなる問題点を説明するため説明図である。 本発明の効果を説明するための説明図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、実施形態のクラッチ構造体1は、例えば、自動車に搭載された変速機に用いられるものであり、回転自在に支持された回転軸2と、回転軸2の外側において同一軸線上で回転自在に配置された円筒状部材としてのアウタードラム3と、回転軸2とアウタードラム3との間に介在するクラッチ部4とを有する。
クラッチ部4は、アウタードラム3に対する回転軸2の相対回転を許容する切断状態と該相対回転を阻止する接続状態とを切り換える。アウタードラム3と回転軸2との相対回転を阻止するということは、アウタードラム3及び回転軸2の回転を同期させることを意味する。
クラッチ部4は、回転軸2の外周に、軸線方向に摺動し得るように設けられたクラッチピストン5と、回転軸2の外周に固定されたクラッチカバー6とを備える。クラッチカバー6は、クラッチピストン5を作動させるための作動油が供給される油室7をクラッチピストン5との間で構成する。油室7を構成するために、回転軸2とクラッチカバー6との間には、シール部材としてのOリング8a及び8bが設けられる。
アウタードラム3の内側には、アウタードラム3と相対回転自在に同心配置されるように回転軸2に固定されたインナーハブ9と、アウタードラム3の内周面に一体的に回転するように複数配置されるアウターディスク10と、インナーハブ9の外周面に一体的に回転するように複数配置されるインナープレート11と、アウターディスク10を押圧して、アウターディスク10とインナープレート11との間で摩擦力を発生させて、アウタードラム3とインナーハブ9との回転を同期させる上述のクラッチピストン5とを備える。
クラッチカバー6は、回転軸2の外周に対して軸線方向に沿った嵌合方向に嵌合される環状内縁部12と、環状内縁部12の嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がった環状のカバー側当接面13とを有する。
回転軸2は、クラッチカバー6の環状内縁部12が外側に嵌合される環状の外周嵌合面14と、外周嵌合面14の嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がってカバー側当接面13に当接する軸側当接面15と、クラッチカバー6を回転軸2に固定するサークリップ16が取り付けられる環状クリップ溝17と、外周嵌合面14に軸線方向に沿って設けられた係合溝18とを備える。
サークリップ16は、外周嵌合面14に嵌合しかつ軸側当接面15に当接したクラッチカバー6の環状内縁部12を、外周嵌合面14及び軸側当接面15に対して軸側当接面15と反対側から押さえて固定する。
図3は、クラッチカバー6を軸線方向外側から見た様子を示しており、図4はその要部を示す斜視図である。図3及び図4に示すように、クラッチカバー6は、さらに、環状内縁部12の内周面から径方向内方に突出して係合溝18に係合することにより、クラッチカバー6が回転軸2に対して回転するのを阻止する係合凸部19を備える。
クラッチカバー6の環状内縁部12には、係合凸部19が存在する周方向の範囲又はこの範囲を含む周方向の範囲において、サークリップ16がクラッチカバー6に接触するのを回避する凹部20が設けられる。
回転軸2に対するクラッチカバー6の組付けに際しては、Oリング8bが外周の対応する環状溝に取り付けられた回転軸2に対し、クラッチカバー6の凹部20がクラッチピストン5と反対側を向いた姿勢で、該反対側から、クラッチカバー6を回転軸2に対して移動させ、クラッチカバー6の環状内縁部12を回転軸2の外周嵌合面14の外側に嵌合させる。
この嵌合に際しては、クラッチカバー6の係合凸部19が回転軸2の係合溝18に合致するように、クラッチカバー6と回転軸2との周方向の位置関係が調整される。また、この嵌合のための移動は、カバー側当接面13が軸側当接面15に当接するまで行われる。このとき、Oリング8bが、クラッチカバー6の対応する内周面により潰されて、回転軸2とクラッチカバー6との間が密閉される。
この後、サークリップ16を回転軸2の環状クリップ溝17に取り付ける。これにより、クラッチカバー6の環状内縁部12が軸側当接面15に対して押さえられて固定され、クラッチカバー6の組付けが完了する。
クラッチ構造体1の稼働に際しては、クラッチカバー6の係合凸部19が回転軸2の係合溝18に係合しているので、回転軸2とクラッチカバー6との相対回転が阻止される。これにより、回転軸2とクラッチカバー6との間のOリング8bの磨耗が回避される。
また、サークリップ16における合口部分の段差や捩れによりサークリップ16とこれを収容した環状クリップ溝17との間の接触面圧に不均一が生じて応力が環状クリップ溝17の一部に集中している場合でも、サークリップ16と環状クリップ溝17とが相対回転しないので、環状クリップ溝17における疲労破損の発生が回避される。
さらに、クラッチカバー6からの軸線方向の荷重は、環状内縁部12から回転軸2の環状クリップ溝17のクラッチカバー6と反対側の内壁に負荷される。そして、図5に示すように、この荷重の負荷は、環状クリップ溝17が回転軸2の係合溝18の部分において欠けているので、環状内縁部12が凹部20を有していない場合には、係合溝18の近傍により多く集中する。図5中の矢印は、この負荷の大きさと方向を表すベクトルである。
さらに、この荷重の負荷の片寄りは、サークリップ16の合口22と係合溝18との位置関係によっても変化し、図6のように、合口22が係合溝18に近い場合には、係合溝18の近傍にさらに多くの負荷が集中する。
この点、本実施形態では、図7のように、サークリップ16がクラッチカバー6に接触するのを回避する凹部20が、係合溝18と係合するクラッチカバー6の係合凸部19が存在する周方向の範囲に設けられている。このため、この範囲においては、クラッチカバー6からの荷重が環状クリップ溝17の側壁に直接的に負荷されることなはない。これにより、環状クリップ溝17の係合溝18近傍における応力の集中が緩和され、環状クリップ溝17の疲労破損が回避される。
以上のように、本実施形態によれば、クラッチカバー6の係合凸部19と回転軸2の係合溝18との係合により回転軸2とクラッチカバー6との相対回転を阻止したので、Oリング8bの磨耗を防止し、その機能を維持することができる。また、サークリップ16と環状クリップ溝17とが相対回転しないので、環状クリップ溝17における疲労破損の発生を防止することができる。
また、サークリップ16がクラッチカバー6に接触するのを回避する凹部20を設けたので、環状クリップ溝17の係合溝18近傍における応力の集中を緩和し、環状クリップ溝17の披露破損を防止することができる。
また、環状クリップ溝17における疲労破損の発生を防止できるので、その分、環状クリップ溝17の底の径を縮小して深さを増加させることもできる。これにより、サークリップ16の掛かり代を増加させることができるので、サークリップ16の径及び幅を低減させ、クラッチ構造体1のコンパクト化を図ることができる。
1…クラッチ構造体、2…回転軸、3…アウタードラム、4…クラッチ部、5…クラッチピストン、6…クラッチカバー、7…油室、8a、8b…Oリング、9…インナーハブ、10…アウターディスク、11…インナープレート、12…環状内縁部、13…カバー側当接面、14…外周嵌合面、15…軸側当接面、16…サークリップ、17…環状クリップ溝、18…係合溝、19…係合凸部、20…凹部。

Claims (2)

  1. 回転自在に支持された回転軸と、
    前記回転軸の外側において同一軸線上で回転自在に配置された円筒状部材と、
    前記回転軸に対する前記円筒状部材の相対回転を許容する切断状態と該相対回転を阻止する接続状態とを切り換えるクラッチ部とを備えるクラッチ構造体であって、
    前記クラッチ部は、
    前記回転軸の外周に、軸線方向に摺動し得るように設けられたクラッチピストンと、
    前記クラッチピストンを作動させるための作動油が供給される油室を前記クラッチピストンとの間で構成するように前記回転軸の外周に固定されたクラッチカバーと、
    前記回転軸と前記クラッチカバーとの間を密封するシール部材とを備え、
    前記クラッチカバーは、
    前記回転軸の外周に対して軸線方向に沿った嵌合方向に嵌合される環状内縁部と、
    前記環状内縁部の前記嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がった環状のカバー側当接面とを有し、
    前記回転軸は、
    前記クラッチカバーの環状内縁部が外側に嵌合される外周嵌合面と、
    前記外周嵌合面の前記嵌合方向側の端縁から径方向外方に立ち上がって前記カバー側当接面に当接する軸側当接面と、
    前記外周嵌合面に嵌合しかつ前記軸側当接面に当接した前記クラッチカバーの環状内縁部を該軸側当接面と反対側から押さえて固定するサークリップが取り付けられる環状クリップ溝と、
    前記外周嵌合面に、軸線方向に沿って設けられた係合溝とを備え、
    前記クラッチカバーは、さらに、該クラッチカバーが前記回転軸に対して回転するのを阻止するように、前記環状内縁部の内周面から径方向内方に突出して前記係合溝に係合する係合凸部を備え、
    前記円筒状部材の相対回転を許容する切断状態において、前記クラッチカバーと前記クラッチピストンが軸線方向に当接可能であることを特徴とするクラッチ構造体。
  2. 前記クラッチカバーの環状内縁部には、前記係合凸部が存在する周方向の範囲において、前記サークリップが該クラッチカバーに接触するのを回避する凹部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ構造体。
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