ところで、上記の特許文献1のものでは、熱遮断層としてアルミニウム箔が用いられているので、そのアルミニウム箔の熱遮断効果により、隣家の火災時の燃焼ガスの熱が軒裏空間に伝わり難くなり、軒裏空間の温度上昇を抑えて軒の延焼を防止することができる効果が得られる。
しかし、特許文献1の軒裏天井構造では、軒天部材を締結固定する軒下地材としての野縁、野縁受けやその周辺の部材は、軒裏に要求される耐火性能を向上させる狙いから金属製のものを用いており、その野縁等に軒天部材をタッピングネジ等により締結するようにしている。そのため、良好な耐火性能が得られるものの、通常一般の木製の軒裏構造体に対して金属製の軒下地材を別途に施工する必要があり、施工性の点で難がある。
すなわち、住宅の軒下地材としては一般に木製のものが多用されている。これは、軒裏構造が木製である場合が多いこと、木製の軒下地材は金属製の軒下地材と比べて施工現場での加工が容易であること、金属製の軒下地材については軒裏天井材の固定にタッピングネジ等の専用の締結具が必要であるのに対し、木製の軒下地材は例えば自動釘打ち機による釘打ちで軒裏天井材を固定できる(金属製の軒下地材では釘留めが困難である)こと等のためである。
そして、こうして木製の軒下地材を用いる場合、軒裏構造の耐火性を高めるために、その木下地材が外部からの火炎や燃焼ガス等による加熱に対しても着火温度以下に保たれるようにする必要がある。そのため、強固な被覆材等を用いて熱伝達や目地・亀裂等からの熱流入を防ぐ一般的な耐火構造を採用してもよいが、そのような構造は、厚い被覆材や複数の被覆材の使用によって容易に採用できる外壁や屋根等と異なり、上向きで施工する必要がある軒裏天井構造では採用し難い。
他方、このような木製の軒下地材に固定される軒裏天井材については、その固定に釘やビス等を用いるのが施工し易く、硬くて重い被覆材を用いて被覆すると施工性が悪くなる。しかし、現状では、使用し難さがあるにも拘わらず、比重が1.0以上で厚さが12mm以上の厚くて重いケイカル板からなる軒裏天井材や、軒裏天井材の裏側にグラスウールや別の面材を重ねた複数部材を併用する構造が用いられている。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、軒裏天井構造に工夫を加えることで、軒裏天井材を軽量としながら、その軒裏天井材を施工性が良好な木製の軒下地材に施工して耐火性が得られるようにし、よって軒裏天井構造の良好な施工性及び耐火性を両立させようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、軒下地材は木質材とし、その上で、軒下地材に固定される軒裏天井材の基材は、加熱時に寸法変化が小さくて割れない火山性ガラス質複層板とし、その裏面に、アルミニウム箔とその両面に接着された防湿材との複層シートを積層するようにした。
具体的には、第1の発明は、建物の軒裏に施工される軒裏天井構造であって、軒裏に軒裏空間を区画する木質材からなる軒下地材と、この木製の軒下地材に取付固定された複数枚の軒裏天井材とを備えている。各軒裏天井材は、火山性ガラス質堆積物層の両側にロックウール層が積層一体化された火山性ガラス質複層板からなる基材と、この基材において上記軒裏空間側に位置する裏面に積層されたアルミニウム複層シートとを備え、このアルミニウム複層シートは、アルミニウム箔と、そのアルミニウム箔の基材側に一体的に接着され、上記アルミニウム箔を基材側から防湿するための基材側防湿材と、アルミニウム箔の反基材側に一体的に接着され、アルミニウム箔を反基材側から防湿するための反基材側防湿材とを有することを特徴とする。
この第1の発明では、軒裏天井構造の軒下地材が木質材であるので、金属製のものと比べて施工現場での加工が容易であり、しかも、その軒下地材に軒裏天井材を釘やビス等によって容易に固定することができ、釘打ちの場合には自動釘打ち機により釘打ちして固定でき、その取付施工を容易に行うことができる。
また、この木製の軒下地材に固定されている軒裏天井材は、基材の裏面にアルミニウム箔を含むアルミニウム複層シートが積層されたものであるので、そのアルミニウム箔が燃焼ガスを遮断する熱遮断層として機能し、アルミニウム箔の熱遮断効果(気体遮蔽効果)により、火災時の燃焼ガスが木製の軒下地材や軒裏空間に伝わり難くなり、木製の軒下地材が着火温度まで上昇することや、軒裏空間の温度上昇を抑えることができ、軒の延焼を防止することができる。
そして、上記基材は、火山性ガラス質堆積物層の両側にロックウール層が積層一体化された火山性ガラス質複層板であり、この火山性ガラス質複層板は、軽量であるとともに、加熱されても割れないという特性を有する。すなわち、火山性ガラス質複層板はセメント系や珪酸カルシウム系の板材とは異なり、これら板材セメント系や珪酸カルシウム系の板材が自由水や結合水を含んでいて、その自由水や結合水が火災時の加熱に伴って蒸発し急速に収縮することで、板材に割れが発生するのに対し、火山性ガラス質複層板はそのような割れの発生が生じ難く、熱による収縮も小さい。そのため、火災時に45分以上の長い時間加熱されても、基材が割れることはなく、基材の割れや収縮等に起因して裏面側のアルミニウム複層シート(アルミニウム箔)が基材から離脱したり、軒裏天井材が軒下地材から脱落したりする可能性は極めて低くなり、別途に断熱材を要することなく軒裏天井構造の耐火性を向上させることができる。
そのため、強固な被覆材等によって熱伝達や目地・亀裂等からの熱流入を防ぐ一般的な耐火構造を用いずとも、上向きで施工する必要がある軒裏天井構造に対し、軽量な軒裏天井材を容易に施工しながら、その耐火性を高めることができる。
また、軒裏天井材において、火山性ガラス質複層板からなる基材の裏面に積層されているものは、アルミニウム箔の基材側及び反基材側の両側にそれぞれ基材側及び反基材側防湿材が接着により一体化されたアルミニウム複層シートであるので、仮に、施工現場で薄いアルミニウム箔を単独で基材に積層する場合に、その低いハンドリング性に起因して基材裏面の全体にアルミニウム箔を密着させて積層できずに施工が困難になることや、逆にアルミニウム箔よりも厚いアルミニウム薄板を積層する場合に、釘やビスが貫通し難くなって施工性が低下すること等は生じず、アルミニウム複層シートであることで、これら問題を招くことなく容易に施工することができる。
さらに、上記アルミニウム複層シートは、アルミニウム箔の基材側及び反基材側の両側にそれぞれ基材側及び反基材側防湿材を一体的に接着した3層構造のものであるので、アルミニウム箔が周りの水分や湿気に接触するのは基材側及び反基材側防湿材によって抑制され、アルミニウム箔の腐食を未然に防止することができる。その結果、長期間が経過しても腐食によってアルミニウム箔に孔が開くことはなく、その本来の熱遮断効果(気体遮蔽効果)を確実に発揮させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、軒裏天井材のアルミニウム複層シートにおける基材側及び反基材側防湿材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム又はパルプ紙からなることを特徴とする。
この第2の発明では、アルミニウム箔をポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム又はパルプ紙によって防湿することができる。パルプ紙は、接着剤が含浸することによってアルミニウム箔を防湿することができる。
また、アルミニウム複層シートは、アルミニウム箔にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム又はパルプ紙が接着一体化されたものであるので、万一、火災時にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムやパルプ紙が燃える事態になったとしても、アルミニウム箔との一体構造によってそれ以上の延焼は抑えられる。しかも、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムやパルプ紙はいずれも他の樹脂等と比べて燃焼時の発熱量が低いため、その分、これらが燃えた場合に軒裏空間の温度が過度に上昇するのを防ぐことができ、延焼を食い止めることができる。
第3の発明は、第2の発明において、上記基材側防湿材はポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムであり、反基材側防湿材はパルプ紙であることを特徴とする。
この第3の発明では、アルミニウム箔の基材側にはポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムが、また反基材側にはパルプ紙がそれぞれ配置されているので、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムによってアルミニウム箔を基材側から防湿することができる一方、パルプ紙は、接着剤が含浸することによってアルミニウム箔を反基材側から防湿することができる。
第4の発明は、第2の発明において、基材側及び反基材側防湿材はパルプ紙であることを特徴とする。
この第4の発明では、アルミニウム箔を基材側及び反基材側からそれぞれ接着剤が含浸したパルプ紙によって防湿することができる。また、この発明においても、第3の発明と同様の作用効果を奏することができ、アルミニウム複層シートは、アルミニウム箔の両側にパルプ紙が一体化されたものであるので、万一、火災時にパルプ紙が燃える事態になったとしても、アルミニウム箔との一体構造によってそれ以上の延焼は抑えられる。また、パルプ紙の燃焼時の発熱量が低いので、その分、パルプ紙が燃えた場合の軒裏空間の温度が過度に上昇するのを防ぐことができ、延焼を食い止めることができる。
第5の発明は、第2〜第4の発明のいずれか1つにおいて、アルミニウム複層シートのパルプ紙はアルミニウム箔に、防湿性を有する接着剤によって接着されていることを特徴とする。このことで、パルプ紙は、接着剤の含浸によってアルミニウム箔を防湿することができる。
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、軒裏天井材のアルミニウム複層シートは、基材の裏面に一体的に接着されて積層されていることを特徴とする。
この第6の発明では、予めアルミニウム複層シートが基材の裏面に一体的に接着された状態で積層されているので、アルミニウム複層シートは常に基材と一体化されたものとしてハンドリングすることができ、施工をさらに良好に行うことができる。
第7の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つにおいて、軒裏天井材の基材において、施工時に軒裏空間と反対側に位置する表面に、気体遮蔽効果を有する不燃性塗料からなる塗膜が設けられていることを特徴とする。
この第7の発明では、軒裏天井材の基材表面に不燃性塗料からなる塗膜が設けられているので、その軒裏天井材が施工された場合、火災等の炎に軒天井の表面が曝されて、高温のガスが軒裏天井材の表面から軒裏天井材を直接的に透過して軒裏空間に進入しようとしても、その高温ガスは基材(軒裏天井材)の表面側において不燃性塗料による塗膜によって遮蔽されることとなる。このことで高温のガスの軒裏空間への進入が抑制され、その軒裏空間の温度の上昇を抑えることができる。
第8の発明は、第1〜第7の発明のいずれか1つにおいて、軒裏空間の換気口又は換気装置が設けられていることを特徴とする。
この第8の発明では、軒裏空間の通気口又は換気装置が設けられていると、軒裏空間に外気を流通させて、湿気が溜まることによる木材の腐食を防止できるが、一方で、風雨が激しい場合に軒裏天井材の裏側に雨水が浸入して軒裏天井材の裏面に水が溜まり、アルミニウム箔が腐食され易くなる環境下となる。それであっても、アルミニウム箔が水分や湿気に接触するのを防湿材によって抑制して、アルミニウム箔の腐食を長期間に亘り未然に防止することができ、アルミニウム箔本来の熱遮断効果を確実に発揮させることができる。
以上説明した如く、本発明によると、建物の軒裏に施工される軒裏天井構造として、木質材からなる軒下地材に軒裏天井材が取付固定され、その軒裏天井材は、火山性ガラス質複層板からなる基材の裏面に、アルミニウム箔の基材側及び反基材側の両側にそれぞれアルミニウム箔を基材側及び反基材側から防湿するための基材側及び反基材側の防湿材を一体的に接着したアルミニウム複層シートが積層されたものとしたことにより、木製の軒下地材によりその軒裏構造に対する施工性と、軒下地材に対する軒裏天井材の施工性とを高めることができる。一方、アルミニウム箔による熱遮断効果により、燃焼ガスの軒裏空間への進入を防止することで、軒裏空間の温度上昇を抑えて軒の延焼を防止することができる。また、火山性ガラス質複層板からなる基材の特性により、火災時に長い時間加熱されても基材が割れてアルミニウム箔が基材から離脱したり、軒裏天井材が脱落したりすることはなく、軒裏天井材の耐火性を向上させることができる。さらに、アルミニウム箔の基材側及び反基材側にそれぞれ防湿材が一体的に接着されたアルミニウム複層シートにより、アルミニウム箔が周りの水分や湿気に接触するのを基材側及び反基材側の防湿材によって抑制して、アルミニウム箔の腐食を長期間に亘り未然に防止することができ、アルミニウム箔本来の熱遮断効果を確実に発揮させることができる。このように軒裏天井材によって耐火性を高めることができ、よって軒裏天井構造の良好な施工性及び耐火性を併せ図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る軒裏天井構造を示し、この軒裏天井構造は例えば木造戸建て住宅(建物)の軒に施工されている。この軒は、住宅の外壁Wよりも外側に突出しており、主要構造として屋根の勾配に応じて図外の棟木及び軒桁1に掛け渡された垂木2を有し、これらは木質材からなる。この垂木2の軒先部分と、垂木2を支持する軒桁1と、この軒桁1の外側に軒桁1と平行に配置され、垂木2にその先端を隠すように固定された鼻隠し3とで軒が構成されている。軒の下側には、垂木2と軒桁1と鼻隠し3とによって囲まれた部分に断面三角形状の軒裏空間5が区画形成され、この軒裏空間5の下側開口部5a(外壁Wと鼻隠し3との間)は複数枚の矩形板状の軒裏天井材21,21,…によって閉塞されている。
鼻隠し3裏側(内側)の垂木2の先端面には鼻隠し下地材7が取り付けられ、この鼻隠し下地材7の下端部に軒先野縁8が吊り下げ支持され、これらは木質材からなっている。軒桁1には、面材からなる外壁下地材10及びその上の胴縁9を介して軒元野縁11がビスV等により固定され、この軒元野縁11も木質材からなる。外壁下地材10は例えば大建工業(株)製の「ダイライト」、シージングボード、構造用合板、OSB等の面材が用いられる。これら軒先野縁8と軒元野縁11との間には、軒桁1に沿って一定間隔を空けて配置される木質材からなる複数の軒天取付野縁12,12,…が連結されており、鼻隠し下地材7、軒先野縁8、軒元野縁11及び軒天取付野縁12,12,…によって軒裏天井材21,21,…を施工するための木製の軒下地材が構成されている。上記各構成部材をなす木質材は、例えば米松や米栂等、通常一般の軒裏天井構造に用いられるものと同様の木質材からなる。
そして、軒裏空間5の開口部5aに複数枚の軒裏天井材21,21,…が互いに隙間なく幅方向に突き合わせた状態で配置され、その各々の周縁部は釘やビス等の止め具(図示せず)で上側の軒天取付野縁12及び軒先野縁8に固定され、これにより軒裏天井材21が軒裏に施工されている。尚、軒桁1の室内側には内壁下地材13が施工され、この内壁下地材13は例えば大建工業(株)製の「ダイライト」、石膏ボード、合板等の面材からなり、この上にクロスや化粧板が貼り付けられて室内壁面が形成される。また、図1中、14は室内天井材である。
上記各軒裏天井材21の内側端部は外壁Wとの間に隙間を空けた状態で施工され、その軒裏天井材21と外壁Wとの間である軒元に、軒裏空間5を換気するための換気金物15(換気装置)が設けられている。この換気金物15は、軒裏天井材が並べられた方向に沿って延びる長尺の例えば亜鉛メッキ鋼板製やステンレス鋼板製の金物本体16を有する。この金物本体16は、図2に拡大して示すように、水平に延びて内端部で外壁Wの上端に載置固定される下側水平部16aと、この下側水平部16aの外端部から上方に延びる内側縦壁部16bとを有する。この内側縦壁部16bの上端部には、水平に外方向に延びた後に折り返されて水平内方向に延びる上側水平部16cが連続しており、この上側水平部16cにおいて金物本体16が軒天取付野縁12に対し軒天取付野縁12と軒裏天井材21との間に挟まれた状態で取付固定されている。上側水平部16cの下側部分の内端部には、下側に向かって内側に向かうように傾斜して延びる外側縦壁部16dが接続され、この外側縦壁部16dの下端部には、外側に向かって延びた後に上側に向かうように折り曲げられた見切り部16eが接続されている。この見切り部16eは上記下側水平部16aと同じ高さ位置で外側に向かって延び、その外端部(先端部)は軒裏天井材21の下面に近接ないし当接している。そして、内側縦壁部16bと外側縦壁部16dとの間に位置する上側水平部16cには複数の換気孔17,17,…が金物本体16の長さ方向に並んで貫通形成されており、この換気孔17と内外縦壁部16b,16d間の空間とを換気通路18として軒裏空間5を外部空間(大気)との間で換気するようにしている。
また、上記金物本体16の内側縦壁部16bの上下中間部には外側縦壁部16dに向かって開口する凹溝部16fが形成されている。この凹溝部16f内には、所定の温度(例えば180℃)以上で膨張(発泡)して上記換気通路18に充填される膨張黒鉛等からなる発泡材19が充填されており、火災時に発泡材19の膨張により換気通路18を遮断することで、炎や高温のガスが換気通路18を経由して軒裏空間5に進入するのを防止するようにしている。
尚、上記換気金物15は例示であり、他の構造の換気金物を使用することができるのは言うまでもない。
上記各軒裏天井材21は、図3に拡大して示すように、矩形板状の基材22と、この基材22の裏面側、すなわち軒裏天井構造の施工時に軒裏空間5側に位置する上側に接着剤によって一体的に接着された状態で積層されたアルミニウム複層シート24と、基材22の表面側、すなわち軒裏天井構造の施工時に軒裏空間5と反対側に位置する下側に塗布により設けられた不燃性塗膜30とを有する。上記基材22にアルミニウム複層シート24を接着する接着剤は、例えばウレタン樹脂系のものが用いられている。
上記基材22は、火山性ガラス質複層板(例えば大建工業(株)製の「ダイライト」)からなる。具体的には、火山性ガラス質複層板は、火山性ガラス質堆積物層22aの両側にそれぞれロックウール層22b,22bが積層一体化された厚さが例えば12mmの複層板である。この各層22a,22bには、無機粉体として水酸化アルミニウムが混入されている。基材22は、密度が例えば0.5〜0.9g/cm3のものが用いられる。尚、基材22の厚さは9〜18mmが好ましい。
上記アルミニウム複層シート24は、アルミニウム箔25と、そのアルミニウム箔25の基材22側に接着剤により一体的に接着された基材側防湿材としてのポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26と、アルミニウム箔25の基材22と反対側(反基材側)に接着剤により一体的に接着された反基材側防湿材としてのパルプ紙27との3層構造のシートからなる。
上記アルミニウム箔25は熱遮断材料として機能するもので、例えばその厚さは0.025〜0.035mm程度で極めて薄く、重さは72.9〜89.1g/m2程度である。このようにアルミニウム箔25を薄くする理由は、接着状態で積層されている基材22である火山性ガラス質複層板が割れ難くかつ寸法安定性にも優れ、ロックウール板等に比べて比重が大きくて強度も高いので、基材22が割れてその部分から高温の燃焼ガスが浸入してアルミニウム箔25に孔が開く虞れも極めて少なく、上記のような厚さの薄膜のアルミニウム箔25であっても十分な強度を確保できるためであり、他方、アルミニウムの熱伝導率が極めて高いことを考えると、できる限り薄い箔の方が軒裏に伝わる熱を下げることができるためである。
また、このアルミニウム箔25の基材22側に接着されているポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26、及び反基材側に接着されているパルプ紙27は、いずれもアルミニウム箔25に対する湿気の影響を阻止し、そのアルミニウム箔25が湿気(水分)によって腐食するのを防ぐためのものである。
ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26の厚さは、例えば0.012mm程度で、重さは例えば17.0g/m2程度のものが用いられる。
一方、パルプ紙27の厚さは、例えば0.033mm程度で、重さは例えば0.6〜23.0g/m2程度のものが用いられる。
そして、上記アルミニウム箔25にそれぞれポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26(基材側防湿材)及びパルプ紙27(反基材側防湿材)を接着するための接着剤は、防湿性を有する例えばウレタン樹脂系の接着剤が用いられる。
上記基材22の表面に形成されている不燃性塗膜30は、気体遮蔽効果を有する不燃性塗料からなるものである。すなわち、この不燃性塗膜30は、気体遮蔽効果(ガスバリア効果)を有し、同効果を有する不燃性塗料を基材22の表面に塗布することによって形成される。尚、不燃性塗膜30の基材22への密着性を高めるために、基材22の表面に、下塗り塗料による下塗り塗膜を形成した後、その下塗り塗膜上に不燃性塗膜30を形成することが望ましい。
上記不燃性塗膜30(不燃性塗料)は、例えば塗料化に伴って水中で膨潤する膨潤性を有する層状粘土鉱物と、その固定用の樹脂とを備えてなる。すなわち、層状粘土鉱物としては、例えばバーミキュライトやベントナイト等の高い膨潤性を有する層状粘土鉱物(珪酸塩鉱物)が用いられる。この層状粘土鉱物の膨潤性は、例えば第十五改正日本薬局方の膨潤力試験で20ml/2g以上のものであることが望ましい。
不燃性塗料における層状粘土鉱物の組成比は、20〜80重量%であることが望ましい。20重量%を下回ると、不燃性能が低下して機能が発揮されない一方、80重量%を超えると、相対的に樹脂が入り難くなるためである。
一方、樹脂は、例えばアクリル系、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂が用いられる。この樹脂の組成比は、20〜50重量%であることが望ましい。20重量%を下回ると、塗膜の強度が低くなり過ぎて塗膜が剥がれる一方、50重量%を超えると、相対的に可燃物としての樹脂が増え過ぎ、不燃性を担保できなくなるためである。
その他、不燃性塗料には、増量剤や着色剤として、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機粉体を0〜60重量%程度加えてもよい。
不燃性塗料の塗布量は、例えば固形分で30〜150g/m2程度であればよく、設計に応じて適宜選択することができる。この塗布量が少な過ぎると、不燃性の効果が得られなくなり、多過ぎると塗布が困難になる。
この不燃性塗膜30(不燃性塗料)が気体やガスを遮蔽するメカニズムについて概略的に説明すると、粘土鉱物の粒子は多数の薄片成分が層状に重なっており、塗料化する際に水が加えられると、塗料中で粘土鉱物粒子が吸水して膨潤し、薄片成分の層間が広がり、混合に伴って薄片成分(層)が他の薄片成分間(層間)に入り込むようになる。この塗料を基材22の表面(及び裏面)に塗布してドライヤーで乾燥すると、薄片成分間(層間)が収縮して狭くなり、粒子同士の薄片成分が入り込んで噛み合うようになり、その状態が樹脂により固定され、可燃性の高温ガスが粒子間を透過しようとしても、噛み合わさった薄片成分により遮蔽され、気体遮蔽効果が得られるようになる。この不燃性塗膜30は水がかかっても破壊されることはない。
上記軒裏天井材21における不燃性塗膜30の表面には、必要に応じて仕上げ塗装をするか、或いは化粧シートを貼り付けるかして、表面化粧を施しておいてもよい。或いは、軒裏天井材21を施工した後に、その施工現場で仕上げ塗装をすることもできる。
したがって、この実施形態の軒裏天井構造においては、各軒裏天井材21が建物の軒裏空間5の下側の軒下地材(軒天取付野縁12や軒先野縁8、軒元野縁11等)にビスや釘等によって固定されて施工される。
そのとき、軒裏天井構造の軒下地材(軒天取付野縁12や軒先野縁8、軒元野縁11等)は木質材であるので、その施工現場での加工が金属製のものと比べて容易となる。しかも、その木製軒下地材に軒裏天井材21を釘やビス等によって容易に固定することができ、釘打ちを行う場合には自動釘打ち機により釘打ちすることで固定でき、その取付施工をも容易に行うことができる。
また、軒裏天井材21の基材22は火山性ガラス質複層板であるので、容易に切断することができて加工性がよいだけでなく、周縁部に止め具が貫通しても割れることはなく、優れた施工性が得られる。
こうして建物の軒裏空間5の下側に軒下地材に固定されて施工される軒裏天井材21は、その基材22の裏面にアルミニウム箔25を含むアルミニウム複層シート24が積層されたものであるので、基材22(火山性ガラス質複層板)が火災時等における燃焼ガスの通り抜ける材料であっても、そのアルミニウム箔25が、燃焼ガスを遮断する熱遮断層として機能し、このアルミニウム箔25の熱遮断効果(気体遮蔽効果)により、火災時の燃焼ガスやその熱が軒裏空間5に伝わり難くなり、上記木製の軒下地材が着火温度まで上昇することや、軒裏空間5が温度上昇することを抑えて軒の延焼を防止することができる。
また、上記基材22は、火山性ガラス質堆積物層22aの両側にロックウール層22b,22bが積層一体化された軽量の火山性ガラス質複層板である。そして、仮に基材がセメント系や珪酸カルシウム系の板材である場合、それら板材は自由水や結合水を含んでいるので、その自由水や結合水が火災時の加熱に伴って蒸発し急速に収縮することで、板材に割れが発生する。これに対し、この火山性ガラス質複層板製の基材22はセメント系や珪酸カルシウム系の板材とは異なり、当該セメント系や珪酸カルシウム系の板材のような割れの発生が生じ難く、熱による収縮も小さいので、基材22の加熱による割れや収縮等に起因して裏面側のアルミニウム複層シート24が離脱したり、表面側の不燃性塗膜30に亀裂が入ったり剥がれ落ちたり、或いは基材22が脱落したりする可能性が極めて低くなる。その結果、火災時に軒裏天井材21が45分以上の長い時間加熱されても、上記アルミニウム複層シート24におけるアルミニウム箔25の熱遮断機能及び不燃性塗膜30の気体遮蔽機能を安定して維持することができる。よって別途に断熱材を要することなく軒裏天井材21の耐火性を向上させることができる。
そのため、強固な被覆材等によって熱伝達や目地・亀裂等からの熱流入を防ぐ一般的な耐火構造を用いずとも、上向きで施工する必要がある軒裏天井構造に対し、軽量な軒裏天井材21により容易に施工しながら、その耐火性を高めることができる。
また、軒裏天井材21の基材22としての火山性ガラス質複層板に水酸化アルミニウムが混入されているので、発熱時には結晶水が熱分解して放出され、その吸熱反応により温度上昇を低下させることができる。
そして、この火山性ガラス質複層板からなる基材22の裏面に接着されているアルミニウム複層シート24は、アルミニウム箔25の基材22側に基材側防湿材としてポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26を、また反基材側に反基材側防湿材としてパルプ紙27をそれぞれ一体的に接着したものであるので、アルミニウム箔25が周りの水分や湿気に接触しようとしても、それはポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26及びパルプ紙27によって抑制され、アルミニウム箔25を基材22側からポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26によって防湿できるとともに、反基材側から、防湿性を有するウレタン樹脂系の接着剤が含浸したパルプ紙27によって防湿することができる。しかも、アルミニウム箔25にそれぞれポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26及びパルプ紙27を接着するための接着剤も防湿性を有する例えばウレタン樹脂系のものであるので、アルミニウム箔25は当該接着剤によっても防湿される。その結果、アルミニウム箔25の腐食を未然に効果的に防止することができ、施工後に長期間が経過しても腐食によってアルミニウム箔25に孔が開くことはなく、その本来の熱遮断効果を火災時等に確実に発揮させることができる。
特に、軒裏天井構造に、軒裏空間5の換気金物15が設けられていると、軒裏空間5に外気を流通させて、湿気が溜まることによる木材の腐食を防止することができるが、一方で、風雨が激しい場合に軒裏天井材21の裏側に雨水が浸入して、軒裏天井材21の裏面に水が溜まり、アルミニウム箔25が腐食され易くなる環境下となる。しかし、それであっても、アルミニウム箔25が水分や湿気に接触するのをポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26、パルプ紙27、ウレタン樹脂系の接着剤によって抑制して、アルミニウム箔25の腐食を確実に防止することができる。
さらに、上記アルミニウム複層シート24は、アルミニウム箔25にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26とパルプ紙27とが接着剤による接着により一体化されたものであるので、万一、火災時にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26やパルプ紙27が燃える事態に至ったとしても、それらがアルミニウム箔25と一体化されている構造によってそれ以上の延焼は抑えられる。しかも、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26やパルプ紙27はいずれも他の樹脂等と比べて燃焼時の発熱量が低いため(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は5500kcal/kg程度、紙は5000kcal/kg程度であるのに対し、ポリエチレン樹脂は11000kcal/kg程度、ポリプロピレン樹脂は11100kcal/kg程度)、その分、これらが燃えた場合に軒裏空間5の温度が過度に上昇するのを防ぐことができ、よって延焼を食い止めることができる。
また、軒裏天井材21の基材22表面に、気体遮蔽効果を有する不燃性塗料からなる不燃性塗膜30が設けられているので、その軒裏天井材21が施工された場合、火災等の炎に軒裏天井材21の表面が曝されて、高温のガスが軒裏天井材21の表面から軒裏天井材21を直接的に透過して軒裏空間5に進入しようとしても、その高温ガスは基材22(軒裏天井材21)の表面側において不燃性塗膜30によって遮蔽されることとなる。このことで高温のガスの軒裏空間5への進入が抑制され、その軒裏空間5の温度の上昇をより一層抑えることができる。
そして、軒裏天井材21は、予め、基材22の裏面側(上側)にアルミニウム箔25を含むアルミニウム複層シート24が接着によって積層されている構造のものであり、既存の軒裏天井材の耐火性を向上させる目的で、その軒裏天井材自体を基材としてその裏面にアルミニウム箔を積層施工する構造とは大きく異なっている。すなわち、軒裏天井材自体を基材として裏面にアルミニウム箔を積層する場合においては、そのアルミニウム箔は施工時の破損(この破損によってアルミニウム箔の熱遮断効果がなくなる)を避けながら基材全体に亘り密着させて施工する必要があり、アルミニウム箔が部分的に基材と密着しない非密着箇所が生じると、仮に火災時に軒裏天井材にクラックが生じたときには、その非密着箇所から燃焼ガス(炎)が侵入することになる。しかし、本実施形態のような0.03mm程度の薄いアルミニウム箔のハンドリング性は低いので、そのような施工は実質的に困難となる。そのようなハンドリング性のために、アルミニウム箔ではなく、ある程度の厚さのあるアルミニウム薄板を使用して、それを積層するようにすると、今度は、施工時にそのアルミニウム薄板を釘やビスが貫通し難くなり、施工性が低下する。
これに対し、本実施形態に係る軒裏天井材21は、予め、火山性ガラス質複層板からなる基材22の裏面側にアルミニウム箔25を含むアルミニウム複層シート24が一体的に積層されているものであるので、薄いアルミニウム箔25を用いながら、アルミニウム複層シート24のハンドリング性は高くなり、上記したような問題が生じる余地は殆どなく、軒裏天井材21の施工が容易となり、軒裏天井材自体を基材としてその裏面にアルミニウム箔を接着施工する構造に対して大きな利点がある。
しかも、軒裏天井材21のアルミニウム複層シート24は、予め基材22の裏面に接着剤により一体的に接着された状態で積層されているので、そのアルミニウム複層シート24は常に基材22と一体化された状態でハンドリングされることとなり、軒裏天井材21の施工をさらに良好に行うことができる。
本発明によると、具体的に、火山性ガラス質堆積物層22aの両側にそれぞれロックウール層22b,22bが積層一体化された火山性ガラス質複層板からなる厚さ12mmの基材22の裏面に、厚さ0.03mmのアルミニウム箔25の基材側にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26が、また反基材側にパルプ紙27がそれぞれウレタン樹脂系接着剤により接着されたアルミニウム複層シート24を接着した1枚物の軒裏天井材21を施工した軒裏天井構造によって45分の軒裏準耐火構造の認定が得られている。
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2に係る軒裏天井構造を示し(尚、図1〜図3と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、軒裏空間5の換気構造を変えたものである。
この実施形態では、実施形態1と異なり、換気金物15は軒における軒元と軒先との中間部に施工されている。複数枚の軒裏天井材21,21,…は、長さ方向が軒先野縁8及び軒元野縁11に沿うように配置されて、該軒先野縁8及び軒元野縁11と軒天取付野縁12とに亘って取付固定されている。隣り合う軒裏天井材21,21間に間隔が空けられ、この間隔に換気金物15が配置されている。換気金物15は、幅方向中間部に上側に向かって凹陥された凹溝部16fを有する断面略ハット状の細長い板材からなる金物本体16を有し、凹溝部16fは溝底側の溝幅が溝開口側よりも広い蟻溝状とされている。そして、換気金物15は、その凹溝部16fの外面を軒裏天井材21,21間の間隔に嵌め込み、凹溝部16f以外の幅方向両端部で軒裏天井材21の端部を押さえ込んだ状態で、長さ方向の両端部及び中間部で上記軒天取付野縁12にビスVによりねじ止めされている。また、凹溝部16fの底部には複数の換気孔(図4では示していない)が凹溝部16fの長さ方向に並んで貫通形成されており、この換気孔により軒裏空間5を外部空間(大気)との間で換気するようにしている。尚、凹溝部16fの長さ方向両端部は、金物本体16の一端部に取り付けられるエンドキャップ(図示せず)により閉塞される。軒裏天井材21及び軒裏天井構造のその他の構成は実施形態1と同じである。
したがって、この実施形態の場合、換気金物15が軒の中間部にある軒裏天井構造においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
(その他の実施形態)
尚、上記各実施形態では、アルミニウム複層シート24は、アルミニウム箔25の基材22側に基材側防湿材としてのポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26が、また反基材側に反基材側防湿材としてのパルプ紙27がそれぞれ接着剤により一体的に接着された3層構造としているが、逆に、アルミニウム箔25の基材22側にパルプ紙27が、また反基材側にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26がそれぞれ接着剤により一体的に接着された構造としてもよい。或いは、アルミニウム箔25の基材側及び反基材側にいずれもポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26,26又はパルプ紙27,27を接着したものでもよい。さらには、これら基材側及び反基材側の防湿材はポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム26やパルプ紙27以外のものを用いることもできる。
また、上記各実施形態では、軒裏天井材21は、アルミニウム複層シート24が火山性ガラス質複層板からなる基材22の裏面に接着状態で積層一体化されているものとしているが、それに代え、そのアルミニウム複層シート24は基材22裏面に単に積層されるだけの構造であってもよい。すなわち、例えば施工現場において、アルミニウム複層シート24が基材22裏面上に接着されないで単に載置された状態で積層される構造、或いはアルミニウム複層シート24が基材22裏面上に貼り付けられた状態で積層される構造としてもよい。こうすれば、アルミニウム複層シート24を基材22裏面に接着状態で積層一体化する構造による作用効果は奏し得ないものの、それ以外の作用効果は得ることができる。
さらに、上記各実施形態では、軒裏天井構造の軒裏空間5を換気するための換気金物16を設けているが、他の構造の換気装置であってもよく、或いは通気口を設けて軒裏空間5を換気するようにしてもよい。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
[試験1]
(実施例)
軒裏天井材の基材は、厚さ7mmの火山性ガラス質堆積物層の両側にそれぞれ厚さ2.5mmのロックウール層が積層一体化された厚さ12mmの火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の「ダイライト」)とした。アルミニウム複層シートは、厚さ0.03mmのアルミニウム箔の一側面に厚さ0.012mmのポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムが、また他側面に厚さ0.033mmのパルプ紙がそれぞれウレタン樹脂系の接着剤によって一体的に接着された3層構造の複合シートとした。そして、このアルミニウム複層シートを基材の裏面に、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムが基材側になり、パルプ紙が反基材側になるようにウレタン樹脂系の接着剤によって一体的に接着して軒裏天井材のサンプルとした。この軒裏天井材の密度は0.6g/cm3であった。
(比較例1)
実施例において、アルミニウム複層シートがないものとし、厚さ12mmの火山性ガラス質複層板そのものを軒裏天井材のサンプルとした。
(比較例2)
厚さ14mmの珪酸カルシウム板を基材とし、その裏面に実施例と同じアルミニウム複層シートを、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムが基材側となり、パルプ紙が反基材側となるようにウレタン樹脂系の接着剤によって一体的に接着して軒裏天井材のサンプルとした。この軒裏天井材の密度は1.1g/cm3であった。
実施例及び比較例1,2のサンプルに対し、基材の表面側からバーナーの炎を連続して当てて準耐火試験を行った。そのときの試験開始から45分経過した時点でのサンプルの温度と、その状態を図5に示す。
この図5から明らかなように、火山性ガラス質複層板からなる基材の裏面にアルミニウム複層シートを接着した実施例では、45分が経過しても温度上昇が低く、基材の割れによる脱落も生じていない。火山性ガラス質複層板そのものの比較例1は実施例と同様に割れによる脱落も生じていないが、温度が実施例よりも高くなっている。そして、基材が珪酸カルシウム板である比較例2では、その裏面に実施例のアルミニウム複層シートが接着されていても、基材が割れて脱落しており、アルミニウム複層シートの熱遮断効果を活用できていない。これらにより、本願発明のように、軒裏天井材において、火山性ガラス質積層板を基材とし、その裏面にアルミニウム複層シートを一体的接着することによって、アルミニウム箔の熱遮断機能を安定して維持でき、軒裏天井材の耐火性を向上させることができていることが判る。
[試験2]
また、火山性ガラス質堆積物層の両側にロックウール層が積層一体化された火山性ガラス質複層板からなる厚さ12mmの基材の裏面(軒裏空間側となる面)にアルミニウム複層シートを一体的に接着した。そのとき、アルミニウム複層シートは、アルミニウム箔の基材側に防湿用のポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムを接着し、反基材側にパルプ紙を接着した「軒裏紙」軒天材の試験体と、それとは逆に、アルミニウム箔の基材側にパルプ紙を接着し、反基材側にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムを接着した「軒裏フィルム」軒天材の試験体との2種類を作製した。いずれの種類でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムは、比重1.4で厚さ12μmであり、重さ17g/m2となる。一方、パルプ紙は坪量23g/m2の薄葉紙を用いた。
耐火性の試験に用いた軒裏天井構造は、木造軸組工法により施工したものであり、小屋裏に面する部分に厚さ8mmの繊維混入珪酸カルシウム板からなる標準板を設け、壁の屋外側被覆は厚さ25mmの繊維混入珪酸カルシウム板を2枚重ね張りし、屋内側被覆は厚さ12.5mmの石膏ボードとした。軒屋根は勾配が3/10で、45×85mmの垂木の上に厚さ25mmの繊維混入珪酸カルシウム板を2枚重ねて葺いたものとした。垂木に45×45mmの野縁を格子状に施工して長さ65mmの鋼製釘で固定し、この野縁に、上記「軒裏紙」軒天材の試験体又は「軒裏フィルム」軒天材の試験体を長さ38mmのステンレス鋼製釘により固定した。鼻隠しは、130×30mmの木造下地材に厚さ25mmの繊維混入珪酸カルシウム板を2枚重ねて張ったものである。軒の幅は1820mm、軒の出は500mm、軒の天井面までの高さは1800mmであり、柱の樹種は米松で、他の部分(垂木、野縁、鼻隠し下地材)の樹種は米松又は米栂であった。
そして、温度の測定のための熱電対の熱接点を上記標準板の非加熱面に3箇所配置した状態で、試験体の下面を加熱し、45分間加熱し続けたときの温度を熱電対により1分毎に測定した。このようにして、「軒裏紙」及び「軒裏フィルム」の各軒天材に対し45分の軒裏準耐火構造の加熱燃焼試験を行った際の具体的な温度上昇変化のデータを図6に示す。同図中、経過時間の欄の単位は「分」である。また、他の欄はいずれも温度を示し、単位は「℃」である。温度差の欄は「軒裏フィルム」軒天材の温度から「軒裏紙」軒天材の温度を差し引いた値を示す。
尚、「軒裏紙」及び「軒裏フィルム」の各軒天材のいずれも、加熱中に、標準板の非加熱側に10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと、標準板の非加熱面で10秒を超えて継続する発炎がないこと、標準板に火炎が通る損傷を生じないことの各判定条件は満足していた。
この図6から明らかなように、「軒裏紙」及び「軒裏フィルム」の各軒天材の温度変化を比較すると、いずれも45分間到達時の温度が基準値(140℃)よりも低くなっている。
尚、両者の温度は、加熱初期の一部を除き、「軒裏紙」軒天材の温度が「軒裏フィルム」軒天材の温度よりも低くなっており、45分間の時点では7.4℃の温度差が生じている。この温度差が生じる理由について考察すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムの発熱量は5500kcal程度であるのに対し、パルプ紙は3200kcal程度であり、3割程度の差異がある。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムは、全てが樹脂分であるので、全て燃えてしまうのに対し、パルプ紙(薄葉紙)には無機分が混入しているので、発熱量が下がる。具体的には、パルプ紙には填料が含まれており、この填料は、紙の白色度、不透明度、地合、表面平滑性を向上させ、印刷時のインキ抜け等を防ぐ薬品で、白土(クレーや粘土)、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の天然又は合成の白色顔料からなる。上質紙では、乾燥パルプに対して約10%の重量で填料が用いられている。すなわち、紙は原材料の木材だけでなく無機物も含まれていることになる。そして、このようなポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルムとパルプ紙との発熱量の差に起因して上記温度差が生じており、「軒裏紙」軒天材の温度が「軒裏フィルム」軒天材よりも低くなって耐火性能に関して優位となっている。
よって、本願発明のように、アルミニウム箔の両側にポリエチレンテレフタレート樹脂系フィルム及びパルプ紙が配置されるアルミニウム複層シートを基材に積層した構造の軒裏天井材を軒裏天井構造に施工することで、その軒裏天井構造の耐火性を高くすることができていることは明らかである。