芳香族カルボン酸:
[00031]本発明が適している芳香族カルボン酸としては、1以上の芳香環を有し、液相系中において気体状および液体状反応物質を反応させることによって製造することができるモノおよびポリカルボキシル化種が挙げられる。かかる芳香族カルボン酸の例としては、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、フタル酸、イソフタル酸、安息香酸、およびナフタレンジカルボン酸が挙げられる。本発明は、精製テレフタル酸、および所謂中純度テレフタル酸などの純粋な形態のテレフタル酸を製造するために特に適している。
酸化工程:
[00032]本発明方法の酸化工程は、酸素ガスと、カルボン酸基に酸化することができる置換基を有する芳香族炭化水素を含む供給材料とを、モノカルボン酸溶媒および水を含む液相反応混合物中、少なくとも1種類の重金属成分を含む触媒組成物の存在下において接触させることを含む液相酸化である。酸化工程は、液相反応混合物を保持し、高温で高圧の蒸気相を形成するのに有効な昇温および昇圧において行う。液相酸化工程における芳香族供給材料の酸化によって、芳香族カルボン酸、並びに、芳香族供給材料の部分または中間酸化生成物、および溶媒副生成物のような反応副生成物が生成する。液相酸化工程およびそれに関連するプロセス工程は、バッチプロセス、連続プロセス、或いは半連続プロセスとして実施することができる。酸化工程は、1以上の反応器内で実施することができる。
供給材料:
[00033]酸化のために好適な芳香族供給材料は、一般に、通常は製造される芳香族カルボン酸のカルボン酸基の位置に対応する1以上の位置において、カルボン酸基に酸化することができる少なくとも1つの基で置換されている芳香族炭化水素を含む。酸化可能な1つまたは複数の置換基は、メチル、エチル、またはイソプロピル基のようなアルキル基、或いはヒドロキシアルキル、ホルミル、またはケト基のような既に酸素を含む基であってよい。置換基は、同一であっても異なっていてもよい。供給材料化合物の芳香族部分はベンゼン核であってよく、或いはナフタレン核のような二環または多環式であってよい。供給材料化合物の芳香族部分上の酸化可能な置換基の数は、芳香族部分上で利用できる部位の数に等しくてよいが、一般に全部のかかる部位よりも少なく、好ましくは1〜約4、最も好ましくは2である。単独または組み合わせて用いることができる有用な供給化合物の例としては、トルエン、エチルベンゼン、および他のアルキル置換ベンゼン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、トルアルデヒド類、トルイル酸類、アルキルベンジルアルコール、1−ホルミル−4−メチルベンゼン、1−ヒドロキシメチル−4−メチルベンゼン、メチルアセトフェノン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1−ホルミル−2,4−ジメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、アルキル−、ホルミル−、アシル−、およびヒドロキシメチル−置換ナフタレン、例えば2,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジエチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタレン、2,7−ジエチルナフタレン、2−ホルミル−6−メチルナフタレン、2−アシル−6−メチルナフタレン、2−メチル−6−エチルナフタレン、および上記の部分酸化誘導体が挙げられる。
[00034]それらの対応して置換されている芳香族炭化水素前駆体の酸化によって芳香族カルボン酸を製造するために、例えば、モノ置換ベンゼンから安息香酸、パラ二置換ベンゼンからテレフタル酸、オルト二置換ベンゼンからフタル酸、およびそれぞれ2,6−および2,7−二置換ナフタレンから2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸を製造するためには、比較的純粋な供給材料、より好ましくは所望の酸に対応する前駆体の含量が少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、或いはそれ以上である供給材料を用いることが好ましい。テレフタル酸を製造するために用いるのに好ましい芳香族炭化水素供給材料は、パラキシレンである。安息香酸を製造するために好ましい供給材料はトルエンである。
溶媒:
[00035]液相酸化工程において芳香族供給材料を液相反応させて芳香族カルボン酸生成物にするための溶媒は、好ましくはC1〜C8モノカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、および安息香酸である低分子量モノカルボン酸を含む。芳香族カルボン酸への液相酸化において用いる反応条件下において望ましくない反応生成物への反応性が高分子量のモノカルボン酸よりもより低く、酸化における触媒効果を高めることができるので、より低級の脂肪族モノカルボン酸および安息香酸が好ましい。酢酸が最も好ましい。その水溶液の形態、例えば酸の約80〜約95重量%の溶液の形態の溶媒が、商業的な運転において最も通常的に用いられる。液相酸化反応条件下でモノカルボン酸に酸化するエタノールおよび他の共溶媒材料も、そのままかまたはモノカルボン酸と組み合わせて用いて良好な結果を得ることができる。モノカルボン酸およびかかる共溶媒の混合物を含む溶媒を用いる場合には、好ましくは、同じモノカルボン酸に酸化することができる共溶媒を用いて、溶媒分離工程が更に複雑にならないようにする。
[00036]本発明による液相酸化のための溶媒に関し、種々の気体または液体流の成分に関連して本明細書において用いる「溶媒モノカルボン酸」という表現は、液相酸化のための溶媒として用いるモノカルボン酸と同じ化学組成を有するモノカルボン酸を指す。また、このような用法によって、これらの化学組成物を、酸化副生成物として存在する可能性のある他のモノカルボン酸から区別する。例として、酸化のための液相反応混合物が酢酸溶媒を含む場合には、「溶媒モノカルボン酸」という表現は、酢酸を指すが、本発明にしたがって用いられる芳香族供給材料の通常の部分または中間酸化副生成物である安息香酸およびトルイル酸のような他のモノカルボン酸種は指さない。また、文脈から明らかになるように、「溶媒モノカルボン酸」という表現において用いる「溶媒」という用語は、必然的ではないが、それが指すモノカルボン酸の機能を指す場合がある。而して、再び例として、液相酸化反応混合物の成分として記載する「溶媒モノカルボン酸」は、混合物のための溶媒として存在するが、酸化において生成する高圧蒸気相中に存在する成分、或いはかかる蒸気相から分離される液相の成分として記載する「溶媒モノカルボン酸」は、このモノカルボン酸が溶媒として機能することを示すことは意図してはいない。
触媒:
[00037]液相酸化のために用いる触媒は、芳香族供給材料の芳香族カルボン酸への酸化を触媒するのに有効な物質を含む。可溶性の触媒は、触媒、酸素ガス、および液体供給材料の間の接触を促進するので、好ましい触媒は酸化のために用いる液相反応混合物中に可溶性のものである。しかしながら、不均一系触媒または触媒成分を用いることもできる。通常は、触媒は、約23〜約178の範囲の原子量を有する金属のような少なくとも1種類の重金属成分を含む。好適な重金属の例としては、コバルト、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、セリウム、またはハフニウムのようなランタニド金属が挙げられる。これらの金属の好適な形態としては、例えば、酢酸塩、水酸化物、および炭酸塩が挙げられる。好ましい触媒は、コバルト、マンガン、これらの組み合わせ、並びに1種類以上の他の金属、特にハフニウム、セリウム、およびジルコニウムとの組み合わせを含む。
助触媒:
[00038]好ましい態様においては、液相酸化のための触媒組成物はまた、好ましくは望ましくないタイプまたはレベルの副生成物を生成しないで触媒金属の酸化活性を促進する助触媒も含む。触媒、助触媒、および反応物質の間の接触を促進させるためには、酸化において用いる液体反応混合物中に可溶な助触媒が好ましい。ハロゲン化合物、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン置換炭化水素、ハロゲン置換カルボン酸、および他のハロゲン化化合物が、助触媒として通常的に用いられる。好ましい助触媒は少なくとも1つの臭素源物質を含む。好適な臭素源物質としては、ブロモアントラセン、Br2、HBr、NaBr、KBr、NH4Br、臭化ベンジル、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、テトラブロモエタン、二臭化エチレン、臭化ブロモアセチル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。他の好適な助触媒としては、アセトアルデヒドおよびメチルエチルケトンのようなアルデヒドおよびケトンが挙げられる。
酸素源物質:
[00039]酸化工程の液相反応のための反応物質としてはまた、分子状酸素を含む気体が挙げられる。酸素ガスの源物質としては空気が好都合に用いられる。酸素が富化された空気、純粋な酸素、および通常は少なくとも約10体積%のレベルで分子状酸素を含む他の気体混合物もまた有用である。認識されるように、源物質の分子状酸素含量が増加するにつれて、圧縮器の必要性、および反応器オフガス中の不活性ガスの取り扱いが減少する。空気または他の酸素含有気体混合物をこのプロセスのための酸素源物質として用いる場合には、酸化工程における液相反応によって生成する高圧蒸気相は、窒素、または酸素源物質の他の不活性気体成分を含む。
酸化:
[00040]芳香族供給材料、触媒、酸素、および溶媒の割合は、本発明にとって重要ではなく、反応物質、溶媒、および触媒組成物の選択、並びに所期の芳香族カルボン酸生成物、プロセス設計および運転要因の詳細などの要因によって変動する。約1:1〜約30:1の範囲の溶媒:芳香族供給材料の重量比が好ましく、約2:1〜約5:1がより好ましいが、より高い比およびより低い比、更には数百:1の範囲も用いることができる。酸素ガスは、通常は、芳香族供給材料を基準として少なくとも化学量論量であるが、反応条件、速度、液相反応から得られる高圧蒸気相の有機成分を考慮して、可燃性の混合物が蒸気相中に存在する程には多くない量で用いる。好ましい芳香族供給材料、溶媒モノカルボン酸、触媒組成物、および運転条件を用いる商業的な運転においては、最も通常的には空気の形態で供給される酸素ガスを、好ましくは、芳香族炭化水素供給材料1モルあたり少なくとも約3〜約5.6モルの分子状酸素を与えるのに有効な速度で液相酸化に供給する。液相酸化から得られる高圧の蒸気相は、好ましくは、反応区域における蒸気相の酸素含量が無溶媒基準で測定して約0.5〜約8体積%の酸素を含むような速度で反応から取り出す。他の条件は同じとすると、液相酸化においてより多いかまたはより少ない量の触媒を用いることにより反応速度を増加または減少させることなどによって蒸気相の酸素含量を変動させることにより、酸化における副生成物の生成に影響を与えることができ、例えば約3体積%以下、或いは約0.5〜約2.5体積%のより低い蒸気相酸素含量を用いると、芳香族カルボン酸への芳香族炭化水素供給材料のより完全な転化が起こり、次に芳香族供給材料の酸化副生成物が減少するが、溶媒副生成物の生成が増加する傾向がある。例として、パラキシレン供給材料および酸化のための溶媒として酢酸を用いる液相酸化においては、芳香族カルボン酸生成物を製造するために約0.5〜約3体積%の蒸気相酸素含量が好ましく、この場合には、より高い蒸気相酸素含量における運転と比較して、パラキシレン副生成物のレベルが減少するが、酢酸副生成物が増加する。触媒は、好適には、芳香族炭化水素供給材料および溶媒の重量を基準として、約100ppmwより多く、好ましくは約500ppmwより多く、約10,000ppmw未満、好ましくは約6,000ppmw未満、より好ましくは約3,000ppmw未満の触媒金属の濃度で用いる。好ましくは、ハロゲン助触媒、より好ましくは臭素を含む助触媒を存在させる。かかる助触媒は、触媒金属に対するハロゲンの原子比が、好適には約0.1:1より大きく、好ましくは約0.2:1より大きく、好適には約4:1未満、好ましくは約3:1未満となるような量で存在させる。触媒金属に対するハロゲンの原子比は、最も好ましくは約0.25:1〜約2:1の範囲である。他の条件は同じとすると、酸化反応混合物中における触媒濃度が増加すると、液相酸化における反応速度および酸素ガスの消費が増加し、酸化からの蒸気相中の未反応の酸素のレベルが減少する。
[00041]芳香族カルボン酸を含む生成物へ芳香族供給材料を酸化するための液相反応は、通常は1以上の酸化反応容器を含む好適な酸化反応区域において行う。好適な酸化反応容器は、反応区域において用いられ存在する高温および高圧の条件並びに腐食性の液相および蒸気相内容物に耐え、触媒、液体および気体状の反応物質、並びに溶媒を添加および混合し、芳香族カルボン酸生成物またはかかる生成物を含む液体をその回収のために取り出し、反応熱を制御するために液相反応によって生成する高圧蒸気相を取り出すように構成および構築されている。用いることのできる反応器のタイプとしては、連続撹拌タンク反応器、および栓流(plug flow)反応器が挙げられる。通常は、酸化反応器は、通常は容器をプロセスで使用するために配置した際に垂直方向に伸長する中心軸を有し、液体反応物質を混合し、酸素ガスを液相沸騰反応混合物内に分配するための1以上の混合機構を有する円柱状の容器を含む。通常は、混合機構は、回転可能かまたは他の形態で可動のシャフト上に載置されている1以上のインペラーを含む。例えば、インペラーは、回転可能な中心縦シャフトから伸長していてよい。反応器は、用いる特定の温度、圧力、および反応化合物に耐えるように設計された材料で構築することができる。一般に、好適な酸化反応器は、チタンのような不活性の耐腐食性材料を用いるか、或いは少なくとも液体反応混合物および反応オフガスがその中に含まれる内部空間または容積を画定するそれらの表面をチタンまたはガラスのような材料でライニングして構築される。
[00042]液相酸化のための反応混合物は、芳香族供給材料、溶媒、および触媒を含む成分を配合し、混合物に気体状酸素を加えることによって形成する。連続または半連続プロセスにおいては、成分は、好ましくは、酸化区域に導入する前に1以上の混合容器内で混合する。しかしながら、反応混合物を酸化区域内で形成することもできる。酸素ガスの源物質は、1以上の位置で反応器中に導入することができ、通常は、分子状酸素と他の反応化合物の間の接触を促進させるような方法で、例えば反応容器の内部容積の下部または中間部分内の液体中に圧縮空気または他の気体状酸素源物質を導入することによって導入する。
[00043]芳香族カルボン酸を含む生成物への芳香族供給材料の酸化は、液相反応混合物を保持し、液相反応混合物中に溶解または懸濁した芳香族カルボン酸並びに芳香族炭化水素前駆体の副生成物を含む不純物を形成し、その気体成分が、主として、溶媒モノカルボン酸(例えば、酸化反応溶媒が酢酸を含む場合には酢酸)、および水、並びに少量の溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物、例えば、低級アルコールおよびその溶媒モノカルボン酸エステル(例えば、溶媒が酢酸を含む場合にはメタノールおよび酢酸メチル)、並びに芳香族炭化水素供給材料の酸化副生成物、例えば部分および中間酸化生成物(例えば、芳香族供給材料がパラキシレンを含む場合には安息香酸およびp−トルイル酸)である高温および高圧の蒸気相を生成するのに有効な酸化反応条件下で行う。蒸気相の溶媒副生成物の含量は、通常は、約0.5〜約2重量%の範囲である。芳香族炭化水素前駆体副生成物のレベルは、通常は、約0.01〜約0.05重量%である。高圧の蒸気相は、通常は、蒸気相中に入る未反応の芳香族供給材料および酸素ガスも含む。商業的スケールの運転において通常実施されているように空気を用いるか、或いは窒素または他の不活性ガス成分を含む他の酸素ガス源物質を用いる場合には、蒸気相はこれらの不活性成分も含む。酸化によって生成する熱は、液相反応混合物を沸騰させ、反応区域から塔頂蒸気相を取り出すことによって消散する。
[00044]概して、液相反応の温度は、約120℃以上、好ましくは約140℃以上であるが、約250℃未満、好ましくは約230℃未満に維持する。テレフタル酸、安息香酸、およびナフタレンジカルボン酸のような芳香族カルボン酸生成物の製造においては、約145℃〜約230℃の範囲の反応温度が好ましい。約120℃より低い温度においては、液相酸化は、経済的に魅力がないか、或いは製品品質に悪影響を与える可能性がある速度または転化率で進行する可能性がある。例えば、約120℃未満の温度でのパラキシレン供給材料からのテレフタル酸の製造は、実質的に完了するまで進行させるのに24時間より長くかかる可能性があり、得られるテレフタル酸生成物は、その不純物含量のために更なる処理が必要な可能性がある。250℃より高い温度は、望ましくない燃焼および溶媒の損失の可能性のために好ましくない。液相反応混合物の圧力を用いて、液相反応混合物が沸騰する温度を制御することができ、これは実質的に液相の反応混合物が保持されるように選択される。約5〜約40kg/cm2ゲージ圧の圧力が好ましく、特定のプロセスに関して好ましい圧力は、供給材料および溶媒の組成、温度、および他の要因によって変動し、より好ましくは約10〜約30kg/cm2の間の範囲である。約7〜約21kg/cm2の反応圧力において、溶媒として酢酸を含む反応混合物、および液相反応から得られる蒸気相の温度は、約170〜約210℃である。反応容器内での滞留時間は、与えられた処理量および条件に適するように変動させることができ、一定範囲のプロセスには約20〜約150分が一般的に適している。幾つかの芳香族カルボン酸の製造、例えば反応混合物のために酢酸溶媒を用いるパラキシレン供給材料からのテレフタル酸の製造のためには、沸騰液相反応混合物中の固形分含量は、液体反応混合物の約50重量%程度の高さであってよく、約10〜約35重量%のレベルがより通常的である。芳香族酸生成物が反応溶媒中に実質的に可溶であるプロセスにおいては、液体中の固形分濃度は無視できる量である。芳香族カルボン酸の製造における当業者に認識されるように、好ましい条件および運転パラメーターは、異なる生成物およびプロセスによって変動し、上記に示した範囲内或いは更にはこれを外れて変動する可能性がある。
[00045]液相酸化反応の生成物は、芳香族供給材料から酸化された芳香族カルボン酸、液相反応の結果として生成した副生成物を含む不純物、および、上記に記載したように、反応温度を制御するために蒸気相を除去するための液相反応混合物の沸騰を含む液相反応から得られる高圧の蒸気相を含む。芳香族供給材料の副生成物の具体例としては、トルイル酸類、トルアルデヒド類、カルボキシベンズアルデヒド類、およびヒドロキシメチル安息香酸類のような部分または中間酸化生成物が挙げられる。液相反応の副生成物はまた、反応溶媒から酸化されたメタノールおよび他の低級脂肪族アルコール、並びにかかるアルコールと溶媒との反応によって生成するエステル(その例としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチルなどが挙げられる)のような溶媒反応生成物も含む。副生成物は、通常は、液相酸化反応混合物およびそれから得られる蒸気相の一方または両方の中に存在する。炭素酸化物副生成物が、溶媒、供給材料、またはこれらの副生成物の酸化から得られる可能性がある。助触媒として臭素源物質を用いて液相反応を行う本発明の幾つかの態様においては、副生成物はまた、通常は、低級アルキル臭化物、例えば、反応溶媒として酢酸を用いる場合には、通常は臭化物イオンと酢酸の反応によって形成される臭化メチルも含む。上記のように、これらの臭素含有副生成物および不純物は、液相反応混合物およびそれから生成する高圧の蒸気相の一方または両方の中に存在する可能性がある。本発明方法の幾つかの態様、例えば、液相酸化からの固体生成物を精製し、母液または精製工程液体若しくはその成分を含む他の再循環流を、還流液として液相酸化またはオフガス分離に直接かまたは間接的に移す態様においては、精製液体中に繰り越される安息香酸およびトルイル酸類のような更なる副生成物、並びに精製工程から得られる種々の副生成物化合物の水素化誘導体、並びに精製中に導入される酸化への未反応の芳香族炭化水素供給材料も、液相酸化反応混合物およびオフガスに導入することができる。
[00046]また水も、酸化工程における液相反応の副生成物として生成する。しかしながら、水は、例えば水性モノカルボン酸溶媒を用いる場合にはそれへの添加の結果として液相反応混合物中にも、或いは他のプロセス工程からの再循環流中にも存在する可能性があるので、また、副生成物としてかまたは意図的な添加としてかに拘わらず酸化工程において存在する相当量の水のために、且つ反応水と意図的に加えられた水の間の区別が不可能であるかまたはその必要がないために、本明細書において用いる「液相反応の副生成物」という表現および同様の表現は、他に示さない限りにおいて水は指さない。同様に、本明細書において種々のプロセス液体、気体、または流れの成分として水または水蒸気を記載する場合には、他に示すかまたは記載から明らかである場合を除き、水が液相酸化からの副生成物水であるか、プロセス中に意図的に加えられたものであるか、或いは両方のものであるかは問わない。
[00047]液相酸化からの液体反応混合物の一部の中にスラリー化または溶解している芳香族カルボン酸反応生成物は、その中に含まれる芳香族カルボン酸反応生成物を回収するために好適な任意の技術を用いて処理することができる。通常は、液体反応混合物中にスラリー化、溶解、またはスラリー化且つ溶解している芳香族カルボン酸生成物および酸化への芳香族供給材料の副生成物は、液相反応に用いた反応区域から取り出し、好適な技術によって回収する。而して、本発明方法による液相酸化には、酸化反応に加えて、液相酸化反応混合物から、芳香族カルボン酸および反応副生成物を含む不純物を含む生成物を回収することを含む工程を含ませることができる。生成物は、好ましくは固体生成物として回収する。
[00048]液体中に溶解している可溶性生成物は結晶化によって回収することができ、これは、通常は、酸化反応区域から取り出される液体スラリーまたは溶液を冷却して、それにかかる圧力を解放することによって行う。液体中にスラリー化している固体生成物、および反応液体または結晶化溶媒から結晶化する固体は、遠心分離、濾過、またはこれらの組み合わせによって液体から好都合に分離する。かかる技術によって反応液体から回収される固体生成物は、芳香族カルボン酸、および芳香族供給材料の副生成物を含む不純物を含む。液体反応混合物から固体生成物を回収した後に残留する液体は、酸化母液とも呼ばれ、溶媒モノカルボン酸、水、触媒および助触媒、液相酸化の可溶性副生成物、および再循環流などから存在する可能性がある不純物を含む。母液は、通常は、少量の芳香族カルボン酸、および液体から未回収で残留する芳香族供給材料の部分または中間酸化生成物も含む。母液は、好ましくは、少なくとも一部を少なくとも1つの液相酸化の反応区域に戻して、触媒、助触媒、溶媒、および所望の芳香族カルボン酸に転化することができる副生成物のような液相反応において有用なその成分を再使用することができるようにする。
[00049]本発明の好ましい態様においては、芳香族カルボン酸および液相酸化反応の副生成物を含む酸化からの液相反応混合物を、単一の結晶化容器、或いは初めの段階から後の段階へ温度および圧力を逐次的に低下させて生成物回収率を増加させる一連の結晶化容器内のような1以上の段階での結晶化によって液体から回収する。例えば約140〜約250℃の範囲の酸化反応温度および約5〜約40kg/cm2ゲージ圧の範囲の圧力から約110〜約150℃の範囲の最終結晶化温度および雰囲気圧〜約3kg/cm2の圧力での、2段階〜4段階の結晶化によって、固体芳香族酸生成物の実質的な結晶化が与えられる。結晶化によって固体生成物から分離される母液は、上記に記載のように液相反応に戻すことができる。反応液体のフラッシングまたは他の圧力降下の結果として形成される気相を除去することによって結晶化のために用いた容器から熱を除去し、好ましくは1以上の段階から取り出される蒸気相を凝縮し、以下において議論するように、直接、または1以上の更なる回収段階を介して間接的に、少なくとも一部を液相酸化において用いるために反応区域に戻す。
[00050]通常は芳香族カルボン酸、および芳香族供給材料の中間酸化生成物のような酸化副生成物を含む不純物を含む、液相酸化から回収される固体生成物は、任意の好適な技術によって、固体生成物の回収から得られる液相酸化母液から分離することができる。例としては、遠心分離、真空濾過、加圧濾過、およびベルトフィルターを用いる濾過が挙げられる。得られる固体生成物は、好ましくは、分離した後、純水のような水を含む液体、或いは、直接かまたは反応区域に戻される酸化母液再循環流または他の液体のような他の液体と組み合わせて酸化に有益に再循環することができる、少量の溶媒モノカルボン酸、触媒、芳香族供給材料、酸化副生成物、またはこれらの組み合わせを含む洗浄液で洗浄する。回収された固体の不純芳香族カルボン酸の酸化母液からの分離、および固体生成物の洗浄は、米国特許第5,679,846号明細書、および米国特許第5,200,557号明細書に開示されているような加圧フィルターを用いる加圧下での溶媒交換濾過によって好都合に行うことができる。かかる分離のために好ましい濾過装置は、米国特許第5,200,557号明細書により詳しく記載されているBHS Festフィルターである。濾過ケーキから取り出される母液および洗浄液は、直接または間接的に液相酸化に移すことができる。多段階で、純度を徐々に増加させた洗浄液を用いて、例えば下流段階においてフィルターケーキから取り出された液体を従前の段階における洗浄液として用いて固体生成物の濾過および洗浄を行うことにより、酸化に戻すために濾過した固体から置換される溶媒モノカルボン酸を濃縮することによって更なる有利性を与えることができる。より具体的な態様においては、かかるポジティブディスプレイスメント式濾過から得られる洗浄液で湿潤している濾過ケーキを、最終洗浄段階から乾燥段階に送り、ここで場合によっては、ケーキから残留液体を実質的に除去するために、通常は弱〜中程度の加圧下で不活性ガスと接触させる。芳香族酸および副生成物を含む固体生成物を洗浄し、それから洗浄液を実質的に除去した後、得られる固体を乾燥して、貯蔵工程、或いは固体生成物の精製のための反応溶液の調製を包含することができる他の工程に送ることができる。好ましくは、精製に送られる固体生成物中の残留溶媒モノカルボン酸のレベルは、約5,000重量ppm(ppmw)以下である。固体生成物は、窒素または他の不活性ガスの流動流によって乾燥して、残留溶媒レベルを減少させることができる。
[00051]本発明方法による酸化工程の液相反応において形成される芳香族カルボン酸反応生成物に加えて、上記の溶媒モノカルボン酸、水、および液相酸化の副生成物を含む高圧の蒸気相が生成する。この蒸気相は、通常は、少量の未反応の芳香族供給材料、未消費の酸素ガス、および存在する場合には酸素源物質の不活性成分も含む。反応区域中に存在する蒸気相の温度および圧力は、液相反応の条件に対応する。本発明によるオフガス分離によって、液相酸化反応から回収される高温で高圧のオフガスから、材料、および幾つかの態様においてはエネルギー、並びにこれらの組み合わせが回収される。
モノカルボン酸に富む第1の液相、および水に富む第2の液相の分離:
[00052]本発明方法によるオフガス分離は、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に選択的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧の蒸気相に選択的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、および酸化副生成物を、少なくとも1つの溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、および少なくとも1つの溶媒モノカルボン酸を実質的に含まない水に富む第2の液相、並びに少なくとも1つの溶媒モノカルボン酸が減少した水蒸気を含む第2の高圧の蒸気相に実質的に分離することができる分離区域に、液相酸化の反応区域から取り出される蒸気相を移すことを含む。溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、並びに溶媒モノカルボン酸およびその酸化副生成物を実質的に含まない水に富む第2の液相、並びに芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧の蒸気相が、分離区域から取り出される。分離は、高圧の蒸気相で、それから蒸気相が取り出される液相酸化工程における蒸気相の温度および圧力よりもそれほどは低くない温度および圧力において行う。
[00053]より詳しく説明すると、分離は、高温および高圧において蒸気相で運転して、分離から取り出される液相の溶媒副生成物の含量および気相の芳香族炭化水素酸化副生成物の含量が最小になるように、蒸気相中の水および溶媒モノカルボン酸を実質的に分離して、酸化からの副生成物を分離から得られる液相および蒸気相の中に分配することができる分離区域に、液相酸化のために用いた反応容器から取り出される高温および高圧の蒸気相を送ることを含む。高圧の蒸気相は、分離装置が酸化反応容器または他の反応区域に直接または近接して載置されている場合などには、液相酸化工程の反応区域から分離区域に直接、或いは例えば移送を行うための好適な導管、バルブ、ポンプなどを用いて間接的に移すことができる。液相酸化からの高圧および高温の蒸気相の少量の部分を、高圧水蒸気または熱交換流体の生成のような他の用途に送ることができる。好ましくは、分離に送られる蒸気相は、十分に高い温度および圧力で保持されているので、分離区域に導入される蒸気相のエネルギー含量は少なくとも実質的に保持され、蒸気相は、分離区域に供給される還流液と接触して分離するために十分な熱を与える。最も好ましくは、分離区域への蒸気相の移送は、分離区域に導入される蒸気相の温度が液相酸化における反応温度よりも約10℃以上低くならず、分離区域に導入される蒸気相の圧力が液相酸化における圧力よりも約3kg/cm2以上低くならないように、反応区域から直接、または好適な圧力定格配管を介する流路によって行う。分離区域はまた、高温および高圧で、好ましくは反応区域中に存在する高圧の蒸気相の温度および圧力よりもそれほどは低くない温度および圧力で運転して、反応区域からの蒸気相のエネルギー含量の損失を回避するように設計される。より好ましくは、分離区域は、酸化工程における蒸気相の圧力の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%の圧力下で蒸気相を処理するように設計される。分離区域の装置の圧力定格は、好ましくは、蒸気相がそれから分離に送られる本発明方法の酸化工程の酸化反応容器または区域の定格の少なくとも約80%、より好ましくは約90〜約110%である。分離区域における蒸気相の温度は、好ましくは約140〜約200℃、より好ましくは約160〜約185℃の範囲である。約5〜約40kg/cm2の圧力が好ましく、約10〜約20kg/cm2がより好ましい。
[00054]分離区域は、分離に導入される高圧蒸気相中の溶媒モノカルボン酸および水蒸気を実質的に分離することができる。好ましくは、分離区域は、分離から得られる高圧の気体が、分離区域に導入される蒸気相の溶媒モノカルボン酸含量の約10%以下、より好ましくは約5%以下を含むように、高圧の蒸気相中の水および溶媒を分離することができる。より好ましくは、分離からの第2の高圧の気体流出物の溶媒モノカルボン酸含量は、分離区域に導入される蒸気相の溶媒モノカルボン酸含量の約2%以下、更により好ましくは約1%以下である。分離区域はまた、酸化への芳香族供給材料の副生成物を少なくとも1つの液相に、およびそうでなければ通常は分離を行う温度および圧力において蒸気相および液相の両方に分配される溶媒モノカルボン酸の副生成物を第2の高圧の蒸気相に選択的に分配するのにも適している。例えば、酢酸溶媒を含む液相反応混合物中におけるパラキシレン供給材料の液相酸化の場合においては、パラキシレンの安息香酸およびp−トルイル酸副生成物、並びに酢酸のメタノールおよび酢酸メチル副生成物を、実質的に大きなレベルで蒸気相と液相の間に分配することができる。分離区域は、第2の高圧の蒸気相が、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まず、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約1〜約5重量%を含むように副生成物を分配することができる。第1の溶媒モノカルボン酸が富化された液相、および第2の水が富化された液相に取り出される芳香族炭化水素前駆体の副生成物は、好ましくは第1の相に選択的に分配され、より好ましくは、その約75重量%、更により好ましくは少なくとも約85重量%〜約100重量%が第1の液相中に存在し、その約25重量%以下、更により好ましくは約2〜10重量%が第2の液相中に存在するように第1の相に選択的に分配される。アルコールおよびその溶媒酸エステルを含む溶媒モノカルボン酸の副生成物は、好ましくは入口の高圧の蒸気相中の水および溶媒モノカルボン酸の分離から得られる第2の高圧の蒸気相に分配され、好ましくは第2の水が富化された液相が約10重量%以下、より好ましくは約1〜約4重量%以下のかかる副生成物を含むように分配される。
[00055]本発明によるオフガス分離のための分離区域には、上記に記載のように、液相酸化から取り出される高温および高圧の蒸気相中の溶媒モノカルボン酸および水を実質的に分離して、高温および高圧において装置中に存在する酸化副生成物を分配して、溶媒モノカルボン酸に富む液相、水が富化された第2の液相、および水を含む第2の高圧の蒸気相を得るのに好適な任意の装置または手段を含ませることができる。
[00056]一態様においては、好ましい分離区域は、液相反応区域から分離区域に導入される高圧の蒸気相中の溶媒モノカルボン酸が、蒸気相から液相に実質的に取り出されて、溶媒モノカルボン酸が富化された第1の液相を形成し、且つ得られる溶媒モノカルボン酸が減少した高圧の蒸気相からの水が、水が富化された第2の液相を分離区域から排出するために還流液相中に取り出されるように、蒸気と、それを通して対向流で流れる還流液相と間の接触を行わせるのに適している。分離における条件下で蒸気相および液相の両方の間に分配される傾向を有する液相酸化への芳香族供給材料の酸化副生成物は、液相酸化から分離区域に導入される高圧の蒸気相中に存在し、また、それに供給される還流液中で分離区域中に導入される可能性もある。酸化からの高圧の蒸気相から溶媒モノカルボン酸が取り出される液相に分配されるかかる副生成物は、第1の液相中に取り出すことができる。溶媒モノカルボン酸が減少した蒸気相中に存在するかかる副生成物は、更にその液相に分配され、また、還流液相との接触によって溶媒が減少した蒸気相からの水が取り出される液相にも導入される。蒸気相と液相の間に分配される傾向を有する溶媒モノカルボン酸の副生成物は、分離区域に導入される酸化からの高圧の蒸気相中に存在する可能性がある。これらはまた、分離区域に供給される還流液中に存在する可能性もある。分離装置において還流液相中に存在するかかる副生成物は、還流液によって蒸気相からストリッピングされる。
[00057]かかる分離装置内における還流液の流れは、蒸気相から液相に取り出されたかまたは分配された液体成分、並びに液相中に存在するかまたは残留する分離区域に供給される還流液の成分を含む。
[00058]本発明のより具体的な態様による好ましい分離区域は、分離区域の複数の部分または区域を通して、対向流で液相と蒸気相の間の段階的な接触を行うように構成されている。蒸気相流は、好ましくは分離区域の複数の部分を通る上昇流であり、液相流は、好ましくはそれを通る下降流である。水、溶媒モノカルボン酸、および副生成物の分離は、分離区域の第1の部分を通って第2の部分、更に第3の部分への蒸気相流が、分離区域の第3の部分を通って第2の部分、更に第1の部分への還流液相の対向流と接触するように、反応区域から取り出された高圧の蒸気相を分離区域の第1の部分へ、還流液を分離区域の第3の部分へ送ることによって行う。第3の部分へ供給される還流液は、水を含み、好ましくは液相酸化のための芳香族供給材料の酸化副生成物を実質的に含まない。対向流で流れる蒸気相および還流液相中の水および溶媒モノカルボン酸は、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、および高圧の溶媒モノカルボン酸が減少した中間蒸気相が形成されるように、第1の部分において実質的に分離される。第1の部分からの溶媒に富む第1の液相は、分離区域から取り出すために回収する。分離装置の第1の部分から第2の部分への蒸気相流は、第1の部分からの中間蒸気相を含む。第2の部分において対向流で流れる蒸気相および還流液相中の水および副生成物は、芳香族炭化水素前駆体の副生成物が還流液相に取り出され、溶媒モノカルボン酸および芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない水蒸気を含む高圧の第2の中間蒸気相が形成されるように分離される。分離区域の第2の部分から第3の部分への蒸気相の流れは、第2の中間蒸気相を含む。第3の部分において対向流で流れる蒸気相および還流液相中の水および溶媒モノカルボン酸の副生成物は、溶媒モノカルボン酸およびその副生成物を実質的に含まない水が富化された第2の液相、並びに水蒸気および溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧の蒸気相が形成されるように分離される。第3の部分からの水が富化された第2の液相は、その中に第1の液相が排出されるものとは別の液体流で分離装置から排出するために回収される。第2の高圧の蒸気相は、排出ガスとして分離装置から取り出される。分離区域を通る還流液相の流れは、水を含む更なる還流液を分離区域の1以上の部分に供給することによって補給することができる。好ましい態様においては、水を含む液体は、かかる分離区域の第2の部分と第3の部分の間に更なる還流として供給される。
[00059]かかる段階的分離において、分離区域の第1の部分は、好ましくは、溶媒の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも約98重量%が第1の液相に取り出されるように、溶媒モノカルボン酸および水を分離することができる。第2の部分は、好ましくは、第2の高圧の蒸気相が、第1および第2の液相並びに第2の高圧の蒸気相中に存在するかかる副生成物の量の約10%以下、より好ましくは約1〜約5%を含むように、液相酸化のための芳香族前駆体の副生成物を第1および第2の液相に分配することができる。分離区域の第3の部分は、好ましくは、第2の液相が、第1および第2の液相並びに第2の高圧の蒸気相中に存在するかかる副生成物の量の約10%以下、より好ましくは約1〜約4%を含むように、溶媒モノカルボン酸の液相酸化副生成物を第2の高圧の蒸気相に分配することができる。
[00060]好ましい態様においては、分離区域の第1の部分は、液相酸化から分離区域中に取り出される高圧の蒸気相を受容するための入口と、水を含む液体を還流として分離区域に導入するための入口との間に配置されている分離区域の領域として規定される。分離区域の第2の部分は、水を含む液体を還流として第1の部分に供給するための入口と、第3の部分から回収される水に富む第2の液相を取り出すための出口との間に配置されている区域の一領域によって規定される。第3の部分は、第3の部分から回収される水が富化された第2の液相を取り出すための出口と、液相酸化のための芳香族供給材料の酸化副生成物を実質的に含まない水を含む液体を分離装置に導入するための入口との間の領域として規定される。
[00061]本発明の幾つかの態様によれば、水、溶媒モノカルボン酸、および副生成物を分離および選択的に分配するための分離区域は、液相酸化からの高圧の蒸気相中の水および溶媒モノカルボン酸を実質的に分離するための、少なくとも約20の理論平衡段を有する分別区域を含む。より好ましくは、かかる分別区域は約20〜約60の理論平衡段を有する。水、および芳香族供給材料の酸化副生成物を分離するためには、少なくとも約2の理論平衡段を有する分別区域が好ましい。より好ましくは、かかる分別区域は約2〜約10の理論平衡段を与える。水および溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物を分離するための分別区域は、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは約1〜約10の理論平衡段を有する。
[00062]好ましい分離装置は、物質を相間で移動させるために、時には「理論段」とも呼ばれる、流動する気相および液相の成分を分離して選択的に分配するように構成されている複数の理論平衡段で、それを通って流れる気相と液相との間の接触を行うように設計されている、しばしば蒸留カラムおよび塔、脱水塔、精留カラム、水除去カラム、および高効率分離装置と呼ばれる種々のカラムまたは塔である。流動する気相と液相との間の接触は、気液接触のための表面および分離のための理論平衡段を与えるトレーまたは充填材のような内部構造体によって促進される。酸化から取り出される高圧の蒸気相の温度は、通常は十分に高く、液相酸化反応によって与えられるものを超えて再沸騰させる能力は必要ない。分離装置における気相と液相との間の接触を促進させるためには、酸化からの高圧の蒸気相を装置の下部部分において導入し、還流液を少なくとも1つ、好ましくは2以上の上部部分において導入することなどによって気相と液相の対向流を形成することが好ましい。
[00063]本発明による分離区域は、単一の装置、或いは塔、カラム、または他の構造物のような直列の複数の装置を含んでいてよい。2以上の装置を直列で用いる場合には、それらは、酸化反応容器から取り出される高圧の蒸気相が直列の装置中に流れ、直列の装置の中をこれを通って流れる蒸気および還流液の反対方向の流れの中の溶媒モノカルボン酸、水、および副生成物の分離および分配が行われるように、構成され、それぞれの入口および出口が連通される。
[00064]分離区域に供給される還流液は水を含む。水を含み、分離に有害な不純物を実質的に含まない任意の好適な液体の源物質を用いることができる。脱塩水または他の精製源物質を用いることができるが、還流液の好ましい源物質としては、本発明方法による分離および/または凝縮区域から取り出される高圧の気体から凝縮される液体が挙げられる。他の好ましい態様においては、分離への還流が精製母液を含むように、少なくとも1つの精製液体反応混合物からの精製芳香族カルボン酸生成物の回収において得られる精製母液を分離に送る。最も好ましくは、分離に関する還流液は、かかる精製母液、および分離区域から取り出される高圧の気体から凝縮される水を含む液体を含み、これは、個別に、或いは1以上の個々の流れで組み合わせて分離に供給することができる。
[00065]上記に記載した本発明の好ましい態様による段階的分離においては、精製母液を含む還流液を、区域の第2の部分を通してその液相成分を流すために分離区域に導入し、分離区域から取り出される第2の高圧の蒸気相から回収される凝縮液を、第3の部分を通して流すために導入する。精製母液は、通常は、精製から得られるその水素化誘導体などの液相酸化への芳香族炭化水素供給材料の副生成物を含むが、かかる副生成物は、分離において回収される液相、および主としてメイクアップ溶媒(make-up solvent)を与えるために酸化に戻すのに好適な溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相に選択的に分配される。分離区域から取り出される第2の高圧の蒸気相から凝縮される水を含む液体は、芳香族供給材料の副生成物を実質的に含まないが、分離において第2の高圧の蒸気相中にストリッピングされ、次に第2の高圧の気体から凝縮される水を含む液体中に存在する可能性がある溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む可能性がある。分離区域の第3の部分に供給される還流液中で分離に戻されるかかる副生成物は、分離において第2の高圧の蒸気相中にストリッピングされて戻される。分離からの第2の高圧の蒸気相から回収される凝縮液の一部を、パージするか或いはかかる副生成物の回収のための処理に送る本発明の好ましい態様においては、かかる副生成物の望ましくない蓄積が抑止される。
[00066]還流液は、好ましくは、酸化から蒸気相で分離区域に移される液相酸化反応の熱を冷却するのに有効な速度および温度で供給する。分離区域が、蒸気相を酸化から分離へ実質的に直接移送するために液相酸化から反応容器に接続している場合には、反応容器はリボイラーとして機能する。かかる態様においては、液体還流を分離区域に供給する速度は、好都合には、液相酸化に導入される芳香族供給材料の重量に対する、この区域に供給される液体の重量として表される。好ましくは、本発明方法によって分離区域に供給される還流液は、約120〜約170℃、より好ましくは約130〜約160℃の範囲の温度である。かかる温度においては、液体は、好ましくは、液相酸化に導入される芳香族前駆体の重量あたり約4〜約5重量部の液体の速度で分離に供給される。還流液を分離区域の異なる段階に別々に供給する場合には、それは、好ましくは、分離区域の第1段階へ供給される還流が、還流液の体積流量の少なくとも40%、より好ましくは約60〜約90%を構成するように、異なる段階の間に分配する。
[00067]液相酸化工程から取り出され、分離区域中に導入される高圧の蒸気流中に含まれる水および溶媒モノカルボン酸の蒸気は、水が減少した溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相が回収されるように分離される。分離される第1の液相は、好ましくは、少なくとも約60重量%の溶媒モノカルボン酸、および約35重量%以下の水を含む。より好ましくは、分離される液相の含水量は約15〜約30重量%である。分離からの液体流はまた、分離区域において洗浄されるかまたは第1の液相中に移される、少量のより重質の不純物、例えば芳香族供給材料の部分または中間酸化副生成物、およびその水素化誘導体、例えば安息香酸、並びに、酸化において用いる芳香族前駆体に応じてm−トルイル酸および/またはp−トルイル酸も含む。第1の液相はまた、芳香族カルボン酸生成物および触媒金属のような他の成分も含む可能性がある。かかるより重質の成分の含量は、約2重量%程度の高さであってよいが、好ましくは約0.5重量%以下である。
[00068]分離区域において蒸気相から凝縮される溶媒モノカルボン酸に富む液相は、液相酸化のための溶媒の有益な供給源である。上記に記載したように、これはまた、芳香族供給材料の酸化副生成物、および酸化に戻して、所望の芳香族カルボン酸に転化するのに好適な他の成分も含む可能性がある。液体凝縮物に関する他の好適な用途としては、酸化母液または結晶化溶媒から回収される液相酸化の固体生成物を固液分離するために用いるロータリー真空フィルターまたは他の装置のための洗浄液、並びに本プロセスにおいて用いる場合には酸化乾燥器スクラバーのようなスクラバーに対する補給物(make up)が挙げられる。本発明方法の好ましい態様においては、分離区域から取り出される分離された第1の液相の少なくとも一部、より好ましくは全部または実質的に全部を、反応容器に直接か、或いは反応区域へメイクアップ溶媒を供給するために用いる保持容器に供給して液相酸化に戻す。かかる態様においては、分離区域に導入される高圧の蒸気相中の水および溶媒モノカルボン酸は、好ましくは、分離から得られる液相が約15〜約30重量%の水を含み、より好ましくは分離された液体の含水量、およびプロセスからの他の液体流中で酸化に戻される水が、酸化の芳香族カルボン酸生成物を回収および分離するために酸化から取り出される高圧の塔頂蒸気相および液体水中において、酸化から取り出される水蒸気と実質的に均衡するように分離される。
第2の液相:
[00069]分離から回収される第2の液相は、水が富化されており、液相酸化からのその溶媒モノカルボン酸副生成物を実質的に含まない。これは、本発明による分離においてかかる副生成物を液相に選択的に分配する結果として、少量の液相酸化への芳香族供給材料の副生成物を含む可能性がある。第2の液相の溶媒モノカルボン酸の含量は、通常は、約5重量%未満、好ましくは約1/2〜約3重量%である。溶媒副生成物のレベルは、通常は、約1重量%以下、好ましくは約0.05〜約0.2重量%である。第2の液相中に存在する芳香族供給材料の副生成物は、通常は、約0.003〜約0.1重量%、好ましくは約0.005〜約0.05重量%の範囲である。第2の液相は溶解O2および気体状臭化メチルを更に含み、ここでO2は約2.2ppmwの量で存在し、臭化メチルは約0.03ppmwの量で存在する。
[00070]しかしながら、溶解O2および臭化メチルを除去するための更なる処理の前にプロセスの他の部分において回収される第2の液相を用いると、腐食を引き起こす可能性があることが見出された。したがって、第2の液相は、その中に存在しているかまたは溶解している腐食性化合物の量を減少させて、その腐食効果を減少させるために更なる処理にかけなければならない。驚くべきことに、分離区域から排出された状態の第2の液相をフラッシングすることにより、処理された第2の液相中に溶解している溶解O2および臭化メチルの量が、フラッシングの後において、O2の量が約1.0ppmw未満であり、より好ましくはO2の量が約0.5ppmw未満であり、更により好ましくはO2の量が約0.05ppmw未満であり、最も好ましくはO2の量が約0.006ppmw未満であり、臭化メチルの量が約0.02ppmw未満であり、より好ましくは臭化メチルの量が約0.01未満であり、更により好ましくは臭化メチルの量が約0.009未満であり、最も好ましくは臭化メチルの量が約0.006ppmw未満である状態まで減少することが見出された。ここで用いる「フラッシング」または「フラッシングされた」と言う用語は、第2の液相が分離区域からフラッシュタンク中に排出される際に経験する、分離区域において約5kg/cm2〜約40kg/cm2の範囲の圧力の、フラッシュタンク内における大気圧または周囲圧力への速やかな低下、或いはより好ましくは、分離区域において約10kg/cm2〜約20kg/cm2の範囲の圧力の、フラッシュタンク内における大気圧または周囲圧力への速やかな低下を指す。
[00071]溶解O2および臭化メチルを減少または排除するために第2の液相を処理する他の方法は、第2の液相が分離区域から排出され、大気圧または周囲圧力のフラッシュタンク内に分配された後に、第2の液相を水蒸気ストリッピングすることである。溶解O2および臭化メチルを減少または排除するために第2の液相を処理する更に他の方法は、第2の液相が分離区域から排出されて、大気圧または周囲圧力のフラッシュタンク内に配された後に、気体状窒素を用いて第2の液相をストリッピングすることである。更に他の態様においては、第2の液相は、約5〜約40kg/cm2の圧力、より好ましくは約10〜約20kg/cm2の圧力下にある状態で水蒸気または窒素でストリッピングする。
[00072]処理された第2の液相は、ここでより完全に記載するように、不純形態の芳香族カルボン酸を精製するためのプロセスの1以上の工程において水を含む液体として用いるのに好適である。処理された第2の液相に関する他の用途としては、酸化母液を分離するために用いる固液分離装置に対するシールフラッシュ液、および液相酸化反応混合物から回収される不純固体芳香族カルボン酸生成物からの洗浄液が挙げられる。
第2の高圧の気体:
[00073]分離から得られる第2の高圧の気体は、相当体積の水を含み、溶媒モノカルボン酸を比較的含まない。好ましくは、この気体は、少なくとも約55体積%、より好ましくは少なくとも約65体積%の水を含む。この気体の溶媒モノカルボン酸含量は、概して、約5重量%未満、好ましくは約3重量%未満である。この気体はまた、未反応の芳香族供給材料および液相酸化の副生成物も含む可能性があるが、これらは通常は約2重量%以下の少量または微量で存在する。分離からの加圧気体の酸素ガス含量は、通常は、約4体積%以下、好ましくは約1〜約4体積%の範囲である。通常は窒素および炭素酸化物などの酸素源の不活性ガス成分は、加圧ガスの約45体積%以下を構成する可能性があり、気体酸素源として空気を用いる場合には、加圧気体の窒素含量は、通常は約30〜約40体積%の範囲である。
[00074]好ましくは、分離からの第2の高圧の蒸気相の圧力は、液相酸化反応における圧力よりも約1kg/cm2ゲージ圧以下低い。分離からの高圧の気体の温度は、好ましくは、液相酸化反応の温度よりも約20℃以下低く、より好ましくは酸化反応温度よりも約5℃〜約15℃低い。好ましくは、分離からの高圧の気体は、約100℃より高く、より好ましくは約120℃より高く、約250℃未満、より好ましくは約230℃未満の温度である。分離の後に残留する加圧ガスの圧力は、約4〜約40kg/cm2ゲージ圧である。
[00075]分離から取り出される第2の高圧の蒸気相は、酸化からの溶媒モノカルボン酸、並びに芳香族供給材料および溶媒の副生成物のような有機不純物を実質的に含まない水を含む液体凝縮物を蒸気相から凝縮するために凝縮区域に送ることができる。凝縮区域には、凝縮区域に導入される高圧の気体から有機不純物を実質的に含まない水を凝縮するのに有効な任意の手段を含ませることができる。好ましくは、これは、高圧の気相と、ヒートシンク材料、好ましくは熱交換流体との間の間接的な熱伝達を与えるのに有効な1以上の凝縮器または熱交換手段を含む。単一の装置、または直列の複数の装置を用いることができる。シェル・チューブ型熱交換器およびケトル型凝縮器が好ましい装置の例である。好ましくは、それから熱エネルギーおよび物質の両方を実質的に回収することを可能にするために、分離からの高圧蒸気の全部または実質的に全部を凝縮区域に送る。冷却は、好ましくは、凝縮区域に導入される気体の圧力から実質的に減少していない圧力下の凝縮区域排ガスが、液体凝縮物を凝縮した後に残留し、凝縮手段から排出されるような条件下で行う。この加圧された凝縮区域排ガスは、分離区域からの高圧の気体の凝縮できない成分、気体反応副生成物を含み、また、液相酸化オフガス、或いは分離に送られ、第2の高圧の蒸気相中に未分離で残留する還流液からの少量の芳香族供給材料も含む可能性がある。凝縮区域からの排ガスは、最も好ましくは、約50〜約150℃の温度で、凝縮区域への入口ガスの圧力よりも約3kg/cm2以下低い圧力下である。より好ましくは、分離装置から取り出される気体と、液体凝縮物の凝縮後の凝縮区域排ガスとの間の圧力差は、約2kg/cm2以下、最も好ましくは約0.5〜約1kg/cm2である。
[00076]凝縮区域におけるヒートシンク材料による熱交換による高圧の気体の冷却はまた、ヒートシンク材料を加熱するのにも役立つ。ヒートシンク材料は、好ましくはヒートシンク流体、最も好ましくは水である。熱交換流体として水を用いる場合には、分離からの高圧の気体による熱交換によって、水が水蒸気に転化し、これは加熱のためかまたはプロセスの外部で用いるために本発明方法の他の部分に送ることができる。同様に、加圧された気体と他のプロセス工程からの液体との間の熱交換を、かかる液体を加熱するために用いることができる。而して、本発明は、異なる圧力の水蒸気が熱交換水から生成するように、凝縮区域に導入される分離区域からの高圧の気体と、水を含む熱交換流体との間の熱交換を、逐次的により低い温度で運転する一連の熱交換器内で行う態様を包含する。異なる圧力の水蒸気は、好ましくは、対応する1つまたは複数の圧力下の水蒸気が加熱のために有用である1以上のプロセス工程に送り、一方、逐次的により低い温度の水を含む液体凝縮物を加圧された気体から生成させる。
[00077]凝縮区域からの排ガスから、エネルギーを、熱の形態、仕事の形態、或いは両方として回収することができる。プロセスのための熱としてエネルギーを回収することにより、そうでなければプロセスのための熱を生成するのに必要な燃料の消費を減少させることができる。仕事として回収されるエネルギーは、プロセスにおいて用いるための電力に変換することができ、これによってプロセスにおいて用いる場合には外部源からの電力の消費を減少させることができる。
[00078]本発明の好ましい態様は、凝縮区域に送られる高圧の気体の全部または実質的に全部を凝縮することを含むが、本発明の幾つかの態様においては、気体の水分含量の一部のみが凝縮されるように気体から熱エネルギーを抽出することによって、或いは分離からの第2の高圧の蒸気相の一部を凝縮手段に送り、他の部分を機械的エネルギーに変換することによってエネルギーを回収するための手段に送ることによって、分離区域から取り出される高圧の気体の凝縮を行う。分離から取り出される第2の高圧の蒸気相を部分的に凝縮するか、或いはその流れをその一部のみを凝縮するために分割することによって、仕事の形態で更にエネルギー回収を行うために高圧の凝縮区域の排ガス中に未凝縮の水を残留させながら、低い有機不純物量を有し、上記のように分離のための還流液として有用な実質的に純粋な水を含む液体凝縮物を回収し、高圧の気体を冷却して液体凝縮物を凝縮することで熱交換流体に移される熱エネルギーを回収することが可能になる。
[00079]本発明の他の態様によれば、酸化からの高圧の蒸気相中のモノカルボン酸および水並びに酸化副生成物の分離からの第2の高圧の蒸気相の全部または実質的に全部を、ヒートシンク流体による熱交換によって凝縮する。分離からの高圧の気体の凝縮可能な成分の全部または実質的に全部を凝縮することにより、凝縮した後に残留する気体のその後のプロセス工程への体積流量が減少し、プロセス中に含ませることができるその後のオフガス処理工程のための装置において、より高価でより高い耐腐食性の金属または合金に代わるものとして、ステンレス鋼、軟鋼、または二相鋼のような低いかまたは中程度の耐腐食性しか有しない金属を使用することが可能になる。また、分離から取り出される高圧の気体の凝縮可能な成分を実質的に完全に凝縮することにより、本発明方法にしたがって生成する有機不純物を実質的に含まない水を含む液体凝縮物の体積が増加し、凝縮後に残留する未凝縮の気体中に残留する芳香族供給材料および溶媒モノカルボン酸またはその液相酸化副生成物の向上した回収を促進することができる。
[00080]凝縮は単一の工程で行うことができる。また、それは、分離区域から取り出される高圧の気体を含む気体流を第1段階において第1の温度に冷却して第1段階凝縮液、および気体の未凝縮部分を与え、これを次に第2段階においてより低い温度で凝縮して第2段階凝縮液および第2段階に導入された気体の未凝縮部分を与える多段階工程、並びに場合によっては前段階からの気体の未凝縮部分を前段階よりも低い温度で凝縮して液体凝縮物および残留未凝縮気体部分を形成する1以上の更なる段階で行うこともできる。段階的凝縮器において加圧された気体とその未凝縮部分との間の熱交換を行うことにより、異なる温度または圧力の熱交換流体、例えば中程度および低い圧力の水蒸気が得られ、これは他のプロセス工程またはプロセスの外部において加熱のために用いることができる。本発明の好ましい態様においては、2以上のレベルの水蒸気をエネルギー回収のために生成させ、エネルギー回収は、好都合には凝縮または他の低圧水蒸気タービンを用いて行う。かかる態様においては、異なる温度において取り出される凝縮液を対応する温度を有する他のプロセス用途に送って、これによって凝縮液部分の更なる加熱または冷却を回避し、且つ幾つかの場合においては、凝縮液が再循環される工程における溶媒モノカルボン酸酸化副生成物のような不純物の蓄積を制限することができる。例えば、より高い温度、例えば約130〜約160℃の範囲の温度で回収される凝縮液は、更なる熱の投入を僅かしか行わないかまたは全く行わないで、そのままか、或いは精製工程において精製芳香族カルボン酸を回収および/または分離した後に残留する母液のような他のプロセス工程からの水性液体と組み合わせて、分離への還流として適切である。かかる高温の凝縮液は、分離への還流として用いると、液相酸化において溶媒副生成物として生成し、より低温の凝縮液中により大きな濃度で凝縮される傾向を有する低級アルコールおよびその溶媒モノカルボン酸エステルのような軽質成分のより低い含量のために、更なる有利性を与えることができる。また、より低い温度の凝縮物、例えば約60〜約90℃の範囲のものは、液相酸化、精製、または両方における生成物分離のための洗浄液およびシールフラッシュ液のような高温の凝縮物用途にも良く適しており、更に低い温度の凝縮物、例えば約40〜約50℃の範囲のものは、スクラバー洗浄液のような低温の凝縮物用途に良く適している。凝縮液を適合しうる温度を有する他のプロセス用途に送ることができるように異なる温度で凝縮を行うことによって、本発明方法における有益なエネルギー管理のためのオプションが与えられるが、他の工程において用いるのに必要かまたは好ましい可能性がある値よりも高いかまたはより低い温度で凝縮される液体凝縮物の部分または流れは、かかる他の工程において用いるために、所望のように、例えば熱交換によって冷却または加熱することができると認識されるであろう。
[00081]凝縮区域からの排ガスは、好ましくは加圧下であり、本発明の好ましい態様によれば水蒸気を実質的に含まないが、凝縮工程における凝縮の程度によって分離からの第2の高圧の蒸気相からの水の一部を保持している可能性がある。排ガス中に存在する可能性があるかかる水蒸気に加えて、この気体は、酸化からの未反応の酸素、窒素、炭素酸化物、および酸化のための酸素源中に存在する場合には他の不活性気体成分、および炭素酸化物のような液相酸化オフガスからの凝縮できない成分を含む可能性があり、また、少量の酸化からの溶媒モノカルボン酸副生成物、および微量の溶媒モノカルボン酸、他の酸化副生成物、並びに他の工程において取り出されなかった未反応の芳香族炭化水素供給材料を含む可能性がある。凝縮後に残留する未凝縮の排ガスが実質的に水を含まないように、排ガス中の水を液体凝縮物に実質的に完全に凝縮する場合であっても、排ガスの圧力は十分に高く、特に酸化から取り出される蒸気相、および次には分離および凝縮区域からの加圧された気体が相当量の不活性ガス含量を含むように、液相酸化のための気体酸素源が、相当な不活性ガス含量を有する空気または他の気体混合物である場合には、凝縮区域排ガスの体積は、それがエネルギーの回収ための有用な源物質となり得るようなものである。
[00082]本発明の幾つかの態様によれば、凝縮からの加圧排ガスからエネルギーを回収することができる。好ましくは、エネルギーは仕事の形態で回収する。これらの態様においては、凝縮区域からの排ガスを含む加圧気体流を、直接かまたは間接的に、仕事としてエネルギーを回収するための装置に送る。好ましいエネルギー回収装置は、加圧下の気体流を受容するように構成され、流動気体によって回転させることができるブレードが取り付けられ、これによって他のプロセス工程またはプロセスの外部において有用な仕事、および減圧下の冷却気体を生成する、膨張器または同様の装置である。加圧気体から抽出される仕事は、例えば、発電機を用いて電力を生成するため、或いは、液相酸化において用いる空気または気体酸素源物質を圧縮するために用いるコンプレッサー、または機械的仕事を必要とする他の装置を運転するために用いることができる。かかる抽出されたエネルギーは、本プロセスまたは他のプロセスにおいて他の場所で用いることができる。また、これは、貯蔵するか、または他の場所に移送するために配電網に配送することができる。仕事としてエネルギーを回収した後に残留する排ガスは、好ましくは、更なる処理、例えば、凝縮区域排ガス中に相当量で存在する場合には水を除去するための凝縮、および大気中に放出するのが望ましくない可能性がある臭素または他の化合物を除去するための苛性スクラビングにかけた後に排気することができる。所望の場合には、エネルギー回収は、腐食性成分を除去するために気体をスクラビングまたは他の方法で処理した後に行うことができる。エネルギー回収の前に腐食性成分を除去することにより、膨張器または他の動力回収装置の内部部品を、そうでなければ好ましいであろうものよりも低い耐腐食性の材料で構築することが可能になるという点で有利である可能性があるが、かかる成分を除去するために処理を行うことによって、この気体から回収できる動力が減少する可能性もある。
[00083]凝縮区域高圧排ガスからエネルギーを回収するための代替法として、或いはより好ましくは上記に記載のように仕事の形態などでエネルギーを回収することに先行する更なる工程として、凝縮からの排ガスを、有機および他の燃焼性化合物並びに腐食性成分を除去するために処理することができる。かかる処理は、幾つかの態様においては、酸化からの少量の溶媒モノカルボン酸の反応生成物、並びに排ガス中に残留する可能性がある微量の未反応の芳香族炭化水素供給材料を回収するのに特に有用である。分離からの高圧の気体の凝縮が、気体中の水を実質的に、および好ましくは少なくとも約80%を凝縮し、低級アルコールおよび溶媒モノカルボン酸のエステル反応生成物のような揮発性の不純物を、十分に、好ましくは約40〜約90℃の範囲の温度に冷却される未凝縮の排ガス相中に実質的に保持するのに十分に低い温度での1以上の凝縮を含む本発明の幾つかの態様においては、凝縮からの未凝縮の排ガスが回収のための液体スクラビング剤を用いるのに十分に冷却されているので、かかる不純物の回収のための処理が促進される。他の態様においては、処理は、他の方法で取り出されていない場合にはかかる未反応の供給材料および溶媒副生成物、並びに臭素源物質が液相酸化触媒のための助触媒として用いられて、液相酸化において生成する高圧の蒸気相中、および次に分離から取り出される高圧の気体および凝縮から取り出される排ガス中に持ち越される液相酸化からの腐食性の臭化アルキル反応副生成物のような有機種を減少または排除するのに有益である。かかる処理は、凝縮後の排ガスから回収できるエネルギーの量に影響を与える可能性があると認められるであろう。したがって、凝縮区域排ガスを、仕事の形態でエネルギーを回収する前に処理する本発明の幾つかの態様においては、好ましい処理は、気体の圧力または体積の実質的な損失なしに行われる。凝縮区域排ガスが相当量の含水量を有する場合には、気体から水を相当量凝縮したり、或いは仕事の形態でのエネルギーの回収が水の大きな凝縮をもたらす程度まで冷却することを行わないで任意のかかる処理を行うことも好ましい。かかる態様においては、エネルギーを回収する前に処理した気体を予備加熱することが有益である可能性がある。
[00084]未反応の供給材料、および溶媒モノカルボン酸の低級アルキルエステルのような液相酸化において生成する溶媒副生成物を除去するために凝縮からの加圧された排ガスを処理することを含む本発明の幾つかの態様においては、処理は、かかる成分を酸化に戻すことを可能にするのに有益である。また、処理によって、プロセス再循環流中のかかる不純物の存在量、および全プロセス運転におけるその定常状態平衡レベルを減少させることもできる。凝縮から取り出される加圧下の未凝縮の気体は、好ましくは約35〜約60℃の温度において液体スクラビング剤と接触させて、芳香族供給材料および/または溶媒副生成物の減少したレベルを有するスクラビングされた気相、および、スクラビング剤を含み、液相酸化からの未反応の芳香族供給材料および溶媒モノカルボン酸反応生成物の少なくとも1つが富化された液体生成物を与えることができる。液体生成物は、好ましくは、液相酸化工程内の反応区域に戻す。スクラビングは、高圧の凝縮排ガスを含む気体流と接触させて、酸化からの未反応の供給材料および溶媒モノカルボン酸副生成物のような揮発性成分を、気体から液相中に取り出すための任意の好適なスクラビング装置およびスクラビング剤を用いて行うことができる。トレーまたは充填床のような、スクラビングする気体と液体スクラビング剤との間の接触を促進するための内部構造を有する高圧吸収カラムが、通常的に用いられる。好適なスクラビング剤は、スクラビングする気体の温度において液体であり、回収する材料がその中において実質的な可溶性を有する材料である。例としては、低級アルコール、およびC1〜C8カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられる。好ましい液体スクラビング剤は、液相酸化のための溶媒として用いられるモノカルボン酸、およびそれと水の混合物である。芳香族カルボン酸への芳香族供給材料の液相酸化からオフガス成分を回収するために好適なスクラビング剤、装置、およびその使用は、米国特許第6,143,925号明細書(参照として本明細書中に包含する)において更に詳細に記載されている。
[00085]加圧された凝縮器排ガスはまた、上記に記載のように未反応の供給材料または溶媒副生成物をスクラビングするための先行処理を行うかまたは行わないで、腐食性または他の燃焼性物質を除去するために処理することもできる。気体の圧力および体積の実質的な損失を伴わないかかる除去のための任意の手段を用いることができるが、気体は、好ましくは、有機質で燃焼性且つ腐食性の成分を除去するための酸化プロセス、最も好ましくは接触酸化プロセスにかける。かかる処理は、一般に、凝縮から取り出されるかまたはスクラビング若しくは他の処理を行った後の加圧下の排ガスおよび気体状酸素を含む未凝縮の気体を、加圧された気体のものよりもそれほどは低くない圧力下、有機質で燃焼性且つ腐食性の成分を二酸化炭素および水を含むより低腐食性かまたはより環境的に適合しうる気体に酸化するのに有効な昇温下の燃焼区域内において加圧下で加熱することを含む。加圧下での酸素ガスと一緒の加熱は、好ましくは、それを通る加圧された気体の流れを妨げないように燃焼区域内に配置されている好適な酸化触媒の存在下で行う。加圧された気体は、場合によっては酸化の前に予備加熱にかけることができる。予備加熱は、熱交換、直接水蒸気注入、または他の好適な手段などによる任意の好適な手段によって行うことができる。場合によっては、燃焼処理にはまた、燃焼から取り出される加圧された気体をスクラビングして、上記のように液相酸化のために臭素源物質を用いた場合に凝縮器排ガス中に存在する臭化アルキルの酸化によって生成する臭素および臭化水素のような酸性の無機物質を除去することを含ませることもできる。
[00086]接触酸化のための触媒は、一般に、少なくとも1種類の周期律表(IUPAC)の遷移族元素を含む。第VIII族の金属が好ましく、白金、パラジウム、およびこれらの組み合わせ、並びにこれと1以上の更なる金属かまたは補助金属との組み合わせが特に好ましい。かかる触媒金属は、酸化物のような複合体形態で用いることができる。通常は、触媒金属は、触媒活性がより低いかまたは無いが、燃焼区域の高温および高圧の酸化雰囲気に耐えるのに十分な強度および安定性を有する支持体または担体材料上に配置される。好適な触媒担体材料としては、1種類以上の金属を含む金属酸化物が挙げられ、その例としては、ムライト、スピネル、砂、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、およびジルコニアが挙げられる。α−、γ−、δ−、およびη−アルミナ、並びにルチルおよびアナターゼチタニアのような種々の結晶質形態のかかる材料を用いることができる。担体組成物上への触媒金属の装填量は、好適には小数点以下から数重量%であり、約20体積%以上のような大きな水蒸気含量を有する気体を処理する場合に用いるためには、より大きな装填量が好ましい。触媒は、任意の好都合な構成、形状、または寸法で用いることができる。例えば、触媒は、ペレット、顆粒、環状体、球体などの形態であってよく、好ましくは、区域を通る気体流を妨げずに燃焼区域内に存在する気体との接触を促進する、剛性で、セルラー形状、ハニカム形状、有孔体形状、または多孔質の構造形状に形成するか、またはその上に形成することができる。本発明によるオフガス処理における凝縮から取り出される排ガスの燃焼処理のための接触酸化触媒の具体例は、アルミナモノリス担体上に担持されている約1/2〜約1重量%のパラジウムを含む。
[00087]凝縮区域から取り出される排ガスを含む気体から仕事の形態でエネルギーを回収する本発明の幾つかの態様においては、特にかかる気体が相当量、例えば少なくとも約5体積%の水を含む場合には、気体は、場合によっては加熱して、エネルギー回収に送られる気体中に液体水が存在することを防ぐことができる。かかる加熱は、熱酸化または接触酸化のような他の処理または処理工程の前、その後、またはそれと組み合わせて行うことができる。かかる態様においては、加熱は、熱交換、または水蒸気若しくは他の加熱気体の直接注入などによる任意の好適な技術によって行うことができる。水の凝縮を回避するためには約200℃以上への加熱が有効であり、約250〜約350℃の温度が好ましい。
[00088]分離区域から取り出される高圧の気体の凝縮後に残留する凝縮区域排ガスに加えて、本発明方法のオフガス処理工程にしたがう凝縮によって、加圧気体から液体が凝縮される。凝縮液は、上記のように相当な純度の水を含み、本発明の好ましい態様によれば、分離区域へ供給される還流液がかかる凝縮液を含むように、少なくとも一部を分離区域に送る。また、凝縮液は、液相酸化からの不純芳香族カルボン酸生成物の固液分離のための洗浄液のような他の用途のためにも好適である。凝縮液と本発明方法によるオフガス分離から取り出される水が富化された第2の液相とを比べると、第2の液相は、分離からの第2の高圧の蒸気相から取り出される凝縮液中よりも低い溶媒モノカルボン酸酸化副生成物の含量のために、液相酸化から回収されるもののような不純芳香族カルボン酸の精製を含む統合プロセスにおいて用いるのに好ましい。
精製:
[00089]精製または精製芳香族カルボン酸の製造を含む本発明の幾つかの態様においては、精製は、昇温および昇圧下、水素化触媒金属を含む触媒の存在下において、水を含み、その中に芳香族カルボン酸および不純物が溶解している液体を含む精製反応溶液を水素と接触させて、水を含む液体中に溶解している芳香族カルボン酸および水素化不純物を含む精製液体反応混合物を形成することを含む少なくとも1つの工程を含む。好ましい態様においては、精製反応溶液は、水を含む液体中に、芳香族カルボン酸、および酸化からの芳香族供給材料の酸化副生成物を含む不純物を含む液相酸化から回収される粗固体生成物を溶解することによって形成する。減少したレベルの不純物を含む純粋な形態の芳香族カルボン酸生成物を、好ましくは結晶化によって精製液体反応混合物から回収することができ、得られる純粋な形態の生成物は、純粋な形態の生成物を回収した後に残留する液体精製母液から、および/または、結晶化溶媒および洗浄液のような水を含む1種類以上の液体から分離することができる。本発明は、精製において用いる水を含む少なくとも1種類の液体が、本発明によるオフガス分離の分離区域から取り出される水が富化された第2の液相を含む態様を包含する。上記に示すように、他の態様においては、少なくとも1つの精製からの精製母液を、水を含む還流液として分離区域へ導入するためにオフガス分離に送る。
上記に記載したように、酸化性の置換基を有する芳香族化合物を含む供給材料の液相酸化によって得られる芳香族カルボン酸生成物(これは時によっては、粗芳香族カルボン酸生成物、または液相酸化からの粗生成物とも呼ぶ)は、芳香族カルボン酸、および1種類以上の酸化中間体または副生成物を含む。中間体および副生成物の特定の化学組成は、酸化供給材料の組成、酸化反応条件、および他の要因によって変動し、与えられる供給材料に関してすら完全には知られていない可能性があるが、これらは、所望の芳香族カルボン酸生成物またはそれから製造されるポリエステルの望ましくない色を引き起こすかまたはこれに関連し、芳香族カルボニル化合物および芳香族カルボン酸よりも水溶液中においてより可溶性の種、または色若しくは色形成傾向がより少ない種に水素化することができる、ベンズアルデヒド類、カルボキシベンズアルデヒド類、フルオレノン類、およびアントラキノン類のような1種類以上の芳香族カルボニル化合物を含むことが知られている。本発明の幾つかの態様にしたがって精製するのに好ましい不純芳香族カルボン酸生成物は、液相酸化、最も好ましくは液相酸化の粗固体生成物が精製のための出発物質となるように液相酸化工程と精製工程を統合した連続プロセスにおいて芳香族供給材料の液相酸化によって生成する芳香族カルボン酸および副生成物を含む粗生成物である。しかしながら、精製のための出発物質は、存在しているか、或いは芳香族供給材料の統合または非統合液相酸化からかまたは他のプロセス若しくは供給源から副生成物として生成するかに関係なく、上記のような芳香族カルボン酸および芳香族カルボニル不純物を含む不純生成物であってよく、或いはこれを含んでいてよい。而して、本発明は、精製のための不純芳香族カルボン酸生成物出発物質が、芳香族カルボン酸、および非水素化芳香族カルボニル不純物よりも大きな水溶液中における可溶性または小さな色または色形成傾向を有する水素化カルボニル置換芳香族生成物を形成する少なくとも1種類の芳香族カルボニル不純物を含む態様を包含する。また、本発明の幾つかの態様による液相酸化から回収される粗生成物などの、精製のための出発物質として好適な不純形態の芳香族カルボン酸生成物も、不純生成物中に残留する少量の溶媒モノカルボン酸残留物を含む可能性がある。商業的スケールの液相酸化からの生成物中に通常存在するような数百〜数千ppmwの範囲の量は、本発明方法による精製に悪影響を与えない。より好ましくは、精製する芳香族カルボン酸生成物の溶媒モノカルボン酸含量は、約10重量%を超えない。
[00090]より詳細に説明すると、本発明による好ましい精製工程は、その少なくとも一部が最も好ましくは本発明によるオフガス分離から取り出される水を含む第2の液相を含む水を含む液体中に、芳香族カルボン酸および不純物を含む固体生成物を溶解して精製反応溶液を形成し、精製溶液を昇温および昇圧下、水素化触媒の存在下で水素と接触させて、精製液体反応混合物を形成し、精製液体反応混合物から、減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸を含む固体精製生成物を回収し、回収された固体精製生成物から、酸化副生成物、その水素化生成物、およびこれらの組み合わせを含む水性液体精製母液を分離することを含む。
[00091]不純物レベルを減少させるための不純芳香族カルボン酸の水素化は、水溶液中において、不純酸を用いて行う。本発明の幾つかの態様における精製溶液のための好ましい溶媒は、本発明によるオフガス分離の分離区域から取り出される第2の液相を含む。コスト、複雑さ、並びに凝縮液の更なる取り扱い、貯蔵、または処理のための更なる装置を回避するために、連続および統合プロセス運転で、分離から直接に、且つ副生成物または不純物を除去するための更なる処理または中間処理を行わないで第2の液相を供給することが好ましいが、かかる更なる処理は、第2の液相を精製のための溶媒として好適にするためには必要ないが、本発明から排除されるものではないことが認識されるであろう。同様に、本発明による精製溶媒として用いるために十分な純度の液体を得るためには必要ないが、本発明は、オフガス分離からの第2の液相に加えて、或いはこれの代替として、新鮮な脱塩水または水の他の精製源物質のような他の好適な水の源物質を使用することを意図していることが認識されるであろう。好ましくは、本発明による分離からの水が富化された第2の液相は、精製反応溶液のための溶媒の少なくとも約50%、より好ましくは約80〜約100%を構成する。
[00092]精製工程において処理する不純芳香族カルボン酸の精製溶媒中における濃度は、概して、不純酸が実質的に溶解するのに十分に低く、且つ、実際のプロセス運転および効率的な使用、並びに溶媒として使用する液体の取り扱いのために、並びに精製反応混合物から減少した不純物を含む純粋な形態の芳香族カルボン酸を回収した後に精製母液として残留するのに十分に高いものである。好適には、プロセス温度において溶液100重量部あたり約5〜約50重量部の不純芳香族カルボン酸を含む溶液が、実際の運転のために適当な可溶性を与える。好ましい精製反応溶液は、接触水素化による精製のために用いる温度において、約10〜約40重量%、より好ましくは約20〜約35重量%の不純芳香族カルボン酸を含む。
精製水素化反応において用いるのに好適な触媒は、酸化中間体および副生成物、および/または芳香族カルボニル種のような不純芳香族カルボン酸生成物中の不純物の水素化のための触媒活性を有する1種類以上の金属を含む。触媒金属は、好ましくは、水中に不溶で、精製プロセス条件下で芳香族カルボン酸と非反応性である担体材料上に支持または担持される。好適な触媒金属は、パラジウム、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、およびこれらの組み合わせなどの、元素周期律表(IUPAC版)の第VIII族の金属である。パラジウム、またはパラジウムを含むかかる金属の組み合わせが最も好ましい。数百または数千m2/gの表面積、および運転条件下での長時間の使用のために十分な強度および耐摩耗性を有する炭素および活性炭が好ましい担体である。金属装填量は重要ではないが、実際的に好ましい装填量は、担体および単数または複数の触媒金属の合計重量を基準として約0.1重量%〜約5重量%である。パラキシレンを含む供給材料の液相酸化によって得られる粗テレフタル酸を含む不純芳香族カルボン酸生成物中に存在する不純物を転化させるために好ましい触媒は、約0.1〜約3重量%、より好ましくは約0.2〜約1重量%の水素化金属を含む。かかる用途のためには、金属は、最も好ましくはパラジウムを含む。
[00093]実際の用途のためには、触媒は、最も好ましくは、例えばペレット、押出物、球体、または顆粒のような粒子状形態で用いるが、他の固体形態もまた好適である。触媒の粒径は、触媒粒子の床が、好適な精製反応器内に容易に保持されるが、望ましくない圧力降下を伴わずに床を通して精製反応混合物が流れることを可能にするように選択される。好ましい平均粒径は、触媒粒子が2メッシュのスクリーンを通過するが、24メッシュのスクリーン(US篩シリーズ)上に保持され、より好ましくは4メッシュのスクリーンを通過するが、12メッシュ、最も好ましくは8メッシュのスクリーン上に保持されるようなものである。
[00094]精製のための触媒の存在下における水性精製反応溶液と水素との接触は、昇温および昇圧において行う。温度は約200〜約370℃の範囲であり、約225〜約325℃が好ましく、約240〜約300℃が最も好ましい。圧力は、水性反応溶液を含む液相を維持するのに十分なレベルである。全圧は、少なくとも、運転温度における、プロセスに導入される水素ガスおよび水性反応溶液から沸騰して取り出される水蒸気の分圧の合計に等しく、好ましくはこれよりも高い。好ましい圧力は、約35、より好ましくは約70乃至約105kg/cm2である。
[00095]水性精製反応溶液は、上記に記載の水素化条件下において、反応温度および圧力、並びにその液体内容物の酸性にも耐えることができる好適な反応容器中で水素ガスと接触させる。好ましい反応器の構造は、反応器をプロセスで使用するために配置した際に垂直に配置される実質的に中心の軸を有する円筒形の反応器である。上向流および下降流反応器の両方を用いることができる。触媒は、通常は、反応器内において、それを通る反応溶液の比較的自由な通過を可能にしながら床内に触媒粒子を保持するための機械的支持材で保持される粒子の1以上の固定床内に存在する。しばしば単一の触媒床が好ましいが、同一または異なる触媒の複数の床、或いは、例えば粒径、水素化触媒金属、若しくは金属装填量の点で異なる触媒、或いは触媒および触媒を保護するための研磨剤のような他の材料が積層された単一の床も、用いることができ、有利性を与える可能性がある。適度に離隔された平行なワイヤーから形成される平坦なメッシュスクリーンまたはグリッドの形態の金属支持材が通常用いられる。他の好適な触媒保持手段としては、例えば、管状のジョンソンスクリーンまたは多孔板が挙げられる。反応器および触媒床のための機械的支持材の内部部品および表面は、好適には酸性の反応溶液および反応生成物混合物との接触による腐食に対して抵抗性の材料で構成する。最も好ましくは、触媒床のための支持材は、約1mm以下の開口を有し、ステンレス鋼、チタン、またはハステロイCのような金属で構成する。
[00096]本発明の好ましい態様においては、精製する不純芳香族カルボン酸の水溶液を、反応容器の頂部部分またはその付近において昇温および昇圧下で反応容器に加えて、溶液を、水素ガスの存在下で、反応容器内に含まれる触媒床を通して下向きに流し、ここで、不純物を、水素によって、多くの場合には所望の芳香族カルボン酸よりも大きな反応混合物中における溶解度を有するか、またはより小さな色または色形成傾向を有する水素化生成物へ還元する。かかる好ましい形態においては、反応器の下部部分または底部か或いはその付近の位置において、反応容器から芳香族カルボン酸および水素化不純物を含む液体精製反応混合物を取り出す。
[00097]精製のために用いる反応器は、幾つかのモードで運転することができる。1つのモードにおいては、予め定められた液体レベルを反応器内で保持し、与えられた反応器圧力のために、予め定められた液体レベルを保持するのに十分な速度で水素を供給する。実際の反応器圧力と、反応器のヘッドスペース内に存在する気化精製溶液の蒸気圧との間の差は、ヘッドスペース内の水素分圧である。或いは、水素を、窒素または水蒸気のような不活性ガスと混合して供給することができ、この場合には、実際の反応器圧力と存在する気化反応溶液の蒸気圧との間の差は、水素およびそれと混合している不活性ガスの分圧の合計値である。かかる場合においては、水素分圧は、混合物中に存在する水素および不活性ガスの既知の相対量から算出することができる。
[00098]他の運転モードにおいては、反応器に水性液体反応溶液を充填して、反応器蒸気スペースは実質的に存在しないが、反応器の頂部またはヘッド内において水素の気泡が存在し、これが寸法的に膨張または収縮して反応器ヘッド内の容量を与えて、反応器に加えられる水素が投入される精製反応溶液中に溶解するようにすることができる。かかる態様においては、反応器を液圧的に(hydraulically)満たされた系として運転して、溶解した水素を流れ制御によって反応器に供給する。溶液中の水素の濃度は、反応器への水素の流速を調整することによって調節することができる。所望の場合には、溶液水素濃度から仮想水素分圧値を算出することができ、これを次に反応器への水素流速と相関させることができる。
[00099]水素分圧を調節することによってプロセス制御を行うように運転する場合には、反応器内の水素分圧は、好ましくは、反応器の圧力定格、不純芳香族カルボン酸の不純物レベル、触媒の活性および使用期間、並びに当業者に公知の他の留意事項に応じて、約1/2〜約15kg/cm2ゲージ圧またはそれ以上の範囲である。供給溶液中の水素濃度を直接調節することを含む運転モードにおいては、溶液は、通常は、水素に関しては飽和状態未満であり、反応器それ自体は液圧的に満たされている。而して、反応器への水素流速を調節することによって、溶液中の水素濃度の所望の制御が得られる。
[000100]水素化中における1時間あたり触媒の重量あたりの精製反応溶液中の不純芳香族酸の重量として表される空間速度は、通常は、約1時間−1〜約25時間−1、好ましくは約2時間−1〜約15時間−1である。触媒床内での精製液体流の滞留時間は、空間速度に応じて変動する。
[000101]精製溶液を調製するために用いられる粗または他の不純芳香族カルボン酸生成物と比べて減少した不純物のレベルを有する純粋な形態の芳香族カルボン酸生成物が、液体精製反応混合物から回収される。芳香族カルボン酸、およびその非水素化前駆体よりも大きな水性反応液体中における溶解度を有する水素化芳香族不純物がその中に溶解している水性反応溶媒を含む精製反応混合物を冷却して、反応混合物から減少した不純物を含む純粋な形態の固体芳香族カルボン酸を分離し、水素化不純物がその中に溶解している液体精製母液を残留させる。分離は、通常は、芳香族カルボン酸の結晶化を起こすのに十分に低い結晶化温度に冷却して、それによって液相内に結晶を生成させることによって行う。結晶化温度は、溶解した不純物および水素化から得られるその還元生成物が液相中に溶解したままであるのに十分に高いものである。結晶化温度は、概して、160℃以下、好ましくは約150℃以下の範囲である。連続運転においては、分離は、通常は、精製反応器から液体精製反応混合物を取り出し、1以上の結晶化容器内で芳香族カルボン酸を結晶化することを含む。一連の段階または別々の結晶化容器内で行う場合には、異なる段階または容器内における温度は、同一であっても異なっていてもよく、好ましくはそれぞれの段階または容器から次の段階または容器に向かって低下する。また、結晶化によって、通常は、精製液体反応混合物から液体がフラッシングされ、これは凝縮によって回収して、1以上の精製、1以上の上流での結晶化段階、或いは本発明の幾つかの好ましい態様においては、液相酸化からの高圧の蒸気相中の溶媒モノカルボン酸および水蒸気の分離に再循環することができる。好ましくは本発明方法によるオフガス分離において第2の液相として回収される水が富化された液体を含む水を含む液体は、好ましくは、段階的結晶化において回収される精製液体反応混合物から回収される結晶化生成物に、直接か、或いはより好ましくは、結晶化生成物のための1以上の洗浄液中で間接的に加える。
[000102]その後、結晶化された精製芳香族カルボン酸生成物は、水素化不純物がその中に溶解している精製母液から分離する。結晶化生成物の分離は、通常は、遠心分離によるかまたは濾過によって行う。好ましい分離は、米国特許第5,175,355号明細書(参照として本明細書に包含する)に記載のように、純粋な形態の芳香族カルボン酸の水性スラリーを加圧濾過し、濾過から得られるフィルターケーキを、水を含む液体で洗浄することを含む。ここに記載したオフガス分離からの水が富化された第2の液相は、純粋な形態の芳香族カルボン酸のための洗浄液として用いるのに好ましい水を含む液体である。
[000103]精製反応混合物から固体精製芳香族カルボン酸を回収した後に残留する精製母液は、水、および副生成物または不純芳香族カルボン酸出発物質中に存在する不純物の水素化誘導体を含む。母液はまた、通常は、溶液中に残留する少量の芳香族カルボン酸も含む。かかる水素化誘導体は、液相酸化によって芳香族カルボン酸に転化させるのに好適な化合物を含み、したがって本発明の好ましい態様においては、かかる水素化誘導体の少なくとも一部を、直接または間接的に液相酸化に移す。また、母液中に存在する残留芳香族カルボン酸も、かかる水素化誘導体から分離した後か、或いはより好ましくはそれと一緒に、直接または間接的に液相酸化に移すことができる。酸化へのかかる誘導体および芳香族カルボン酸の移送は、固体で純粋な形態の芳香族カルボン酸を分離した後に残留する精製母液の少なくとも一部を液相酸化工程に送ることによって好都合に行われる。精製母液の含水量は、酸化へ送られる精製母液からの水が酸化へ戻される可能性がある他の流れの中に含まれなければ、酸化における水バランスを混乱させる可能性がある。精製母液中の水素化不純物を、単独かまたは好ましくは母液中に存在する芳香族カルボン酸と組み合わせて液相酸化へ移すことは、好ましくは、酸化における水バランスを混乱させることなく行われる。より好ましくは、液体精製反応混合物から固体の精製芳香族カルボン酸を分離した後に残留する液体母液の少なくとも一部、最も好ましくは実質的に全部を、本発明によるオフガス分離の分離区域に直接かまたは間接的に移して、ここで上記に記載したように還流液として用いる。本発明による方法において有用な精製反応器および触媒床構造および運転の詳細および結晶化並びに生成物回収方法および装置は、米国特許第3,584,039号明細書、米国特許第4,626,598号明細書、米国特許第4,629,715号明細書、米国特許第4,782,181号明細書、米国特許第4,892,972号明細書、米国特許第5,175,355号明細書、米国特許第5,354,898号明細書、米国特許第5,362,908号明細書、および米国特許第5,616,792号明細書(参照として本明細書中に包含する)において更に詳細に記載されている。
[000104]図1は、本発明による芳香族カルボン酸の製造方法、およびオフガス分離のための装置の態様を更に詳細に示す。図は、酸化、並びに酢酸、水、および酸化の副生成物のオフガス分離のための、水および溶媒モノカルボン酸として酢酸を含む液相反応混合物中における、好ましい供給材料としてのパラキシレンの液相酸化による、選択された芳香族カルボン酸であるテレフタル酸の製造、並びに、酸化およびオフガス分離を、液相酸化からの粗生成物の回収および分離、液相酸化生成物および種々の更なる副生成物の精製、並びにエネルギー回収などの更なる工程と統合する本発明の更なる好ましい態様および特徴を示し、具体的にこれを参照して記載しているが、具体的な態様、特徴、詳細、および選択肢は、本発明の理解を助けるために記載するものであり、本発明または任意の形態若しくは態様におけるその特徴を限定するものではないことが理解されるであろう。
[000105]図1に示すプロセスはまた、液相酸化からの粗芳香族カルボン酸生成物を、精製溶液を形成するのに用いるために精製に送り、酸化からの高圧のオフガスをオフガス分離に送り、オフガス分離からの液相を精製液として用い、分離への還流液が精製からの母液を含むように、液相酸化、オフガス分離、および精製を統合する本発明方法の好ましい態様を反映しているが、本発明は図面に示された特定の統合スキームに限定されるとみなすべきではなく、種々の複数の系列、共用系列、並びに他の統合および非統合構成が本発明によって意図されることが理解されるであろう。例として、複数の液相酸化からの芳香族カルボン酸および反応副生成物を含む生成物を単一の精製工程に送ることができ、この中に、1以上のこれらの液相酸化または他の液相酸化からの高圧の蒸気相のオフガス分離において回収される液相を、プロセス液体として用いるために送る。更なるかかる例として、単一の液相酸化からの粗生成物を、平行して運転されている別々の複数の精製系列において精製し、液体酸化からの高圧の蒸気相を、溶媒副生成物を実質的に含まない水が富化された液相を回収するためのオフガス分離にかけ、これを、かかる複数の精製系列のいずれかまたは両方に、或いはその代替としてかまたはこれに加えて、別の酸化またはプロセスからの不純芳香族カルボン酸を上記のような精製プロセスまたはプロセス工程において精製するプロセスに送ることができる。
[000106]また、図は、本発明、並びに装置を液相酸化のための反応容器のような他の装置と統合した本発明の更なる態様による分離装置も示す。
[000107]図1に示すプロセスにおいて用いられ存在する液体および気体の流れおよび材料は、通常は、プロセスの使用および安全性のために適当な材料で構成される好適な移送ライン、導管、および配管を通して送られ、移送される。特定の部材を物理的に並置することができ、適当な場合には、これらは可撓性の領域、剛性の領域、または両方を有していてよいことが理解されるであろう。流れまたは化合物を送る際には、介在する装置または随意的な処理を含ませることができる。例えば、適当なポンプ、バルブ、マニホールド、気体および液体流量計および分配器、サンプリングおよび検出装置、並びに、圧力、流れ、および他の運転パラメーターを監視、制御、調節、および転換するための他の装置を存在させることができる。
[000108]図を参照すると、分離装置330は、取り囲まれている内部空間を画定する円筒形構造であり、酸化反応器110から流れ111で取り出される高圧の蒸気相を受容し、気体出口334を通して第2の高圧の蒸気相を取り出すように構成されている。また、これは、例えば336および344などにおける、他のプロセス工程または保持容器からの流れなどで外部供給源から供給される還流液を導入するための入口も含む。例えば345における出口は、還流入口336および344に対して中間に配置されていて、カラム内で回収される第2の液相を取り出すためのものである。カラムの内部空間内であって、酸化反応器110からの高圧の蒸気相を受容するための入口と還流入口336の間の中間に配置された構造によって、内部における分別区域が与えられる。
[000109]分離装置は、運転中において、装置に導入される高圧で高温の酸化反応器の塔頂気体中のC1〜8モノカルボン酸および水を実質的に分離し、モノカルボン酸に富む第1の液相、水に富むが、溶媒および液相酸化において生成するその副生成物を実質的に含まない第2の液相、並びに水を含み、溶媒および液相酸化への芳香族供給材料の副生成物を実質的に含まない第2の高圧の蒸気相が形成されるように、液相酸化の副生成物を選択的に分配することができるように設計される。好ましい態様においては、酸化反応器と分離装置の直接的な接続または密な結合は、液相反応条件下で蒸気相が反応容器から取り出されて、反応区域内と同等または実質的に同等の温度および圧力の分離装置中に導入されるように、酸化反応容器内の1以上の排気口と、分離装置への1以上の気体入口との間を、直接か、または好適な圧力定格配管または他の導管によって接続することによって行われる。
[000110]分離装置の分別区域は、内部トレー、構造充填材、トレーと充填材との組み合わせ、或いは装置内に存在する気相と液相の間の物質移動のための装置の内部内の表面を与える他の構造またはその組み合わせによって与えることができるような複数の理論平衡段を有するように構成される。少なくとも約20の理論平衡段が与えられる。分離効率は、他の事項が同じならば理論平衡段が増加するのに伴って増大し、本発明にしたがって用いる分離装置内に含ませることができる平衡段の数に対する理論的な上限はない。しかしながら、実際の目的のためには、分離装置に導入される高圧の蒸気相中の溶媒モノカルボン酸が実質的に液相中に取り出されるような分離は、少なくとも約20、好ましくは少なくとも約25の理論平衡段によって達成することができ、一方、約100のかかる段によって与えられるものを超える分離は、更なる段を非実用的で経済的に非効率的にする。
[000111]構造充填材を有する好ましい分離装置は、分離のために適度な表面および理論平衡段を与えるために、少なくとも約3の充填材の床または区域、より好ましくは約4〜約8のかかる床を有する。好適な充填材材料の例は、流路を形成し、それらの交差部が液相と蒸気相のための混合点を生成するように十字路の関係で配置されている波形金属の薄いシートの形態でKGGP LLCから入手できるFlexipac構造充填材である。トレーを有する好ましい分離装置は30〜約90のトレーを含み、その少なくとも約70%は、図2において338で最もよく示されるように、反応容器から分離装置に導入される高圧の気体のための入口と、少なくとも1つの還流液入口との間に配置される。篩、または泡鐘段の形態のトレーが好ましく、これは好ましくは約30〜約60%の分離効率を有する。与えられた数の理論平衡段のためのトレーの数は、段数をトレー効率で割ることによって算出することができる。
[000112]プロセスの使用においては、分離装置中に導入され、その中に存在する気相および液相は昇温温度であり、水、溶媒モノカルボン酸、および他の腐食性成分、例えば、酸化のために用いる触媒が臭素の源物質を含む場合には酸化反応塔頂気体中に存在する臭化水素のような臭素化合物およびその解離生成物を含む。したがって、本発明の好ましい態様においては、プロセス運転中に気体および液体と接触する分離装置の内部構造および他の機構は、かかる接触による腐食および他の損傷に耐える好適な金属で構成する。チタン金属は、分別区域のトレー、充填材、または他の構造体などのかかる表面のための構造体の好ましい材料である。かかる構造体のチタン表面は、装置を通って循環する液体中に存在する不純物からの鉄酸化物を含む固体沈殿物の望ましくない蓄積を起こしやすい。プロセス液体中における鉄酸化物沈殿の蓄積または可溶性の鉄不純物の含量を制御するための方法は、同じ譲受人に譲渡された米国特許第6,852,879号明細書および米国特許出願公開第2002/374719号明細書(参照として本明細書に包含する)に記載されている。
[000113]図に示す本発明の態様においては、分離装置330は、その個々の例が図2において333および337において最もよく示されている複数のトレーを有する高圧蒸留カラムである。また、図2において示されるように、カラムは、カラムから液体を例えば酸化に取り出すための少なくとも1つの下部出口を例えば332において含む。ガス入口338が、酸化反応器オフガスを受容するためにカラムの下部部分に配置されており、排気口334が、第2の高圧の蒸気相を排出気体として取り出すために上部部分に配置されている。本発明による段階的分離のために、気体入口338と還流液入口344との間の領域に、カラム330の第1の段または部分において液相酸化から取り出される高圧の蒸気相中の溶媒モノカルボン酸および水を実質的に分離するための理論平衡段を与えるトレーが含まれる。還流入口344と第2の液体の出口345の間に配置され、酸化への芳香族供給材料の副生成物および水を分離してかかる副生成物を還流液相に分配するための理論平衡段を与えるトレーによって、カラム内の分離区域の第2の部分が与えられる。333および337において示されるような、液体出口345と還流入口336の間に配置されるトレーによって、分離区域の第3の部分において溶媒モノカルボン酸酸化副生成物および水を分離するための理論段が与えられる。液体出口332が、分離区域の第1の部分において酸化オフガスから分離される溶媒モノカルボン酸が富化された第1の液相を塔底液として取り出すために配置される。例えば339における、その周縁境界におけるブーツ、トラフ、集積流路、または他の回収手段を有するように構成されたトレーは、液体出口345と流体連通しており、出口345を通して取り出すために分離を通って流れる還流液の第2の液相を回収するように構成されている。出口345と、分別区域のトレーまたは充填床または他の構造体、例えば回収手段339の間において、またはそこから還流液相を回収するための分離装置の関連する内部構造とが組み合わさって、装置内において回収される水が富化された第2の液相を回収して取り出すためのカラムからの側流(side draw)が与えられる。
[000114]再び図1を参照すると、分離装置は、液相酸化反応区域110からの高圧の蒸気相を受容するように構成されている。幾つかの態様においては、本発明による装置は、分離装置を、例えば116における少なくとも1つの塔頂気体排気口を通して容器から取り出された高圧塔頂気体が分離装置中に受容されるように分離装置と流体連通している少なくとも1つの液相酸化反応器と組み合わせて含む。かかる態様においては、反応容器110は、好ましくは、実質的に取り囲まれている内部容積を画定する実質的に円筒形のシェルを含む。使用においては、内部容積の下部部分は液体反応物を含み、一方、塔頂反応オフガスは、液体レベルよりも上方の内部容積の部分内に含まれる。内部容積は、その例を図1において112として示す複数の入口を通して反応容器の外部と連絡しており、これを通して液体芳香族供給材料、溶媒、および可溶形態の触媒が液体充填容器(図示せず)から導入され、圧縮空気または他の酸素ガス源物質が好適な移送ライン(図示せず)を介して圧縮器または他の好適な装置(図示せず)から導入される。入口は、好ましくは、液体および気体成分が、容器の内部に、液体レベルの下方で導入されるように配置される。反応容器はまた、例えば114において、芳香族カルボン酸および酸化副生成物を含む粗生成物を含む液相反応混合物を内部から取り出すための少なくとも1つの出口も含む。反応容器110はまた、例えば116において、液体反応物から蒸発する高圧の蒸気相を容器の内部から取り出すための少なくとも1つの排気口または出口も含む。排気口116は、好ましくは、プロセスで使用するために配置した際に容器の上部部分に対応するように配置される。
[000115]好ましい反応容器のデザインは、容器をプロセスで使用するために配置した際に実質的に垂直に伸びる中心軸を有する実質的に円筒形の容器である。容器は、その上に取り付けられた1以上のインペラーを有し、プロセスで使用している間に反応容器の内部で回転して容器内に存在する液体反応混合物を撹拌することができるシャフトを含む撹拌機構120と共に使用するように構成されている。本発明の好ましい態様においては、容器の下部部分内での固形分の不都合な沈降を起こさずに液体反応物内で気体および液体成分を混合するために、少なくとも二つのインペラーまたは混合機構がシャフト上に取り付けられている。一般にプロペラとして構成される軸流インペラー、フラットブレードディスクタービンおよびディスペンサディスクのような放射流ミキサー、螺旋リボン混合部材、上向流または下向流のためのブレードピッチを有するピッチブレードタービン、主として接線流を与えるアンカータイプのミキサー、および他の構造が、液相酸化反応系を混合するのに適しており、好ましくは、液体反応混合物の下部領域におけるより大きな固形分含量、上部領域におけるより大きな気体含量、および液体全体にわたって変動する可能性がある液相反応混合物の他の特徴をもたらすように種々の組み合わせで用いられる。他のデザインは、平坦なローター上に取り付けられている放射状に伸長する回転ブレードを有し、不連続的な前縁と、連続的な後縁を有する中空のブレード構造を有し、外部の凹形の表面および開放された外端を有さず、好ましくは気体分配のための垂直管または有孔ガス噴霧器と組み合わせて用いられる混合部材が記載されている米国特許第5,198,156号明細書、並びに、撹拌部材が、中心の回転シャフト上に下向きの角度で取り付けられ、液体を通る動きの方向にV字型に成形されており、ブレードの後縁の放射状の内部端がブレードの動きの方向に外向きに角度が付けられており、シャフトの一端における円錐状のディスクによって形成されている中心の空洞部分の中に撹拌部材の下側から気体を導入するための機構と共に用いられるミキサーが記載されている米国特許第5,904,423号明細書において開示されている。
[000116]反応容器、撹拌機シャフト、および混合部材の、少なくともプロセスの使用中に液体反応混合物および塔頂気体と接触する部分は、実質的に耐腐食性の材料で構成する。例としては、チタン金属(これが好ましい)、合金、および二相ステンレス鋼が挙げられる。
[000117]図1に示す好ましいプロセス態様によれば、少なくとも約99重量%のパラキシレンを含む液体パラキシレン供給材料、好ましくは約70〜約95重量%の酢酸を含む酢酸水溶液、酸化触媒金属源物質としてのコバルトおよびマンガンの可溶性化合物、例えばそれらのそれぞれの酢酸塩、および触媒のための助触媒としての臭化水素のような臭素の可溶性化合物、並びに空気を、その1つが例示の目的で例えば112において示される入口を通して、圧力定格連続撹拌タンク反応器である酸化反応容器110に連続的に充填する。溶媒およびパラキシレン供給材料は、約2:1〜約5:1の溶媒:供給材料の重量比を与える速度で充填する。コバルトおよびマンガンの源物質は、好ましくは、パラキシレン供給材料の重量を基準としてそれぞれ約100〜約800ppmwを与える量で用いる。臭素は、好ましくは、臭素:触媒金属の原子比が約0.1:1〜約1.5:1であるような量で用いる。
[000118]撹拌は、そのシャフトを外部動力源(図示せず)によって駆動して、シャフト上に取り付けられ、反応器内の液体内に配置されているインペラーによって、液体を混合し、液体内で気体を分散させ、その下部領域内での固形分の沈降を防ぐための力を与える撹拌機120の回転によって与えられる。触媒および助触媒を、それぞれ好ましくは酢酸溶媒中の溶液として、反応容器内の液体中に導入する。空気を、下部インペラーの下側からその掃流路内に、芳香族供給材料1モルあたり少なくとも約3モルの分子状酸素を与えるのに有効な速度で供給する。
[000119]パラキシレンは、反応器110内の撹拌液体反応混合物中で、主としてテレフタル酸に酸化されるが、同時に、反応して、4−カルボキシベンズアルデヒド、1,4−ヒドロキシメチル安息香酸、およびp−トルイル酸、並びに安息香酸のような他の化合物のような部分および中間酸化生成物などの副生成物を形成する。テレフタル酸およびパラキシレン酸化副生成物を含む固体反応生成物が液体反応混合物から沈殿し、そのより少ない量が液体中に溶解して残留する。液体スラリーの固形分含量は、通常は、約50重量%以下、好ましくは約20〜約40重量%の範囲である。また、酸化の生成物として水も生成する。酸化反応は発熱性であり、反応によって生成する熱により液相反応混合物が沸騰し、気化酢酸、水蒸気、および酸化反応からの気体状副生成物、炭素酸化物、反応に充填された空気からの窒素、および未反応の酸素を含む塔頂蒸気相が形成される。蒸気相はまた、少量の未反応パラキシレン供給材料も含む可能性がある。反応器110の内部容積は、反応混合物の液相性を保持するのに十分な圧力下、好ましくは約5〜約21kg/cm2ゲージ圧に保持する。塔頂蒸気は、排気口116を通して反応器から取り出される。反応器の内容物は、蒸気相の取り出し速度に基づいて、且つ下記に記載するように反応器から取り出されそれに戻される流れの温度および流速も考慮して、約160〜約225℃の範囲の運転温度に保持する。
[000120]液相反応混合物中でスラリー化されたテレフタル酸を含む固体のパラキシレン酸化生成物を含み、同時に溶解したパラキシレン、酸化副生成物、および触媒金属も含む液体流出物が、スラリー出口114を通して反応容器110から取り出され、流れ115内で、テレフタル酸およびパラキシレン供給材料の酸化副生成物を含む酸化の固体生成物を回収するための結晶化区域に送られる。
[000121]図1に示す本発明の態様においては、結晶化は、直列に配置され、生成物スラリーを容器152から容器156に移すために流体連通している複数の撹拌結晶化容器152および156内で行われる。結晶化容器内での冷却は圧力開放によって行われ、スラリーは、容器152内において約150〜190℃の範囲の温度に冷却され、次に更に容器156内において約110〜約150℃に冷却される。圧力降下から得られる蒸気を熱交換手段(図示せず)に取り出して、フラッシングした蒸気から水蒸気を生成させるために、1以上の結晶化容器で、それぞれ例えば154および158において排気する。容器152のような1以上の上流の結晶化容器から熱交換手段に取り出される蒸気は、好ましくは凝縮して、水、酢酸溶媒、および可溶性生成物、並びに酸化の副生成物を含む液体凝縮物を、例えば156における1以上の下流の結晶化容器に送って、1以上の上流の容器からのフラッシングした蒸気に導入されてそれから凝縮されるテレフタル酸および酸化副生成物のような結晶化可能な成分を回収することができる。
[000122]結晶化容器156は、酢酸および水を含む酸化からの母液中のテレフタル酸および酸化副生成物を含む固体生成物のスラリーを結晶化容器から受容して、液体からテレフタル酸および副生成物を含む粗固体生成物を分離するように構成されている固液分離装置190と流体連通している。分離装置190は、遠心分離器、ロータリーバキュームフィルター、または加圧フィルターである。本発明の好ましい態様においては、分離装置は、フィルターケーキ中の母液を加圧下で水を含む洗浄液で正置換することによって溶媒交換するように構成されている加圧フィルターである。分離から得られる酸化母液は、母液ドラム192に移すために流れ191中で分離装置190から排出される。母液の大部分は、母液中に溶解しているかまたは微細固体粒子として存在している酢酸、水、触媒、および酸化反応副生成物を液相酸化反応に戻すために、ドラム192から酸化反応器110に移される。テレフタル酸、およびパラキシレン供給材料の酸化副生成物を含む不純物を含む粗固体生成物は、中間の乾燥および貯蔵を行うかまたは行わないで、流れ197で、分離装置190から精製溶液メイクアップ容器202に移送される。粗固体生成物は、メイクアップ容器202内において、その全部または少なくとも一部、好ましくはその約60〜約100重量%が反応器110からカラム330へ取り出される蒸気相中の水および酢酸のオフガス分離からの第2の液相および酸化の副生成物を含む精製反応溶媒中でスラリー化する。用いる場合には、新鮮な脱塩水、または下記に議論するように、精製テレフタル酸生成物の結晶化において圧力降下から得られる蒸気から凝縮される液体のような好適な再循環流のようなメイクアップ溶媒を、容器204からメイクアップタンク202に送ることができる。メイクアップタンク内のスラリー温度は、好ましくは約80〜約100℃である。
[000123]粗生成物は、メイクアップタンク202内において例えば約260〜約290℃に加熱することによるか、或いはそれが精製反応器210に移される間に熱交換器(図示せず)を通過させることによって溶解して、精製反応溶液を形成する。反応器210においては、精製反応溶液を、好ましくは約85〜約95kg/cm2の範囲の圧力下で水素と接触させる。
[000124]精製液体反応混合物の一部を、水素化反応器210から流れ211で結晶化容器220に連続的に取り出して、ここで、液体上への圧力を低下させることによってテレフタル酸および減少したレベルの不純物を反応混合物から結晶化させる。容器220内で形成される精製テレフタル酸および液体の得られるスラリーを、流れライン221で固液分離装置230に送る。結晶化反応器内で圧力降下によって得られる蒸気は、冷却のための熱交換器(図示せず)に通すことによって凝縮して、得られる凝縮液は、例えば好適な移送ライン(図示せず)を通して精製供給流メイクアップタンク202への再循環流としてプロセスに再び送ることができる。精製テレフタル酸は、流れ231で固液分離装置230から排出される。固液分離装置は、遠心分離器、ロータリーバキュームフィルター、加圧フィルター、またはこれらの1以上の組み合わせであってよい。カラム330から取り出される第2の液相は、精製生成物の最終洗浄のための脱塩水に置き換えるかまたはその必要性を減少するための分離用の洗浄液として分離装置に送ることができる。
[000125]固液分離器230内でそれから固体の精製テレフタル酸生成物が分離された精製母液は、水、少量の溶解および懸濁しているテレフタル酸、並びに母液中に溶解または懸濁している水素化酸化副生成物などの不純物を含む。図1に示す好ましいプロセス態様によれば、精製母液の少なくとも一部、好ましくは全部または実質的に全部を、流れ233で、高圧蒸留カラム330中での酸化反応オフガス分離に送り、そこに導入する。カラム330に送られる精製母液は、例えば344においてその下部部分でカラムに導入されて、分離のための液体還流を与える。精製母液を固液分離装置230から高圧蒸留カラムに移すことによって、母液中のテレフタル酸並びに安息香酸およびp−トルイル酸副生成物のような不純物を酸化反応器110に再循環して、そこで酸化するかまたはテレフタル酸に転化する一方で、蒸留カラム内で精製母液の含有水を気化および還流して、酸化における水バランスに大きな影響を与えることなく、加圧ガスおよび/またはカラムから取り出される第2の液相中に排出することも可能になる。また、精製母液を固液分離装置230から蒸留カラムに移すことによって、液体廃棄物処理に送ることが必要な液体流出物の体積が減少し、価値のあるテレフタル酸を酸化反応に戻し、次に酸化結晶化器152および156において回収するために取り出される。
[000126]反応容器110においてパラキシレン供給材料の液相酸化によって生成する反応オフガスは、排気口116を通して反応器から取り出され、流れ111で、図2に示すように、好ましくは約28〜約63の理論段を与える複数のトレーを有する高圧蒸留カラムであり、液体入口336および344を通して還流のための液体がそれに供給されるカラム330における分離に送られる。酸化からの蒸気流は、好ましくはそれぞれ約150〜約225℃および約4〜約21kg/cm2ゲージ圧で、酸化反応器110内におけるよりもそれほどは低くない温度および圧力下でカラム330に導入する。上記に説明したように、図1は、カラムへ導入される還流液が、固液分離装置230においてそれから固体精製テレフタル酸が分離される精製母液を含む好ましい態様を示す。カラム330は、80のトレーを有し、その約50〜70が還流入口344の下方に配置され、残りが還流入口344の上方であるが336における第2の還流液の導入位置よりも下方に配置される。入口336および344は、それらが、少なくとも約3の理論平衡段、好ましくは約3〜約20のかかる段に相当するトレーによって分離されるように配置される。図1に示す本発明の好ましい態様によれば、カラム336に供給される還流液は、好ましくは、蒸留カラム330から取り出される高圧および高温の第2の蒸気相を凝縮区域350において凝縮することによって回収され、流れ355でカラムに送られる凝縮液であり、一方、流れ233から還流入口344において供給される還流液は、好ましくは、液相酸化からの精製生成物の固液分離からかかる使用のためにカラムに送られる精製母液である。入口においてカラムに供給される還流は、好ましくは、入口344および336においてカラムに加えられる還流液の体積流量の約70〜約85%を与える。
[000127]カラムの下部部分において、カラム330への高圧の入口ガスから回収される液相酸化のための酢酸溶媒に富む第1の液相が、カラム330において液相に分配される安息香酸およびp−トルイル酸のようなパラキシレン酸化副生成物と共に回収される。主として水であるが、液相に分配される少量の安息香酸およびp−トルイル酸副生成物、並びに酸素および臭化メチルも含む第2の液相が回収され、側流出口345においてカラムから取り出される。水蒸気、酸化オフガスの凝縮できない成分、および気相に選択的に分配されるメタノールおよび酢酸メチルのような酢酸副生成物を含む第2の高圧の蒸気が、塔頂排気口334を通して排出ガスとしてカラムから取り出される。
[000128]蒸留カラム330における分離から得られる酢酸に富む第1の液相が、その下部部分においてカラムから排出され、好ましくは例えば流れ331で酸化反応器110に直接かまたは間接的に戻される。この液相を酸化に戻すことによって、酸化反応への溶媒酢酸の補給(make up)が与えられ、酸化蒸気相から凝縮される中間体および副生成物、並びに精製母液還流からカラムに再循環されるものを所望の生成物に転化させることを可能にすることによって供給材料の損失が減少する。側流出口345においてカラムから排出される第2の液相は、粗生成物スラリーおよび精製反応器210へ送る精製反応溶液を形成するのに用いるために流れ357で精製溶液メイクアップ容器202に送る前に、溶解酸素および臭化メチルのような腐食性の成分を除去するために、大気圧または周囲圧力のフラッシュ容器346中に排出される。フラッシングの後に水が富化された第2の液相をそれに送ることができる他の精製容器および液体受容装置並びにその使用としては、結晶化器内で気化した精製反応液体を置換するための清浄なメイクアップ溶媒として用いるための結晶化容器220、および洗浄液またはシールフラッシュとして用いるための固液分離装置230が挙げられる。凝縮液はまた、溶媒交換フィルターのための洗浄液のように、精製工程の外部において用いるのにも好適である。
[00129]排気口334においてカラムから排出される排出ガスは、図1に示すように凝縮器352および362を含む凝縮手段350、並びに解放ドラム(disengagement drum)372に送られる。好ましくは、凝縮は、約40〜約60℃の温度の液体凝縮水が少なくとも1つの段階で回収されるように行う。図に示す態様においては、凝縮は、凝縮手段352内において約120〜約170℃の温度で水によって間接的に熱交換することによって行い、得られる液体凝縮物は、還流入口336において加えるために流れ355でカラム330に送る。凝縮器352からの液体および未凝縮気体は、約30〜約40℃の冷却水を用いて凝縮を行うために流れ361で凝縮器362に送る。凝縮器362からの気体および液体流出物は、流れ363でドラム372に送り、ここで水を含む凝縮液を回収して流れ373中に取り出し、これは、シールフラッシュ液のような他の用途、或いはパージ流に送ることができる。加圧下の凝縮器排ガスは、流れ375で排出される。
[000130]蒸留カラム330からの第2の高圧気体の凝縮のための熱交換流体として用いられる水は、凝縮手段350内で熱交換によって加熱されて加圧水蒸気が生成し、これは、図1に示すプロセス態様において蒸気タービン450のようなエネルギー回収装置に送ることができる。逐次的により低い温度の熱交換流体を用いる一連の2以上の凝縮器を用いて凝縮を行うことにより、異なる圧力の水蒸気を生成することができ、これにより、水蒸気がその中で用いられる運転に異なる熱またはエネルギー投入を合致させることによって異なる圧力の水蒸気の使用効率を与えることができる。
[000131]流れ375中に取り出される凝縮からの未凝縮排ガスは、酸化からの未消費の酸素、酸化への酸素源として用いた空気からの窒素、かかる空気および酸化における反応からの炭素酸化物、並びに微量の未反応パラキシレンおよびその酸化副生成物、酢酸メチルおよびメタノール、並びに酸化において用いた臭素助触媒から形成される臭化メチルのような非凝縮性の成分を含む。図に示す態様においては、未凝縮の気体は、凝縮手段において回収される凝縮液中への実質的に完全な凝縮のために、水蒸気を実質的に含まない。
[000132]凝縮手段350からの未凝縮排ガスは、約10〜約15kg/cm2の加圧下であり、動力回収装置に直接送るか、或いは動力回収に先だって腐食性で燃焼性の種を除去するための汚染制御装置に送ることができる。図1に示すように、未凝縮の気体は、まず、気体中に残留する未反応の供給材料、並びに微量の溶媒酢酸および/またはその反応生成物を除去するための処理に送る。而して、未凝縮の気体は、流れ375で、圧力を実質的に損失することなく、パラキシレン、酢酸、メタノール、および酢酸メチルを吸収するための高圧吸収器(吸収塔)380に移す。吸収塔380は、凝縮後に残留する実質的に水が減少した気体を受容し、1以上の液体スクラビング剤と接触させることによって酸化からのパラキシレン、溶媒酢酸およびその反応生成物を気体から分離するように構成されている。図に示す好ましい吸収器の構造は、気相と液相の間の物質移動を行うための表面を与える複数の内部に配置されたトレーまたは床若しくは構造充填材(図示せず)を有する塔380を含む。それぞれ流れ381および383で吸収器へスクラビング剤を加えるための入口(図示せず)が、塔の1以上の上部部分並びに1以上の下部部分に配置されている。吸収器はまた、吸収器への流入気体の非凝縮性の成分を含む加圧下のスクラビングされた気体を流れ385中に取り出す上部排気口382、並びにパラキシレン、酢酸、メタノール、及び/又は酢酸メチルの1以上を含む気相からの成分がスクラビングされた液体酢酸流を取り出すための下部流出口384も有する。塔底液が塔の下部部分から取り出され、回収した成分を再使用するために反応容器110に送られる。
[000133]凝縮手段350から、或いは図1に示されるように高圧吸収器からの排気口382から取り出される加圧気体は、凝縮器または吸収器からの気体中の有機成分および一酸化炭素を二酸化炭素および水に転化するために、例えば390における汚染制御手段に送ることができる。好ましい汚染制御手段は、気体を受容し、場合によってはそれを加熱して燃焼を促進し、装置を通る気体流が実質的に影響を受けないようにセルラー形状または他の形状の担体上に配置されている高温安定性の触媒に接触させて気体を送るように構成されている接触酸化ユニットである。吸収器380からの塔頂気体は、プレヒーター392および接触酸化ユニット394を含む汚染制御システム390に送られる。気体は、プレヒーター内において約250〜450℃に加熱され、約10〜約15kg/cm2の加圧下で酸化ユニット394を通り、ここで有機成分および副生成物が、有益な環境管理により適した化合物に酸化される。
[000134]酸化された高圧の気体は、接触酸化ユニット394から、発電機420に接続されている膨張器400に送られる。酸化された高圧の気体からのエネルギーは、膨張器400内で仕事に変換され、この仕事は発電機420によって電気エネルギーに変換される。膨張した気体が膨張器から排出され、これは、好ましくは放出を適切に管理するために苛性スクラビングおよび/または他の処理を行った後に大気中に放出することができる。