JP6527451B2 - 光分波器、光受信モジュールおよびその製造方法 - Google Patents

光分波器、光受信モジュールおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、波長多重された光信号を波長毎の光信号に分離する光分波器、光分波器を用いた光受信モジュールおよびその製造方法に関する。
光通信の分野において、高速・大容量光通信を実現する中核技術として、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方式が広く普及している。
WDM方式用の光受信モジュールは一般に、波長多重された光信号(WDM光信号)を波長毎の光信号に分離する光分波器と、分離された各光信号を電気信号に変換する受光素子などから構成される。
近年、光ネットワークの高密度化・低コスト化のために、この光受信モジュールおよびその構成部品には小型化および低コスト化が求められている。
特にLAN−WDM向けの小型・低コストな光受信モジュールとしては、相対的に多重数も小さく波長間隔も広いため、挿入損失の小さい薄膜フィルタ(TFF :Thin Film Filter)を用いて波長多重された光信号を波長毎に分離する光分波器として構成したものが実現されている(下記非特許文献1参照)。
図1(a)にこのような、薄膜フィルタ(TFF)を用いた光分波器で構成した光受信モジュール1の従来技術を示す。
この光受信モジュール1では、左下端よりコリメートレンズ2を介して入射された波長多重光信号(図1では4波長(4ch)のWDM光信号とする)を、透光性の部材、例えばガラスで構成されたガラスブロック3内で上下に多重反射させて右方向に伝搬させる。ガラスブロック3の上面に設けられたTFF5で、WDM光を波長毎に上方向に順に分離・分波する多重反射部4となし、各TFFに対応して設けられた集光レンズ8および光電変換受光素子であるフォトダイオード(PD:Photo Diode)7のアレイを含めて光受信モジュール1を構成する。
多重反射部4は、ガラスブロック3の上面(表面)に各々異なる所望の波長帯域(ch)の光信号のみを透過させ、それ以外の波長を反射させる複数のTFF5が設けられ、下面(裏面)に平面の反射ミラー6が設けられており、TFF5と反射ミラー6を互いに対向するようにガラスブロック3で固定して成る。
TFFの透過特性は入射光の入射角に強く依存するため、伝搬光路に対するTFFのアライメントずれが累積すると、各ch(特に下流側、図1では右端のチャンネルch4)の信号光のアイソレーションの低下、及びPDへの結合効率の悪化につながる。従って、この構成の光分波器ではTFFの高精度なアライメントが求められる。
このTFFの高精度なアライメント方法として、非特許文献1では、TFFを反射ミラー、集光レンズと共にガラスブロックに対して集積する構成を提案している。
ガラスブロックの端面は高精度に加工可能なため、各部品の高精度なアライメントが実現できる。
望月敬太, 他(2010) 「100Gbps イーサネット用光受信モジュールにおける4ch波長分離光学系の開発」信学技報(2010年)
図1のTFFを光分波器に用いる従来の構成の光受信モジュール1では、光分波器の多重反射部4のガラスブロック3が床面積の大部分を占める。
図1(b)に示すように、多重反射部の床面積Sは、WDM光信号の多重数(ch数、この例では4であるが、入射部分の幅として0.5を加え、4.5とする)、各PDのチャンネル間距離dと、ガラスブロックの上下幅tによって決まる。さらに、上下幅tは各chのアイソレーション条件から、WDM光のTFFへの入射角をθとして以下の式(1)のように決まる。
t = d / 2tanθ …(1)
従って、多重反射部の床面積Sは、
S = 4.5 × d × t
= 4.5 × d2 / 2tanθ …(2)
となる。
ここで多重反射部を小型化するためには、チャンネル間距離dを小さくするか、あるいはTFFへの光の入射角θを大きくしてtを小さくすれば良い。しかし、dはPDチップのサイズの制約で決まるため、PDチップサイズより小さくすることはできない。一方、TFFへの入射角θを大きくすると、入射光の偏光状態によるTFFの透過率の差異が無視できなくなり、信号劣化が生じてしまうため、θの大きさにも制限がある。
図2に、入射光の偏光状態がS偏波とP偏波の場合について、入射光のパワー透過率比(S波透過率/P波透過率)をTFFへの光入射角θについて計算した例を示す。TFFへの入射角θが大きくなると、入射光の偏光状態がS偏波とP偏波の場合で透過率に大きな差を生じることが判る。
光受信モジュールにおける典型的な透過率の偏波依存性許容量を、―0.1dBとすると、図2(a)の左上部分を拡大した図2(b)より θ < 6°である必要がある。
最大の θ = 6°としたときの多重反射部の床面積Sは、d = 1 mmとすると、式(1)、(2)からS = 21.4 mm2であり、多重反射部をこれ以上小型化することは出来ないことになる。
従来型の光分波器では通常、θ = 3.5°程度を採用しているため、d = 1 mmのときには、t = 8.2 mm、S = 36.9 mm2となってしまう。
以上より、図1(a)のような従来構成の光分波器を用いる光受信モジュールでは、
光分波器のガラスブロックサイズの縮小ができず、更なるモジュールの小型化は困難であった。
また、前述の様にガラスブロックの端面は高精度に加工可能なため、各部品の高精度なアライメントが実現できるものの、加工の手間やコストがかさむと言った課題もあった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光分波器のサイズを縮小し、より小型化、低コスト化した光受信モジュールおよびその製造方法を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、以下のような構成を備えることを特徴とする。
(発明の構成1)
透光性基板と、
前記透光性基板の上面に、波長多重光信号の伝搬方向に沿って、各々異なる特定波長の光信号を透過して分離し他の波長の光信号は反射するように複数設けられた薄膜フィルタ(TFF)と、
前記透光性基板の下面の前記TFFに対応する位置に設けられた、前記波長多重光信号の光路変換を行う光路変換部と、
を備えた光導波レイヤで構成された光分波器と
前記光分波器の上面の前記各TFFに対応する位置にそれぞれ、集光レンズと光信号を電気信号に変換するフォトダイオード(PD)とを備えるPDレイヤを備え、
前記PDレイヤと前記光導波レイヤは接合層により一体集積化されたチップとして構成されてなる光受信モジュールであって、
前記PDレイヤは、表面に前記フォトダイオードが形成され、裏面にモノリシック集光レンズとして前記集光レンズが形成された透光性半導体基板により一体構成されている
ことを特徴とする光受信モジュール
(発明の構成2)
前記光路変換部は、前記透光性基板の下面のV字型溝に形成された反射ミラーからなり

前記TFFは、前記透光性基板の前記波長多重光信号の伝搬方向の断面において、前記V字型溝の逆V字をなす頂角の二等分線を逆方向に延長した線上に位置し、当該頂角の二等分線の延長線は前記TFFの反射面と直交する
ことを特徴とする発明の構成1に記載の光受信モジュール
(発明の構成3)
前記波長多重光信号のTFFへの入射角をθ、前記V字型溝の逆V字をなす頂角をθVとして、
θV = θ+90°
であることを特徴とする発明の構成2に記載の光受信モジュール
(発明の構成
前記透光性基板は、ガラス、プラスチック、Si、InP、GaAsのいずれかよりなり、
前記透光性半導体基板は、Si、InP、GaAsのいずれかよりなり、
前記接合層は、熱硬化性またはUV硬化性の接着剤を硬化してなる
ことを特徴とする発明の構成1ないし3のいずれか1項記載の光受信モジュール。
(発明の構成
モールド技術を用いて透光性基板を加工して、透光性基板の下面に波長多重光信号の伝搬方向に沿って複数のV字型溝を形成するステップと、
前記透光性基板の下面に光反射膜を形成して少なくとも前記V字型溝の部分を覆い、前記波長多重光信号の光路変換を行う複数の反射ミラーを形成するステップと、
前記透光性基板の上面の前記V字型溝に対応する位置に透過波長の異なる複数の薄膜フィルタ(TFF)を形成するステップと、
を含む光導波レイヤを製造するステップと、
透光性半導体基板の表面の前記TFFに対応する位置に、結晶成長技術、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてフォトダイオード(PD)を複数形成するステップと、
基板研磨技術により、前記透光性半導体基板の裏面を所望の厚さまで薄層化し、前記TFFに対応する位置にモノリシック集光レンズとして集光レンズを複数形成するステップと、
を含むPDレイヤを製造するステップと、
前記PDレイヤと前記光導波レイヤの間に接合層を形成して一体集積化されたチップとして製造するステップと、
を含むことを特徴とする光受信モジュールの製造方法。
以上記載したように、本発明によれば、光分波器のサイズを縮小し、より小型化した光受信モジュールを低コストで提供することが可能となる。
従来の光受信モジュールの構造と、そのサイズを説明する図である。 TFFへの光入射角θと、入射光の偏光状態による透過率の差異を説明する図である。 本発明の実施形態1の光受信モジュールの構成を示す図である。 本発明の実施形態1の光受信モジュールの製造方法を示す図である。 本発明の実施形態2の光受信モジュールの構成を示す図である。 本発明の実施形態1の光受信モジュールの動作について説明する図である。 本発明の光分波器のV字型溝の形状などの条件について説明する図である。
本発明においては、薄膜フィルタ(TFF)を用いた光分波器、光受信モジュールにおいて、光分波器の多重反射部分を、信号光の伝搬光路に形成した光路変換部による光路変換を利用することで薄い光導波レイヤとして、短い伝搬光路で各chの信号光のアイソレーションを確保し、波長分離を行うことを可能とした。これにより、光分波器(光導波レイヤ)のサイズを縮小でき、光受信モジュールの小型化、低コスト化が可能になる。
また本発明においては、ウェハ接合技術で各部品のウェハを貼りあわせて作製するため、各部品のアライメントをプロセス時の高い精度で行うことができる。
これにより、アライメントのずれによる各chのアイソレーションの低下や、PDの光結合効率の低下を防ぐことができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図3に本発明の実施形態1に関わる光受信モジュール30の構成を示す。
図3(a)の側面図において、本発明の実施形態1に関わる光受信モジュール30の基本構造は、透光性半導体基板(ウェハ)からなるPDレイヤ39と、透光性の部材、例えばガラスからなる透光性基板で構成された光導波レイヤ34から成り、両レイヤは例えば接着剤を用いたウェハ接合技術によって接合されている。
また、光導波レイヤ34の伝搬光路には、従来の多重反射部4のガラスブロック3よりも薄型化、小型化されたガラス基板33が用いられている。
ガラス基板33の上面(表面)には、WDM光信号の伝搬方向に沿って、各々異なる特定波長の光信号を透過して分離し、他の波長の光信号は反射するTFF5(薄膜フィルタ)が複数設けられて、光分波器を構成している。
上のPDレイヤ39には、前記各TFF5に対応して集光レンズ8およびPD7がアレイを形成しており、全体として光受信モジュール30を構成する。
図3(a)の光導波レイヤ34の伝搬光路であるガラス基板33には、TFF5に対応する下面(底面)の位置に、金属薄膜などの光反射膜36で覆われたV字型溝37が複数形成されており、これを反射ミラーとして光路変換部を形成することにより、光導波レイヤに入射したWDM信号光の光路変換を行い、薄型化、小型化を達成している。
ガラス基板33の光入射側の側面(図3(a)の左端)には、基板底面に略平行にWDM信号光を入射するための光入射窓32が設けられており、光入射窓32には反射を防止するために反射防止膜が設けられている。
図3(b)は、本発明の実施形態1の光受信モジュール30の、PDレイヤ39と光導波レイヤ34各々の、上面図(表面)、下面図(裏面)である。PDレイヤ39の表面にはPD7が、裏面には集光レンズ8が複数、アレイとして設けられている。また、これらに対応して光導波レイヤ34の表面にはTFF5が、裏面にはV字型溝37が複数、それぞれ設けられて、V字型溝37は光反射膜36で覆われて光路変換部の反射ミラーを構成している。
(光受信モジュール製造方法)
図4に、上記本発明の実施形態1の光受信モジュール30の製造方法を示す。
(PDレイヤ)
まず、図4(a)において、PDレイヤ39は、前述の様に透光性半導体基板の表面上に形成された複数のPD7、およびPDに対応して該透光性半導体基板の裏面を加工して作製される複数のモノリシック集光レンズ8からなる一体のアレイとして構成される。
PD7は、透光性のある半導体基板の表面に、公知の結晶成長技術、フォトリソグラフィおよびエッチング技術によって形成される。透光性半導体基板(PDウェハ)としては、使用波長帯において充分な透光性がある半導体材料であれば何でも良く、例えば公知のInPのほかSi、GaAsなどを用いることができる。
また、モノリシック集光レンズ8は、これも公知の基板研磨技術により、集光レンズの焦点距離等に応じて前記透光性半導体基板(PDウェハ)の裏面を所望の厚さまで薄層化した上で、公知のフォトリソグラフィおよびエッチング技術によって作製することで、PDレイヤ39としてPDと一体に形成できる。PD7は、pin-PD、 APD(アバランシェ・フォトダイオード)等であっても良い。
さらに、集光レンズ8は上述の様にPDウェハ(透光性半導体基板)にモノリシックに一体形成したものに限らず、例えば実施形態2として図5に示すように、PDと別の透光性基板に作製し、接着剤51によりウェハ接合技術で集積してPDレイヤとしても良い。また、この場合の集光レンズの材料は、透光性であれば半導体材料である必要は無く、例えばガラスやプラスチック等であっても良い。
(光導波レイヤ)
また、図4(a)において、光導波レイヤ34は、透光性の基板、例えばガラス基板33の上面(表面)に形成される複数のTFF5と、左側面に形成される光入射窓32、下面(裏面)に形成される複数のV字型溝37および光反射膜36の反射ミラーから構成される。光導波レイヤの透光性基板の材料としては、充分な透明性と安定性があればガラスのほかプラスチック等であっても良い。
図4(a)において、光路変換部を構成するV字型溝37は、光信号の伝搬方向(左から右)に沿って、分離する光信号の数(この場合は4)だけ複数、設けられている。ガラス基板33内の光信号の進行方向に沿った図示断面において、V字型溝37は、逆V字型の断面を持つ溝として図示の様に形成され、該溝の走る方向はガラス基板33の底面において光信号の伝搬方向(左から右)に直角な方向(紙面垂直方向)に形成されている。該V字型溝37の紙面垂直方向の長さは、少なくとも伝搬する光信号のビーム直径以上あればよい。
また、図4では光路変換部の反射ミラーとなる光反射膜36は、ガラス基板33の裏面全体を覆うように表現されているが、少なくともV字型溝37を形成した部分を覆うように形成されていれば光路変換には充分である。光反射膜36は、ガラス基板のV字型溝を形成した面に、反射ミラーとなる金属薄膜(Au等)を真空蒸着技術等で成膜して形成する。
光入射窓32およびV字型溝37は、公知のガラスモールド技術等を用いて、ガラス基板33を所望の形状に加工することで作製される。
ガラスモールド技術とは、金属等で作製された金型に、ガラス材料(プリフォーム)を入れ、加熱して軟化させた後、プレスをすることで、任意の形状にガラス材料を加工する技術であり、これにより従来のガラスブロックの加工よりも低コスト化を図ることができる。プラスチックのような透光性材料であれば、モールド加工は更に容易である。
ガラス基板33上の薄膜フィルタTFF5は、各V字型溝37に対応して設けられており、各TFF5は、信号光の各chの波長(λ1〜λ4)に対応する透過波長帯域を有する誘電体多層膜を、公知のスパッタ法およびリソグラフィ技術を繰り返し用いて形成することで作製される。
誘電体多層膜とは、光の透過中心波長をλn (n = 1, 2, 3, 4) とした場合に、光学膜厚がλn/4である異なる屈折率を有する二種類の膜を交互に繰り返し積層したものであり、積層境界からの反射光間に干渉条件が成立する波長の光は、反射光が打ち消される結果として透過し、干渉条件が成立しない波長の光は反射される。
(貼りあわせ工程)
次に図4(a)〜(c)の順に、ウェハ接合技術による前記PDレイヤ39および光導波レイヤ34の貼りあわせ工程について説明する。
まず図4(a)に示すように、前記の製造方法で、PDレイヤ39に対応する部品群を透光性半導体基板(例えばInP)ウェハ上に、また光導波レイヤ34に対応する部品群を透光性基板(例えばガラス)ウェハ上にそれぞれ作製する。
その後図4(b)に示すように、ガラス基板33のTFF5を形成した側に接着剤41を塗布し、図4(c)に示すように、公知のウェハボンディング装置によって両レイヤのウェハ同士を貼りあわせ、電気炉、ホットプレート、またはUV照射によって接着剤41を硬化させ接合層とすることで、各ウェハを接合して一体集積化されたチップとして構成する。
接着剤41を塗布するウェハは、InP側ウェハ側であっても構わない。
ウェハ接合時の接着剤41としては、熱硬化性またはUV硬化性のBCBやポリイミド等を用いることができる。
前記の方法で接合したウェハを公知のダイシング技術によって、所望のチップサイズに切断した後に、ガラス基板33の左側面に形成した光入射窓32部分に反射防止膜を形成することで、本発明で提案する図3(a)、(b)の構造を有する光分波器および光受信モジュール30が完成する。
(光分波器および光受信モジュールとしての動作)
続いて、図6を参照しながら、本発明の実施形態1に関わる、光分波器および光受信モジュールの光路変換動作について説明する。
図6は、透光性基板の波長多重光信号の伝搬方向の断面を示し、図6において、左端下方のコリメートレンズ2を介してガラス基板33の底面側の左側面の光入射窓32より、ガラス基板面に略並行に右に向かってWDM(波長多重)光信号(波長λ1〜λ4、ch1〜ch4)が入射する。
WDM光信号は、まず、光信号の伝搬方向に沿って4つ設けられたV字型溝37−1〜4のうち、左端のch1に対応するV字型溝37−1の左側斜面の反射ミラーで上方に反射されて、TFF5−1のあるガラス基板33の上面に向かう。
透過波長がλ1であるTFF5−1において、波長λ1(ch1)の光信号は透過され、PDレイヤ39の集光レンズ8−1で集光されてPD7−1に入射し、電気信号に変換され受信検出される。
TFF5−1の透過波長帯にない、残りの波長λ2〜λ4(ch2〜ch4)の光信号は、TFF5−1で下方に向けて反射され、ガラス基板33の底面に向かい、V字型溝37−1の右側斜面の反射ミラーで再度反射されて、ガラス基板33の底面に略並行に、隣接するch2(波長λ2)に対応したV字型溝37−2に伝搬する。
以下同様に、波長λ2〜λ4(ch2〜ch4)の各光信号が、V字型溝37−2〜4の反射ミラーで反射され、TFF5−2〜4において波長毎に順次、分離分波され、光導波レイヤ34は光路変換部を備えた光分波器として機能するとともに、PDレイヤ39のPD7−2〜4で各々電気信号として受信検出され、光受信モジュール30として全体が動作する。
(V字型溝による光路変換と伝搬光路)
図7に、上述のような伝搬光路を構成して光路変換するための光路変換部である、V字型溝37の形状やサイズについて説明する。
図7は、図6のガラス基板33のV字型溝37−1近傍の伝搬光路と寸法を、説明のために記載した図である。図示は無いが、図7のガラス基板33の上面(表面)にはTFF5−1〜4が設けられており、TFFの反射面はガラス基板33の上面に接している。
図6の説明では、便宜のためWDM光信号の入射方向はガラス基板33の基板底面に略並行などと表現したが、ガラス基板33の底面は光信号の伝搬には関与しないから、底面の方向は本質的には伝搬光路と無関係である。
光信号の伝搬光路を決定するのは、光信号と該光信号を反射するV字型溝の反射ミラー斜面、TFFの反射面の相対的な位置と方向の関係であり、説明の前提として入射する光信号はTFFの反射面、すなわちガラス基板33の上面に平行に入射するものとする。
V字型溝の斜面で反射された光信号が、TFFで反射され、さらにV字型溝のもう一方の斜面で反射されて、隣接するV字型溝に伝搬するように光路変換するには、幾何光学的な条件により、ガラス基板33上のTFF5が、対応するV字型溝37の逆V字をなす頂角の二等分線を逆方向に延長した線上に位置する必要があり、当該頂角の二等分線の延長線はTFFの反射面と直交する必要がある。
TFFへの光入射角θは、前述の様に偏光状態によるTFFの透過帯域の違いを抑制するために、できるたけ小さいことが望ましく、図7では θ=3.5°としている。
このとき、V字型溝37の逆V字をなす頂角を図7のようにθVとおくと、
θV = θ+90°=93.5°となる。
また、図7の本発明の構成において、ガラス基板33のサイズを検討すると、例えばコリメートされた入射光のガウシアンビーム半径を0.1mmとすると、反射面となるV字型溝の深さ及び奥行きは0.2 mm以上であれば良い。θV=93.5°より、V字型溝37の底面における横幅は0.215mmx2=0.43mmとなり、PDのch間距離が1mmであるから、V字型溝の間の間隔は0.57mmとなる。
設計上の任意性はあるが、例えば図7のように、光導波レイヤの上下幅を1mmとすると、光分波器および受光素子が占める床面積は、約4 mm2とすることができる。前記非特許文献1の従来構造と比較して、約1/10程度の床面積となり大幅に小型化することができる。
(発明の効果)
以上述べたように、光分波器における信号光の各chのアイソレーションを光導波レイヤのV字型溝を介した光路変換によって行うことで、波長分離に要する伝搬光路の面積を縮小でき、光受信モジュールの小型化が可能である。
また、ウェハ接合時にプロセスの精度で各部品のアライメントを行うため、高精度なアライメントが可能であり、アライメントのずれによる各chのアイソレーションの低下、光結合効率の低下を防ぐことができる。
さらに、ウェハ接合技術によって前記構成を作製することで、前記のウェハ貼りあわせ工程時に各部品間のアライメントが完了するため、光受信モジュール実装時の工程数およびコスト削減につながる。
すなわち、「TFFを光分波器に用いる光受信モジュールにおいて、光分波器の多重反射部分のガラスブロックサイズの縮小ができず、モジュールの小型化が困難である」という課題に対して、「V字型溝を介した光路変換を利用して、短い伝搬光路で各chのアイソレーションを確保し、波長分離を行う」ことで、「波長分離に要する伝搬光路の床面積の削減」が可能となり、「光受信モジュールの小型化を実現」することができる。
また、「光分波器にTFFを用いる構成では、伝搬光路に対するTFFの高精度なアライメントが必要である」という課題に対して、「ウェハ接合技術を用いて、各部品を一体集積化することで、「各部品のアライメントをプロセスの精度で実現」し、「アライメントのずれによる各chのアイソレーションの低下、光結合効率の低下を防ぐ」ことができる。
以上の様に、本発明によって光分波器のサイズを縮小し、より小型化、低コスト化した光受信モジュールを提供することができる。
1、30 光受信モジュール
2 コリメートレンズ
3 ガラスブロック
4 多重反射部
5、5−1〜5−4 TFF(薄膜フィルタ)
6 反射ミラー
7、7−1〜7−4 PD(フォトダイオード)
8、8−1〜8−4 集光レンズ
32 光入射窓
33 ガラス基板
34 光導波レイヤ
36 光反射膜
37、37−1〜37−4 V字型溝
39 PDレイヤ
41、51 接着剤

Claims (5)

  1. 透光性基板と、
    前記透光性基板の上面に、波長多重光信号の伝搬方向に沿って、各々異なる特定波長の光信号を透過して分離し他の波長の光信号は反射するように複数設けられた薄膜フィルタ(TFF)と、
    前記透光性基板の下面の前記TFFに対応する位置に設けられた、前記波長多重光信号の光路変換を行う光路変換部と、
    を備えた光導波レイヤで構成された光分波器と
    前記光分波器の上面の前記各TFFに対応する位置にそれぞれ、集光レンズと光信号を電気信号に変換するフォトダイオード(PD)とを備えるPDレイヤを備え、
    前記PDレイヤと前記光導波レイヤは接合層により一体集積化されたチップとして構成されてなる光受信モジュールであって、
    前記PDレイヤは、表面に前記フォトダイオードが形成され、裏面にモノリシック集光レンズとして前記集光レンズが形成された透光性半導体基板により一体構成されている
    ことを特徴とする光受信モジュール
  2. 前記光路変換部は、前記透光性基板の下面のV字型溝に形成された反射ミラーからなり、
    前記TFFは、前記透光性基板の前記波長多重光信号の伝搬方向の断面において、前記V字型溝の逆V字をなす頂角の二等分線を逆方向に延長した線上に位置し、当該頂角の二等分線の延長線は前記TFFの反射面と直交する
    ことを特徴とする請求項1に記載の光受信モジュール
  3. 前記波長多重光信号のTFFへの入射角をθ、前記V字型溝の逆V字をなす頂角をθVとして、
    θV = θ+90°
    であることを特徴とする請求項2に記載の光受信モジュール
  4. 前記透光性基板は、ガラス、プラスチック、Si、InP、GaAsのいずれかよりなり、
    前記透光性半導体基板は、Si、InP、GaAsのいずれかよりなり、
    前記接合層は、熱硬化性またはUV硬化性の接着剤を硬化してなる
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の光受信モジュール。
  5. モールド技術を用いて透光性基板を加工して、透光性基板の下面に波長多重光信号の伝搬方向に沿って複数のV字型溝を形成するステップと、
    前記透光性基板の下面に光反射膜を形成して少なくとも前記V字型溝の部分を覆い、前記波長多重光信号の光路変換を行う複数の反射ミラーを形成するステップと、
    前記透光性基板の上面の前記V字型溝に対応する位置に透過波長の異なる複数の薄膜フィルタ(TFF)を形成するステップと、
    を含む光導波レイヤを製造するステップと、
    透光性半導体基板の表面の前記TFFに対応する位置に、結晶成長技術、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてフォトダイオード(PD)を複数形成するステップと、
    基板研磨技術により、前記透光性半導体基板の裏面を所望の厚さまで薄層化し、前記TFFに対応する位置にモノリシック集光レンズとして集光レンズを複数形成するステップと、
    を含むPDレイヤを製造するステップと、
    前記PDレイヤと前記光導波レイヤの間に接合層を形成して一体集積化されたチップとして製造するステップと、
    を含むことを特徴とする光受信モジュールの製造方法。
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