JP6526588B2 - ペリクル枠およびペリクル枠の製造方法 - Google Patents

ペリクル枠およびペリクル枠の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ペリクル枠およびその製造方法に関する。
半導体製造において、半導体ウェハにパターンを形成する露光工程で用いられるフォトマスクを防塵するために、透明な薄い膜(ペリクル膜)が張設されたペリクルが用いられる。このペリクル膜をフォトマスクから所定距離離して配するためにペリクル枠という長方形の枠体が用いられる。このペリクル枠には、いくつかの特性が求められる。
その一つは、強い露光光、例えばUV光あるいはエキシマレーザー光などに耐え得る耐久性である。また、ペリクル枠にペリクル膜を張設した際に発生する膜張力により、ペリクル枠が変形しないために、適度な機械的強度や剛性も求められる。このために、従来から、ペリクル枠の形状を様々に工夫したものが知られている。例えば特許文献1、2に記載のペリクル枠は、枠体の形状を全体としてみたとき外に凸の形状としている。
特開2005−352096号公報 特開2006−56544号公報
しかしながら、ペリクル枠の剛性が低い場合、外側に凸の形状としても、ペリクル膜を貼付したときに生じる張力が一様でなければ、結局ペリクル枠は、歪みや狂いを生じてしまう。ペリクル膜を貼付しても歪みや狂いを生じることのないペリクル枠を、現実的な製造方法と共に提供することは困難な課題であり、ペリクル枠とその製造方法に関しては、なお改善の余地が残されている。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
(1)本発明の第1の実施態様として、ペリクル枠が提供される。ペリクル枠は、枠形状に形成されたペリクル枠であって、ヤング率が150GPa以上で、かつビッカース硬度が800以上の焼結体からなり、前記焼結体の20℃における体積抵抗率が、1.0×10−3Ω・cm以下であり、前記枠形状の一部に、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広の突出部を、所定の長さに亘って設けたことを特徴とする。
かかるはペリクル枠は、枠形状の一部に、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広の突出部を、所定の長さに亘って設けていることから、ペリクル枠の強度が高まり、膜を張設したときの変形や歪みの発生を抑制できる。
(2)こうしたペリクル枠において、当該ペリクル枠の外形を矩形形状とし、前記突出部を、前記矩形形状をなす4つの辺のうち、少なくとも短辺または長辺の一つに設けるものとしてもよい。このペリクル枠では、長辺に突出部を設ければ、フォトマスクとペリクル枠との寸法関係から、突出部を短辺に設ける場合と比べて、その幅を比較的大きくすることができる。更に、長辺側に設ければ、加工の際に、ペリクル枠となるワークを片持ちの状態で保持する際のワークの撓みを小さくでき、加工精度を高めることができる。
(3)こうした突出部は、複数箇所設けても差し支えない。複数箇所に設ければ、ペリクル枠の強度を高めることができる。
(4)こうした突出部は、当該ペリクル枠に設けられた貫通孔または有底孔の形成箇所を避けて設けても良い。こうすれば、有底孔を用いた位置決めや貫通孔を用いた換気などの機能を阻害しない。
(5)突出部は、前記枠形状の長手方向または短手方向のいずれかの中心軸から見て非対称の形状となるように設けても良い。こうすれば、ペリクル枠の裏表や上下あるいは左右の弁別が容易となる。形状認識により、ロボットなどにペリクル枠を掴む際の形状認識が容易となる。
(6)本発明の第2の実施態様として、所定の寸法の枠形状のペリクル枠を製造する方法が提供される。この方法は、焼結体材料を前記枠形状より大きな幅を備えた枠形状の被加工材として用意する第1工程と、前記被加工材の前記枠形状の内周面及び外周面をワイヤー放電加工により、所定の形状に加工する第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記ワイヤー放電加工による加工軌跡の内側で前記被加工材を保持し、前記ワイヤー放電加工により、前記保持した部位の少なくとも一部を、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広となる突出部を所定の長さに亘って形成することを特徴とする。こうすれば、ペリクル枠の外周加工によって、被加工材の保持ができなくなることがなく、被加工材の保持を加工の途中でやり直す必要がない。
(7)こうした場合、前記被加工材を厚み方向から保持する箇所の外周に、前記保持に先立って、前記突出部が形成される位置に対応する前記被加工物の外周に付加部材を結合する準備工程を備え、前記第2工程では、前記付加部材と共に、前記保持した状態で前記加工を行なうものとしても良い。こうすれば、被加工材の保持および加工が容易となる。なお、この場合、被加工材と付加部材とを一緒に保持しても良いし、付加部材だけを保持するものとしても良い。また、保持は、被加工材や付加部材の厚み方向から行なうのが好適だが、少なくとも付加部材については、保持の方向はいずれでも良い。付加部材だけで保持を行なう場合には、被加工物の厚みにかかわらず、保持を行なうことができる。このように付加部材を用いる場合、付加部材も一緒に加工しても良いし、付加部材は加工しないものとしても良い。いずれの場合でも、加工により突出部を形成することができる。
(8)前記第2工程における前記付加部材は導電性材料、例えば鉄、ステンレス、銅、アルミニウムなどとし、前記被加工材とは導電状態となるように結合しても良い。こうすれば、付加部材を介して放電加工の給電が可能となる。
(9)また、前記準備工程では、前記導電性の付加部材を、前記被加工材の外周に導電性の接着剤により接着し、更に、前記ワイヤー放電加工の後で、前記導電性の部材を取り去り、前記導電性の部材が接着されていた前記外周面を、機械加工により平坦に加工する第3工程を備えるものとしても良い。こうすれば、被加工材の保持が容易となり、ペリクル枠として外形の仕上げがなされた状態を容易に得ることができる。
(10)前記第2工程は、前記ワイヤー放電加工を、前記付加部材を通らない加工軌跡により行なうものとしても良い。こうすれば、突出部は付加部材の外側に形成されることになる。この場合、付加部材は加工されないので、付加部材を繰り返し使用することが可能となり、省資源に資すると共に、製造コストを低減できる。突出部の長さが、付加部材の長さより長くなるので、被加工材と付加部材の接着長さを突出部長さより短く設定すればよい。
(11)更に、前記放電加工により形成された変質層を除去する第4工程を備えるものとしても良い。こうすれば、変質層を除去するので、塵埃等の発生を抑制できる。
(12)前記第2工程において、前記被加工材の前記突出部となる部位の外周は、前記ワイヤー放電加工による加工を行なわないものとしても良い。こうすれば、突出部の少なくとも一部の加工を行なわないので、加工を簡略化できる。
(13)前記第2工程における前記厚み方向から保持する際、当該保持は、前記被加工材の内周の放電加工経路を妨げないようにすることも望ましい。こうすれば、内周のワイヤー放電加工の途中で、保持位置を変更するといった余分な手間が生じず、好適である。前記保持は、前記付加部材の少なくとも一部を厚み方向から保持するものであれば良く、付加部材と被加工材と一緒に保持しても良いし、付加部材だけを保持するものとしても良い。
これらの他、本発明は、様々な形態で実施可能である。例えば、ペリクル枠の製造装置として実現しても良い。また、焼結体を、耐熱温度1500℃以上の導電性の無機化合物である窒化物、炭化物、珪化物、硼化物の成分を少なくとも一種含むものとても良い。あるいは、焼結体は、炭化珪素焼結体としてもよい。更に、焼結体は、高融点金属材料の成分を含むものとしても良い。
この他、焼結体は、ヤング率が250GPa以上あるいはビッカース硬度が1000以上としてもよい。
第1実施形態としてのペリクル枠を示す斜視図。 図1における2−2矢視断面図。 ペリクル枠の製造方法を示す工程図。 各サンプルのヤング率、ビッカース硬度、体積抵抗率および加工性を示す説明図。 各サンプルの組成を示す説明図。 放電加工用による外形加工の様子を示す説明図。 ペリクル枠のワーク保持と放電加工用による外形加工の様子を示す説明図。 ペリクル枠のワーク保持の様子を示す説明図。 ペリクル枠のワーク保持と放電加工用による外形加工の他の例を示す説明図。 ワーク保持部材を用いないペリクル枠のワーク保持と放電加工用による外形加工の他の例を示す説明図。 ペリクル枠のワークの複数箇所での保持と放電加工用による外形加工の様子を示す説明図。 ペリクル枠のワーク保持と放電加工用による外形加工の他の例を示す説明図。
[ペリクル枠の構造]
図1は、本発明の各実施形態に共通のペリクル枠10の形状を示す斜視図である。また、図2は、図1の2−2矢視断面図である。図2では、理解の便を図って、ペリクル枠10の片面に張設されたペリクル膜30を併せて記載した。ペリクル枠10にペリクル膜30を張設したものをペリクル40と呼ぶ。本明細書では、ペリクル枠の全ての面のうち、ペリクル膜が張設される面を区別する場合には、図2においてペリクル膜が張設された側を「上面」といい、反対の面を「下面」という。また、この両面と外側の面の3つの面を含めて「外周面」と呼び、ペリクル枠の内側の面を「内周面」と呼ぶことがある。また、これらの面をそれぞれ区別する必要がない場合は、単に「表面」と呼ぶことがある。
両図に示すように、このペリクル枠10は、略長方形の枠形状を有する枠体であり、長方形状をなす上下左右の直線部31〜34の太さ(断面縦横寸法)は、4つのコーナー部51〜54を除いて同一である。また、コーナー部51〜54は、図1に示した例では、外周が45度の面取り、内周が1/4円弧に、それぞれ加工されている。コーナー部51〜54の形状は、もとよりこれに限る訳ではなく、コーナー部が存在しない形態、面取りなどの直線的な加工、曲線状(円弧、楕円弧や放物線、自由曲線などを含む)の加工、およびこれらの組み合わせが考えられ、いずれの形状を外周・内周とするかの組み合わせも任意である。また、コーナー部51〜54の一部または全部を互いに異なる形状とすることも差し支えない。本実施形態では、コーナー部51〜54の幅は、外周側の面から法線方向の長さとして規定しているが、最小部で約2.2mmであり、直線部の幅2.0mmより広くした。このため、ペリクル枠10は、コーナー部の強度の方が、直線部より高くなっている。
ペリクル枠10の4つの直線部31ないし34は、これを区別する際には、上辺31,下辺32,左辺33,右辺34と呼ぶことがある。これらの呼称は図1における紙面に対する方向を表しているだけであり、単に区別のために用いる。下側の直線部である下辺32には、その外周方向に突出部35が設けられている。この突出部35は、直線部32の中心からやや左より(左辺33寄り)に設けられている。従って、この実施形態のペリクル枠10は、突出部35があることにより、その上下(上辺31と下辺32)および左右(左辺33と右辺34)の区別が付く形状となっている。ペリクル枠10の幅が2.0mmであるのに対して、突出部35の突出量は約0.5mmである。また、突出部35の下辺32の長手方向に沿った長さは、30mmである。
こうしたペリクル枠10は、後述する製造方法により製造されるが、焼結体により形成されたペリクル枠の共通する構造について、まず説明し、その後、製造方法の実施形態、種々の製造方法により製造されたペリクル枠の実施形態の順に説明する。
このペリクル枠10には、枠体の左辺33と右辺34とに、それぞれ2箇所、合計4箇所、Φ1.6mmの有底孔12,14が設けられている。有底孔12.14は、図2に示したように、有底の丸孔であり、底部は円錐形状に近似の形状に整えられている。この有底孔12,14は、ペリクルの製造およびその後のフォトマスクに取り付ける際の位置決めに用いられる。位置決めに際しては、図示しないペリクル製造装置あるいはペリクル取り付け装置に設けられた位置決めピンが、4箇所の有底孔12,14に嵌合する。
ペリクル枠10の枠体の上辺31および下辺32には、Φ0.5mmの貫通孔20がそれぞれ設けられている。下辺31の貫通孔20は、突出部35を避けて設けられている。この貫通孔20は、フォトマスクにペリクル40が取り付けられた後、ペリクルとフォトマスクに囲まれた空間と外部環境との気圧調整に用いられる。外部環境から粉塵が侵入しないよう、貫通孔20には、図示しないフィルタが設けられる。
[ペリクル枠の製造方法]
図1、図2に示したペリクル枠10は、以下の製造工程を経て製造される。この製造工程を図3に示した。以下に説明する製造に用いた材料や、製造工程、形状などは、いずれも例示である。原材料の主成分としてアルミナ、炭化チタンおよび窒化チタンの複合セラミックからなるペリクル枠10を、以下の工程により製造した。ペリクル枠10を製造する場合には、まず粉体を製作する(工程P10)。ここで粉体とは、焼結体の元になる物質であり、例えば窒化ケイ素やジルコニア、あるいはアルミナなどの原料粉末に焼結助剤などを適宜加え湿式混合した後、噴霧乾燥法によって50ないし100μmの顆粒に作製したものである。一例として、平均粒径0.5μmのαーアルミナ粉末63%、平均粒径1.0μmの炭化チタン10%、平均粒径1.0μmの窒化チタン25%、残部をMgO:Y=1:1の焼結助剤からなる複合材料を湿式混合し、成型用有機バインダを加えたのち通常の噴霧乾燥法によりアルミナ・炭化チタン・窒化チタン複合セラミック素地粉末を作製した。なお、原料粉末の粒径の測定は、レーザー回折・散乱法により行なったが、動的光散乱法や沈降法により行なってもよい。
次に、この粉体を、例えば金型プレス法により成型し、ペリクル枠の原形を形成する(工程P20)。本実施形態では、外形寸法を、縦(図1上下(長手)方向)182mm×横(同図、左右方向)146mm×枠体(断面縦横)7mm程度に成型した。後述する焼成工程により、ペリクル枠の外形は、20ないし30%程度縮むため、予め、焼成後のペリクル枠より大きく成型している。なお、ペリクル枠は、半導体露光装置における露光用マスクの大きさに合わせて種々の大きさとすることができる。
粉体を成型した後、これを脱バインダーし、不活性ガス中で、所定温度(例えば1700℃)で所定時間(例えば3時間)保持して焼成する(工程P30)。焼成温度は、粉体の組成による。焼成することにより、導電性を有する緻密な、即ち高いヤング率と硬度とを持つ黒色複合セラミック焼結体が得られた。また、得られた焼結体の20℃における体積抵抗率が、1.0×10−3Ω・cm以下であった。上記に例示したアルミナ−炭化チタン−窒化チタンの複合セラミックを含めて、サンプルのヤング率、硬度、体積抵抗率については、後述する。
焼成により得られたセラミック焼結体は、以下に説明するように、放電加工される。放電加工前には、まだペリクル枠としての形状を備えていないので、以下の説明では、これを単に「ワーク」と呼ぶ。図6に示すように、ワーク70は、内側に開口部15を備えた枠体形状をしている。このワーク70は、被加工材に相当する。このワーク70に対して、放電加工に備えて、付加部材に相当する捨て板80を接着する処理を行なう(工程P32)。接着は、導電性接着を用いて行なわれる。続いて、ワーク70を保持する作業を行なう(工程P34)。この作業は、放電加工機による加工が行なわれるように、保持用治具を用いて、捨て板80が接着された部位において、ワーク保持する作業である。これらの工程P32,P34については、後で図面を用いて詳しく説明する。
こうしてワーク70を保持した後、外形を、放電加工により所定寸法に加工する処理を行なう(工程P40)。ペリクル枠となるセラミック焼結体の外形は、焼成により20ないし30%程度縮むため、0.5ないし1.0パーセントの寸法バラツキが不可避であり、寸法精度を出すために、焼成後に外形を加工する処理を行なって、所望の大きさとする。本実施形態の外形の加工は、放電加工により行なった。放電加工により、ペリクル枠として用いる際の寸法として、縦149mm×横120mm×枠体3mmに加工した。放電加工は、ワイヤー放電加工であり、加工面の平滑度を十分なものとするため、少なくとも2回に分けて、放電加工を行なう。2回以上行なうことで、20μm程度の寸法精度および平坦度が得られる。放電加工は、ペリクル枠10のコーナー部51〜54の外側面取りを含む外周、コーナー部51〜54の内側Rを含む内周について行なった。なお、放電加工は、1回としても良いし、3回以上行なうものとしても良い。
続いて、孔加工を行なう(工程P50)。孔加工は、有底孔12,14および貫通孔20とである。これらの孔加工も、放電加工により行なう。孔の直径はいずれも2mm以下なので、細い電極棒(場合によってはパイプ形状)を用いた細孔放電加工により行なう。
孔加工の後、仕上げ加工を行なう(工程P60)。仕上げ加工とは、放電加工により加工面に生じた変質層を除去する処理である。本実施形態では、変質層の厚みは、4ないし6μm程度であった。これをブラスト処理により除去した。ブラストは種々の手法が知られているが、本実施形態では、粒度♯600(平均粒径約30ミクロン)の炭化ケイ素砥粒によるサンドブラストを2分ほど施して、ペリクル枠10の表面の変質層を除去した。もとより、化学的手法や機械的な研磨などによっても差し支えない。化学的手法としては、例えば濃硫酸による除去などの湿式法を採用することができる。また、他の化学処理によっても良い。あるいはバブ研磨などの機械的な研磨を用いても良い。
以上の工程により、実施形態のペリクル枠10のサンプルを製造した。ペリクル枠10のサンプルの製造時には、併せてテストピースを製造した。テストピースは、上述したペリクル枠10の製造工程と同じ工程により、外形寸法40mm×30mm、厚さ4mmに仕上げた。表面の変質層の除去も、炭化ケイ素砥粒によるサンドブラストにより、同様に行なった。後述するヤング率、ビッカース硬度、体積抵抗率などは、全てこのテストピースにより計測したが、同じ物性と考えられるので、以下の説明では、全てペリクル枠のヤング率等であるとして説明する。
[ペリクル枠のサンプル]
以上説明した実施形態では、アルミナ−炭化チタン−窒化チタンの複合セラミックのサンプル(サンプル番号1)の他、ジルコニア−窒化チタンのサンプル(サンプル番号2)、超硬によるサンプル(サンプル番号3)、比較例としてのアルミナ−炭化チタンのサンプル(サンプル番号4)を作製した。いずれのサンプルも、その製造工程は、図3に示した製造工程と基本的に同一であるが、素材の性質により、適切な焼成温度、焼成時間、ブラスト処理などを選択している。
図4は、これらのサンプルのヤング率、ビッカース硬度、体積抵抗率を示す。また図5は、これらのサンプルの組成を示す。
図4に示したように、サンプル1、2、3、4はいずれもヤング率250GPa以上、ビッカース硬度1000以上である。またサンプル1、2、3は、体積抵抗率が1.0×10−3Ω・cm以下であり、アルミナ−炭化チタンのサンプル4の体積抵抗率は2.1×10−3Ω・cmであった。図4に示したように、放電加工による加工性は、サンプル1〜3が「良好」であり、サンプル4が「普通」であった。「普通」とは、加工速度を低速にすれば放電加工によっても加工できないわけではないが、変質層が厚くなり、また加工速度の点からも放電加工では実用に供し得ず、通常の切削加工を行なったことを示す。放電加工の特性上、体積抵抗率が高い絶縁体では、そもそも加工は行なえない。体積抵抗率1.0×10−3Ω・cm以下であれば、外形の放電加工(工程P40)や細孔放電加工(P50)において、良好な加工性が得られた。サンプル4は、ダイヤモンドビットを用いて切削した。また、サンプル4の場合、有底孔12,14や貫通孔20は、ダイヤモンドコートドリルにより孔加工した。
放電加工による加工性が良好であるとは次の要件を満たしていることを言う。
(1)加工速度が速い。実施例では、放電加工(くりぬき)の1回目(粗加工)で4mm/分、2回目(仕上げ加工)で6mm/分であった。
(2)加工工具の消耗が少なく、コストが低い。放電加工は、対象の硬度が高くても放電による溶融と飛散により加工がなされるため、加工用チップなどが摩耗や損傷することがない。また放電ワイヤーは真鍮線を連続供給して使用するが、消耗しても切削チップなどと比べて安価である。
(3)加工面の加工精度が十分に高い。サンドブラストを行なわなくても、表面の算術平均粗さRaは1μm以下、最大高さ粗さは10μm以下であった。
(4)細孔の孔開けや有底の孔加工において、残留応力による歪みや貫通孔における出口側カケ不良などが生じない。
上記(2)については、本実施形態では、放電加工にΦ0.2mmの真鍮線を用いたため、消耗品のコストを極めて低くすることができる。他方、対比用にダイヤモンドビットを取り付けたマシンニングセンタで、外周や内周を加工した場合、高価なダイヤモンドビットの頻繁な交換が必要になり、工程負荷が大きい。
また、図示していないが、貫通孔20および有底孔12,14の内壁および底部の変質層も、サンドブラストにより除去されていることを、貫通孔20および有底孔12,14の断面を顕微鏡により観察することで確認した。従って、使用時に貫通孔20内部から変質層の一部が剥離して、ペリクル枠10の内側に入るといった不具合の発生を抑制できる。また、有底孔12,14を用いてペリクル枠10の位置決めを行なったときに、位置決めピンと接触して、有底孔12,14内部の変質層の一部が剥離して、ペリクル枠10に貼られたペリクル膜30に付着するといった不具合の発生を抑制できる。
上記(4)については、放電加工では、高い孔開け精度が得られた。貫通孔20について説明すると、貫通孔20の直径は0.5mmである。このため、電極として、Φ0.4mmの銅線を用いて、貫通孔20を加工した。複数個の貫通孔を加工したが、電極の入口側でも出口側でも、カケなどは発生せず、電極の直径より放電距離(100μm)だけ外側に大きな貫通孔が形成された。
貫通孔20は、Φ0.5mmのダイヤモンドコートドリルにより作製することも可能である。但し、焼結体のように固い材料で製作されたペリクル枠の場合には、加工ドリル出口側にカケ(非所望の破砕)の発生が見られた。カケなどを発生させないためには、低速度で孔加工を行なうことが必要であった。
[第1実施形態]
第1実施形態として、サンプル1(アルミナ−炭化チタン−窒化チタン)のワークからペリクル枠10を外形加工して製作した。製作されたペリクル枠10の外形は図1に示したものである。放電加工に先立って、図6に示した様に、ワーク70の下端に捨て板80を導電性接着剤を用いて接合した。その上で、この捨て板80の部分を保持用治具であるチャックを用いて固定し、放電加工を行なった。放電加工は、ワーク70の外周と、内周に関して行なった。外周については、放電加工用の電極85を、捨て板80の側方から入れ、捨て板80から、接合面を介してワーク70内に進入させた。その後、図6に破線で示す経路を通って、ワーク70の外周側をほぼ一周し、捨て板80に戻した。更に、ここで折り返し、同じ経路を逆に辿って仕上げ加工を行ない、電極85を、加工開始点戻した。この状態では、ワーク70の外周部分は、まだワーク70に対して、捨て板80の部分で結合されており、切り離されていない。従って、ワーク70の外周側の切り離し部分が落下するといったこともない。
他方、内周の加工は、内周加工用のワイヤである電極86が、ワーク7内側の開口部15に通されて開始される。内周加工用の電極86をワーク70の右辺33に内側から接近させ、図6に破線で示したように、内周に沿ってワーク70の内周側を一周させた。これにより、切断されたワーク70の材料は、切り離される。
この状態で、ワーク70を保持用治具から取り外し、捨て板80とワーク70とを接着している導電性の接着剤82を剥離液で除去すると、捨て板80がワーク70から除かれると同時に、放電加工により切断された外周の部位もワーク70から切り離される。この結果、図1に示した形状のペリクル枠10が得られる。放電加工用の電極85は、捨て板85からワーク70に進入し、ワーク70を完全には一周しないで、捨て板80側に抜けている。このため、ペリクル枠10の下辺32には突出部35が形成される。捨て板80が接着されていた面は、焼結したままなので、必要があれば、研磨などを行なって、所望の平坦度とすれば良い。
次に、ワーク70の保持について説明する。図7は、ワーク70を保持用治具90により、捨て板80を保持した様子を示す説明図である。図8は、保持用治具90によりワーク70を保持した状態を側面から示す。図示するように、この実施形態では、ワーク70と捨て板80との厚みは大きくは異ならないが、捨て板80の方が若干厚くしてある。両者は、ワイヤー放電加工の際には、接着剤82により接着されている。ワーク70は、捨て板80と保持用治具90により、図8に例示したように、保持される。図8に示した例では、捨て板は80は、ボルト93及びナット94を用いて、上下2枚のチャック91,92によりしっかりと保持され、ワイヤー放電加工機の定盤(図示省略)に固定される。なお、捨て板80は、バイスやクランプ治具などでワイヤー放電加工機の定盤に保持するなど、その固定方法は種々の態様が可能である。また、保持用治具90において、一方のチャックは、予め定盤に固定しておいても差し支えない。
こうして保持用治具90によりワーク70と捨て板80とを保持した状態で、外周については放電加工用の電極85を、内周については放電加工用の電極86を、それぞれ経路OT、経路INに沿って移動し、上述したように、ワーク70の外形加工を行なうのである。なお、図7以降においては、加工されるペリクル枠10の外形を簡略し、略長方形として示しているが、図1,図6に示したように、コーナー部51〜54を設けても良い。またコーナー部51〜54の形状も任意に設定可能である。もとより、内周の形状もR形状に限らず、種々の形状をとり得ることは勿論である。
以上の方法で外形加工されたワーク70は、その後、既に説明したように、孔加工(工程P50)や、表面仕上げ加工(工程P60)がなされ、ペリクル枠10として完成される。完成されたペリクル枠10は、下辺32に突出部35が形成された形状となる。この突出部35は、直線部32の中心からやや左より(左辺33寄り)に形成される。従って、この実施形態のペリクル枠10は、突出部35があることにより、その上下(上辺31と下辺32)および左右(左辺33と右辺34)の区別が付く形状となっている。また、突出部35があることにより、下辺32の枠体の幅が他の部分より幅広となっており、ハンドリングが容易となっている。更に、ペリクル枠10にペリクル膜30を張設したペリクル40をフォトマスクに貼り付けて使用した後で、ペリクル40を剥がす際、この突出部35があることで、ペリクル40を剥がしやすいという効果も得られる。
こうした突出部35を形成するには、放電加工の加工軌跡を設定するだけですみ、外形加工(工程P40)に、特別な工程を要しないため、製造コストが上昇することもない。本実施形態によれば、図7に示したように、ワイヤー放電加工の軌跡終端を捨て板80内におき、電極85をここで折り返して、加工開始点まで戻している。従って、外周の加工を行なっても、ワーク70から最終的に切り離される外周部分は脱落しない。加工された外周部分は、接着剤82を除去して捨て板80をワーク70から取り外すことにより、ペリクル枠から分離される。従って、この実施形態では、ペリクル枠の外周は1パスで、全周に亘って平滑な加工面が得られる。他方、外周の放電加工の終端を捨て板80の外にすれば、1回目の加工により、加工された外周部は、ペリクル枠から脱落する。また、ワーク70の内周部分は、設定した加工軌跡により加工を完了すれば、切り離されて脱落する。こうした放電加工に伴うワークの一部の脱落が生じる場合には、2パス加工することで、外周であれ内周であれ、平滑な加工面が得られる。これらの場合でも、ペリクル枠自体は、捨て板80を介して保持されたまま維持され、放電加工により脱落することはなく、放電加工の途中でワーク70を持替えて保持するといった必要は生じない。
第1実施形態では、ペリクル枠10の幅が2.0mmであるのに対して、突出部35の突出量は約0.5mmとしたが、この突出量は、1.0mm未満でもよいし、これより大きくても良い。例えば0.1mm〜2.0mm程度であれば、任意に、あるいはペリクルとして要請される機能の範囲で設定すれば良い。また、突出部35の下辺32の長手方向に沿った長さは、上記実施形態では30mmとしたが、10mm以上50mm程度とすることが望ましい。もとより、この長さは、ペリクル枠の全体形状との関係で決定すれば良い。あるいは、導電性の接着剤82を用いた接着により、放電加工に必要な電流が確保できる面積から、この幅を決定しても良い。ワーク70の外形加工を行なった後で、捨て板80を取り除き、接着面を研磨する場合には、この接着面の面積、ひいては長手方向長さは小さい方が、研磨にようする時間やコストを低減でき、好適である。突出部35の形状は、図に示した略長方形状に限らず、台形形状など、突出方向の辺にテーパを設けた形状としても良い。もとより、面取りやR形状を付与した形状としても良い。突出部35の外側は開放端であり、どのように形状であっても差し支えない。
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態における外形加工(工程P40)の概要を示す説明図である。第2実施形態でも、ワーク70の素材や外形加工工程までの工程は第1実施形態と同様である。図示するように、第2実施形態では、ペリクル枠10の長辺、この例では右辺34の略中央に、捨て板81を接着剤で接着して、放電加工を行なう。この結果、突出部36も、長辺である右辺34の略中央に形成される。もとより、突出部36は、中心部から上下方向(上辺31側または下辺32側)のいずれかにずらして配置しても良い。この場合でも、第1実施形態と同様に、保持用治具90を用いて、捨て板81を保持した上で、放電加工用の電極85,86を用いて、ワーク70の外周と内周をそれぞれ加工する。捨て板81の除去など、外形加工後の工程は、第1実施形態と同様である。
こうして得られたペリクル枠10は、第1実施形態とは異なり、長辺である右辺34の略中央に突出部36を有する。この突出部36があることにより、第2実施形態のペリクル枠10は、その左右(左辺33と右辺34)の区別が付く形状となっている。また、右辺34は、上辺31や下辺32より長く、同幅であれば強度が低下する右辺34に突出部36が設けられていることから、ペリクル枠10としての強度の向上に資することができる。
本実施形態では、放電加工時に、ワーク70を、その長手の辺(右辺34となる辺)において保持用治具90で保持する。これはいわゆる片持ちの保持であり、保持されていない側は、その強度に応じて僅かに撓む。本実施形態では、長辺側を保持することにより、ワーク70全体の片持ちによる撓みを小さくすることができ、加工時の精度を高めることができる。
[変形例]
以上説明したいくつかの実施形態の変形例について説明する。
〈変形例1〉
図10は、保持用治具90によるワーク70の保持に捨て板を用いない例を示す。ワーク70の枠形状の部分の幅に対して、保持用治具90のチャック91,92が十分に小さければ、捨て板を用いることなくワーク70を保持するようにしても良い。この場合、捨て板の接着処理(図3、工程P32)が不要となる。この場合、外周加工において、切断完了後に、ワーク70の外周部分が切り離されるが、それ以外は、第1,第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
〈変形例2〉
図11は、保持用治具90を二つ設けた場合の加工例を示す説明図である。この例では、ワーク70をその上辺と下辺の2箇所で保持し、放電加工を行なう。この場合は、内周の加工は、放電加工用の電極86を用いて、第1,第2実施形態と同様に行なうことができるが、外周については、電極85と電極87とを用いて、二度分けて放電加工を行なう。図11で示した例では、こうした加工により、図10の上辺31に突出部38が、下辺32に突出部39が、それぞれ形成される。この例では、これらの突出部38,39は、上下辺31,32の略中央に設けられているので、上下左右の区別は存在しない。このため、位置決め用の有底孔12,14なども左右上下対称の位置に設けておけば、上下および裏表の別なくペリクル10を用いることができる。もとより、二つの突出部38,39の位置を、左右いずれかに偏らせれば、左右や上下、従って裏表の別などをつけることも容易である。上辺31および下辺32において左右の偏った位置としては同じ位置に設けたとしても、突出部38,39の幅や突出量を変えておけば、こうした区別を付けることは容易である。
また、図11に示した例では、放電加工の際に、ワーク70を両持ちの形態で保持するので、ワーク70が片持ちの場合の撓みを生じことがない。このため、加工精度を更に高めることができる。なお、図11においては、下辺側の保持用治具90のチャック91を幅広にして、ワーク70の保持を一層高めているが、二つの保持用治具90のチャック91の幅を同じにしても差し支えない。また、二つの保持用治具90を用いる場合、二つの長辺側(左辺33と右辺34側)に設けても良い。なお、隣り合った二つの辺に設けても良い。この場合、離れた場所に設ければ、ほぼ両持ちの構成となる。
〈その他の変形例〉
図12は、加工開始端および終端を捨て板80の外側に設定した例を示す。この場合、加工軌跡となる電極85の経路OTは、捨て板80を通らない。図12に示したように、加工開始端および終端を捨て板80の外側に設定する途、外周加工が終了した時点で外周部分は切り離され落下するが、ペリクル枠は捨て板80に保持されており落下することはない。開始端や終端に生じる非所望の破断のよるカケやバリなどは、外周部を切り離した後の2パス加工で除去できる。勿論、放電加工終了後に平研などの機械加工で除去しても良い。このように、電極85の経路が捨て板80内を通らないようにすれば、捨て板80は放電加工されないため再利用が可能となり、省資源に資する上、コストの低減を図ることができる。
図10、図11に示した変形例では、捨て板を用いていないが、第1,第2実施形態と同様に捨て板を用いることも有用である。捨て板を用いれば、外周加工における加工の開始端、終端の少なくとも一方を捨て板の部分にすることができるからである。一般、放電加工においても、加工の開始端、終端は、カケなどの非所望の破断が生じやすいため、捨て板を、加工の開始端、終端とすることは、加工形状の精度を高める上で有効である。図12に示した例では、捨て板80の外側に加工開始端および終端を設定しているため、こうした非所望の破断が発生する場合がある。その大きさは、数μmから数十μmの大きさに留まることが多く、ペリクル枠は捨て板に保持されているので、2パス目の放電加工で除去することが可能である。捨て板80を用いない場合、あるいは捨て板80を用いた上で捨て板80以外の部分から加工を開始または終了する場合、加工開始端や終端を平研などで機械加工すれば、十分な精度を得ることは容易である。
上記第1,第2実施形態等では、保持用治具90は、捨て板80,81を用いてワーク70を保持した。放電加工に必要な電気的な接続は、捨て板80等を導電性の接着剤82により接着することで確保できるからである。保持用治具90のチャック91,92は金属などの導電性の部材により形成されているので、保持用治具90により捨て板80等を保持することにより、同時に電気的な接続を完了することができる。もとより、電気的な接続を保持用治具90以外により行なうものとしても良い。また、保持用治具90により捨て板80等を保持する構成では、ワーク70の厚みが相違しても、同じ捨て板80等によりワーク70の保持を行なうことができ、好適である。捨て板80等を用いる場合、捨て板80等は、必ずも厚み方向に保持する必要ない。放電加工の電極85の加工軌跡か捨て板80等の内側を通る場合であっても、通らない場合であっても、捨て板80等は、厚み方向から保持することも、幅方向から保持することも、いずれも可能である。
第1,第2実施形態では、捨て板80は、導電性の接着剤82を用いてワーク70に接着したが、保持用治具90のチャック91,92が導電性であり、直接ワーク70を保持する部分が存在すれば、捨て板80とワーク70とは導電性でない接着剤で接着しても差し支えない。この場合でも、捨て板80があることにより、ワーク70の保持をよりしっかりと行なうことができる。また、捨て板80に対する放電加工上の電気的な接続は、チャック91が捨て板80に接していれば、ワーク70同様に確保することができる。
上記実施形態および変形例では、ワーク70の形状として枠形状の部分の焼成後の幅を一律に6mmとしたが、突出部35等を設けた辺については、ワーク70の状態でその幅を広くしておき、突出部35の突出量を大きくすることも差し支えない。
上記実施形態や変形例では、ペリクル枠10に導電性の材料を用いて、放電加工により加工したが、加工の一部であれば、ダイヤモンドビットによる切削などの機械的加工や、レーザー加工あるいは化学的研磨などを用いても差し支えない。
以上説明した各実施形態および変形例において、ペリクル枠10を、ヤング率が150GPa以上、ビッカース硬度が800以上、更に体積抵抗率が1.0×10−3Ω・cm以下の焼結体により形成すれば、その体積抵抗率の低さから、放電加工が可能となり、ペリクル枠10の外形加工も、容易に行なうことができる。しかもヤング率やビッカース硬度が高いため、ペリクル枠として必要な剛性や耐久性を、高い加工性、加工コストの低減と共に、実現することができる。
上記実施形態では、導電性の焼結体の例として、アルミナ−炭化チタン−窒化チタンの複合セラミックを用いたが、体積抵抗率が1.0×10−3Ω・cm以下の焼結体または高融点金属を含む焼結体であって、ヤング率が150GPa、ビッカース硬度が800以上であれば、他の材料を用いても放電加工可能である。図4にサンプルを示したジルコニア窒化チタンや超硬以外でも、耐熱温度1500℃以上の導電性の無機化合物である窒化物、炭化物、珪化物、硼化物の成分を少なくとも一種含む材料で、上記物性を満たせば、放電可能することができる。また、高融点金属材料、例えばタングステン(3387℃),レニウム(3180℃),タンタル(2996℃),オスミウム(2700℃),モリブデン(2610℃),ニオブ(2468℃),イリジウム(2447℃),ルテニウム(2250℃),ハフニウム(2150℃)やその合金を含み、上記物性を満たす焼結体を用いることもできる。
更に、こうした焼結体が、ヤング率が250GPa以上あるいはビッカース硬度が1000以上の条件を満たせば、ペリクル枠10として、反り変形を低減でき、耐摩耗性が高まり、更に好ましい。
以上、本発明の実施形態や変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態および変形例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において種々の態様で実施できることは勿論である。例えばペリクル枠の形状や大きさ、厚みなどは、ペリクル枠として必要な形状、大きさ、厚みとすれば良い。ペリクル枠は、矩形である必要はなく、例えば円形、多角形などの形状であっても差し支えない。またペリクル枠の全ての面を、放電加工する必要はなく、特定の面は他の加工方法、例えばマシンニングセンターによる切削加工を用いても良い。突出部を複数設ける場合、同じ形状にする必要はなく、異なる幅および突出量としても良いことはもちろんである。
10…ペリクル枠
12,14…有底孔
15…開口部
20…貫通孔
30…ペリクル膜
31…上辺
32…下辺
33…左辺
34…右辺
35,36,38,39,41,42…突出部
40…ペリクル
70…ワーク
80,81…捨て板
82…接着剤
85〜87…電極
90…保持用治具
91,92…チャック
93…ボルト
94…ナット

Claims (13)

  1. 枠形状に形成されたペリクル枠であって、
    ヤング率が150GPa以上で、かつビッカース硬度が800以上の焼結体からなり、
    前記焼結体の20℃における体積抵抗率が、1.0×10−3Ω・cm以下であり、
    前記枠形状の一部に、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広の突出部を、所定の長さに亘って設け、
    前記突出部は、当該ペリクル枠に設けられた貫通孔または有底孔の形成箇所を避けて設けられている
    ペリクル枠。
  2. 前記突出部は、前記枠形状の長手方向または短手方向のいずれかの中心軸から見て非対称の形状となるように設けられた請求項1に記載のペリクル枠。
  3. 枠形状に形成されたペリクル枠であって、
    ヤング率が150GPa以上で、かつビッカース硬度が800以上の焼結体からなり、
    前記焼結体の20℃における体積抵抗率が、1.0×10 −3 Ω・cm以下であり、
    前記枠形状の一部に、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広の突出部を、所定の長さに亘って設け、
    前記突出部は、前記枠形状の長手方向または短手方向のいずれかの中心軸から見て非対称の形状となるように設けられ
    ペリクル枠。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のペリクル枠であって、
    当該ペリクル枠の外形は矩形形状であり、
    前記突出部は、前記矩形形状をなす4つの辺のうち、少なくとも短辺または長辺の一つに設けられた
    ペリクル枠。
  5. 前記突出部は、複数箇所設けられている請求項1から請求項4のいずれか一項記載のペリクル枠。
  6. 所定の寸法の枠形状のペリクル枠を製造する方法であって、
    焼結体材料を前記枠形状より大きな幅を備えた枠形状の被加工材として用意する第1工程と、
    前記被加工材の前記枠形状の内周面及び外周面をワイヤー放電加工により、所定の形状に加工する第2工程と、
    を備え、
    前記第2工程では、前記ワイヤー放電加工による加工軌跡の内側で前記被加工材を保持し、前記ワイヤー放電加工により、前記保持した部位の少なくとも一部を、当該枠形状の厚みはそのままに、少なくとも外周方向に突出することで枠形状の他の箇所より幅広となる突出部を所定の長さに亘って形成する
    ペリクル枠の製造方法。
  7. 前記被加工材を厚み方向から保持する箇所の外周に、前記保持に先立って、前記突出部が形成される位置に対応する前記被加工の外周に付加部材を結合する準備工程を備え、
    前記第2工程では、前記付加部材と共に、前記保持した状態で前記加工を行なう
    請求項6記載のペリクル枠の製造方法。
  8. 前記第2工程における前記付加部材は導電性であり、前記被加工材とは導電状態となるように結合される請求項7記載のペリクル枠の製造方法。
  9. 前記準備工程では、前記導電性の付加部材を、前記被加工材の外周に導電性の接着剤により接着し、
    更に、前記ワイヤー放電加工の後で、前記導電性の部材を取り去り、前記導電性の付加部材が接着されていた前記外周面を、機械加工により平坦に加工する第3工程を備える
    請求項8記載のペリクル枠の製造方法。
  10. 前記第2工程は、前記ワイヤー放電加工を、前記付加部材を通らない加工軌跡により行なう請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のペリクル枠の製造方法。
  11. 更に、前記ワイヤー放電加工により形成された変質層を除去する第4工程を備えた
    請求項6から請求項10のいずれか一項に記載のペリクル枠の製造方法。
  12. 前記第2工程において、前記被加工材の前記突出部となる部位の外周は、前記ワイヤー放電加工による加工を行なわない請求項6から請求項11のいずれか一項に記載のペリクル枠の製造方法。
  13. 前記第2工程における前記被加工材の保持は、前記被加工材の内周の放電加工経路を妨げない請求項6から請求項12のいずれか一項に記載のペリクル枠の製造方法。
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