以下、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータの双方から車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。さらに、本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(例えば、商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
プラグインハイブリッド車両では、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことができる。そのため、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行するEV走行モードとなる。一方、ある程度の距離を走行した後のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行するHV走行モードとなる。
プラグインハイブリッド車両では、このようにEV走行モードとHV走行モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両よりも燃料消費量を低減させて、車両燃費を向上させることができる。また、このようなEV走行モードとHV走行モードとの切り替えは、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができる。バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式機器等をはじめとする各種車載機器に供給することができる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、図1に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、空調制御装置50等を備えている。室内空調ユニット30は、空調風を車室内へ吹き出すための各種構成機器を一体化(すなわち、ユニット化)したものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット30は、その外殻を形成するとともに、内部に車室内に送風される送風空気が流通する空気通路を形成するケーシング31を有している。ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
ケーシング31内に形成された空気通路には、送風機32、蒸発器15、エアミックスドア39、ヒータコア36、PTCヒータ37等が配置されている。ケーシング31の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置20が配置されている。内外気切替装置20は、送風空気における車室内空気(すなわち、内気)の導入量と車室外空気(すなわち、外気)の導入量との導入割合を調整するものである。
内外気切替装置20には、内気導入口21および外気導入口22が形成されている。内気導入口21は、ケーシング31内に内気を導入させるための開口穴である。外気導入口22は、ケーシング31内に外気を導入させるための開口穴である。さらに、内外気切替装置20の内部には、内外気切替ドア23が配置されている。
内外気切替ドア23は、内気導入口21の開口面積および外気導入口22の開口面積を連続的に変化させて、吸込口モードを切り替えるドアである。この内外気切替ドア23によって切り替えられる吸込口モードとしては、全内気モード、全外気モード、および内外気混入モードがある。
全内気モードでは、内気導入口21を全開とするとともに、外気導入口22を全閉としてケーシング31内の空気通路へ内気を導入する。全外気モードでは、内気導入口21を全閉とするとともに、外気導入口22を全開としてケーシング31内の空気通路へ外気を導入する。
さらに、内外気混入モードでは、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、ケーシング31内の空気通路へ導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させる。内外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動される。この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ケーシング31内の内外気切替装置20の空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替装置20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風装置である。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、冷凍サイクル装置10を構成するものである。蒸発器15は、冷凍サイクル装置10において、低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
ここで、冷凍サイクル装置10について説明する。冷凍サイクル装置10は、図1に示すように、圧縮機11、凝縮器12、レシーバ13、膨張弁14、蒸発器15を、冷媒配管を介して環状に接続することによって構成されたものである。
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その回転数が制御される交流モータである。
インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力するものである。これにより、電動モータ11bの回転数が制御されて、圧縮機11の冷媒吐出能力が調整される。
圧縮機11の吐出口には、凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。凝縮器12は、エンジンルーム内の車両前方側に配置されている。凝縮器12は、高圧冷媒と送風ファン12aから送風された外気とを熱交換させ、高圧冷媒を放熱させて凝縮させる放熱用熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動式送風機である。
凝縮器12の冷媒出口には、レシーバ13の入口側が接続されている。レシーバ13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒の気液を分離して、サイクルの余剰冷媒を蓄えるとともに、分離された液相冷媒を下流側に流出させる気液分離器である。
レシーバ13の液相冷媒出口には、膨張弁14の入口側が接続されている。膨張弁14は、エンジンルーム内に配置されている。膨張弁14は、レシーバ13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧装置である。本実施形態では、膨張弁14として、蒸発器15出口側冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度に近づくように冷媒流量を調整する温度式膨張弁を採用している。
膨張弁14の出口には、蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。蒸発器15の冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口側が接続されている。これにより、圧縮機11の吐出口→凝縮器12→レシーバ13→膨張弁14→蒸発器15→圧縮機11の吸入口の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成されている。
次に、ケーシング31の蒸発器15の空気流れ下流側には、冷風加熱用通路33および冷風バイパス通路34が、送風空気流れに対して、互いに並列的に形成されている。さらに、冷風加熱用通路33および冷風バイパス通路34の空気流れ下流側には、混合空間35が形成されている。混合空間35は、冷風加熱用通路33から流出した送風空気と、冷風バイパス通路34から流出した送風空気とを混合させる空間である。
冷風加熱用通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気の流れ方向に向かって、この順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と冷風加熱用通路33に流入した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管41によって接続されている。このため、ヒータコア36とエンジンEGとの間には、冷却水を循環させる冷却水回路40が構成されている。さらに、冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、水圧送能力)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有する電気ヒータである。PTCヒータ37は、空調制御装置50からPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱装置である。PTCヒータ37は、複数(本実施形態では、3つ)のPTC素子を有している。このため、空調制御装置50が、電力を供給するPTC素子の本数を変更することによって、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、冷風加熱用通路33を流通する送風空気の風量と冷風バイパス通路34を流通する送風空気の風量との風量割合によって変化させることができる。
そこで、本実施形態では、この風量割合を変化させて混合空間35にて混合された送風空気の温度を調整する送風空気温度調整部として、空気通路内にエアミックスドア39を配置している。
エアミックスドア39は、蒸発器15の空気流れ下流側であって、冷風加熱用通路33、および冷風バイパス通路34の入口側に配置されている。エアミックスドア39は、冷風加熱用通路33の入口の開口面積および冷風バイパス通路34の入口の開口面積を連続的に変化させるものである。
従って、エアミックスドア39の開度を変化させることによって、混合空間35にて混合される送風空気の温度を調整することができる。エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される。この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には複数の開口穴が形成されている。これらの開口穴は、温度調整された送風空気を混合空間35から車室内側へ流出させるための開口穴である。本実施形態では、開口穴として、フェイス開口穴24、フット開口穴25、デフロスタ開口穴26が設けられている。
フェイス開口穴24は、前席側に着座した乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴25は、前席側に着座した乗員の足下に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴26は、車両前面窓ガラスWの内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。これらの開口穴24〜26は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられた専用の吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
また、フェイス開口穴24、フット開口穴25、デフロスタ開口穴26の空気流れ上流側には、それぞれの開口穴の開口面積を調整する吹出口モードドア24a〜26aが配置されている。これらの吹出口モードドア24a〜26aは、それぞれの開口穴の開口面積を調整することによって吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置である。
より具体的には、吹出口モードドア24a〜26aのうち、フェイスドア24aは、フェイス開口穴24の開口面積を調整するドアである。フットドア25aは、フット開口穴25の開口面積を調整するドアである。デフロスタドア26aは、デフロスタ開口穴26の開口面積を調整するドアである。
これらの吹出口モードドア24a〜26aは、図示しないリンク機構に連結されて、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ64によって連動駆動される。この電動アクチュエータ64は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吹出口モードドア24a〜26aによって切り替えられる吹出口モードとしては、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモードがある。
フェイスモードは、フェイス開口穴24を全開してフェイス開口穴24から乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すモードである。バイレベルモードは、フェイス開口穴24およびフット開口穴25の双方を開口して乗員の上半身および足下の双方へ向けて空調風を吹き出すモードである。フットモードは、フット開口穴25を全開するとともにデフロスタ開口穴26を小開度だけ開口して、フット開口穴25から主に空調風を吹き出すモードである。フットデフロスタモードは、フット開口穴25およびデフロスタ開口穴26を同程度開口して、フット開口穴25およびデフロスタ開口穴26の双方から空調風を吹き出すモードである。デフロスタモードは、デフロスタ開口穴26を全開してデフロスタ開口穴26から車両前面窓ガラスWの内面に向けて空気を吹き出すモードである。
次に、図2を用いて、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。本実施形態の車両には、空調制御装置50、駆動力制御装置70等の複数の制御装置(制御部)が搭載されている。これらの制御装置50、70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70は、エンジンEGを構成する各種エンジン制御機器、走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等の作動を制御する駆動力制御部である。駆動力制御装置70は、乗員が車両システムの起動スイッチ(以下、IGスイッチと記載する。)を投入した際に、バッテリ81から電力が供給されて起動する。そして、入力側に接続された駆動力制御用のセンサ群の検出信号等に基づいて、各種エンジン制御機器、走行用インバータ等の作動を制御する。
ここで、本実施形態の車両システムとは、走行用の駆動力に関係するエンジンEG、走行用電動モータ、および駆動力制御装置70等に限定されるものではなく、車両用空調装置1等を含む車両に搭載された制御対象システム全体を意味している。
空調制御装置50は、車両用空調装置1を構成する各種空調制御機器の作動を制御する空調制御部である。空調制御装置50は、乗員がIGスイッチを投入(ON)した際に、バッテリ81から電力が供給されて起動する。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、内気センサ51、外気センサ52、日射センサ53、吐出温度センサ54、吐出圧力センサ55、蒸発器温度センサ56、冷却水温度センサ57、窓表面湿度センサ58、外気湿度センサ59等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
内気センサ51は、車室内温度(すなわち、内気温)Trを検出する内気温度検出部である。外気センサ52は、車室外温度(すなわち、外気温)Tamを検出する外気温度検出部である。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する日射量検出部である。吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒の温度Tdを検出する吐出温度検出部である。吐出圧力センサ55は、圧縮機11吐出冷媒の圧力Pdを検出する吐出圧力検出部である。蒸発器温度センサ56は、蒸発器15から吹き出される吹出空気温度TE(実質的には、蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。冷却水温度センサ57は、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度TWを検出する冷却水温度検出部である。窓表面湿度センサ58は、窓ガラス近傍における内気の湿度である窓近傍湿度RHWを検出する窓近傍湿度検出部である。外気湿度センサ59は、内外気切替装置20からケーシング31内へ導入される外気の湿度である外気湿度RHOを検出する外気湿度検出部である。
ここで、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的には、蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出部を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を検出する温度検出部を採用してもよい。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60が接続されている。空調制御装置50には、操作パネル60に設けられた各種スイッチの操作信号が入力される。
操作パネル60に設けられた操作スイッチとしては、具体的に、エアコンスイッチ、オートスイッチ、吸込口モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、エコノミースイッチ等がある。
エアコンスイッチは、乗員の操作によって圧縮機11の作動あるいは停止を切り替える圧縮機作動設定部である。オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動空調制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。吸込口モードの切替スイッチは、乗員の操作によって吸込口モードを切り替える吸込口モード設定部である。吹出口モードの切替スイッチは、乗員の操作によって吹出口モードを切り替える吹出口モード設定部である。風量設定スイッチは、送風機32の送風量を手動設定するための風量設定部である。温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定部である。エコノミースイッチは、乗員の操作によって車室内の空調のために消費されるエネルギの低減を要求する省エネルギ化要求設定部である。
ここで、本実施形態の空調制御装置50は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものである。さらに、空調制御装置50のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が吐出能力制御部50aを構成している。もちろん、吐出能力制御部50aを、空調制御装置50に対して別の制御装置で構成してもよい。
また、空調制御装置50、および駆動力制御装置70は、互いに電気的に通信可能に接続されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。
例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
次に、図3〜図13を用いて、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。なお、図3〜図13のフローチャートに示す各制御ステップは、各制御装置が有する各種の機能実現部である。本実施形態の空調制御装置50は、IGスイッチが投入されると、臭い判定制御を実行する。さらに、IGスイッチが投入された状態でオートスイッチが投入されると、自動空調制御を実行する。
臭い判定制御は、次回の走行時に蒸発器15に付着した水分が乾くことによって臭いが発生し得るか否かを判定する制御である。自動空調制御は、車室内に温度調整された送風空気を適切に吹き出すための制御である。臭い判定制御、および自動空調制御は、互いに別の制御処理として実行される。
まず、図3、図4のフローチャートを用いて、臭い判定制御について説明する。臭い判定制御は、IGスイッチが投入されてから、車両システムが停止するまで実行される。例えば、IGスイッチが投入されてから、IGスイッチが非投入(OFF)の状態となるまで実行される。
図3に示すように、臭い判定制御のステップS201では、エアコンスイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS201にて、エアコンスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS208へ進む。ステップS208では、臭い判定フラグStfを0とし、所定の待機時間の経過を待ってステップS201へ戻る。これにより、図3の制御処理では、約1秒毎にステップS201へ戻るようになっている。
臭い判定フラグStfは、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生し得る状態であるか否かを記憶しておくフラグである。本実施形態では、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生し得る状態である場合はStfが1(ON)となり、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生し難い状態である場合はStfが0(OFF)となる。
ステップS201にて、エアコンスイッチが投入されていないと判定された場合は、圧縮機11が作動しないので、蒸発器15にて送風空気中の水分が凝縮しない。従って、蒸発器15の表面が乾燥して臭いが発生することもない。そこで、ステップS201にて、エアコンスイッチが投入されていないと判定された場合は、不快な臭いが発生し難いものとして、ステップS208にて、臭い判定フラグStfを0に設定する。
一方、ステップS201にて、エアコンスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS202へ進む。ステップS202では、吸込口モードが全外気モードになっているか否かを判定する。
ステップS202にて、全外気モードになっていると判定された際には、ステップS203へ進む。ステップS203では、外気導入時間FTmに1カウント(具体的には、1/60分)を加算して、ステップS205へ進む。また、ステップS202にて、全外気モードになっていないと判定された際には、ステップS204へ進む。ステップS204では、外気導入時間FTmを0にリセットして、ステップS205へ進む。
つまり、外気導入時間FTmは、圧縮機11を作動させた状態で、内外気切替装置20が外気のみを連続して導入していた時間に相当するパラメータである。
ステップS205では、基準導入時間KFTmを決定するためのサブルーチンが実行される。基準導入時間KFTmは、蒸発器15にて外気を冷却することによって発生する凝縮水の量が、蒸発器15に付着して臭いを生じさせる原因物質を洗浄するために必要な量以上となるように決定される時間である。従って、本実施形態のステップS205は、基準時間決定部である。
このサブルーチンの詳細内容については、図4を用いて説明する。まず、ステップS251では、外気センサ52によって検出された外気温Tam、および外気湿度センサ59によって検出された外気湿度RHOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、仮の基準導入時間KFTmaが決定される。
この制御マップでは、図4のステップS251に記載された制御特性図に示すように、外気温Tamの低下に伴って、仮の基準導入時間KFTmaを増加させる。さらに、外気湿度RHOの低下に伴って、仮の基準導入時間KFTmaを増加させる。
より詳細には、図4のステップS251の制御特性図では、低RHOとして外気湿度RHOが70%のラインを図示し、高RHOとして外気湿度RHOが95%のラインを図示している。そして、それぞれのラインから得られた値を、実際の外気湿度RHOに応じて按分することによって、仮の基準導入時間KFTmaを決定している。
次に、ステップS252では、仮の基準導入時間KFTmaを補正するための第1補正項f(BLW・TEO)を決定する。第1補正項f(BLW・TEO)は、送風機32から送風される送風空気の風量(具体的には、送風機32の電動モータに印加するブロワ電圧)、および蒸発器15における目標蒸発器温度TEOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、図4のステップS252に記載された制御特性図に示すように、ブロワ電圧の減少に伴って、第1補正項f(BLW・TEO)を増加させる。さらに、目標蒸発器温度TEOの上昇に伴って、第1補正項f(BLW・TEO)を増加させる。
より詳細には、図4のステップS252の制御特性図では、TEO=10のラインとTEO=2のラインを図示している。そして、それぞれのラインから得られた値を、実際の目標蒸発器温度TEOに応じて按分することによって、第1補正項f(BLW・TEO)を決定している。
次に、ステップS253では、仮の基準導入時間KFTmaを補正するための第2補正項f(内気時間)を決定する。第2補正項f(内気時間)は、IGスイッチが投入されてから内外気切替装置20が内気を導入した積算内気時間ITm(すなわち、吸込口モードが全内気モードに切り替えられていた積算時間)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、図4のステップS253に記載された制御特性図に示すように、積算内気時間ITmの増加に伴って、第2補正項f(内気時間)を増加させる。
次に、ステップS254では、以下の数式F1を用いて基準導入時間KFTmが決定されて、メインルーチンへ戻る。
KFTm=KFTma+f(BLW・TEO)+f(内気時間)…(F1)
つまり、本実施形態の基準時間決定部を構成するステップS205では、外気温Tamの低下に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。また、外気湿度RHOの低下に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。また、車室内へ送風される送風空気の風量の減少に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。また、目標蒸発器温度TEOの上昇に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。また、積算内気時間ITmの増加に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。
次に、図3のステップS206では、外気導入時間FTmがステップS205にて決定された基準導入時間KFTmよりも大きくなっているか否かを判定する。ステップS206にて、外気導入時間FTmが基準導入時間KFTmよりも大きくなっていないと判定された際には、ステップS207へ進む。
ステップS207では、臭い判定フラグStfを1とし、所定の待機時間の経過を待ってステップS201へ戻る。これにより、ステップS208と同様に、図3の制御処理では、約1秒毎にステップS201へ戻るようになっている。
ステップS206にて、外気導入時間FTmが基準導入時間KFTmよりも大きくなっていないと判定された場合は、蒸発器15にて外気を冷却することによって発生した凝縮水の量が、臭いの原因物質を洗浄するために必要な量以上になっていない。このため、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生し得る。
そこで、ステップS206にて、外気導入時間FTmが基準導入時間KFTmよりも大きくなっていないと判定された場合は、ステップS207にて、臭い判定フラグStfを1に設定する。
一方、ステップS206にて、外気導入時間FTmが基準導入時間KFTmよりも大きくなっていると判定された場合は、蒸発器15にて外気を冷却することによって発生した凝縮水の量が、臭いの原因物質を洗浄するために必要な量以上になっており、蒸発器15の表面が乾燥する際に生じる臭いも発生し難い。そこで、ステップS208へ進み、臭い判定フラグStfを0に設定する。
臭い判定制御は、車両システムが停止するまで実行される。そして、車両システムの手停止時における臭い判定フラグStfの値は、車両システムが停止しても再びIGスイッチが投入されるまで、空調制御装置50のメモリに記憶される。
次に、図5〜図13を用いて、空調制御装置50が実行する自動空調制御について説明する。図5のフローチャートに示す制御処理は、自動空調制御のメインルーチンとして実行される制御処理である。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。このステップS1では、全てのフラグや演算値の初期化がなされるものではない。例えば、臭い判定フラグStfの値については、前回の車両システムの停止時の値がメモリに記憶されている。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んで、ステップS3へ進む。ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜59の検出信号を読み込んで、ステップS4へ進む。さらに、このステップS3では、駆動力制御装置70から出力された制御信号を読み込んでいる。
ステップS4では、前席側の車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、以下の数式F2により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F2)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である、Trは内気センサ51によって検出された内気温である。Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
この目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相関する値である。従って、目標吹出温度TAOは、車両用空調装置1に要求される空調負荷(換言すると、空調熱負荷)を示す指標として用いることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。
まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを決定する。具体的には、ステップS5では、以下数式F3によりエアミックス開度SWを算定する。
SW=(TAO−TE)/(TW−TE)×100(%)…(F3)
ここで、TEは、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度である。TWは、冷却水温度センサ57によって検出された冷却水温度である。
また、SW=0%では、エアミックスドア39が最大冷房位置に変位する。つまり、エアミックスドア39は、冷風バイパス通路34を全開とし、冷風加熱用通路33を全閉とする位置に変位する。SW=100%では、エアミックスドア39が最大暖房位置に変位する。つまり、エアミックスドア39は、冷風バイパス通路34を全閉とし、冷風加熱用通路33を全開とする位置に変位する。
次に、ステップS6では、送風機32の送風能力を決定する。より具体的には、ステップS6では、送風機32の電動モータに印加するブロワ電圧を決定する。ステップS6の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS61では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS61にて、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS62へ進む。ステップS62では、操作パネル60の風量設定スイッチによって設定された乗員の所望の風量となるブロワ電圧が決定されて、ステップS7へ進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチでは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができる。そして、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS61にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS63へ進む。ステップS63では、第1仮ブロワ電圧f(TAO)および第2仮ブロワ電圧f(水温)が決定されて、ステップS64へ進む。
第1仮ブロワ電圧f(TAO)は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、図6のステップS63に記載された制御特性図に示すように、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で第1仮ブロワ電圧f(TAO)を上昇させて、送風機32の風量を増加させる。また、TAOが中間温度域内に入ると、第1仮ブロワ電圧f(TAO)を低下させて送風機32の風量を減少させる。
つまり、第1仮ブロワ電圧f(TAO)では、車両用空調装置1に、高い冷房能力や暖房能力が要求される際に、送風機32の送風能力を増加させるようにブロワ電圧を決定している。
また、第2仮ブロワ電圧f(水温)は、冷却水温度TWに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、図6ステップS63に記載された制御特性図に示すように、冷却水温度TWが、比較的低い第1基準冷却水温度(本実施形態では、40℃)以下である場合は、第2仮ブロワ電圧f(水温)を0とする。さらに、第1基準冷却水温度から第2基準冷却水温度(本実施形態では、65℃)へ上昇するに伴って、第2仮ブロワ電圧f(水温)を上昇させる。
つまり、第2仮ブロワ電圧f(水温)では、エンジンEGの暖機時(すなわち、冷却水温度TWが低温の時)に、送風機32の風量を減少させるようにブロワ電圧を決定している。
ステップS64では、後述するステップS83で決定された吹出口モードが、いずれのモードであるかを判定する。ステップS64にて、吹出口モードが、フットモードあるいはバイレベルモードであると判定された際には、ステップS65へ進む。ステップS65では、ブロワ電圧が第1仮ブロワ電圧f(TAO)および第2仮ブロワ電圧f(水温)のうち小さい方の値に決定されて、ステップS7へ進む。
一方、ステップS64にて、吹出口モードが、フェイスモードであると判定された際には、ステップS66へ進む。ステップS65では、ブロワ電圧が第1仮ブロワ電圧f(TAO)に決定されて、ステップS7へ進む。
次に、ステップS7では、吸込口モードを決定する。より具体的には、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62へ出力される制御信号を決定する。ステップS7の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS71では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS71にて、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS72へ進む。ステップS72では、操作パネル60の吸込口モードの切替スイッチによって、外気導入(図7では、FRSと記載)が設定されているか否かを判定する。
ステップS72にて、外気導入が設定されていると判定された場合は、ステップS73へ進む。ステップS73では、外気率を100%(すなわち、全外気モード)として、ステップS8へ進む。また、ステップS72にて、外気導入が設定されていると判定されなかった場合は、ステップS74へ進む。ステップS74では、外気率を0%(すなわち、全内気モード)として、ステップS8へ進む。
ここで、外気率とは、内外気切替装置20内に導入される送風空気のうちの外気の占める割合である。従って、外気率は、外気導入率と表現することもできる。
一方、ステップS71にて、操作パネル60のオートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS75へ進む。ステップS75では、目標吹出温度TAOに基づいて、冷房運転となっているか暖房運転となっているかを判定する。
具体的には、本実施形態では、目標吹出温度TAOが25℃より高くなっている場合は、暖房運転と判定してステップS76へ進む。ステップS76では、窓近傍湿度RHWに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して外気率を決定して、ステップS8へ進む。
この制御マップでは、図7のステップS76に記載された制御特性図に示すように、窓近傍湿度RHWの上昇に伴って、外気率を増加させている。これにより、窓近傍湿度が高いほど外気の導入率を高くして車室内空間の湿度を低下させて、窓曇りを抑制している。
また、ステップS75にて、TAOが25℃より高くなっていない場合は、冷房運転と判定してステップS77へ進む。ステップS77では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して外気率を決定して、ステップS8へ進む。
この制御マップでは、図7のステップS77に記載された制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、外気率を増加させている。これにより、目標吹出温度TAOが低くなるに伴って(すなわち、冷房負荷が高くなるに伴って)、内気の導入率を高くして冷房効率を向上させている。
次に、ステップS8では、吹出口モードを決定する。より具体的には、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ64へ出力される制御信号を決定する。ステップS8の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS81では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かを判定する。オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS82へ進む。ステップS82では、操作パネル60の吹出口モードの切替スイッチによって、設定された吹出口モードに決定して、ステップS9へ進む。
一方、ステップS81にて、操作パネル60のオートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS83へ進む。ステップS83では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定して、ステップS9へ進む。
この制御マップでは、図8のステップS83に記載された制御特性図に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、仮の吹出口モードをフェイスモード(図8では、FACEと記載)→バイレベルモード(図8では、B/Lと記載)→フットモード(図8では、FOOTと記載)へと順次切り替える。
このため、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。なお、図8のステップS83に記載された制御特性図では、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
次に、ステップS9では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、停止しているエンジンEGを作動させる作動要求信号や、EV走行モードとHV走行モードとの切替を要求する切替要求信号等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満たした場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
次に、ステップS10では、PTCヒータ37の加熱能力を決定する。より具体的には、電力を供給するPTC素子の本数を決定する。ステップS10の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS101では、ステップS5にて決定されたエアミックスドア39の目標開度SWが100%以上、すなわち最大暖房位置となっているか否かを判定する。ステップS101にて、SWが100(%)以上となっている場合には、ステップS102へ進む。ステップS102では、PTC素子の通電本数を最大本数(本実施形態では、3本)として、ステップS11へ進む。
一方、ステップS101にて、SWが100(%)よりも低くなっている場合には、ステップS103へ進む。ステップS103では、目標吹出温度TAO、吹出空気温度TE、内気温Tr、および外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、PTC素子の通電本数が決定されて、ステップS11へ進む。
この制御マップでは、図9のステップS103に記載された制御特性図に示すように、TAO−TEの上昇に伴って、PTC素子の通電本数を増加させている。また、Tr−Tamの低下に伴って、PTC素子の通電本数を増加させている。
次に、ステップS11では、冷却水回路40の冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS11の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS111では、冷却水温度TWが、蒸発器15からの吹出空気温度TEよりも高いか否かを判定する。
ステップS111にて、冷却水温度TWが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS114へ進み、冷却水ポンプ40aを停止させる。その理由は、冷却水温度TWが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって室内へ吹き出される送風空気の温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS111にて、冷却水温度TWが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS112へ進む。ステップS112では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS112にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS114に進む。ステップS114では、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止させることを決定して、ステップS12へ進む。
ステップS112にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS113へ進む。ステップS113では、冷却水ポンプ40aを作動させることを決定して、ステップS12へ進む。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷却水回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS12では、目標蒸発器温度TEOを決定する。目標蒸発器温度TEOは、蒸発器15における冷媒蒸発温度の目標値である。このステップS13の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS121では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して第1仮目標蒸発器温度TEO1を決定する。この制御マップでは、図10のステップS121に記載された制御特性図に示すように、TAOが上昇するに伴って、第1仮目標蒸発器温度TEO1を上昇させる。
続くステップS122では、窓近傍湿度RHWに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮の第2仮目標蒸発器温度TEO2を決定する。この制御マップでは、図10のステップS122記載された制御特性図に示すように、RHWが上昇するに伴って、第2仮目標蒸発器温度TEO2を低下させる。
続くステップS123では、第1仮目標蒸発器温度TEO1および第2仮目標蒸発器温度TEO2のうち、小さい方の値を目標蒸発器温度TEOに決定して、ステップS13へ進む。これにより、窓近傍湿度RHWが上昇するに伴って、目標蒸発器温度TEOを低下させて送風空気の除湿を行うことができる。従って、車両窓ガラスの曇りを効果的に抑制することができる。
次に、ステップS13では、圧縮機11の冷媒吐出能力を決定する。より具体的には、圧縮機11の回転数を決定する。なお、ステップS13における圧縮機回転数の決定は、図3のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
このステップS13の詳細については、図12、図13のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS131では、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
より具体的には、ステップS131では、目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))を算出する。そして、偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
続くステップS132では、操作パネル60のエコノミースイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。ステップS132にて、エコノミースイッチが投入(ON)されていないと判定された際には、ステップS133へ進む。ステップS133では、圧縮機11の最大回転数であるMAX回転数を10000rpmに決定して、ステップS135へ進む。
一方、ステップS132にて、エコノミースイッチが投入(ON)されていると判定された際には、ステップS134へ進む。ステップS134では、圧縮機11の最大回転数であるMAX回転数を7000rpmに決定して、ステップS135へ進む。
次に、ステップS135では、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させる能力低下制御を実行するか否かを判定する。ステップS135の判定の詳細内容については、図13を用いて説明する。図13に示すフローチャートは、ステップS135における判定内容を説明するための仮想的なフローチャートである。従って、ステップS302〜S308の順序が異なっていてもよい。
まず、ステップS301では、車両システムの起動時であるか否かが判定される。より具体的には、IGスイッチが投入(ON)されてから、予め定めた基準時間(本実施形態では、1分)が経過したか否かが判定される。IGスイッチが投入されてから基準時間が経過するまでの車両システムの起動時には、能力低下制御を実行することで、蒸発器15を乾かすための時間を確保することができる。
そこで、ステップS301にて、車両システムの起動時であると判定された場合は、ステップS302へ進む。一方、ステップS301にて、車両システムの起動時ではないと判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。つまり、本実施形態の車両用空調装置1では、能力低下制御を行うか否かを判定しており、少なくとも車両システムの起動時に能力低下制御を行う。
次に、ステップS302では、IGスイッチが投入された後の圧縮機11の継続作動時間が予め定めた基準継続作動時間(本実施形態では、10秒)以上である否かを判定する。継続作動時間が基準継続作動時間以上であると判定された際には、蒸発器15の表面等に凝縮水が発生し、この凝縮水が乾く際に臭いが発生する可能性がある。
そこで、ステップS302にて、圧縮機11の継続作動時間が基準継続作動時間以上ではないと判定された場合は、ステップS303へ進む。一方、ステップS302にて、圧縮機11の継続作動時間が基準継続作動時間以上であると判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
次に、ステップS303では、外気温Tamが予め定めた基準外気温(本実施形態では、15℃)より低いか否かを判定する。外気温Tamが基準外気温より低い場合は、冷凍サイクル装置10にて送風空気を冷却する必要性が低い。逆に、外気温Tamが基準外気温以上である場合には、冷凍サイクル装置10の圧縮機11を作動させて送風空気を冷却する必要性が高い。
そこで、ステップS303にて、外気温Tamが基準外気温より低くなっていると判定された場合は、ステップS304へ進む。一方、ステップS303にて、外気温Tamが基準外気温以上になっていると判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
次に、ステップS304では、ステップS8で決定された吹出口モードが、バイレベルモード(図13では、B/Lと記載)あるいはフェイスモード(図13では、FACEと記載)になっているか否かを判定する。吹出口モードが、バイレベルモードあるいはフェイスモードになっている場合は、冷凍サイクル装置10にて送風空気を冷却する必要性が高い。
そこで、ステップS304にて、吹出口モードが、バイレベルモードあるいはフェイスモードになっていないと判定された場合は、ステップS305へ進む。一方、ステップS304にて、吹出口モードが、バイレベルモードあるいはフェイスモードになっていると判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
次に、ステップS305では、窓表面湿度センサ58によって検出された窓近傍湿度RHWが100%より低くなっているか否かを判定する。窓近傍湿度RHWが100%以上となっている場合は、窓曇りが生じやすいことから、冷凍サイクル装置10の圧縮機11を作動させて送風空気を冷却して除湿する必要性が高い。
そこで、ステップS305にて、窓近傍湿度RHWが100%より低くなっていると判定された場合は、ステップS306へ進む。一方、ステップS305にて、窓近傍湿度RHWが100%以上となっていると判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
次に、ステップS306では、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOが予め定めた基準目標温度KTAO(本実施形態では、30℃)より高くなっているか否かを判定する。目標吹出温度TAOが基準目標温度KTAO以下になっている場合は、車室内の冷房を行うために、冷凍サイクル装置10の圧縮機11を作動させて送風空気を冷却する必要性が高い。
そこで、ステップS306にて、目標吹出温度TAOが基準目標温度KTAOより高くなっていると判定された場合は、ステップS307へ進む。一方、ステップS306にて、目標吹出温度TAOが基準目標温度KTAO以下になっていると判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
上述したステップS303〜S306の説明から明らかなように、本実施形態の車両用空調装置1では、で説明したように、送風空気を冷却する必要性の低い時には能力低下制御を実行可能としている。さらに、送風空気を冷却する必要性の高い時には能力低下制御を実行しないようにしている。
次に、ステップS307では、ステップS7で決定された吸込口モードが、全外気モード(図13では、FRSと記載)になっているか否かが判定される。吸込口モードが、全外気モードになっている場合は、内気に含まれる臭いの成分が蒸発器15の表面等に付着してしまうおそれがない。
そこで、ステップS307にて、吸込口モードが、全外気モードになっていると判定された場合は、ステップS308へ進む。一方、ステップS307にて、全外気モードになっていない場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
次に、ステップS308では、空調制御装置50のメモリに記憶された前回の車両システムの停止時における臭い判定フラグStfの値が0であるか否かを判定する。図3、図4を用いて説明したように、前回の臭い判定フラグStfが0になっている場合は、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生しにくい状態になっている。
そこで、ステップS308では、臭い判定フラグStfが0になっていると判定された場合は、能力低下制御を実行するものとして、ステップS137へ進む。一方、ステップS308にて、臭い判定フラグStfが0になっていないと判定された場合は、能力低下制御を実行しないものとして、ステップS136へ進む。
図12のステップS136では、能力低下制御を行わず、今回の圧縮機回転数を以下数式F4を用いて決定して、ステップS14へ進む。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}…(F3)
なお、数式F4のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfおよびMAX回転数のうち小さい方の値を意味している。
また、ステップS137では、能力低下制御を行うために、今回の圧縮機回転数を0(rpm)に決定して、ステップS14へ進む。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器12a、32、37、40a、61、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、ステップS9にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。
これにより、車両内における空調制御のための通信量を減少させて、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、通常運転時のように圧縮機11が作動している際には、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、冷風加熱用通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
冷風加熱用通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
そして、車室内に吹き出された空調風によって車室内の空気が冷却される場合には、車室内の冷房が実現される。一方、空調風によって車室内の空気が加熱される場合には、車室内の暖房が実現される。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1によれば、通常運転時よりも圧縮機11の冷媒吐出能力を減少させる能力低下制御を行うので、圧縮機11の消費エネルギを低減することができる。
しかも、能力低下制御は、図13のステップS308で説明したように、少なくとも臭い判定フラグStfが0になっている際に実行される。すなわち、蒸発器15の表面が乾燥した際に臭いが発生し難い状態となっている際に実行される。従って、能力低下制御によって蒸発器15の表面等に付着した凝縮水が乾いてしまっても臭いが発生してしまうことを抑制することができる。
このことをより詳細に説明すると、蒸発器15の表面等に付着した凝縮水が乾く際に発生する臭いは、臭いの原因物質が送風空気中に飛散することによって発生する。さらに、臭いの原因物質は、内気中の内装臭、たばこ臭、体臭等の成分が凝縮水中に溶け込み、これが濃縮されることによって生じる。
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1では、外気導入時間FTmに、蒸発器15にて外気に含まれる水分を凝縮させている。外気には、内気のように内装臭、たばこ臭、体臭等の成分が含まれていない。従って、外気を凝縮させた凝縮水は、臭いの原因物質を生じさせにくいという点で、内気を凝縮させた凝縮水よりも清浄である。
さらに、外気導入時間FTmが基準導入時間KFTm以上となっているので、蒸発器15の表面等に付着した原因物質を洗浄するために必要な量の清浄な凝縮水を発生させることができる。従って、能力低下制御によって蒸発器15の表面等に付着した凝縮水が乾いてしまっても乗員にとって不快な臭いが発生してしまうことを抑制することができる。
その結果、本実施形態の車両用空調装置1によれば、臭いによる乗員の不快感を軽減させることができるとともに、従来技術よりも能力低下制御が実行される頻度を増加させて、高い省エネルギ効果を発揮することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、ステップS301で説明したように、車両システムの起動時に、能力低下制御を行う。従って、外気を凝縮させた清浄な凝縮水で洗浄された蒸発器15を乾かすための時間を確保することができ、より一層、臭いの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、ステップS303〜S306等で説明したように、送風空気を冷却する必要性の低い時に、能力低下制御を行うようにしている。具体的には、目標吹出温度TAOが基準目標温度KTAOより高くなっている際に、能力低下制御を行うようにしている。従って、乗員の冷房感を損なうことがない。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、基準時間決定部を構成するステップS206にて、外気を冷却することによって発生した凝縮水の量が、蒸発器15に付着して臭いを生じさせる原因物質を洗浄するために必要とされる量以上となるように基準導入時間KFTmを決定している。これによれば、より一層確実に、臭いによる乗員の不快感を軽減させることができる。
より具体的には、本実施形態の基準時間決定部では、ステップS253にて説明したように、車両システムの起動スイッチ(IGスイッチ)が投入されてから内外気切替装置20が内気を導入した積算内気時間ITmが長くなるに伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。積算内気時間ITmが長くなると、蒸発器15の表面等に、臭いの原因物質が生じやくなる。
従って、積算内気時間ITmが長くなるに伴って、基準導入時間KFTmを増加させることで、外気を凝縮させた清浄な凝縮水で蒸発器15の表面等を効果的に洗浄することができる。
また、基準時間決定部では、ステップS251にて説明したように、外気温Tamが低下するに伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。蒸発器15の温度が一定であれば、外気温Tamが低くなるに伴って、凝縮水の量が減少する。従って、外気温Tamが低下するに伴って、基準導入時間KFTmを増加させることで、蒸発器15の表面等を洗浄するために必要な量の凝縮水を発生させやすい。
また、基準時間決定部では、ステップS251にて説明したように、外気湿度RHOが低下するに伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。蒸発器15の温度が一定であれば、外気湿度RHOが低下するに伴って、凝縮水の量が減少する。従って、外気湿度RHOが低下するに伴って、基準導入時間KFTmを増加させることで、蒸発器15の表面等を洗浄するために必要な量の凝縮水を発生させやすい。
また、基準時間決定部では、ステップS252にて説明したように、送風空気の風量の減少に伴って、すなわち、送風機32に印加するブロワ電圧の低下に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。蒸発器15の温度が一定であれば、送風空気の風量の減少に伴って、凝縮水の量が減少する。従って、送風空気の風量の減少に伴って、基準導入時間KFTmを増加させることで、蒸発器15の表面等を洗浄するために必要な量の凝縮水を発生させやすい。
また、基準時間決定部では、ステップS252にて説明したように、目標蒸発器温度TEOの上昇に伴って、基準導入時間KFTmを増加させている。蒸発器15の温度が上昇するに伴って、凝縮水の量が減少する。従って、目標蒸発器温度TEOの上昇に伴って、基準導入時間KFTmを増加させることで、蒸発器15の表面等を洗浄するために必要な量の凝縮水を発生させやすい。
また、本実施形態の車両用空調装置では、ステップS201にて説明したように、前回の車両システムの作動時にエアコンスイッチが投入されていない場合、すなわち、前回の車両システムの作動時に圧縮機11が停止していた場合は、外気導入時間FTmによらず、能力低下制御が行われるようにしている。これによれば、能力低下制御が実行される頻度をより一層増加させて、高い省エネルギ効果を発揮することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、ステップS135で説明したように、能力低下制御を行うか否かを判定した例を説明したが、能力低下制御は、少なくとも外気導入時間FTmが、基準導入時間KFTm以上となっている際に実行すればよい。
例えば、ステップS301を廃止してもよい。すなわち、能力低下制御を実行するか否かの判定は、車両システムの起動時に限定されず、車両システムの作動中に行ってもよい。さらに、アイドルストップ車両においては、エンジンEGの再起動時に能力低下制御を実行するか否かの判定を行ってもよい。
また、上述の実施形態では、ステップS303〜S306で説明したように、送風空気を冷却する必要性の高い時には能力低下制御を実行しないようにしているが、送風空気を冷却する必要性の高い時であるか否かの判定は、ステップS303〜S306に記載された内容に限定されない。
例えば、内外気切替装置20が全内気モードに切り替えている際に、車室内へ吹き出される送風空気の温度が内気温Trよりも低くなっている際に、送風空気を冷却する必要性の高い時であると判定してもよい。また、内外気切替装置20が全外気モードに切り替えている際に、外気温Tamが目標吹出温度TAOよりも高くなっている際に、送風空気を冷却する必要性の高い時であると判定してもよい。
また、以下数式F5を満たす際に、送風空気を冷却する必要性の高い時であると判定してもよい。
{(Tr+2)×(1−外気率)+(Tam+7)×外気率)}<TAO…(F5)
さらに、能力低下制御を行うか否かの判定において、ステップS303〜S307の一部を省略してもよい。
(2)上述の実施形態では、外気導入時間FTmを、圧縮機11を作動させた状態で、内外気切替装置20が外気のみを連続して導入していた時間と定義した例を説明したが、外気導入時間FTmはこれに限定されない。例えば、外気導入時間FTmを、圧縮機11を作動させた状態で、内外気切替装置20が少なくとも外気を連続して導入していた時間と定義してもよい。すなわち、外気導入時間FTmを、圧縮機11を作動させた状態で、外気率が0より大きくなっている時間と定義してもよい。
また、上述の実施形態では、外気を凝縮させた凝縮水は、臭いの原因物質を生じさせにくいという点で、内気を凝縮させた凝縮水よりも清浄であるとしているが、外気に大気汚染物質などが含まれている可能性もある。そこで、外気に含まれる汚染物質の量を検出するガスセンサを設け、ガスセンサの検出値が予め定めた基準値を超えている場合には、外気導入時間FTmの加算を停止してもよいし、外気導入時間FTmを0としてもよい。
このようなガスセンサとしては、高温に加熱された状態でHC、COなどいわゆる還元性ガスと反応すると抵抗値が小さくなり、またNO2などいわゆる酸化性ガスと反応すると抵抗値が上昇するといった特性を有する半導体ガスセンサを採用することができる。
(3)上述の実施形態では、外気湿度センサ59を設けた例を説明したが、外気湿度センサ59は必須の構成ではない。すなわち、外気湿度RHOを取得することができれば、外気湿度センサ59の検出値を用いることなく、インターネットから取得してもよい。
(4)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1をプラグインハイブリッド車両に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得て走行する通常の車両、走行用電動モータから駆動力を得て走行する電気自動車(燃料電池車両を含む)に適用してもよい。