本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意図する。
〔1.インスリンの検出方法〕
本実施の形態のインスリンの検出方法は、試料と、インスリンレセプターのα−CTセグメントを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第1のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させた第1の複合体と、インスリンレセプターのL1ドメインを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第2のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させた第2の複合体と、を含む溶液から、上記発光物質と上記蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光を検出する蛍光検出工程を含んでいる。以下に、各構成について説明する。
〔1−1.試料〕
上記試料は、インスリンを含むか否か試験される、および/または、インスリンをどの程度の量含むか試験される、試験対象である。それ故に、本実施の形態のインスリンの検出方法は、インスリンの定量方法であり得る。
上記試料がインスリンを含んでいれば、当該インスリンを介して、α−CTセグメントとL1ドメインとが複合体を形成する。α−CTセグメントとL1ドメインとが複合体を形成すれば、α−CTセグメントに連結されている発光物質(または、蛍光物質)と、L1ドメインに連結されている蛍光物質(または、発光物質)とが、接近することになる。発光物質と蛍光物質とが接近すれば、発光物質から蛍光物質に向かって光が照射されるとともに、発光物質と蛍光物質との間で発光共鳴エネルギー転移が生じ、その結果、蛍光物質から蛍光が発生する。そして、当該蛍光を検出することによって、試料中に含まれるインスリンを検出、および/または、定量することができる。
上記試料の具体的な構成は、特に限定されず、人工的に作製されたサンプル(例えば、糖尿病治療薬などの薬剤)であってもよいし、生体から採取されたサンプルであってもよい。
〔1−2.第1の複合体〕
上記第1の複合体は、インスリンレセプターのα−CTセグメントを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第1のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させたものである。
後述する第2の複合体において、第2のポリペプチドに発光物質が連結されている場合には、当該第1の複合体において、第1のポリペプチドには蛍光物質が連結されている。一方、第2の複合体において、第2のポリペプチドに蛍光物質が連結されている場合には、当該第1の複合体において、第1のポリペプチドには発光物質が連結されている。上記構成であれば、α−CTセグメントとL1ドメインとが複合体を形成したときに、発光物質と蛍光物質とが接近できるので、効率よく蛍光を発生させることができる。
上記第1の複合体の構成成分である第1のポリペプチドは、インスリンレセプターのα−CTセグメントを含んでいるポリペプチドである。α−CTセグメントは、インスリンレセプターの細胞外ドメインであるαサブユニットの部分領域であって、インスリンに結合する能力を有しているとともに、膜貫通領域を含んでいない。なお、本発明におけるα−CTセグメントの具体的な構成は特に限定されず、周知のあらゆるα−CTセグメントであり得る。
また、上記第1の複合体の構成成分である第1のポリペプチドは、インスリンレセプターのβサブユニットを含んでいないポリペプチドである。βサブユニットは、インスリンレセプターの細胞内ドメインであって、膜貫通領域と、細胞外ドメインの一部とを含んでいる。そして、当該膜貫通領域の作用によって、インスリンレセプターは、細胞内で膜タンパク質として存在し得る。なお、本発明におけるβサブユニットの具体的な構成は特に限定されず、周知のあらゆるβサブユニットであり得る。
上述したように、第1のポリペプチドは、膜貫通領域を含んでいない。換言すれば、第1の複合体は、膜貫通領域を含んでいない。それ故に、第1の複合体は、可溶性タンパク質(換言すれば、非膜タンパク質)であり得るので、簡単に純度高く精製可能であり、取り扱いが容易であり、かつ、容易にインスリンおよび第2の複合体と複合体を形成することができる。
なお、本明細書中において、膜貫通領域とは、膜タンパク質が細胞膜上に配置されたときに、細胞膜の内部に埋め込まれるように配置される、膜タンパク質内の部分領域を意図する。多くの膜貫通領域は、疎水性アミノ酸によって形成された構造、更に具体的には、疎水性アミノ酸によって形成されたαへリックス構造を有しているが、本明細書における膜貫通領域は、当該構造に限定されない。
上記第1の複合体の構成成分である第1のポリペプチドは、インスリンレセプターのα−CTセグメントからなるものであってもよいし、インスリンレセプターのα−CTセグメント以外の構成を含むものであってもよい。
第1のポリペプチドが、インスリンレセプターのα−CTセグメント以外の構成を含む場合、当該構成は、膜貫通領域を含まない限り、如何なる構成であってもよい。当該構成としては、例えば、α−CTセグメントと、発光物質または蛍光物質とを連結させるリンカーであってもよい。なお、当該リンカーは、ペプチド性のリンカーであってもよいし、非ペプチド性のリンカー(例えば、架橋剤)であってもよい。
第1のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させる場合、第1のポリペプチドのアミノ末端に発光物質または蛍光物質を連結させてもよいし、第1のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質または蛍光物質を連結させてもよい。
第1の複合体の構造を安定化させて、より良くインスリンの検出を行うという観点からは、第1の複合体が第1のポリペプチドのアミノ末端に発光物質または蛍光物質が連結されたものであることが好ましい。上記構成であれば、第1の複合体および第2の複合体に含まれる発光物質と蛍光物質との間の距離を短くして、効率よく発光共鳴エネルギー転移を起こすことができる。
更に具体的には、第1のポリペプチドのアミノ末端に発光物質を連結させる場合には、後述する第2のポリペプチドのカルボキシル末端に蛍光物質を連結させることが好ましく、第1のポリペプチドのアミノ末端に蛍光物質を連結させる場合には、後述する第2のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質を連結させることが好ましい。
第1のポリペプチドに連結させる発光物質および蛍光物質は、発光共鳴エネルギー転移によって蛍光を発生させ得るものであればよく、特に限定されないが、各々、発光タンパク質および蛍光タンパク質であることが好ましい。当該構成であれば、第1の複合体を1つの融合タンパク質(具体的には、第1のポリペプチドと、発光タンパク質または蛍光タンパク質との融合タンパク質)として形成できるので、周知の方法(例えば、融合タンパク質をコードしたポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターを、所望の宿主に導入し、当該宿主内で、融合タンパク質を発現させる方法)によって、簡便に第1の複合体を作製することができる。更に、当該構成であれば、第1のポリペプチドと、発光物質または蛍光物質とを化学結合を介して連結させる操作や、連結した後の第1の複合体を精製する操作を不要にすることができる。
本明細書における発光物質は、発光現象に関わるあらゆる物質であり得る。例えば、酵素と基質との反応によって発光する場合には、発光物質は、酵素であっても良いし、当該酵素の基質であっても良い。より良くインスリンを検出するという観点から、発光物質は、酵素であることが好ましい。
発光物質の例としては、例えば、ルシフェラーゼを挙げることができる。ルシフェラーゼの例としては、例えば、ホタル由来のルシフェラーゼ、ウミシイタケ由来のルシフェラーゼ、および、トゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)由来のルシフェラーゼを挙げることができる。トゲオキヒオドシエビ由来のルシフェラーゼの例としては、NanoLuc(Nluc)(登録商標)、terbium chelate diethylenetriaminepentacetate-carbostyril 124−maleimidopropionic hydrazide (Tb-DTPA-cs124-EMPH)(例えば、Elise Burmeister Getz et al., Biophysical Journal, Volume 74, May 1998, p2451-2458参照)を挙げることができる。
蛍光物質の例としては、例えば、周知の蛍光タンパク質(例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、Midoriishi Cyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami−Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP−m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed−Express、DsRed2、TagRFP、DsRed−Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed、mRasberry、mPlum、PS−CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、および、KikumeGR)を挙げることができる。
また、蛍光物質の例として、TMR、diAcFAM、Oregon greenを挙げることができる。これらの蛍光物質は、NanoLuc(Nluc)(登録商標)との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって蛍光を発生させることができる。また、蛍光物質の例として、Cy3、Cy3.5を挙げることができる。これらの蛍光物質は、ホタル由来のルシフェラーゼとの間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって蛍光を発生させることができる。
〔1−3.第2の複合体〕
上記第2の複合体は、インスリンレセプターのL1ドメインを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第2のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させたものである。
上述した第1の複合体において、第1のポリペプチドに蛍光物質が連結されている場合には、当該第2の複合体において、第2のポリペプチドには発光物質が連結されている。一方、第1の複合体において、第1のポリペプチドに発光物質が連結されている場合には、当該第2の複合体において、第2のポリペプチドには蛍光物質が連結されている。上記構成であれば、α−CTセグメントとL1ドメインとが複合体を形成したときに、発光物質と蛍光物質とが接近できるので、効率よく蛍光を発生させることができる。
上記第2の複合体の構成成分である第2のポリペプチドは、インスリンレセプターのL1ドメインを含んでいるポリペプチドである。L1ドメインは、インスリンレセプターの細胞外ドメインであるαサブユニットの部分領域であって、インスリンに結合する能力を有しているとともに、膜貫通領域を含んでいない。なお、本発明におけるL1ドメインの具体的な構成は特に限定されず、周知のあらゆるL1ドメインであり得る。
また、上記第2の複合体の構成成分である第2のポリペプチドは、インスリンレセプターのβサブユニットを含んでいないポリペプチドである。βサブユニットは、インスリンレセプターの細胞内ドメインであって、膜貫通領域と、細胞外ドメインの一部とを含んでいる。そして、当該膜貫通領域の作用によって、インスリンレセプターは、細胞内で膜タンパク質として存在し得る。なお、本発明におけるβサブユニットの具体的な構成は特に限定されず、周知のあらゆるβサブユニットであり得る。
上述したように、第2のポリペプチドは、膜貫通領域を含んでいない。換言すれば、第2の複合体は、膜貫通領域を含んでいない。それ故に、第2の複合体は、可溶性タンパク質(換言すれば、非膜タンパク質)であり得るので、簡単に純度高く精製可能であり、取り扱いが容易であり、かつ、容易にインスリンおよび第1の複合体と複合体を形成することができる。
上記第2の複合体の構成成分である第2のポリペプチドは、インスリンレセプターのL1ドメインからなるものであってもよいし、インスリンレセプターのL1ドメイン以外の構成を含むものであってもよい。
第2のポリペプチドが、インスリンレセプターのL1ドメイン以外の構成を含む場合、当該構成は、膜貫通領域を含まない限り、如何なる構成であってもよい。当該構成としては、例えば、L1ドメインと、発光物質または蛍光物質とを連結させるリンカーであってもよい。なお、当該リンカーは、ペプチド性のリンカーであってもよいし、非ペプチド性のリンカー(例えば、架橋剤)であってもよい。
第2のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させる場合、第2のポリペプチドのアミノ末端に発光物質または蛍光物質を連結させてもよいし、第2のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質または蛍光物質を連結させてもよい。
第2の複合体の構造を安定化させて、より良くインスリンの検出を行うという観点からは、第2の複合体は、第2のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質または蛍光物質が連結されたものであることが好ましい。上記構成であれば、第1の複合体および第2の複合体に含まれる発光物質と蛍光物質との間の距離を短くして、効率よく発光共鳴エネルギー転移を起こすことができる。
更に具体的には、第2のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質を連結させる場合には、上述した第1のポリペプチドのアミノ末端に蛍光物質を連結させることが好ましく、第2のポリペプチドのカルボキシル末端に蛍光物質を連結させる場合には、上述した第1のポリペプチドのアミノ末端に発光物質を連結させることが好ましい。
第2のポリペプチドに連結させる発光物質および蛍光物質は、発光共鳴エネルギー転移によって蛍光を発生させ得るものであればよく、特に限定されないが、各々、発光タンパク質および蛍光タンパク質であることが好ましい。当該構成であれば、第2の複合体を1つの融合タンパク質(具体的には、第2のポリペプチドと、発光タンパク質または蛍光タンパク質との融合タンパク質)として形成できるので、周知の方法(例えば、融合タンパク質をコードしたポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターを、所望の宿主に導入し、当該宿主内で、融合タンパク質を発現させる方法)によって、簡便に第2の複合体を作製することができる。
第2のポリペプチドに連結させる発光物質および蛍光物質としては、第1のポリペプチドに連結させ得る発光物質および蛍光物質として説明したものと同じものを用いることができる。これら発光物質および蛍光物質の具体例については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
〔1−4.第1の複合体、および、第2の複合体の実施形態の一例〕
第1の複合体、および、第2の複合体は、各々が分離した物質であってもよいが、リンカーによって互いに結合して一体化された、第3の複合体を形成していてもよい。
第1の複合体および第2の複合体がリンカーによって互いに結合していれば、第1の複合体と第2の複合体とが(換言すれば、α−CTセグメントとL1ドメインとが)、常に近くに存在することができる。この場合、例えば、α−CTセグメントを含む第1の複合体にインスリンが結合すれば、当該インスリンに対して、L1ドメインを含む第2の複合体も効率よく結合することができる。その結果、インスリン濃度が低い場合であっても、発光共鳴エネルギー転移を効率よく生じさせ、その結果、効率よく蛍光物質から蛍光を発生させることができる。
この場合、リンカーが結合する第1の複合体内の領域と、リンカーが結合する第2に複合体内の領域とは、特に限定されない。例えば、(i)第1の複合体内の発光物質または蛍光物質と、第2の複合体内の第2のポリペプチドとを、リンカーによって結合してもよいし、(ii)第1の複合体内の発光物質または蛍光物質と、第2の複合体内の発光物質または蛍光物質とを、リンカーによって結合してもよいし、(iii)第1の複合体内の第1のポリペプチドと、第2の複合体内の第2のポリペプチドとを、リンカーによって結合してもよいし、(iv)第1の複合体内の第1のポリペプチドと、第2の複合体内の発光物質または蛍光物質とを、リンカーによって結合してもよい。より構造が安定した第3の複合体を実現するという観点からは、上述した(i)〜(iv)の中では、(iii)が最も好ましい。
リンカーは、第1の複合体と第2の複合体とを結合させ得るものであればよく、その具体的な構成は、特に限定されない。リンカーとしては、例えば、ポリペプチドを挙げることができる。ポリペプチドのリンカーを用いれば、第3の複合体を1つのタンパク質(例えば、第1の複合体と、リンカーと、第2の複合体との融合タンパク質)として構成することができる。そして、当該構成であれば、周知の方法にて当該融合タンパク質の発現ベクターを作製し、当該発現ベクターを所望の宿主に導入することによって、融合タンパク質を容易に作製することができる。
リンカーとしてポリペプチドを用いる場合、当該リンカーを構成するアミノ酸の数は特に限定されない。より低濃度のインスリンの濃度を測定するという観点からは、リンカーを構成するアミノ酸の数は、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上、33個以上、または、34個以上であることが好ましい。これらの場合、リンカーを構成するアミノ酸の数の上限値は、特に限定されない(例えば、100、または、100以上の任意の整数)。
リンカーが短すぎると(例えば、リンカーを構成するアミノ酸の数が19個以下)、インスリンが存在しなくても発光物質と蛍光物質との間の距離が短く保たれ、発光物質と蛍光物質との間で発光共鳴エネルギー転移が生じ、その結果、蛍光が発生する。つまり、リンカーが短すぎると、インスリンを検出する際のバックグラウンドの蛍光の強度が上昇する傾向を示す。それ故に、感度良くインスリンを検出するという観点から、リンカーは、上述した長さを有するものであることが好ましい。
リンカーとしてポリペプチドを用いる場合、当該リンカーを構成するアミノ酸の種類は、特に限定されない。より低濃度のインスリンの濃度を測定するという観点から、リンカーは、立体構造の自由度が高いアミノ酸によって構成されていることが好ましい。より具体的に、リンカーは、(i)脂肪酸の側鎖を有するアミノ酸である、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸;水酸基を含む側鎖を有するアミノ酸である、セリン、スレオニンおよびチロシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸;並びに、酸またはアミドを含む側鎖を有するアミノ酸である、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸、によって構成されているものであってもよいし、(ii)脂肪酸の側鎖を有するアミノ酸である、グリシン、アラニンおよびロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸;水酸基を含む側鎖を有するアミノ酸であるセリン;並びに、酸を含む側鎖を有するアミノ酸であるグルタミン酸によって構成されているものであってもよいし、(iii)グリシン、アラニン、セリン、ロイシンおよびグルタミン酸によって構成されているものであってもよいし、(iv)「ASSAGGSAGGSAGGSAGGSAGGSAGGSAGSGGLE(配列番号14)」にて示されるポリペプチドを少なくとも一部分として含むものであってもよい。
第3の複合体は、支持体(例えば、ガラス基板、ビーズ、ゲル、細胞、または、細胞外マトリクス)の表面に結合し得る。第1の複合体および第2の複合体を第3の複合体として一体化すれば、第1の複合体と第2の複合体とを、互いにとって良好な配置を保ちながら、支持体の表面に結合させることができる。そして、当該支持体を用いれば、感度良くインスリンを検出することができる。
第3の複合体を支持体の表面に結合させる方法は、特に限定されず、架橋剤によって第3の複合体と支持体とを結合させてもよいし、第3の複合体が備えるタグによって第3の複合体と支持体とを結合させてもよいし、支持体が備えるタグによって第3の複合体と支持体とを結合させてもよい。
第3の複合体を支持体の1つである細胞の表面に結合させる方法としては、特に限定されない。例えば、第3の複合体の発現ベクターを細胞に導入し、第3の複合体を細胞内で発現させることによって、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよい。この場合、後述するタグの作用によって、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよいし、後述するタグの作用によらずに、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよい。
また、第3の複合体と細胞とを混合することによって、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよい。この場合、後述するタグの作用によって、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよいし、後述するタグの作用によらずに、第3の複合体を細胞の表面に結合させてもよい。
後述する実施例に示すように、本発明者は、(i)第3の複合体は、構造的に安定であって、所望の細胞内で大量に発現し得ること、(ii)第3の複合体に対して人工的にタグ(具体的には、細胞膜に結合するタグ)を結合させた場合、タグが結合した第3の複合体は、構造的に不安定化すること無く、所望の細胞内で大量に発現し得ること、(iii)タグが結合した第3の複合体は、タグの作用によって細胞の表面に存在し、当該細胞の近傍に存在する別の細胞によって生産されるインスリンを検出し得ること、を見出した。それ故に、第3の複合体には、細胞膜に結合するためのタグが結合されていてもよい。
タグは、細胞膜に結合するものであればよく、具体的な構成は特に限定されない。タグは、ポリペプチドであることが好ましい。ポリペプチドのタグを用いれば、第3の複合体とタグとを1つのタンパク質(例えば、第1の複合体と、リンカーと、第2の複合体と、タグとの融合タンパク質)として構成することができる。そして、当該構成であれば、周知の方法にて当該融合タンパク質の発現ベクターを作製し、当該発現ベクターを所望の宿主に導入することによって、宿主の細胞膜に結合している融合タンパク質を容易に作製することができる。
タグの具体例としては、膜タンパク質(例えば、PDGF(platelet-derived growth factor)レセプター、β2 adrenergic receptor(β2AR)(例えば、John Holleran et al., Fluorogen-Activating Proteins as Biosensors of Cell-Surface Proteins in Living Cells, Journal of the International Society for Advancement of Cytometry, Cytometry PART A, Vol.77A, 776-782, 2010参照)、EGF(Epidermal growth factor)レセプター、インスリンレセプター、VGF(vascular endothelial cell growth factor)レセプター、FGF(fibroblast growth factor)レセプター、または、DDR(discodin domain receptor))の膜貫通領域を挙げることができる。
第3の複合体内のタグが結合される箇所は、特に限定されない。ポリペプチドのタグを用いて第3の複合体とタグとを1つのタンパク質として構成する場合には、第3の複合体の構造をより安定化させるという観点から、第3の複合体のアミノ末端またはカルボキシル末端にタグを結合させることが好ましい。
〔1−5.蛍光検出工程〕
上記蛍光検出工程は、試料と、第1の複合体と、第2の複合体と、を含む溶液から、発光物質と蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって減少する光と発生する蛍光とを検出する工程である。
例えば、上記蛍光検出工程において蛍光が検出されれば(または、元来発光物質が有する発光能の減少と、蛍光の増強と、が検出されれば)、試料中にインスリンが含まれていると判定することができる。一方、上記蛍光検出工程において蛍光が検出されなければ(または、元来発光物質が有する発光能の減少と、蛍光の増強と、が検出されなければ)、試料中にインスリンが含まれていないと判定することができる。
上記蛍光検出工程において検出される蛍光の波長は、特に限定されず、発光物質と蛍光物質との組み合わせに応じて、適宜設定することができる。
上記蛍光検出工程において検出される蛍光の波長(ピーク波長:A(nm))は、発光物質が発する光の波長(ピーク波長:B(nm))から離れているほど好ましい。例えば、(A−B)の絶対値が、50以上であることが好ましく、60以上であることが更に好ましく、70以上であることが更に好ましく、80以上であることが最も好ましい。当該絶対値の上限は、特に限定されないが、例えば、蛍光検出装置の検出能力を考慮すれば、100であってもよいし、150であってもよい。上記構成であれば、検出される蛍光の強度、および、発光物質が発する光の強度の各々を正確に測定することができるので、より正確にインスリンを検出することができる。
上記溶液中における、第1の複合体の濃度(M1)、および、第2の複合体の濃度(M2)は特に限定されないが、第1の複合体と第2の複合体とがリンカーによって互いに結合していない場合には、50≦M2/M1≦200が好ましく、100≦M2/M1≦200が更に好ましく、150≦M2/M1≦200が更に好ましい。上記構成であれば、溶液中に存在するインスリンの検出感度を上げることができるとともに、溶液中に存在するインスリンの量をより精度よく定量することができる。
上記蛍光検出工程は、検出された蛍光のピーク波長における発光値から、試料中に含まれるインスリンの濃度を算出する、濃度算出工程を含んでいてもよい。更に具体的に上記蛍光検出工程は、検出された蛍光のピーク波長における発光値、および、予め作成された検量線から、試料中に含まれるインスリンの濃度を算出する、濃度算出工程を含んでいてもよい。以下に、濃度算出工程の一例を説明するが、本発明は、当該例に限定されない。
まず、蛍光検出工程に先立って、検量線を作成する。
具体的には、既知の濃度のインスリン、第1の複合体、および、第2の複合体を含む、インスリンの濃度が異なる複数種類のサンプル溶液を準備する。そして、各サンプル溶液について、発光物質と蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光のピーク波長における発光値と、発光物質が発する光のピーク波長における発光値と、を測定する。
次いで、下記計算式(1)にしたがって、各サンプル溶液について、BRET効率の指標であるBRET Unitを算出する;
[(発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光のピーク波長における発光値)−(発光物質が発する光のピーク波長における発光値)×Cf]/(発光物質が発する光のピーク波長における発光値) ・・・・・・計算式(1)
但し、Cfは、同じ実験条件下で、発光物質を含む第1の複合体、または、発光物質を含む第2の複合体のみを用いて得られた、(発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光のピーク波長における発光値)/(発光物質が発する光のピーク波長における発光値)の値である。
次いで、X−Y座標上で、既知のインスリン濃度をX軸に、算出されたBRET UnitをY軸にプロットすることによって、検量線を作成することができる。
上記蛍光検出工程では、未知の濃度のインスリンを含む試料と、第1の複合体と、第2の複合体と、を含む溶液から、発光物質と蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光を検出する。そして、当該検出データを上述した計算式(1)に代入することによって、BRET Unitを計算する。そして、当該BRET Unitの値を検量線に代入することによって、試料に含まれていたインスリンの濃度を決定することができる。
〔2.インスリンの検出キット〕
本実施の形態のインスリンの検出キットは、インスリンレセプターのα−CTセグメントを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第1のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させた第1の複合体と、インスリンレセプターのL1ドメインを含み、かつ、インスリンレセプターのβサブユニットを含まない第2のポリペプチドに、発光物質または蛍光物質を連結させた第2の複合体と、を備えているものである。
更に、本実施の形態のインスリンの検出キットは、上記発光物質および上記蛍光物質が、当該発光物質と当該蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって蛍光を発生させるものである。
更に、本実施の形態のインスリンの検出キットは、上記第1のポリペプチドに発光物質が連結されている場合には、上記第2のポリペプチドに蛍光物質が連結されており、上記第1のポリペプチドに蛍光物質が連結されている場合には、上記第2のポリペプチドに発光物質が連結されているものである。
上記第1の複合体がポリペプチドである場合には、インスリンの検出キットに備えられている第1の複合体は、第1の複合体をコードするポリヌクレオチドが転写可能に挿入された発現ベクターの形態であってもよい。同様に、上記第2の複合体がポリペプチドである場合には、インスリンの検出キットに備えられている第2の複合体は、第2の複合体をコードするポリヌクレオチドが転写可能に挿入された発現ベクターの形態であってもよい。
本実施の形態のインスリンの検出キットでは、上記第1の複合体、および、上記第2の複合体は、リンカーによって互いに結合して、第3の複合体を形成しているものであってもよい。
上記第1の複合体、リンカー、および、第2の複合体がポリペプチドである場合(換言すれば、第3の複合体が、第1の複合体と、リンカーと、第2の複合体との融合タンパク質である場合)には、インスリンの検出キットには、第3の複合体をコードするポリヌクレオチドが転写可能に挿入された発現ベクターが備えられていてもよい。
本実施の形態のインスリンの検出キットでは、第3の複合体が表面に結合している支持体(例えば、ガラス基板、ビーズ、ゲル、細胞、または、細胞外マトリクス)を備えていてもよい。
上記第1の複合体、リンカー、第2の複合体、および、タグがポリペプチドである場合(換言すれば、第1の複合体と、リンカーと、第2の複合体と、タグとが、1つの融合タンパク質を形成している場合)には、インスリンの検出キットには、当該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが転写可能に挿入された発現ベクターが備えられていてもよい。
上記第1の複合体、第2の複合体、リンカー、および、タグの詳細については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
本実施例において、所望のポリペプチドを「Aポリペプチド−Bポリペプチド」と記載した場合、当該所望のポリペプチドでは、Bポリペプチドのアミノ末端に、Aポリペプチドが連結されていることを意図する。
<1.融合タンパク質の作製および精製>
まず、「Nluc−αCT」を発現させるためのプラスミド、および、「L1−YPet」を発現させるためのプラスミドを作製した。これらの発現プラスミドの作製方法について説明する。
本実施例のαCTとしては、配列番号1に示すDNA配列にてコードされ、かつ、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するαCTを用いた。一方、本実施例のL1としては、配列番号3に示すDNA配列にてコードされ、かつ、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するL1を用いた。
周知の方法にしたがって、Nluc(DNA配列:配列番号5、アミノ酸配列:配列番号6)の発現プラスミドであるpNL 1.1 [Nluc](Promega)を鋳型として用いたPCRによって、NlucをコードしているDNA配列を増幅し、当該DNA配列を、動物細胞用の発現プラスミド(pcDNA3.1/myc−His B(Life Technologies))内にクローニングした。
次いで、当該動物細胞用の発現プラスミド内にクローニングされたNlucをコードしているDNA配列の3’末端側に、配列番号1に示すDNA配列をインフレームにて挿入し、融合タンパク質である「Nluc−αCT」を発現するためのプラスミドを作製した。なお、当該プラスミドによって発現される「Nluc−αCT」は、細胞外分泌シグナル(DNA配列:配列番号9、アミノ酸配列:配列番号10)と、精製を容易にするためのHis tag(DNA配列:配列番号11、アミノ酸配列:配列番号12)と、が連結された状態になっている。上記細胞外分泌シグナルの大部分は、融合タンパク質である「Nluc−αCT」の精製過程で分解および除去される。
また、周知の方法にしたがって、YPet(DNA配列:配列番号7、アミノ酸配列:配列番号8)の発現プラスミドであるuntargeted Aurora B FRET sensor Kif2 substrate(Addgene plasmid 45215)を鋳型として用いたPCRによって、YPetをコードしているDNA配列を増幅し、当該DNA配列を、動物細胞用の発現プラスミド(pcDNA3.1/myc−His B(Life Technologies))内にクローニングした。
次いで、当該動物細胞用の発現プラスミド内にクローニングされたYPetをコードしているDNA配列の5’末端側に、配列番号3に示すDNA配列をインフレームにて挿入し、融合タンパク質である「L1−YPet」を発現するためのプラスミドを作製した。なお、当該プラスミドによって発現される「L1−YPet」は、細胞外分泌シグナル(DNA配列:配列番号9、アミノ酸配列:配列番号10)と、精製を容易にするためのHis tag(DNA配列:配列番号11、アミノ酸配列:配列番号12)と、が連結された状態になっている。上記細胞外分泌シグナルの大部分は、融合タンパク質である「Nluc−αCT」の精製過程で分解および除去される。
次いで、上述したプラスミド、および、Expi293 Expression System(Life Technologies)を用いて、「Nluc−αCT」および「L1−YPet」を発現させた。各タンパク質は、分泌シグナルによって培養に用いている培地中へ放出されると共に、分泌シグナル部分は、切断される。
まず、マニュアルに従い、30mLの培地を用いて培養中のExpi293細胞(7.5×107cells)を、各プラスミドを用いてトランスフェクションした。
トランスフェクションしてから7日後に、培養液の上清を回収した。上清をヒスチジンタグ(His−tag)アフィニティークロマトグラフィー用のバッファー(20mM sodium phosphate、500mM sodium chloride、5mM imidazole、pH7.4)に対して透析した後、透析後の上清を、His-Trap EF column(GE healthcare)に供し、透析後の上清に含まれている目的のタンパク質(具体的には、「Nluc−αCT」および「L1−YPet」)をHis-Trap EF columnに吸着させた。その後、イミダゾール濃度勾配法によって、His-Trap FF columnから目的タンパク質を溶出させた。
得られた溶出液をTris-HCl buffer(25mM Tris−HCl、137mM sodium chloride、pH8.0)、または、KREBS-Ringer buffer(Sigma-Aldrich)に対して透析した。
透析後の溶出液中に含まれるタンパク質の濃度をMicro BCA Kit(Thermo Scientific)を用いて決定した後、200ngのタンパク質に相当する透析後の溶出液(1レーンあたり)を、12%のポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEに供し、溶出液中に含まれる目的タンパク質の純度を確認した。
図1は、SDS−PAGE後のポリアクリルアミドゲルをQuick-CBB PLUS(Wako)を用いて染めた結果を示す写真である。図1に示すように、「Nluc−αCT」および「L1−YPet」を純度高く精製することができた。
なお、上記と同様の方法にしたがって「αCT−Nluc」および「YPet−L1」を作製したが、取得できた「Nluc−αCT」および「L1−YPet」の量と比較して、取得できた「αCT−Nluc」および「YPet−L1」の量は、少なかった(図示せず)。
<2.第1の複合体の濃度、および、第2の複合体の濃度に関する検討>
KREBS-Ringer Buffer中で、「Nluc−αCT」(最終濃度0.5μM)、「L1−YPet」(最終濃度0μM、0.5μM、1μM、5μM、10μM、30μM、50μM、50μM、100μM、または、150μM)、インスリン(Life Technologies、最終濃度10μM)を、合計100μLとなるように混合し、25℃にて30分間静置した。
その後、上述した混合液に1μLのNano-Glo Luciferase Assay Substrateを加え、直ちに、波長445nmにおける発光値と、波長528nmにおける発光値とをマイクロプレートリーダー(Spectra-Max M5, Molecular Devices Japan, Tokyo, Japan)にて測定した。
BRET効率の指標であるBRET Unitは、測定した発光値に基づいて、以下の計算式(2)を用いて算出した。
[(波長528nmにおける発光値)−(波長445nmにおける発光値)×Cf]/(波長445nmにおける発光値) ・・・・・・計算式(2)
但し、Cfは、同じ実験条件下で「Nluc−αCT」のみを用いて得られた(波長528nmにおける発光値)/(波長445nmにおける発光値)の値である。
図2に、試験結果を示す。溶液中に存在するインスリンの検出感度を上げるとともに、溶液中に存在するインスリンの量をより精度よく定量するという観点から、「Nluc−αCT」の濃度をM1、「L1−YPet」をM2としたとき、50≦M2/M1≦200が好ましく、100≦M2/M1≦200が更に好ましく、150≦M2/M1≦200が更に好ましく、M2/M1=200が最も好ましいことが明らかになった。
<3.インスリンの定量>
KREBS-Ringer Buffer中で「Nluc−αCT」(最終濃度0.5μM)、「L1−YPet」(最終濃度100μM)、インスリン(Life Technologies、様々な最終濃度)を、合計100μLとなるように混合し、25℃にて30分間静置した。
その後、上述した混合液に1μLのNano-Glo Luciferase Assay Substrate(Promega)を加え、直ちに、波長445nmにおける発光値と、波長528nmにおける発光値とをマイクロプレートリーダー(Spectra-Max M5, Molecular Devices Japan, Tokyo, Japan)にて測定した。
BRET効率の指標であるBRET Unitは、測定した発光値に基づいて、上述した計算式(2)を用いて算出した。
図3に試験結果を示す。図3に示すように、本発明であれば、インスリンを精度よく定量できることが明らかになった。
例えば、インスリンの濃度が不明であるサンプルの実測値に基づいてBRET効率を算出すれば、当該BRET効率の値を図3に例示する検量線に当てはめれば、当該サンプルに含まれるインスリンの濃度を決定することができる。
また、本試験におけるインスリンの検出限界濃度は、800nMであった。
<4.生体から分泌されるインスリンの検出>
マウスインスリノーマMIN6細胞(非特許文献3および4など参照)を、10%(v/v)のHeat-inactivated fetal bovine serum(Thermo Scientific)、0.1mMの2−メルカプトエタノール(Wako, Osaka, Japan)、100units/mLのペニシリン(Life Technologies)、および、100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)を含むdulbecco’s modified eagle’s medium(Life Technologies)中にて、5%CO2、37℃の条件下で培養した。
平面培養中の1×107cellsのMIN6細胞をトリプシン処理によって回収した後、当該MIN6細胞をKREBS-Ringer Bufferを用いて洗浄した。KREBS-Ringer Buffer中に懸濁された洗浄後のMIN6細胞と、「Nluc−αCT」(最終濃度0.5μM)および「L1−YPet」(最終濃度100μM)と、を混合した。
上述した混合液に対して、Nano-Glo Luciferase Assay Substrate(Promega)を2.5μL加えた後、更に、当該混合液に、(i)グルコース(最終濃度0mM、3mM、5mM、8mM、10mM、15mM、または、25mM)を含むKREBS-Ringer Buffer、(ii)tolbutamide(最終濃度3μM)を含むKREBS-Ringer Buffer、または、(iii)diazoxide(最終濃度10μM)とグルコース(最終濃度25mM)とを含むKREBS-Ringer Buffer、を全量が50μLになるように混合した。なお、「tolbutamide」は、インスリンの分泌を促進する試薬であり、「diazoxide」は、インスリンの分泌を抑制する試薬である。
その後、直ちに、波長445nmにおける発光値と、波長528nmにおける発光値とを、マイクロプレートリーダー(Spectra-Max M5, Molecular Devices Japan, Tokyo, Japan)にて10秒毎に測定した。
BRET効率の指標であるBRET Unitは、測定した発光値に基づいて、上述した計算式(2)を用いて算出した。
図4に試験結果を示す。図4に示すように、本発明であれば、生体によって分泌されるインスリンであっても検出できることが明らかになった。
<5.様々な発光物質、および、様々な蛍光物質を用いた試験>
非特許文献1(John G. Menting et al., “How insulin engages its primary binding site on the insulin receptor” Nature, 10 January 2013, Vol.493, 241)に基づいて、インスリンレセプターにインスリンが結合したときのα−CTセグメントとL1ドメインとの距離を、5nmと予測した。
上述した5nmの距離は、リンカー(アミノ酸配列:GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号13))によって再現することができる。そして、当該リンカーを介して発光物質と蛍光物質とを直接連結させれば、本発明の第1の複合体および第2の複合体がインスリンを介して複合体を形成した時の、当該複合体内における発光物質および蛍光物質の状態を再現することができる。
そこで、上記リンカーを介して様々な発光物質と様々な蛍光物質とを直接連結した時に、発光共鳴エネルギー転移によって蛍光が発生するか否かを検討した。以下に、具体的な試験方法および試験結果について説明する。
本実施例では、発光物質として発光タンパク質(具体的には、Nluc)を用い、蛍光物質として蛍光タンパク質(具体的には、EYFP、Venus、Ypet)を用いた。
まず、周知の方法にしたがって、6種類の融合タンパク質(具体的には、「Nluc−(GGGGS)3−EYFP」、「Nluc−(GGGGS)3−Venus」、「Nluc−(GGGGS)3−YPet」、「EYFP−(GGGGS)3−Nluc」、「Venus−(GGGGS)3−Nluc」、「YPet−(GGGGS)3−Nluc」)の各々を発現するための発現ベクターを作製した。
CHO−K1細胞を、10%(v/v)のHeat‐inactivated fetal bovine serum(Thermo Scientific)、100units/mLのペニシリン(Life Technologies)、および、100μg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies)を含むHam’s F12 Nutrient Mixture(Life Technologies)中にて、5%CO2、37℃の条件下で培養した。
1×106cellsのCHO−K1細胞を3.5cm Dishへ播種し、翌日、Lipofectamin LTX(Life Technologies)を用いて、2.5μgの各発現ベクターを、CHO−K1細胞へトランスフェクションした。
トランスフェクション操作の48時間後に、CHO−K1細胞を破砕し、発光測定を行った。具体的には、Nano-Glo Luciferase Assay Buffer(Promega)をPBSで2倍希釈したものを、CHO−K1細胞を破砕するための溶解液とした。トランスフェクションを行ったCHO−K1細胞をPBSで2回洗浄した後、上清液を捨て、CHO−K1細胞のペレットを作製した。当該ペレットに上記溶解液を200μL添加し、よく懸濁したものを細胞溶解液として回収した。96wellプレートへ細胞溶解液を100μL添加し、当該細胞溶解液へNano-Glo Luciferase Assay Substrate(Promega)を5μL混合した後、直ちにマイクロプレートリーダー (Spectra-Max M5, Molecular Devices Japan, Tokyo, Japan)を用いて、400nmから600nmの発光スペクトルを測定した。
図5〜図7に、試験結果を示す。図5〜図7に示すデータは、実際に測定された発光値のデータを、発光物質が発する光の発光値(波長445nmにおける発光値)で標準化したデータである。更に具体的に、図5〜図7に示すデータにおいて、波長445nm近傍の発光値は、発光物質が発する光の発光値であり、波長528nm近傍の発光値は、発光物質と蛍光物質との間で生じる発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光の発光値である。
図5〜図7から明らかなように、本発明に用いられる発光物質および蛍光物質の具体的な構成は限定されないことが明らかになった。更に、発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光の発光量を大きくするという観点、および、発光物質が発する光の波長と発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光の波長との差を大きくして、より良く蛍光を測定するという観点、からは、発光物質がNlucであり蛍光物質がVenusである組み合わせが好ましく、発光物質がNlucであり蛍光物質がYPetである組み合わせが更に好ましいことが明らかになった。
また、発光共鳴エネルギー転移によって発生する蛍光の発光量を大きくするという観点から、第1の複合体は、第1のポリペプチドのアミノ末端に発光物質または蛍光物質が連結されたものであることが好ましく、第2の複合体は、第2のポリペプチドのカルボキシル末端に発光物質または蛍光物質が連結されたものであることが好ましいことが明らかになった。
<6.第1の複合体と第2の複合体とを連結させるリンカーに関する試験>
<6−1.融合タンパク質の作製>
まず、第1の複合体と第2の複合体とが、様々なリンカー(具体的には、AS(SAGG)6SAGSGGLE(アミノ酸配列:配列番号14)、または、AS(GGGGS)3LE(アミノ酸配列:配列番号25))を介して連結されているポリペプチドを発現するためのプラスミドを作製した。
具体的には、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」(アミノ酸配列:配列番号15、DNA配列:配列番号16)を発現するためのプラスミド、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」(アミノ酸配列:配列番号17、DNA配列:配列番号18)を発現するためのプラスミド、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」(アミノ酸配列:配列番号19、DNA配列:配列番号20)を発現するためのプラスミド、および、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」(アミノ酸配列:配列番号21、DNA配列:配列番号22)を発現するためのプラスミドを作製した。
なお、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」、および、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」の各々のアミノ末端には、細胞外分泌シグナルが連結され、カルボキシル末端には、Myc tagおよびHis tagが連結されている。
プラスミド作製方法は、基本的に、上述した<1.融合タンパク質の作製および精製>に記載の方法と、周知の方法と、にしたがった。また、上述した<1.融合タンパク質の作製および精製>に記載の方法にしたがって、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」、および、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」を作製および精製した。また、上述した<1.融合タンパク質の作製および精製>に記載の方法にしたがって、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」、および、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」を作製し、これらについては精製を行わなかった。
上述したタンパク質を、12%のポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEに供し、タンパク質の純度を確認した。
図9は、SDS−PAGE後のポリアクリルアミドゲルをQuick-CBB PLUS(Wako)を用いて染めた結果の一部を示す写真である。更に具体的に、図9(a)は、精製前の「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」(図9(a)のレーン1)、および、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」(図9(a)のレーン2)の試験結果を示し、図9(b)は、精製後の「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」(図9(b)のレーン3)、および、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」(図9(b)のレーン4)の試験結果を示している。
本試試験では「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」、および、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」の各々を純度高く精製することができた。
<6−2.インスリンの定量>
「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」、および、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」の各々を用いて、インスリンを定量した。以下に、試験方法および試験結果を説明する。
(i)「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」の試験方法
Tris-HCl buffer(Ph8.0)(+BSA)中で、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」(最終濃度50nM)、および、インスリン(Life Technologies、様々な最終濃度)を、合計100μLとなるように混合し、25℃にて20分間静置した。
その後、上述した混合液に1μLのNano-Glo Luciferase Assay Substrate(Promega) を加えて混合し、直ちに、波長400nm〜600nmの発光スペクトル、または、波長445nmにおける発光値と波長528nmにおける発光値、をマイクロプレートリーダー(Spectra-Max M5, Molecular Devices Japan, Tokyo, Japan)にて測定した。
(ii)「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」および「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」の試験方法
上述した<5.様々な発光物質、および、様々な蛍光物質を用いた試験>に記載の方法にしたがって試験を行い、400nmから600nmの発光スペクトルを測定した。
BRET効率の指標であるBRET Unitは、測定した発光値に基づいて、以下の計算式(3)を用いて算出した。
[(波長528nmにおける発光値)−(波長445nmにおける発光値)×Cf]/(波長445nmにおける発光値) ・・・・・・計算式(3)
但し、Cfは、同じ実験条件下で「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」のみを用いて得られた(波長528nmにおける発光値)/(波長445nmにおける発光値)の値である。
図10および11に、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」の試験結果を示す。図10に示すように、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」であれば、インスリンの濃度に依存して、波長445nmにおける発光値に対する波長528nmにおける発光値が上がること、換言すれば、インスリンを精度よく定量できることが明らかになった。また、図11に示すように、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」を用いた場合のインスリン検出限界濃度は、50nMであった。一方、<3.インスリンの定量>の欄にて既に説明したように、第1の複合体と第2の複合体とをリンカーで連結しない場合のインスリン検出限界濃度は、800nMであった。つまり、第1の複合体と第2の複合体とをリンカーで連結した場合は、第1の複合体と第2の複合体とをリンカーで連結しない場合と比較して、インスリンの検出感度が飛躍的に向上することが明らかになった。
図12に、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」の試験結果を示す。図12に示すように、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」であれば、インスリンの存在に依存して、波長445nmにおける発光値に対する波長528nmにおける発光値が上がることが明らかになった。また、「Nluc−αCT−AS(GGGGS)3LE−L1−YPet」の場合には、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」の場合と比較して、同じインスリン濃度における発光値の値が低いこと(換言すれば、インスリンの検出感度が低いこと)が明らかになった。
図13に、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」の試験結果を示す。図13に示すように、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」の場合には、インスリンが高濃度存在しても、発光値が上がらないことが明らかになった。なお、「Nluc−L1−AS(SAGG)6SAGSGGLE−αCT−YPet」の場合も、「Nluc−L1−AS(GGGGS)3LE−αCT−YPet」と同様に、インスリンが高濃度存在しても、発光値が上がり難い傾向を示した(図示せず)。
<7.センサー細胞>
<7−1.センサー細胞の作製>
上述した「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet」発現させるためのプラスミドにおいて、YPet遺伝子の3’末端側に、PDGF(platelet-derived growth factor)レセプターの膜貫通領域(以下、TMR(Trans-membrane region)とも呼ぶ)をコードするDNAをインフレームにて挿入して、「Nluc−αCT−AS(SAGG)6SAGSGGLE−L1−YPet−TMR」(アミノ酸配列:配列番号23、DNA配列:配列番号24)を発現させるためのプラスミドを作製した。上記プラスミドを制限酵素によって直鎖状にした後、当該プラスミドを常法にしたがって精製した。
Hepa1−6細胞を、24wellディッシュに、5×105cells/wellの濃度にて播種した。
(i)直鎖状にされたプラスミド500ngとDMEM培地とを混合した溶液(合計25μL)、および、(ii)Lipofectamine LTX(Lifetechnologies)2μLとDMEM培地とを混合した溶液(合計25μL)、を作製した。
上述した(i)および(ii)の溶液を混合し、当該混合溶液を室温(25℃)で20分間インキュベートした。
Hepa1−6細胞をPBSで2回洗浄した後、当該Hepa1−6細胞に、DMEM培地450μL、および、上記混合溶液50μLを添加した。続いて、当該Hepa1−6細胞を、37℃で48時間培養した。
その後、Hepa1−6細胞を、FBS(10%)およびG418(1000μg/mL)を含むDMEM培地にて1週間以上培養し、安定的に形質転換されたHepa1−6細胞株を取得した。
<7−2.センサー細胞を用いたインスリンのイメージング>
ガラスベースディッシュ(マツナミ 35mmマルチウェルガラスボトムディッシュ、直径9.5mm、4well)に、1N NaOH溶液を100μL添加した。当該ガラスベースディッシュを、室温(25℃)で30分間インキュベートした後、PBSで3回洗浄することにより、ガラスベースディッシュの細胞接着面を親水性化した。次に、当該ガラスベースディッシュに、0.1%の濃度にてゼラチンType Bを含むPBSを100μL添加した後、当該ガラスベースディッシュを、37℃にて10分間インキュベートした。その後、ガラスベースディッシュをPBSで1回洗浄した。
常法により培養したMIN6細胞(インスリン分泌細胞)をPBSで洗浄した後、当該MIN6細胞を、マニュアルに従いCellTrackerTM Blue CMF2HC Dye を用いて染色した。センサー細胞、および、MIN6細胞の各々を、トリプシン処理によって培養皿から剥離し、各細胞を0.5×105cellsずつ混合した後(合計1×105cells/well)、全細胞を上述したガラスベースディッシュに播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。
グルコース(最終濃度0mM、または、25mM)を含むKREBS-Ringer buffer 100μLに、 Nano-Glo Luciferase Assay Substrate 1μLを添加してよく混合し、反応溶液を作製した。
一晩培養した後のセンサー細胞およびMIN6細胞の混合培養物をPBSで1回洗浄し、当該混合培養物に対して、上述した反応溶液を添加した。
当該混合培養物を直ちに蛍光顕微鏡にセットし、FITC用のフィルターセットを用いて蛍光観察することによりYPetを発現するセンサー細胞を同定し、DAPI用のフィルターセットを用いて蛍光観察することによりCellTrackerTM Blue CMF2HC Dyeで染色されたMIN6細胞を同定した(図14参照)。
次に、励起光を遮断し、DAPI用のフィルターを介して観察される画像(Nluc画像)と、FITC用のフィルターを介して観察される画像(YPet画像)とを、10秒ごとに1時間、40倍の対物レンズを用いて連続撮影した。取得した各画像からバックグラウンドを取り除いた後、各時間の各ピクセルについて「YPet画像におけるシグナル強度/Nluc画像におけるシグナル強度」を算出した。
上述した「YPet画像におけるシグナル強度/Nluc画像におけるシグナル強度」を、HC Image(浜松ホトニクス)を用いてカラーイメージ化した(図15、および、図16参照)。
さらに、細胞が含まれるように領域を設定し、その領域内に含まれるピクセルのシグナル強度の平均値の経時変化をプロットした(図17参照)。
図15〜図17から明らかなように、センサー細胞は、MIN6細胞によって分泌されるインスリンを検出することができた。
当該センサー細胞を用いれば、個々の細胞によるインスリンの分泌を検出することができる。例えば、1つの細胞をセンサー細胞によって取り囲んだ状態にてセンサー細胞の挙動を観察すれば、当該1つの細胞によるインスリンの分泌を検出することができる。
当該センサー細胞を用いれば、目的の細胞とセンサー細胞とを共培養することによって、目的の細胞によるインスリンの分泌を、容易に検出することができる。
当該センサー細胞を用いれば、目的の細胞とセンサー細胞とを三次元共培養することによって、より生体に近い環境下におけるインスリンの分泌を検出することができる。
当該センサー細胞を用いれば、センサー細胞を体内に含むキメラマウスを作製することができる。そして、当該キメラマウスを用いれば、より生体に近い環境下におけるインスリンの分泌を検出することができる。