以下、添付の図面を参照して、本実施形態にかかる印刷方法を適用したIDカード製造装置について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置により製造されたIDカードの一例を示す図である。本実施形態では、IDカード1は、各種情報を印刷可能な記録媒体の一例であり、例えば、カード、偽変造防止媒体、印刷物、または情報表示物等である。本実施形態では、IDカード1を記録媒体の一例としているが、各種情報を印刷可能な媒体であれば、これに限定するものではなく、例えば、パスポート、運転免許証、入館証、紙幣、有価証券、タグ、CD(Compact Disc)、またはDVD(Digital Versatile Disk)等であっても良い。
本実施形態では、IDカード1には、図1に示すように、基材2上に、カラー印刷された顔画像11や文字情報12等の個人情報が印刷されている。本実施形態では、IDカード1の基材2には、紙やポリカーボネート等の材料を用いるが、個人情報等の画像を印刷可能な材料であれば、これに限定するものではない。また、IDカード1に印刷される画像は、基材2に直接に印刷しても良いし、若しくは、IDカード1を保護する透明なフィルムFに画像を印刷し、画像が印刷されたフィルムFを基材2に貼り付けても良い。
本実施形態では、単位面積当たりのドットの面積によって、印刷する画像の濃度を変化させる印刷方法(例えば、2階調で画像の濃淡を表現するディザ法)によって、基材2に対して画像を印刷する。また、本実施形態では、基材2には、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)それぞれのインクによってカラーの画像が印刷される。ただし、基材2に印刷される画像のうちCMYそれぞれのインクを重ねた色(第2黒色の一例)の画像は、視覚的に黒色として視認されるため、カーボンブラック等のブラック(K)のインクの色(第1黒色の一例)によって印刷する。
ここで、図2を用いて、CMYK各色の分光特性について説明する。図2は、第1の実施形態にかかる印刷方法で用いるCMYK各色の分光特性の一例を示す図である。図2に示すように、CMY各色は、750nm以上の近赤外線の帯域の波長の光に対して高い透過率を示している。これに対して、Kは、いずれの帯域の波長の光に対しても低い透過率を示している。言い換えると、Kは、いずれの帯域の波長の光に対しても吸収率が高いことが分かる。
したがって、IDカード1に印刷する画像が含む黒画像のうちIDカード1の偽変造を防止するための文字である偽変造防止文字(第1文字の一例)を埋め込む第1領域以外の第2領域をKのインクで印刷し、CMYのインクを重ねた黒色(近赤外線の帯域の透過率がKと異なる黒色)で偽変造防止文字を印刷することにより、肉眼では視認することができないが、近赤外線の帯域の光を検出可能な検出装置を用いることによって、黒画像に埋め込まれた偽変造防止文字を検出することができる。
次に、図3を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置について説明する。図3は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置の概略構成の一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、IDカード製造装置30は、画像処理部31と、インクジェット印刷部32と、搬送部34と、を有する。
画像処理部31は、IDカード製造装置30における基材2に対する画像の印刷処理を制御する制御部として機能する。インクジェット印刷部32は、基材2に対して画像を印刷する印刷部として機能する。搬送部34は、基材2を、インクジェット印刷部32によって画像を印刷可能な位置に搬送する。
画像処理部31には、基材2に印刷する画像である原画像(第1画像の一例)のデータ(以下、画像データと言う)を生成する。画像処理部31は、画像データを、所定の比率(以下、分割比率と言う)に従って、Kのインクで印刷するモノクロ画像FM(第1黒画像の一例)のデータ(以下、モノクロ画像データと言う)と、CMYのインクで印刷するカラー画像FC(第2画像の一例)のデータ(以下、カラー画像データと言う)とに分割する。
具体的には、画像処理部31は、画像データを、例えば誤差拡散法により、C、M、Y、およびKの各色成分に色分解する。例えば、画像処理部31は、原画像の画素(ドット)毎にC、M、及びY成分の値を算出する。画像処理部31は、当該C、M、およびY成分の最低値をK成分の数値とする。さらに、画像処理部31は、C、M、およびY成分の数値からK成分の数値を減算し、C、M、Y成分の数値とする。このように、画像処理部31は、ドット毎のC、M、Y、及びK成分の数値を算出する。
画像処理部31は、誤差拡散法と異なる他の方法により画像データをCMYKの各色成分に分解しても良い。また、画像処理部31は、画像データを、他の色成分(例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、白色、および蛍光色)を含む複数の色成分に分解しても良い。
画像処理部31は、原画像のK成分から、モノクロ画像データを生成する。さらに、画像処理部31は、原画像のC、M、およびY成分から、カラー画像データを生成する。
モノクロ画像FMとカラー画像FCとは、合成される(組み合わされる)ことで、元の原画像を基材2に印刷する。なお、画像処理部31は、画像データを、色毎に三つ以上のデータに分割しても良いし、位置(座標)毎に分割しても良い。
図4は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像データの分割処理の一例を説明するための図である。例えば、画像処理部31は、図4に示すように、原画像に含まれる顔画像11を、CMY成分が10%のカラー画像データと、K成分が90%のモノクロ画像データとに分割する。本実施形態では、画像処理部31は、入力された画像データを、CMY成分が10%のカラー画像データとK成分が90%のモノクロ画像データとに分割しているが、CMY成分とK成分とが合わせて100%になるように、原画像を、カラー画像データとモノクロ画像データとに分割するものであれば、これに限定するものではない。
図3に戻り、インクジェット印刷部32は、第1記憶部32aと、インクジェットヘッド32bとを有する。第1記憶部32aは、画像処理部31から入力されるカラー画像データおよびモノクロ画像データを記憶する。インクジェットヘッド32bは、基材2に対して、インクジェット方式によって、原画像を印刷する。
具体的には、インクジェットヘッド32bは、基材2に対して、CMYのインクを吐出する。これにより、インクジェットヘッド32bは、基材2に、CMY成分のドットを形成することによって、カラー画像データに基づくカラー画像FCを形成する。続いて、インクジェットヘッド32bは、基材2に対して、Kのインクを吐出する。これにより、インクジェットヘッド32bは、基材2に、K成分のドットを形成することによって、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FMを形成する。
本実施形態では、インクジェット印刷部32は、基材2に対して、カラー画像FCとモノクロ画像FMを印刷しているが、これに限定するものではなく、カラー画像FCとモノクロ画像FMをフィルムFに対して印刷しても良いし、カラー画像FCとモノクロ画像FMのいずれか一方を基材2に印刷しかつ他方をフィルムFに印刷しても良い。
搬送部34は、原画像が印刷される前の基材2を、インクジェットヘッド32bの直下に搬送する。本実施形態では、搬送部34は、例えば、ローラやベルト等によって、基材2を、インクジェットヘッド32bの直下に搬送する。
その後、搬送部34は、画像が印刷された基材2を、所定の位置に搬送する。そして、搬送部34は、当該所定の位置で、基材2とフィルムFとが重ね合わされてIDカード1が製造されると、当該IDカード1をIDカード製造装置30の外に搬出して、当該IDカード1を発行する。
本実施形態にかかるIDカード製造装置30では、原画像から分割したモノクロ画像FMに対して偽変造防止文字を埋め込むことができる。具体的には、インクジェット印刷部32は、モノクロ画像FMのうち偽変造防止文字を埋め込む第1領域以外の第2領域をKで印刷し、偽変造防止文字をCMYのインクを重ねた黒色で印刷する。これにより、肉眼では不可視な状態で偽変造防止文字を原画像に埋め込むことができるので、個人情報に偽変造防止文字を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の偽変造に対する耐性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、画像処理部31は、偽変造防止文字を印刷するモノクロ画像FMの濃度を検出し、検出した濃度に応じて、偽変造防止文字のサイズを決定する。そして、インクジェット印刷部32は、画像処理部31により決定されたサイズの偽変造防止文字を、CMYのインクを重ねた黒色で印刷する。これにより、モノクロ画像FMにおいて濃度が低い領域に小さいサイズの偽変造防止文字が印刷されて、当該偽変造防止文字が認識することができなくなったり、モノクロ画像FMにおいて濃度が高い領域に大きいサイズの偽変造防止文字に印刷されて、当該偽変造防止文字が容易に認識可能となったりすることを防止できる。すなわち、いずれの濃度のモノクロ画像FMに対しても偽変造防止文字を印刷することができるので、顔画像11のような個人によって濃度が異なるモノクロ画像FMに対しても、偽変造防止文字を印刷することができる。
次に、図5を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置30における偽変造防止文字のサイズの決定処理について説明する。図5は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置による偽変造防止文字のサイズの決定処理の一例を説明するための図である。
図5(a)は、モノクロ画像FMの低濃度領域R1、中濃度領域R2および高濃度領域R3のそれぞれに、白抜き文字によって偽変造防止文字を埋め込んだ例である。図5(b)は、低濃度領域R1および高濃度領域R3に白抜き文字により埋め込んだ偽変造防止文字の拡大図である。図5(c)は、中濃度領域R2に白抜き文字により埋め込んだ偽変造防止文字の拡大図である。
低濃度領域R1は、図5(a)および図5(b)に示すように、単位面積当たりのドットの面積(モノクロ画像FMの濃度)が、第1濃度N1以下の領域である。高濃度領域R3は、図5(a)および図5(b)に示すように、単位面積当たりのドットの面積が、第1濃度N1より高い第3濃度N3以上の領域である。中濃度領域R2は、図5(a)および図5(c)に示すように、単位面積当たりのドットの面積が、第1濃度N1より高くかつ第3濃度N3より低い第2濃度N2の領域である。
図5(b)に示すように、低濃度領域R1に白抜き文字を埋め込む場合、白抜き文字のサイズが小さいと、白抜き文字が埋め込まれる第1領域以外の第2領域に白抜き文字が埋もれてしまい、白抜き文字を認識することができない。一方、図5(b)および図5(c)に示すように、一般的に、濃度が高い中濃度領域R2または高濃度領域R3は、モノクロ画像FM全体において大きい領域を占めていないため、大きいサイズの白抜き文字を埋め込むことができない。また、濃度の高い領域に大きいサイズの白抜き文字を埋め込むと、白抜き文字が容易に認識されてしまう。
そこで、本実施形態では、画像処理部31は、モノクロ画像FMにおいて偽変造防止文字を埋め込む所定領域の画像濃度Dを検出する。そして、画像処理部31は、検出した画像濃度Dが第1濃度N1以下である場合には、文字サイズS1を、偽変造防止文字のサイズに決定する。また、画像処理部31は、検出した画像濃度Dが第2濃度N2である場合には、文字サイズS1より小さい文字サイズS2を、偽変造防止文字のサイズに決定する。また、画像処理部31は、検出した画像濃度Dが第3濃度N3以上である場合には、文字サイズS2より小さい文字サイズS3を、偽変造防止文字の文字サイズに決定する。
これにより、モノクロ画像FMにおいて濃度が低い領域に小さいサイズの偽変造防止文字が印刷されて当該偽変造防止文字が認識できなくなったり、モノクロ画像FMにおいて濃度が高い領域に大きいサイズの偽変造防止文字が印刷されて当該偽変造防止文字が容易に認識されてしまったりすることを防止できるので、いずれの濃度のモノクロ画像FMに対しても、偽変造防止文字を印刷することができる。
図6は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置において偽変造防止文字のサイズの決定に用いる文字サイズ決定用テーブルの一例を示す図である。本実施形態では、IDカード製造装置30は、図6に示す文字サイズ決定用テーブル600を記憶する図示しない記憶部を有する。図6に示すように、文字サイズ決定用テーブル600は、モノクロ画像FM内の所定領域の画像濃度D(D≦N1、N1<D<N3、N3≦D)と、当該画像濃度Dのモノクロ画像FMに偽変造防止文字を埋め込む際の当該偽変造防止文字のサイズ(文字サイズS1,S2,S3)とを対応付けて記憶する。
画像処理部31は、文字サイズ決定用テーブル600(テーブルの一例)を参照して、偽変造防止文字のサイズを決定する。具体的には、画像処理部31は、所定領域の画像濃度Dとして第1濃度N1以下の濃度を検出した場合、文字サイズ決定用テーブル600において第1濃度N1以下の画像濃度Dと対応付けられた文字サイズS1を、偽変造防止文字のサイズに決定する。また、画像処理部31は、所定領域の画像濃度Dとして第1濃度N1より高くかつ第3濃度N3より低い画像濃度D(第2濃度N2)を検出した場合、文字サイズ決定用テーブル600において第1濃度N1より高くかつ第3濃度N3より低い画像濃度と対応付けられた文字サイズS2を、偽変造防止文字のサイズに決定する。また、画像処理部31は、所定領域の画像濃度Dとして第3濃度N3以上の濃度を検出した場合、文字サイズ決定用テーブル600において第3濃度N3以上の画像濃度Dと対応付けられた文字サイズS3を、偽変造防止文字のサイズに決定する。
また、本実施形態では、画像処理部31は、検出した画像濃度Dに応じて、3つの文字サイズS1,S2,S3のいずれかを、偽変造防止文字のサイズとして決定しているが、検出した画像濃度Dに応じて、2つ以上の文字サイズのいずれかを偽変造防止文字のサイズとして決定するものであれば、これに限定するものではない。
例えば、画像処理部31は、モノクロ画像FMが単位面積当たりのドットの面積により濃度が変化する画像である場合、偽変造防止文字の線幅d2が、所定領域におけるドット間の距離d1より大きくなるように、偽変造防止文字のサイズを決定する。具体的には、画像処理部31は、検出した所定領域の画像濃度Dに基づいて、当該モノクロ画像FMにおけるドット間の距離d1を算出する。そして、画像処理部31は、下記の式(1)に従って、偽変造防止文字の線幅d2が、算出した距離d1より大きくなるように、偽変造防止文字のサイズを決定する。
d2>d1×α(ここで、αは、1以上の整数)・・・(1)
インクジェット印刷部32は、画像処理部31によって偽変造防止文字のサイズが決定されると、所定領域において偽変造防止文字を印刷する第1領域以外の第2領域を、Kのインクが90%の黒色で印刷する。一方、インクジェット印刷部32は、所定領域内の第1領域(すなわち、白抜き文字の領域)を、CMYのインクが100%の黒色で印刷する。ここで、第1領域および第2領域それぞれの印刷に用いた黒色は、可視光線の帯域においては透過率がほぼ等しいため、第1領域と第2領域とは人間の視覚的には等しいモノクロ画像FMとして認識されるため、顔画像11のような個人情報に偽変造防止文字を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の偽変造に対する耐性を高めることができる。
その後、インクジェット印刷部32は、モノクロ画像FMが印刷された基材2に対して、CMYK成分のドットでカラー画像FCを形成することで、モノクロ画像FMとカラー画像FCとを合成した原画像を基材2に形成する。
本実施形態では、モノクロ画像FM内の所定領域に、予め設定された文字数の偽変造防止文字を埋め込むため、画像処理部31は、所定領域の画像濃度Dを検出し、当該検出した画像濃度Dに応じて、偽変造防止文字のサイズを決定している。しかしながら、モノクロ画像FM内に偽変造防止文字を埋め込む領域が予め設定されておらず、偽変造防止文字のサイズおよび数のみが予め設定されている場合、画像処理部31は、モノクロ画像FM内の複数の部分領域の画像濃度Dを検出する。そして、画像処理部31は、モノクロ画像FM内において、予め設定された偽変造防止文字のサイズおよび数に応じた画像濃度Dを有する部分領域を、偽変造防止文字を埋め込む領域に決定し、当該決定した領域に、偽変造防止文字を埋め込む。
または、モノクロ画像FM内において偽変造防止文字を埋め込む領域、偽変造防止文字の数、および偽変造防止文字のサイズのいずれもが設定されていない場合、画像処理部31は、モノクロ画像FM内の複数の部分領域の画像濃度Dに応じて、偽変造防止文字を埋め込む領域、偽変造防止文字のサイズ、および偽変造防止文字の数の全てを決定しても良い。
次に、図7を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置30による画像の印刷処理の流れについて説明する。図7は、第1の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像の印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
本実施形態では、画像処理部31は、ディザ法等を用いて、原画像を生成する(ステップS701)。次いで、画像処理部31は、生成した原画像に含まれる黒画像の比率(第1比率の一例)を検出する(ステップS702)。そして、画像処理部31は、検出した黒画像の比率に従って、所定の分割比率を変更する(ステップS703)。
例えば、原画像に含まれる顔画像11は個人情報であり、当該顔画像11内の黒画像の面積は顔画像11毎に異なるため、顔画像11における黒画像の比率が高くなるとは限らない。具体的には、顔画像11に含まれる髪の色が黒であれば、顔画像11における黒画像の比率は高くなるが、顔画像11に含まれる髪の色が黒以外の色である場合、顔画像11における黒画像の比率は低くなる。そこで、画像処理部31は、検出した黒画像の比率が所定値(例えば、50%)以下である場合、分割比率のK成分の割合を所定値分だけ高くすることで、原画像における黒画像の比率を高くすることができ、偽変造防止文字を埋め込み可能な領域を増やすことができる。
次いで、画像処理部31は、変更した分割比率に従って、原画像の画像データを、モノクロ画像データとカラー画像データとに分割する(ステップS704)。さらに、画像処理部31は、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FM内において、偽変造防止文字を埋め込む所定領域の画像濃度D(すなわち、モノクロ画像FM内の所定領域における、単位面積当りのドットの面積)を検出する(ステップS705)。そして、画像処理部31は、検出した画像濃度Dに従って、偽変造防止文字のサイズを決定する(ステップS706)。
インクジェット印刷部32は、所定領域において、決定したサイズの偽変造防止文字を印刷する第1領域に対して、Kによる印刷を実施せず、第1領域以外の第2領域に対して、Kのインクが90%の黒色で印刷する(ステップS707)。さらに、インクジェット印刷部32は、CMYのインクが100%の黒色で偽変造防止文字を印刷する(ステップS708)。
その後、インクジェット印刷部32は、モノクロ画像FMが印刷された基材2に対して、CMYのインクによるカラー画像FCの印刷(ステップS709)およびKのインクによるカラー画像FCの印刷(ステップS710)を実施することによって、モノクロ画像FMとカラー画像FCとを合成した原画像を基材2に形成する(ステップS711)。
このように、第1の実施形態にかかる印刷方法によれば、いずれの濃度のモノクロ画像FMに対しても偽変造防止文字を印刷することができるので、顔画像11のような個人によって濃度が異なるモノクロ画像FMに対しても、偽変造防止文字を印刷することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態は、モノクロ画像をレーザエングレービングによって印刷する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
本実施形態では、基材2に印刷される原画像のうちCMYのインクが重ねた色で印刷する画像は、視覚的に黒色として視認されるため、レーザエングレービング(LE)で印刷する。
ここで、図8を用いて、レーザエングレービングによって印刷した黒画像の反射率について説明する。図8は、レーザエングレービングによって印刷した黒画像の反射率の一例を示す図である。図8に示すように、レーザエングレービングによって印刷した黒画像の反射率は、750nm以上の近赤外線の帯域の波長の光に対しても低い反射率を示している。言い換えると、レーザエングレービングによって印刷した黒画像の吸収率は、Kのインクで印刷した黒画像と同様に、750nm以上の近赤外線の帯域の波長の光に対しても高い吸収率を示している。
したがって、IDカード1に印刷する画像が含む黒画像のうち、偽変造防止文字を埋め込む第1領域以外の第2領域をレーザエングレービングで印刷し、CMYのインクを重ねた黒色で偽変造防止文字を印刷することにより、肉眼では視認することができないが、近赤外線の帯域の光を検出可能な検出装置によって、黒画像に埋め込まれた偽変造防止文字を検出することができる。
次に、図9を用いて、本実施形態にかかる印刷方法を適用したIDカード製造装置について説明する。図9は、第2の実施形態にかかるIDカード製造装置の概略構成の一例を示す図である。図9に示すように、本実施形態では、IDカード製造装置90は、画像処理部91、インクジェット印刷部92と、レーザエングレービング部93と、搬送部94と、を有する。
画像処理部91は、モノクロ画像データを、インクジェット印刷部92およびレーザエングレービング部93に入力する。さらに、画像処理部91は、カラー画像データを、インクジェット印刷部92に入力する。
本実施形態でも、画像処理部91は、画像データが入力されると、当該画像データを所定の分割比率に従って、モノクロ画像データとカラー画像データとに分割する。図10は、第2の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像データの分割処理の一例を説明するための図である。例えば、画像処理部91は、図10に示すように、原画像に含まれる顔画像11を、CMY成分が10%のカラー画像データと、レーザエングレービングにより印刷する黒色成分が90%のモノクロ画像データとに分割する。
本実施形態では、画像処理部91は、画像データを、CMY成分が10%のカラー画像データと、レーザエングレービングにより印刷する黒色成分が90%のモノクロ画像データとに分割しているが、CMY成分とK成分とが合わせて100%になるように、原画像を、カラー画像データとモノクロ画像データとに分割するものであれば、これに限定するものではない。
図9に戻り、インクジェット印刷部92は、第1記憶部92aと、インクジェットヘッド92bとを有する。第1記憶部92aは、画像処理部91から入力されたカラー画像データおよびモノクロ画像データを記憶する。インクジェットヘッド92bは、第1記憶部92aに記憶されたカラー画像データを取得し、当該取得したカラー画像データに基づいて、基材2に対して、カラー画像FCを印刷する。また、インクジェットヘッド92bは、第1記憶部92aに記憶されたモノクロ画像データを取得し、当該取得したモノクロ画像データに基づいて、基材2に対して、CMYを重ねた色で偽変造防止文字を印刷する。
レーザエングレービング部93は、第2記憶部93aと、レーザ照射部93bとを有する。第2記憶部93aは、画像処理部91から入力されたモノクロ画像データを記憶する。レーザ照射部93bは、第2記憶部93aに記憶されたモノクロ画像データに基づき、レーザエングレービング方式で、基材2に対して、モノクロ画像FM内の偽変造防止文字を印刷する第1領域以外の第2領域に対して黒画像を記録する。
レーザ照射部93bは、例えば、波長が900nm〜1600nmのYAGレーザ又はダイオードレーザを用いる。レーザ照射部93bは、他のレーザを用いても良い。レーザ照射部93bは、例えば波長が1064nmであるレーザ光を、基材2の表面に向かって照射することによって、基材2に対してモノクロ画像FMを記録する。
本実施形態では、インクジェット印刷部92による印刷およびレーザエングレービング部93による記録を共に基材2に対して行っているが、基材2がポリカーボネート等の合成樹脂により構成される場合、インクジェット印刷部92による印刷を基材2に対して行うのが難しい。また、レーザエングレービング部93による記録は、フィルムFに対して行うことが難しい。そのため、IDカード製造装置90は、インクジェット印刷部92による印刷をフィルムFに対して行い、レーザエングレービング部93による記録は基材2に対して行っても良い。
搬送部94は、基材2を、インクジェットヘッド92bおよびレーザ照射部93bの直下に搬送する。すなわち、搬送部94は、基材2を、インクジェット印刷部92によって画像を印刷可能な位置およびレーザエングレービング部93によって画像を記録可能な位置に搬送する。
本実施形態にかかるIDカード製造装置90も、原画像から分割したモノクロ画像FMに対して偽変造防止文字を埋め込む。具体的には、レーザエングレービング部93は、モノクロ画像FMのうち偽変造防止文字を埋め込む第1領域以外の第2領域に黒画像を印刷する。また、インクジェット印刷部92は、偽変造防止文字をCMYを重ねた黒色で印刷する。これにより、肉眼では不可視な状態で偽変造防止文字を原画像に埋め込むことができるので、顔画像11のような個人情報に偽変造防止文字を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の偽変造に対する耐性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、画像処理部91は、偽変造防止文字を印刷するモノクロ画像FMの濃度を検出し、検出した濃度に応じて、偽変造防止文字のサイズを決定する。そして、インクジェット印刷部92は、画像処理部91により決定されたサイズの偽変造防止文字を、CMYのインクを重ねた黒色で印刷する。これにより、モノクロ画像FMにおいて濃度が低い領域に小さいサイズの偽変造防止文字が印刷されて、当該偽変造防止文字が認識することができなくなったり、モノクロ画像FMにおいて濃度が高い領域に大きいサイズの偽変造防止文字に印刷されて、当該偽変造防止文字が容易に認識可能となったりすることを防止できる。すなわち、いずれの濃度のモノクロ画像FMに対しても偽変造防止文字を印刷することができるので、顔画像11のような個人によって濃度が異なるモノクロ画像FMに対しても、偽変造防止文字を印刷することができる。
次に、図11を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置90による画像の印刷処理の流れについて説明する。図11は、第2の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像の印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
レーザエングレービング部93は、決定したサイズの偽変造防止文字を印刷する第1領域に対して、レーザエングレービングによる印刷を実施せず、第2領域に対して、レーザエングレービングによって黒色が90%の印刷を実施する(ステップS1101)。さらに、インクジェット印刷部92は、CMYのインクが100%の黒色で偽変造防止文字を印刷する(ステップS1102)。
その後、インクジェット印刷部92は、モノクロ画像FMが印刷された基材2に対して、CMYのインクによるカラー画像FCの印刷を実施する(ステップS709)。さらに、レーザエングレービング部93は、モノクロ画像FMが印刷された基材2に対して、レーザエングレービングによるカラー画像FCの印刷を実施する(ステップS1103)。これにより、インクジェット印刷部92およびレーザエングレービング部93は、モノクロ画像FMとカラー画像FCとを合成した原画像を基材2に形成する(ステップS1104)。
このように、第2の実施形態にかかる印刷方法によれば、第1の実施形態と同様と同様の作用効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
本実施形態は、第1,2の実施形態にかかるIDカード製造装置により製造されたIDカードから偽変造防止文字を検出する検出装置の例である。
図12は、第3の実施形態にかかる検出装置の機能構成の一例を示す図である。図12に示すように、本実施形態にかかる検出装置は、照明部1201と、フィルタ1202と、レンズ1203と、センサ1204と、信号処理部1205と、画像表示部1206と、判定部1207と、を有する。
照明部1201は、近赤外線の帯域の波長の光をIDカード1に印刷された偽変造防止文字Mに対して照射する。例えば、照明部1201は、可視光の帯域から近赤外線の帯域までの波長の光を照射可能なハロゲン照明や白色灯、近赤外線の帯域の波長の光を照射可能なLED(Light Emitting Diode)照明など、近赤外線の帯域の波長の光を照射可能な光源であれば、これに限定するものではない。
IDカード1に印刷された偽変造防止文字Mは、近赤外線の帯域の波長を透過させる黒色(CMYのインクを重ねた色)により印刷されている。そのため、照明部1201から偽変造防止文字Mに照射された光は、偽変造防止文字Mを透過して、基材2で反射する。一方、IDカード1に印刷された黒画像のうち偽変造防止文字M以外の部分は、近赤外線の帯域の波長の光を吸収するK成分またはレーザエングレービングによって印刷されている。そのため、照射部1201から偽変造防止文字M以外の黒画像に照射された光は、当該黒画像に吸収されて反射率が低くなる。
フィルタ1202は、IDカード1で反射した光のうち、近赤外線の帯域の波長より短い波長(例えば、可視光線の帯域の波長)をカットする。これにより、近赤外線の帯域の波長の光のみがフィルタ1202を通過して、レンズ1203を介して、センサ1204により検出される。ここで、センサ1204は、近赤外線の帯域の波長の光を検出可能なCCDカメラCMOSカメラ等によって構成される。
センサ1204により検出された光は、画像信号に変換されて信号処理部1205に送られる。信号処理部1205は、センサ1204から送られた画像信号を、画像表示部1206および判定部1207に出力する。
画像表示部1206は、信号処理部1205から入力された画像信号に基づいて、画像を表示する。画像表示部1206は、IDカード1に偽変造防止文字Mが印刷されている場合、図5(a)に示す偽変造防止文字Mの画像を表示する。よって、検出装置のユーザは、画像表示部1206に表示された画像を確認して、IDカード1の真偽を判定することができる。また、判定部1207は、信号処理部1205から入力された画像信号に基づいて、IDカード1に印刷された画像を特定し、当該特定した画像から、IDカード1の真偽を判定する。
このように、第3の実施形態にかかる検出装置によれば、近赤外線の帯域の波長の光を検出可能な検出装置を用いることによって、黒画像に埋め込まれた偽変造防止文字Mを検出することができる。
(第4の実施形態)
本実施形態は、印刷対象のモノクロ画像の少なくとも一部の領域を、Kのインクの黒色を用いて、当該領域に予め設定された濃度以下でありかつ偽変造防止情報に対応する濃度で印刷する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
本実施形態においても、IDカード製造装置30は、原画像から分割したモノクロ画像FMに対して偽変造防止情報を埋め込むことができる。具体的には、インクジェット印刷部32は、モノクロ画像FMの少なくとも一部の領域である埋め込み領域(第1領域の一例)を、近赤外線帯域における光の透過率が第1透過率の黒色(本実施形態では、Kのインクの黒色)を用いかつ埋め込み濃度で印刷する。ここで、埋め込み濃度は、埋め込み領域に予め設定された濃度である所定濃度(第1濃度の一例)以下でありかつ偽変造防止情報に対応する濃度である。
さらに、インクジェット印刷部32は、埋め込み濃度が所定濃度より低い場合、埋め込み領域の濃度が所定濃度になるように、CMYのインクを重ねた黒色を用いて埋め込み領域を印刷する。本実施形態では、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域を、CMYのインクを重ねた黒色で印刷しているが、近赤外線帯域における光の透過率が、Kのインクの黒色の透過率とは異なる透過率の黒色で印刷するものであれば良い。これにより、肉眼で不可視な状態で偽変造防止情報を原画像に埋め込むことができるので、顔画像11や文字情報12等の個人情報に偽変造防止情報を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の悪用に対する耐性を高めることができる。
次に、図13を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置30における顔画像11の印刷処理について説明する。図13は、第4の実施形態にかかるIDカード製造装置による顔画像の印刷処理の一例を説明するための図である。
図13(a)は、モノクロ画像FM内の顔画像11が含む複数の埋め込み領域r1,r2,r3,r4それぞれを、Kのインクの黒色を用いて、異なる埋め込み濃度dで印刷した例である。図13(b)は、埋め込み領域r1,r2,r3,r4の拡大図である。本実施形態では、画像処理部31は、顔画像11の背景画像の一部の領域を、埋め込み領域r1,r2,r3,r4(以下の説明では、埋め込み領域r1,r2,r3,r4を区別する必要が無い場合には、埋め込み領域rと記載する)に決定する。
本実施形態では、画像処理部31は、4つの埋め込み領域r1,r2,r3,r4を、埋め込み領域に決定しているが、モノクロ画像FMに埋め込む偽変造防止情報に応じて、埋め込み領域rの数を変更する。例えば、画像処理部31は、モノクロ画像FMに埋め込む偽変造防止情報が1つの埋め込み濃度dと対応している場合には、モノクロ画像FM内の1つの領域を埋め込み領域rに決定する。
本実施形態では、画像処理部31は、モノクロ画像FMの所定濃度を100%とし、埋め込み濃度dを、偽変造防止情報に応じて、0〜100%の範囲で変更する。これにより、埋め込み領域rに対して、Kのインクの黒色で印刷された黒画像の濃度(すなわち、埋め込み濃度d)が、モノクロ画像FMに埋め込まれた偽変造防止情報を表す情報となる。
図14は、第4の実施形態にかかるIDカード製造装置においてモノクロ画像に埋め込まれる偽変造防止情報と当該偽変造防止情報を表す埋め込み濃度との関係の一例を示すテーブルである。図14に示すように、本実施形態では、画像処理部31は、偽変造防止情報の一例であるコードと、当該コードを表す濃度とを対応付ける埋め込み濃度テーブルTを記憶している。画像処理部31は、モノクロ画像FMに埋め込むコードと対応付けられた濃度を、埋め込み濃度dに設定する。そして、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて、画像処理部31により設定された埋め込み濃度dで印刷する。
例えば、画像処理部31は、埋め込み領域r1に対してコード:「2」を埋め込む場合、埋め込み濃度テーブルTにおいて、コード:「2」と対応付けられた濃度:66.6%を、埋め込み濃度dに設定する。また、画像処理部31は、埋め込み領域r2に対してコード:「0」を埋め込む場合、埋め込みテーブルTにおいて、コード:「0」と対応付けられた濃度:0%を、埋め込み濃度dに設定する。また、画像処理部31は、埋め込み領域rに対してコード:「1」を埋め込む場合、埋め込みテーブルTにおいて、コード:「1」と対応付けられた濃度:33.3%を、埋め込み濃度dに設定する。また、画像処理部31は、埋め込み領域rに対してコード:「3」を埋め込む場合、埋め込みテーブルTにおいて、コード:「3」と対応付けられた濃度:100%を、埋め込み濃度dに設定する。
そして、インクジェット印刷部32は、図13(b)に示すように、埋め込み領域r1を、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度d:66.6%で印刷する。また、インクジェット印刷部32は、図13(b)に示すように、埋め込み領域r2を、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度d:0%で印刷する。また、インクジェット印刷部32は、図13(b)に示すように、埋め込み領域r3を、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度d:33.3%で印刷する。また、インクジェット印刷部32は、図13(b)に示すように、埋め込み領域r4を、埋め込み濃度d;100%で印刷する。これにより、埋め込み領域r1,r2,r3,r4に対して、「2013」という偽変造防止情報を埋め込むことができる。
本実施形態では、画像処理部31は、4階調の濃度のうち、モノクロ画像FMに埋め込むコードに応じた濃度を、埋め込み濃度dとして設定しているが、4階調以下の濃度または4階調以上の濃度のいずれかを埋め込み濃度dとして設定することも可能である。例えば、画像処理部31は、モノクロ画像FMに埋め込むコードが10種類ある場合には、10階調の濃度のうち、コードを表す濃度を埋め込み濃度dに設定する。また、画像処理部31は、モノクロ画像FMに埋め込むコードが1種類である場合には、1階調の濃度を埋め込み濃度dに設定する。
また、本実施形態では、画像処理部31は、図13に示すように、矩形状の領域を、埋め込み領域rに決定しているが、モノクロ画像FM内の少なくとも一部の領域を埋め込み領域rに決定するものであれば、これに限定するものではない。例えば、画像処理部31は、モノクロ画像FM内において、文字や数字等のキャラクターコードの形状の領域を、埋め込み領域rに決定しても良い。画像処理部31は、文字や数字の領域を埋め込み領域rとし、当該埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて、0%以上の埋め込み濃度dで印刷する。これにより、文字や数字等の埋め込み領域rの形状自体も、モノクロ画像FMに埋め込まれた偽変造防止情報を表す情報とすることができるので、埋め込み濃度dおよび埋め込み領域rの形状自体によって、より多くの情報を偽変造防止情報としてモノクロ画像FMに埋め込むことができる。
また、本実施形態では、画像処理部31は、モノクロ画像FMにおいて濃度が広範囲に渡って均一かつ濃度ができるだけ濃い領域を、埋め込み領域rとすることが好ましい。例えば、画像処理部31は、モノクロ画像FMにおいて濃度が薄い領域を埋め込み領域rとした場合、原画像をCMY成分が0%のカラー画像データとK成分が100%のモノクロ画像データとに分割したとしても、埋め込み領域rの元々の濃度(所定濃度)が低いため、K成分のモノクロ画像FMにおける埋め込み領域rの所定濃度が0%に近くなり、埋め込み領域rを印刷する際の濃度が確保できなくなる。よって、画像処理部31は、パスポートや運転免許証等のIDカード1に対して、顔画像11等の原画像を印刷する場合、顔画像11の背景画像などK成分を含む領域を埋め込み領域rとするのが好ましい。顔画像11の背景画像には、ブルーやグレーなどのK成分を含むダークトーンの画像が用いられることが多く、Kのインクの黒色によって、埋め込み領域rを印刷する際の濃度を確保し易い。
また、本実施形態では、インクジェット印刷部32は、モノクロ画像FM内において埋め込み領域rとは異なる領域であるリファレンス領域rr(第2領域の一例)を、Kのインクの黒色を用い、かつ埋め込み濃度dの基準となる基準濃度で印刷する。
図15は、第4の実施形態にかかるIDカード製造装置によるリファレンス領域の印刷処理の一例を説明するための図である。図15(a)は、埋め込み濃度dの上限の濃度および下限の濃度でリファレンス領域rrを印刷した例である。図15(b)は、埋め込み濃度dの上限の濃度および下限の濃度それぞれで印刷したリファレンス領域rrの拡大図である。図15(a)に示すように、本実施形態では、画像処理部31は、モノクロ画像FMにおいて、顔画像11の背景画像の一部の領域であって、埋め込み領域rとは異なる領域を、リファレンス領域rrに決定する。
次に、画像処理部31は、埋め込み濃度dの上限の濃度(埋め込み濃度d:100%)および下限の濃度(埋め込み濃度d:0%)、または埋め込み濃度dとなる全ての濃度を、基準濃度として選択する。インクジェット印刷部32は、リファレンス領域rrを、Kのインクの黒色を用い、かつ選択された基準濃度で印刷する。例えば、埋め込み濃度dの上限の濃度および下限の濃度が基準濃度として選択された場合、インクジェット印刷部32は、図15(b)に示すように、リファレンス領域rrを分割した2つの分割領域のうち一方の分割領域rr1を、Kのインクの黒色で、かつ埋め込み濃度dの下限の濃度で印刷する。そして、インクジェット印刷部32は、図15(b)に示すように、他方の分割領域rr2を、Kのインクの黒色で、かつ埋め込み濃度dの上限の濃度で印刷する。
また、本実施形態では、インクジェット印刷部32は、埋め込み濃度dがモノクロ画像FM内の埋め込み領域rの所定濃度より低い場合、埋め込み領域rの濃度がモノクロ画像FMの所定濃度になるように、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、埋め込み領域rを印刷する。例えば、図4に示すように、顔画像11が、CMY成分が10%のカラー画像データとK成分が90%のモノクロ画像データとに分割され、かつ埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度d:100%で印刷する場合、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域rに対して、CMYのインクを重ねた黒色を用いた印刷を行わない。
一方、埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度d:50%で印刷する場合、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域rを、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、モノクロ画像FMの所定濃度を基準として50%の濃度(以下、補完濃度と言う)で印刷する。また、埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて印刷を行わない場合(すなわち、Kのインクの黒色を用いた印刷の埋め込み濃度dが0%である場合)、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域rを、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、モノクロ画像FMの所定濃度を基準とする100%の補完濃度で印刷する。
次に、図16を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置30による画像の印刷処理の流れについて説明する。図16は、第4の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像の印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
本実施形態では、画像処理部31は、ディザ法等を用いて、原画像を生成する(ステップS1601)。次いで、画像処理部31は、予め設定された分割比率に従って、原画像の画像データを、モノクロ画像データとカラー画像データとに分割する(ステップS1602)。次に、画像処理部31は、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FM内において、顔画像11の背景画像の一部を埋め込み領域rに決定する。
さらに、画像処理部31は、原画像に埋め込む偽変造防止情報に基づいて、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み領域rに印刷する際の埋め込み濃度dを設定する(ステップS1603)。また、画像処理部31は、埋め込み濃度dがモノクロ画像FMの所定濃度より低い場合、埋め込み領域rの濃度がモノクロ画像FMの所定濃度となるように、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、埋め込み領域rを印刷する際の補完濃度を設定する(ステップS1604)。
その後、インクジェット印刷部32は、基材2に対して、CMYのインクを用いて、カラー画像データに基づくカラー画像FCの印刷を実施する(ステップS1605)。さらに、インクジェット印刷部32は、基材2に対して、Kのインクの黒色を用いて、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FMの印刷を実施する。
次に、インクジェット印刷部32は、基材2内に印刷するモノクロ画像FMのうち埋め込み領域rを、Kのインクの黒色を用いて、埋め込み濃度dで印刷する(ステップS1606)。さらに、埋め込み濃度dがモノクロ画像FMの所定濃度より低い場合、インクジェット印刷部32は、埋め込み領域rを、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、補完濃度で印刷する。
最後に、IDカード製造装置30は、カラー画像FCおよびモノクロ画像FMを、互いに異なる部材(基材1またはフィルムF)に印刷した場合には、基材1およびフィルムFを貼り付けて、カラー画像FCとモノクロ画像FMとを合成する(ステップS1607)。
このように、第4の実施形態にかかるIDカード製造装置30によれば、肉眼で不可視な状態で偽変造防止情報を原画像に埋め込むことができるので、顔画像11や文字情報12等の個人情報に偽変造防止情報を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の悪用に対する耐性を高めることができる。
(第5の実施形態)
本実施形態は、埋め込み領域を、レーザエングレービングによって、埋め込み濃度で印刷する例である。以下の説明では、第2,4の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
本実施形態では、IDカード製造装置90のレーザエングレービング部93は、モノクロ画像FMの埋め込み領域rを、レーザエングレービングによって、埋め込み濃度dで印刷する。これにより、第4の実施形態と同様に、肉眼で不可視な状態で偽変造防止情報を原画像に埋め込むことができるので、顔画像11や文字情報12等の個人情報に偽変造防止情報を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の悪用に対する耐性を高めることができる。
本実施形態では、画像処理部91は、第4の実施形態の画像処理部31と同様にして、埋め込み領域rの決定および埋め込み濃度dの設定を行う。そして、レーザエングレービング部93は、モノクロ画像FMのうち埋め込み領域rを除く領域を、レーザ照射部93bからレーザを照射して、モノクロ画像FMの所定濃度で印刷する。また、レーザエングレービング部93は、レーザ照射部93bからレーザを照射して、埋め込み領域rを埋め込み濃度dで印刷する。
また、本実施形態では、画像処理部91は、第4の実施形態の画像処理部31と同様にして、リファレンス領域rrの決定および基準濃度の選択を行う。そして、レーザエングレービング部93は、レーザ照射部93bからレーザを照射して、リファレンス領域rrを基準濃度で印刷する。
さらに、本実施形態では、インクジェット印刷部92は、第4の実施形態のインクジェット印刷部32と同様にして、埋め込み濃度dがモノクロ画像FMの所定濃度より低い場合、埋め込み領域rの濃度がモノクロ画像FMの所定濃度になるように、CMYのインクを重ねた黒色で、埋め込み領域rを印刷する。
次に、図17を用いて、本実施形態にかかるIDカード製造装置90による画像の印刷処理の流れについて説明する。図17は、第5の実施形態にかかるIDカード製造装置による画像の印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
本実施形態では、画像処理部91は、ディザ法等を用いて、原画像を生成する(ステップS1701)。次いで、画像処理部91は、予め設定された分割比率に従って、原画像の画像データを、モノクロ画像データとカラー画像データとに分割する(ステップS1702)。次に、画像処理部91は、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FM内において、顔画像11の背景画像の一部を埋め込み領域rに決定する。
さらに、画像処理部91は、原画像に埋め込む偽変造防止情報に基づいて、レーザエングレービングによって、決定した埋め込み領域rを印刷する際の埋め込み濃度dを設定する(ステップS1703)。また、画像処理部91は、埋め込み濃度dがモノクロ画像FMの所定濃度より低い場合、埋め込み領域rの濃度がモノクロ画像FMの所定濃度となるように、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、埋め込み領域rを印刷する際の補完濃度を設定する(ステップS1704)。
その後、インクジェット印刷部92は、基材2に対して、CMYのインクを用いて、カラー画像データに基づくカラー画像FCの印刷を実施する(ステップS1705)。さらに、インクジェット印刷部92は、基材2に対して、レーザエングレービングによって、モノクロ画像データに基づくモノクロ画像FMのうち埋め込み領域rを除く領域の印刷を実施する。
次に、レーザエングレービング部93は、基材2内にレーザを照射して、モノクロ画像FMのうち埋め込み領域rを、埋め込み濃度dで印刷する(ステップS1706)。さらに、埋め込み濃度dがモノクロ画像FMの所定濃度より低い場合、インクジェット印刷部92は、埋め込み領域rを、CMYのインクを重ねた黒色を用いて、補完濃度で印刷する。
最後に、IDカード製造装置90は、カラー画像FCおよびモノクロ画像FMを、互いに異なる部材(基材1またはフィルムF)に印刷した場合には、基材1およびフィルムFを貼り付けて、カラー画像FCとモノクロ画像FMを合成する(ステップS1707)。
このように、第5の実施形態にかかるIDカード製造装置90によれば、第4の実施形態と同様に、肉眼で不可視な状態で偽変造防止情報を原画像に埋め込むことができるので、顔画像11や文字情報12等の個人情報に偽変造防止情報を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の悪用に対する耐性を高めることができる。
(第6の実施形態)
本実施形態は、第4,5の実施形態にかかるIDカード製造装置により製造されたIDカードから偽変造防止情報を取得する検出装置の例である。以下の説明では、第3の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
本実施形態では、IDカード1に印刷された原画像のうち埋め込み領域rは、近赤外線の帯域の波長の光を吸収するK成分またはレーザエングレービングによって印刷されている。そのため、照射部1201から埋め込み領域rに照射された光は、埋め込み領域rによって吸収されて反射率が低くなり、かつK成分またはレーザエングレービングによる埋め込み領域rに対する印刷の濃度(埋め込み濃度d)によって反射率が変化する。
信号処理部1205は、センサ1204から送られた画像信号に基づいて、埋め込み領域rの濃度を特定し、当該特定した濃度に対応する偽変造防止情報を取得する。例えば、信号処理部1205は、図14に示す埋め込み濃度テーブルTを用いて、当該特定した濃度と対応付けられたコードを偽変造防止情報として取得する。
そして、画像表示部1206は、信号処理部1205によって取得された偽変造防止情報(例えば、コード)を表示する。これにより、検出装置のユーザは、画像表示部1206に表示された偽変造防止情報を確認して、IDカード1の真偽を判定することができる。また、判定部1207は、信号処理部1205によって取得された偽変造防止情報に基づいて、IDカード1の真偽を判定する。
このように、第6の実施形態にかかる検出装置によれば、近赤外線の帯域の波長の光を検出することで、モノクロ画像FMに埋め込まれた偽変造防止情報を検出することができる。
以上説明したとおり、第1から第3の実施形態によれば、いずれの濃度のモノクロ画像FMに対しても偽変造防止文字を印刷することができるので、個人によって濃度が異なるモノクロ画像FMに対しても、偽変造防止文字を印刷することができる。また、第4から第6の実施形態によれば、個人情報に偽変造防止情報を埋め込む場合に、個人情報の画質を悪化させることなく、IDカード1の悪用に対する耐性を高めることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。