JP6523755B2 - コーティング用組成物 - Google Patents

コーティング用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6523755B2
JP6523755B2 JP2015078324A JP2015078324A JP6523755B2 JP 6523755 B2 JP6523755 B2 JP 6523755B2 JP 2015078324 A JP2015078324 A JP 2015078324A JP 2015078324 A JP2015078324 A JP 2015078324A JP 6523755 B2 JP6523755 B2 JP 6523755B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
hydrophobin
antifreeze
hot water
polysaccharide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015078324A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016199614A (ja
Inventor
秀久 河原
秀久 河原
芳栄 小出
芳栄 小出
克彰 守田
克彰 守田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kansai University
ICHIEI CO Ltd
Original Assignee
Kansai University
ICHIEI CO Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kansai University, ICHIEI CO Ltd filed Critical Kansai University
Priority to JP2015078324A priority Critical patent/JP6523755B2/ja
Publication of JP2016199614A publication Critical patent/JP2016199614A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6523755B2 publication Critical patent/JP6523755B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)
  • Details Of Aerials (AREA)

Description

本発明は、コーティング用組成物、コーティング方法、コーティングされた被検物等に関する。本発明のコーティングにより、コーティング表面への氷付着力を低下させることができる。
航空機、アンテナ、電線、電車等、比較的低温化で使用され得る物は、表面への氷付着を防止するためにコーティング処理されることがある。従来は、通常、撥水性材料でコーティングし、且つコーティング面を凸凹構造として一定の表面粗さを作り出すことにより、氷又は水とコーティング表面との接触面積を小さくし、これにより氷付着力を低下させていた(非特許文献1〜5)。
しかしながら、凸凹構造表面に対して垂直方向に風等で圧力がかかると、水が凸凹構造に入り込んでしまう。この状態で氷が形成されると、その氷はアンカー効果により強力に表面に付着することとなる。また、凸凹構造は、コーティング表面を脆くしてしまい、コーティング効果の持続性を低下させてしまうという問題もあった。このため、表面への氷付着力を低減できる新たなコーティング技術の開発が求められている。
一方、不凍多糖は氷結晶の成長抑制機能を有する天然の多糖類であり、エノキタケ等の真菌の細胞壁を構成する多糖類から見出された(特許文献1)。不凍多糖は、この機能に基づいて、食品の凍結保存による品質劣化を防止するために利用されている。また、不凍多糖は、耐熱性、耐酸性に優れていることから、冷凍フライ、冷凍から揚げなどの品質改良剤としても利用することができる。
国際公開第2012/026339号 特表2008−529484号公報 特表2009−511689号公報
"A New Surface Coating for Prevention of Icing on Airfoils", S. Kimura, A. Sakabe, SAE International Technical Paper 2007-01-3315, 2007. "Hydrophobic Coating Study for Anti-icing Aircraft", Morita, K., Okamoto, K., SAE International Technical Paper 2011-38-0010, 2011. "着雪氷防止技術に関する研究(第1報)", 吉田光則, 北海道立工業試験場報告No.292, 1993. "Capillarity and Wetting Phenomena", Pierre-Gilles de Gennes, Francoise Brochard-Wyart, David Quere, Springer "Characterizations of Functions of Biological Materials Having Controlling-Ability Against Ice Crystal", H, Kawahara, Advanced Topics on Crystal Growth, Chapter 5, INTECH open science, 2013.
本発明は、表面への氷付着力を低減できるコーティング技術を提供することを課題とする。さらには、凸凹構造に依らなくとも表面への氷付着力を低減できるコーティング技術を提供することも課題とする。
本発明者等は上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、不凍多糖をコーティングすることによって表面への氷付着力を低減できることを見出した。また、この効果は、コーティング表面の凸凹構造とは関係なく発揮される効果であることも見出した。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1.不凍多糖を含有する、コーティング用組成物.
項2.さらにハイドロフォビンを含有する、項1に記載の組成物.
項3.前記不凍多糖が真菌由来の不凍多糖精製物である、項1又は2に記載の組成物.
項4.溶媒を含む液状組成物であって、該溶媒のSnyder極性パラメータが2.5〜5.5である、項1〜3のいずれかに記載の組成物.
項5.前記溶媒が、クロロメタン、ジクロロメタン、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、n−プロパノール、クロロホルム、エタノール、及び酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、項4に記載の組成物.
項6.さらにバインダーを含有する、項1〜5のいずれかに記載の組成物.
項7.前記バインダーが湿気硬化性バインダーである、項6に記載の組成物.
項8.項1〜7のいずれかに記載の組成物と、被検物の表面の一部又は全部とを接触させることを含む、コーティング方法.
項9.項1〜7のいずれかに記載の組成物を用いて表面の一部又は全部がコーティング処理された、被検物.
本発明のコーティング技術によれば、表面への氷付着力を低減することができる。これにより、表面に付着した水が凍ることや降雪等により氷が付着しても、風等によってより剥離し易くなり、また付着した氷の除去作業も容易になる。
本発明のコーティング技術によれば、コーティング表面に凸凹構造を形成しなくとも、
氷付着力を低減することができる。このため、コーティング表面を凸凹構造とした場合の問題、すなわち氷がアンカー効果により強力に表面に付着し得るという問題や、コーティング表面が脆くなってしまうという問題を解消することが可能である。
また、不凍多糖は天然の多糖類であることから、コーティング膜が剥離等して自然環境中に拡散しても、自然環境に対する悪影響は低いと考えられる。
氷付着力の測定試験(実施例3)に使用した荷重装置、及びこれにセットされた、氷が付着した状態のコーティング板の模式図を示す。 氷付着力の測定試験結果を示す。上段は、凍結温度が−4℃の場合の結果を示し、減断は、凍結温度が−8℃の場合の結果を示す。縦軸は、氷が剥離した際の荷重圧力(=氷付着力)を示す。
1.コーティング用組成物
本発明は、不凍多糖を含有する、コーティング用組成物(本明細書において、「本発明のコーティング用組成物」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
不凍多糖は、氷結晶の成長抑制機能を有する天然の多糖類であり、エノキタケ等の真菌の細胞壁を構成する多糖類から見出された成分である(特許文献1)。なお、本明細書において、多糖類とは、通常、10個以上の単糖がグリコシド結合により直鎖状または分枝鎖状に重合したものをいう。
不凍多糖は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラクトース、マンノース、キシロース、グルコース、及びラムノースからなる群より選択される少なくとも1種の単糖を含む多糖類、好ましくは2種以上の単糖を含む多糖類、より好ましくはキシロース及びマンノースを含む多糖類、さらに好ましくはキシロマンナンであることができる。
キシロマンナンは、α−1,3−マンノースで構成されるマンナン主鎖に、側鎖として1分子ずつのキシロースが1,4−結合を介して結合したヘテロ多糖類の総称である。ただし、キシロマンナンは、マンノースとキシロースのみから構成されるものに限られず、キシロース以外に他の糖を側鎖として有してもよい。
キシロマンナンを構成するマンノースとキシロースの構成比は特に制限されないが、キシロース1モルに対して、例えばマンノース1.5〜2.5モル、好ましくは1.7モル〜2.3モル、より好ましくは1.9モル〜2.1モル、さらに好ましくは約2モルであることができる。
不凍多糖の分子量は、特に限定されるものではないが、ゲル濾過クロマトグラフィーにて測定した平均分子量で、例えば100,000〜1,000,000であることができる。当該平均分子量の下限は、好ましくは150,000、より好ましくは200,000、さらに好ましくは240,000、よりさらに好ましくは280,000であることができる。当該平均分子量の上限は、好ましくは500,000、より好ましくは400,000、さらに好ましくは370,000、よりさらに好ましくは340,000であることができる。
不凍多糖としては、例えば、公知の方法に従って化学合成したものを用いてもよいが、好ましくは、真菌から公知の方法に従って不凍多糖を精製して得られた精製物(真菌由来の不凍多糖精製物)を用いることができる。
真菌の中でも好ましくは担子菌が挙げられる。担子菌としては、例えばハラタケ目に属するものを挙げることができる。ハラタケ目に属する担子菌としては、例えば、ヌメリガサ科(ヤギタケ等)、キシメジ科(キシメジ、ムラサキシメジ、オシロイシメジ、カクミノシメジ、シャカシメジ、ハルシメジ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ホンシメジ、オオホウライタケ、スギヒラタケ、ハリガネオチバタケ、キツネタケ、ナラタケ、ムキタケ、マツタケ、シロマツタケモドキ、シイタケ、エノキタケ等)、テングタケ科(タマゴタケ、カバイロツルタケ等)、ハラタケ科(ハラタケ、シロオオハラタケ等)、ヒトヨタケ科(ヒトヨタケ等)、モエギタケ科(ナメコ等)、フウセンタケ科(ショウゲンジ等)、イグチ科(ヤマドリタケ等)、ベニタケ科(アイタケ等)、サルノコシカケ科(マイタケ等)、ヒラタケ科(エリンギ等)に属するものが挙げられる。これらの中でも、好ましくはキシメジ科、ヒラタケ科、モエギタケ科等に属するもの、より好ましくはキシメジ科に属するもの、さらに好ましくはエノキタケが挙げられる。
不凍多糖を含有する生物として担子菌を用いる場合、培養は低温下で行うことが好ましい。比較的低温で担子菌を培養(低温馴化)した担子菌を抽出源として用いることにより、不凍多糖をより効率的に得ることができる。培養温度としては、例えば、25℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。一方、氷点未満では液体培地が凍結するおそれがあるため、0℃以上とすることが好ましい。
培養期間は特に制限されないが、3日以上行うことが好ましく、より好ましくは1週間以上、さらに好ましくは2週間以上、特に好ましくは1ヶ月以上である。また、培養期間の上限も特に制限されないが、担子菌がコンフルエントな状態となるまでや、培地中の氷結晶化阻害剤の濃度がそれ以上向上しなくなるまでとすればよく、例えば、好ましくは6ヶ月以下、より好ましくは5ヶ月以下、さらに好ましくは4ヶ月以下、特に好ましくは3ヶ月以下である。
真菌からの不凍多糖の精製は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、不凍多糖は、熱水ではほとんど抽出できないが、アルカリ水溶液中で加熱処理することにより抽出できることが知られている(特許文献1)。この知見に基づいて、上記「真菌由来の不凍多糖精製物」としては、例えば真菌熱水抽出残渣、真菌熱アルカリ抽出物等を用いることができる。これらの中でも、好ましくは真菌熱水抽出残渣が挙げられる。なお、後述のハイドロフォビンも、真菌の細胞壁に存在し、且つ熱水では抽出することはできないことが知られており(特許文献2〜3)、この観点から、真菌熱水抽出残渣はハイドロフォビンも含み得るので好ましい。
真菌熱水抽出残渣は、例えば真菌を熱水抽出処理した後の残渣を回収することにより得ることができる。
真菌は、熱水抽出処理前に、脱脂処理することが好ましい。脱脂は、例えばヘキサンなどの有機溶媒中に真菌(好ましくは真菌子実体)を放置することにより行うことができる。脱脂時間は、温度によって適宜調整することができるが、例えば室温下で6〜24時間程度であることができる。脱脂処理後は、遠心分離、ろ過等により上清を除去してから、次の処理に供することが好ましい。
真菌は、熱水抽出処理前に、酸処理することが好ましい。酸処理は、真菌中の酸可溶成分を除くことが目的であり、この限りにおいて酸処理の条件は特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。酸処理は、例えば、酢酸、クエン酸等の酸水溶液(好ましくは弱酸水溶液)中に真菌(好ましくは真菌の脱脂処理後に得られる残渣)を懸濁することにより行うことができる。酸水溶液のpHは特に限定されないが、例えばpH1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0程度であることができる。酸処理後は、遠心分離、ろ過等により上清を除去してから、次の処理に供することが好ましい。
真菌は、熱水抽出処理前に(好ましくは脱脂処理及び酸処理後、熱水抽出処理前に)、アルコール処理に供してもよい。アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えばエタノール、メタノール、1−プロパノール等、好ましくはエタノールが挙げられる。アルコール処理の温度は、低温が好ましく、例えば−80〜−10℃程度であることができる。アルコール処理後は、遠心分離、ろ過等により上清を除去してから、次の処理に供することが好ましい。
熱水抽出処理は、高温の水に真菌を浸漬し、必要に応じて撹拌することにより行うことができる。水の温度は、例えば80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは99℃以上であることができる。処理時間は、特に限定されないが、例えば10〜120分間、好ましくは30〜90分間程度であることができる。熱水抽出処理後は、遠心分離、ろ過等により上清を除去することにより、真菌熱水抽出残渣を得ることができる。
真菌熱水抽出残渣は、粒径が大きすぎる場合には、均一に表面にコーティングさせることが困難になるため、必要に応じて粉砕することが望ましい。熱水抽出残渣の粒径は、例えば300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下であることができる。
真菌熱アルカリ抽出物は、例えば真菌をアルカリ水溶液中で加熱抽出処理することにより得ることができる。
アルカリ水溶液中での加熱抽出処理の前に、真菌を上記熱水抽出処理してもよい。このようにすることにより、不凍多糖以外の熱水溶解性の成分を除去することができる。
アルカリ水溶液の調製に供されるアルカリ物質としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、焼成カルシウム等を用いることができ、その使用に際しては単独もしくは2種以上の混合物として用いることができる。
アルカリ水溶液の濃度は、適宜調整すればよい。下限は、より効率的に不凍多糖を抽出できるという観点から、例えば0.1w/v%、好ましくは1.0w/v%、より好ましくは2.0w/v%、さらに好ましくは5.0w/v%、よりさらに好ましくは10.0w/v%、よりさらに好ましくは15.0w/v%、特に好ましくは20.0w/v%であることができる。また、上限は、コスト面や安全面の観点から、例えば50w/v%、好ましくは30w/v%、より好ましくは25w/v%であることができる。
加熱抽出処理の温度としては、70℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、最も好ましくは約100℃である。加熱抽出処理の方法としては、例えば、アルカリ水溶液を加えた後にこれを所定の温度まで加熱しながら抽出してもよいし、予め所定の温度に加温したアルカリ水溶液を加えてこれを保温した状態で抽出してもよい。
加熱抽出処理の時間は、温度、アルカリ物質の濃度等に応じて適宜調整すればよい。加熱抽出処理の時間は、例えば0.5〜8時間、好ましくは1〜5時間、より好ましくは2〜3時間程度であることができる。
抽出は、1回でもよいが、より多くの不凍多糖を得るという観点からは、1回抽出した後に得られた残渣に対して同様の抽出処理を1回又は複数回繰り返して行ってもよい。
上記により得られた抽出液は、そのまま用いてもよいが、中和や透析などの周知の方法によりアルカリ物質を除去してから用いてもよい。また、必要に応じてさらに精製を行ってもよい。例えば、デカンテーション、濾過、遠心分離などを好適に組み合わせて夾雑成分を除去してもよい。また例えば、塩析や有機溶媒による沈殿や、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、低速冷却装置を用いた氷への結合などによる精製、透析や限外濾過などによる濃縮を好適に組み合わせて行ってもよい。
不凍多糖の含有量は、表面への氷付着力を低減することができる限り特に限定されないが、本発明のコーティング用組成物100質量%に対して、例えば0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であることができる。
不凍多糖は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のコーティング用組成物はハイドロフォビン(hydrophobin)を含むことが好ましい。ハイドロフォビンを含むことにより、不凍多糖をより強固にコーティング膜中に留めることができると考えられる。
ハイドロフォビンは、糸状菌等の真菌によって分泌される、疎水性アミノ酸を多く含むタンパク質であり、8個の保存システイン残基からなる非常に特徴的なパターンを有している。これらの残基は、四個の分子内ジスルフィド架橋を形成する。
ハイドロフォビンの由来生物としては、例えば担子菌が挙げられる。担子菌としては、例えばハラタケ目に属するものを挙げることができる。ハラタケ目に属する担子菌としては、例えば、ヌメリガサ科(ヤギタケ等)、キシメジ科(キシメジ、ムラサキシメジ、オシロイシメジ、カクミノシメジ、シャカシメジ、ハルシメジ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ホンシメジ、オオホウライタケ、スギヒラタケ、ハリガネオチバタケ、キツネタケ、ナラタケ、ムキタケ、マツタケ、シロマツタケモドキ、シイタケ、エノキタケ等)、テングタケ科(タマゴタケ、カバイロツルタケ等)、ハラタケ科(ハラタケ、シロオオハラタケ等)、ヒトヨタケ科(ヒトヨタケ等)、モエギタケ科(ナメコ等)、フウセンタケ科(ショウゲンジ等)、イグチ科(ヤマドリタケ等)、ベニタケ科(アイタケ等)、サルノコシカケ科(マイタケ等)、ヒラタケ科(エリンギ等)に属するものが挙げられる。これらの中でも、好ましくはキシメジ科、ヒラタケ科、モエギタケ科等に属するもの、より好ましくはキシメジ科に属するもの、さらに好ましくはエノキタケが挙げられる。
ハイドロフォビンとして、具体的には下記を例示することができる。ここでは、由来生物名とNCBI(National Center for Biotechnology Information)プロテインデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=Protein)のAccession No.をそれぞれ示した。なお、ハイドロフォビンはこれら以外にも多く知られており、本発明において使用するハイドロフォビンは上記のものに限定されない。
トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei) P52754,P79073
ギベレラ・モニリフォルミス(Gibberella moniliformis) AAO16867−16870
アガリクス・ビスポラス(Agaricus bisporus) CAA61530
プレウロタス・オストレアタス(Pleurotus ostreatus) CAD12829-12834
シゾフィルム・コミュネ(Schizophyllum commune) CAA07545
ヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina) CAA92208
クラドスポリウム・フルバム(Cladosporium fulvum) CAA67187,CAB39309−39312
アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus) AAC13524
フラムリナ・ヴェルチペス(Flammulina velutipes:エノキタケ) BAD08615
レンチヌラ・エドデス(Lentinula edodes) AAG00900-00901
ピソリザス・チンクトリウス(Pisolithus tinctorius) AAC49307-49308
ヒポクレア・リクシイ(Hypocrea lixii) CAA72539
ネオサルトルヤ・アウレオラ(Neosartorya aureola) AAC13528
アスペルギルス・デュリカウリス(Aspergillus duricaulis) AAC13522
ディクチオネマ・グラブラタム(Dictyonema glabratum) CAC86002,86005,86006
これらの中でも、エノキタケ由来のハイドロフォビン(BAD08615、アミノ酸配列は配列番号1で示される)が好ましく挙げられる。
ハイドロフォビンは、8個のシステイン(配列番号1においては34、44、45、81、94、100、101、及び114番目のアミノ酸)が保存されており、且つ疎水性アミノ酸の割合(疎水性アミノ酸数/全アミノ酸数)が比較的高いという点(配列番号1においては約62.8%)で共通しており、この限りにおいていずれの生物由来のハイドロフォビンを使用してもよい。
ハイドロフォビンは、上記特徴(8つのシステイン残基が保存されているという特徴、及び比較的疎水性アミノ酸の割合が比較的高いという特徴)が保持されている限りにおいて、天然のハイドロフォビンにおいて1又は複数(例えば2〜50、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)のアミノ酸が欠失、置換、付加、挿入等されたものであってもよい。疎水性アミノ酸の割合は、好ましくは50%以上であることができ、より好ましくは55%以上であることができ、さらに好ましくは60%以上であることができる。
ハイドロフォビンとしては、公知の方法に従って化学合成したものを用いてもよいし、公知の方法に従って組み換えタンパク質として得た物を用いてもよいし、真菌から公知の方法に従ってハイドロフォビンを精製して得られた精製物を用いてもよい。
真菌からのハイドロフォビンの精製は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、前述したとおり、ハイドロフォビンは、真菌の細胞壁に存在し、且つ熱水では抽出することはできないことが知られている(特許文献2〜3)。この知見に基づいて、例えば真菌を熱水抽出処理した後の残渣(真菌熱水抽出残渣)を回収することによりハイドロフォビンを得ることができる。熱水抽出処理の各種条件については、上記不凍多糖の精製における熱水抽出処理と同様である。なお、前述したとおり、不凍多糖も、真菌の細胞壁に存在し、且つ熱水では抽出することはできないことが知られており(特許文献1)、この観点から、真菌熱水抽出残渣は不凍多糖も含み得るので好ましい。
ハイドロフォビンの含有量は、特に限定されないが、本発明のコーティング用組成物100質量%に対して、例えば0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%であることができる。
ハイドロフォビンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のコーティング用組成物は、粉末状等の固体状組成物であることもできるが、コーティング処理の容易性等の観点から、液状組成物であることが好ましい。
この場合の溶媒としては、コーティング用組成物に通常用いられるものである限り特に限定されない。溶媒としては、不凍多糖(特に真菌熱水抽出残渣)をより均一に分散させることができるという観点から、好ましくはSnyder極性パラメータが2.5〜5.5、より好ましくは2.8〜5.0、さらに好ましくは2.9〜4.5、よりさらに好ましくは3.0〜4.3である溶媒が挙げられる。なお、「より均一に分散」とは、不凍多糖と溶媒を撹拌し、一定時間放置した後に目視で観察した場合に、沈殿物がより少ないことを意味する。溶媒の具体例(溶媒右側の括弧内の数値はSnyder極性パラメータ)としては、クロロメタン(3.1)、ジクロロメタン(3.5)、2−プロパノール(3.9)、テトラヒドロフラン(4.0)、n−プロパノール(4.0)、クロロホルム(4.1)、エタノール(4.3)、酢酸エチル(4.4)、メチルエチルケトン(4.7)、ジオキサン(4.8)、アセトン(5.1)、メタノール(5.1)等が挙げられる。
溶媒の含有量は、特に限定されないが、本発明のコーティング用組成物100質量%に対して、例えば50〜99質量%、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%であることができる。
溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のコーティング用組成物は、バインダーを含むことが好ましい。バインダーを含むことにより、コーティング膜をより強固に表面に付着させることができる。また、バインダーを含む場合、必要に応じて硬化触媒を含むこともできる。
バインダーは、表面コーティング、好ましくは屋外で使用される物の表面コーティングに用いられるバインダーとして公知のものを広く使用することができる。具体的には、フッ素樹脂、シリカ系特殊バインダー、湿気硬化性シリコーンオリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは湿気硬化性シリコーンオリゴマーが挙げられる。湿気硬化性シリコーンオリゴマーを用いることにより、耐水性、耐湿性、耐候性等を向上させることが可能である。
湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、例えば、分子末端にアルコキシシリル基を有する低分子量のシリコーンアルコキシオリゴマーであって、後述する硬化触媒の存在下で、アルコキシシリル基の架橋により、常温で硬化するものが挙げられる。このような湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、例えば、下記一般式(1)で示される。
Si(OR4−n (1)
(一般式(1)中、Rは、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を、Rはアルキル基を、nは0〜3の整数を示す。また、RおよびRは、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。)
としては、例えば、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。
において、非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、o、mまたはp−メチルベンジル、o、mまたはp−エチルベンジルなどの炭素数7〜13のアラルキル基が挙げられる。
において、置換の1価の炭化水素基としては、上記した非置換の1価の炭化水素基を、置換基で置換したものが挙げられ、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシルなどが挙げられる。これらの置換基は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、また、例えば、1〜3個置換していてもよい。
また、Rは、好ましくは、少なくとも炭素数が4以上の1価の炭化水素基を含んでおり、より具体的には、Rは、炭素数が1〜3の非置換の1価の炭化水素基および炭素数が4以上の非置換の1価の炭化水素基との組合せであり、さらに好ましくは、炭素数が1〜3のアルキル基および炭素数が6〜14のアリール基との組合せである。
としては、アルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
また、RとRとは、各々独立し、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。
nは、例えば、0〜3の整数を示し、好ましくは、1または2を示す。
このようなアルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、または、これらの混合物などが挙げられる。
アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記したアルコキシシラン化合物に水を加えて、触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせるとともに、縮合させることにより得られるものである。
湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
硬化触媒は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーを硬化させ得る触媒であれば、特に制限されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)などの有機アルミニウム化合物、例えば、ジルコニウム(アセチルアセトン)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトン)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機ジルコニウム化合物、例えば、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機チタニウム化合物などの有機金属化合物、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸類や、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類などの酸、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、エチレンジアミン、アルカノールアミンなどの有機塩基などのアルカリ、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノシラン、シラザン、アミン類などのアミノ化合物などが挙げられる。
これら硬化触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
上記湿気硬化性シリコーンオリゴマーとしては、予め硬化触媒も共に含有されている市販品を用いることが好ましい。そのような市販品としては、例えば、X−40−175(硬化触媒DX−175;5重量%含有)、X−40−2327(硬化触媒X−40−2309A;30重量%含有)、KR−400(硬化触媒DX−9740;10重量%含有)(以上、信越化学社製)等が挙げられる。
バインダーの含有量(硬化触媒も含む場合は、バインダー及び硬化触媒を合わせた含有量)は、特に限定されないが、本発明のコーティング用組成物100質量%に対して、例えば1〜20質量%、好ましく4〜15質量%であることができる。
本発明のコーティング用組成物は、表面への氷付着力を低減することができる限りにおいて、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えばワックス系の撥水剤等が挙げられる。
2.コーティング方法、及びコーティング処理された被検物
本発明は、本発明のコーティング用組成物と、被検物の表面の一部又は全部とを接触させること(本明細書において、「コーティング処理」と示すこともある)を含む、コーティング方法(本明細書において、「本発明のコーティング方法」と示すこともある。)に関する。さらに、本発明のコーティング用組成物を用いて表面の一部又は全部がコーティング処理された、被検物にも関する。以下、これらについて説明する。
被検物は、本発明のコーティング用組成物でコーティング処理する対象物であり、コーティング処理し得る対象物である限り特に限定されない。被検物として、好ましくは、氷が付着し得る環境下で使用される物が挙げられる。このような物の具体例としては、航空機、船舶、電車、自動車等の乗り物、建造物の屋根や外壁、アンテナ、電線、防寒具、信号機、熱交換器等が挙げられる。
接触は、本発明のコーティング用組成物と、被検物の表面の一部又は全部とが接触できる態様であれば特に限定されない。例えば、スプレー、塗布等が挙げられ、より簡便に接触できるという観点から、好ましくはスプレーが挙げられる。
本発明のコーティング用組成物は、そのまま被検物に接触させてもよいが、他のコーティング用組成物と混合してから被検物に接触させてもよく、他のコーティング用組成物でコーティング処理された被検物と接触させてもよい。
被検物と接触させる本発明のコーティング用組成物の量については、被検物の表面の一部又は全部を覆うことができる量である限り特に限定されない。例えば、5cm×5cmの表面に対して0.5〜10mL、好ましくは1.5〜5mL程度であることができる。
コーティング処理後は、必要に応じて、乾燥、バインダー硬化処理等を行うことにより、コーティング膜を被検物表面に形成することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:不凍多糖及びハイドロフォビン含有担子菌抽出物の調製
不凍多糖及びハイドロフォビンは担子菌の細胞壁に存在することが知られている(特許文献1〜3)。不凍多糖は、熱水ではほとんど抽出できないが、アルカリ水溶液中で加熱処理することにより抽出できる(特許文献1)。また、ハイドロフォビンも、熱水では抽出することはできず、トリフルオロ酢酸や界面活性剤により抽出できる(特許文献2〜3)。これらの知見に基づいて、担子菌の一種であるエノキタケを、不凍多糖及びハイドロフォビンが溶解し難い溶媒(熱水)で抽出処理することにより、余分な成分が除かれた残渣(担子菌熱水抽出残渣)を、不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物とした。具体的には次のように行った。
エノキタケの子実体の粉末(5g)を、ヘキサン(200mL)中に懸濁した後、室温、16時間放置した(脱脂処理)。遠心分離(7500×g、4℃、15分)(HITACHIハイテクノロジーズ)し、残渣を得た。残渣1.5gを、10%酢酸溶液2mLとWashing buffer 20mL (0.1MTris-HCl pH 8.0, 10 mM MgSO4, 1 mM PMSF)との混合溶液に懸濁させた後、遠心分離(10000g、4℃、15分間)して沈殿物を得た。該沈殿物を、10%酢酸 10 mM MgSO4溶液20mLに懸濁させた後、遠心分離(10000g、4℃、15分間)して沈殿物を得た。該沈殿物1.4gを、エタノール(−20℃)20mL中に入れ、遠心分離(10000g、4℃、15分間)して沈殿を回収した(洗浄処理)。この洗浄は計2回行った。回収した沈殿物をドラフトチャンバー内で乾燥させ、得られた乾燥物を100℃の水に60分間浸した(熱水処理)。その後、常温になるまで冷却し、遠心分離(10000g、4℃、15分間)して沈殿物を得た。得られた沈殿物を粉砕機(マルチビーズショッカー(製品名)、安井器械(製造元))で破砕(2700rpm、4分間)し、目開き212μm、106μm、53μmの篩にかけ、直径約50μm以下の粉体を得た。この粉体を、不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物として、以下の実施例で用いた。
比較例1:ハイドロフォビン含有担子菌抽出物の調製
実施例1で得られた粉体(不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物)を強アルカリ水溶液(pH12 NaOHで調製)あるいは強アルカリイオン水(Alpha water、富士ハイテック(株))中で、100℃、3時間抽出処理した。遠心分離(7500g、4℃、15分間)して沈殿物を回収した。その沈殿物は凍結乾燥して、不凍多糖を含まない紛体(ハイドロフォビン含有抽出物)として、以下の実施例で使用した
実施例2:溶媒との混合、及び分散性試験
不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物(実施例1)0.01gと各種溶媒(表1)1mlとを、等量(容量)ずつガラスバイアルに入れ、超音波洗浄機(US−1、株式会社エスエヌディ社製)にて5分撹拌した。撹拌後、ガラスバイアルを1時間静置し、不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物(粉体)の分散状態を目視で観察し、評価した。評価結果を表1に示す。ジクロロメタン、及び2−プロパノールのいずれも粉体をほぼ均一に分散させることができたが、2−プロパノールを用いた場合の方が、より均一に粉体が分散していた。この結果に基づいて、以下の実施例では、溶媒として2−プロパノールを用いた。
実施例3:コーティング処理
<3-1.コーティング溶液の調製>
不凍多糖及びハイドロフォビン含有抽出物(実施例1)0.1g、湿気硬化性シリコーンオリゴマー(X−40−2327、信越化学工業社製)200μL、2−プロパノール2.5mLを混合して、コーティング溶液を調製した(コーティング溶液1)。さらに、ハイドロフォビン含有抽出物(比較例1)0.1g、湿気硬化性シリコーンオリゴマー(X−40−2327、信越化学工業社製)200μL、2−プロパノール2.5mLを混合して、コーティング溶液を調製した(コーティング溶液2)。
<3-2.コーティング処理>
アルミ板(50cm×50cm)をアクリルウレタンコーティングし、表面をヤスリがけした(#800、1200)。ここに、コーティング溶液1又は2を均一にスプレー噴霧した。噴霧後、空気中で60分間放置することによりコーティング膜を硬化させ、コーティング板を得た。
<3-3.表面粗さの測定試験>
上記3-2で得たコーティング板のコーティング面の表面粗さを非接触表面粗さ計(: LASER Focus Displacement Meter LT―8105、LT―V201、株式会社KEYENCE社製)にて測定したところ、RMS約1〜1.5(μm)であった。
<3-4.鉛筆硬度の測定試験>
上記3-2で得たコーティング板のコーティング面について、JIS K5600−5−4に従って鉛筆硬度試験を行ったところ、鉛筆硬度は4Bであった。
<3-5.水への溶解試験>
上記3-2で得たコーティング板を蒸留水内に浸漬し、常温で2日間放置した後、コーティング面を目視で観察したところ、コーティングが溶解している様子は見られなかった。
<3-6.氷付着力の測定試験>
試験対象として、上記3-2で得たコーティング板と、これらと同等の表面粗さ(RMS約1〜1.5μm)になるように調整したアルミ板を用意した。上記3-2で得たコーティング板のコーティング面上又はアルミ板上にステンレスリング(内径1インチ、高さ1.5cm)を載せ、該リング内に水を満たした。これを、−4℃又は−8℃で1時間放置し、リング内の水を凍結させた。これを、図1に示されるように氷付着試験機にセットし、ステンレスリングの側面にPusherで荷重をかけ、氷が剥離した際の圧力を測定した。この測定値を氷付着力とする。この試験を10回行い、圧力の測定値の平均値を求め、グラフ化した(図2)。
図2に示されるように、不凍多糖を含まないコーティング溶液(コーティング溶液2)でコーティングした表面への氷付着力は、アルミ板表面への氷付着力と同程度又はこれよりも若干高かった。一方、不凍多糖を含むコーティング溶液(コーティング溶液1)でコーティングした表面への氷付着力は、アルミ板表面への氷付着力、及び不凍多糖を含まないコーティング溶液(コーティング溶液2)でコーティングした表面への氷付着力よりも顕著に低かった。この結果より、不凍多糖をコーティングすることにより、コーティング表面への氷付着力を低減できることが示された。また、上記結果は、表面粗さが同程度の場合の結果であることから、不凍多糖が表面に存在すること自体が氷付着力を低下させていることが示された。このことから、不凍多糖による氷付着力の低減効果は、コーティング表面に凸凹構造を作り出さなくとも発揮される効果であると考えられる。

Claims (7)

  1. 真菌由来の不凍多糖精製物及びハイドロフォビンを含有する、コーティング用組成物。
  2. 溶媒を含む液状組成物であって、該溶媒のSnyder極性パラメータが2.5〜5.5である、請求項に記載の組成物。
  3. 前記溶媒が、クロロメタン、ジクロロメタン、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、n−プロパノール、クロロホルム、エタノール、及び酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の組成物。
  4. さらにバインダーを含有する、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  5. 前記バインダーが湿気硬化性バインダーである、請求項に記載の組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の組成物と、被検物の表面の一部又は全部とを接触させることを含む、コーティング方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の組成物を用いて表面の一部又は全部がコーティング処理された、被検物。
JP2015078324A 2015-04-07 2015-04-07 コーティング用組成物 Active JP6523755B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015078324A JP6523755B2 (ja) 2015-04-07 2015-04-07 コーティング用組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015078324A JP6523755B2 (ja) 2015-04-07 2015-04-07 コーティング用組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016199614A JP2016199614A (ja) 2016-12-01
JP6523755B2 true JP6523755B2 (ja) 2019-06-05

Family

ID=57423855

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015078324A Active JP6523755B2 (ja) 2015-04-07 2015-04-07 コーティング用組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6523755B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6948673B2 (ja) * 2017-08-09 2021-10-13 富士電機株式会社 不凍性溶液および氷スラリー
JP2019113250A (ja) * 2017-12-22 2019-07-11 三菱アルミニウム株式会社 熱交換器用アルミニウムフィン材および熱交換器

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3993521B2 (ja) * 2003-03-12 2007-10-17 学校法人 関西大学 氷結晶成長阻害活性を有する担子菌の培養液
US20080300359A1 (en) * 2007-05-15 2008-12-04 Fujifilm Corporation Aqueous coating material composition
CN103068256B (zh) * 2010-08-25 2014-08-27 株式会社钟化 担子菌来源的冰结晶化抑制剂
JP6322574B2 (ja) * 2012-05-16 2018-05-09 学校法人 関西大学 ハイドロフォビンを含むエノキタケ抽出物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016199614A (ja) 2016-12-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI444409B (zh) 對金屬施予抗腐蝕性及/或黏著促進性塗覆之方法及所產生之塗覆金屬
CN100473469C (zh) 金属的防腐
US6589661B2 (en) Curable coating compositions for stainless steel
CN100572386C (zh) 铝涂层组合物
JP5881118B2 (ja) 担子菌由来の氷結晶化阻害剤
JP6523755B2 (ja) コーティング用組成物
CN107141992B (zh) 一种超疏水透明涂覆液及其制备方法
CN101982560B (zh) 一种低成本的铝合金超疏水表面处理方法
CN107652887B (zh) 基于硅酮水凝胶树脂和天然防污剂的环境友好型防污材料
JP2017071762A (ja) 錆止めコーティング組成物
CN104194612A (zh) 一种铜雕用防水耐磨聚氨酯丙烯酸酯油漆
CN104877404A (zh) 一种有机无机复合耐腐蚀涂层及其制备方法
WO2019229064A3 (en) Method for producing albicanol compounds
CN104861829A (zh) 一种耐水煮环氧聚酯型粉末涂料及制备方法和应用
CN111065694A (zh) 能固化的表面保护性涂层组合物,用于其制备和施加至金属基底的工艺及得到的经涂覆的金属基底
WO2017221294A1 (ja) コーティング用組成物
CN104194586A (zh) 一种铜雕用耐火耐温不饱和聚酯树脂油漆
JP2011529106A (ja) 凝固点降下表面コーティング
CN106479287A (zh) 一种磁力泵外壳用涂料
CN107189669B (zh) 一种低表面能水性聚氨酯/纳米SiO2海洋防污涂层材料及制备方法
US10266454B2 (en) Composition for enhancing the properties of a substrate and method for making the same
CN103694843A (zh) 一种环保防腐耐黄变氨基树脂漆
CN109321075A (zh) 一种水性防腐涂料及其制备方法
CN106833199A (zh) 一种环保水性涂料及其制备方法
CN104194587A (zh) 一种室外铜雕塑用环氧树脂油漆

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20170606

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170606

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180330

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180403

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190129

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190320

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190426

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6523755

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250