以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
[プリンタの概略構成]
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、2つの搬送ローラ4、プラテン5、カートリッジホルダ6などを備えている。キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11に支持され、2本のガイドレール11に沿って走査方向に往復移動する。なお、以下では、図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成し、インクジェットヘッド3には、このようなノズル列9が走査方向に4列に配列されている。複数のノズル10からは、右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
また、インクジェットヘッド3は、4本のチューブ12を介して、カートリッジホルダ6に設けられた4つのカートリッジ収容空間21と接続されている。4つのカートリッジ収容空間21は、走査方向に配列されており、右側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されたインクカートリッジ30が収容されている。インクジェットヘッド3には、4つのカートリッジ収容空間21に収容された4つのインクカートリッジ30から、4本のチューブ12を介して上記4色のインクが供給される。カートリッジホルダ6及びインクカートリッジ30については、後程詳細に説明する。
2つの搬送ローラ4は、搬送方向におけるキャリッジ2の両側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。プラテン5は、搬送方向における2つの搬送ローラ4の間に、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。プラテン5は、搬送ローラ4に搬送される記録用紙Pを下方から支持する。
そして、プリンタ1では、2つの搬送ローラ4により記録用紙Pを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
[カートリッジホルダ]
次に、カートリッジホルダ6について説明する。カートリッジホルダ6は、4つのカートリッジ収容空間21が形成されたホルダ本体20を備えている。4つのカートリッジ収容空間21は、上述したように走査方向に配列されている。各カートリッジ収容空間21は、図1〜図3に示すように、搬送方向における下流側の端が開口している。
各カートリッジ収容空間21の搬送方向における上流側の壁面21aの下端部には、ニードル22が取り付けられている。ニードル22は、壁面21aから搬送方向の下流側に延び、その先端部がとがっている。また、ニードル22の内部には、搬送方向に延びたインク流路22aが形成されている。インク流路22aは、搬送方向の上流側の端が開口しており、ホルダ本体20に形成されたインク流路20aを介してチューブ12と接続されている。また、ニードル22の先端部近傍の部分には、ニードル22の表面に開口し、インク流路22aと連通した連通孔22bが形成されている。
また、各カートリッジ収容空間21の上側の壁面21bには、走査方向の右側から、電源出力端子26VDD、クロック出力端子26SCK、グランド出力端子26GND、信号入出力端子26SIOの順に、4つの端子26VDD、26SCK、26GND、26SIOが、走査方向に1列に配列されている。これら4つの端子26VDD、26SCK、26GND、26SIOは、走査方向の長さが全て同じであり、走査方向における中心同士の間隔が同じとなるように、走査方向に配列されている。なお、以下では、これらの4つの端子26VDD、26SCK、26GND、26SIOを区別しないときに「端子26」とすることがある。後述する他の端子についても同様である。
図5に示すように、電源出力端子26VDDは、電流制限抵抗61及び遮断回路62を介して電源63と接続されている。電流制限抵抗61は、電源出力端子26VDDに流れる電流を制限するための、例えば10Ω程度の抵抗である。遮断回路62は、電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断するための回路である。遮断回路62は、後述するように、制御装置50から遮断信号が入力されたときに、電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断する。
クロック出力端子26SCKは、ダンピング抵抗66を介して2つのスイッチング素子67a、67bと接続されている。ダンピング抵抗66は、ノイズを低減するための例えば100Ω程度の抵抗である。スイッチング素子67aは、ダンピング抵抗66と接続されているのと反対側の端が、遮断回路62を介して電源63と接続されている。スイッチング素子67bは、ダンピング抵抗66と接続されているのと反対側の端がグランド電位に保持されている。スイッチング素子67a、67bは、制御装置50によってオンオフ制御が行われる。より詳細に説明すると、制御装置50は、スイッチング素子67aがオンで且つスイッチング素子67bがオフの状態と、スイッチング素子67aがオフで且つスイッチング素子67bがオンの状態とを、一定の周期で交互に切り換えるように、スイッチング素子67a、67bのオンオフ制御を行うことができるように構成されている。そして、このようにスイッチング素子67a、67bのオンオフ制御を行うことにより、クロック出力端子26SCKからクロックを出力させることができる。グランド出力端子26GNDは、グランド電位に保持されている。
信号入出力端子26SIOは、ダンピング抵抗71を介して2つのスイッチング素子72a、72bと接続されている。ダンピング抵抗71は、ノイズを低減するための例えば100Ω程度の抵抗である。スイッチング素子72aは、ダンピング抵抗71と接続されているのと反対側の端が、遮断回路62を介して電源63と接続されている。スイッチング素子72bは、ダンピング抵抗71と接続されているのと反対側の端がグランド電位に保持されている。スイッチング素子72a、72bは、後述するように、制御装置50によってオンオフ制御が行われる。より詳細に説明すると、制御装置50は、スイッチング素子72aがオンで且つスイッチング素子72bがオフの状態、及び、スイッチング素子72aがオフで且つスイッチング素子72bがオンの状態のうちいずれかの状態を選択的にとるように、上記一定の周期で、スイッチング素子72a、72bのオンオフ制御を行うことができるようになっている。そして、このようにスイッチング素子72a、72bのオンオフ制御を行うことにより、信号入出力端子26SIOからIC43に後述のインクカートリッジ30の識別情報を要求するための信号を出力させることができる。ここで、スイッチング素子72aがオンで且つスイッチング素子72bがオフの状態では、信号入出力端子26SIOからグランド電位よりも電位の高いHighの信号が出力される。一方、スイッチング素子72aがオフで且つスイッチング素子72bがオンの状態では、信号入出力端子26SIOからグランド電位のLowの信号が出力される。識別情報を要求するための信号は、Highの信号とLowの信号の組み合わせによって構成される信号である。
また、ダンピング抵抗71の、信号入出力端子26SIOとの接続部分と反対側の端には、電位検出回路73が接続されている。電位検出回路73は、信号入出力端子26SIOの電位VSIOを検出し、制御装置50に出力する。
[インクカートリッジ]
次に、インクカートリッジ30について説明する。ここで、インクカートリッジ30は、カートリッジホルダ6に装着されていない状態では、向きを変更することが可能であるが、以下では、便宜上、インクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されているときの向きで配置されているとして説明を行う。
インクカートリッジ30は、図2〜図4に示すように、カートリッジ本体31と、基板32とを備えている。カートリッジ本体31は、略直方体形状の部材であり、内部にインクが貯留されたインク貯留室31aが形成されている。また、カートリッジ本体31の搬送方向における上流側の端部の下側の部分には供給孔33が形成されている。供給孔33は、搬送方向に延び、上流側の端部において開口しているとともに、下流側の端部においてインク貯留室31aと接続されている。また、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されていない状態では、供給孔33は、ゴム材料等からなる封止部材34によって塞がれており、インク貯留室31a内のインクが供給孔33から漏れ出さないようになっている。また、カートリッジ本体31の、搬送方向の下流側の端部には、その上端部に、インク貯留室31aを大気連通させるための大気連通孔35が形成されている。
また、カートリッジ本体31の上面31bには、上方に突出したリブ36が形成されている。リブ36は、走査方向に延びた部分36aと搬送方向に延びた部分36bとを有し、部分36aの右端部と、部分36bの搬送方向における下流側の端部とが接続されることで、平面視で略L字形状となっている。リブ36は、後述するように、基板32の位置決めを行うためのものである。
基板32は、図2〜図4に示すように、カートリッジ本体31の上面31bに取り付けられている。基板32は、基材41と、電源入力端子42VDD、クロック入力端子42SCK、グランド入力端子42GND及び信号入出力端子42SIOと、IC43とを備えている。基材41は、矩形の平面形状を有し、走査方向における右側の端面41a及び左側の端面41bが、それぞれ搬送方向と平行に延び、搬送方向における上流側の端面41c及び下流側の端面41dが、それぞれ走査方向と平行に延びている。基材41は、搬送方向における下流側の端面41dがリブ36の部分36aに接触し、右側の端面41aがリブ36の部分36bに接触している。これにより、基板32は、カートリッジ本体31に対して位置決めされている。
端子42VDD、42SCK、42GND、42SIOは、基材41の上面41eの、搬送方向における中央部に配置され、搬送方向に延びている。端子42VDD、42SCK、42GND、42SIOは、それぞれ、端子26VDD、26SCK、26GND、26SIOに対応しており、走査方向の右側から、電源入力端子42VDD、クロック入力端子42SCK、グランド入力端子42GND、信号入出力端子42SIOの順に、走査方向に1列に配列されている。ここで、これら4つの端子42は、4つの端子26と同様、走査方向の長さが全て同じであり、走査方向における中心同士の間隔が同じとなるように、走査方向に配列されている。また、端子42VDD、42SCK、42GND、42SIOの面積の合計は、基材41の上面41eの面積の半分以上となっている。
また、端子42VDD、42SCKと、端子42GND、42SIOとは、走査方向における基材41の中心に関して対称に配置されている。これにより、走査方向において、電源入力端子42VDDの中心が、基材41の右端から所定距離A1だけ離れ、クロック入力端子42SCKの中心が、基材41の右端から所定距離A2だけ離れている。また、グランド入力端子42GNDの中心が、基材41の左端から所定距離A2だけ離れ、信号入出力端子42SIOの中心が、基材41の左端から所定距離A1だけ離れている。
また、これに対応して、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された状態で、走査方向において、電源出力端子26VDDの中心が、基材41の右端から所定距離A1だけ離れ、クロック出力端子26SCKの中心が、基材41の右端から所定距離A2だけ離れている。また、グランド出力端子26GNDの中心が、基材41の左端から所定距離A2だけ離れ、信号入出力端子26SIOの中心が、基材41の左端から所定距離A1だけ離れている。
一方で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された状態で、走査方向において、グランド入力端子42GNDは、基材41の左端からの距離が、電源出力端子26VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。また、走査方向において、グランド出力端子26GNDは、基材41の左端からの距離が、電源入力端子42VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。
なお、以下では、例えば、「インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された状態で、端子26の中心が基材41の右端左端から所定距離A1だけ離れている」ことを、単に、「端子26の中心が基材41の右端から所定距離A1だけ離れている」とするなど、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された状態であることを明示する記載を省略することがある。
また、基材41の、各端子42の搬送方向における下流側の端部と重なる部分には、それぞれ、導電性材料が充填されたスルーホール44が形成されている。IC43は、基材41の下面41fに取り付けられている。IC43は、スルーホール44及び基材41の下面41fに形成された配線45を介して4つの端子42と接続されている。IC43には、インク貯留室31aに貯留されているインクの種類の情報、インクカートリッジ30のサイズの情報等、インクカートリッジ30を識別するための識別情報が記憶されている。
また、IC43は、4つの保護ダイオード81a〜81dを内蔵している。保護ダイオード81aは、クロック入力端子42SCKと電源入力端子42VDDとの間に、クロック入力端子42SCKから電源入力端子42VDDに向かう方向にのみ電流を流すことが可能となるような向きで接続されている。保護ダイオード81aは、クロック入力端子42SCKの電位が、電源入力端子42VDDの電位よりも高くなってIC43が故障しまうのを防止するためのものである。保護ダイオード81bは、クロック入力端子42SCKとグランド入力端子42GNDとの間に、グランド入力端子42GNDからクロック入力端子42SCKに向かう方向にのみ電流を流すことが可能となるような向きで接続されている。保護ダイオード81bは、クロック入力端子42SCKの電位がグランド入力端子42GNDの電位よりも低くなってIC43が故障してしまうのを防止するためのものである。
保護ダイオード81cは、信号入出力端子42SIOと電源入力端子42VDDとの間に、信号入出力端子42SIOから電源入力端子42VDDに向かう方向にのみ電流を流すことが可能となるような向きで接続されている。保護ダイオード81cは、信号入出力端子42SIOの電位が、電源入力端子42VDDの電位よりも高くなってIC43が故障しまうのを防止するためのものである。保護ダイオード81dは、信号入出力端子42SIOとグランド入力端子42GNDとの間に、グランド入力端子42GNDから信号入出力端子42SIOに向かう方向にのみ電流を流すことが可能となるような向きで接続されている。保護ダイオード81dは、信号入出力端子42SIOの電位がグランド入力端子42GNDの電位よりも低くなってIC43が故障しまうのを防止するためのものである。
[インクカートリッジの装着]
次に、インクカートリッジ30のカートリッジホルダ6への装着について説明する。本実施の形態では、インクカートリッジ30を、図2(c)に示すように、供給孔33が搬送方向の上流側となり、且つ、基板32が上側となるような向きとする。そして、インクカートリッジ30を、カートリッジ収容空間21に搬送方向の下流側の開口から挿入することによって、カートリッジホルダ6に装着する。
インクカートリッジ30をカートリッジ収容空間21に挿入すると、ニードル22が、封止部材34を突き破って供給孔33に挿通され、ニードル22の先端部が、インク貯留室31aに到達する。これにより、インク貯留室31aは、連通孔22b、インク流路22a、インク流路20a及びチューブ12を介してインクジェットヘッド3と連通し、インク貯留室31aに貯留されたインクがインクジェットヘッド3に供給される。
また、このとき、電源出力端子26VDDと電源入力端子42VDD、クロック出力端子26SCKとクロック入力端子42SCK、グランド出力端子26GNDとグランド入力端子42GND、及び、信号入出力端子26SIOと信号入出力端子42SIOとが、それぞれ接触して導通する。
そして、4つの端子26と4つの端子42とがこのような対応関係で接触した状態では、電源入力端子42VDDからIC43に、電源の電位が付与される。また、グランド入力端子42GNDからIC43にグランド電位が付与される。
また、この状態で、上述したように、制御装置50によりスイッチング素子67a、67bのオンオフ制御が行われて、クロック出力端子26SCKからクロックが出力されると、クロック入力端子42SCKからIC43にクロックが入力される。また、上述したように、制御装置50によりスイッチング素子72a、72bのオンオフ制御が行われて、信号入出力端子26SIOから識別情報を要求する信号が出力されると、信号入出力端子42SIOからIC43にこの信号が入力される。
一方、IC43は、クロック、及び、識別情報を要求する信号が入力されると、信号入出力端子42SIOから、インクカートリッジ30の識別情報を示す信号を出力する。識別情報を示す信号は、電位が閾値VTHよりも高いHighの信号と、閾値VTH以下のLowの信号の組み合わせによって構成される信号である。信号入出力端子26SIOにこの信号が入力されると、電位検出回路73がこの信号の電位を検出し、制御装置50に出力する。制御装置50は、電位検出回路73によって検出された、IC43からの信号の電位に基づいて、インクカートリッジ30の識別を行う。
ここで、基板32が上述したような向き(以下、「本来の向き」とすることがある)でカートリッジ本体31に取り付けられている場合には、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、4つの端子26と4つの端子42とが、上述したような対応関係で接触する。これにより、制御装置50は、上述したように、インクカートリッジ30の識別を行うことができる。
しかしながら、インクカートリッジ30の製造時等に、図6(a)に示すように、基板32が本来の向きと逆向き(以下、単に「逆向き」とする)でカートリッジ本体31に取り付けられてしまうことがある。例えば、本実施の形態では、基材41が矩形の平面形状を有しているため、基板32の取付を行う作業者などは、基板32の向きを判別しにくい。また、基板32において、端子42VDD、42SCK、42GND、42SIOの面積の合計が、基材41の上面41eの面積の半分以上を占め、端子42VDD、42SCK、42GND、42SIOが、基材41の搬送方向における中央部に配置されているため、基板32の取付を行う作業者などは、基板32の向きを判別しにくい。また、本実施の形態では、基材41の搬送方向における下流側の端面41dをリブ36の部分36aに接触させ、走査方向における右側の端面41aをリブ36の部分36bに接触させることによって、基板32のカートリッジ本体31に対する位置決めを行う。そのため、基板32が逆向きで取り付けられた場合、基材41の、搬送方向における上流側にくるべき端面41cがリブ36の部分36aに接触し、走査方向における左側にくるべき端面41bがリブ36の部分36bに接触して、基板32がカートリッジ本体31に対して位置決めされてしまう。その結果、基板32の取付を行う作業者などは、基板32が逆向きで取り付けてしまったことに気が付きにくい。これらのことから、本実施の形態では、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられてしまうことがある。
そして、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されると、図6(b)に示すように、電源出力端子26VDDと信号入出力端子42SIO、クロック出力端子26SCKとグランド入力端子42GND、グランド出力端子26GNDとクロック入力端子42SCK、及び、信号入出力端子26SIOと電源入力端子42VDDが、それぞれ接触して導通する。
ここで、本実施の形態と異なり、図7(a)に示すように、4つの端子26が、走査方向の右側から、電源出力端子26VDD、クロック出力端子26SCK、信号入出力端子26SIO、グランド出力端子26GNDの順に配列されている場合を考える。この場合、基板32が本来の向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態では、4つの端子42は、走査方向の右側から、電源入力端子42VDD、クロック入力端子42SCK、信号入出力端子42SIO、グランド入力端子42GNDの順に配列される。
そして、この場合に、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されると、図7(b)に示すように、電源出力端子26VDDとグランド入力端子42GND、及び、グランド出力端子26GNDと電源入力端子42VDDとが、それぞれ接触する。そのため、保護ダイオード81a、81b、あるいは、保護ダイオード81c、81dを介して、電源63と接続された電源出力端子26VDDからグランド電位に保持されたグランド出力端子26GNDに大きな電流が流れ、プリンタ1の端子26と接続された回路、あるいは、端子42と接続されたIC43が故障してしまう虞がある。
なお、4つの端子26が、Nを4以下の自然数として、電源出力端子26VDDが走査方向の右側からN番目に配置され、グランド出力端子26GNDが走査方向の左側からN番目に配置されるような、別の順序で配列されている場合も、上述したのと同様の問題が生じる虞がある。
これに対して、本実施の形態では、上述したように、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、電源出力端子26VDDが信号入出力端子42SIOと接触し、グランド出力端子26GNDがクロック入力端子42SCKと接触する。したがって、インクカートリッジ30をカートリッジホルダ6に装着したときに、保護ダイオード81a〜81dを介して、電源出力端子26VDDからグランド出力端子26GNDに向けて電流が流れることはなく、上述したような回路の故障を防止することができる。
ただし、本実施の形態の場合では、保護ダイオード81cを介して、信号入出力端子42SIOから電源入力端子42VDDに向かう方向に電流を流すことができるようになっている。そのため、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されているときに、制御装置50によるスイッチング素子72a、72bのオンオフ制御が開始され、スイッチング素子72aがオフとなり、スイッチング素子72bがオンの状態となると、スイッチング素子72bに大きな電流が流れて、スイッチング素子72bが故障してしまう虞がある。
そこで、本実施の形態では、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された後、制御装置50が図8に示すような制御を行う。より詳細に説明すると、制御装置50は、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された後、まず、電位検出回路73で検出された信号入出力端子42の電位VSIOが閾値VTHを超えているか否かを判定する(S101)。
そして、信号入出力端子42SIOの電位VSIOが閾値VTH以下の場合には(S101:NO)、制御装置50は、スイッチング素子67a、67b、及び、スイッチング素子72a、72bのオンオフ制御を開始することによって、クロック出力端子26SCKからクロックを出力させ、信号入出力端子26SIOから識別情報を要求するための信号を出力させる(S102)。そして、IC43から識別情報を示す信号が入力されるまで待機し(S103:NO)、識別情報を示す信号が入力されたときに、制御装置50は、電位検出回路73で検出されたこの信号の電位に基づいて、インクカートリッジ30の識別を行い(S104)、処理を終了する。
一方、信号入出力端子42SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えている場合には(S101:YES)、制御装置50は、スイッチング素子67a、67b及びスイッチング素子72a、72bのオンオフ制御を開始することなく、遮断回路62に電源出力端子26VDDの電源との接続を遮断させ(S105)、処理を終了する。
インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、制御装置50により上述したような処理を行うようにすれば、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されたときに、スイッチング素子72a、72bのオンオフ制御が開始されることがない。すなわち、スイッチング素子72bがオンになることがない。これにより、上述したようなスイッチング素子72bの故障を防止することができる。
さらに、本実施の形態では、信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えているときに、遮断回路62に、電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断させる。これにより、万一、誤作動等によってスイッチング素子72bがオンになったとしても、スイッチング素子72bに大きな電流が流れることはない。
なお、本実施の形態では、プリンタ1が本発明の印刷装置に相当し、インクカートリッジ30が本発明の印刷流体カートリッジに相当し、プリンタ1とインクカートリッジ30とを合わせたものが、本発明の印刷システムに相当する。また、信号入出力端子26SIOが本発明の信号出力端子に相当し、信号入出力端子42SIOが本発明の信号入力端子に相当する。また、4つの端子26を合わせたものが、本発明の複数の出力端子に相当する。また、スイッチング素子72aが本発明の第1スイッチング素子に相当し、スイッチング素子72bが本発明の第2スイッチング素子に相当する。また、遮断回路62が本発明の第1遮断回路に相当する。また、走査方向が本発明の配列方向に相当する。また、基材41の端面41a、41bが本発明の第1端面に相当し、端面41c、41dが本発明の第2端面に相当する。また、本実施の形態では、所定距離A1が、本発明の第1距離及び第2距離に相当し、第1距離と第2距離とが同じ距離となっている。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
[変形例1]
上述の実施の形態では、制御装置50が、遮断回路62に電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断させたが、これには限られない。変形例1では、図9に示すように、プリンタ1が遮断信号出力回路91をさらに備えている。遮断信号出力回路91は、遮断回路92及び電位検出回路73と接続されている。遮断信号出力回路91には、電位検出回路73から信号入出力端子26SIOの電位が入力される。そして、遮断信号出力回路91は、カートリッジホルダ6にインクカートリッジ30が装着されたときに、電位検出回路73から入力された電位が閾値VTHを超えている場合に、電源出力端子26VDDと電源63との接続を遮断することを指示する遮断信号を、遮断回路92に出力する。遮断回路92は、遮断信号が入力されたときに、電源出力端子26VDDと電源63との接続を遮断させる。ここで、遮断信号出力回路91からの遮断信号の出力は、制御装置50が信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えているか否かの判定するための処理を完了するよりも前、すなわち、制御装置50が、スイッチング素子67a、67b、72a、72bのオンオフ制御を開始するよりも前に行われる。なお、変形例1では、遮断回路92が本発明の第2遮断回路に相当する。
上述の実施の形態の場合、制御装置50が、信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えているか否かを判定し、閾値VTHを超えている場合に遮断回路62に、電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断させる。すなわち、上述の実施の形態では、制御装置50によるソフトウェア処理によって、遮断回路62に電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断させる。これに対して、変形例1では、遮断信号出力回路91に、制御装置50が信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えているか否かの判定するための処理を完了するよりも前に、電位検出回路73から遮断信号出力回路91に入力された電位が閾値VTHを越えている場合に、遮断信号出力回路91が、遮断回路92に遮断信号を出力する。すなわち、変形例1では、遮断信号出力回路91のハードウェア処理によって、遮断回路92に電源出力端子26VDDの電源63との接続を遮断させる。したがって、変形例1の場合には、上述の実施の形態の場合よりも、電源出力端子26VDDの電源63との接続の遮断を素早く行うことができる。
また、上述の実施の形態や変形例1では、電源出力端子26VDDと電源63との間に遮断回路が接続されていてが、遮断回路はなくてもよい。インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときの信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えている場合には、制御装置50によるスイッチング素子72a、72bのオンオフ制御が開始されないため、通常は、電源出力端子26VDDが電源63と接続されたままであっても、スイッチング素子72bがオンとなってスイッチング素子72bが故障してしまうことはない。
また、端子26、42の走査方向における配列の順序は、上述の実施の形態のものに限られない。4つの端子26は、Nを4以下の自然数として、電源出力端子26VDDが走査方向の右側からN番目に配置され、且つ、クロック出力端子26SCK及び信号入出力端子26SIOのうち一方の端子が、走査方向の左側からN番目に配置されるような、上述の実施の形態とは異なる順序で配列されていてもよい。また、この場合には、4つの端子42も、4つの端子26の順序に対応した順序で配列され、電源入力端子42VDDが走査方向の右側からN番目に配置され、クロック入力端子42SCK及び信号入出力端子42SIOのうち一方の端子が、走査方向の左側からN番目に配置される。
この場合にも、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられたインクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、電源出力端子26VDDが、保護ダイオード81cを介して信号入出力端子26SIOと接続される、あるいは、保護ダイオード81aを介してクロック出力端子26SCKと接続される。
電源出力端子26VDDが、信号入出力端子26SIOと接続される場合には、上述の実施の形態と同様、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときの信号入出力端子26SIOの電位VSIOが閾値VTHを超えているときに、制御装置50によるスイッチング素子67a、67b、72a、72bのオンオフ制御を開始させないようにする。このようにすれば、スイッチング素子72bがオンになってスイッチング素子72bが故障してしまうのを防止することができる。
一方、電源出力端子26VDDが、クロック出力端子26SCKと接続される場合には、この状態で、制御装置50によるスイッチング素子67a、67bのオンオフ制御が開始されて、スイッチング素子67bがオンになると、スイッチング素子67bに大きな電流が流れてスイッチング素子67bが故障してしまう虞がある。そこで、この場合には、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときのクロック出力端子26SCKの電位VSCKが閾値VTHを超えているときに、制御装置50によるスイッチング素子67a、67b、72a、72bのオンオフ制御を開始させないようにする。このようにすれば、スイッチング素子67bがオンになってスイッチング素子67bが故障してしまうのを防止することができる。なお、この場合には、クロック出力端子26SCKが本発明の信号出力端子に相当し、クロック入力端子42SCKが本発明の信号入力端子に相当する。また、スイッチング素子67aが本発明の第1スイッチング素子に相当し、スイッチング素子67bが本発明の第2スイッチング素子に相当する。
[変形例2]
また、上述の実施の形態では、4つの端子26及び4つの端子42が、それぞれ、走査方向における基材41の中心に関して対称に配置されていたが、これには限られない。変形例2では、図10(a)に示すように、4つの端子26及び4つの端子42が、それぞれ、上述の実施の形態よりも走査方向の左側にずれて配置されている。そして、走査方向において、電源出力端子26VDDの中央部が、基材41の右端から所定距離A11だけ離れ、信号入出力端子26SIOの中央部が、基材41の左端から所定距離A12(<A11)だけ離れている。これに対して、電源入力端子42VDDは、走査方向における中央部よりも右側に、基材41の右端から所定距離A12だけ離れた部分を有している。また、信号入出力端子42SIOは、走査方向における中央部よりも右側に、基材41の左端から所定距離A11だけ離れた部分を有している。一方で、変形例2でも、上述の実施の形態と同様、グランド出力端子26GNDは、走査方向において、基材41の左端からの距離が、電源入力端子42VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。また、グランド入力端子42GNDは、走査方向において、基材41の左端からの距離が、電源出力端子26VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。
変形例2でも、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着された場合に、図10(b)に示すように、4つの端子26と4つの端子42とが、上述の実施の形態と同様の対応関係で接触する。ただし、変形例2の場合には、各端子26の走査方向の中心と、これに対応する端子42の走査方向の中心とが、走査方向にずれる。
なお、変形例2では、所定距離A11が本発明の第1距離に相当し、所定距離A12が本発明の第2距離に相当する。
また、4つの端子26及び4つの端子42が、それぞれ、走査方向における基材41の中心に関して対称に配置されていない場合には、走査方向の右側からN番目の端子26と走査方向の左側からN番目の端子42とが接触することにも限られない。変形例3では、図11(a)に示すように、4つの端子26及び4つの端子42が、変形例2の場合よりもさらに左側に偏って配置されている。また、変形例3では、4つの端子26は、走査方向の右側から、電源出力端子26VDD、クロック出力端子26SCK、信号入出力端子26SIO、グランド出力端子26GNDの順に配列されている。同様に、4つの端子42は、走査方向の右側から、電源入力端子42VDD、クロック入力端子42SCK、信号入出力端子42SIO、グランド入力端子42GNDとなっている。また、4つの端子26及び4つの端子42は、走査方向において、クロック出力端子26SCK及びクロック入力端子42SCKの中心が、基材41の中心に位置するように、基材41の左側に偏って配置されている。また、走査方向において、電源出力端子26VDDの中心が基材41の右端から所定距離A21だけ離れて配置されているのに対して、信号入出力端子26SIOの中心が基材41の左端から所定距離A21だけ離れて配置されている。また、走査方向において、電源入力端子42VDDの中心が基材41の右端から所定距離A21だけ離れて配置されているのに対して、信号入出力端子42SIOの中心が基材41の左端から所定距離A21だけ離れて配置されている。
この場合にも、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されたときに、図11(b)に示すように、電源出力端子26VDDが信号入出力端子42SIOと接触し、信号入出力端子26SIOが電源入力端子42VDDと接触する。なお、変形例2の場合には、クロック出力端子26SCKはクロック入力端子42SCKと接続され、グランド出力端子26GND及びグランド入力端子42GNDは、どの端子とも接続されない。
なお、変形例3では、所定距離A21が本発明の第1距離及び第2距離に相当し、第1距離と第2距離とが同じ距離となっている。
また、上述の実施の形態では、4つの端子26の走査方向の長さが全て同じで、4つの端子42の走査方向長さが同じであったが、これには限られない。端子26間で走査方向の長さが異なっていてもよいし、端子42間で走査方向の長さが異なっていてもよい。
[変形例4]
例えば、変形例4では、図12(a)に示すように、カートリッジ収容空間21の壁面21bに形成される4つの端子111において、電源出力端子111VDD及びグランド出力端子111GNDの走査方向の長さが、クロック出力端子111SCK及び信号入出力端子111SIOの走査方向の長さよりも長くなっている。同様に、基材41の上面に形成される4つの端子112において、電源入力端子112VDD及びグランド入力端子112GNDの走査方向の長さが、クロック入力端子112SCK及び信号入出力端子112SIOの走査方向の長さよりも長くなっている。
また、変形例4では、電源出力端子111VDDの走査方向における中央部が、基材41の右端から所定距離A31だけ離れている。また、信号入出力端子111SIOの走査方向における中央部が、基材41の左端から所定距離A32(<A31)だけ離れている。これに対して、電源入力端子112VDDは、走査方向における中央部よりも右側に、基材41の右端から所定距離A32だけ離れた部分を有している。また、信号入出力端子112SIOは、走査方向における中央部よりも右側に、基材41の左端から所定距離A31だけ離れた部分を有している。
そして、この場合には、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、上述の実施の形態と同様に、電源出力端子111VDDと信号入出力端子112SIO、及び、信号入出力端子111SIOと電源入力端子112VDDがそれぞれ接触する。
一方で、変形例4でも、上述の実施の形態と同様、走査方向において、グランド出力端子111GNDは、基材41の左端からの距離が、電源入力端子112VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。また、グランド入力端子112GNDは、基材41の左端からの距離が、電源出力端子111VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有していない。これにより、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、電源出力端子111VDDとグランド入力端子112GND、及び、グランド出力端子111GNDと電源入力端子112VDDとが接触することがない。
なお、変形例4では、所定距離A31が本発明の第1距離に相当し、所定距離A32が本発明の第2距離に相当する。
また、上述の実施の形態では、電源出力端子26VDDの走査方向における中心が、基材41の右端から所定距離だけ離れているのに対して、信号入出力端子42SIOに、基材41の左端から上記所定距離だけ離れた部分を有している場合について説明したが、これには限られない。電源出力端子26VDDの中央部以外の所定部分が、基材41の右端から所定の第1距離だけ離れているのに対して、信号入出力端子42SIOに、基材41の左端から上記第1距離だけ離れた部分を有していてもよい。この場合でも、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、電源出力端子26VDDと信号入出力端子42SIOとが接触する。
同様に、信号入出力端子26SIOの中央部以外の所定部分が、基材41の左端から所定の第2距離だけ離れているのに対して、電源入力端子42VDDに、基材41の右端から上記第2距離だけ離れた部分を有していてもよい。この場合でも、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態で、インクカートリッジ30がカートリッジホルダ6に装着されたときに、信号入出力端子26SIOと電源入力端子42VDDとが接触する。
また、上述の実施の形態では、端子42が全て基材41の搬送方向における中央部に配置されていたが、これには限られない。端子42が基材41の搬送方向における上流側又は下流側にずれた位置に配置されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、端子26、42が、それぞれ、走査方向に1列に配列されていたが、これには限られない。端子26、42は、それぞれ、走査方向に2列以上に配列されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、端子26の数、及び、端子42の数が4つであったが、これには限られない。カートリッジ収容空間21の壁面21bに、電源出力端子26VDDと、グランド出力端子26GNDと、信号入出力端子26SIOとを含む3又は5以上の端子が設けられ、基板32に、電源入力端子42VDDと、グランド入力端子42GNDと、信号入出力端子42SIOとを含む3又は5以上の端子が設けられていてもよい。
ただし、これらの場合でも、電源出力端子26VDDが基材41の右端から第1距離だけ離れた部分を有しているのに対して、信号入出力端子42SIOが基材41の左端から上記第1距離だけ離れた部分を有している必要がある。同様に、信号入出力端子26SIOが基材41の左端から第2距離だけ離れた部分を有しているのに対して、電源入力端子42VDDが基材41の右端から上記第2距離だけ離れた部分を有している必要がある。また、グランド出力端子26GNDを、基材41の左端からの距離が、電源入力端子42VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとなる部分を有さない位置に配置する必要がある。同様に、グランド入力端子42GNDを、基材41の左端からの距離が、電源出力端子26VDDのいずれかの部分における基材41の右端からの距離と同じとならないような位置に配置する必要がある。
また、上述の実施の形態では、基材41の上面41eに形成される複数の端子の面積の合計が、基材41の上面41eの面積の半分以上であったが、これには限られない。基材41の上面41eに形成される複数の端子の面積の合計が、基材41の上面41eの面積の半分未満であってもよい。
また、上述の実施の形態では、信号入出力端子26SIOからIC43に向けて信号が出力され、信号入出力端子26SIOにIC43から信号が入力されるようになっていたが、これには限られない。信号入出力端子26SIOの代わりに、IC43に向けて信号を出力する端子と、IC43からの信号が入力される端子とを別々に有し、端子42が、信号入出力端子42SIOの代わりに、これら2つの端子に対応する別々の端子を有していてもよい。
また、上述の実施の形態では、リブ36が、基材41の走査方向における右側の端面41aと、搬送方向における下流側の端面41dとに接触することによって、基板32のカートリッジ本体31に対する位置決めを行ったが、これには限られない。例えば、リブ36が、部分36aの代わりに、基材41の搬送方向における上流側の端面41cと接触する部分を有していてもよいし、部分36bの代わりに、基材41の搬送方向の左側の端面41bと接触する部分を有していてもよい。さらには、基板32は、基材41の端面41a〜41dがリブ36に接触する以外の構成によって、カートリッジ本体31に対して位置決めされるようになっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、基材41が矩形の平面形状を有するものであったが、これには限られない、基材41は、矩形以外の多角形、円形、楕円形など、矩形以外の平面形状を有するものであってもよい。
[変形例5]
また、上述の実施の形態では、電源63から出力される電位が一定であっても、基板32の内部抵抗のばらつきなどにより、電流制限抵抗61に流れる電流がばらつき、その結果、電源出力端子26VDDから出力される電位にばらつきが生じる虞がある。そこで、変形例5では、電源出力端子26VDDから出力される電位を一定とするために、図13に示すように、電源出力端子26VDDと遮断回路62との間に、電流制限抵抗61の代わりに、定電位出力回路200を接続している。定電位出力回路200は、図14に示すように、トランジスタ201と、電流制限抵抗202と2つの電位調整抵抗203、204とを備えている。
電源出力端子26VDDは、トランジスタ201のエミッタ201Eに接続されている。また、電流制限抵抗202は、一方の端がトランジスタ201のコレクタ201Cに接続され、他方の端が遮断回路62を介して電源63と接続されている。電流制限抵抗202は、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れる電流を制限して、トランジスタ201の故障を防止するためのものである。
電位調整抵抗203、204は、それぞれ、一方の端が、トランジスタ201のベース201Bに接続されている。また、電位調整抵抗203の他方の端は、遮断回路62を介して電源63と接続されている。また、電位調整抵抗204の他方の端は、グランド電位に保持されている。ここで、電源63から出力される電位をVCC、電位調整抵抗203、204の抵抗値をR2、R3とすると、トランジスタ201のベース201Bの電位VBは、VB=VCC×[R3/(R2+R3)]の一定の電位となる。これにより、トランジスタ201のエミッタ201Eの電位、すなわち、電源出力端子26VDDの電位VDDは、コレクタ201Cとエミッタ201Eが導通している状態でのトランジスタ201のベース−エミッタ間の電圧をVBEとして、VDD=VB−VBEの一定電位となる。
次に、電流制限抵抗202の抵抗値R1と電位調整抵抗203の抵抗値R2との関係について説明する。抵抗値R1、R2は、コレクタ201Cとエミッタ201Eとが導通している状態でのトランジスタ201のコレクタ−エミッタ間の電圧をVCE、トランジスタ201の増幅率をBとして、[(VCC−VBE)×B/R2]>[(VCC−VCE)/R1]の関係を満たしている。[(VCC−VBE)×B/R2]は、トランジスタ201のベース201Bに流れ得る電流の最大値[(VCC−VBE)/R2]を増幅率Bで増幅した電流値である。一方、[(VCC−VCE)/R1]は、コレクタ201Cに流れ得る最大の電流の電流値である。
ここで、変形例5と逆に、抵抗値R1、R2が、
[(VCC−VBE)×B/R2]<[(VCC−VCE)/R1]
の関係を満たしているとすると、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れる電流は、ベース201Bに流れる電流を増幅率Bで増幅したものとなり、[(VCC−VBE)×B/R2]よりも大きくなることがない。この場合、増幅率Bがある一定値であるとして、抵抗値R2を適切に決定すれば、コレクタ201Cに流れる電流の電流値を、所定の最大値以下に制限することができるようにも思われる。しかしながら、トランジスタ201においては、素子毎に増幅率Bにばらつきがある。そのため、増幅率Bがある一定値であるとして抵抗値R2を決定しても、電流値[(VCC−VBE)×B/R2]にばらつきが生じ、コレクタ201Cに流れる電流の電流値を、所定の最大値以下に制限することができない虞がある。
これに対して、変形例5のように、[(VCC−VBE)×B/R2]>[(VCC−VCE)/R1]の関係を満たす場合には、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れ得る電流の最大値は、[(VCC−VCE)/R1]となる。これにより、抵抗値R1を適切に決定すれば、増幅率Bとは関係なく、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れる電流の電流値を、確実に所定の最大値以下とすることができる。
また、トランジスタ201の増幅率Bは、そのトランジスタ201の温度によって変化する。プリンタの使用時のトランジスタ201の温度は、通常0℃から40℃程度なので、トランジスタ201の温度が0℃以上、40℃以下の範囲で上記[(VCC−VBE)×B/R2]>[(VCC−VCE)/R1]の関係をみたせば、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れる電流の電流値を、確実に所定の最大値以下とすることができる。
なお、変形例5では、電流制限抵抗202が本発明の第1抵抗に相当し、電位調整抵抗203が本発明の第2抵抗に相当する。
また、変形例5は、電位調整抵抗203の抵抗値R2と電位調整抵抗204の抵抗値R3との比によって、トランジスタ201のベース201Bを所望の電位としたが、これには限られない。トランジスタ201のベース201Bに電位調整抵抗204の代わりに別の素子を接続するなどして、トランジスタ201のベース201Bを所望の電位としてもよい。
また、変形例5では、上記関係式における抵抗値R1を電流制限抵抗202の抵抗値とし、抵抗値R2を電位調整抵抗203の抵抗値として説明したが、抵抗値R1は、電源63とトランジスタ201のコレクタ201Cとの間の抵抗値であってもよく、抵抗値R2を電源63とトランジスタ201のベース201Bとの間の抵抗値であってもよい。
また、以上では、インクカートリッジから供給されたインクをノズルから吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。印刷流体カートリッジから供給されたインク以外の印刷流体を用いて印刷を行う、インクジェットプリンタ以外の印刷装置及び印刷システムに本発明を適用することも可能である。
[請求項に係る発明以外の開示発明]
次に、出願当初の特許請求の範囲に記載の請求項1〜8に係る発明以外の開示発明について説明する。開示発明は、印刷流体が貯留された貯留室を有するカートリッジ本体と、ICが取り付けられた基板と、を備えた印刷流体カートリッジが装着される印刷装置であって、電源供給のための電源出力端子と、前記電源出力端子と接続され、前記電源出力端子に所定の一定電位を出力可能に構成された定電位出力回路と、を備え、前記定電位出力回路は、エミッタにおいて前記電源出力端子と接続されたトランジスタと、前記トランジスタのコレクタと電源との間に接続された第1抵抗と、前記トランジスタのベースと電源との間に接続された第2抵抗と、を備え、前記第1抵抗の抵抗値R1及び前記第2抵抗の抵抗値R2が、電源から出力される電位をVCC、前記トランジスタの前記コレクタとエミッタとが導通している状態でのベース−エミッタ間の電圧をVBE、前記トランジスタの前記コレクタとエミッタとが導通している状態でのコレクタ−エミッタ間の電圧をVCE、前記トランジスタの増幅率をBとして、[(VCC−VBE)×B/R2]>[(VCC−VCE)/R1]関係を満たすことを特徴とする印刷装置である。
また、開示発明は、印刷流体が貯留された貯留室を有するカートリッジ本体と、ICが取り付けられた基板と、を備えた印刷流体カートリッジが装着される印刷装置であって、電源供給のための電源出力端子と、前記電源出力端子と接続され、前記電源出力端子に所定の一定電位を出力可能に構成された定電位出力回路と、を備え、前記定電位出力回路は、トランジスタを備え、前記トランジスタは、コレクタ及びベースにおいて電源と接続され、エミッタにおいて前記電源出力端子と接続され、前記トランジスタのコレクタと電源との間の抵抗の抵抗値R1、及び、前記トランジスタのベースと電源と間の抵抗の抵抗値R2が、電源から出力される電位をVCC、前記トランジスタの前記コレクタとエミッタとが導通している状態でのベース−エミッタ間の電圧をVBE、前記トランジスタの前記コレクタとエミッタとが導通している状態でのコレクタ−エミッタ間の電圧をVCE、前記トランジスタの増幅率をBとして、[(VCC−VBE)×B/R2]>[(VCC−VCE)/R1]の関係を満たすことを特徴とする印刷装置である。
これらの開示発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項4、5に対応するものであるが、上記開示発明の技術的範囲は、請求項1の印刷システムを構成する印刷装置において「グランド電位を出力するためのグランド出力端子と、信号を出力するための信号出力端子と、一端が前記信号出力端子に接続され、他端がグランド電位よりも高い所定電位に保持される第1スイッチング素子と、一端が前記信号出力端子に接続され、他端がグランド電位に保持される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を制御して、前記信号出力端子から信号を出力させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記印刷流体カートリッジが装着された後、前記信号出力端子の電位が閾値を超えているか否かを判定し、前記信号出力端子の電位が前記閾値を超えていると判定した場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ制御を行わず、信号出力端子の電位が前記閾値以下であると判定した場合には、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフ制御を行って前記信号の出力を開始させ、前記電源出力端子、前記グランド出力端子及び前記信号出力端子は、所定の配列方向に沿って配列されたものであり、前記電源出力端子は、前記配列方向において、前記基板の一方の端から所定の第1距離だけ離れた部分を含み、前記信号出力端子は、前記配列方向において、前記基板の他方の端から所定の第2距離だけ離れた部分を含」む構成を前提としないものを包含する。
以下、上記開示発明についての実施形態例について説明する。上記開示発明の実施形態例では、図15(a)に示すように、上述の実施の形態において、4つの端子26が、走査方向の右側から、電源出力端子26VDD、クロック出力端子26SCK、信号入出力端子26SIO、グランド出力端子26GNDの順に配列されている。また、4つの端子42が、走査方向の右側から、電源入力端子42VDD、クロック入力端子42SCK、信号入出力端子42SIO、グランド入力端子42GNDの順に配列されている。そして、電源出力端子26VDDが、変形例5と同様の定電位出力回路200を介して電源63と接続されている。なお、電源出力端子26VDDと電源63との間に、遮断回路62(図5参照)は介在していない。
この場合には、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられた状態のインクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されたときに、図15(b)に示すように、電源出力端子26VDDとグランド入力端子42GNDとが接触し、グランド出力端子26GNDと電源入力端子42VDDとが接触する。これにより、電源出力端子26VDDとグランド出力端子26GNDとが、保護ダイオード81a、81b、あるいは、保護ダイオード81c、81dを介して接続されてしまう。しかしながら、この例では、電源出力端子26VDDが定電位出力回路200を介して電源63と接続されており、定電位出力回路200では、変形例5で説明したように、トランジスタ201のコレクタ201Cに流れる電流を所定の最大値以下に制限することができる。これにより、電源出力端子26VDDとグランド出力端子26GNDとが接続された場合でも、電源出力端子26VDDからグランド出力端子26GNDに流れる電流を上記最大値以下に制限して、プリンタ1の回路やIC43が故障してしまうのを防止することができる。また、この例でも、変形例5と同様、電源出力端子26VDDから出力される電位を一定の電位とすることができる。
さらには、上記開示発明は、基板32が逆向きでカートリッジ本体31に取り付けられたインクカートリッジ30が、カートリッジホルダ6に装着されたときに、電源出力端子26VDDとグランド出力端子26GNDとの間に流れる電流を、定電位出力回路200によって制限することには限られない。定電位出力回路200は、基板32が逆向きで取り付けられること以外の要因で、電源出力端子26VDDに本来接続される回路とは異なる回路と接続された場合等にも、電源出力端子26VDDに流れる電流を制限することができる。