JP6518832B1 - 容器入り清酒、及び清酒の呈味改善方法 - Google Patents

容器入り清酒、及び清酒の呈味改善方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低糖質で後味のすっきりとした清酒でありながら、コクとまろやかさとを兼ね備えた容器入り清酒を提供する。【解決手段】光透過性の容器に充填された、糖質濃度が1.6g/100mL以下、プロリン濃度が200mg/L以上である容器入り清酒。ピログルタミン酸濃度が20〜300mg/Lである。アルコール濃度が10〜16v/v%である。「糖質ゼロ」又は「糖質オフ」である旨の表示を付してある。【選択図】なし

Description

本発明は、容器入り清酒、及び清酒の呈味改善方法に関する。
近年、消費者の健康志向が高まることに伴い、日本酒(清酒)等の醸造酒の糖質を低減させた商品が市場で広く販売されている。糖質を低減させた清酒は、すっきりした軽快な飲み口、淡麗辛口であるといった特徴がある一方で、一部の消費者にとっては、エタノールのような突き刺す感じや、水っぽさ、物足りなさが感じられ、本来の清酒と比べてコクとまろやかさが十分でないという印象を与えるものであった。
消費者の嗜好にかかわる醸造酒の要素としては、芳香、うま味、酸味等が代表的である。その中でも、清酒のうま味は、アミノ酸類、有機酸、核酸等の組成や量、米の複雑な分解物の味が加わることによって左右される。例えば、アミノ酸類のうち、アラニン、グリシン、トレオニン、セリンは甘味、グルタミン酸やアスパラギン酸はうま味、プロリンは甘味と苦味との両方に関与することが知られている。アミノ酸や核酸は、それらの組み合わせによる相乗効果によって、予想もしない味に変化することがある。したがって、低糖質清酒がコクとまろやかさとを兼ね備えるためには、うま味を最大限に向上させるようなアミノ酸類の組成や量を予め把握し、呈味を改善させることが望ましい。
例えば、特許文献1には、アルコール濃度、日本酒度、酸度、及びアミノ酸度は従来の清酒と同等でありながら、糖質が低減された清酒が記載されている。
特開2006−61153号公報
特許文献1の清酒は、清酒の味わいを損なわず、かつすっきりとした飲み口であるものの、低糖質特有の味の薄さにより、コクやまろやかさが十分でないといった問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低糖質で後味のすっきりとした清酒でありながら、コクとまろやかさとを兼ね備えた容器入り清酒を提供することを目的とする。さらに、低糖質の清酒の呈味改善方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る容器入り清酒の特徴構成は、
光透過性の容器に充填された、糖質濃度が1.6g/100mL以下、プロリン濃度が200mg/L以上であることにある。
本構成の容器入り清酒によれば、プロリン濃度が200mg/L以上である清酒を光透過性の容器に充填することによって、糖質濃度が1.6g/100mL以下であっても、コクとまろやかさとを兼ね備えた清酒を得ることができる。このような容器入り清酒は、従来の低糖質の清酒に物足りなさを感じていた清酒に慣れた消費者にも満足感を与えることができる。また、別の言い方をすれば、健康と呈味にこだわる人が飲むのに適した清酒、具体的には、糖質量と呈味にこだわる人が飲むのに適した清酒、生活習慣病を予防したくかつ呈味にこだわる人、糖質制限をしつつも呈味にこだわる人などが飲むのに適した清酒である。
本発明に係る容器入り清酒において、
ピログルタミン酸濃度が20〜300mg/Lであることが好ましい。
本構成の容器入り清酒によれば、清酒に含まれるピログルタミン酸濃度が20〜300mg/Lとなる酵母を選択することによって、低糖質でありながら、よりコクとまろやかさとを兼ね備えた容器入り清酒を得ることができる。
本発明に係る容器入り清酒において、
アルコール濃度が10〜16v/v%であることが好ましい。
本構成の容器入り清酒によれば、アルコール濃度が10〜16v/v%であることで、清酒本来の香味が引き立ち、軽快で切れの良い酒質を実現するとともに、低糖質でありながら、コクとまろやかさとを兼ね備えた容器入り清酒を得ることができる。
本発明に係る容器入り清酒において、
「糖質ゼロ」又は「糖質オフ」である旨の表示を付してあることが好ましい。
本構成の容器入り清酒によれば、「糖質ゼロ」又は「糖質オフ」である旨の表示を当該容器に付することで、糖質を抑えた健康志向の清酒であることがより明確となり、カロリーを気にしつつも、コクとまろやかさとを兼ね備えた清酒を必要とする消費者にも受け入れられることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る清酒の呈味改善方法の特徴構成は、
上記発明の何れか一つの容器入り清酒に光を照射することによって熟成を行うことにある。
本構成の清酒の呈味改善方法によれば、清酒に含まれる成分が光によって変化し、熟成が進行するため、低糖質でありながら、コクとまろやかさとを兼ね備えた清酒を簡便かつ効率的に得ることができる。
本発明に係る清酒の呈味改善方法において、
前記光の波長が300〜700nmであることが好ましい。
本構成の清酒の呈味改善方法によれば、清酒に波長300〜700nmの光を照射することで、清酒の熟成がより安定、かつ確実に促進され、低糖質でありながら、コクとまろやかさとを兼ね備えた清酒をより簡便かつ効率的に得ることができる。
図1は、低糖質清酒(糖質濃度0.4g/100mL以下)へのプロリン添加と官能評価との関係を示したグラフである。 図2は、低糖質清酒(糖質濃度1.0〜1.5g/100mL)へのプロリン添加と官能評価との関係を示したグラフである。
本発明は、プロリン濃度が200mg/L以上である低糖質清酒に光が照射されると、低糖質特有の味の薄さやアルコールの突き刺す感じが和らげられ、コクとまろやかさが増すという新しい知見に基づき、なされたものである。
以下、本発明に係る容器入り清酒、及び清酒の呈味改善方法に関する実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。なお、各法令、基準、ガイドラインは、本出願日に施行されているものが好ましい。また、各ホームページのウェブサイトのアドレスの検索日付は、特に記載がない限り、本出願日とする。
[低糖質清酒]
本発明に係る低糖質清酒は、糖質濃度が1.6g/100mL以下の清酒を意味する。例えば、糖質濃度が0.5g/100mL未満である「糖質ゼロ」(月桂冠株式会社ホームページ:http://www.gekkeikan.co.jp/RD/sake/sake01/)、糖質濃度が1.4g/100mL前後である「糖質70%オフ」(月桂冠株式会社ホームページ:http://www.gekkeikan.co.jp/company/news/201708_04.html)のような清酒が含まれる。また、例えば、「糖質ゼロ」のような低糖質清酒と低糖質ではない通常の清酒とを混合して、糖質濃度を1.6g/100mL以下に調整したものも低糖質清酒に含めるものとする。低糖質清酒の糖質濃度の上限値は、2.5g/100mL以下が良いが、1.6g/100mL以下、1.5g/100mL以下、1.2g/100mL以下、1.0g/100mL以下、0.5g/100mL以下であっても良い。また、その下限値は0.1g/100mL以上であることが良いが、0.2g/100mL以上、0.3g/100mL以上であっても良い。
本発明の清酒は、米、米麹、及び水等を原料としてアルコール(本発明において、アルコールとは、特に記載がない限り、エタノールと同義とする)発酵したものであれば良いが、日本国の酒税法(以下、単に酒税法という)で定める清酒であることが好ましい(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/about/council/sake−bunkakai/021127/shiryo/07a.htm)。醸造アルコールの使用量については、原料となる米(米麹に用いた米を含む)重量の100分の50以下の清酒であることが好ましく、100分の10以下の清酒であることがより好ましく、醸造アルコールを使用しない清酒(純米酒)であることがさらに好ましい。また、国税庁が定める「清酒の製法品質表示基準」を満たす清酒が好ましく(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/seishu/gaiyo/02.htm)、吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、本醸造酒、及び特別本醸造酒であることがより好ましい。さらに、国税庁が指定する地理的表示制度の「日本酒」を満たす清酒であることが好ましい(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/mokuji.htm)。
[プロリン]
プロリンは、アミノ酸の一種であるピロリジン−2−カルボン酸であり、環状構造を有するイミノ酸である。プロリンは、一般の清酒にもL−プロリンとして含まれている。例えば、「糖質ゼロ」(月桂冠株式会社製)や「糖質70%オフ」(月桂冠株式会社製)のL−プロリン含有量は、およそ50〜70mg/Lであった。プロリンは、甘味と苦味とを両方備えたアミノ酸であるとともに、生臭い刺激臭を有することが知られている。プロリンは、醸造過程において清酒酵母により生産された発酵由来のものであってもよく、麦芽等の天然物由来のものや、食用として市販されている粉末状の製品(ナトリウム塩、カリウム塩ではない)を使用してもよい。なお、実際に清酒として販売するものに関しては、酒税法及び及び酒類行政関係法令等解釈通達等によりプロリン添加が認可されていないため(国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/law/zeiho−kaishaku/tsutatsu/kihon/sake/8−09a.htm)、本発明に係る容器入り清酒を得るためには、醸造過程において清酒酵母によりプロリンを高生産させることが必要である。プロリンは、L−プロリンの光学異性体であるD−プロリンであってもよいが、L−プロリンであることが好ましい。なお、本発明においてプロリンと表記しているものについては、特に記載がない限り、L−プロリンを意味するものとする。本発明の清酒におけるプロリン濃度は、特に限定はないが、下限値が200mg/L以上であればよい。好ましくは、300mg/L以上、400mg/L以上、500mg/L以上、600mg/L以上である。また上限値には、限定はないが、3000mg/L以下、2000mg/L以下、1500mg/L以下、1300mg/L以下、1000mg/L以下が好ましい。
L−プロリンは、通常、清酒中においては、高濃度でも呈味を示さないことが知られており、例えば、糖質濃度0.4g/100mL、アルコール濃度13.5v/v%の清酒(商品名:糖質ゼロ、月桂冠株式会社製)に、プロリン最終濃度が1000mg/Lとなるようにプロリンを添加しても、呈味に変化がなく、後述する官能評価法においてもプロリン添加前と添加後(光を照射していない)とでは味の差がみられない。
[プロリン高生産性酵母]
プロリン高生産性酵母は、親株をきょうかい酵母9号(K−9)とするPRO1遺伝子に変異が生じた酵母であり、例えば、三段仕込みの小仕込みで得られた上槽酒に含まれるプロリン含有量が親株におけるプロリン含有量よりも多くなる酵母を選択することによって取得することができる。親株は、きょうかい酵母9号の他、701号、901号を使用することができる。なお、小仕込み試験は、例えば、10〜20℃で、15〜30日間培養を行い、原料米を液化した融米を使用してもよい。融米は、例えば、原料米又は原料米を粉砕した粉砕米に、汲水及び耐熱性酵素であるα−アミラーゼを添加し、60〜90℃で液化することにより得られる。
[ピログルタミン酸]
ピログルタミン酸は、有機酸の一種であるピロリドンカルボン酸(2−ピロリドン−5−カルボン酸)であり、グルタミン酸のカルボキシル基とアミノ基が分子間縮合反応により、分子内環状アミドを形成したアミノ酸誘導体である。グルタミン酸はうま味成分であるが、ピログルタミン酸は呈味を有しない。ピログルタミン酸からグルタミン酸への変換は、グルタミナーゼという酵素が存在しなければ容易には起こらない。味噌や醤油等の製造業界においては、ピログルタミン酸よりもグルタミン酸が多く生成する反応を促進させることにより、製品のうま味を向上させることが一般的に行われている。ピログルタミン酸が光の作用によって変化し、呈味にどのような影響を及ぼすのかについては、あまり知られていない。本発明の清酒におけるピログルタミン酸濃度は、特に限定はないが、下限値が10mg/L以上、20mg/L以上、30mg/L以上であればよく、上限値は200mg/L以下、150mg/L以下、100mg/L以下であればよい。
[醸造アルコールの添加とアルコール濃度]
清酒への醸造アルコールの添加は、醸造過程のどの段階で行っても良いが、酒税法で定める上槽前(醪を絞って液体(清酒)と固体(酒粕)に分ける前)が好ましい。容器に入れられた清酒のアルコール濃度については限定はされないが、酒税法が定める1v/v%以上であり22v/v%未満が好ましい。アルコール濃度の下限値は、2、5、7、10v/v%以上が好ましく、上限値は21、18、16v/v%以下が好ましい。また、上槽後は加水により、アルコール濃度を調整することもできる。
[光透過性の容器]
光透過性の容器は、完全な透明である必要はなく、300〜700nmの波長光のうち全てを透過しても良いし、一部の波長を選択的に透過しても良い。例えば、エメラルドグリーンのガラス瓶は、紫外線領域の波長は透過させにくいものの、可視光線は透過しやすいといった特徴がある。容器の光透過はごく微量の光を透過させるものであればよく、容器全体を遮光しないものであればよい。すなわち、半透明であったり、着色されたものであったり、容器の一部に遮光部分を含んでいてもよい。ここで、遮光とは、積極的に光を通さないという意味であり、完全に光を遮断することを必須とはしない。容器の素材は、ガラス、プラスチック、紙類、陶器、木材、又はこれらを組み合わせたものであってもよい。容器の種類は、ワンカップ、紙容器(紙パック)、パウチ、ビン、又は樽であってもよい。
光の透過性については、例えばライト等の光源を容器の外側からあて、内側から目視で判定しても良く、わずかに光が確認できる程度であっても良い。容器の素材自体の透過率(内部透過率)であっても良いし、内容物の界面を含めた全体の透過率(外部透過率)で測定しても良い。光の単位については、特に限定されないが、光量子束密度が好ましい。光量子束密度で透過率を規定する場合、照射した光量子束密度に対して容器の素材を透過した光量子束密度の透過率(%)で表すことが好ましい。この透過率(%)は、0.01%以上、0.03%以上、0.3%以上、3%以上であることが好ましい。上限値に限定はないが、100%以下、90%以下、70%以下、50%以下、30%以下、10%以下であっても良い。
例えば、清酒の紙容器1.8L容(清酒(商品名:糖質ゼロ、月桂冠株式会社製)が格納されるための紙容器、凸版印刷株式会社と大日本印刷株式会社製)の容器を蛍光灯にかざしたところ、蛍光灯からの光が明らかに通過していることを目視で確認することができる。また、容器の側面部(屋根型形状部と底面部を除く)にLEDライト(商品名:BML−4、株式会社MRT製、光波長450±10nm、光量子束密度500μmol/m/s)を容器の印刷部の黒色(または近い色)から白色(又はそれに近い色)の様々な部位に当て、透過した光量子数を測定したところ、5から20μmol/m/sであり、照射した光量子束密度に対して容器の素材を透過した光量子束密度の透過率(%)が1〜4%であり、光を十分に透過させることができる。そのため、上記紙容器は、本発明の光透過性容器として使用することができる。なお、晴天時、屋内で窓ガラスを透過してくる太陽光の光量子束密度を測定したところ、約300μmol/m/sであり、上記LEDライトに近い値であった。
[糖質ゼロ、糖質オフである旨の表示]
「糖質ゼロ」である旨の表示については、健康増進法第31条第1項の規定に定められた栄養表示基準(厚生労働省告示第176号)に基づき、100mL当たりの糖質が0.5g未満の清酒が充填された容器に表示するものとする。「糖質ゼロ」の表示は、「糖質0」、「糖質0%」、「糖質ZERO」としてもよく、実質的に糖質がゼロであることを意味する表示であってもよい。また、「糖質オフ」は、清酒100mL当たりの糖質が1.6g以下の清酒が充填された容器に表示するものとする。「糖質オフ」の表示は、「糖質OFF」又は「糖質カット」としてもよく、例えば「糖質70%オフ」、「糖質70%OFF」のように、従来の清酒(商品名:上撰、月桂冠株式会社製、糖質濃度5g/100mL)との比較で、低減値を具体的に表示してもよい。つまり、前記「糖質オフ」の表示は、従来の清酒との比較で、より低糖質であることを意味すればよく、従来品との比較した比率などを表記し、「オフ」や「カット」等の低減したことを意味する表示であればよい。この比率に限定はないが、50〜95%低減したこと、好ましくは60〜80%低減したこと、より好ましくは65〜75%低減したことを意味すればよい。
[光熟成の条件]
容器入り清酒に照射する光は、波長が300〜700nmであることが好ましく、420〜480nmの青色光であることがより好ましい。光源は、蛍光灯、発光ダイオード(LED)、白熱電球のような人工光源でもよく、自然光であってもよい。人工光源を使用する場合、光量子束密度は、400〜600μmol/m/sであることが好ましい。容器入りの清酒に光を照射する時間は、24時間以上が好ましく、36時間以上、72時間以上、1週間以上、2週間以上、4週間以上、8週間以上、16週間以上、32週間以上であることがより好ましい。また、温度は18〜45℃であることが好ましい。
容器入り清酒の保管場所は、窓・照明などが付いていない保管庫などの暗所以外であればよく、人工照明がなくても太陽光が差し込む場所であり、人工照明であれば、例えば、蛍光灯又はLED照明が設置されている場所であり、清酒を格納した容器に直接又は間接的に光が照射される場所であればよい。また、光熟成は、単位面積あたりの光量子の総量で表しても良く、光量子束密度500μmol/m/sに換算したものに、時間(単位はh)を乗じて表しても良い。この換算×時間であれば、時間は3時間以上、6時間以上、12時間以上、24時間以上、48時間以上、72時間以上であればよい。またこの時間は、照明がなされていない時間を除外した、照射の累積時間であっても良い。この照射時間に上限値に限定はないが、1年以内、半年以内、3か月以内であっても良い。
[試験醸造]
試験醸造には、小仕込み試験でプロリンとピログルタミン酸とが大きく増加していた2菌株(プロリン高生産性酵母:A株、B株)と、その親株であるK−9株とをそれぞれ使用した。試験醸造は、総米0.9kg三段仕込み、トランスグルコシダーゼを添加して実施した。
[酒質の分析]
プロリン高生産性酵母、及びその親株を使用して得られた上槽酒の酒質、有機酸、及びアミノ酸に関する分析を行った。酒質の分析については、独立行政法人酒類総合研究所が定める「酒類総合研究所標準分析法」(平成22年11月4日、http://www.nrib.go.jp/data/nribanalysis.htm)に基づいて、アルコール度数、日本酒度、酸度、アミノ酸度、及び糖質を分析した。分析方法を以下に示す。
(1)アルコール度数:蒸留−密度(比重)法である浮ひょう法、振動式密度計法あるいはそれに準ずる方法を用いて測定する。
(2)日本酒度:日本酒度は、水に対する酒の比重を日本酒度計で計った値である。具体的には、日本酒度計を用いて15℃における清酒の密度を測定し、4℃の水と同じ重さの清酒の日本酒度を0とし、それより軽いものを(+)、重いものを(−)で表す。
(3)酸度:酸度は、清酒に含まれる、有機酸(乳酸、リンゴ酸、コハク酸等)の総量を示した値である。具体的には、10mLの清酒を中和するのに要する水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)で表す。
(4)アミノ酸度:アミノ酸度は、清酒10mLを0.1Nの水酸化ナトリウムで中和した後、中性ホルマリン液を5mL加え、再度0.1Nの水酸化ナトリウムで中和するのに要する0.1Nの水酸化ナトリウムの滴定量(mL)で表す。
(5)エキス分:エキス分=(S−A)×260+0.21により算出した。Sは、S(比重(15/4℃))=1443/(1443+日本酒度)から算出した。Aはアルコールを比重(15/15℃)に換算して求めた。
(6)簡易算定糖質:エキス分からタンパク質を控除した値(エキス分−タンパク質)を「簡易算定糖質」とした。糖質は、エキス分から、タンパク質、脂質、食物繊維および灰分を控除した値であるが、清酒において、脂質、食物繊維、及び灰分は、糖質とタンパク質の量と比較すると、無視できる程度の量しか含まれていないため、「エキス分−タンパク質」を、間接的に糖質を示すパラメーターとして使用した。または、日本食品分析センターに委託分析した。
プロリン高生産性酵母(A株、B株)を用いて醸造して得られた上槽酒は、その親株(K−9)を用いて得られたものと比較して、アルコール度数、日本酒度、酸度は、ほぼ同じであった(データ示さず)。また、糖質濃度は、いずれも0.45g/100mL程度(アルコール濃度13.5v/v%換算)であり、低糖質清酒の酒質であった。
[アミノ酸、及び有機酸の分析]
アミノ酸、及び有機酸の分析については、高速液体クロマトグラフを用いて行った。具体的には、以下の分析条件で行った。
装置:高速液体クロマトグラフ「LC−20型」(株式会社島津製作所製)
検出器:電気伝導度検出器「CDD−10Avp」(株式会社島津製作所製)
カラム:「Shim−pack SCR−102H」(株式会社島津製作所製)
カラム温度:40℃
移動相:p−トルエンスルホン酸(5mmol/L)
緩衝溶液:p−トルエンスルホン酸(5mmol/L),Bis−Tris(20mmol/L),EDTA−4H(0.1mmol/L)
流量:移動相0.8mL/min,緩衝溶液0.5mL/min
各菌株を用いて得られた上槽酒のL−プロリン及びピログルタミン酸の濃度(アルコール濃度13.5v/v%換算)について、以下の表1に分析結果を示す。
Figure 0006518832
プロリン高生産性酵母(A株、B株)を用いて醸造して得られた上槽酒のL−プロリンの含有量(アルコール濃度13.5v/v%換算)は、その親株(K−9)により得られた上槽酒と比較して、約4.2〜6.2倍増加していた。一方で、グルタミン酸の含有量(アルコール濃度13.5v/v%換算)は、親株と比べて、約0.35〜0.45倍、γ‐アミノ酪酸は約0.25〜0.5倍減少していた(データ図示せず)。メチオニンは約1.5〜2.0倍増加していた。その他のアミノ酸の含有量については、ほとんど増減はみられなかった(データ図示せず)。
プロリン高生産性酵母(A株、B株)を用いて醸造して得られた上槽酒のピログルタミン酸の含有量(アルコール濃度13.5v/v%換算)は、その親株(K−9)により得られた上槽酒と比較して、約4.3〜6.5倍増加していた。一方で、乳酸、リンゴ酸、及びコハク酸等のその他の有機酸の含有量については、ほとんど増減はみられなかった(データ図示せず)。このようにして、プロリン高含有清酒を醸造することができた。
[官能評価試験]
低糖質清酒にプロリンを添加し、光の照射を行った後、その清酒の呈味について6人のパネル(熟練した官能評価員)による官能評価試験を行った。また、マイルド感、コク感、及びこれらを総合して3段階の採点法により評価を行った。
<実施例1>
糖質濃度0.4g/100mL、アルコール濃度13.5v/v%の清酒(商品名:糖質ゼロ、月桂冠株式会社製)180mLに、プロリン最終濃度が約300mg/Lとなるようにプロリン(商品名:L−プロリン、純度99%以上(100%として濃度計算した)、ナカライテスク株式会社製)を粉末のまま添加し、ガラス製の透明容器(月桂冠株式会社製の上撰キャップエース(商標登録)180mL用)に充填し、LEDライト(商品名:BML−4、株式会社MRT製、光波長450±10nm、光量子束密度500μmol/m/s)を使用して透明容器に光を照射しながら、40℃で72時間保管した。その後、官能評価試験を行った。
<実施例2>
プロリン最終濃度が約900mg/Lとなるように添加量を変更した。その他は実施例1と同様の条件で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<実施例3>
プロリン最終濃度が約2000mg/Lとなるように添加量を変更した。その他は実施例1と同様の条件で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<実施例4>
糖質濃度1.5g/100mL、アルコール濃度13.5v/v%の清酒(清酒(商品名:糖質ゼロ、月桂冠株式会社製)と清酒(商品名:つき、月桂冠株式会社製)との混合酒)180mLに、プロリン最終濃度が約500mg/Lとなるようにプロリン(商品名:L−プロリン、純度99%以上(100%として濃度計算した)、ナカライテスク株式会社製)を粉末のまま添加し、その他は実施例1と同様の条件下で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<実施例5>
糖質濃度1.0g/100mL、アルコール濃度16.0v/v%の清酒(実施例4で調整した混合酒に、醸造アルコールを添加したもの)180mLに、プロリン最終濃度が約500mg/Lとなるようにプロリン(商品名:L−プロリン、純度99%以上(100%として濃度計算した)、ナカライテスク株式会社製)を粉末のまま添加し、その他は実施例1と同様の条件下で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<実施例6>
糖質濃度1.1g/100mL、アルコール濃度11.0v/v%の清酒(実施例4で調整した混合酒に、加水したもの)180mLに、プロリン濃度が約500mg/Lとなるようにプロリン(商品名:L−プロリン、純度99%以上(100%として濃度計算した)、ナカライテスク株式会社製)を添加し、その他は実施例1と同様の条件下で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<比較例1>
実施例1において、プロリンを添加していない清酒(プロリン濃度は約50mg/Lを、実施例1と同じ条件下で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<比較例2>
プロリン最終濃度が約100mg/Lとなるように添加量を変更した。その他は実施例1と同様の条件下で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
<比較例3>
実施例4で調整した混合酒(プロリン濃度は約50mg/L)にプロリンを添加せず、その他は実施例1と同様の条件で光照射及び保管後、官能評価試験を行った。
表2は、実施例1〜6、及び比較例1〜3における清酒のプロリン濃度、アルコール濃度、及び糖質濃度を夫々まとめたものである。
Figure 0006518832
図1は、官能評価試験(実施例1〜3、比較例1及び2)において、マイルド感、コク感、及びこれらを総合して、6人のパネルによる3段階の採点法により評価を行い、グラフ化したものである。点数が大きい方が良好な清酒となるものとした。図1(a)は、光照射後の清酒のマイルド感、図1(b)はコク感、図1(c)は、これらの総合評価が示されている。
プロリン濃度が約300、900、2000mg/Lである場合、ベースとなる糖質ゼロと比較して、コクが増している、まろやかになった等のコメントが多くみられた(実施例1〜3)。図1のグラフからも、糖質ゼロに含まれるプロリン濃度が300mg/L以上になると(実施例1〜3)、マイルド感、コク感、これらの総合評価において、飛躍的に評価が上がっていることが明らかであった。一方、糖質ゼロに含まれるプロリン濃度が約50、100mg/Lである場合、ベースとなる糖質ゼロとの差がみられない、味がさっぱりしている等のコメントが多かった(比較例1及び2)。
図2は、官能評価試験(実施例4〜6、比較例3)において、マイルド感、コク感、及びこれらを総合して、6人のパネルによる3段階の採点法により評価を行い、グラフ化したものである。点数が大きい方が良好な清酒となるものとした。図2(a)は、光照射後の清酒のマイルド感、図2(b)はコク感、図2(c)は、これらの総合評価が示されている。
糖質濃度1.0〜1.5g/100mL、アルコール濃度11.0〜16.0v/v%の清酒について、プロリン最終濃度が約500mg/Lとなるように調製し、光の照射を行ったものについては(実施例4〜6)、ベースとなるプロリンを添加していない清酒(比較例3)と比べて、味わいにふくらみがある、コク感が増している、口あたりがまるいとのコメントがみられた。図2のグラフからも、プロリン濃度が約500mg/Lである清酒(実施例4〜6)は、マイルド感、コク感、これらの総合評価において、プロリン濃度が低い清酒(比較例3)よりも評価が高いことが明らかであった。
プロリンの濃度が500mg/Lである以外は、実施例1〜3とアルコール濃度や糖質濃度が同じ清酒について、同じ光照射の条件で24時間保管したところ、実施例2の官能評価(マイルド感、コク感、及び総合評価)に相似した結果が得られた。従って、低糖質清酒を透明のガラス容器に充填すれば、より短時間でも前記官能評価が改善され、紙容器であっても2週間程度、明所に保管することで前記官能評価が改善される可能性が示された。
本発明に係る容器入り清酒、及び清酒の呈味改善方法は、低糖質清酒の製造において利用可能であり、本醸造、純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒の製造に利用することができる。

Claims (5)

  1. 光透過性の容器に充填された、糖質濃度が1.6g/100mL以下、プロリン濃度が200mg/L以上である清酒に光照射された容器入り清酒であって、
    前記光の波長が300〜700nmである容器入り清酒。
  2. ピログルタミン酸濃度が20〜300mg/Lである請求項1に記載の容器入り清酒。
  3. アルコール濃度が10〜16v/v%である請求項1又は2に記載の容器入り清酒。
  4. 「糖質ゼロ」又は「糖質オフ」である旨の表示を付してある請求項1〜3の何れか一項に記載の容器入り清酒。
  5. 光透過性の容器に充填された、糖質濃度が1.6g/100mL以下、プロリン濃度が200mg/L以上である容器入り清酒に光を照射することによって熟成を行う清酒の呈味改善方法であって、
    前記光の波長が300〜700nmである清酒の呈味改善方法。
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