JP6518553B2 - 車両用二酸化バナジウム薄膜の製造方法及びその積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の車両用二酸化バナジウム薄膜を形成する塗料に含まれる二酸化バナジウム分散液は、二酸化バナジウム粒子と、アミノ基とカルボキシル基又は水酸基のいずれか一方又は双方とを有する分散剤と、アルコール、グリコール、エーテル又はケトンからなる分散媒とを含む。二酸化バナジウム粒子の平均粒径は、10〜100nmの範囲内にあることが好ましい。ここで、二酸化バナジウム粒子の平均粒径を10〜100nmの範囲内に限定したのは、10nm未満では二酸化バナジウム粒子の欠陥が多くなって、二酸化バナジウム粒子の有するサーモクロミック特性が劣化してしまい、100nmを超えると光が散乱して、膜が濁ってしまうからである。なお、二酸化バナジウム粒子の平均粒径は、粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−950)を用いて測定した粒径であり、体積基準平均粒径である。
本発明の二酸化バナジウム塗料は、上記二酸化バナジウム分散液と、バインダ樹脂とを含む。ここで、バインダ樹脂としては、化学反応型樹脂又は乾燥硬化型樹脂を挙げることができる。化学反応型樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等が例示され、乾燥硬化型樹脂は、溶媒中にポリマーが溶解しており、この溶媒が乾燥により除去されることでポリマー同士が絡み合い硬化する樹脂を指し、溶剤系変性エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂の具体例としては、モノマーとして、アクリル(例えば、ビームセット577(荒川化学社製)など)、エポキシアクリレート、シリコーン等が挙げられ、パーブチルO(日本油脂社製)、ナイパーNS(日本油脂社製)、スペロックス570(アルケマ吉富社製)、ルペロックス531(アルケマ吉富社製)等の熱で開裂する重合開始剤が添加される。紫外線硬化性樹脂の具体例としては、モノマーとして、アクリル、エポキシアクリレート、シリコーン等が挙げられ、イルガキュア184(BASF社製)、イルガキュア907(BASF社製)、アデカオプトマーN−1919(ADEKA社製)等の紫外線で開裂する重合開始剤が添加される。なお、アデカオプトマーKR−400(ADEKA社製)、アデカオプトマーKR−550(ADEKA社製)、アデカオプトマーKR−566(ADEKA社製)、アクリット8SS−723(大成ファインケミカル社製)、A−1790(テスク社製)などの紫外線硬化型の樹脂は、適合する重合開始剤が添加されているため、これらを紫外線硬化性樹脂としてそのまま用いることができる。更に、乾燥硬化型変性エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、アラキード−9203(荒川化学社製)が挙げられ、乾燥硬化型ポリウレタン樹脂としては、例えば、オレスターUD800(三井化学社製)が挙げられる。
次に、上記二酸化バナジウム塗料の製造方法を説明する。先ず、溶媒に光重合開始剤を添加することにより、溶媒を調製しておくことが好ましい。この溶媒としては、上記二酸化バナジウム分散液の分散媒と同じものを用いることが好ましい。また、光重合開始剤の添加割合は、樹脂モノマー100質量%に対して0.5〜30質量%であることが好ましい。ここで、光重合開始剤の添加割合を樹脂モノマー100質量%に対して0.5〜30質量%の範囲内に限定したのは、0.5質量%未満では樹脂の硬化が不十分になり、30質量%を超えると変色や経年的な劣化が発生し易くなるからである。次に、上記溶媒に、バインダ樹脂を混合して樹脂溶液を調製する。このバインダ樹脂の混合割合は、特に制限されないけれども、ハンドリングの点から樹脂溶液100質量%に対して1〜80質量%であることが好ましい。更に、この樹脂溶液に二酸化バナジウム分散液を添加し混合することにより、二酸化バナジウム塗料が得られる。上記二酸化バナジウム分散液に加える二酸化バナジウム粒子の添加割合は、塗料中の固形分(樹脂モノマー、重合開始剤及び二酸化バナジウム粒子の合計)100質量%に対して50質量%以下であれば問題ないけれども、ハンドリングの点から0.1〜10質量%であることが好ましい。
このように製造された二酸化バナジウム塗料では、この塗料中の分散剤がカルボキシル基や水酸基を含むので、分散液のバインダ樹脂との相溶性が高くなる。この結果、分散液中の二酸化バナジウム及び分散剤がバインダ樹脂の溶けた溶剤中に均一に分散する。また、バインダ樹脂として、熱や紫外線(UV)等で重合反応して硬化する化学反応型樹脂を用いれば、二酸化バナジウム塗料を基材上に塗布して形成された膜を比較的容易に硬化させることができる。この結果、可塑剤を含有しなくても、加工性を損なわずにサーモクロミック性能を有する薄膜を基材上に硬化させることができる。更に、可塑剤を用いないので、二酸化バナジウム分散液を含む塗料をプラスチック基材上に塗布し硬化させても、白濁等が生じず有色透明のクリアな硬化した二酸化バナジウム薄膜を形成できるとともに、この薄膜中の二酸化バナジウム粒子が太陽光を長期間にわたって吸収し発熱しても、白濁等の劣化が生じることがないので、薄膜中の二酸化バナジウム粒子が、特定の温度以上になると結晶構造が変わって半導体から金属に相転移し、今まで絶縁体であったものがキャリアの電子が増えて赤外線の透過率を大きく減少させることができるというサーモクロミック性能を長期間発揮し続け、サーモクロミック性能を有する二酸化バナジウム薄膜の耐久性を向上できる。
図1に示すように、本発明の遮光フィルム10は、例えば、ハードコート層11と、二酸化バナジウム薄膜12と、透明な基材フィルム13(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム)により構成される。この遮光フィルム10は、透明な基材フィルム13上に二酸化バナジウム薄膜12を形成し、二酸化バナジウム薄膜の上面に耐摩耗性材料からなるハードコート層11を形成することにより作られる。図2(a)及び(b)に示すように、図1に示した遮光フィルム10を反転させてその基材フィルム13側の表面にフィルム端部の外観不良を防ぐための遮蔽部14がスクリーン印刷により形成される。
図3に示すように、本発明の積層体20は、車両用遮光フィルム10と透明な無機ガラス基材や樹脂ガラス基材21とを積層して構成される。透明な無機ガラス基材や樹脂ガラス基材21の遮光フィルム10と反対側の面にはハードコート層22が形成される。この積層体を製造するには、無機ガラス基材や樹脂ガラス基材に直接二酸化バナジウム塗料を塗布してもよいし、或いは車両用遮光フィルムを直接無機ガラス基材や樹脂ガラス基材に貼り付けてもよい。或いは車両用遮光フィルムを金型内に入れ、透明な樹脂を金型内のキャビティに射出成形して、車両用遮光フィルムと無機ガラス基材や樹脂ガラス基材からなる積層体を一体成形してもよい。一体成形することにより、コストを低減することができる。
図4に示すように、本発明のサンルーフ30は、例えば、図3に示した積層体20と、この車両用遮光フィルムの周囲を覆う枠部31とにより構成される。この枠部31は樹脂ガラス基材21と車両用遮光フィルム10との間に設けられた遮蔽部14の内周縁を超えないように設けられる。
本発明のサンルーフの製造方法の一例を説明する。先ず、一方の面にハードコート層11を有する車両用遮光フィルム10の他方の面の周縁部に遮蔽部14をスクリーン印刷により形成する。次いで遮蔽部14が形成された面を上にして車両用遮光フィルム10を金型内に配置する(図示せず。)。車両用遮光フィルム10の上面と金型内部のキャビティ(図示せず。)との間に透明な樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)を射出成形する。樹脂が硬化して樹脂ガラス基材の成形体が形成される。樹脂ガラス基材21と車両用遮光フィルム10が一体成形された積層体20を得る。樹脂ガラス基材の車両用遮光フィルムのない積層体20の下面にハードコート層22が形成される。また車両用遮光フィルム10の周縁部に上述した遮蔽部14を超えない範囲に樹脂(例えば、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合(PC/ABS)樹脂)からなる枠部31が形成され、サンルーフ30が製造される。
先ず、平均粒径20μmの二酸化バナジウム粒子2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:分散媒)17.4gと、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール社製:分散剤)0.6gと、直径0.5mmのZrO2製ビーズ66gとを規格瓶No.10に入れ、ペイントシェーカを用いて、20時間分散処理した。次いで、ZrO2製ビーズから分離して、二酸化バナジウム分散液を得た。一方、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:溶媒)4.4gに、イルガキュア907(BASF社製:光重合開始剤)1.14gを溶解することにより、溶媒を調製した。次に、この溶媒に、ビームセット577(荒川化学工業社製:光硬化性樹脂)6.46gを混合して樹脂溶液を調製した。次に、この樹脂溶液に上記二酸化バナジウム分散液4gを添加し混合して、二酸化バナジウム塗料を得た。
実施例1のアミノ基を有するソルスパース20000(日本ルーブリゾール社製:分散剤)に替えて、アミノ基を有しないソルスパース41000(日本ルーブリゾール社製:分散剤)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二酸化バナジウム分散液を調製した。次いで、実施例1と同じ樹脂溶液に上記二酸化バナジウム分散液4gを添加し混合して、二酸化バナジウム塗料を得た。この二酸化バナジウム塗料を用いて実施例1と同様にしてポリカーボネート板上の硬化した二酸化バナジウム薄膜を得た。
先ず、平均粒径20μmの二酸化バナジウム粒子2.0gと、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(分散媒・可塑剤)17.4gと、ポリカルボン酸(分散剤)0.6gと、直径0.5mmのZrO2製ビーズ66gとを規格瓶No.10に入れ、ペイントシェーカを用いて、20時間分散処理した。次いで、ZrO2製ビーズから分離して、二酸化バナジウム分散液を得た。プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:分散媒)4.4gに、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックBH−8)7.6gと、上記二酸化バナジウム分散液4.0gとを添加し混合して、二酸化バナジウム塗料を得た。この二酸化バナジウム塗料を用いて実施例1と同様にしてポリカーボネート板上の硬化した二酸化バナジウム薄膜を得た。
実施例1、比較例1及び比較例2で得られた二酸化バナジウム薄膜について、目視による観察と、高温環境試験後の目視による観察を行った。ポリカーボネート板上の二酸化バナジウム薄膜の高温環境試験は、80℃のオーブン中で120時間保管した後、目視により白濁やクラックの有無を評価した。
実施例2〜4の二酸化バナジウム塗料は、表1に示す化学反応型樹脂を用いて調製し、実施例5及び6の二酸化バナジウム塗料は、表1に示す乾燥硬化型樹脂を用いて調製した。表1に示した化学反応型樹脂及び乾燥硬化型樹脂以外の配合は、実施例1と同様にして、塗料を調製した。実施例1と同様に、実施例2の二酸化バナジウム塗料をポリカーボネート板上に塗布し、乾燥し、更に紫外線照射して、ポリカーボネート板上に硬化した二酸化バナジウム薄膜を形成した。また実施例1と同様に、実施例3及び4については、二酸化バナジウム塗料をポリカーボネート板上に塗布し乾燥した後に、120℃に10分間保持する加熱を行って、ポリカーボネート板上に硬化した二酸化バナジウム薄膜を形成した。更に実施例1と同様に、実施例5及び6については、二酸化バナジウム塗料をポリカーボネート板上に塗布した後に、90℃に10分間保持する乾燥を行って、ポリカーボネート板上に二酸化バナジウム薄膜を形成した。
比較試験1と同様に、実施例2〜6で得られた二酸化バナジウム薄膜について、目視による観察と、この二酸化バナジウム薄膜の高温環境試験後の目視による観察を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、アクリット8SS−723(大成ファインケミカル社製)とA−1790(テスク社製)は、紫外線で開裂する重合開始剤が既に添加されている化学反応型樹脂である。また、表1において、ビームセット577(荒川化学社製)はアクリル系のモノマーであり、ナイパーNS(日本油脂社製)は熱で開裂する重合開始剤である。
図5に示すように、実施例1の遮光フィルム10を透明なポリカーボネートからなる樹脂ガラス基材21上に積層した積層体20について遮光性能評価装置40を用いてその遮光性能を調べた。具体的には、発泡系断熱材からなる厚さ200mmのボックス41の上面に測定される積層体20を配置した。ボックス41内には温度センサ42が設けられる。ボックス上に配置した積層体20の上面から250mmの高さに500Wの白熱電球43が設置される。遮光性能評価装置40を恒温室に入れ、測定環境温度を0℃と23℃の2段階に変えて、それぞれ積層体20に白熱電球43により900時間光を照射した。そのときのボックス内温度を温度センサ42からの検出出力により測定した。その結果を図6に示す。図6において、上の2つの曲線は、環境温度23℃のとき、下の2つの曲線は、環境温度0℃のときのボックス内の温度曲線であって、各曲線は光照射してから900秒(15分)後のボックス内の温度履歴を示している。900秒後のボックス内の温度を表2に示す。
11、22 ハードコート層
12 二酸化バナジウム薄膜
13 基材フィルム
14 遮蔽部
20 積層体
21 樹脂ガラス基材
30 サンルーフ
31 枠部
Claims (5)
- 二酸化バナジウム粒子と、アミノ基とカルボキシル基又は水酸基のいずれか一方又は双方とを有する分散剤と、アルコール、グリコール、エーテル又はケトンからなる分散媒とを含む二酸化バナジウム分散液と;バインダ樹脂と;を含む二酸化バナジウム塗料を用いて車両用二酸化バナジウム薄膜を製造する方法。
- 請求項1記載の方法により製造された車両用二酸化バナジウム薄膜をフィルム上に形成して車両用遮光フィルムを製造する方法。
- 請求項2記載の方法により製造された車両用遮光フィルムを樹脂基材上に形成して積層体を製造する方法。
- 前記積層体をインサート成形法により形成する請求項3記載の積層体の製造方法。
- 請求項4記載の方法により製造された積層体を含むサンルーフを製造する方法。
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