JP6517375B2 - 高純度五塩化タングステン及びその製造方法 - Google Patents

高純度五塩化タングステン及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6517375B2
JP6517375B2 JP2017566050A JP2017566050A JP6517375B2 JP 6517375 B2 JP6517375 B2 JP 6517375B2 JP 2017566050 A JP2017566050 A JP 2017566050A JP 2017566050 A JP2017566050 A JP 2017566050A JP 6517375 B2 JP6517375 B2 JP 6517375B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wcl
tungsten
reducing agent
wtppm
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017566050A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2018105220A1 (ja
Inventor
高橋 秀行
秀行 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JX Nippon Mining and Metals Corp
Original Assignee
JX Nippon Mining and Metals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JX Nippon Mining and Metals Corp filed Critical JX Nippon Mining and Metals Corp
Publication of JPWO2018105220A1 publication Critical patent/JPWO2018105220A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6517375B2 publication Critical patent/JP6517375B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01GCOMPOUNDS CONTAINING METALS NOT COVERED BY SUBCLASSES C01D OR C01F
    • C01G41/00Compounds of tungsten
    • C01G41/04Halides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01GCOMPOUNDS CONTAINING METALS NOT COVERED BY SUBCLASSES C01D OR C01F
    • C01G23/00Compounds of titanium
    • C01G23/02Halides of titanium
    • C01G23/022Titanium tetrachloride
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01GCOMPOUNDS CONTAINING METALS NOT COVERED BY SUBCLASSES C01D OR C01F
    • C01G28/00Compounds of arsenic
    • C01G28/007Halides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01GCOMPOUNDS CONTAINING METALS NOT COVERED BY SUBCLASSES C01D OR C01F
    • C01G30/00Compounds of antimony
    • C01G30/006Halides
    • C01G30/007Halides of binary type SbX3 or SbX5 with X representing a halogen, or mixed of the type SbX3X'2 with X,X' representing different halogens
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01PINDEXING SCHEME RELATING TO STRUCTURAL AND PHYSICAL ASPECTS OF SOLID INORGANIC COMPOUNDS
    • C01P2006/00Physical properties of inorganic compounds
    • C01P2006/80Compositional purity

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)
  • General Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Geology (AREA)
  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Description

本発明は、半導体素子等の電子デバイス及びその製造プロセス、機能化学品触媒、化合物合成原料等に好適な、高純度の五塩化タングステン及びその製造方法に関するものである。
金属タングステン(W)は、電気的には抵抗率が低く(5〜6μΩ・cm程度)、エレクトロマイグレーションが少ない特性を有し、化学的にも比較的安定であることから、半導体素子等の機能的電子デバイスにおけるコンタクトプラグ、配線、または配線下の拡散バリア層として従来から多く用いられている。拡散バリア層には、タングステンの化合物もしばしば用いられている。
このような金属タングステン、またはその化合物からなる層の形成は、従来からタングステン元素を含有する気相の前駆体化合物を使用した化学気相蒸着(CVD)法によって行われることが多い。また、近年のデバイスの高集積化、高密度化に伴って、配線形成部の狭ピッチ化、コンタクトプラグ部の深部延伸化が進み、タングステン層は高アスペクト比の凹部に形成される傾向にある。高アスペクト比の凹部の側壁も含めて均一にタングステン層を形成するために、まず原子相蒸着(ALD)法を用いて凹部内にWのシード層を均一に形成し、その後前述したCVD法やメッキ法等で厚いタングステン層を形成する技術も使用されている。
タングステン、またはその化合物からなる層をCVDまたはALD法によって形成する際に、従来から前駆体化合物として六フッ化タングステン(WF)が多く用いられてきている(特許文献1等参照)。しかし、WFを用いたプロセスでは、被膜に微量に残留するフッ素(F)がデバイスのエレクトロマイグレーションの原因となったり、前駆体の分解によって生じる高腐食性のフッ素ガス(F)によって装置の一部が腐食されたりする等の問題がある。
上述した問題を解決するものとして、フッ素よりも反応性が低い塩素(Cl)とタングステンの化合物である塩化タングステンを使用することが検討されている。塩化タングステンには、タングステンの価数の違いにより、六塩化タングステン(塩化タングステン(VI):WCl)、五塩化タングステン(塩化タングステン(V):WCl)、四塩化タングステン(塩化タングステン(IV):WCl)、二塩化タングステン(塩化タングステン(II):WCl)といった複数の異なる化合物形態が存在する。
これらの中でも、WClは、WCl等と比較して高蒸気圧であり、高アスペクト比部位へ成膜する際の前駆体として用いた場合の膜厚均一性(ステップカバレッジ)に優れ、さらに基板のエッチングを生じにくいといった特性も有し(特許文献2等参照)、特にCVDまたはALD用の前駆体材料として好適な化合物材料である。
また、WClは、塩化タングステンの中でも多くの溶媒に可溶であるという特性を有し、機能化学品合成時の触媒や、他のタングステン化合物を合成する際の原料としても非常に有用である。このように、5価のタングステン塩化物であるWClは、電子材料用途、化学合成触媒用途、化合物原料用途等において重要性が高まっている化合物であるが、いずれの用途においても高純度の化合物を効率良く得ることが望まれていることはいうまでもない。
従来、WClは、非特許文献1に開示されているように、WClを適当なレベルで水素還元することによって得られていることが多い。また、非特許文献2には、還元剤としてBi、Hg、Sb等を使用して減圧下でWClを還元することによってWClを得る手段が開示されている。この手段によれば、高効率で還元を行うことが可能であり、反応時間を短縮できることに加え、均一な還元によりWCl以外の生成物の発生も大幅に抑えられることが期待できる。
特開2015−193908号公報 特開2015−221940号公報
宅間貴、川久保正一郎、日本化学会誌、1972年、No.5、第865−873頁 V. Kolesnichenko et al., Inorg. Chem., Vol. 37, No. 13 (1998), pp. 3257-3262
しかしながら、従来の水素還元法では、還元効率が低く多大な反応時間を要する上、水素のフロー速度や温度制御が難しいという問題点がある。また、大量生産のためにスケールアップした場合、部分的に還元の程度のムラが生じ、WClの残留物や、WCl、WCl、W等、目的とするWCl以外の生成物が許容される量を超えて生じてしまうという問題もある。
また、還元剤としてBi、Hg、Sb等を使用して減圧下でWClを還元する手段では、工程や条件を適切に設定しなければ、還元剤とWClとの反応生成物が還元中に昇華してしまい、反応が途中で停止して原料中に還元剤が大量に残留してしまうという問題が生じる。さらに、使用するWCl原料に対して得られるWClの収率(原料歩留まり率)が50%以下に止まり、最終的に得られるWClの純度や、収率、反応時間等を考慮した製造歩留りが、必ずしも従来技術に対して期待される程度に達していないという問題もあった。
本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、高純度のWCl5、別観点では適度にドーパント元素を含むWClと、それらを高収率かつ効率的に得るための製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、還元剤を用いてWClを還元してWClを得る方法において、還元剤とWとの塩化物が液相となる状態を維持しつつ圧力、温度範囲を制御して還元を行い、さらにその後減圧蒸留、昇華精製を行うことで高純度のWClが高収率かつ高効率で得られることを見出し、本発明を完成させた。
上述した知見に基づき、本発明は以下の発明を提供するものである。
1)Sb、Ti、およびAsを除く金属不純物含有量が合計10wtppm未満であることを特徴とする五塩化タングステン、
2)Mo含有量が2.0wtppm以下であることを特徴とする、前記1)に記載の五塩化タングステン、
3)Sb、Ti、およびAsから選ばれる1種以上の元素を合計0.01wtppm以上、200000wtppm以下の範囲で含有することを特徴とする、前記1)または2)に記載の五塩化タングステン、
4)Sb、Ti、Asのいずれかの元素を0.01wtppm以上、1wtppm未満、または500wtppm以上、200000wtppm以下のいずれかの範囲で含有することを特徴とする、前記1)〜3)のいずれか一に記載の五塩化タングステン、
5)二塩化タングステン、六塩化タングステン、四塩化タングステン、およびタングステン酸塩化物の含有量が合計5wt%以下であることを特徴とする前記1)〜4)のいずれか一に記載の五塩化タングステン、
6)Sb、Ti、またはAsから選ばれる1種以上の還元剤と六塩化タングステンとを、1.0:2.0〜1.0:5.0のモル比(還元剤:WCl比)で不活性雰囲気中にて均一に混合して混合物を得ること、
前記混合物を、タングステンと還元剤の塩化物が液相となる温度範囲に1〜100時間加熱し、還元して還元物を得ること、
前記還元物を、100Pa以下、90〜130℃の範囲で1〜100時間加熱し、減圧蒸留して減圧蒸留生成物を得ること、
前記減圧蒸留生成物を、100Pa以下、130〜170℃の範囲で1〜100時間加熱して昇華し、70〜120℃で析出させる昇華精製により五塩化タングステンを得ること、
を含む、五塩化タングステンの製造方法、
7)還元時の原料の粒度が200μm以下であることを特徴とする、前記6)に記載の五塩化タングステンの製造方法、
8)前記還元剤としてTiを用いることを特徴とする、前記6)または7)に記載の五塩化タングステンの製造方法、
9)タングステンと還元剤の塩化物が液相となる圧力が0.1〜2MPa、温度が70〜130℃であることを特徴とする、前記6)〜8)のいずれか一に記載の五塩化タングステンの製造方法、
10)水分量10wtppm以下の乾燥窒素フロー雰囲気で還元を行うことを特徴とする、前記6)〜9)のいずれか一に記載の五塩化タングステンの製造方法、
11)五塩化タングステンの収率が65%以上であることを特徴とする、前記6)〜10)のいずれか一に記載の五塩化タングステンの製造方法。
本発明によれば、半導体装置等の電子デバイス用材料や、化学合成用触媒や化合物原料としても使用できるWClを、不純物量元素の含有量が少ないというのみでなく、WCl以外のWCl、WCl等の価数の異なるタングステン塩化物の含有量も少ない高純度品として得ることができる。また、そのような高純度WClを、従来よりも高収率かつ高効率で得ることができるため、製造歩留りを向上させることができ、製品のコストを低減することが可能になる。
本発明を実施するための装置構成例を示す図である。
本発明のWClは、Sb、Ti、およびAsを除く金属不純物含有量が、合計で10wtppm未満の高純度品であることを特徴としている。このような金属不純物は、電子デバイスの配線等が形成される際に配線材料にも不純物として混入し、これが抵抗率の増大、エレクトロマイグレーションの発生、素子内部への拡散等を引き起こし、デバイス性能、寿命の低下や最悪の場合デバイスの故障にも繋がるため排除されることが好ましい。
上述したSb、Ti、およびAsを除く金属不純物含有量は8wtppm未満であることが好ましく、3wtppm未満であることがさらに好ましい。中でも、Moの含有量は2wtppm以下であることが好ましく、1.5wtppm以下であることがさらに好ましい。なお、本発明において微量元素含有量の単位を表す「wtppm」は重量基準の値であることを示すものである。
ここで、本発明における金属不純物とは、Ag、Na、Cd、Co、Fe、In、Mn、Ni、Pb、Zn、Cu、Cr、Ti、Tl、Li、Be、Mg、Al、K、Ga、Ge、As、Sr、Sn、Sb、Ba、Mo、U、およびThの各元素をいうものであり、その含有量とは、基本的には誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)法で分析される値を意味するものである。本発明では、この分析により検出される値が検出下限未満である元素については、当該元素を実質的に含まず含有量を0とみなすこととする。
上記不純物元素のうち、Sb、Ti、およびAsの各元素については、後述するように、WClの製造時に還元剤として使用され得る元素であり、これらが還元剤として使用された場合、他の金属元素と比較して有意に高い含有量を示すものとなる。このように、検出下限を超えて有意に高い含有量が検出される場合には、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES)法により再度正確な含有量を分析し、これを本発明ではSb、Ti、およびAsの含有量とする。
また、本発明のWClは、Sb、Ti、およびAsから選ばれる1種以上の元素を、合計で0.01wtppm以上、200000wtppm未満の範囲で含有することができる。これらのうち、適量のSbまたはAsが含まれる場合には、利用形態によっては電気的特性の制御に寄与するドーパントとして作用するV族(5B族)元素を含むWClとすることができ、適量のTiが含まれる場合には、半導体装置における拡散バリア層の成膜に用いた場合にバリア性、密着性を向上させる作用を付与することができる。
上述したような観点から、ドーパントとしてのSb、Ti、Asの含有量は、低濃度ドーパント用途では0.01wtppm以上とすることが好ましく、形態によって0.05wtppm以上、または0.1wtppm以上としてもよい。低濃度ドーパント用途では、これらの元素の含有量を1wtppm未満とすることが好ましく、形態によって0.8wtppm以下、0.5wtppm以下としてもよい。高濃度ドーパント用途の場合、これらの元素の含有量は500wtppm以上とすることが好ましく、形態によって1000wtppm以上、3000wtppm以上、または5000wtpp以上としてもよい。高濃度ドーパント用途では、これらの元素の含有量を200000wtppm以下とすることが好ましく、形態によって150000wtppm以下、または100000wtppm以下としてもよい。
さらに具体的には、Sbの含有量は500wtppm以上であることが好ましく、形態によって1000wtppm以上、3000wtppm以上、または5000wtppm以上としてもよい。また、Sbが過度に多いと所望のドーパント膜の特性を十分に発揮できなくなる恐れがあるため、20000wtppm以下、形態によって15000wtppm以下、10000wtppm以下、または8000wtppm以下としてもよい。
同様に、Tiについては、形態によって0.1wtppm以上、0.4wtppm以上、または0.8wtppm以上としてもよく、上限は100000wtppm以下、形態によって50000wtppm以下、または35000wtppm以下とすることができ、低Ti量が好ましい場合、20wtppm以下、10wtppm以下、さらには1wtppm以下とすることもできる。
Asについては、形態によって1000wtppm以上、5000wtppm以上、または10000wtppm以上としてもよく、上限は50000wtppm以下、形態によって20000wtppm以下、または14000wtppm以下とできる。
本発明において、WCl以外のWCl、WCl、WClといった価数の異なるタングステン塩化物や、W−O−Cl系の酸塩化物は、前述した元素不純物としては検出されない化合物不純物であるが、これら価数の異なる化合物不純物についても低減されていることが好ましい。本発明のWClは、WCl、WCl、WCl、W−O−Cl系酸塩化物の含有量が合計5wt%以下であることを特徴としている。なお、本発明において、WCl、WCl、WCl、W−O−Cl系酸塩化物の含有量は、熱重量分析(TG)法による測定で、重量変化を定量化することで求められる値である。
上述したWClを得るための手段は特に限定されるものでないが、以下に詳細に示すように、Sb、Ti、およびAsから選ばれる1種以上の元素を還元剤として使用して特定の条件下でWClを還元し、さらに減圧蒸留、昇華精製を行うという方法によれば、高純度のWClを高収率かつ高効率で得ることができるため、このような方法を好ましい製造方法として例示することができる。
上述した方法では、まず、Sb、Ti、およびAsから選ばれる1種以上の還元剤とWClとを、1.0:2.0〜1.0:5.0のモル比で不活性雰囲気中にて均一に混合して混合物を得る工程を実施する。1.0:2.0を超えて還元剤が多い場合、還元剤が多く残留して、後の減圧蒸留、昇華精製工程に多く時間を要することになる。1.0:5.0を超えてWClが多い場合、生成物に未還元のWClが多く残留してしまうことにつながる。還元剤とWClとの混合比は、1.0:3.0〜1.0:4.0であることがさらに好ましく、生成物の金属価数に合わせたモル比(Sb、Asの場合は1.0:3.0、Tiの場合は1.0:4.0)であることが最も好ましい。
上述した工程において、還元剤としてWClを還元する作用を有するSb、Ti、およびAsから選択される1種以上の元素を用いることができる。また、還元剤、還元剤と混合する原料のWClとも高純度のものを使用することが好ましく、例えば純度4N以上のものを好適に使用することができる。原料として高純度のものを使用することで融点が下がり、反応を促進することができる。
還元剤とWClとの混合は、過不足なく十分な還元反応を生じさせるために均一な混合を行えるものであれば特に手段が限定されるものでないが、ボールミル、ジェットミル、攪拌混合機、乳鉢等を用いて行うことができる。ここで、混合を行う際には、原料や還元剤の酸化を防止し、酸素不純物の混入を避けるため、不活性雰囲気中にて行うことが重要である。不活性雰囲気としては、原料や還元剤と常温で反応しないアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の各種希ガス類や、窒素(N)等を用いることができる。
還元剤と原料とが均一に混合された混合物は次の還元工程に供されるが、この時点で少なくとも原料の粒度が200μm以下となっていることが好ましく、還元剤も含めた原料混合物全体の粒度が200μm以下となっていることがより好ましい。このように原料の粒度を小さくすることにより、反応性を高めて効率良く反応を進行させ、未還元物の残留を防ぐことができる。原料または還元剤と原料との混合物の粒度をこのような範囲とするためには、混合前の時点で粒度200μm以下のものを用意する他、前述した各種ミルや乳鉢による混合を、粉砕を兼ねて行うようにしてもよい。粒度は200μm以下であることがより好ましく、形態によって150μm以下としてもよい。なお、本発明において粒度とは粒径分布において全体質量の90%となる径D90を意味するものである。
次に、上述した工程で得た還元剤と原料との混合物を加熱し、還元して還元物を得る工程を実施する。この過程では還元剤が原料に含まれている塩素と反応して還元剤元素の塩化物を形成するが、ここで重要な点は、還元剤元素の塩化物が液相となる圧力、温度範囲を維持するように制御した上で、この還元工程を実施することである。このような条件で還元を行うことにより、反応により形成される還元剤元素の塩化物が過度に昇華して途中で反応が停止してしまい、還元剤が大量に残留したり、WClの収率が大きく低下したりすることを防止できる。
還元時における目安となる圧力と温度の範囲は、還元剤の種類によって異なる。還元剤にSbを使用する場合、0.1〜2MPaの圧力、70〜100℃の温度に制御することで、Sbの塩化物であるSbClが液相となる状態を維持できるが、安定に還元反応を進行させるためには、72〜80℃とすることが好ましい。同様に、還元剤にTiを使用する場合、0.1〜2MPaの圧力、100〜130℃の温度に、還元剤にAsを使用する場合、0.1〜100MPaの圧力、−16〜60℃の温度に、それぞれ維持して還元剤元素の塩化物が液相となる状態を維持して還元することが好ましい。
還元反応を上記の範囲で行うことで、より安定なWClが合成されるよりも前にWClが合成された時点で反応を停止することができる。還元反応は、水分量10wtppm以下の乾燥窒素フロー雰囲気下で行うことが好ましい。また、原料、反応生成物の量にもよるが、十分な反応を行うため、上述した還元反応は1時間以上行うことが好ましく、10時間以上行ってもよい。必要以上に長時間実施しても製造効率上好ましくないため、100時間、形態によって50時間を目途に還元反応を終了する。
次に、上述した工程で得られた還元物を減圧蒸留して減圧蒸留生成物を得る工程を実施する。この工程では、還元物に含まれる不純物を100Pa以下の減圧下、好ましくは50Pa以下の圧力下で蒸留することにより、目標物のWClよりも昇華点が低いSbCl、WOCl、WOCl等の不純物を主に除去する。蒸留時の加熱温度は90〜130℃の範囲とし、1時間以上、好ましくは10〜100時間実施することが好ましい。
さらに、上述した工程で得た減圧蒸留生成物を昇華精製することで高純度のWCl生成物を得る工程を実施する。この工程では、100Pa以下、好ましくは50Pa以下の不活性雰囲気下において、減圧蒸留生成物を昇華させる領域を130〜170℃の範囲に加熱し、WClを再析出させる領域を70〜120℃の範囲に設定して高純度のWClを回収する。昇華精製は、1時間以上、好ましくは10〜100時間実施することが好ましい。これにより、析出部には昇華再析出により高純度のWClが生成する一方、加熱部にはWClよりも昇華点が高いWCl、還元剤元素の酸化物等の不純物が残留する。ここで、回収したWClを再度同様の昇華精製に繰り返し供してもよく、それによって高純度のWClを得ることもできる。
このような本発明の工程の実施に適した装置構成を図1に例示する。(a)−(c)のいずれの形態においても、被処理物101は加熱容器102内で加熱される。還元工程では被処理物101がWClと還元剤との混合物であり、加熱容器内で還元剤の塩化物が液相状態となるよう加熱される。続く減圧蒸留工程では加熱容器101内が減圧され、前記還元工程で還元生成物となった被処理物101が加熱されるが、この時生じるWClよりも昇華点が低い昇華生成物は、コールドトラップ103で冷却され捕集される。さらに続けて、(a)、(b)の形態ではコールドトラップ103を交換の上で析出温度に設定し、加熱容器102を昇華温度に設定して昇華精製を実施する。これにより、コールドトラップ103に精製されたWClが析出する。
一方、(c)の形態では、加熱容器102が、その水平軸方向に温度勾配を設定することが可能な炉を構成しており、昇華部111を昇華温度に、析出部112を析出温度にそれぞれ設定することにより加熱容器102内で昇華精製を行うことが可能である。なお、これらの装置構成は本発明を実施する際に適用できる構成の例を示したものであり、必要に応じて改変を加えた構成や、本発明を実施可能な他の任意の構成を適用してもよいことはいうまでもない。
本発明の方法によれば、従来技術では50%以下に止まっていたWClの収率を65〜80%程度に高めることができる上、還元工程において還元剤元素の塩化物が昇華して反応が停止してしまうこともなく、効率良く高純度のWClを得ることができる。なお、本発明でいうWClの収率とは、原料のWClと還元剤から(1)−(3)式の反応によって理論的に予想される3WClまたは4WClの質量に対して、昇華精製による析出物から実際に回収されたWClの質量を百分率で表した数値((WCl実回収質量/WClの理論回収質量)×100(%))を意味している。
3WCl + Sb → 3WCl + SbCl (1)
4WCl + Ti → 4WCl + TiCl (2)
3WCl + As → 3WCl + AsCl (3)
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものでない。
(実施例1)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのSbを、モル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、150℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるSbの塩化物SbClは液相状態が維持される条件下にある。
続いて、上記還元操作によって得られた還元物を、真空容器中の雰囲気圧力を50Paに維持し、100℃で24時間加熱して昇華させることによって減圧蒸留を実施し、不純物を除去した。さらに、得られた減圧蒸留生成物を、雰囲気圧力が50Paの加熱部に配置して150℃で加熱することで昇華させ、これを90℃の析出部に析出させることで昇華精製を行った。昇華精製時間は24時間である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したSbを除く不純物として、FeおよびMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は9.1wtppmであった。また、Sbについては6000wtppmという結果であった。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、1wt%、および3wt%であり、合計4wt%であった。そして、この例ではWClの収率として78%という値が得られ、還元剤にSbを用いれば高い収率を得ることが可能であった。
(実施例2)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、モル比4:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、130℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるTiの塩化物TiClは液相状態が維持される条件下にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したTiを除く不純物として、KとMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は2.5wtppmとわずかな量であった。また、Tiについても0.9wtppmと微量の残留に抑えることが可能であった。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、0wt%、および1wt%であり、還元剤に適量のTiを用いれば全不純物量を有効に低減することが可能であった。そして、この例ではWClの収率として66%という値が得られた。
(実施例3)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、Tiが余剰となるモル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、130℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるTiの塩化物TiClは液相状態が維持される条件下にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したTiを除く不純物として、KとMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は実施例2と同様に、2.5wtppmとわずかな量であった。しかし、還元剤のTiが実施例2よりも余剰となる条件のこの実施例では、32000wtppmのTiの残留が認められた。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、0wt%、および1wt%であり、還元剤が余剰となるモル比条件であっても、還元剤以外の金属不純物、化合物不純物を有効に低減することが可能であった。そして、この例ではWClの収率として65%という値が得られた。
(実施例4)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのAsを、モル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、120℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるAsの塩化物AsClは液相状態が維持される条件下にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したAsを除く不純物として、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は7.8wtppmであった。また、Asについては12000wtppmという結果であった。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、1wt%、および3wt%であり、合計0.04wt%であった。そして、この例ではWClの収率として69%という値が得られた。
(実施例5)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのSbを、モル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、60℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この実施例では、還元操作中の温度が低いため、還元剤であるSbの塩化物SbClは液相状態とならず固相状態にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したSbを除く不純物として、KとMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は6.4wtppmであった。しかし、還元時の温度が実施例1よりも低い条件のこの実施例では、7000wtppmのSbの残留が認められた。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、70wt%、および10wt%であり、WClの収率は12%であった。還元剤の塩化物が固相のままでは、還元剤以外の金属不純物の低減には有効であるが、WClが多く残留し、収率は大幅に低下する結果となった。
(実施例6)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、モル比4:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、160℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この実施例では、還元操作中の温度が高過ぎるため、還元剤であるTiの塩化物TiClは液相状態とならず気相状態となる。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したTiを除く不純物として、KとMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は3.5wtppmであった。しかし、還元時の温度が実施例2よりも低い条件のこの実施例では、29000wtppmのTiの残留が認められた。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、1wt%、および4wt%であり、WClの収率は19%であった。この例のように、還元剤の塩化物がすぐに気化してしまう場合も、還元剤以外の金属不純物の低減には有効であるが、WClが多く残留し、収率が大幅に低下する結果となった。
(実施例7)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、モル比6:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、130℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この実施例では、還元操作中、還元剤の塩化物は液相状態が維持される条件下にあるが、還元剤の量が少なくなっている。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したTiを除く不純物として、KとMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は2.5wtppmとわずかな量であった。しかし、還元剤の量が実施例2よりも少ない条件のこの実施例では、0.2wtppmのTiの残留が認められ、さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、30wt%、および8wt%であり、WClの収率は8%であった。還元剤量少ない場合、還元剤以外の金属不純物の低減には有効であるが、WClが多く残留し、収率が大幅に低下する結果となった。
(比較例1)
還元剤としてビスマス(Bi)、水銀(Hg)、アルミニウム(Al)、およびリン(P)をそれぞれ適用する形態について、熱力学的なシミュレーションを行って検討した。しかしながら、これらの元素は、塩化物が固相から直接昇華して気相となってしまうため、液相状態を安定に維持することが現実的には不可能であることが判明した。その結果から、高純度かつ高収率でWClの還元を行うことが困難なことが明らかであるため、これらの元素については、還元剤としての適用可能性を検討するにとどまっている。
(比較例2)
純度4NのWClを総質量1kgとなるように真空容器中に入れ、非特許文献1の還元法に倣って容器内の雰囲気を水素流としつつ、350℃で24時間WClを加熱して還元を行った。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して減圧蒸留を実施し、さらに得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行った。減圧蒸留、昇華精製の条件は実施例1と同様である。その後、得られたWClを窒素雰囲気中で回収してアンプルに封入した。
回収したWClについて微量元素分析を行った結果を表1に示す。不純物として、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出され、それらの合計は20wtppmであり、10wtppmを超える量であった。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、15wt%、および4wt%であり、WClの収率はわずか3%にすぎなかった。従来技術として知られる水素還元法は、収率面から工業的生産性という観点では、実際に適用することが非現実的な結果であった。
(比較例3)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのSbを、モル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、150℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるSbの塩化物SbClは液相状態が維持される条件下にある。この例では、還元後の生成物を減圧蒸留、昇華精製することなく直接回収した。
回収した還元生成物について微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したSbを除く不純物として、Na、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出され、それらの合計は37.8wtppmであり、10wtppmを超える量であった。また、還元剤として使用したSbについては、29000wtppmの残留が認められた。さらに、この例では減圧蒸留と昇華精製を行っていないため、生成物中に目的物であるWCl以外の種々の化合物が大量に含まれている。また、昇華精製物が回収できないため、TG法による定量分析が不可能であった。したがって、この例では、最終的に本発明で目的とするWClを得ることができなかった。
(比較例4)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのSbを、モル比3:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、150℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるSbの塩化物SbClは液相状態が維持される条件下にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して、実施例1と同様の条件で減圧蒸留を実施した。この例では、得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行うことなく回収した。
回収した減圧蒸留生成物について微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したSbを除く不純物として、Na、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は37.8wtppmであり、10wtppmを超える量であった。また、還元剤として使用したSbについては、19000wtppmの残留が認められた。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、10wt%、および10wt%であり、WClの収率は34%であった。この例では昇華精製を行っていないため、還元剤、還元剤以外の金属元素不純物が多く、WClの収率も低い結果となった。
(比較例5)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、モル比4:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、130℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるTiの塩化物TiClは液相状態が維持される条件下にある。この例では、還元後の生成物を減圧蒸留、昇華精製することなく直接回収した。
回収した還元生成物について微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したTiを除く不純物として、Na、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出され、それらの合計は36.8wtppmであり、10wtppmを超える量であった。また、還元剤として使用したTiについては、31000wtppmの残留が認められた。さらに、この例も減圧蒸留と昇華精製を行っていないため、生成物中に目的物であるWCl以外の種々の化合物が大量に含まれている。また、昇華精製物が回収できないため、TG法による定量分析が不可能であった。したがって、この例では、最終的に本発明で目的とするWClを得ることができなかった。
(比較例6)
純度4NのWClと、還元剤として純度5NのTiを、モル比4:1で総質量1kgとなるように均一に窒素雰囲気中で乳鉢を用いて混合した。次に、この混合物を真空容器中に入れ、容器内の雰囲気圧力を大気圧(約0.1MPa)に維持しつつ、130℃で24時間混合物を加熱してWClの還元を行った。この加熱による還元操作中、還元剤であるTiの塩化物TiClは液相状態が維持される条件下にある。続けて、上記還元操作によって得られた還元物に対して、実施例1と同様の条件で減圧蒸留を実施した。この例では、得られた減圧蒸留生成物に対して昇華精製を行うことなく回収した。
回収した減圧蒸留生成物について微量元素分析を行った結果を表1に示す。還元剤として使用したSbを除く不純物として、Na、Fe、KおよびMoが検出下限を超えて検出されたが、それらの合計は24.6wtppmであり、10wtppmを超える量であった。また、還元剤として使用したTiについては、11000wtppmの残留が認められた。さらに、TG法により化合物不純物であるWCl、WCl、WCl、およびW−O−Cl系酸塩化物の含有量の定量分析を行ったところ、含有量はそれぞれ、0wt%、0wt%、8wt%、および7wt%であり、WClの収率は58%であった。この例では昇華精製を行っていないため、還元剤、還元剤以外の金属元素不純物が多く、収率は60%未満に止まる結果であった。
本発明によれば、高純度の五塩化タングステンや、適度にドーパント元素を含む五塩化タングステンを高収率で効率良く製造することができる。それにより、半導体装置等の電子部品材料、高純度化学合成用触媒、化合物原料等の用途として要求されるレベルの純度の五塩化タングステン材料を効果的に供給することができるため、半導体機器、電子材料、有機合成化学等の産業分野において大きな貢献が期待できる。

Claims (10)

  1. Sb、Ti、およびAsを除く金属不純物含有量が合計10wtppm未満であり、Sb、Ti、およびAsから選ばれる1種以上の元素を合計0.01wtppm以上、200000wtppm以下の範囲で含有することを特徴とする五塩化タングステン。
  2. Mo含有量が2wtppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の五塩化タングステン。
  3. Sb、Ti、Asのいずれかの元素を0.01wtppm以上、1wtppm未満、または500wtppm以上、200000wtppm以下のいずれかの範囲で含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の五塩化タングステン。
  4. 二塩化タングステン、四塩化タングステン、六塩化タングステン、およびタングステン酸塩化物の含有量が合計5wt%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の五塩化タングステン。
  5. Sb、Ti、またはAsから選ばれる1種以上の還元剤と六塩化タングステンとを、1.0:2.0〜1.0:5.0のモル比(還元剤:WCl比)で不活性雰囲気中にて均一に混合して混合物を得ること、
    前記混合物を、タングステンと還元剤の塩化物が液相となる温度範囲に1〜100時間加熱し、還元して還元物を得ること、
    前記還元物を、100Pa以下、90〜130℃の範囲で1〜100時間加熱し、減圧蒸留して減圧蒸留生成物を得ること、
    前記減圧蒸留生成物を、100Pa以下、130〜170℃の範囲で1〜100時間加熱して昇華し、70〜120℃で析出させる昇華精製により五塩化タングステンを得ること、
    を含む、五塩化タングステンの製造方法。
  6. 還元時の原料の粒度が200μm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の五塩化タングステンの製造方法。
  7. 前記還元剤としてTiを用いることを特徴とする、請求項5または6に記載の五塩化タングステンの製造方法。
  8. タングステンと還元剤の塩化物が液相となる圧力が0.1〜2MPa、温度が70〜130℃であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の五塩化タングステンの製造方法。
  9. 水分量が10wtppm以下の乾燥窒素フロー雰囲気で還元を行うことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の五塩化タングステンの製造方法。
  10. 五塩化タングステンの収率が65%以上であることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の五塩化タングステンの製造方法。
JP2017566050A 2016-12-05 2017-10-06 高純度五塩化タングステン及びその製造方法 Active JP6517375B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016235846 2016-12-05
JP2016235846 2016-12-05
PCT/JP2017/036406 WO2018105220A1 (ja) 2016-12-05 2017-10-06 高純度五塩化タングステン及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018105220A1 JPWO2018105220A1 (ja) 2018-12-06
JP6517375B2 true JP6517375B2 (ja) 2019-05-22

Family

ID=62492186

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017566050A Active JP6517375B2 (ja) 2016-12-05 2017-10-06 高純度五塩化タングステン及びその製造方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US11427479B2 (ja)
EP (1) EP3453679B1 (ja)
JP (1) JP6517375B2 (ja)
KR (1) KR102254275B1 (ja)
TW (1) TWI725247B (ja)
WO (1) WO2018105220A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017130745A1 (ja) 2016-01-28 2017-08-03 Jx金属株式会社 高純度5塩化タングステンおよびその合成方法
KR102535437B1 (ko) * 2017-01-25 2023-05-24 우미코레 아게 운트 코 카게 금속 할로겐화물의 환원 방법
US10710896B2 (en) * 2018-04-30 2020-07-14 L'Air Liquide, Société Anonyme pour l'Etude et l'Exploitation des Procédés Georges Claude Tungsten pentachloride conditioning and crystalline phase manipulation
US11932553B2 (en) * 2018-12-17 2024-03-19 Versum Materials Us, Llc Ultra-high purity tungsten chlorides
WO2024076601A1 (en) * 2022-10-05 2024-04-11 Entegris, Inc. Tungsten precursors and related methods
TW202428522A (zh) * 2022-10-05 2024-07-16 美商恩特葛瑞斯股份有限公司 鎢前驅物及相關方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6437324B2 (ja) 2014-03-25 2018-12-12 東京エレクトロン株式会社 タングステン膜の成膜方法および半導体装置の製造方法
US9595470B2 (en) 2014-05-09 2017-03-14 Lam Research Corporation Methods of preparing tungsten and tungsten nitride thin films using tungsten chloride precursor
US10100406B2 (en) * 2015-04-17 2018-10-16 Versum Materials Us, Llc High purity tungsten hexachloride and method for making same
US20160046408A1 (en) * 2015-10-27 2016-02-18 L'Air Liquide, Société Anonyme pour l'Etude et l'Exploitation des Procédés Georges Claude Internally coated vessel for housing a metal halide
WO2017130745A1 (ja) * 2016-01-28 2017-08-03 Jx金属株式会社 高純度5塩化タングステンおよびその合成方法

Also Published As

Publication number Publication date
TWI725247B (zh) 2021-04-21
EP3453679A4 (en) 2020-03-11
EP3453679B1 (en) 2023-04-05
WO2018105220A1 (ja) 2018-06-14
TW201831407A (zh) 2018-09-01
KR102254275B1 (ko) 2021-05-20
US11427479B2 (en) 2022-08-30
KR20190017941A (ko) 2019-02-20
EP3453679A1 (en) 2019-03-13
JPWO2018105220A1 (ja) 2018-12-06
US20190233301A1 (en) 2019-08-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6517375B2 (ja) 高純度五塩化タングステン及びその製造方法
TWI797363B (zh) 氧氯化鉬或氧氯化鎢及該等之製造方法
JP6720222B2 (ja) 高純度5塩化タングステンおよびその合成方法
US20210009436A1 (en) Method of producing high bulk density molybdenum oxychloride
EP2218529A1 (en) Method for the diffusion alloying of metal powders
US20120264310A1 (en) Method for forming ni film
JP6984073B1 (ja) 高純度モリブデンオキシクロライド及びその製造方法
JP5732772B2 (ja) ルテニウム錯体混合物、その製造方法、成膜用組成物、ルテニウム含有膜及びその製造方法
TWI557074B (zh) 氯化銅、cvd原料、銅配線膜及氯化銅之製造方法
Blakeney et al. Atomic layer deposition of tungsten-rich tungsten carbide films using WCl6 and AlH2 (tBuNCH2CH2NMe2) as precursors
TWI792401B (zh) Vi族前驅物化合物及製備其之方法、以及在基板上形成含有vi族金屬之材料之方法
Osipov et al. Preparation, purification and dissolution of molybdenum oxychloride compounds in water
CN114174216A (zh) 氧卤化物前驱物

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171219

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190129

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190208

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190417

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6517375

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250