JP6516863B2 - モータ制御装置、電気掃除機およびハンドドライヤー - Google Patents

モータ制御装置、電気掃除機およびハンドドライヤー Download PDF

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Description

本発明は、単相の電動機(以下「単相モータ」と称する)を駆動する単相インバータを制御するモータ制御装置ならびに単相モータを用いた電気掃除機およびハンドドライヤーに関する。
電気掃除機およびハンドドライヤーに用いられるモータは、高速回転域では、インバータによって数万rpm(revolution per minute)以上の高速で駆動される。この種の高速で駆動されるモータは、高速回転域において、インバータを1パルススイッチングにて駆動される場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。
特開2015−342号公報
位置センサの信号に基づいてセンサ周期に同期したスイッチング制御を実施するモータ制御装置において、上記特許文献1に示される1パルススイッチング制御を実施すると、モータの制御性の確保が困難となるおそれがある。ここで、「モータの制御性の確保」とは、回転数、騒音またはトルクといったモータの性能指標を良好に保つことである。なお、小型モータになる程、また、モータのイナーシャが小さくなる程、モータの制御性の確保が困難になり、安定したモータ制御の実現が困難となる。
一般的に、モータの制御性を確保するためには、運転周波数、すなわちインバータの出力周波数(以下「インバータ周波数」と称する)の10倍程度の高いキャリア周波数にてインバータを制御することが必要になる。運転周波数の10倍という数値は、高速回転域においても同様である。
しかしながら、制御性確保のためにキャリア周波数を高く設定すると、スイッチング損失の増加によってスイッチング素子の発熱量が大きくなり、放熱性能構造の確保が必要となって、装置が大型化するといった課題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化を抑制しつつ、安定したモータ制御を実現可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るモータ制御装置は、単相インバータによって駆動される単相モータに流れるモータ電流の検出値に基づいて前記単相インバータをPWM制御する制御部を備えたモータ制御装置であって、電圧指令の位相にキャリアを同期させた同期PWM制御と、前記電圧指令の位相に前記キャリアを同期させない非同期PWM制御とが実行され、モータ回転数の増加に応じて前記非同期PWM制御から前記同期PWM制御に切り替えられ、前記非同期PWM制御および前記同期PWM制御に使用するキャリア周波数が前記キャリア周波数の上限値である上限周波数よりも低く設定されている。
本発明によれば、装置の大型化を抑制しつつ、安定したモータ制御を実現することができる、という効果を奏する。
実施の形態1に係るモータ制御システムの構成を示すブロック図 実施の形態1のPWM制御部における入出力信号と内部の構成部との関係を示すブロック図 実施の形態1に係るPWM制御部の詳細構成を示すブロック図 実施の形態1における電圧指令とキャリアとの関係およびPWM信号ならびにモータ印加電圧を示す波形図 AD変換器の構成の一例を示すブロック図 プロセッサとAD変換器との間の信号の授受の一例を示す図 AD変換器の起動およびAD変換器からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャート 禁止範囲を決定するためのフローチャート 同期PWM制御におけるキャリアと電圧指令と組合せのバリエーションの例を示す波形図 非同期PWM制御と同期PWM制御におけるモータ印加電圧を対比して示す波形図 非同期PWM制御の場合の電流THDと同期PWM制御の場合の電流THDとを比較して示した図 キャリア周波数と発生ノイズおよび漏洩電流とを従来と比較した比較図 同期PWM制御を適用した場合におけるAD変換器の起動およびAD変換器からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャート(同期9パルスの場合) 同期PWM制御を適用した場合におけるAD変換器の起動およびAD変換器からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャート(同期8パルスの場合) 禁止期間内でのモータ電流の電流値の推定方法を説明するための図 同期PWM制御を適用した場合におけるAD変換器の起動およびAD変換器からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャート(同期3パルスの場合) 実施の形態2における電気掃除機の構成の一例を示す図 実施の形態2におけるハンドドライヤーの構成の一例を示す図 実施の形態1に係る制御手法を電気掃除機またはハンドドライヤーに適用した運転パターンの一例を示すタイムチャート 実施の形態1に係る制御手法を電気掃除機またはハンドドライヤーに適用した運転パターンの他の例を示すタイムチャート
以下に、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置、電気掃除機およびハンドドライヤーを図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るモータ制御システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、モータ制御システム1は、単相モータ12と、単相モータ12に接続され、単相モータ12に交流電力を供給する単相インバータ11と、単相インバータ11への直流電源となる電源10と、単相モータ12の図示しないステータに設けられ、単相モータ12の図示しないロータの回転位置であるロータ回転位置を検出する位置センサ21と、単相モータ12に流れる交流電流であるモータ電流を検出する電流検出部である電流センサ20と、電源10が単相インバータ11に印加する直流電圧である直流印加電圧を検出する電圧センサ23と、ロータ回転位置、モータ電流および直流印加電圧に基づいて単相モータ12を駆動する単相インバータ11を制御するモータ制御装置2と、を備える。
単相モータ12は、ブラシレスモータである。すなわち、ロータは周方向に配列された図示しない複数個の永久磁石を有する。これらの複数個の永久磁石は、着磁方向が周方向に交互に反転するように配置され、ロータの複数個の磁極を形成する。また、ステータには図示しない巻線が巻回されている。モータ電流は、巻線に流れる交流電流である。以下では、磁極数は4極とするが、これ以外でもよい。
位置センサ21は、ディジタル信号である位置センサ信号をモータ制御装置2に出力する。位置センサ信号は、ロータの回転位置を検出する信号であり、ロータからの磁束の方向に応じて高低の二値を示す。従って、位置センサ信号に含まれるエッジは磁極間に相当する。
電力変換器である単相インバータ11は、スイッチング素子11a1〜11a4、スイッチング素子11a1〜11a4のそれぞれに逆並列に接続された還流ダイオードであるダイオード11b1〜11b4を有して構成される。なお、図1では、スイッチング素子11a1〜11a4としてバイポーラトランジスタを例示しているが、MOSFET(Metal-Oxide-semiconductor Field effect transistor)に代表される電界効果トランジスタでもよい。また、MOSFETを用いる場合、ダイオード11b1〜11b4として寄生ダイオードを用いてもよい。
電流センサ20は、単相モータ12と単相インバータ11との間に接続され、モータ電流を検出する。電流センサ20の検出値はアナログデータである。また、電圧センサ23は、電源10が単相インバータ11に印加する直流印加電圧を検出する。電圧センサ23の検出値もアナログデータである。
モータ制御装置2は、電流センサ20により検出されたモータ電流の検出値であるアナログデータをディジタルデータに変換するアナログディジタル変換器(以下「AD変換器」と表記)30と、電圧センサ23により検出された直流印加電圧の検出値であるアナログデータをディジタルデータに変換するAD変換器35と、AD変換器30から読み取られたモータ電流、AD変換器35から読み取られた直流印加電圧、位置センサ21からの位置センサ信号および図示しない回転数指令(回転速度の指令値)に基づいてPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号を生成する制御部25と、制御部25から出力されたPWM信号に基づいて単相インバータ11内のスイッチング素子11a1〜11a4を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成部32とを備える。
制御部25は、プロセッサ31、メモリ34およびPWM制御部40を有する。制御部25は、公知のPWM制御により、後述するPWM信号を生成する。駆動信号生成部32は、制御部25からのPWM信号に基づいて、単相インバータ11内のスイッチング素子11a1〜11a4のオンまたはオフを制御するための駆動信号を生成して単相インバータ11に出力する。
つぎに、PWM制御部40について、図1から図3の図面を参照して説明する。図2は、実施の形態1のPWM制御部40における入出力信号と内部の構成部との関係を示すブロック図である。図3は、実施の形態1に係るPWM制御部40の詳細構成を示すブロック図である。
PWM制御部40は、図1に示すように、キャリア生成部33およびキャリア比較部38を有する。また、図2に示すように、キャリア生成部33には電圧位相θvが入力され、キャリア比較部38には、電圧位相θv、直流印加電圧Vdcおよび電圧指令Vmが入力される。キャリア生成部33は、電圧位相θvに基づいてキャリアを生成する。キャリア比較部38は、キャリア、直流印加電圧Vdcおよび電圧指令Vmに基づいて、PWM信号Q1〜Q4を生成する。
キャリア生成部33は、図3に示すように、キャリア周波数設定部33aを有する。キャリア周波数設定部33aでは、キャリアの周波数であるキャリア周波数fc[Hz]が設定され、電圧位相θvに同期したキャリアが生成されてキャリア比較部38およびプロセッサ31に出力される。キャリア周波数設定部33aの矢印の先には、キャリア波形の一例として、“0”と“1”との間を上下する三角波キャリアを示している。なお、本実施の形態で説明するPWM制御には、同期PWM制御と非同期PWM制御とがあるが、非同期PWM制御の場合には電圧位相θvに同期させる必要はない。
また、キャリア比較部38は、図3に示すように、絶対値演算部38a、除算部38b、乗算部38c,38d,38f、加算部38e、比較部38g,38hおよび出力反転部38i,38jを有する。絶対値演算部38aでは、電圧指令Vmの絶対値|Vm|が演算される。除算部38bでは、絶対値|Vm|が電圧センサ23によって検出された直流印加電圧Vdcで除算される。なお、図1では、電圧センサ23によって直流印加電圧Vdcを検出するようにしているが、電源10が商用電源に接続されている場合など、電源10の出力電圧が安定している場合には、電圧センサ23の検出値を使用せずに、PWM制御部40の内部で生成した値もしくはプロセッサ31から伝達された値を使用してもよい。
乗算部38cでは、電圧位相θvの正弦値が演算され、除算部38bの出力に乗算される。除算部38dでは、乗算部38cの出力に1/2が乗算される。加算部38eでは、除算部38dの出力結果に1/2が加算される。乗算部38fでは、除算部38bの出力に−1が乗算される。ここで、加算部38eの出力は、スイッチング素子11a1〜11a4のうち、高電位側の直流母線11Pに接続されるスイッチング素子11a1,11a3を駆動するための正側電圧指令Vpとして比較部38gに入力され、乗算部38fの出力は、低電位側の直流母線11Nに接続されるスイッチング素子11a2,11a4を駆動するための負側電圧指令Vnとして比較部38hに入力される。そして、比較部38gの出力はスイッチング素子11a1へのPWM信号となり、比較部38gの出力を反転した出力反転部38iの出力はスイッチング素子11a2へのPWM信号となる。同様に、比較部38hの出力はスイッチング素子11a3へのPWM信号となり、比較部38hの出力を反転した出力反転部38jの出力はスイッチング素子11a4へのPWM信号となる。出力反転部38iの存在により、スイッチング素子11a1とスイッチング素子11a2とが同時にオンすることはなく、出力反転部38jの存在により、スイッチング素子11a3とスイッチング素子11a4とが同時にオンすることはない。
図4は、実施の形態1における電圧指令とキャリアとの関係および生成されるPWM信号ならびに単相モータ12に印加される電圧(以下「モータ印加電圧」と称する)を示す波形図である。図4において、横軸には電圧位相θvをとり、縦軸には上段部から順に、電圧指令Vp,Vnおよびキャリア、PWM信号Q1〜Q4、モータ印加電圧の波形を示している。
図4では、電圧指令Vp,Vnの1周期の間にキャリアの山もしくは谷が9つ含まれ、且つ、電圧指令Vp,Vnとキャリアとは電圧位相θvに関して同期している。すなわち、図4に示す波形は、同期PWMの波形である。このような図4に示される波形は、電圧指令1周期に含まれるキャリアの数から、“同期9パルスの波形”もしくは単に“同期9パルス”と称する。
同期PWM制御の場合、キャリア生成部33は、電圧位相θvに同期したキャリアを生成する。このとき、キャリア比較部38は、キャリアと電圧指令Vp,Vnとの大小を比較し、電圧指令Vp,Vnがキャリアよりも大きければ“High”の信号を生成し、電圧指令Vp,Vnがキャリアよりも小さければ“Low”の信号を生成する。“High”または“Low”となる区間の幅は電圧位相θvによって異なり、一連の“High”または“Low”の信号がPWM信号となる。PWM信号Q1〜Q4に基づく駆動信号によって単相インバータ11のスイッチング素子11a1〜11a4が駆動され、図4の下段部に示すようなモータ電圧が単相モータ12に印加され、単相モータ12は回転する。
つぎに、AD変換器30およびAD変換器35の構成の一例について説明する。なお、AD変換器30およびAD変換器35は、入力される信号が異なるのみであり、基本的な動作は同一である。このため、以下では、AD変換器30について説明し、AD変換器35の構成および動作の説明は割愛する。また、以下では、AD変換器30は逐次比較型である場合について説明するが、AD変換器30の具体的構成は逐次比較型に限定されない。
図5は、AD変換器30の構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、AD変換器30は、制御回路51、比較器52、およびDA(ディジタルアナログ)変換器53を備える。なお、図5に示すAD変換器30の動作の詳細については特開平5−152960号公報に記載されている。
制御回路51は、図示しないプロセッサを有する。比較器52は、DA変換器53からの比較信号COMとアナログ入力信号AINとの大小を比較し、比較結果を制御回路51に出力する。アナログ入力信号AINは、モータ電流に相当する。制御回路51は、比較結果に応じてアナログ入力信号AINを近似する制御信号CNをDA変換器53に出力する。DA変換器53は、制御信号CNに相当する比較信号COMを比較器52に出力する。制御回路51は、比較信号COMをアナログ入力信号AINに逐次近似する制御を実行することで、アナログ入力信号AINに相当するディジタルデータDOUTを求める。制御回路51は、ディジタルデータDOUTを図示しないレジスタに保持する。
図6は、プロセッサ31とAD変換器30との間の信号の授受の一例を示す図である。まず、プロセッサ31は、AD変換器30に起動信号S1を出力する。起動信号S1はAD変換器30にAD変換の開始を指示する信号である。プロセッサ31は、起動信号S1を出力することによりAD変換器30を起動する。
AD変換器30は、起動信号S1を受けると、アナログデータをディジタルデータに変換するAD変換処理を開始する。具体的には、AD変換器30の制御回路51が、起動信号S1を受けると、逐次比較処理を開始する。
AD変換器30は、AD変換完了後、AD変換が完了したことを示す完了信号S2をプロセッサ31に出力する。具体的には、制御回路51が完了信号S2をプロセッサ31に出力する。プロセッサ31は、AD変換器30から完了信号S2を受けた後、AD変換器30からディジタルデータを読み取る。具体的には、プロセッサ31は、制御回路51内のレジスタに記憶されたディジタルデータを読み取る。
このように、AD変換器30は、プロセッサ31から起動信号S1が入力されるとAD変換処理を開始し、AD変換処理が完了するとプロセッサ31に完了信号S2を出力して、AD変換処理を停止する。
つぎに、図7を参照して、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタルデータの読み取りのタイミングについて説明する。図7は、AD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。なお、図7の例は、モータ電流の周期Tと、キャリアの周期Tとが整数倍の関係にはない例、すなわち非同期PWM制御の場合の例である。
図7において、「位置センサ信号」は、プロセッサ31に入力された位置センサ21の出力信号を表す。なお、位置センサ信号の直下に付された角度はロータの機械角である。位置センサ信号は、4極のロータに対応して、機械角で0°、90°、180°、270°、360°にエッジを含む。
「ロータ回転角」は、ロータの電気角を表す。すなわち、磁極数をPとして電気角=機械角×P/2で与えられる。プロセッサ31は、位置センサ信号に基づいてロータ回転角を算出する。なお、ロータ回転角の直下に付された角度は電気角である。
「モータ電流」は、モータ電流の波形を表す。「モータ電流」は、「ロータ回転角」との比較のために示している。図7に示すように、位置センサ信号のエッジはモータ電流のゼロクロス点と同期している。ここでゼロクロス点は、信号の波形における極性の変化点であり、極性が正から負へまたは負から正へ切り替わる点である。図7では、互いに隣り合うゼロクロス点A1,A2を示している。ゼロクロス点A1からゼロクロス点A2までの期間は、ゼロクロス点A1,A2で決まるモータ電流の電気半サイクルである。このように、以下では、まず位置センサ信号のエッジをモータ電流のゼロクロス点と同期させた制御をする場合について説明する。この場合、ロータ回転角は、モータ電流の位相情報を与える。
つぎに、「AD変換器動作タイミング」と「キャリア」について説明する。「AD変換器動作タイミング」はAD変換処理を表し、「キャリア」はキャリアの波形を表す。本実施の形態では、ゼロクロス点を含む一定の位相角範囲はAD変換器30の起動が禁止された禁止範囲とする。具体的には、ゼロクロス点を中心に前後それぞれαからなる合計2αの位相角範囲を禁止範囲とする。プロセッサ31は、禁止範囲内においてAD変換器30に起動信号S1を出力せず、起動信号S1が入力されないAD変換器30はAD変換処理を実行せず、AD変換処理を完了したことを示す完了信号S2を出力しない。
禁止範囲以外の範囲は、AD変換器30の起動が許可された許可範囲である。なお、禁止範囲か許可範囲かに関係なく、AD変換器30からのディジタルデータの読み取りは許可される。許可範囲は、隣り合う禁止範囲間となる。禁止範囲に相当する期間、すなわち禁止範囲を時間に読み替えたものを、以下では禁止期間という。同様に、許可範囲に相当する期間を、以下では許可期間という。禁止期間は禁止範囲と実質同一であり、許可期間は許可範囲と実質同一である。
モータ電流の電気1サイクルである周期Tを使用すると、禁止期間の長さは2×(α/360)×Tで与えられ、モータ電流の電気半サイクルである半周期中における許可期間の長さはT/2−2×(α/360)×Tで与えられる。
αは0よりも大きく、且つ90°未満の予め決められた角度である。図示例では、αは10°である。この場合、禁止範囲は、−10°以上、且つ10°以下の範囲、170°以上、且つ190°以下の範囲、350°以上、且つ370°以下の範囲、530°以上、且つ550°以下の範囲、710°以上、且つ730°以下の範囲である。プロセッサ31は、ロータ回転角を算出した後、ロータ回転角と予め決められたαとに基づいて、禁止範囲および許可範囲を決定する。
なお、図7の例では、プロセッサ31によるAD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りは、キャリア生成部33で発生させるキャリアの山点のタイミングで行っているが、キャリアの山点以外のタイミングで行ってもよいし、谷点のタイミング、または山点と谷点の両方のタイミングで行ってもよい。また、キャリアによらずにタイミングを決めてもよい。ただし、1つのサンプリングデータに対するAD変換処理は、キャリアの周期Tよりも短い時間で実行されるものとする。
つぎに、「AD変換器動作タイミング」について詳細に説明する。以下では、「期間」を用いて説明するが「範囲」に読み替えることもできる。プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、山点のタイミングである時刻t0が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t0は、禁止期間内にあるので、プロセッサ31は、AD変換器30の起動を行わない。
つぎに、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t0に続く山点のタイミングである時刻t1が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t1は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t1において、AD変換器30に起動信号S1を出力する。なお、この場合の許可期間は、ゼロクロス点A1からゼロクロス点A2まで電気半サイクル中に含まれる。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行する。図7では、AD変換中の範囲を斜線付の「AD変換」で示している。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
なお、図7の動作波形は、1つの許可期間内に、キャリアの山点が2個以上含まれる場合の一例である。このため、時刻t1に続く山点のタイミングである時刻t2は、許可期間内にある。そこで、プロセッサ31は、時刻t2において、AD変換器30からディジタルデータを読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタルデータを制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタルデータでレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
つぎに、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t2に続く山点のタイミングである時刻t3が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t3は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t3において、AD変換器30からディジタルデータを読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタルデータを制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタルデータでレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
つぎに、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t3に続く山点のタイミングである時刻t4が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t4は許可期間内にあるので、プロセッサ31は、時刻t4において、AD変換器30からディジタルデータを読み取ると共にAD変換器30に起動信号S1を出力する。そして、プロセッサ31は、このディジタルデータを制御に使用する。AD変換器30は、起動信号S1を受けると、AD変換処理を実行し、AD変換後のディジタルデータでレジスタを書き換える。AD変換器30は、AD変換処理を完了すると、完了信号S2をプロセッサ31に出力し、プロセッサ31はAD変換器30から完了信号S2を受ける。
さらに、プロセッサ31は、算出されたロータ回転角に基づき、時刻t4に続く山点のタイミングである時刻t5が許可期間内にあるか否かの判定を行う。時刻t5は禁止期間内にあるので、AD変換器30に起動信号S1を出力しない。また、プロセッサ31は、時刻t5がゼロクロス点A1からゼロクロス点A2まで電気半サイクル中にあるか否かの判定を行う。時刻t5は当該電気半サイクル中にあるので、プロセッサ31は、時刻t5において、AD変換器30からディジタルデータを読み取る。そして、プロセッサ31は、このディジタルデータを制御に使用する。
プロセッサ31は、単相モータ12の運転中に以上のような動作を繰り返している。
図8は、禁止範囲を決定するためのフローチャートである。図8に示すように、プロセッサ31は、位置センサ信号からロータ回転角を算出し(ステップS101)、算出されたロータ回転角に基づいて、モータ電流のゼロクロス点を算出し(ステップS102)、ゼロクロス点を含む前後αの範囲を禁止範囲に設定する(ステップS103)。
以上の説明では、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期することを前提とした。ここで、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期しない場合の制御について簡単に説明する。
単相モータ12は、運転開始時には、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期するようにして運転される。しかし、回転数の増加に伴い、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点とが同期しなくなる。特に、回転数が例えば7万rpm以上のようないわゆる高回転数領域に達すると、位置センサ信号のエッジとモータ電流のゼロクロス点との非同期が生ずる。このように非同期が生ずると、図8のようにして設定した禁止範囲を再設定する必要が生ずる場合がある。
禁止範囲の再設定は以下のように実施される。プロセッサ31は、AD変換器30から読み取ったディジタルデータを時系列で監視し、同一の許可範囲内でディジタルデータの前回値と今回値とを比較し、前回値と今回値とで極性が切り替わっていないかどうかの判定をする。前回値と今回値とで極性が切り替わった場合は、許可範囲内にゼロクロス点が含まれることになるので、この場合は、検出されたゼロクロス点をもとに、禁止範囲を再設定する。禁止範囲の再設定により、許可範囲も再設定される。以後、プロセッサ31は、再設定された許可範囲内でのみAD変換器30の起動およびAD変換器30からの読み取りを行う。
以上の手法により非同期PWM制御においても、モータ電流の検出が可能である。
つぎに、同期PWM制御を適用した場合におけるモータ電流の検出手法法について説明する。同期PWM制御は、前述した図4の上段部に示す波形ようにモータの電気角周期に対して整数倍のキャリア周波数となるように制御する手法である。同期PWM制御を行うと、電気角周波数が同一であれば電気角周期中のインバータ出力電圧が周期によって変わらず同一の電圧となる。
図9は、同期PWM制御におけるキャリアと電圧指令と組合せのバリエーションの例を示す波形図であり、横軸には電圧位相θvをとり、縦軸には下から、同期3パルス、同期6パルス、同期9パルスで制御するときのキャリアの波形および電圧指令Vpの波形を示している。
同期PWM制御では、電圧指令Vp(電圧指令Vnでも同じ)の周波数に対してキャリアの周波数が例えば3倍、6倍、9倍の関係になるように制御する。キャリアの周波数を、3倍、6倍、9倍と変化させると、キャリアの半周期中に含まれるパルス数が、それぞれ3パルス、6パルス、9パルスであるPWM信号が生成される。キャリアと電圧位相θvとが同期していることから、これらのパルスは、“同期3パルス”、“同期6パルス”、“同期9パルス”と称される。なお、図9では図示していないが、キャリア周波数は9倍より高い周波数に設定することも可能である。ただし、電圧指令Vpの1周期に対してPWM信号のパルス数が増加するため、出力電圧の精度が向上する一方で、スイッチング素子11a1〜11a4のスイッチング回数が増加する。すなわち、キャリア周波数の増大はスイッチング損失の増加に繋がり、キャリア周波数の増大とスイッチング損失の増加とはトレードオフの関係にある。
図10は、非同期PWM制御と同期PWM制御におけるモータ印加電圧を対比して示す波形図であり、図11は、非同期PWM制御の場合のモータ電流に関する全高調波歪(Total Harmonic Distortion:以下「電流THD」と表記)と同期PWM制御の場合の電流THDとを比較して示した図である。非同期PWM制御の場合、図10の上段部に示すように、正電圧側のモータ印加電圧と負電圧側のモータ印加電圧とは、正電圧から負電圧に切り替わる1周期中の中心時刻tに対し、左右が非対称の波形となっており、印加電圧のアンバランスが生じている。これに対し、同期PWM制御の場合には、1周期中の中心時刻tに対し、左右が対称波形となっており、モータ印加電圧のアンバランスは抑制されている。このため、図11に示すように、同期PWM制御の場合の電流THDは、非同期PWM制御の場合の電流THDよりも小さくなる。その結果、同期PWM制御の場合では、電流の歪みにより発生するトルク脈動が抑制でき、単相モータ12の回転数の脈動による振動および騒音の発生を抑制することが可能となる。
なお、非同期PWM制御の場合、電圧指令に対してキャリア周波数が十分高い場合には出力電圧の歪を抑制することが可能であるが、電圧指令に対してキャリア周波数が低い場合には、出力電圧の歪を抑制することは困難である。そのため、非同期PWM制御の場合、キャリア周波数を電圧指令に対して10倍以上に設定することが好ましい。
これに対し、同期PWM制御の場合、電圧指令に対してキャリア周波数が低い状態でも電流の脈動を抑制することができるので、例えば電圧指令に対して3倍〜9倍といった低いキャリア周波数を選択することが可能となる。このため、本実施の形態のように、同期PWM制御と非同期PWM制御とを併用した場合、非同期PWM制御のみで制御する従来に比べて、キャリア周波数を低減させた状態でも、単相モータ12を安定して駆動することが可能となる。
図12は、キャリア周波数と発生ノイズおよび漏洩電流とを従来と比較した比較図である。同期PWM制御を併用してキャリア周波数を低減させた場合、スイッチング素子11a1〜11a4のスイッチング回数が低減するため、単相インバータ11で発生するノイズおよび単相モータ12から漏洩する電流は、図12に示すように、非同期PWM制御のみを行う従来に比べて、低くすることが可能となる。
図13は、同期PWM制御を適用した場合におけるAD変換器30の起動およびAD変換器30からのディジタルデータの読み取りのタイミングを説明するためのタイミングチャートである。図13では、同期9パルスの場合の動作波形を示しており、位置センサのエッジとモータ電流のゼロクロスとは同期している。
同期PWM制御を適用すれば、ロータ回転角の1周期に対して任意のキャリア数(図では9つ)でモータ制御することができるため、AD変換のタイミングを電流位相に対して同一とすることができる。また、禁止期間の判定が容易であるため、AD変換で得られる電流値と位相の関係の推定が容易となり、高精度なモータ制御が可能となる。さらに、ロータ回転周波数の変化に追従してキャリア周波数を変化させるため、ロータ回転数によらず、1周期中に得られる電流データの数を確保することができる。
また、AD変換禁止期間αと同期PWMパルス数の関係から、ロータ回転角1周期中にAD変換の実施可能な回数を推定することができる。逆に、1周期中に必要なAD変換実施回数(すなわちモータ電流検出回数)から同期PWMパルス数を選定することも可能である。なお、ここでの説明は、位置センサのエッジとモータ電流のゼロクロスが同期している場合の説明であるが、AD変換禁止期間と同期PWMパルス数からAD変換実施回数を求めること、AD変換実施回数から同期PWMパルス数を選定することについては、非同期の場合についても実施可能である。
つぎに、本実施の形態の効果について説明する。モータ電流のゼロクロス点ではノイズが発生することが知られている。具体的には、単相インバータ11のスイッチング素子11a1〜11a4のオンまたはオフ動作に際してノイズが発生することから、電流極性が切り替わるゼロクロス点ではスイッチングに起因するノイズがモータ電流に含まれることになる。また、モータ電流のゼロクロス点では、スイッチング素子11a1〜11a4に逆並列に接続されたダイオード11b1〜11b4にリカバリー電流が流れ、このリカバリー電流もノイズの要因となる。
これに対して、本実施の形態では、モータ電流の各ゼロクロス点を含む一定の範囲をAD変換器30の起動を禁止する禁止範囲に設定し、隣接する禁止範囲間にAD変換器30の起動を許可する許可範囲を設定している。
プロセッサ31は、許可範囲内においてAD変換器30に起動信号S1を出力し、且つ当該許可範囲を含む隣り合うゼロクロス点で決まる電気半サイクル中でディジタルデータを読み取る。ここで許可期間はゼロクロス点を含まない連続する期間である。これにより、プロセッサ31は、ゼロクロス点を含まない許可範囲内で起動されたAD変換器30により変換処理されたディジタルデータを制御に使用することができるので、ノイズの制御への影響を抑制し、安定したモータ制御を実現することが可能となる。
また、ノイズの影響を抑制することができることから、モータ制御システム1を備えた電気機器の品質の向上を図ることができる。さらに、ノイズの影響を抑制することで、モータ制御システム1にノイズ除去用のフィルタを設ける場合でも、フィルタ定数を小さくできることから、フィルタの小型化が可能となる、部品の小型化を図ることができる。
一般に、プロセッサ31は、モータ電流の互いに隣り合うゼロクロス点間の期間である電気半サイクルのうち、ゼロクロス点を含まない連続する期間内においてAD変換器30を起動し、AD変換器30が起動された電気半サイクルと同一の電気半サイクル中にAD変換器30の起動により得られたディジタルデータを読み取る。これにより、上記した本実施の形態の効果が得られる。
ここで、モータ電流のゼロクロス点を含まない連続する期間は、同一の許可期間と同義であり、ゼロクロス点を跨いで複数の期間からなるものではないことを意味する。つまり、本実施の形態では、第1の許可期間でAD変換器30を起動し、第1の許可期間後の第2の許可期間でAD変換器30から起動信号S1の入力により変換処理されたディジタルデータを読み取る、といった処理は排除される。
なお、上記説明から明らかなように、モータ電流のゼロクロス点を含まない連続する期間はモータ電流の半周期よりも短く、隣り合うゼロクロス間点に設定される。
また、本実施の形態では、同期PWM制御の併用によって以下の効果を得ることができる。
まず、同期PWM制御により、AD変換のタイミングをあらかじめ想定することができることから、回転数に応じた電流検出条件(検出回数・位相等)を最適に設定することができ、安定性の高いモータ制御が可能となる。
また、同期PWM制御により、キャリア周波数を低減してスイッチング素子のスイッチング回数を削減することが可能となり、インバータのスイッチング損失を低減し、高効率な駆動システムを実現することができる。さらに、スイッチング損失の低減により、インバータ基板の発熱を抑制することが可能となり、放熱用フィンの小型化および削減が可能となる。さらに、放熱フィンの削減により、システムおよび製品の小型化、軽量化が可能である。さらに、放熱構造に関しても自由度が向上するため、放熱のための風路および配置の制約を小さくすることができる。特に、空冷の場合、基板に対して外気を当てなくて済むため、懸念される空気中の塵埃、水分等による短絡、絶縁破壊、素子劣化等の信頼性悪化を抑制することが可能となり、高信頼なシステムの実現可能となる。
また、キャリア周波数の低減により、インバータ短絡防止時間(デッドタイム)の影響を抑制することができ、インバータ出力電圧の上限低下を抑制することができるので、電源がバッテリー等、電力系統から供給されていないシステム(製品)の場合、高効率化と合せて電源部およびシステムの小型化、軽量化、使用期間の長時間化が可能である。
また、同期PWM制御により、モータの誘起電圧歪みを抑制することが可能となり、また、電圧歪みに起因する鉄損および速度変動等に起因する騒音の低減が可能となり、高効率且つ低騒音の駆動システムの実現が可能となる。
また、図12を参照して説明したように、キャリア周波数の低減により、単相インバータ11で発生するノイズおよび単相モータ12からの漏洩電流の抑制が可能となる。ノイズおよび漏洩電流の抑制により、装置の信頼性が向上し、ノイズ対策のコスト低減も可能である。このため、従来の絶縁素材に比べて静電容量が大きいPETフィルムなどの薄い素材をステータのスロットに絶縁として巻いてもよく、巻線の占積率を向上させることができる。また、巻線の占積率を向上によりモータが高効率化し、漏洩電流が増加したとしても、外付け回路等の追加なく対策が可能となる。
図14は、同期PWM制御における同期パルス数のバリエーションの一例を示す図である。図13では、同期9パルスの場合の読み取りタイミングを示したが、図14では、同期8パルスの場合の読み取りタイミングを示している。上述のように、本実施の形態では、モータ電流のゼロクロス点と同期している位置センサ信号のエッジの前後、すなわち位置センサ信号の切り替え付近では電流検出を行わないようにしている。このため、同期パルス数が奇数の場合には、検出を行わない領域とキャリアの山もしくは谷との関係が非対称となるが、同期パルス数が偶数の場合には、電流の正負に関わらず対称となる。その結果、同期パルス数が偶数の場合には、AD変換可能な回数が毎回同数となるため、同期パルス数が奇数の場合に比して、位相における制御性の差異が小さくなり、安定した制御が可能になるという効果がある。
つぎに、禁止期間内におけるモータ制御について説明する。本実施の形態では、禁止期間内は、プロセッサ31はAD変換器30から読み取りを行わないが、禁止期間の直前の許可期間で得られたモータ電流の実測値からモータ電流の電流値を推定し、この推定された電流値を用いてモータ制御を行ってもよい。
図15は、禁止期間内でのモータ電流の電流値の推定方法を説明するための図である。図15において、「位置センサ信号」および「モータ電流」は図7と同様である。「検出電流」は、実際に実測された「検出値」と禁止期間内で推定された「推定値」とからなる。なお、「検出値」は黒丸で、「推定値」は白丸で示している。点N−3から点N−1は禁止期間の直前の許可期間で実測された3点を示している。また、点N+2および点N+3は禁止期間の直後の許可期間で実測された2点を示している。点Nおよび点N+1は、禁止期間で推定された2点を示している。「推定値」は次のようにして求めることができる。禁止期間内にはゼロクロス点が存在するので、モータ電流は直線で近似可能である。そこで、禁止期間の直前の許可期間で実測された直近の2点である点N−2および点N−1を通る直線を求め、当該直線上に電流値が存在すると推定して点Nおよび点N+1を求めることができる。
なお、禁止期間内でのモータ電流の推定方法は上記した例に限定されない。例えば禁止期間の直前の許可期間で実測された直近の複数点を用いて、多項式近似により、点Nおよび点N+1を推定してもよい。
また、モータ制御において、モータ電流を直交2軸のdq軸に分解して制御するベクトル制御を用いる場合、モータ電流を直流量として扱うことができるため、上記した電流値の推定を精度良く行うことが可能となる。
本実施の形態では、禁止範囲を規定するαを例えば10°としたが、これに限定されない。ただし、αをあまり大きくすると、禁止範囲内で推定する電流値の個数が多くなり、αをあまり小さくすると、ゼロクロス点で発生するノイズの影響を受ける可能性がある。そこで、αは例えば5°以上かつ15°以下の範囲から選択するとよい。また、禁止範囲はゼロクロス点に対して非対称でもよい。
なお、本実施の形態では、単相モータ12に位置センサ21を設け、位置センサ21からの位置センサ信号に基づいてロータ回転角を算出しているが、位置センサ21によらずに位置センサ信号を推定してもよい。いわゆるセンサレスモータにおける回転位置の推定については、例えば、特許5619195号公報に記載されている。
スイッチング素子11a1〜11a4およびダイオード11b1〜11b4は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて形成することができる。ワイドギャップ半導体は、例えばGaN(窒化ガリウム)、SiC(シリコンカーバイド)またはダイヤモンドである。スイッチング素子11a1〜11a4にワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子11a1〜11a4の耐電圧性および許容電流密度が高くなるため、スイッチング素子11a1〜11a4の小型化が可能であり、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。また、ワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化も可能になる。
なお、図7、図13および図14では、キャリアの山のみで電流検出を実施する場合を例示したが、キャリアの谷のみで電流検出を実施してもよい。また、図16のように、キャリアの山と谷の双方で電流検出を実施してもよい。図16では、同期PWM制御における同期パルス数のバリエーションとして同期3パルスの場合の読み取りタイミングを示している。図16に示す例によれば、キャリアの山と谷の双方で電流検出を実施するようにしているので、キャリア周波数を低減したとしても、電流検出回数を確保することが可能となり、高効率および高信頼性の装置を実現することができる。
また、本実施の形態ではAD変換をキャリアに同期させて逐次起動させているが、AD変換処理はキャリア同期にて常時実施させて、制御への反映のみ禁止期間のデータを用いない様にしたとしても問題ない。
なお、一般的に単相モータは三相モータに比べて回転数の変動およびトルクの変動(「トルク脈動」ともいう)が起こりやすく、さらに小型のモータであるほどイナーシャが小さいため、トルク脈動の影響を大きく受けやすく、所望の運転条件にて安定駆動することが困難である。
また、非同期PWM制御の場合では、電気角周期中のキャリア数が整数倍の関係ではないので、電気角周期毎でのインバータ出力電圧に差異があり、最適な制御が困難である。これは、電気角周期毎での電気角位相に対するキャリアの位相が異なるため、制御ズレが発生するからであるが、これが原因でモータ制御にてトルクや回転数の変動を起こす原因ともなる。
そこで、本実施の形態のような単相モータの駆動に対しては、同期PWM制御を適用することで、単相モータ特有のトルク脈動以外の制御に起因するトルク変動および回転数変動を抑制することができ、安定したモータ駆動の実現が可能となる。
また、単相モータ駆動において、トルク脈動は周期的に発生するため、同期PWMを実施することでキャリアとモータ位相の関係が容易に推定可能となり、トルク脈動を考慮したインバータ出力制御が比較的容易に実施することができ、安定したモータ駆動の実現が可能となる。
実施の形態2.
実施の形態1では、モータ制御装置2、単相インバータ11および単相モータ12を備えたモータ制御システム1について説明した。本実施の形態では、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を備えた電気機器について説明する。電気機器としては、特に電気掃除機とハンドドライヤーについて説明する。
図17は、電気掃除機61の構成の一例を示す図である。電気掃除機61は、延長管62、吸込口体63、電動送風機64、集塵室65、操作部66、バッテリー67およびセンサ68を備える。電動送風機64は、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を備える。電気掃除機61は、バッテリー67を電源として電動送風機64を駆動し、吸込口体63から吸込みを行い、延長管62を介して集塵室65へごみを吸引する。使用の際は操作部66を持ち、電気掃除機61を操作する。
操作部66は、図示しない電源スイッチおよび加速スイッチを有している。ここで、電源スイッチはバッテリー67から図示しない主回路および制御回路への電源供給を切り替えるスイッチである。また、加速スイッチは、電動送風機64を低速回転から定常回転まで加速させる制御に切り替えるスイッチである。
なお、低速回転とは、定常回転数の1/10以下の回転をいう。例えば定常回転数が10万回転の場合、1万回転以下の回転が低速回転である。
上記した電源スイッチをオンしバッテリー67から主回路および制御回路へ電源供給が開始されることでセンサ68も同時に検出を開始する。
センサ68は、電気掃除機61の動きまたは人の動きを検知する。センサ68から電気掃除機61の動きまたは人の動きを検知した信号が電動送風機64内に入力されたことをトリガーとして、電動送風機64内の図示しないモータの低速起動が開始される。
低速起動開始後に上記した加速スイッチをオンすることでモータは低速回転から定常回転数まで加速する。なお、電源スイッチをオンするより前に加速スイッチをオンしていた場合は、電源スイッチをオンすることで起動から定常回転数まで加速されて通常動作となる。
また、定常回転数で回転している状態から加速スイッチのみをオフした場合、モータは停止せずに低速回転で運転し続ける。低速回転で運転し続けることで、掃除の合間の移動で、蓄積された塵埃が集塵室65から延長管62を伝って排出される可能性を抑制することができる。また、低速回転においても、同期PWMを実施する事で低速駆動中のアイドリング損失を抑制することができる。
センサ68は、電気掃除機61の動きを検知するジャイロセンサまたは人の動きを検知する人感センサである。どちらを用いて起動する場合でも定常回転数までの到達時間を短縮することが可能となる。この際、電気掃除機61に実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より高速な応答においても制御の安定化が可能となる。
モータが回転する際に発生するトルクTは、次式のように、トルク定数Ktとモータ電流Iaとの積により決定される。
T=Kt×Ia
このように、トルクTはモータ電流Iaに比例するため、加速時間を短くするためにはより大きなトルクTを発生させる必要があり、モータ電流Iaも大きくする必要がある。大きな電流Iaを流すことで、消費電力が大きくなり、運転時間が短くなることのメリットが低減し、またバッテリー67を含む部品の信頼性を損ねる。
このような問題を解決するため、加速レートをコントロールすることが一般的である。例えばモータが通常回転数に至るまでの加速時間を延長させることで、運転時間の延長と部品の信頼性を向上させることができる。この際、電気掃除機61に実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、加速時間をコントロールするときに、モータの回転速度の振動を抑制することが可能となる。
さらに、起動時に流れる電流を抑えることで、部品の発熱量を抑えることができることから、部品の信頼性も向上する。
また、加速を緩やかにすることで回転数が緩やかに上昇する形となるので、急加速による振動を抑えることができる。振動を抑えることで人体への不快感および周辺装置への影響を抑えることが可能となる。また、振動を抑えることで、機器から発生する音も抑制することが可能である。
なお、上記のような方法により静止状態から始動する場合は、始動時により大きな力が必要となるため、より多くの電流が必要となる。よって電流のピークを抑えるためには、この始動時の加速度を小さくコントロールすることがより効果的である。電気掃除機61に実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、加速度を細かくコントロールすることができる。
また、これらの加速方法は、使用者が切り替えることができるように切り替えスイッチを設け、使用者が設定できるようにしてもよい。
ここで、ジャイロセンサを用いた場合の動作について説明する。まず、手動で電源スイッチをオンすることにより、ジャイロセンサが電気掃除機61の動きを検知した信号を出力開始する。ジャイロセンサから電気掃除機61の動きを検知した信号が出力されたときに低速回転が開始される。手動により加速スイッチをオンすることにより低速回転から定常回転数まで加速される。掃除が一部完了し、次の掃除場所へ移動する際は、手動により加速スイッチをオフすることにより低速回転が再開される。再度掃除する場合は、手動で加速スイッチをオンすることにより定常回転数まで加速され、掃除終了する場合は、手動により電源スイッチをオフすることで回転が停止される。
ジャイロセンサは、電気掃除機61に取り付けられることで、電気掃除機61の使用の際に生ずる電気掃除機61の動きを検知する。電気掃除機61は使用直前に必ず本体が動く。そこで、電気掃除機61にジャイロセンサを取り付けることで、電気掃除機61の動きを検知して電気掃除機61を予め起動することができる。この際、電気掃除機61に実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より早く定常回転数まで加速することができる。
図18は、ハンドドライヤー70の構成の一例を示す図である。ハンドドライヤー70は、ケーシング71、手検知センサ72、水受け部73、ドレン容器74、カバー76、センサ77、および吸気口78を備える。ここで、センサ77は、ジャイロセンサおよび人感センサの何れかである。ハンドドライヤー70では、ケーシング71内に図示しない電動送風機を有する。電動送風機は、実施の形態1のモータ制御システム1を有する。ハンドドライヤー70では、水受け部73の上部にある手挿入部79に手を挿入することで電動送風機による送風で水を吹き飛ばし、水受け部73からドレン容器74へと水を溜めこむ構造となっている。
センサ77が人感センサである場合の動作を説明する。まず、センサ77により、周囲に人が来たことが検知されて低速で起動する。人が手を乾かすためにハンドドライヤー70に手をかざしたところで定常回転数まで加速される。乾かしが終わり、手挿入部79から手が外に出たところで低速運転が再開される。低速運転中に次の人の手を検出されると再度定常回転数まで加速される。周囲の人を検知しなければ運転停止状態が維持される。
センサ77は、例えば赤外線、超音波、または可視光を検知するセンサである。この他に、温度センサまたはカメラ認識で人を検知するセンサを用いてもよい。
人感センサをハンドドライヤー70に取り付けることで、使用者がハンドドライヤー70に近づいたことを検知してハンドドライヤー70を予め起動することができる。この際、ハンドドライヤー70に実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より早く定常回転数まで加速することができる。
つぎに、本実施の形態に係る電気掃除機61またはハンドドライヤー70に実施の形態1に係る制御手法を適用した場合の運転パターンの一例について説明する。図19は、実施の形態1に係る制御手法を電気掃除機61またはハンドドライヤー70に適用した運転パターンの一例を示すタイムチャートである。図19において、(a)はモータ回転数の変化を示し、(b)はモータ回転数に対するキャリア周波数の変化を示し、(c)は発生ノイズおよび漏洩電流を示している。
図19に示す運転パターンの例では、起動から定常運転速度(定常回転数)までの運転区間である低速運転区間においては非同期PWM制御を行い(図中(1)の運転範囲)、定常運転速度から定常運転速度以上の運転区間である高速運転区間においては、モータ回転数(回転速度)の増加に従って、同期9パルス、同期6パルス、同期3パルスの順で同期PWM制御を行っている。ここで、以下に、この運転パターンにおける同期パルス数と、モータ回転数およびキャリア周波数との典型的な例を2つ示す。
(第1の運転パターン)
非同期 /9パルス /6パルス /3パルス
・モータ回転数 :40000rpm /〜50000rpm/〜70000rpm /〜120000rpm
・キャリア周波数:9kHz /9〜12kHz /8〜12kHz /6〜12kHz
(第2の運転パターン)
非同期 /8パルス /6パルス /4パルス
・モータ回転数 :60000rpm /〜75000rpm/〜100000rpm /〜150000rpm
・キャリア周波数:18kHz /18〜20kHz /15〜20kHz /13.3333〜20kHz
なお、上記に示す第1および第2の運転パターンは一例であり、非同期から同期への切り替え、同期パルス数の切り替えが、これらの数値に限定されるものではない。
図19(a)および図19(b)に示すように、モータ回転数が低い起動時および低速運転域(図中の(1)の区間)においては、キャリア周波数を固定した非同期PWM制御を行う。その際、モータ回転数を定常運転速度まで上昇させ、その後当該定常運転速度を維持させている。区間(1)では、キャリア周波数を固定としているので、図19(c)に示すように、発生ノイズおよび漏洩電流を許容値以下に抑制することができる。
また、同期PWM制御の範囲、すなわち図中の区間(2)〜区間(4)では、非同期PWM制御から同期PWM制御に切り替え、発生ノイズおよび漏洩電流が許容値以下となるようにキャリア周波数を増減しつつ、パルス数を切り替えている。上記区間(2)では、同期9パルスで制御しているが、回転数が増加するに従って発生ノイズおよび漏洩電流が許容値近くまで上昇する。そこで、キャリア周波数に上限周波数を設定し、キャリア周波数が上限周波数を超えないように制御している。なお、キャリア周波数の上限周波数は、マイコンの処理負荷、発生ノイズ、漏洩電流などに基づいて決定することができる。
キャリア周波数が上限周波数に達するか、もしくは達する前に、同期パルス数を小さくする。上記区間(3)では、区間(2)から区間(3)の移行時にキャリア周波数を低減し、且つ、同期パルス数を9から6に切り替えて、発生ノイズおよび漏洩電流が許容値を超えないように抑制している。以下、区間(4)でも同様であり、区間(3)から区間(4)の移行時にキャリア周波数を低減し、且つ、同期パルス数を6から3に切り替えて、発生ノイズおよび漏洩電流が許容値を超えないように抑制している。このように、非同期PWM制御と同期PWM制御を併用し、且つ、同期パルス数を段階的に小さくすることで、発生ノイズおよび漏洩電流を抑制しつつ、起動時から高速運転域までの短時間且つ滑らかな加速を実現している。
また、図20には、図19とは異なる運転パターンの一例を示している。図20(c)には、スイッチング損失およびモジュール温度の特性を示している。
図19に示す運転パターンでは、発生ノイズおよび漏洩電流と、その許容値の関係で区間(2)の範囲を狭くして区間(3)に移行しているが、発生ノイズおよび漏洩電流の許容値に余裕がある場合には、スイッチング損失およびモジュール温度を考慮して運転パターンを決定することができる。図20に示す運転パターンでは、スイッチング損失およびモジュール温度に比較的余裕があるため、区間(2)の範囲を広くすることが可能となる。このため、図19に示す運転パターンに比べて余裕のある同期PWM制御が可能となる。
なお、上記では起動9パルス、6パルスおよび3パルスの動作切替について説明したが、上記第2の例にも示すように、これら以外のパルス数で制御してもよいことは言うまでもなく、また、9パルスを超えるパルス数(例えば21パルス、15パルス、12パルス)で制御することも、本発明の要旨に含まれる。なお、揺らぎ等で瞬間的または一時的に整数倍の関係が崩れることもあるが、そのような場合も整数倍の関係にあることは言うまでもない。また、モータ回転数が低い条件において、モータ回転数が高い条件よりも同期パルス数を少なくして運転してもよい。
以上のように、本実施の形態に係るモータ制御装置は、モータ回転数の増加に応じて非同期PWM制御から同期PWM制御に切り替える制御を行う。その際、非同期PWM制御および同期PWM制御に使用するキャリア周波数は、キャリア周波数の上限値である上限周波数よりも低く設定されている。これにより、モータ回転数が増加しても、発生ノイズおよび漏洩電流が抑制される。
また、本実施の形態に係るモータ制御装置は、同期PWM制御を行う際に、モータ回転数の増加に応じて同期パルス数が小さくなるように制御している。これにより、起動時から高速運転域までの短時間且つ滑らかな加速が実現される。
ここまでは、単相モータを駆動する単相インバータに同期PWM制御を適用することの効果について説明したが、その他の効果について説明する。
電気掃除機61またはハンドドライヤー70などの高速回転のアプリケーションでは、モータには起動時に大きな電流が流れることから、起動回数が増加するに伴ってバッテリーおよび使用素子の信頼性が低下する。よって、モータを停止させることなく低速で回転させ続けることで起動回数を低減することが望まれる。このような高速回転のアプリケーションに対し、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を適用することで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、安定した低速回転を実現することができ、信頼性を向上させることが可能となる。
さらに、低速起動から定常回転数までの到達時間が大幅に短くなることから、こまめに低速回転まで落とすことで消費電力を削減することも可能となる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1によれば、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、モータの回転速度の振動を抑制でき、無駄な消費電力を削減することが可能となる。
一般に、電気掃除機61では、操作部66のスイッチをオンすることで、起動から定常回転数まで到達するが、予め低速運転させておくモードを設けることで、操作部66のスイッチをオンして実際に使用するときまでの時間を大幅に低減することが可能となる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、モータの回転速度の振動を抑制でき、無駄な消費電力を削減することが可能となる。
例えば、電源供給開始から2000rpmまで回転させる時間が1sであり、2000rpmから定常回転数である60000rpmまで回転させる時間が0.3sであるとすると、起動から定常回転数に到達するまでに1.3s必要となる。よって時間がかかる起動を予め行っておくことで、実際に使用する際はスイッチオンから定常回転数までわずか0.3sで実現することが可能となる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、より短い起動時間を実現することが可能となる。
また、入力電流の急峻な立ち上がりが発生する起動時においては、加速レートを低めに設定し急峻な立ち上がりを抑制することで、バッテリーの信頼性を向上させることが可能となる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、急峻な立ち上がりが懸念される起動時においても迅速な電流遮断を実現することが可能となる。
また、低速運転までの加速レートを下げることにより起動時のモータへ流れる電流も小さくなることから半導体素子の発熱を抑制することで部品の発熱を抑えることができ、部品の信頼性の向上につながる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、低い加速レート時の振動を抑制することが可能となる。
半導体素子の発熱除去は、通常であれば熱伝導の良い放熱フィンを素子表面に取り付けるか、あるいは表面実装素子を使用して実装基板へ熱を分散させる方法がとられる。また、放熱用のファンを設けて半導体素子に風を当てて冷やすか、あるいは水冷で冷却する方法もあるが、冷却にかかるコストおよび設置体積の増加から、これらの方法は小型の装置には適さない。しかしながら、本実施の形態で説明した電動送風機を備えた電気機器であれば、電動送風機が発生させる風の通り道にこれらの発熱素子を配置することで追加部品を備えることなく、現状の構成で熱を逃がすことが可能となる。
また、追加部品が必要ないことからコストの増加を抑えることが可能となること、および追加部品を備える分のスペースも必要なくなることから更なる小型化を達成することが可能となる。さらに、小型化が可能な分のスペースをバッテリーに割り当てることで運転時間を延長させることも可能となる。このとき、実施の形態1に記載されたモータ制御システム1を用いることで、モータ電流またはモータ電圧であるアナログ信号の検出精度が向上するため、運転に不必要な無駄な電力を消費することが少なくなるため、より運転時間を延長させることが可能となる。
なお、本実施の形態では、電気掃除機61およびハンドドライヤー70について説明したが、実施の形態1のモータ制御システム1は、モータが搭載された電気機器一般に適用することができる。モータが搭載された電気機器は、例えば、焼却炉、粉砕機、乾燥機、集塵機、印刷機械、クリーニング機械、製菓機械、製茶機械、木工機械、プラスチック押出機、ダンボール機械、包装機械、熱風発生機、物体輸送、吸塵用、一般送排風、またはOA機器である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 モータ制御システム、2 モータ制御装置、10 電源、11 単相インバータ、11a1〜11a4 スイッチング素子、11b1〜11b4 ダイオード、11P,11N 直流母線、12 単相モータ、20 電流センサ、21 位置センサ、23 電圧センサ、25 制御部、30,35 AD変換器、31 プロセッサ、32 駆動信号生成部、33 キャリア生成部、33a キャリア周波数設定部、34 メモリ、38 キャリア比較部、38a 絶対値演算部、38b,38d 除算部、38c,38d,38f 乗算部、38e 加算部、38g,38h 比較部、38i,38j 出力反転部、40 PWM制御部、51 制御回路、52 比較器、53 DA変換器、61 電気掃除機、62 延長管、63 吸込口体、64 電動送風機、65 集塵室、66 操作部、67 バッテリー、68,77 センサ、70 ハンドドライヤー、71 ケーシング、72 手検知センサ、73 水受け部、74 ドレン容器、76 カバー、78 吸気口。

Claims (13)

  1. 単相インバータによって駆動される単相モータに流れるモータ電流の検出値に基づいて前記単相インバータをPWM制御する制御部を備えたモータ制御装置であって、
    電圧指令の位相にキャリアを同期させた同期PWM制御と、前記電圧指令の位相に前記キャリアを同期させない非同期PWM制御とが実行され、
    モータ回転数の増加に応じて前記非同期PWM制御から前記同期PWM制御に切り替えられ、前記非同期PWM制御および前記同期PWM制御に使用するキャリア周波数が前記キャリア周波数の上限値である上限周波数よりも低く設定され
    前記制御部は、前記モータ電流の検出値であるアナログデータをディジタルデータに変換するAD変換器を有し、
    前記制御部は、前記モータ電流の互いに隣り合う極性の変化点で決まる電気半サイクル中における前記極性の変化点を含まない連続する期間内において前記AD変換器を起動し、前記電気半サイクルと同一の電気半サイクル中に前記ディジタルデータを読み取る
    モータ制御装置。
  2. 前記同期PWM制御を行う際に、モータ回転数の増加に応じて同期パルス数が小さくなるように推移する請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記同期パルス数が偶数である請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記制御部は、前記極性の変化点を含む一定の期間である禁止期間内においては、前記AD変換器を起動せず、前記禁止期間以外の期間である許可期間内においては、前記AD変換器を起動し、且つ当該起動より変換処理された前記ディジタルデータを前記AD変換器から読み取る請求項1から3の何れか1項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記制御部は、前記単相モータのロータの回転位置を検出する位置センサ信号に基づいて、前記ロータの電気角であるロータ回転角を算出し、前記ロータ回転角に基づいて、前記禁止期間および前記許可期間を決定する請求項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記制御部は、前記禁止期間の直前の前記許可期間内において前記AD変換器から読み取られた複数個の前記ディジタルデータを用いて、前記禁止期間内における前記モータ電流を推定する請求項に記載のモータ制御装置。
  7. 前記制御部は、キャリアを生成するキャリア生成部を有し、
    前記制御部が前記AD変換器を起動するタイミングは、前記キャリアの山点または谷点のタイミングであり、
    前記制御部が前記AD変換器から前記ディジタルデータを読み取るタイミングは、前記キャリアの山点または谷点のタイミングである請求項からの何れか1項に記載のモータ制御装置。
  8. 前記制御部は、前記モータ電流の極性の変化点を含まない連続する期間内において、前記AD変換器からの前記ディジタルデータの読み取りを複数回行う請求項からの何れか1項に記載のモータ制御装置。
  9. 前記単相モータのロータは、複数個の永久磁石を有する請求項1からの何れか1項に記載のモータ制御装置。
  10. 前記単相インバータは、複数個のスイッチング素子を有し、
    前記複数個のスイッチング素子の各々は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて形成されている請求項1からの何れか1項に記載のモータ制御装置。
  11. 前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム又はダイヤモンドである請求項10に記載のモータ制御装置。
  12. 請求項1から11の何れか1項に記載のモータ制御装置と前記単相インバータと前記単相モータとを備える電気掃除機。
  13. 請求項1から11の何れか1項に記載のモータ制御装置と前記単相インバータと前記単相モータとを備えるハンドドライヤー。
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