JP6515950B2 - 車両制動制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、フロント2輪、リヤ2輪の全輪を制動する第1制動装置と、リヤ2輪を制動する第2制動装置とを備え、上記第1制動装置の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置を作動させるような車両制動制御装置に関する。
一般に、車両の制動装置として、ダイナミックスタビリティコントロールシステム(Dynamic Stability Control System、略してDSC装置)や電動パーキングブレーキ装置(Electric Parking Brake、略してEPB装置)が知られている。
上記DSC装置(液圧ブレーキ装置)は、ブレーキペダルの踏込み操作と独立して、フロント2輪、リヤ2輪を制動可能に構成され、このDSC装置を用いたABS制御も知られている。
ABS(anti−lock brake system、アンチロックブレーキシステム)は、各車輪に車輪速センサを設け、ロック傾向にある車輪のブレーキ油圧を弱めることで、ロックを防ぐものである。
また、上述の電動パーキングブレーキ装置(EPB装置)は、ブレーキペダルの踏込み操作と独立して、ホイールシリンダ内のピストン部を駆動して、リヤ2輪を制動するもので、詳しくは、電動パーキングブレーキスイッチ(いわゆるEPBスイッチ)がオン操作されると、電動モータが回転し、モータ回転力が減速機構にて減速された後、スピンドルを介してホイールシリンダ内のピストン部を押圧し、ブレーキパッドがディスクロータに押圧されて、ブレーキングを行なうものである。
そこで、車両の走行中にEPBスイッチがオン操作されると、液圧ブレーキ装置により、フロント2輪、リヤ2輪にブレーキ液圧が付勢されて減速が実行され、液圧ブレーキ装置の作動中において、例えば、車速が約5km/h以下になった時、電動ブレーキ装置(EPB装置)でリヤ2輪を制動して車両の停車を維持することができる。
車速が約5km/hの時点で電動ブレーキ装置を作動させるのは、当該電動ブレーキ装置の応答時間を考慮しているためである。
ところで、アイスバーン(氷結道路)のような路面の摩擦係数が極めて低い道路(以下、単に極低μ路と略記する)で約5km/hの如き車速の所定しきい値で電動ブレーキ装置を作動させると、車輪がスリップしている状態下においてリヤ2輪がロックされることになり、車両の停止が阻害されると共に、制動距離が長くなるという問題点があった。
一方、特許文献1には、車両の車速が所定値以下の時、ブレーキモータにより制動を行なうもの、すなわち、EPB装置にて制動を実行するものが開示されているが、極低μ路で電動ブレーキ装置を作動させた場合のスリップ防止については、全く開示されていない。
特開2002−262405号公報
そこで、この発明は、極低μ路にて第2制動装置の作動によるスリップを防止し、車両を確実に停止させると共に、制動距離の短縮を図ることができる車両制動制御装置の提供を目的とする。
この発明による車両制動制御装置は、フロント2輪、リヤ2輪の全輪を制動する第1制動装置と、リヤ2輪を制動する第2制動装置とを備え、上記第1制動装置の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置を作動させる車両制動制御装置であって、上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知するスリップ挙動検知手段を設け、上記スリップ挙動検知手段により上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置における上記所定しきい値を下げるしきい値低下手段を備えたものである。
上記構成によれば、上述のスリップ挙動検知手段は、第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知する。
また、上述のしきい値低下手段は、スリップ挙動検知手段により第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置における上記所定しきい値を下げる。
このため、第2制動装置が作動するタイミングを、しきい値低下手段で下げた所定しきい値以下とすることができ、これにより、極低μ路にて第2制動装置の作動によるスリップを防止して、車両を確実に停止させることができると共に、制動距離の短縮を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、緊急状態を推定する緊急状態推定手段を設け、該緊急状態推定手段により緊急状態であると推定された時、上記第1制動装置を作動するものである。
上述の緊急状態は、自車両前方に障害物が存在する場合、運転者心拍数が通常より高い場合、運転者発汗水量が通常より多い場合、運転者表情が通常の表情から逸脱している場合等に設定してもよい。
上記構成によれば、緊急状態推定時には第1制動装置を作動させて緊急制動制御を実行し、フロント2輪、リヤ2輪を制動するので、車両を確実に停止させることができる。
この発明の一実施態様においては、上記第1制動装置は、液圧で全輪を制動する液圧ブレーキ装置に設定され、上記第2制動装置は、モータ駆動によりリヤ2輪を制動する電動ブレーキ装置に設定されたものである。
上記構成によれば、液圧ブレーキ装置(DSC装置)を用いたABS制御で車速を低下させ、車両の停止直前において電動ブレーキ装置(EPB装置)を作動させて、車両を確実に停止させることができる。
この発明の一実施態様においては、上記液圧ブレーキ装置による制動前または液圧ブレーキ装置の制動中に電動ブレーキスイッチが一定時間以上操作された時、緊急制動制御が実行されるものである。
上記構成によれば、電動ブレーキスイッチの操作タイミングが液圧ブレーキ装置を用いたABS制御の作動前および作動中の何れにおいても、緊急制動制御が実行されるので、ブレーキペダルの踏込み途中で電動ブレーキスイッチが操作された場合(制動距離を短縮したい場合)にも対応することができる。
この発明の一実施態様においては、フロント2輪、リヤ2輪のうち少なくとも1輪の車輪速回転数が変動しながら低下するカスケード傾向を検知するカスケード傾向検知手段を設け、上記液圧ブレーキ装置による液圧ブレーキ制動時に上記カスケード傾向検知手段にてカスケード傾向が検知された時、上記電動ブレーキ装置を作動させるものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、極低μ路では車輪速回転数がカスケード傾向を示すが、上記カスケード傾向検知手段にて当該カスケード傾向を確実に検知することができ、少なくとも1輪でカスケード傾向が検知された時、変動ブレーキ装置(EPB装置)を作動させ、EPB制御を行なうことができる。
この発明の一実施態様においては、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段を設け、上記液圧ブレーキ装置および上記電動ブレーキ装置の作動中においては、上記アクセル開度検出手段の出力を無効化する無効化手段を備えたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、アクセルペダル操作により車輪速回転数のカスケード傾向の検知精度が低下する場合があり、液圧ブレーキ装置、電動ブレーキ装置の作動中に、上記無効化手段がアクセル開度検出手段の出力を無効化することにより、スリップを防止することができる。
この発明の一実施態様においては、上記継続した自車両のスリップ挙動検出時において上記第2制動装置が作動する車速の所定しきい値は1km/h以下に設定されたものである。
上記構成によれば、車速の所定しきい値を1km/h以下としたので、車両停止間際のタイミングで第2制動装置を作動させて、リヤ2輪をフルクランプすることで、確実にスリップを防止することができる。
この発明によれば、極低μ路にて第2制動装置の作動によるスリップを防止し、車両を確実に停止させると共に、制動距離の短縮を図ることができる効果がある。
本発明の車両制動制御装置を備えた車両の概略図 電動パーキングブレーキ装置を示す断面図 車両制動制御装置を示す制御回路ブロック図 車両制動制御を示すフローチャート 車両制動制御の他の実施例を示すフローチャート 車輪速回転数のカスケード傾向を示す説明図
極低μ路にて第2制動装置の作動によるスリップを防止し、車両を確実に停止させると共に、制動距離の短縮を図るという目的を、フロント2輪、リヤ2輪の全輪を制動する第1制動装置と、リヤ2輪を制動する第2制動装置とを備え、上記第1制動装置の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置を作動させる車両制動制御装置であって、上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知するスリップ挙動検知手段を設け、上記スリップ挙動検知手段により上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置における上記所定しきい値を下げるしきい値低下手段を備えるという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両制動制御装置を示し、図1は当該車両制動制御装置を備えた車両の概略図である。
図1に示すように、この実施例の車両は、フットブレーキ装置1(フットブレーキ機構)と、DSC(Dynamic Stability Control System)装置2(液圧ブレーキ装置)と、EPB(Electric Parking Brake)装置3(電動パーキングブレーキ装置)と、ECU(Electronic Control Unit)4(制御手段)等を備えている。
一方で、エンジン5は、トルクコンバータを介してクラッチの締結により自動変速機6(いわゆるAT)に駆動力(駆動トルク)を伝達している。
このエンジン5は、エンジン制御部からエンジン停止実行指令を受信したとき、燃料噴射を停止し、エンジン再始動実行指令を受信したとき、再始動動作を実行する。
自動変速機6は、各センサからの入力信号を受けて、エンジン5から入力された駆動力を走行状態および乗員が選択したシフトレンジに応じて所定のトルクおよび回転数に変換し、ギヤトレインおよび差動装置を介して駆動輪に伝達している。
図1に示すように、シフト装置7は、乗員が操作可能なシフトレバー8と、下から順に設定されたD,N,R,Pレンジにそれぞれ対応したシフトインジケータと、装置内部に設置されたシフトポジションセンサ(図示せず)等を備えている。
シフトポジションセンサは、シフトレバー8の移動に応じてスライドするスライダに設けられた可動センサと、スライダを支持する支持部(図示せず)に設けられた固定センサとの相対位置に基づいて、乗員が選択したシフトレンジに対応したシフト位置を検出している。
次に、フットブレーキ装置1について説明する。
フットブレーキ装置1は、ブレーキペダル11の踏込み操作に応じて加圧されたブレーキ液(以下単に、ブレーキ液圧と称する)を前後2対の液圧ブレーキ機構12に供給して前後2対の車輪10を制動可能に構成されている。
図1に示すように、フットブレーキ装置1は、ブレーキペダル11と、マスタシリンダ13と、ブースタ14と、液圧ブレーキ機構12等を備えている。
ブースタ14は、ブレーキペダル11に連動して軸方向に移動可能な可動壁(図示せず)を有し、この可動壁によって区画された負圧室と大気室との差圧を利用してブレーキペダル11の踏込み力を倍力している。車輪10にそれぞれ設けられた液圧ブレーキ機構12は、油路によってマスタシリンダ13に接続され、乗員によるブレーキペダル11の踏込み操作に応じて各車輪10に制動力を付与している。なお、図1において、23はアクセルペダルである。
図2は電動パーキングブレーキ装置(EPB装置)を示す断面図である。
図2に示すように、各液圧ブレーキ機構12は、車輪10に一体回転可能に設けられたディスクロータ15と、このディスクロータ15に制動力を付与可能なキャリパ16等を備えている。キャリパ16は、ディスクロータ15に鞍状に跨って配設されたキャリパ本体17と、このキャリパ本体17の内部にてディスクロータ15を挟んでその両側に配設されたアウタ側ブレーキパッド18とインナ側ブレーキパッド19とを備えている。
インナ側ブレーキパッド19の内側には、ディスクロータ15の軸心方向に移動可能なピストン部21が配設され、このピストン部21は、キャリパ本体17に支持されたホイールシリンダ22の内周に摺動可能に嵌挿されている。ホイールシリンダ22の内部には油路が接続されている。
乗員がブレーキペダル11を踏込み操作すると、ブレーキ液圧が油路を流れてホイールシリンダ22内に供給され、ピストン部21を軸心方向外側に向けて前進させる。
これに伴い、インナ側ブレーキパッド18がディスクロータ15の内側に押し付けられ、この反力により、キャリパ本体17が内側に移動し、アウタ側ブレーキパッド18がディスクロータ15の外側に押し付けられる。これにより、フットブレーキ装置1の制動力を発生させている。
次に、第1制動装置としてのDSC装置2について説明する。
DSC装置2は、ブレーキペダル11の踏込み操作と独立してフロント2輪10およびリヤ2輪10を制動可能に構成されている。
DSC装置2を用いたABS(anti lock brake system、アンチロックブレーキシステム)はフロント2輪10およびリヤ2輪10にそれぞれ車輪速センサ41(図3参照)を設け、ロック傾向にある車輪のブレーキ油圧を弱めることで、ロックを防ぐものである。
次に、第2制動装置としてのEPB装置3について説明する。
EPB装置3は、ブレーキペダル11の踏込み操作と独立して駆動され、所定の条件が成立したとき、図2に示すホイールシリンダ22内のピストン部21を駆動して、リヤ2輪10を制動することで、車両の停止状態を維持するように形成されている。
EPB装置3は、ECU4内に設けられたEPB制御部と、電動ブレーキ機構31(図1、図2参照)等によって構成されている。
EPB制御部は、各センサからの入力信号を受けて、電動ブレーキ機構31の車輪制動力を制御している。具体的には、EPB制御部は、EPBスイッチ32(図1、図3参照)のオン信号に基づき、電動ブレーキ機構31の車輪制動力を所定の荷重になるように制御している。
なお、上述のEPBスイッチ32は、車室内におけるセンタコンソール上部に設けられている。
電動ブレーキ機構31は、図2に示すように、電動モータMを備えており、この電動モータMの出力軸にピニオン33を嵌合すると共に、スクリュ34の一端側においてホイールシリンダ22外に設けた減速ギヤ35と上述のピニオン33とを噛合させている。
また、上述のスクリュ34はホイールシリンダ22内に位置しており、このスクリュ34の他端部にはスピンドルナット36を螺合している。このスピンドルナット36はピストン部21の内周部に配置されており、電動モータMの正転時には、各要素33,35,34,36を介してピストン部21を制動方向に前進させ、電動モータMの逆転時には、各要素33,35,34,36を介してピストン部21を制動解除方向、つまり、リリース方向に後退させるよう構成している。
図3は車両制動制御装置を示す制御回路ブロック図である。
次に、図3を参照してECU4について説明する。
ECU4は、CPU(Central Processing Unit)と、ROMと、RAMと、入力側インタフェースと、出力側インタフェース等によって構成されている。
ROMは制動力制御を実行するためのプログラム(図4、図5参照)を格納し、RAMは、CPUが一連の処理を行なう際に用いるデータやマップ等を記憶する記憶手段である。
ECU4は、各車輪速センサ41、EPBスイッチ32、アクセル開度センサ42、障害物検知手段43からの入力、並びに、ABS作動信号(abs)に基づいて、ROMに格納されたプログラムに従って、第1制動装置としてのDSC装置2、第2制動装置としてのEPB装置3を駆動制御する。
ここで、第1制動装置は、詳しくは、DSC装置2を用いたABS制御を意味する。
車輪速センサ41は各車輪10の回転速度に応じた信号を出力し、ECU4はこれら各車輪速センサ41からの信号に基づいて車速を演算すると共に、DSC装置2を用いたABS制御中においては、ロック傾向にある車輪を特定する。
EPBスイッチ32は、センタコンソールに設けられており、乗員によるEPBスイッチ32のオン操作時にEPB装置3を駆動する指令を出す。
また、液圧ブレーキ装置であるDSC装置2による制動前または制動中に上記EPBスイッチ32が一定時間以上、(例えば、0.5秒以上)操作されると、ECU4は緊急制動制御を実行する。
緊急制動制御は、DSC装置2により4輪のブレーキ液圧を制御して減速度を発生させるもので、フロント2輪、リヤ2輪の4輪に制動力を付勢して高い減速度を発生させ、この減速により車速が所定の車速しきい値以下になった時、EPB装置3により車両を確実に停止させるものである。
アクセル開度センサ42は、図1で示したアクセルペダル23によるアクセル開度を検出して、ECU4にアクセル開度信号を出力するアクセル開度検出手段である。
この実施例の車両制動制御装置は、フロント2輪10、リヤ2輪10の全輪を制動する第1制動装置であるDSC装置2と、リヤ2輪10を制動する第2制動装置としてのEPB装置3とを備え、DSC装置2の作動中において、車速が所定しきい値(例えば、5km/h)以下になった時、EPB装置3を作動させるものである。
上述のECU4の内部には、各車輪速センサ41からの入力に基づいて、フロント2輪10、リヤ2輪10のうち少なくとも1輪の車輪速回転数が、図6に示すように変動しながら低下するカスケード傾向を検知するカスケード傾向検知手段としてのカスケード判定部44が形成されている。
なお、図6は横軸に時間をとり、縦軸に車輪速回転数をとってカスケード傾向を示した説明図であり、図中のV1km/hは、例えば、1km/hに設定されており、V2km/hは、例えば、5km/hに設定されている。
図4は車両制動制御を示すフローチャート、図5は車両制動制御の他の実施例を示すフローチャートであり、図4、図5のフローチャートにおいて各ステップはその処理内容に対応した手段を構成するものである。
図3に示すECU4は、第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知するスリップ挙動検知手段(図4、図5に示すフローチャートのステップS6参照)と、
このスリップ挙動検知手段(ステップS6)により第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、第2制動装置(EPB装置3)における所定しきい値を、通常の車速しきい値(例えば、5km/h)から例えば1km/h以下に下げるしきい値低下手段(図4、図5に示すフローチャートのステップS10参照)と、を兼ねる。
また、ECU4は、緊急状態を推定する緊急状態推定手段(図5に示すフローチャートのステップS3参照)を兼ね、この緊急状態推定手段(ステップS3)により緊急状態であると推定された時、第1制動装置(DSC装置2)を作動するDSC装置作動手段(図5に示すフローチャートのステップS5参照)を含む。
さらに、上述のDSC装置2による制動前またはDSC装置2の制動中にEPBスイッチ32が一定時間以上(例えば、0.5秒以上)操作された時(図5に示すフローチャートのステップS2のYES判定参照)、ECU4は緊急制動制御を実行する緊急制動制御実行手段(図5に示すフローチャートのステップS5参照)を備えている。
さらにまた、上述のECU4は、DSC装置2による液圧ブレーキ制動時にカスケード判定部44にてカスケード傾向が検知された時、EPB装置3を作動させるEPB装置作動手段(図4、図5に示すフローチャートのステップS12参照)を備えている。
加えて、上述のECU4は、DSC装置2およびEPB装置3の作動中においては、アクセル開度センサ42の出力を無効化する無効化手段(図4、図5に示すフローチャートのステップS5,S9,S12参照)を備えている。
このように構成した車両制動制御装置の作用を、以下に説明する。
まず、図4に示すフローチャートを参照して制動制御について説明する。
ステップS1で、ECU4は、各車輪速センサ4、EPBスイッチ32、アクセル開度センサ42からの信号、並びに、ABS作動信号の読込みを実行する。
次に、ステップS4で、ECU4はEPBスイッチ32が操作されたか否かを判定し、NO判定時にはステップS1にリターンする一方、YES判定時には次のステップS5に移行する。
上述のステップS5で、ECU4は乗員の制動要求に対応して、第1制動装置(液圧ブレーキ装置)であるDSC装置2を作動して、フロント2輪10、リヤ2輪10に対する制動を実行すると共に、アクセル開度センサ42から入力されたアクセル開度信号を無効化する。
次にステップS6で、ECU4は車輪速センサ41からの入力に基づいて、自車両の継続したスリップ挙動、例えば、カスケード傾向が検知されたか否かを判定する。自車両が極低μ路を走行している場合には、上述の継続したスリップ挙動(例えば、カスケード傾向)が発生する。
上述のステップS6でNO判定されると次のステップS7に移行し、YES判定されると別のステップS10に移行する。
ステップS7では、スリップ検知でないことに対応して、ECU4は、EPB装置3における所定しきい値(EPB作動開始しきい値)を通常の車速しきい値(例えば、5km/h)に設定される。
次にステップS8で、ECU4はDSC装置2の作動(ステップS5参照)により車速が上述の通常の車速しきい値以下になったか否かを判定し、YES判定時にのみ次のステップS9に移行する。
このステップS9で、ECU4は第2制動装置であるEPB装置3を作動して、リヤ2輪10を制動すると共に、アクセル開度センサ42から入力されたアクセル開度信号を無効化する。
一方、ステップS10では、継続したスリップ挙動(例えば、カスケード傾向)が検知されたことに対応して、ECU4は、EPB装置3における極低μ路対応の車速しきい値(EPB作動開始しきい値)を通常のしきい値(5km/h)から0〜1km/hに下げる。
次にステップS11で、ECU4はDSC装置2の作動(ステップS5参照)により車速が上記極低μ路対応のしきい値(0〜1km/h)以下になったか否かを判定し、YES判定時にのみ次のステップS12に移行する。
このステップS12で、ECU4は車両の停止直前(0〜1km/h参照)に第2制動装置であるEPB装置3を作動して、リヤ2輪10を制動すると共に、アクセル開度センサ42から入力されたアクセル開度信号を無効化する。
このように、図1〜図4で示した実施例の車両制動制御装置は、フロント2輪10、リヤ2輪10の全輪を制動する第1制動装置(DSC装置2参照)と、リヤ2輪10を制動する第2制動装置(EPB装置3参照)とを備え、上記第1制動装置(DSC装置2)の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置(EPB装置3)を作動させる車両制動制御装置であって、上記第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知するスリップ挙動検知手段(ステップS6参照)を設け、上記スリップ挙動検知手段(ステップS6)により上記第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置(EPB装置3)における上記所定しきい値を下げるしきい値低下手段(ステップS10参照)を備えたものである(図3、図4参照)。
この構成によれば、上述のスリップ挙動検知手段(ステップS6)は、第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知する。
また、上述のしきい値低下手段(ステップS10)は、スリップ挙動検知手段(ステップS6)により第1制動装置(DSC装置2)の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置(EPB装置3)における上記所定しきい値を下げる。
このため、第2制動装置(EPB装置3)が作動するタイミングを、しきい値低下手段(ステップS10)で下げた所定しきい値以下とすることができ、これにより、極低μ路にて第2制動装置(EPB装置3)の作動によるスリップを防止して、車両を確実に停止させることができると共に、制動距離の短縮を図ることができる。
この発明の一実施形態においては、上記第1制動装置(DSC装置2)は、液圧で全輪10を制動する液圧ブレーキ装置に設定され、上記第2制動装置(EPB装置3)は、モータM駆動によりリヤ2輪10を制動する電動ブレーキ装置に設定されたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、液圧ブレーキ装置(DSC装置2)を用いたABS制御ユニットで車速を低下させ、車両の停止直前において電動ブレーキ装置(EPB装置3)を作動させて、車両を確実に停止させることができる。
この発明の一実施形態においては、フロント2輪10、リヤ2輪10のうち少なくとも1輪の車輪速回転数が変動しながら低下するカスケード傾向を検知するカスケード傾向検知手段(カスケード判定部44参照)を設け、上記液圧ブレーキ装置(DSC装置2)による液圧ブレーキ制動時に上記カスケード傾向検知手段(カスケード判定部44)にてカスケード傾向が検知された時、上記電動ブレーキ装置(EPB装置3)を作動させるものである。
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、極低μ路では車輪速回転数がカスケード傾向を示すが、上記カスケード傾向検知手段(カスケード判定部44)にて当該カスケード傾向を確実に検知することができ、少なくとも1輪でカスケード傾向が検知された時、変動ブレーキ装置(EPB装置3)を作動させ、EPB制御を行なうことができる。
この発明の一実施形態においては、アクセルペダル23の開度を検出するアクセル開度検出手段(アクセル開度センサ42参照)を設け、上記液圧ブレーキ装置(DSC装置2)および上記電動ブレーキ装置(EPB装置3)の作動中においては、上記アクセル開度検出手段(アクセル開度センサ42)の出力を無効化する無効化手段(各ステップS5,S9,S12参照)を備えたものである(図1、図3、図4参照)。
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、アクセルペダル操作により車輪速回転数のカスケード傾向の検知精度が低下する場合があり、液圧ブレーキ装置(DSC装置2)、電動ブレーキ装置(EPB装置3)の作動中に、上記無効化手段(各ステップS5,S9,S12)がアクセル開度検出手段(アクセル開度センサ42)の出力を無効化することにより、スリップを防止することができる。
この発明の一実施形態においては、上記継続した自車両のスリップ挙動検出時において上記第2制動装置(EPB装置3)が作動する車速の所定しきい値は1km/h以下に設定されたものである(図4参照)。
この構成によれば、車速の所定しきい値を1km/h以下としたので、車両停止間際のタイミングで第2制動装置(EPB装置3)を作動させて、リヤ2輪10をフルクランプすることで、確実にスリップを防止することができる。
次に、図5に示すフローチャートを参照して車両制動制御装置の他の実施例の作用について説明する。なお、図5に示す実施例においても図1〜図3で示した回路装置を用いる。また、図5に示すフローチャートは、図4で示したフローチャートのステップS4に代えて、ステップS2,S3を用いるものである。
図5に示すフローチャートのステップS1で、ECU4は、各車輪速センサ4、EPBスイッチ32、アクセル開度センサ42、障害物検知手段43からの信号、並びに、ABS作動信号の読込みを実行する。
次に、ステップS2で、ECU4はEPBスイッチ32が一定時間以上(例えば、0.5秒以上)操作されたか否かを判定し、NO判定時にはステップS1にリターンする一方で、YES判定時には次のステップS3に移行する。
このステップS3で、ECU4は障害物検知手段43からの信号に基づいて自車両前方に障害物が存在するか否かにより、緊急事態推定か否かを判定し、該ステップS3でのNO判定時にはステップS1にリターンする一方で、YES判定時(緊急事態を推定した時)には次のステップS5に移行する。
なお、ステップS5以降の処理は図4のフローチャートによる処理と同様であるから、図5において図4と同一のステップには同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
ここで、上述の障害物検知手段43による緊急状態の推定に代えて、次のような構成を採用してもよい。
イ)すなわち、ECU4の入力側にドライバの表情を撮影するCCDカメラ等の撮像手段を接続すると共に、ECU4内部にドライバ異常判定部を設け、撮像手段で撮影したドライバの表情を画像処理部で処理し、ドライバの表情が通常の表情から逸脱している(例えば、口があいたまま、又は、顔が硬直している)時、ドライバ異常判定部にて緊急状態であると推定してもよい。
ロ)また、ステアリングホイールにおけるドライバが把持する部分に設けた心拍センサを、ECU4の入力側に接続し、心拍センサで検出した心拍数が通常より高い時、ECU4により緊急状態であると推定してもよい。
ハ)さらに、ステアリングホイールにおけるドライバが把持する部分に設けた発汗センサを、ECU4の入力側に接続し、発汗センサで検出した発汗水量が通常より多い時、皮膚コンダクタンス等の上方に基づいて、ECU4により緊急状態であると推定してもよい。
ニ)ブレーキペダル11の踏込量または踏込速度が通常より大きい時、ECU4にて緊急状態であると推定してもよい。
このように、図1〜図3、図5で示した実施例においては、緊急状態を推定する緊急状態推定手段(ステップS3参照)を設け、該緊急状態推定手段(ステップS3)により緊急状態であると推定された時、上記第1制動装置(DSC装置2)を作動するものである(図5参照)。
上述の緊急状態は、自車両前方に障害物が存在する場合、運転者心拍数が通常より高い場合、運転者発汗水量が通常より多い場合、運転者表情が通常の表情から逸脱している場合等に設定してもよい。
この構成によれば、緊急状態推定時には第1制動装置(DSC装置2)を作動させて緊急制動制御を実行し、フロント2輪10、リヤ2輪10を制動するので、車両を確実に停止させることができる。
また、図5で示したこの実施例においては、上記液圧ブレーキ装置(DSC装置2)による制動前または液圧ブレーキ装置(DSC装置2)の制動中に電動ブレーキスイッチ(EPBスイッチ32)が一定時間以上操作された時(ステップS2のYES判定参照)、緊急制動制御(ステップS5参照)が実行されるものである。
この構成によれば、電動ブレーキスイッチ(EPBスイッチ32)の操作タイミングが液圧ブレーキ装置(DSC装置2)を用いたABS制御の作動前および作動中の何れにおいても、緊急制動制御が実行されるので、ブレーキペダル11の踏込み途中で電動ブレーキスイッチ(EPBスイッチ32)が操作された場合(制動距離を短縮したい場合)にも対応することができる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の第1制動装置は、実施例のDSC装置2(液圧ブレーキ装置)に対応し、
以下同様に、
第2制動装置は、EPB装置3(電動ブレーキ装置)に対応し、
スリップ挙動検知手段は、ECU4制御によるステップS6に対応し、
しきい値低下手段は、ECU4制御によるステップS10に対応し、
緊急状態推定手段は、ECU4制御によるステップS3に対応し、
電動ブレーキスイッチは、EPBスイッチ32に対応し、
カスケード傾向検知手段は、カスケード判定部44に対応し、
アクセル開度検出手段は、アクセル開度センサ42に対応し、
無効化手段は、ECU4制御による各ステップS5,S9,S12に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
以上説明したように、本発明は、フロント2輪、リヤ2輪の全輪を制動する第1制動装置と、リヤ2輪を制動する第2制動装置とを備え、上記第1制動装置の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置を作動させる車両制動制御装置について有用である。
2…DSC装置(第1制動装置)
3…EPB装置(電動ブレーキ装置)
10…車輪
32…EPBスイッチ(電動ブレーキスイッチ)
42…アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)
44…カスケード判定部(カスケード傾向検知手段)
S3…緊急状態推定手段
S5…緊急制動制御実行手段
S6…スリップ挙動検知手段
S5,S9,S12…無効化手段
S10…しきい値低下手段

Claims (7)

  1. フロント2輪、リヤ2輪の全輪を制動する第1制動装置と、
    リヤ2輪を制動する第2制動装置とを備え、上記第1制動装置の作動中において車速が所定しきい値以下になった時、上記第2制動装置を作動させる車両制動制御装置であって、
    上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動を検知するスリップ挙動検知手段を設け、
    上記スリップ挙動検知手段により上記第1制動装置の作動中に自車両の継続したスリップ挙動が検知された時、上記第2制動装置における上記所定しきい値を下げるしきい値低下手段を備えた
    車両制動制御装置。
  2. 緊急状態を推定する緊急状態推定手段を設け、
    該緊急状態推定手段により緊急状態であると推定された時、上記第1制動装置を作動する
    請求項1に記載の車両制動制御装置。
  3. 上記第1制動装置は、液圧で全輪を制動する液圧ブレーキ装置に設定され、
    上記第2制動装置は、モータ駆動によりリヤ2輪を制動する電動ブレーキ装置に設定された
    請求項1または2に記載の車両制動制御装置。
  4. 上記液圧ブレーキ装置による制動前または液圧ブレーキ装置の制動中に電動ブレーキスイッチが一定時間以上操作された時、緊急制動制御が実行される
    請求項3に記載の車両制動制御装置。
  5. フロント2輪、リヤ2輪のうち少なくとも1輪の車輪速回転数が変動しながら低下するカスケード傾向を検知するカスケード傾向検知手段を設け、
    上記液圧ブレーキ装置による液圧ブレーキ制動時に上記カスケード傾向検知手段にてカスケード傾向が検知された時、上記電動ブレーキ装置を作動させる
    請求項3に記載の車両制動制御装置。
  6. アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度検出手段を設け、
    上記液圧ブレーキ装置および上記電動ブレーキ装置の作動中においては、上記アクセル開度検出手段の出力を無効化する無効化手段を備えた
    請求項3に記載の車両制動制御装置。
  7. 上記継続した自車両のスリップ挙動検出時において上記第2制動装置が作動する車速の所定しきい値は1km/h以下に設定された
    請求項1〜6の何れか一項に記載の車両制動制御装置。
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