JP6515867B2 - セル断線検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の電池セルを並列接続してなる電池ブロックを、複数、直列に接続してなる組電池において、前記電池セルの断線の本数を検査するセル断線検査方法に関する。
複数の電池セルを並列接続してなる電池ブロックを、さらに、複数直列に接続してなる組電池が知られている。この種の組電池においては、電池セルの異常の有無を検査することが必要となるが、電池セルそれぞれに電圧センサ等を設けることは、非経済的である。そこで、従来から、電池ブロック全体の電気的特性の変化に基づいて、電池セルの断線の有無を検査する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、組電池全体の電圧値が一定以上変化した際の、複数の電池ブロックの開放電圧の変化量が、規定の閾値以上の場合に、電池セル同士を接続する並列接続体に断線等の異常があると判断する技術が開示されている。この異常の有無判定に用いる閾値は、組電池の劣化度や温度に応じて変化させてもよいことが、特許文献1には、開示されている。
特開2009−216448号公報
ここで、一般に、リチウムイオン二次電池等の二次電池では、充電率(すなわち、state of charge)が低いと、内部抵抗値が増加することが知られている。こうした内部抵抗値の増減は、当然ながら、検出される電池ブロックの電圧値や、電圧値および電流値から算出される電池ブロックの抵抗値等に影響を与える。
特許文献1等の従来の断線検査技術では、こうした充電率による内部抵抗値の変動、ひいては、電池ブロックの電圧値の変動については何ら考慮されていない。その結果、従来の断線検査技術では、断線検査を実行した際の充電率によっては、検査精度が悪くなるおそれがあった。
そこで、本実施形態では、断線検査の精度をより向上できる断線検査方法を提供することを目的とする。
本発明の断線検査方法は、複数の電池セルを並列接続してなる電池ブロックを、さらに、複数、直列に接続してなる組電池において、前記電池セルの断線を検査するセル断線検査方法であって、前記組電池に流れる電流値である組電池電流値と、前記電池ブロックの電圧値と、に基づいて、前記電池ブロックの抵抗値であるブロック抵抗値を取得するステップと、基準となる電池ブロックのブロック抵抗値と、検査対象の電池ブロックのブロック抵抗値と、の比率である抵抗比を、予め規定された比較値と比較した結果に基づいて、当該検査対象の電池ブロックの断線本数に対応する値を特定するステップと、を含み、前記比較値が、前記組電池の充電率に応じて変動する可変値である、ことを特徴とする。
本発明によれば、比較値が、組電池の充電率に応じて変動する可変値であるため、充電率の違いに起因する内部抵抗値の違いを考慮して、断線本数に対応する値を特定でき、断線検査の精度をより向上できる。
電池システムの構成を示す図である。 均等化処理部の構成を示す図である。 断線に伴うブロック抵抗値の見掛け上の増加を説明するイメージ図である。 ブロック充電率とブロック抵抗値との関係を示すグラフである。 断線に伴うブロック充電率のズレを説明するイメージ図である。 組電池充電率と基準抵抗比の関係を示すグラフである。 断線本数判定マップの一例を示す図である。 比較ブロックと基準ブロックの対応関係を示す図である。 断線検査の流れを示すフローチャートである。 制限量マップの一例を示す図である。 他の断線検査の流れを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である断線検査方法を実施する電池システム10の構成を示す図である。また、図2は、均等化処理部14の構成を示す図である。
この電池システム10は、電動車両(例えばハイブリッド自動車や電気自動車)に搭載される。電池システム10は、複数の電池ブロックBn(n=1,2,・・・,bmax)を直列に接続した組電池12を有している。各電池ブロックBnは、複数の電池セルEk(k=1,2,・・・,cmax)を並列に接続して構成される。電池セルEkは、充放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素電池等である。かかる組電池12は、システムメインリレー20およびインバータ22を介して、モータジェネレータ24に接続されている。モータジェネレータ24は、電動車両の駆動源として機能するもので、組電池12からの電力により動力を出力する電動機として機能する。また、モータジェネレータ24は、動力を受けて電力を発電する発電機としても機能し、当該モータジェネレータ24で発電された電力で、組電池12が充電される。
電池システム10は、さらに、電流センサ13と、電圧検出部16と、均等化処理部14と、を備えている。電流センサ13は、組電池12に流れる電流値(以下「組電池電流値Iasと呼ぶ」)を検出する。検出された組電池電流値Iasは、コントローラ18に入力される。電圧検出部16は、組電池12の端子間電圧値である組電池電圧値Vasと、各電池ブロックBnの端子間電圧値であるブロック電圧値と、を検出する。ここで、検出される電圧値としては、電流が流れていないときの端子間電圧である開放電圧値(OCV)と、電流が流れているときの端子間電圧である閉鎖電圧値(CCV)と、がある。通常、充電率(すなわち、state of charge)の算出等には、開放電圧値OCVが用いられる。一方、後述する断線の検査には、各電池ブロックBnの内部抵抗値であるブロック抵抗値RBnが必要であるが、このブロック抵抗値RBnの算出には、電池ブロックBnの開放電圧値OCVと閉鎖電圧値CCVの双方が必要となる。そこで、両者を区別するために、電池ブロックBnの開放電圧値は、「ブロック電圧値VBn」と呼び、電池ブロックBnの閉鎖電圧値は、「閉鎖電圧値CCVBn」と呼ぶ。また、「組電池電圧値Vas」は、特に説明が無い限り、組電池12の開放電圧値を示す。
電圧検出部16は、例えば、対応する電池ブロックBnと並列に接続されたキャパシタと、サンプリングスイッチを介して各電圧値検出線28に接続されたコンパレータ(いずれも図示せず)と、を含む。かかる電圧検出部16の場合、検出したい電池ブロックBnに対応するサンプリングスイッチをオンにすることで、当該電池ブロックBnの電圧値(対応するキャパシタの電圧値)がコンパレータから出力される。また、電圧検出部16は、組電池12全体と並列に接続されたキャパシタおよびサンプリングスイッチを有しており、組電池電圧値Vasも検出する。電圧検出部16で検出された電圧値VBn,CCVBn,Vasは、A/D変換後、コントローラ18に入力される。
均等化処理部14は、電池ブロックBn間でのブロック電圧値VBn、ひいては、充電率のバラツキを均等化する部位である。電池セルEkの自己放電量には、バラツキがあり、このバラツキに起因して各電池セルEkの電圧値、ひいては、ブロック電圧値VBnにもバラツキが生じる。ブロック電圧値VBnのバラツキが発生すると、電池セルEkの劣化が加速的に進行したり、利用可能なエネルギ量が低下したりする。かかる問題を避けるために、必要に応じて特定の電池ブロックBnを放電させて、当該特定の電池ブロックBnのブロック電圧値VBnを下げる均等化処理部14が設けられている。均等化処理部14は、電池ブロックBnと並列に接続された均等化回路26を、電池ブロックBnの個数分、有している。均等化回路26は、図2に示すように、抵抗素子Rとスイッチング素子SWと、を直列に接続した回路である。
コントローラ18は、特定の電池ブロックBnのブロック電圧値VBnが、他の電池ブロックBnのブロック電圧値VBnよりも高いときには、当該特定の電池ブロックBnと並列に接続されたスイッチング素子SWをオフからオンに切り替えることにより、特定の電池ブロックBnを放電させる。そして、この放電処理を、ブロック電圧値VBnが一定以上に高い電池ブロックBn全てに対して行うことで、複数の電池ブロックBnのブロック開放電圧値VBnを均等に揃えることができる。以下では、電池ブロックBn間でのブロック電圧値VBnのバラツキを揃える処理を、「均等化処理」と呼ぶ。
コントローラ18は、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)を備えており、必要に応じて各種演算や、制御信号の送受信を行う。より具体的には、コントローラ18は、均等化処理部14の駆動を制御したり、組電池12の充電率を算出したりする。組電池充電率とは、組電池12の満充電量に対する現在の充電量の比率を示す値で、一般的には、SOC(state of charge)と呼ばれるものである。
コントローラ18は、この組電池12の充電率を、組電池12の開放電圧値(組電池電圧値Vas)および組電池電流値Iasから算出する。すなわち、一般に、組電池12の充電率は、組電池電圧値Vasと一定の関係を持っており、組電池電圧値Vasにほぼ比例する。したがって、コントローラ18は、組電池電圧値Vasが得られれば、当該組電池電圧値Vasに基づいて組電池12の充電率を算出する。また、組電池12に負荷が接続(システムメインリレー20がオン)されており、開放電圧値(組電池電圧値Vas)の取得が困難な場合、コントローラ18は、直近で得られた組電池電圧値Vasから求まる組電池12の充電率に、積算電流値Ahから求まる充電率の増減量を加算したものを、組電池12の充電率として算出する。なお、充電率としては、組電池12全体の充電率の他に、電池ブロックBnごとの充電率もある。以下では、組電池12全体の充電率を「組電池充電率Cas」と呼び、電池ブロックBnごとの充電率を、「ブロック充電率CBn」と呼ぶ。
また、コントローラ18は、電圧検出部16で検出されたブロック電圧値VBnや、閉鎖電圧値CCVBn、組電池電流値Iasに基づいて電池セルEkの断線の有無検査も行う。この電池セルEkの断線検査について詳説する。電池セルEkの断線とは、複数の電池セルEkを並列接続する接続線が途中で断線し、一部の電池セルEkと、残りの電池セルEkとの電気的接続が損なわれることである。例えば、図2における位置P1において断線が生じると、その近傍の電池セルE1と、他の電池セルEkとの電気的接続が損なわれ、電池セルE1が電気的に機能しなくなる。この場合、電池ブロックBnの電池容量が低下することになる。
かかる電池セルEkの断線が生じると、電池ブロックBnの内部抵抗値(以下「ブロック抵抗値RBn」という)の見掛け上の値が増加する。これについて図3を参照して説明する。通常、ブロック抵抗値RBnは、直接測定することは出来ないため、測定された電圧値VBn,CCVBnおよび組電池電流値Iasから算出される。一つの電池ブロックBnの閉鎖電圧値CCVBnの値は、当該電池ブロックBnを構成する電池セルEkに流れる電流をセル電流値Ieとした場合、次の式1で表される。
CCVBn=VBn−RBn・Ie 式1
ここで、一つの電池セルEkに流れる電流値Ieは、測定できないため、通常、セル電流値Ieは、組電池電流値Iasを、電池セルEkの規定の並列数Mで割った値としている(Ie=Ias/M)。したがって、ブロック抵抗値RBnは、測定可能な値であるブロック電圧値VBn、閉鎖電圧値CCVBn、および、組電池電流値Iasを用いて、式2のように表すことができる。コントローラ18は、この式2に基づいて、ブロック抵抗値RBnを算出している。
Bn=(VBn−CCVBn)・M/Ias 式2
電池セルEkの断線が生じると、組電池電流値Iasは、変化しないが、閉鎖電圧値CCVBnが低下する。これは、断線に伴い、電流密度が増加し、式1におけるIeの値が大きくなるからである。例えば、規定の並列数M=5の場合において、一つの電池セルEkが断線したとする。この場合、断線後のセル電流値Iebは、断線前の値Ieaの5/4倍となる(Ieb=5/4・Iea)。実際のセル電流値Ieが増加すれば、検知される閉鎖電圧値CCVBnが低下する。そして、閉鎖電圧値CCVBnが低下することにより、式2に基づいて算出されるブロック抵抗値RBnが見掛け上、増加する(ただし、実際に増加しているのは、セル電流値Ieであって、ブロック抵抗値RBnではない。)。
本実施形態では、この電池セルEkの断線に伴い生じる、ブロック抵抗値RBnの見掛け上の増減に基づいて、電池セルEkの断線本数を判定している。具体的に説明すると、本実施形態では、基準となる電池ブロック(以下「基準ブロックBi」と呼ぶ)のブロック抵抗値RBiと、検査対象の電池ブロック(以下「対象ブロックBj」と呼ぶ)のブロック抵抗値RBjと、の比率である抵抗比RRi−jを求める。抵抗比RRi−jは、次の式3で表される。
RRi−j=|(RBj/RBi−1)×100| 式3
抵抗比RRi−jが求まれば、この抵抗比RRi−jを予め規定された基準抵抗比RRh(比較値)と比較する。基準抵抗比RRhは、断線本数がh本のときに生じると予想される抵抗比である。本実施形態では、1〜4本までの断線の有無を判別するために、基準抵抗比RR1〜RR4を予め設定し、メモリに記憶している。対象ブロックBjの抵抗比RRi−jが得られれば、当該RRi−jを基準抵抗比RR1と比較し、RRi−j<RR1なら、対象ブロックBjには、断線が生じていないと判断する。一方、RRi−j≧RR1なら、続いて、抵抗比RRi−jを基準抵抗比RR2と比較する。比較の結果、RRi−j<RR2なら、対象ブロックBjには、1本の断線が生じていると判断し、RRi−j≧RR2なら、続いて、抵抗比RRi−jを基準抵抗比RR3と比較する。そして、同様の手順をRR4まで繰り返し、対象ブロックBjに含まれる断線本数を特定する。
断線本数が特定できれば、コントローラ18は、特定された断線本数に応じて、入出力電力許容値Win,Woutを制限する。この入出力電力許容値Win,Woutの制限態様としては、種々考えられる。本実施形態では、この制限を、最も断線本数が多い電池ブロックBnを基準として行う。具体的には、入出力電力許容値Win,Woutの制限率Qを算出するが、規定の並列数をM、最も断線本数が多い電池ブロックBnの断線本数をMbとした場合、制限率Qは、Q=(M−Mb)/Mとなる。この制限率Qが得られれば、コントローラ18は、標準の入出力電力許容値Win_st,Wout_stに制限率Qを乗算した値を、新たな入出力電力許容値Win,Woutとして設定する。
ところで、上述した通り、電池ブロックBnのブロック抵抗値RBnは、断線に伴い見掛け上、増減するが、この見掛け以上の増減に加えて、さらに、ブロック充電率CBnの違いにより、ブロック抵抗値RBnが実際に増減することもある。すなわち、リチウムイオン二次電池等の二次電池では、充電率に応じて、内部抵抗値が変化することが知られている。図4は、リチウムイオン二次電池におけるブロック充電率CBnとブロック抵抗値RBnとの関係を示すグラフである。図4に示す通り、電池ブロックBnのブロック抵抗値RBnは、ブロック充電率CBnが低くなるほど、増加する。
ここで、断線が生じていない電池ブロックBaと、断線が生じた電池ブロックBbとは、充放電を繰り返す過程で、そのブロック充電率CBa,CBbに差が生じる。これについて図5を参照して説明する。図5は、充電率80%で均等化処理した後、放電を繰り返した際のブロック充電率CBa,CBbのイメージ図である。所定の充電率(開放電圧値)になるように均等化処理した直後においては、図5の左側に示す通り、断線の有無に関わらず、全ての電池ブロックBa,Bbの充電率CBa,CBbは、ほぼ等しい。
均等化処理の後、放電を行うと、断線が生じた電池ブロックBbは、断線のない電池ブロックBaに比べて、容量が低下しているため、充電率の低下量が大きくなる。結果として、電池ブロックBbの充電率CBbは、電池ブロックBaの充電率CBaよりも小さくなる。例えば、充電率80%で均等化処理した後、正常な電池ブロックBaの充電率CBaが10%になるまで放電したとする。この場合、断線の生じている電池ブロックBbの充電率CBbは、2.3%となる(規定の並列数が10の場合)。こうしたブロック充電率の違いは、実際のブロック抵抗値の違いを生じる。すなわち、図4の例では、ブロック充電率2.3%の電池ブロックBbは、ブロック充電率10%の電池ブロックBaと比べて、実際のブロック抵抗値がΔRだけ大きくなる。つまり、断線が生じた電池ブロックBnは、断線が生じていない電池ブロックBaと比べて、ブロック充電率の変動特性が異なっており、その結果、実際のブロック抵抗値も異なる。
つまり、断線が生じた電池ブロックBnのブロック抵抗値RBnには、断線に起因する見掛け上のブロック抵抗値RBnの増加(実際はセル電流値の増加)に加え、充電率に起因する実際のブロック抵抗値RBnの増減が含まれている。抵抗比RRi−jと基準抵抗比RRhとの比較に基づいて、断線本数を特定する際には、ブロック充電率CBnに依存した実際のブロック抵抗値RBnの変化も考慮する必要がある。
そこで、本実施形態では、断線本数を特定する際の比較値となる基準抵抗比RRhを、組電池充電率Casに応じて変化する可変値としている。図6は、本実施形態で用いる基準抵抗比RR1〜RR4の一例を示すグラフである。図6において、黒菱形は、RR1、黒正方形は、RR2、黒三角形は、RR3、黒丸は、RR4の値を示している。図6から明らかな通り、RRhは、特定する断線本数が高いほど大きくなる。したがって、組電池充電率Casが同じであれば、RR4>RR3>RR2>RR1となる。また、RRhは、組電池充電率Casが小さくなるにつれ、増加する。
ところで、本実施形態では、基準抵抗比RRhを組電池充電率Casに応じて変化させているが、本来であれば、基準抵抗比RRhは、断線が生じていない正常な電池ブロックBnのブロック充電率CBnに応じて変化させることが望ましい。しかし、断線検査を実施している際には、断線の生じていない、正常な電池ブロックBnを特定できない。そこで、本実施形態では、正常な電池ブロックBnのブロック充電率CBnでは無く、組電池充電率Casに応じて、基準抵抗比RRhを変化させている。一部の電池セルEkが断線した場合、組電池12全体の容量も低下するが、電池ブロックBnと異なり、組電池12全体における電池セルEk一つの影響は、非常に小さい。したがって、セル断線に伴う組電池12の容量低下は、実質的に無視することができ、組電池充電率Casの変動特性は、正常な電池ブロックBnのブロック充電率の変動特性と、ほぼ同じとみなすことができる。
本実施形態では、抵抗比RRi−jと断線本数との関係を示す断線本数判定マップを、複数の組電池充電率Casごとに用意しておき、当該断線本数判定マップを参照して、断線本数を特定する。図7は、断線本数判定マップの一例を示す図である。図7において、横軸は、抵抗比RRi−jを、縦軸は、断線本数を示している。また、破線は、組電池充電率Cas=10%の場合の判定線を、実線は、組電池充電率Cas=80%の場合の判定線を示している。図7において、判定線が一段階上昇するときの抵抗比RRi−jが、基準抵抗比RRhである。図7に示すように、ブロック充電率CBnに応じて、断線と判定するための基準抵抗比RRhが異なる。したがって、例えば、組電池充電率Cas=80%のときには抵抗比RRi−j=X%で、断線本数は2本と判定されるが、組電池充電率Cas=10%のときには、抵抗比RRi−j=X%でも断線本数は、1本と判定される。
このように、基準抵抗比RRhを、組電池充電率Casに応じて変化させることで、断線本数をより正確に判定することができる。そして、これにより、断線本数が、実際よりも多めに判定されること、ひいては、入出力電力許容値Win,Woutが過剰に制限されることが防止できる。
次に、基準ブロックBiと対象ブロックBjの選択について説明する。本実施形態では、検査対象である対象ブロックBjのブロック抵抗値RBjと、基準となる基準ブロックBiのブロック抵抗値RBiとの比率に基づいて、断線の有無を判断している。ここで、誤差の影響を低減するためには、比較する二つの電池ブロックBi,Bjの電池特性、例えば、電池抵抗や電池容量は、互いに類似していることが望ましい。電池特性の差は、劣化によるものと、温度特性によるものが多く、劣化も温度による感度が大きい。そのため、二つの電池ブロックBnそれぞれの温度特性が近ければ、これら二つの電池ブロックBnの電池特性も類似していることが多い。そこで、本実施形態では、温度特性が基準ブロックBiに近い電池ブロックを、対象ブロックBjとして設定している。
図8は、基準ブロックBiと対象ブロックBjとの対応関係の一例を示す図である。図8に示すように、図面手前側から冷却風が供給される場合、手前側から奥側にいくほど、冷却がされにくく、電池温度が高くなりやすい。換言すれば、奥行き方向の位置が同じ電池ブロックBnは、温度特性、ひいては、電池特性が類似していると言える。そのため、図8の下段に示すように、最も手前側に位置する電池ブロックB8,B9,B13の断線検査の際には、同じく最も手前側に位置する電池ブロックB1を基準ブロックとして選択する。また、最も奥側に位置する電池ブロックB5,B12,B16の断線検査の際には、同じく、最も奥側に位置する電池ブロックB4を基準ブロックとして選択する。そして、コントローラ18は、こうした基準ブロックBiと対象ブロックBjとの対応表を予め記憶しておき、断線検査の際には、当該対応表を参照して、対象ブロックBjに対応する基準ブロックBiを特定する。
次に、本実施形態における断線検査処理の流れについて図9を参照して説明する。図9は、断線検査処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す通り、コントローラ18は、まず、各電池ブロックBnの電圧値VBn、CCVBn、組電池電流値Iasを取得する(S10)。次に、コントローラ18は、得られたパラメータに基づいて、各電池ブロックBnのブロック抵抗値RBnを算出する(S12)。ブロック抵抗値RBnが算出できれば、続いて、コントローラ18は、電池ブロックB1〜Bbmaxそれぞれの抵抗比RRi−jを算出する(S14〜S22)。
具体的には、コントローラ18は、メモリに記憶されている対応表を参照して、対象ブロックBjに対応する基準ブロックBiを特定する(S16)。次に、この基準ブロックBiと対象ブロックBjの抵抗比RRi−j=|(Rj/Ri−1)×100|を算出する(S18)。抵抗比RRi−jを算出すれば、続いて、コントローラ18は、全ての電池ブロックBnについて検査が終了したか否かを判断する(S20)。抵抗比RRi−jを算出していない電池ブロックBnが存在する場合、すなわち、j≠bmaxの場合は、j=j+1としたうえで(S22)、ステップS16に戻る。
一方、全ての電池ブロックBnの抵抗比RRi−jが算出できれば、すなわちj=bmaxとなれば、コントローラ18は、ステップS24に進む。この時点で、抵抗比RRi−jは、電池ブロックBnの個数bmax分、算出されるが、ステップS24では、このbmax個の抵抗比RRi−jのうち、最大の抵抗比RRi−jを最大抵抗比RRmaxとして特定する。
次に、コントローラ18は、現在の組電池充電率Casに基づいて、使用する断線本数判定マップを特定する(S26)。そして、特定された断線本数判定マップに、最大抵抗比RRmaxを照らし合わせて、断線本数Mbを推定する(S28)。
断線本数Mbが、推定できれば、続いて、コントローラ18は、この断線本数Mbに基づいて、入出力電力許容値Win,Woutの制限率Qを算出する(S30)。制限率Qは、上述した通り、断線前の並列数をM、断線本数Mbとした場合、Q=(M−Mb)/Mである。そして、制限率Qが求まれば、断線検査は、終了となる。コントローラ18は、得られた制限率Qに応じて、入出力電力許容値Win,Woutを制限する。
以上の説明から明らかな通り、本実施形態では、組電池充電率Casに応じて、最大抵抗比RRmaxと比較する値(断線本数判定マップに規定された値)を変更している。その結果、充電率のズレに起因するブロック抵抗値RBnの違いも考慮して断線本数が判定できるため、断線検査の精度をより向上できる。
なお、本実施形態では、抵抗比RRi−jから断線本数Mbを特定しているが、断線本数に対応する値であって、制限率Qを算出できる値であれば、抵抗比RRi−jから他のパラメータを特定してもよい。例えば、制限率Qを、Q=100/(100+q)と表したときの制限量qを、抵抗比RRi−jから求めるようにしてもよい。この制限量qは、断線本数Mbが大きくなるほど、大きくなる値であり、断線本数に対応する値と言える。
図10は、抵抗比と、制限量qとの関係を示す制限量マップの一例を示す図である。図10において、横軸は、抵抗比RRi−jであり、縦軸は、制限量qを示す。また、図10において実線は、組電池充電率Casが80%のときの制限量qを、破線は、組電池充電率Casが10%のときの制限量qを示している。図10に示す通り、抵抗比RRi−jが大きくなるほど、制限量qも大きくなり、制限率Qは、小さくなる。また、組電池充電率Casが小さい程、制限量qに対する抵抗比RRi−jは大きくなっている。コントローラ18は、こうした制限量マップに基づいて、制限率Qを求める。
図11は、制限量マップを利用した断線検査処理の流れを示すフローチャートである。この場合、ステップS10〜S24まで、すなわち、最大抵抗比RRmaxを求めるまでの流れは、図9を参照して説明した断線検査処理の流れと同じである。最大抵抗比RRmaxが求まれば、コントローラ18は、現在の組電池充電率Casに基づいて、参照する制限量マップを特定する(S32)。制限量マップが特定できれば、続いて、コントローラ18は、特定された制限量マップに、最大抵抗比RRmaxを照らし合わせて、制限量qを推定する(S34)。制限量qが推定できれば、続いて、コントローラ18は、この制限量qに基づいて、入出力電力許容値Win,Woutの制限率Q=100/(100+q)を算出する(S36)。そして、制限率Qが求まれば、断線検査は、終了となる。コントローラ18は、得られた制限率Qに応じて、入出力電力許容値Win,Woutを制限する。
以上、説明したように、本実施形態でも、最大抵抗比RRmaxと比較する値(制限量マップで規定された値)を、組電池充電率Casに応じて変化させている。その結果、ブロック充電率CBnのズレに起因するブロック抵抗値RBnの違いも考慮して制限量q(断線本数を示す値)を判定できるため、断線検査の精度をより向上できる。
10 電池システム、12 組電池、13 電流センサ、14 均等化処理部、16 電圧検出部、18 コントローラ、20 システムメインリレー、22 インバータ、24 モータジェネレータ、26 均等化回路、28 電圧値検出線、Bn 電池ブロック、CBn ブロック充電率、CCVBn 閉鎖電圧値、Cas 組電池充電率、Ek 電池セル、Ias 組電池電流値、Ie セル電流値、RBn ブロック抵抗値、RRi−j 抵抗比、VBn ブロック電圧値、Vas 組電池電圧値。

Claims (1)

  1. 複数の電池セルを並列接続してなる電池ブロックを、さらに、複数、直列に接続してなる組電池において、前記電池セルの断線を検査するセル断線検査方法であって、
    前記組電池に流れる電流値である電池電流値と、前記電池ブロックの電圧値と、に基づいて、前記電池ブロックの抵抗値であるブロック抵抗値を取得するステップと、
    基準となる電池ブロックのブロック抵抗値と、検査対象の電池ブロックのブロック抵抗値と、の比率である抵抗比を、予め規定された比較値と比較した結果に基づいて、当該検査対象の電池ブロックの断線本数に対応する値を特定するステップと、
    を含み、
    前記比較値が、前記組電池の充電率に応じて変動する可変値である、
    ことを特徴とするセル断線検査方法。
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