以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、磁気検出回路1000の構成の概要を示す。磁気検出回路1000は、磁気センサ100、信号検出回路200及びフィードバック回路300を備える。磁気検出回路1000は、磁束密度Bで印加された外部磁場を検出する。
磁気センサ100は、印加された磁束密度Bを検出するホール素子Hを有する。ホール素子Hは、駆動電流が入力される入力端子対と、磁束密度Bに応じたホール信号Vhを検出する出力端子対を有する。ホール信号Vhには、ホール起電力信号Vhe及びオフセット信号Vosが含まれる。
ホール起電力信号Vheは、ホール効果によって、外部磁場による磁界の方向及び駆動電流の流れる方向と垂直な方向に発生する。ホール起電力信号Vheに基づいて、磁束密度Bの大きさが検出される。
オフセット信号Vosは、ホール素子Hの製造ばらつき等により、磁束密度Bがゼロの場合であっても生じる信号である。オフセット信号Vosを除去することにより、磁束密度Bの大きさが精度よく検出される。オフセット信号Vosの除去には、スピニングカレント法が用いられる。スピニングカレント法では、入力端子対と出力端子対とが、第1期間と第2期間で交互に入れ替えられる。これにより、ホール信号Vhが変調されて、ホール起電力信号Vheとオフセット信号Vosとが周波数軸上で分離される。したがって、スピニングカレント法を用いたホール素子Hの駆動により、オフセット信号Vosを除去できる。
信号検出回路200は、検出されたホール信号Vhに応じた出力信号Voutを出力する。出力信号Voutは、スピニングカレント法によって変調されたホール信号Vhを復調した信号である。復調とは、スピニングカレント法において、所定のチョッパークロック周波数fchopで信号極性を反転させることを指す。
フィードバック回路300は、出力信号Voutに基づいてフィードバック信号Fbを生成する。フィードバック信号Fbは、オフセット信号Vosをキャンセルするように制御される。フィードバック回路300は、生成したフィードバック信号Fbを信号検出回路200に出力する。
(実施例1)
図2及び図3は、磁気センサ100の上面図の一例を示す。図2は磁気センサ100に第1駆動電流I1が流れる場合を示す。図3は、磁気センサ100に第2駆動電流I2が流れる場合を示す。図4は、図2及び図3のA−A'断面図の一例を示す。磁気センサ100は、ホール素子H、基板10及び磁気収束板20を備える。ここで、基板10に平行な面をxy平面とする。磁気センサ100は、y軸方向に入射された磁束密度Bをz軸方向成分に変換して検出する。
基板10には、ホール素子Hが形成される。また、基板10の上方には磁気収束板20が形成される。基板10と磁気収束板20との間には、絶縁膜が設けられてよい。基板10の材料は、Si、SiC、Ge、GaAs、GaN、GaP又はInP等の半導体材料の結晶であってよい。本例の基板10はSiで形成される。
磁気収束板20は、y軸方向に入射された磁束密度Bを磁気収束板20に収束させる。これにより、磁束密度Bのy軸方向成分の一部は、z軸方向成分に変換される。磁気収束板20の材料は、例えばFe、ケイ素鋼、センダスト、FeNi合金(パーマロイ)等の軟磁性体の材料である。磁気収束板20は、平面視で、少なくとも一部が基板10と重複するエッジEG1を有する。平面視とは、z軸の正側から負側の方向に見た場合の視点を指す。また、本明細書において、重複と称する場合は、平面視で、2以上の構成が重複することを指す。
中心軸Cは、エッジEG1の中点における接線に垂直な軸である。磁気収束板20は、中心軸Cに対して反転対称となる形状を有する。本明細書において、軸に対して反転対称とは、当該軸を含むyz平面に対して面対称であることを指す。本例の磁気収束板20の形状は台形であるが、八角形、六角形等の多角形、若しくは曲線を含む他の形状であってもよい。磁気収束板20が中心軸Cに対して反転対称となるように形成されると、y軸方向に入射された磁束密度Bのz軸方向成分の等高線は中心軸Cに対して線対称になる。
ホール素子Hは、磁束密度Bのz軸方向成分を検出する。ホール素子Hは、第1ウェル領域W1及び第2ウェル領域W2を含む。第1ウェル領域W1及び第2ウェル領域W2は、ドーパントイオンの注入工程及びアニール工程といった一般的なウェルの形成工程を用いて形成される。ホール素子Hは、平面視で、磁気収束板20に少なくとも一部が重複する。本例のホール素子Hの形状は、第1ウェル領域W1及び第2ウェル領域W2がクロスした十字型である。ホール素子Hの形状は、十字型に限られず、例えばスクエア型であってよい。なお、本例のホール素子Hは、ホール素子Hの中心軸Hcと磁気収束板20の中心軸Cが重なるように配置される。ホール素子Hの中心軸Hcとは、ホール素子Hの中心を通るy軸方向に平行な軸を指す。なお、本例の磁気センサ100のホール素子Hの第1ウェル領域W1と第2ウェル領域W2は、ホール素子Hの中心軸Hcに対して反転対称となっている場合を示す。
電極は、ホール素子Hの中心点を中心とした時計回りに、第1電極E1、第3電極E3、第2電極E2、第4電極E4の順に配置される。また、第1電極E1及び第4電極E4は、第3電極E3及び第2電極E2とホール素子Hの中心軸Hcに対して反転対称に配置される。第1電極E1は、第1ウェル領域W1に電気的に接続される。第2電極E2は、第1ウェル領域W1に電気的に接続され、且つ、第1電極E1と第1ウェル領域W1を挟んで設けられる。2つの電極がウェルを挟むとは、2つの電極がウェルを物理的に挟むことに加えて、電流の流れる経路において2つの電極がウェルを挟むことを指してもよい。第3電極E3は、第2ウェル領域W2に電気的に接続される。第4電極E4は、第2ウェル領域W2に電気的に接続され、第3電極E3と第2ウェル領域W2を挟んで設けられる。
第1ウェル領域W1には、第1期間において第1駆動電流I1が流れる。第1駆動電流I1は、第2電極E2から第1電極E1に流れる。第1駆動電流I1の流れる方向は、第1電極E1から第2電極E2であってもよい。この場合、磁気センサ100が検出するホール起電力信号Vheの正負が反転する。
一方、第2ウェル領域W2には、第2期間において第2駆動電流I2が流れる。第2駆動電流I2は、第4電極E4から第3電極E3に流れる。第2駆動電流I2の流れる方向は、第3電極E3から第4電極E4であってもよい。この場合、磁気センサ100が検出するホール起電力信号Vheの正負が反転する。
第1重複領域Sm1及び第2重複領域Sm2は、第1ウェル領域W1及び第2ウェル領域W2がそれぞれ磁気収束板20と重複する領域である。図2の斜線で示した領域が第1重複領域Sm1であり、図3の斜線で示した領域が第2重複領域Sm2である。第1重複領域Sm1及び第2重複領域Sm2は、中心軸Hc1に対して反転した形状を有する。これにより、第1駆動電流I1に作用するz軸方向の磁束密度B1と、第2駆動電流I2に作用するz軸方向の磁束密度B2とが等価となる。
磁気センサ100の磁気感度は、ホール素子Hの感度と、入射された磁束密度Bからz軸方向成分への増幅度(磁気増幅率)との積で決定される。ここで、ホール素子Hの感度は、第1重複領域Sm1及び第2重複領域Sm2の大きさに応じて変化する。また、磁気増幅率は、ホール素子Hの配置される磁気収束板20との相対位置に依存する。そのため、チョッパークロック位相φ1における第1重複領域Sm1の面積と、それに入射する磁束密度Bのz軸方向成分への増幅度との積とが、チョッパークロック位相φ2における第2重複領域Sm2の面積と、それに入射する磁束密度Bのz軸方向成分への増幅度との積が等しい場合、チョッパークロック位相によらず磁気感度が揃う。これにより、ホール信号Vhを変調した場合であっても、ホール起電力信号Vheの大きさがチョッパークロック位相によって変動しなくなる。また、駆動電流の順序及び方向が本例と異なっていてもホール起電力信号Vheの大きさが変動しない。
なお、本例の磁気センサ100は、ホール素子HがエッジEG1に覆われる場合を示す。本明細書において、ホール素子HがエッジEG1に覆われるとは、ホール素子Hのx軸方向の幅が、エッジEG1よりも小さいことを指す。ホール素子Hのx軸方向の幅とは、ホール素子Hのx軸負側方向の端部と、x軸正側方向の端部との間隔を指す。また、ホール素子HがエッジEG1に覆われるとは、第1電極E1と第4電極E4との最短距離を結ぶ直線、及び、第2電極E2と第3電極E3との最短距離を結ぶ直線の両方が、平面視で、エッジEG1と交差することを指す。但し、実施例1に係る磁気センサ100では、ホール素子HがエッジEG1に覆われることが必須ではない。
(比較例)
図5は、比較例に係る磁気センサ500の構成の一例を示す。本例の磁気センサ500は、実施例1に係る磁気センサ100と、磁気収束板20に対して45度回転して配置される点で異なる。但し、磁気センサ500もスピニングカレント法を用いてホール素子Hのホール起電力信号Vheを検出する。
第1重複領域Sm1は、平面視で、y軸を時計回りに45度回転した斜線によって示される。一方、第2重複領域Sm2は、平面視で、y軸を反時計回りに45度回転した斜線によって示される。なお、ホール素子Hにおいて格子状で示された領域は、第1重複領域Sm1と第2重複領域Sm2の重複する領域を示す。
磁気センサ500において、第1駆動電流I1は、エッジEG1に対して垂直な方向に流れるのに対して、第2駆動電流I2は、エッジEG1に対して平行な方向に流れる。そのため、磁気センサ500では、第1重複領域Sm1と第2重複領域Sm2とが中心軸Cに対して反転対称とならない。また、第1重複領域Sm1の面積と第2重複領域Sm2の面積も等しくない。したがって、磁気センサ500は、チョッパークロック位相φ1における磁気感度と、チョッパークロック位相φ2における磁気感度とが揃わないので、一定の磁束密度入力であっても、ホール起電力信号Vheの大きさが変動する。
図6は、磁気検出回路1000の構成の一例を示す。磁気センサ100は、第1カレントスイッチ101を備える。信号検出回路200は、Gmアンプ210、電流加算部220、増幅器230、第1スイッチ回路240及び出力段250を備える。フィードバック回路300は、第2スイッチ回路310、Gmアンプ320及びリップル低減回路330を備える。本例の磁気検出回路1000は、チョッパークロック信号Fchopを生成する発振回路400及びクロック制御部410を備える。
第1カレントスイッチ101は、チョッパークロック位相(φ1、φ2)に応じて、ホール素子Hと電流源Ibias1との接続を切り替える。チョッパークロック位相φ1の場合、第2電極E2から第1電極E1に第1駆動電流I1が流れるようにホール素子Hと電流源Ibias1を接続する。一方、チョッパークロック位相φ2の場合、第4電極E4から第3電極E3に第2駆動電流I2が流れるようにホール素子Hと電流源Ibias1を接続する。これにより、第1カレントスイッチ101は、ホール素子Hのホール起電力信号Vheを、チョッパークロック信号Fchopの周波数に変調する。また、オフセット信号VosはDC成分となる。第1カレントスイッチ101は、チョッパークロック位相φ1においてホール信号(Vhφ1)を、チョッパークロック位相φ2においてホール信号(Vhφ2)を差動信号Vhとして出力する。本明細書において、差動信号とは、チョッパークロック位相に応じた異なる信号を含む信号を指す。また、差動信号Vhは、第1カレントスイッチ101の出力する正相信号(Vh+)と逆相信号(Vh−)を利用して、Vh=(Vh+)−(Vh−)という関係を満たしている。
ここで、
ホール信号(Vhφ1)=+Vhe+Vos
ホール信号(Vhφ2)=−Vhe+Vos
となる。
Gmアンプ210は、第1カレントスイッチ101が出力したホール信号Vhを電流に変換する。Gmアンプ210は、ホール信号Vhに応じた電流I1を電流加算部220に出力する。電流Iは、I=(I+)−(I−)を満たす差動信号として出力される。
電流加算部220は、Gmアンプ210が出力した電流Iにフィードバック回路300からのフィードバック電流Ifbとリップル低減電流Irを加算する。フィードバック電流Ifbは、Ifb=(Ifb+)−(Ifb−)を満たす差動信号で入力される。また、リップル低減電流Irは、Ir=(Ir+)−(Ir−)を満たす差動信号として出力される。
増幅器230は、電流加算部220が加算した電流を電圧に変換して増幅する。増幅器230は、増幅した電圧信号を第1スイッチ回路240に出力する。
第1スイッチ回路240は、チョッパークロック信号Fchopにしたがって動作する復調回路である。第1スイッチ回路240は、チョッパークロック位相φ2において、チョッパークロック位相φ1の場合と反転した信号を生成する。入力されたAC成分のホール起電力信号Vheは、復調されてDC成分のホール起電力信号Vheとなる。また、入力されたDC成分のオフセット信号Vosは、復調されてAC成分のオフセット信号Vosとなる。
出力段250は、第1スイッチ回路240から入力された信号を増幅して出力電圧Vout_n及び出力電圧Vout_pの差動信号を出力する。この差動信号が、信号検出回路200の出力信号Voutである。出力信号Voutは、Vout=Vout_p−Vout_nを満たす。出力電圧Vout_n及び出力電圧Vout_pの差動信号には、オフセット信号Vosがリップルとして存在する。出力段250は、出力した差動信号をフィードバック回路300にも入力する。
第2スイッチ回路310には、出力電圧Vout_n及び出力電圧Vout_pに基づいた信号が入力される。本例では、出力電圧Vout_n及び出力電圧Vout_pをそれぞれ第1抵抗R1と第2抵抗R2との比に応じて抵抗分割した電圧が第2スイッチ回路310に入力される。第2スイッチ回路310は、入力された電圧をチョッパークロック信号Fchopに応じたタイミングで切り替えて、Gmアンプ320に出力する。
Gmアンプ320は、第2スイッチ回路310から入力されたフィードバック電圧をフィードバック電流Ifbに変換する。Gmアンプ320は、変換されたフィードバック電流Ifbを電流加算部220に出力する。
リップル低減回路330は、信号検出回路200が出力した出力電圧Voutに基づいて、リップルを低減するようにリップル低減信号を生成する。リップル低減回路330は、差分回路331、積分回路332及びGmアンプ333を備える。
差分回路331は、信号検出回路200の出力電圧Voutのチョッパークロック信号Fchopに同期した成分をチョッパークロック信号Fchopに応じたタイミングでサンプリングする。例えば、差分回路331は、チョッパークロック信号Fchopに同期したオフセット信号Vosの成分をサンプリングする。ここで、チョッパークロック位相(φ1、φ2)によって、ホール起電力信号Vheの大きさが変動してしまうと、ホール起電力信号Vheをオフセット信号Vosと区別することができなくなる場合がある。
積分回路332は、差分回路331の出力した信号を時間領域で積分する。積分回路332は、積分した電圧をGmアンプ333に出力する。これにより、オフセット信号VosがDC成分としてフィードバックされる。
Gmアンプ333は、積分回路332の出力電圧を変換してリップル低減電流Irを生成する。Gmアンプ333は、生成したリップル低減電流Irを電流加算部220に出力する。
図7は、磁気センサ100の動作の一例を示す。チョッパ−クロック信号Fchopは、周波数fchopのクロック信号である。チョッパークロック周期1/fchopごとに、チョッパークロック位相φ1及びチョッパークロック位相φ2が交互に繰り返される。チョッパークロック位相φ1では、ホール素子Hに第1駆動電流I1が流れる。チョッパークロック位相φ2では、ホール素子Hに第2駆動電流I2が流れる。チョッパークロック位相φ1において、ホール起電力信号Vhe1が取得され、チョッパークロック位相φ2において、チョッパークロック位相φ1と反転したホール起電力信号Vhe2が取得されるように磁気センサ100を構成する。これにより、オフセット信号Vosは一定のままで、ホール起電力信号Vheがハイとローを繰り返すホール信号Vhが得られる。
図8は、磁気センサ100の構成の一例を示す。本例のホール素子Hは、磁気収束板20のエッジEG1に覆われない。例えば、ホール素子HがエッジEG1に覆われないとは、ホール素子Hのx軸方向の幅が、エッジEG1よりも大きいことを指す。また、ホール素子HがエッジEG1に覆われないとは、第1電極E1と第4電極E4との最短距離を結ぶ直線、及び、第2電極E2と第3電極E3との最短距離を結ぶ直線のいずれかが、平面視で、エッジEG1と交差しないことを指してもよい。
ホール素子HがエッジEG1に覆われない場合、ホール素子Hは、中心軸Hcが磁気収束板20の中心軸Cに一致するように配置される。即ち、本例の磁気センサ100のホール素子Hの第1ウェル領域W1と第2ウェル領域W2は、ホール素子Hの中心軸Hc及び磁気収束板20の中心軸Cに対して反転対称となっている場合を示す。磁気収束板20は、少なくとも中心軸Cに対して反転対称に形成されればよい。これにより、第1重複領域Sm1と第2重複領域Sm2の面積が等しくなる。このように、実施例1に係る磁気センサ100は、エッジEG1がホール素子Hを覆わない場合であっても、チョッパークロック位相によらず磁気感度が揃う。
(実施例2)
図9は、実施例2に係る磁気センサ100の構成の一例を示す。本例の磁気センサ100は、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbを備える。
第1ホール素子Haは、中心軸HcaがエッジEG1に対して垂直となるように配置される。第1ホール素子Haは、第1ウェル領域W1a、第2ウェル領域W2a、第1電極E1a、第2電極E2a、第3電極E3a及び第4電極E4aを備える。電極は、第1ホール素子Haの中心点を中心とした時計回りに、第1電極E1a、第3電極E3a、第2電極E2a、第4電極E4aの順に配置される。また、第1電極E1a及び第4電極E4aは、第3電極E3a及び第2電極E2aと第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称に配置される。なお、本例の第1ウェル領域W1a及び第2ウェル領域W2aは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となっている場合を示す。
第2ホール素子Hbは、中心軸HcbがエッジEG1に対して垂直となるように配置される。第2ホール素子Hbは、第1ウェル領域W1b、第2ウェル領域W2b、第1電極E1b、第2電極E2b、第3電極E3b及び第4電極E4bを備える。電極は、第2ホール素子Hbの中心点を中心とした時計回りに、第1電極E1b、第4電極E4b、第2電極E2b、第3電極E3bの順に配置される。また、第1電極E1b及び第4電極E4bは、第3電極E3b及び第2電極E2bと第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称に配置される。なお、本例の第1ウェル領域W1b及び第2ウェル領域W2bは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となっている場合を示す。
本例のエッジEG1は、フラットな辺である。フラットとは、必ずしも完全な直線である場合に限られない。フラットには、曲線を含むものであって、直線に近似できるような略直線を含んでよい。例えば、フラットなエッジEG1とは、半導体プロセスにおいて生じるような凹凸があるような略直線も含む。フラットなエッジEG1とは、平面視で、僅かに小さなギザギザ、凹凸、膨らみ、窪み等があるエッジEG1を含んでよい。また、フラットなエッジEG1とは、第1重複領域Sm1及び第2重複領域Sm2において、磁束密度Bのz軸方向成分の等高線がエッジEG1に対して平行で、且つ、直線となる形状を指してよい。エッジEG1をフラットにすることにより、エッジEG1の近傍で磁束密度Bのz軸方向成分が一定の領域が増えるので、ホール素子Hの配置の自由度が向上する。
本例の第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、磁気収束板20の中心軸Cに対して反転対称に配置されるが必須ではない。但し、本例の第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、いずれもエッジEG1に覆われるように配置される。例えば、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子HbがエッジEG1に覆われるとは、第1ホール素子Haのx軸負側の端部からエッジEG1に垂直に下した軸Hlaと、第2ホール素子Hbのx軸正側の端部からエッジEG1に垂直に下した軸Hrbとの距離が、エッジEG1の長さよりも短くなることを指す。
また、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子HbがエッジEG1に覆われるとは、第1電極E1aと第4電極E4aとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、且つ、第3電極E3aと第2電極E2aとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、第1電極E1bと第4電極E4bとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、且つ、第3電極E3bと第2電極E2bとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差することを指してよい。
さらに、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子HbがエッジEG1に覆われるとは、第1ホール素子Haのx軸負側の端部からエッジEG1に垂直に下した軸Hlaと、第2ホール素子Hbのx軸正側の端部からエッジEG1に垂直に下した軸Hrbとの距離が、エッジEG1の長さよりも短くなり、且つ、第1電極E1aと第4電極E4aとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、且つ、第3電極E3aと第2電極E2aとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、第1電極E1bと第4電極E4bとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差し、且つ、第3電極E3bと第2電極E2bとを最短距離で結ぶ直線が、エッジEG1と交差することを指してよい。
チョッパークロック位相φ1において、第1ホール素子Haには第1駆動電流I1aが流れ、第2ホール素子Hbには第1駆動電流I1bが流れる。第1駆動電流I1aは、第1電極E1aから第2電極E2aに流れる。第1駆動電流I1bは、第1電極E1bから第2電極E2bに流れる。ここで、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbに第1駆動電流I1(I1a、I1b)が流れる第1ウェル領域(W1a、W1b)が磁気収束板20と重複する領域を第1駆動総面積SM1とすると、第1のホール素子Haの第1重複領域Sm1aと、第2のホール素子Hbの第1の重複領域Sm1bとから、
SM1=Sm1a+Sm1b
となる。
また、チョッパークロック位相φ2において、第1ホール素子Haには第2駆動電流I2aが流れ、第2ホール素子Hbには、第2駆動電流I2bが流れる。第2駆動電流I2aは、第3電極E3aから第4電極E4aに流れる。第2駆動電流I2bは、第3電極E3bから第4電極E4bに流れる。ここで、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbに第2駆動電流I2(I2a、I2b)が流れる第2ウェル領域(W2a、W2b)が磁気収束板20と重複する領域を第2駆動総面積SM2とすると、第1のホール素子Haの第2重複領域Sm2aと、第2のホール素子Hbの第2の重複領域Sm2bとから、
SM2=Sm2a+Sm2b
となる。
第1ホール素子Haは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称に配置される。また、第2ホール素子Hbは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称に配置される。よって、第1重複領域Sm1aの形状は、第2重複領域Sm2aの形状と反転の関係にあり、第1重複領域Sm1bの形状は、第2重複領域Sm2bの形状と反転の関係にある。即ち、
Sm1a=Sm2a、
Sm1b=Sm2b
の関係が成り立つ。これにより、
SM1=Sm1a+Sm1b=Sm2a+Sm2b=SM2
となる。つまり、実施例2に係る磁気センサ100では、第1駆動総面積SM1と第2駆動総面積SM2とが等しくなる。
以上の通り、磁気センサ100は、エッジEG1がフラットな場合、第1駆動総面積SM1と第2駆動総面積SM2とに印加される磁束密度Bのz軸方向成分が等価となる。つまり、磁気センサ100は、磁気収束板20のエッジEG1がフラットであるため、エッジEG1よりy軸正負両方向にエッジEG1と平行な磁束密度Bのz軸方向成分の等高線がフラットとなる領域が広がり、第1駆動電流I1と、第2駆動電流I2に印加される磁束密度Bのz軸方向成分も等価となっており、対応する第1駆動総面積SM1及び第2駆動総面積SM2にも等価な磁束密度の磁場が印加され、第1のホール素子Haのホール起電力信号Vheaと第2のホール素子Hbのホール起電力信号Vhebとが等しくなる。即ち、スピニングカレント法を用いる場合に、十字型のホール素子Hに流れる駆動電流の方向が異なっても、チョッパークロック位相φ1の磁気感度と、チョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃う。よって、本例の磁気センサ100は、駆動電流の順序を問題とせず、高精度に外部磁場を検出できる。
なお、本例の磁気センサ100は、磁気収束板20がフラットなエッジEG1を有し、且つ、複数のホール素子Hが磁気収束板20に覆われる。これにより、第1駆動総面積SM1と第2駆動総面積SM2は等しくなり、第1駆動電流I1及び第2駆動電流I2のそれぞれに作用する磁束密度Bのz軸方向成分の大きさも等しくなる。したがって、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、中心軸Cに対して反転対称となるように配置される必要はない。
図10は、実施例2に係る磁気検出回路1000の構成の一例を示す。本例の磁気検出回路1000は、基本的に図6に示した磁気検出回路1000と同様の構成を有する。図6に付した符号と同一の符号は、基本的に図6における場合と同様に動作する。但し、本例の磁気検出回路1000は、複数のホール素子Hからホール起電力信号Vheを検出する。また、磁気センサ100は、第2カレントスイッチ102をさらに備える。信号検出回路200は、Gmアンプ260をさらに備える。
第1カレントスイッチ101は、検出したホール信号VhaをGmアンプ210に出力する。ホール信号Vhaは、ホール信号(Vha+)とホール信号(Vha−)の差動信号として出力される。
第2カレントスイッチ102は、検出したホール信号VhbをGmアンプ260に出力する。ホール信号Vhbは、ホール信号(Vhb+)とホール信号(Vhb−)の差動信号として出力される。
Gmアンプ210は、第1カレントスイッチ101が出力したホール信号Vhaを電流に変換する。Gmアンプ210は、ホール信号Vhaに応じた電流Iaを電流加算部220に出力する。電流Iaは、Ia=(Ia+)−(Ia−)を満たす差動信号として出力される。
Gmアンプ260は、第2カレントスイッチ102が出力したホール信号Vhbを電流に変換する。Gmアンプ260は、ホール信号Vhbに応じた電流Ibを電流加算部220に出力する。電流Ibは、Ib=(Ib+)−(Ib−)を満たす差動信号として出力される。
電流加算部220は、電流Ia、電流Ib及びフィードバック電流Ifbとリップル低減電流Irを加算する。その後の処理は、図6の信号検出回路200及びフィードバック回路300と同様である。
以上の通り、磁気センサ100は、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbから得られたホール信号Vha及びホール信号Vhbを加算する。これにより、磁気センサ100は、信号ノイズ比S/Nを増加させ、且つ、プロセス勾配の影響を受けにくくできる。
図11は、実施例2におけるホール起電力信号Vheの処理方法の一例を示す。磁気センサ100において取得されたホール信号Vha及びホール信号Vhbは、信号検出回路200により出力信号Voutとして出力される。磁気センサ100の出力するホール信号Vhは、ホール起電力信号VheをAC成分として、オフセット信号をDC成分として含む。
ホール信号Vhaは、チョッパークロック位相φ1において、ホール起電力信号Vhea_I1を含み、チョッパークロック位相φ2において、反転されたホール起電力信号Vhea_I2を含む。オフセット信号Vosは、チョッパークロック位相φによらず一定となる。よって、ホール信号Vhaは、第1駆動電流I1aに応じたホール起電力信号をVhea_I1(Bz)、第2駆動電流I2aに応じたホール起電力信号をVhea_I2(Bz)とすると、以下の式を満たす。
ホール信号Vha(φ1)=Vhea_I1(Bz)+Vos
ホール信号Vha(φ2)=−Vhea_I2(Bz)+Vos
ホール信号Vhbは、チョッパークロック位相φ1において、ホール起電力信号Vheb_I1を含み、チョッパークロック位相φ2において、反転されたホール起電力信号Vheb_I2を含む。オフセット信号Vosは、チョッパークロック位相φによらず一定となる。よって、ホール信号Vhbは、第1駆動電流I1bに応じたホール起電力信号をVheb_I1(Bz)、第2駆動電流I2bに応じたホール起電力信号をVheb_I2(Bz)とすると、以下の式を満たす。
ホール信号Vhb(φ1)=Vheb_I1(Bz)+Vos
ホール信号Vhb(φ2)=−Vheb_I2(Bz)+Vos
出力信号Voutは、信号検出回路200がチョッパークロック位相φ2における信号を復調することによって、例えば、以下の式を満たす。
出力信号Vout(φ1)
=Vhea_I1(Bz)+Vheb_I1(Bz)+2Vos
出力信号Vout(φ2)
=Vhea_I2(Bz)+Vheb_I2(Bz)−2Vos
なお、出力信号Voutには、Vhea_I1(Bz)=Vhea_I2(Bz)=Vheb_I1(Bz)=Vheb_I2(Bz)という関係がある。つまり、出力信号Voutには、ホール起電力信号Vhe起因のリップルが残っていない。したがって、出力信号Voutのリップルは、オフセット信号Vos起因のリップルとなる。
以上の通り、磁気センサ100は、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うことにより、ホール起電力信号Vheの大きさがチョッパークロック位相によって変動することがなく、出力信号Voutにホール起電力信号Vhe起因のリップルが生じない。よって、フィードバック回路300において、ホール起電力信号Vhe起因のリップルが増大せず、オフセット信号Vosを高精度にキャンセルできる。即ち、本例の磁気センサ100は、高精度に外部磁場を検出できる。
図12は、磁束密度Bのz軸方向成分の等高線の概念図を示す。実線は、磁束密度Bのz軸方向成分の等高線を示す。
外部磁場は、磁気収束板20により収束されてエッジEG1付近で強度の変化が大きくなり等高線が密になる。また、フラットなエッジEG1の付近では、等高線がエッジEG1に対して平行で、且つ、中心軸Cに線対称となる。
エッジEG1の端部では、等高線が実際にはカーブを描き、角Pc1及び角Pc2では磁束密度Bのz軸方向成分が大きくなる。エッジEG1近傍の等高線は、エッジEG1の両端の角Pc1及び角Pc2によって調整できる。例えば、角Pc1及び角Pc2を鈍角とすることにより、角Pc1及び角Pc2における磁束密度Bのz軸方向成分の増加を低減できる。また、角Pc1及び角Pc2を鈍角とすることにより、エッジEG1に平行な等高線を有する領域が広がる。角Pc1及び角Pc2は、90°よりも大きければよく、100°以上であることが好ましい。角Pc1及び角Pc2を鈍角とすることにより、エッジEG1の近傍で磁束密度Bが一定の領域が増えるので、ホール素子Hの配置の自由度が向上する。
(実施例3)
図13は、実施例3に係る磁気センサ100の構成の一例を示す。本例の磁気センサ100は、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbを備える。図9の実施例2に付した符号と同一の符号を付した構成は、基本的に実施例2と同様に配置される。ただし、図13は、第2のホール素子Hbにおける第1駆動電流I1bが、第1電極E3bから第2電極E4bに流れ、第2駆動電流I2bが、第1電極E1bから第2電極E2bに流れるものとし、駆動電流の流す順序が図9と異なる。また、第2のホール素子Hbにおける第1ウェル領域W1bは第1電極E3bと第2電極E4b挟まれ、第2ウェル領域W2bは第1電極E1bと第2電極E2bに挟まれている。
また、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子HbはエッジEG1に覆われない点で実施例2と異なる。そのため、本例の第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、磁束密度Bのz軸方向成分の等高線は、ホール素子Hと重複する領域の全てでエッジEG1に平行となるわけではない。即ち、第1ホール素子Haにおいて、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2aの磁気感度が揃わない。また、第2ホール素子Hbにおいて、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2bの磁気感度が揃わない。なお、本例の第1ウェル領域W1a及び第2ウェル領域W2aは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となり、第1ウェル領域W1b及び第2ウェル領域W2bは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となっているが必須ではない。
但し、磁束密度Bのz軸方向成分の等高線は、中心軸Cに対しては線対称である。また、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、中心軸Cに対して反転対称に設けられる。即ち、第1ホール素子Haと磁気収束板20との重複部分である第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2aの総面積は、第2ホール素子Hbと磁気収束板20との重複部分である第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2bの総面積と等しい。また、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2bの面積は等しく、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2aの面積は等しい。よって、駆動電流を流す順序と方向を決定することにより、チョッパークロック位相φ1とチョッパークロック位相φ2のそれぞれにおける磁気感度を揃えることができる。
より具体的には、第1ホール素子Haと第2ホール素子Hbとの対称関係に着目すると、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2bの面積が等しく、且つ、第1駆動電流I1aに作用する磁束密度B1aと第2駆動電流I2bに作用する磁束密度B2bが等しい。同様に、第2重複領域Sm2aと第1重複領域Sm1bの面積が等しく、且つ、第2駆動電流I2aに作用する磁束密度B2aと第1駆動電流I1bに作用する磁束密度B1bが等しい。よって、スピニングカレント法の利用時に、チョッパークロック位相φ1における磁束密度B1a+B1bが、チョッパークロック位相φ2における磁束密度B2a+B2bと等しくなる。よって、ホール起電力信号Vheも同様に、チョッパークロック位相φ1におけるホール起電力信号Vhe1a+Vhe1bが、チョッパークロック位相φ2におけるホール起電力信号Vhe2a+Vhe2bと等しくなる。
以上の通り、ホール素子Hの駆動電流の方向をホール素子Hの配置に合わせて変更することにより、チョッパークロック位相φ1におけるホール起電力信号Vheの合計とチョッパークロック位相φ2におけるホール起電力信号Vheの合計を等しくすることができる。即ち、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子HbがエッジEG1に覆われない場合であっても、駆動電流を流す順序及び方向を変更することにより、2つのホール素子Hと磁気収束板20によって決定される各位相の磁気感度が揃う。よって、本例の磁気センサ100では、2つのホール素子Hのホール起電力信号Vheの和がチョッパークロック位相によって変動することがなく、高精度に外部磁場を検出できる。
図14は、実施例3におけるホール起電力信号Vheの処理方法の一例を示す。基本的な概念は、実施例2におけるホール起電力信号Vheの処理方法(図11)と同様である。
実施例3では、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2aの面積が等しくないので、ホール起電力信号Vhea_I1(Bz)の大きさがホール起電力信号Vhea_I2(Bz)の大きさと異なる。また、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2bの面積が等しくないので、ホール起電力信号Vheb_I1(Bz)の大きさがホール起電力信号Vheb_I2(Bz)の大きさと異なる。
但し、図13で示したように駆動電流の順序及び方向を、チョッパークロック位相φ1とチョッパークロック位相φ2で磁気感度が揃うように制御する。よって、
Vhea_I1(Bz)=Vheb_I2(Bz)と、
Vhea_I2(Bz)=Vheb_I1(Bz)
を満たす。したがって、出力信号Voutには、
Vhea_I1(Bz)+Vheb_I1(Bz)
=Vhea_I2(Bz)+Vheb_I2(Bz)
という関係が成り立つ。つまり、実施例3に係る出力信号Voutには、実施例2の場合と同様に、ホール起電力信号Vhe起因のリップルが残っていない。したがって、出力信号Voutのリップルは、オフセット信号Vos起因のリップルとなる。
図15は、実施例3に係る磁気センサ100の構成の一例を示す。本例の磁気センサ100は、第1磁気収束板21及び第2磁気収束板22の2つの磁気収束板を有する。第1磁気収束板21には、第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbが形成され。第2磁気収束板22には、第3ホール素子Hc及び第4ホール素子Hdが形成される。
第1磁気収束板21及び第2磁気収束板22は、対称軸Dを含むxz平面に対して面対称に配置される。第1磁気収束板21と第2磁気収束板22との間隔は、例えば、各ホール素子Hのy軸方向の幅よりも大きくて良い。ホール素子Hのy軸方向の幅とは、各ホール素子Hのy軸負側方向の端部と、y軸正側方向の端部との間隔を指す。また例えば、各ホール素子Hの2つの電極に挟まれたウェル領域の長さより大きくても良い。
第1ホール素子Ha及び第2ホール素子Hbは、中心軸Cに対して反転対称に配置される。第3ホール素子Hcは、第1ホール素子Haと対称軸Dを含むxz平面に対して面対称に配置される。第4ホール素子Hdは、第2ホール素子Hbと対称軸Dを含むxz平面に対して面対称に配置される。
第1ホール素子Haにおいて、第1駆動電流I1aを第1電極E1aから第2電極E2aに流し、第2駆動電流I2aを第3電極E3aから第4電極E4aに流す。この場合、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2aの面積が異なる。また、第1ホール素子Haでは、第1駆動電流I1aに作用する磁束密度B1aと、第2駆動電流I2aに作用する磁束密度B2aが等価ではない。
第2ホール素子Hbにおいて、第1駆動電流I1bを第3電極E3bから第4電極E4bに流し、第2駆動電流I2bを第1電極E1bから第2電極E2bに流す。この場合、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2bの面積が異なる。また、第2ホール素子Hbでは、第1駆動電流I1bに作用する磁束密度B1bと、第2駆動電流I2bに作用する磁束密度B2bが等価ではない。
しかしながら、第1ホール素子Haと第2ホール素子Hbとの対称関係に着目すると、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2bの面積が等しく、且つ、第1駆動電流I1aに作用する磁束密度B1aと第2駆動電流I2bに作用する磁束密度B2bが等しい。同様に、第2重複領域Sm2aと第1重複領域Sm1bの面積が等しく、且つ、第2駆動電流I2aに作用する磁束密度B2aと第1駆動電流I1bに作用する磁束密度B1bが等しい。したがって、第1ホール素子Haと第2ホール素子Hbを組み合わせて考えると、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うことになる。なお、本例の第1ウェル領域W1a及び第2ウェル領域W2aは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となり、第1ウェル領域W1b及び第2ウェル領域W2bは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となっているが必須ではない。
一方、第3ホール素子Hcにおいて、第1駆動電流I1cを第1電極E1cから第2電極E2cに流し、第2駆動電流I2cを第3電極E3cから第4電極E4cに流す。この場合、第1重複領域Sm1cと第2重複領域Sm2cの面積が異なる。また、第3ホール素子Hcでは、第1駆動電流I1cに作用する磁束密度B1cと、第2駆動電流I2cに作用する磁束密度B2cが等価ではない。
第4ホール素子Hdにおいて、第1駆動電流I1dを第3電極E3dから第4電極E4dに流し、第2駆動電流I2dを第1電極E1dから第2電極E2dに流す。この場合、第1重複領域Sm1dと第2重複領域Sm2dの面積が異なる。また、第4ホール素子Hdでは、第1駆動電流I1dに作用する磁束密度B1dと、第2駆動電流I2dに作用する磁束密度B2dが等価ではない。
しかしながら、第3ホール素子Hcと第4ホール素子Hdとの対称関係に着目すると、第1重複領域Sm1cと第2重複領域Sm2dの面積が等しく、且つ、第1駆動電流I1cに作用する磁束密度B1cと第2駆動電流I2dに作用する磁束密度B2dが等しい。同様に、第2重複領域Sm2cと第1重複領域Sm1dの面積が等しく、且つ、第2駆動電流I2cに作用する磁束密度B2cと第1駆動電流I1dに作用する磁束密度B1dが等しい。したがって、第3ホール素子Hcと第4ホール素子Hdを組み合わせて考えると、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うことになる。なお、本例の第1ウェル領域W1c及び第2ウェル領域W2cは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となり、第1ウェル領域W1d及び第2ウェル領域W2dは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となっているが必須ではない。
よって、スピニングカレント法の利用時に、チョッパークロック位相φ1における磁束密度B1a+B1b+B1c+B1dが、チョッパークロック位相φ2における磁束密度B2a+B2b+B2c+B2dと等しくなる。したがって、ホール起電力信号Vheも同様に、チョッパークロック位相φ1におけるホール起電力信号Vhe1a+Vhe1b+Vhe1c+Vhe1dが、チョッパークロック位相φ2におけるホール起電力信号Vhe2a+Vhe2b+Vhe2c+Vhe2dと等しくなる。
図16は、実施例3に係る磁気センサ100の構成の一例を示す。本例の磁気センサ100は、図15に示した磁気センサ100と駆動電流を流す順序が異なる。その他は、基本的に図15に示した磁気センサ100と同様の構成である。
第1ホール素子Haにおいて、第1駆動電流I1aを第1電極E1aから第2電極E2aに流し、第2駆動電流I2aを第3電極E3aから第4電極E4aに流す。この場合、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2aの面積が異なる。また、第1ホール素子Haでは、第1駆動電流I1aに作用する磁束密度B1aと、第2駆動電流I2aに作用する磁束密度B2aが等価ではない。
第3ホール素子Hcにおいて、第1駆動電流I1cを第3電極E3cから第4電極E4cに流し、第2駆動電流I2cを第1電極E1cから第2電極E2cに流す。この場合、第1重複領域Sm1cと第2重複領域Sm2cの面積が異なる。また、第3ホール素子Hcでは、第1駆動電流I1cに作用する磁束密度B1cと、第2駆動電流I2cに作用する磁束密度B2cが等価ではない。
しかしながら、第1ホール素子Haと第3ホール素子Hcとの対称関係に着目すると、第1重複領域Sm1aと第2重複領域Sm2cの面積が等しく、且つ、第1駆動電流I1aに作用する磁束密度B1aと第2駆動電流I2cに作用する磁束密度B2cが等しい。同様に、第2重複領域Sm2aと第1重複領域Sm1cの面積が等しく、且つ、第2駆動電流I2aに作用する磁束密度B2aと第1駆動電流I1cに作用する磁束密度B1cが等しい。したがって、第1ホール素子Haと第3ホール素子Hcを組み合わせて考えると、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うことになる。なお、本例の第1ウェル領域W1a及び第2ウェル領域W2aは、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となり、第1ウェル領域W1c及び第2ウェル領域W2cも、第1ホール素子Haの中心軸Hcaに対して反転対称となっているが必須ではない。
一方、第2ホール素子Hbにおいて、第1駆動電流I1bを第1電極E1bから第2電極E2bに流し、第2駆動電流I2bを第3電極E3bから第4電極E4bに流す。この場合、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2bの面積が異なる。また、第2ホール素子Hbでは、第1駆動電流I1bに作用する磁束密度B1bと、第2駆動電流I2bに作用する磁束密度B2bが等価ではない。
第4ホール素子Hdにおいて、第1駆動電流I1dを第3電極E3dから第4電極E4dに流し、第2駆動電流I2dを第1電極E1dから第2電極E2dに流す。この場合、第1重複領域Sm1dと第2重複領域Sm2dの面積が異なる。また、第4ホール素子Hdでは、第1駆動電流I1dに作用する磁束密度B1dと、第2駆動電流I2dに作用する磁束密度B2dが等価ではない。
しかしながら、第2ホール素子Hbと第4ホール素子Hdとの対称関係に着目すると、第1重複領域Sm1bと第2重複領域Sm2dの面積が等しく、且つ、第1駆動電流I1bに作用する磁束密度B1bと第2駆動電流I2dに作用する磁束密度B2dが等しい。同様に、第2重複領域Sm2bと第1重複領域Sm1dの面積が等しく、且つ、第2駆動電流I2bに作用する磁束密度B2bと第1駆動電流I1dに作用する磁束密度B1dが等しい。したがって、第2ホール素子Hbと第4ホール素子Hdを組み合わせて考えると、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うことになる。なお、本例の第1ウェル領域W1b及び第2ウェル領域W2bは、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となり、第1ウェル領域W1d及び第2ウェル領域W2dも、第2ホール素子Hbの中心軸Hcbに対して反転対称となっているが必須ではない。
よって、スピニングカレント法の利用時に、チョッパークロック位相φ1における磁束密度B1a+B1b+B1c+B1dが、チョッパークロック位相φ2における磁束密度B2a+B2b+B2c+B2dと等しくなる。したがって、ホール起電力信号Vheも同様に、チョッパークロック位相φ1におけるホール起電力信号Vhe1a+Vhe1b+Vhe1c+Vhe1dが、チョッパークロック位相φ2におけるホール起電力信号Vhe2a+Vhe2b+Vhe2c+Vhe2dと等しくなる。
以上の通り、本実施形態では、スピニングカレント法を用いた4つのホール素子Hの駆動方法について説明した。磁気センサ100は、チョッパークロック位相φ1の磁気感度とチョッパークロック位相φ2の磁気感度が揃うように制御するものであれば、本例の駆動電流の順序及び方向に限られない。また、ホール素子Hの個数が増えた場合であっても、同様の思想によって高精度の磁気センサ100を実現できる。
図17〜図20は、ホール素子Hの構成例を示す。図17のホール素子の電極は、ウェル領域Wの幅よりも小さな幅を有する。ウェル領域Wの幅とは、駆動電流の流れる方向に垂直な方向のウェルの長さを指す。本例の電極の形状は、四角形である。電極の形状は、正方形であっても、矩形であってもよい。図18のホール素子の電極の形状は三角形である。本例の三角形は、ウェル領域Wの幅と等しい長さの辺を有する。三角形の辺は、ウェル領域Wの幅よりも小さくてもよい。図19のホール素子の電極は、ウェル領域Wの内側に形成される。本例の電極は、第1電極E1から第2電極E2に流れる第1駆動電流I1の経路が、第3電極E3から第4電極E4に流れる第2駆動電流I2の経路の少なくとも一部がクロスするように配置される。図20のホール素子の形状は、略十字形状を有する。即ち、本例のウェル領域Wの端部が直線ではなく曲線を有する。但し、ホール素子Hは、中心軸Hcに対して反転対称であることが好ましい。
図21は、ホール素子Hの構成の一例を示す。本例のホール素子Hは、いわゆるスクエア型のホール素子である。
ホール素子Hは、四角形のウェル領域Wを有する。ウェル領域Wの形状は、正方形であっても矩形であってもよい。電極は、ウェル領域Wの四隅に形成される。具体的には、ホール素子Hの中心点を中心に第1電極E1、第3電極E3、第2電極E2、第4電極E4の順に配置される。例えば、第1駆動電流I1は、第1電極E1から第2電極E2に流れ、第2駆動電流I2は、第3電極E3から第4電極E4に流れる。このように、第1駆動電流I1及び第2駆動電流I2の順序及び方向を任意に変更できるものであれば、ホール素子Hの形状が十字形以外であってよい。つまり、ホール素子Hは、ある点を中心として、第1電極E1と第2電極E2の電極対、第3電極E3と第4電極E4の電極対、及び駆動電流が略十字に流れるウェル領域Wを有すればよい。
なお、以上の本発明の実施の形態の説明において、ホール素子Hの第1電極から第4電極までをウェルと電気的に接続される単一の電極として説明を行ったが、これらをそれぞれ複数の電極に変更しても本発明の範囲内であることは、当業者に明らかである。つまり、ウェル領域Wの四隅それぞれに、ウェルと電気的に接続される複数の電極が形成されていても、その電極の領域を単一の電極と同等に扱うことができるので、本発明の範囲内であることは明らかである。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。