JP6513839B2 - 骨伝導を利用した聴音装置 - Google Patents
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Description
例えば、聴音装置で一般的なヘッドホンには、耳孔に装着されるものや、耳全体を覆うものなどがあり、これらは、電気信号として入力された音源を空気振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、該鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
ところで、近年は、上記のような空気振動により鼓膜を振動させる仕組みではなく、頭蓋骨に音の振動を与えて骨の振動によって音を認識させる骨伝導を利用した聴音装置が開発されている。骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、したがって、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全であり、また鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている。
前記適切な位置としては、こめかみ周辺や乳様突起と呼ばれる側頭骨の後下方にある大きな突起周辺が挙げられる。
こめかみ周辺は、すなわち頭蓋骨そのものであり、こめかみ周辺にしっかりと振動部を当接すれば的確に骨に音の振動を与えられることから、骨伝導を利用する聴音装置、特にヘッドホンタイプでは、このこめかみに当接するものが広く採用されている。
そして、このタイプの骨伝導を利用した聴音装置では、振動部が的確にこめかみ周辺に当接することが重要であることから、耳の上部に引っかけて使用できるようアーム形状をなしている。
一方、こめかみ周辺ではなく、乳様突起に振動を与えるものとしては、たとえば、特許文献1に「骨伝導型音声聴取装置及び方法」として開示されている、ほぼ英文字Cの形状を有するハウジング内に、聴取者の乳様突起をほぼ覆うように骨伝導手段のスピーカーが配置される構造のものがある(図9参照)。
上記のような、こめかみ周辺に振動を与える構造のものも、乳様突起に振動を与える構造のものも、いずれも耳を塞ぐことなく装着でき、前述のように耳には周囲の音が遮断されることなく入ってくるので、装着していても安全であり、また難聴者でも音を聴くことができるものとなっている。
そのため、上述したこめかみ周辺に振動部を当接させる骨伝導を利用した聴音装置においては、構造的にこめかみ周辺にピンポイントで、振動部がしっかりと圧力をかけて当接するように設計され、装着時には、該振動部がこめかみ周辺の適切な位置に配置されるよう注意が必要である。
また、不安定な装着により振動部が適切な位置からずれてしまった場合には、再度適切な位置に振動部が接するように調整しなければならない。
一方、図9は、従来技術の説明用図面であり、特許文献1の乳様突起を覆うように振動部が配置される構造の装置を示しているが、これはほぼ英文字Cの形状をなすハウジングaの中に配設された骨伝導スピーカbが、乳様突起周辺にしっかり圧力をかけて装着できるように設計されているので、装着時には該スピーカbが、乳様突起周辺の適切な位置にピンポイントに配置されるよう注意が必要である。
したがって、乳様突起の位置は、画一的ではないため、振動部が配置され接触する位置を調整する必要があり、装着者の身体的特徴に合わせて、いくつもの大きさの異なる多種の装置を製造して用意しておかなければならず、使用用途によってはオーダーで作らなければならないという問題もあり、骨伝導を利用した音認識装置の普及を妨げている。
ところが近年は、骨伝導を利用した聴音装置は、耳孔を塞がないので周囲からの音を遮断せず安全性が高いことから、注目を浴びるようになり、携帯電話に組み込まれたりして、聴覚が健康な者の利用が増大してきた。
しかし、聴覚が健康な者の場合、骨伝導からの音が伝達される際に、同時に耳孔から入る音が鼓膜に伝わってしまうので、周囲に雑音があると、耳孔から入る雑音と骨伝導からの音とが混在してしまい、骨伝導による音がマスキングされ、かえって聞きにくくなるという問題が生じる。
このような問題に対応するためには、耳栓をしたり、指で耳孔を塞いだりしなければならず、骨伝導を利用する意義を喪失させてしまっている。
そこで、本発明は、上記の各問題を解決するために、難聴者はもちろん、聴覚が健康な者も、容易に手軽に装着でき、かつ骨伝導による音を十分に聞き取れる骨伝導を利用した聴音装置を提供する。
第2の発明は、音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブと、前記骨伝導ドライブを格納する筐体と、前記筐体に設けられ、前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、前記筐体に設けられた耳掛部材と、を備え、形状が異なる複数の前記振動出力構造体の1つが前記筐体に設けられ、少なくとも1つの前記振動出力構造体が、耳介の後部に沿うように弓状に湾曲して形成されており、かつ、その一部に耳介の後部に向かって凸部が形成されていることを特徴とする骨伝導を利用した聴音装置である。
図1は、本発明に係る聴音構造の実施例の外観説明図であり、図2は本発明に係る聴音装置の実施例の一部断面説明図である。図中、1は聴音装置、2は骨伝導ドライブ、3は振動出力構造体、4は耳掛部材、20は筐体である。
前記骨伝導ドライブ2は、音響電気信号を振動に変換し、振動出力構造体3は、前記骨伝導ドライブ2で変換され伝達された振動を出力する。
音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、骨伝導ドライブ2は、音響電気信号によってダイヤフラム等を振動させ、該音響電気信号を骨に伝達する機械振動に変換している。
なお、本発明においては、前記骨伝導ドライブ2の振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。
そして、前記骨伝導ドライブ2は、筐体20に格納され、前記筐体20の上方に耳掛部材4が配設される。
そして、本発明における前記振動出力構造体3は、耳介の後部と側頭部の間に配設され、前記耳介の後部の上方から下方に至る範囲に当接する長さを備えて構成される。
このように構成することで、下記の理由により、聴音装置1から明瞭に音を聞き取ることができるものとなっている、と考えられる。
すなわち、前記振動出力構造体3は、骨伝導ドライブ2からの振動を耳介の後部から耳介全体に、側頭部からは頭蓋骨に伝達する。これにより、装着者は、耳介の後部と側頭部の頭蓋骨からの二側面で広範囲に振動を受け、聴音できる構成となっている。
そして、前記側頭部からの振動は、頭蓋骨に音の振動を与え骨の振動によって音を伝える一方で、耳介の後部からの振動は、耳介全体に伝わりその振動の一部が耳孔の皮膚組織を振動させ、該耳孔周辺の空気にその振動が伝達し、該空気に伝達した振動が鼓膜に達し音を伝える。
そのため、聴音時に、骨伝導からの音と耳孔から空気振動で鼓膜に伝わる音とが同時に聴音できるので、耳孔から入る雑音と骨伝導からの音とが混在することがなく、骨伝導による音が耳孔から入る雑音にマスキングされるようなことがなく、明瞭に音を聞き取ることができるものとなっている、と考えられる。
なお、振動出力構造体3は、装着者の皮膚に直接触れるので、装着時に痛みや不快感を与えない素材で構成される。例えば、合成樹脂や合成ゴム等が挙げられ、これに限られないが、耳介の後部と側頭部の間に配設され、前記耳介の後部の上方から下方に至る範囲に当接するものであるため、可撓性や柔軟性を有する素材で構成されることが好ましい。
さらに、耳掛部材4を筐体20と取着可能に形成し、耳の形状に合わせて最適な大きさの耳掛部材4に変更できる構成とすることもできる。
なお、本発明に係る聴音装置1は、片耳に装着して使用することはもちろん、両耳に装着して使用することもできることは言うまでもない。
また、本発明に係る聴音装置1にマイクを取り付けて、マイクロホンにしたり、集音器を取り付けて補聴器としたりして利用することもでき、骨伝導を利用する様々な装置や機器に利用することができるものとなっている。
図3(a)は、装着者の頭部の背面図であり、両耳に本発明の聴音装置1を装着している状態を示している。図に示すように、聴音装置1は、耳介の後部と側頭部の間に配設されていて、振動出力構造体3は耳介の後部の上方から下方に至る範囲(矢印)にわたって、耳介の後部と側頭部に当接するように配置されている。
なお、本発明における耳介の後部の上方から下方に至る範囲は、厳密なものではなく、振動出力構造体3は、耳介の後部が側頭部と繋がる部分の範囲で広く当接できる程度の長さで形成される。また、振動出力構造体3の幅は、耳介の後部と側頭部の間に配設した際に、圧迫感を与えることのない程度の大きさで、かつ耳介の後部と側頭部に振動を与えることができる程度に接触する程度の大きさで構成される。
図3(b)は、装着者の頭部の平面図であり、振動出力構造体3を備えた聴音装置1が耳介の後部と側頭部の間に挟まれ、該振動出力構造体3は耳介の後部と側頭部(の頭蓋骨)に当接している。
このように、本発明に係る聴音装置1は、振動出力構造体3が耳介の後部と側頭部の間に配設され、耳介の後部の上方から下方に至る範囲に当接する長さを備えていることが特徴である。これにより、振動出力構造体3は、耳介の後部から耳介全体に、側頭部から頭蓋骨に対し、耳介の上方から下方に至る広い範囲で、振動を伝達することができる構造となっている。
図5は、前記位置αに振動出力構造体3が配置された状態の装着例である。図に示すように、聴音装置1は、耳介の後部に装着され、該聴音装置1の振動出力構造体3が耳介の後部と、側頭部に当接するように装着される。その際、振動出力構造体3が広範囲に当接する構造なので、特に耳介の後部や側頭部のどこという特定の位置を意識することなく、装着者は特段の注意を払うことなく、耳介に耳掛部材4を掛けて、筐体20を耳介の後部に配置するだけで聴音ができるものとなっている。
すなわち、振動を伝達するために振動するのは、振動出力構造体3であり、骨伝導ドライブ2を格納・固定した筐体20は振動しないように振動出力構造体3が筐体に取り付けられている。
例えば、図6に示すように、骨伝導ドライブ2からの振動を振動出力構造体3の一部に伝達し、該伝達された振動で振動出力構造体3全体を振動させる構造などが挙げられる。
なお、本発明の聴音装置1においては、振動出力構造体3全体に、骨伝導ドライブ2からの振動を伝達できる構造であればよく、骨伝導ドライブ2の大きさや形状に合わせ、振動出力構造体3に的確に振動を伝達できるよう適宜取付方法を選択することができ、また、形状によっては、筐体20を振動させないように振動出力構造体3との間に振動を吸収する緩衝部材を配置する構造なども考えられる。
そして、骨伝導ドライブ2は、振動出力構造体3全体を振動できるだけの出力を備えたものが選択される。
聴音装置1に係止手段を備えることで、該聴音装置1をしっかりと安定して装着でき、前記振動出力構造体3の確実な装着を可能とする。
図に示す係止手段は、磁石タイプであるが、クリップタイプなど、装着者が簡単に取り付けられるものであればよく、係止位置は、耳垂だけでなく、耳介の上端部や横側端部、耳孔端部など任意の位置であってよく、係止手段は係止位置に合わせて、簡単に取着できるものであれば特に限定されるものではない。
2 骨伝導ドライブ
3、3a、3b、3c 振動出力構造体
4 耳掛部材
5 係止部材
20、20a 筐体
21 振動子
Claims (3)
- 音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブと、
前記骨伝導ドライブを格納する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体に設けられた耳掛部材と、を備え、
形状が異なる複数の前記振動出力構造体の1つが前記筐体に設けられ、
少なくとも1つの前記振動出力構造体が、耳介の後部に沿うように弓状に湾曲して形成されており、かつ、その水平断面が略三角形に形成されていることを特徴とする骨伝導を利用した聴音装置。 - 音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブと、
前記骨伝導ドライブを格納する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体に設けられた耳掛部材と、を備え、
形状が異なる複数の前記振動出力構造体の1つが前記筐体に設けられ、
少なくとも1つの前記振動出力構造体が、耳介の後部に沿うように弓状に湾曲して形成されており、かつ、その一部に耳介の後部に向かって凸部が形成されていることを特徴とする骨伝導を利用した聴音装置。 - 前記振動出力構造体の一部には、振動出力構造体の形状に依らない共通形状の凸部が形成されており、該凸部が前記筐体に挿入可能となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨伝導を利用した聴音装置。
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