JP6513767B2 - 燃料ポンプ用焼結軸受およびその製造方法 - Google Patents

燃料ポンプ用焼結軸受およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性および耐摩耗性に優れ、高強度を有する燃料ポンプ用焼結軸受およびその製造方法に関する。
従来、例えば、燃料としてガソリンや軽油などを用いるエンジンには電動燃料ポンプが使用されている。近年、ガソリンや軽油などの燃料を用いる電動燃料ポンプを備えたエンジンは、世界各地で広く使用されており、使用されるガソリンや軽油などの品質は世界の各地域で異なっており、粗悪なガソリンが使用されている地域も多い。粗悪なガソリンの一種として有機酸を含むガソリンおよびバイオ燃料が知られているが、電動燃料ポンプに銅系焼結軸受を使用した場合、このような粗悪ガソリンに含まれている有機酸やバイオ燃料により、銅系焼結軸受が腐食される。この腐食は、軸受表面に開口する気孔の開口部周辺およびこの気孔の内面、さらには軸受の内部に内在し、かつ表面から内部に連通している気孔の内面などに進行して軸受の強度を低下させ、銅系焼結軸受の寿命が短くなる。
さらに、近年、自動車などのエンジンの小型化、軽量化はめざましく、これに伴って、燃料ポンプにも小型化および軽量化が求められ、これに組込まれる焼結軸受もコンパクト化が求められる。例えば、電動燃料ポンプでは、吐出性能を確保しつつ小型化するには、回転数を高める必要があり、これに伴い、燃料ポンプ内に取り込まれたガソリンなどの燃料が狭い隙間の流通路を高圧かつ高速で通過することになり、このような条件下では、焼結軸受にコンパクト化と共に一層の高強度と耐摩耗性、摩擦特性および耐腐食性が要求されることになる。このため、従来の銅系焼結軸受は、高強度を有するが、特に耐腐食性については十分ではない。
このような用途に使用する焼結軸受として、例えば、特許文献1には、Cu−Ni−Sn−C−P系の焼結軸受が公開されている。
一方、機械的特性と耐食性に優れた焼結軸受として、アルミニウム青銅系の焼結軸受が知られている。この焼結軸受では、焼結時に昇温する過程で表面に酸化アルミニウム膜が生成しアルミニウムの拡散を阻害するために十分な耐腐食性と強度を有する焼結体を容易に得ることができないという問題がある。特許文献2には、前記問題を改良するために、焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末およびその製造方法に関する技術が公開されている。
特許第4521871号公報 特開2009−7650号公報
特許文献1に記載されたCu−Ni−Sn−C−P系の焼結軸受では、強度や耐摩耗性は向上するが、耐食性の面では十分なものとはいえない。また、希少金属であるNiを含有するので、コスト面でも問題がある。
特許文献2に記載されたアルミニウム含有銅合金粉末は成形性および焼結性に優れたものであるが、当該アルミニウム含有銅合金粉末を用いたアルミニウム青銅系焼結軸受として、安定した耐腐食性、機械的特性、コンパクト化、低コスト化を満たす多量生産に適した製品を得るためには、更なる検討が必要である。
従来の問題に鑑み、本発明は、耐腐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性を向上させると共に、コンパクト化、低コスト化を図った燃料ポンプ用アルミニウム青銅系焼結軸受を提供すること、および生産性がよく、低コストで、多量生産に好適な燃料ポンプ用アルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、アルミニウム青銅系焼結軸受およびその製造方法において、軸受機能の向上と共に、コンパクト化、低コスト化、生産性の向上を図るために、焼結による膨張を有効利用するという新規な着想を前提条件として、前述したような常にガソリンと接触する環境下にある燃料ポンプ用焼結軸受おいて、粗悪なガソリンによる硫化腐食、有機酸およびバイオ燃料による腐食を抑制し、かつ、初期なじみ、耐久性等の性能を確保するために、種々の検討と試験評価を行い、以下の知見を得たことにより本発明に至った。
(1)アルミニウム配合量と硫化腐食性の関係では、アルミニウムの配合量が多くなるほど耐腐食性は向上する。これは、アルミニウムの配合量が増えると銅への拡散が増進し耐腐食性が向上すると考えられる。
(2)アルミニウム配合量と有機酸腐食性の関係では、アルミニウムの配合量が多くなるほど耐腐食性は低下する。ただし、アルミニウムの配合量が9.0質量%付近から重量変化率が穏やかになる。
(3)アルミニウムの配合量とアルミニウム青銅組織の関係では、アルミニウムの配合量は多くなるほどβ相の割合が多くなる。β相は565℃で共析変態し、α相とγ相になり、アルミニウム配合量が多くなるほどγ相の割合が多くなる。γ相は耐有機酸腐食性、初期なじみ性を低下させるので、銅源として、アルミニウム―銅合金粉末を用い、銅単体の粉末を添加しない場合は、γ相とα相との比を、0<γ相/α相≦0.10とする。
(4)焼結温度と耐腐食性の関係では、焼結温度を高くするとアルミニウムの拡散が増進し耐腐食性が向上する。
(5)添加剤である燐は、焼結過程でのアルミニウムの拡散の促進で、アルミニウム量を減らすことができ耐腐食性と初期なじみを劣化するアルミニウム組織のγ相の析出を削減できることが考えられる。
(6)アルミニウムの配合量と初期なじみ時間および摩擦係数との関係では、アルミニウムの配合量と初期なじみ時間および摩擦係数は比例関係にある。これは、アルミニウムの配合量が増加するとγ相が増加することが考えられる。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受であって、この焼結軸受は、アルミニウム−銅合金が焼結された組織を有し、かつ前記焼結軸受の表層部の気孔を内部の気孔より小さくしたことを特徴とする。これにより、耐腐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化、低コスト化を図ることができる。
また、燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法としての本発明は、8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法であって、この製造方法は、原料粉末としてアルミニウム−銅合金粉、電解銅粉および燐−銅合金粉を用い、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する成形工程と、前記圧粉体からアルミニウム−銅合金組織を有する焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする。これにより、生産性がよく、低コストで、多量生産に好適な燃料ポンプ用アルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法を実現することができる。これにより製造された燃料ポンプ用焼結軸受は、耐腐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化を図ることができる。
上記のアルミニウム−銅合金の組織は、α相を有していることが好ましい。α相は、耐有機酸腐食性、初期なじみ性に対して有効なものである。
上記のアルミニウム−銅合金の組織(以下、アルミニウム青銅組織ともいう)は、銅源として、アルミニウム―銅合金粉末を用い、銅単体の粉末を添加しない場合は、γ相とα相との比γ相/α相を、0<γ相/α相≦0.10とすることが好ましい。0<γ相/α相≦0.10の範囲であれば、耐有機酸腐食性、初期なじみ性に優れる。
上記の黒鉛の配合量として、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%添加されていることが好ましく、例えば、3〜5重量%添加されているものが使用可能である。3重量%未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量%を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量%を超えると、アルミニウムの銅への拡散が阻害されるので、考慮が必要である。耐摩耗性については、黒鉛の添加量を増量すると耐摩耗性が向上するが、黒鉛の添加量10重量%から摩耗量が若干多くなり、材料強度の低下が原因と考えられる。
上記の前記黒鉛粉は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末にしたものが好ましい。一般的に黒鉛を4重量%以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。
上記の燃料ポンプ用焼結軸受には、焼結助剤としての錫を添加しないことが好ましい。錫はアルミニウムの拡散を妨げるので好ましくない。
上記の燃料ポンプ用焼結軸受において、アルミニウムの含有量を9〜9.5重量%とするとさらに好ましい。燃料ポンプ用焼結軸受として、アルミニウムの含有量が8.5〜10重量%であれば使用可能であり、9〜9.5重量%は最適な範囲である。
上記の焼結助剤として、前記アルミニウム−銅合金粉、電解銅粉および燐−銅合金粉からなる原料粉末の合計100重量%に対して、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%添加することが好ましい。0.05重量%未満では、焼結助剤としての効果が不十分となり、緻密で適宜の強度を有する焼結体が得られない。一方、0.2重量%を超えると、それ以上添加しても焼結助剤としての効果は頭打ちとなり、コスト的な観点から0.2重量%以下に止めることが好ましい。
上記のアルミニウム−銅合金粉の平均粒径d1と電解銅粉の平均粒径d2との比d2/d1を2〜3とすることが好ましい。比d2/d1がこの範囲にあると、アルミニウムを銅に十分拡散させることができ、耐腐食性に優れる。
上記の電解銅粉は、粉末形状が異なるもので構成され、アスペクト比が2以上の電解銅粉の割合W1と2未満の電解銅粉の割合W2との比W2/W1を3〜9とすることが好ましい。アスペクト比が2以上の電解銅粉は、アルミニウムの拡散のためには有効であるが、成形性が悪い。比W2/W1が、3未満であると成形性の面から好ましくなく、一方、9を超えるとアルミニウムの拡散が不十分となるので好ましくない。ここで、アスペクト比とは、粉末の長軸長さを粉末の厚みで除した比を意味する。
燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法としての第2の発明は、8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法であって、この製造方法は、原料粉末として、銅単体の粉末を添加せず、アルミニウム−銅合金粉および燐−銅合金粉を用い、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する成形工程と、前記圧粉体からアルミニウム−銅合金組織を有する焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする。ここで、原料粉末としての銅単体の粉末を添加せずとは、製造現場において不可避的に含まれる銅単体の粉末は許容する意味で用いる。
上記の製造方法としての第2の発明も、生産性がよく、低コストで、多量生産に好適な燃料ポンプ用アルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法を実現することができる。また、これにより製造された燃料ポンプ用焼結軸受は、耐腐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化を図ることができる。さらに、銅単体の粉末が添加されていないので、銅単体が偏った部分が略無くなり、この部分による腐食の発生が回避されると共に、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つの耐腐食性が向上することにより、さらに厳しい使用環境に対しても耐腐食性を確保することができる。
上記の原料粉末としてのアルミニウム−銅合金粉が、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末であることが好ましく、例えば8〜10重量%アルミニウム−銅合金粉末であることがより好ましい。これらの場合、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つ耐腐食性が向上し、燃料ポンプ用焼結軸受全体の耐腐食性が向上する。
本発明による燃料ポンプ用焼結軸受は、耐腐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化、低コスト化を図ることができる。また、本発明による燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法は、生産性がよく、低コストで、多量生産に好適な燃料ポンプ用アルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法を実現することができる。
さらに、銅単体の粉末を添加せず、アルミニウム−銅合金粉を用いた製造方法としての第2の発明によれば、銅単体が偏った部分が略無くなり、この部分による腐食の発生が回避されると共に、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つの耐腐食性が向上することにより、さらに厳しい使用環境に対しても耐腐食性を確保することができる。
本発明の第1の実施形態に係る燃料ポンプ用焼結軸受が使用される燃料ポンプの概要を示す縦断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る燃料ポンプ用焼結軸受および本発明の第1の実施形態に係る製造方法に基づく燃料ポンプ用焼結軸受の縦断面図である。 (a)は図2のA部の金属組織を拡大した模式図で、(b)は図2のB部の金属組織を拡大した模式図で、(c)は図2のC部の金属組織を拡大した模式図である。 アルミニウムの配合量と硫化腐食性の関係についての試験結果を示すグラフである。 アルミニウムの配合量と有機酸腐食性の関係についての試験結果を示すグラフである。 アルミニウムの配合量と銅イオン溶出量の関係についての試験結果を示すグラフである。 アルミニウムの配合量と初期なじみ時間の関係についての試験結果を示すグラフである。 アルミニウムの配合量と摩擦係数の関係についての試験結果を示すグラフである。 図2の燃料ポンプ用焼結軸受の製造工程を説明する図である。 原料粉末の混合機の概要図である。 メッシュベルト式連続炉の概要図である。 サイジング工程を説明する図であり、(a)は焼結体をサイジング加工の金型にセットした状態を示し、(b)はコアが下降した状態を示し、(c)はサイジング加工が終了した状態を示す。 サイジング工程における製品の圧縮状態を示す図である。 含油装置の概要図である。 本発明の第2の実施形態に係る燃料ポンプ用焼結軸受についてのアルミニウムの配合量と有機酸腐食性の関係についての試験結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る燃料ポンプ用焼結軸受についてのアルミニウムの配合量と銅イオン溶出量の関係についての試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の燃料ポンプ用焼結軸受についての第1の実施形態およびその製造方法についての第1の実施形態を添付図面に基づいて説明する。燃料ポンプ用焼結軸受についての第1の実施形態を図1〜8に示し、製造方法についての第1の実施形態を図9〜14に示す。
図1は、本実施形態に係る焼結軸受が使用される燃料ポンプの概要を示す縦断面図である。電動燃料ポンプ40は、円筒状の金属製ハウジング41の上部にモータ部42が組み込まれ、その下側にポンプ部43が組み込まれている。ハウジング41の上端部には合成樹脂製モータカバー45が加締め固定されている。ハウジング41の下端部には金属製ポンプカバー46およびポンプボデー47が取り付けられている。ハウジング41内のモータカバー45とポンプカバー46との間にモータ部室48が形成され、ポンプカバー46とポンプボデー47との間にポンプ部室49が形成されている。ポンプカバー46は、モータ部室48とポンプ部室49とを区画する区画壁を形成している。
モータ部室48にはモータのアーマチュア50が配置されている。アーマチュア50の軸52の上下端部は、モータカバー45とポンプカバー46にそれぞれすべり軸受1、2を介して回転自在に支持されている。このすべり軸受1、2が本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受である。
ハウジング41に内周面には、マグネット55がアーマチュア50の外周面に対して所定の間隔をあけて固定されている。モータカバー45には、アーマチュア50の整流子50aに摺接するブラシ56がスプリング57により付勢された状態で組み込まれている。ブラシ56は、チョークコイル58を介して外部接続端子(図示省略)と導通されている。モータカバー45には、燃料噴射弁に通じる燃料供給パイプ(図示省略)を接続する吐出口70が設けられている。この吐出口70には、燃料の逆流を阻止するチェックバルブ71がスプリング72により閉止方向に付勢された状態で組み込まれている。
ポンプ部43のポンプカバー46とポンプボデー47との間にはプレート74が介在されており、ポンプ部室49が2室に区画されている。この各室にはインペラ75がそれぞれ配置されている。両インペラ75は、軸52の下端部に連結されており、モータ部42によって回転駆動される。ポンプボデー47には吸入口76が設けられており、ポンプカバー46には流通口77が設けられている。
燃料ポンプ40は、モータ部42によってポンプ部43のインペラ75を回転させる。これにより、燃料タンク内の燃料が吸入口76よりポンプ部室49に汲み上げられ、この燃料は、ポンプ部43の流路を経てポンプカバー46の流通口77よりモータ部室48に入り、吐出口70から吐出される。したがって、アーマチュア50の軸52を回転自在に支持する本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受1、2は燃料(例えば、ガソリン)と常に接触する環境下にある。図1に示す燃料ポンプ40は、例えば燃料ポンプ40がガソリン等の液体状燃料中に浸されるインタンク方式の燃料ポンプ40である。
ここで燃料ポンプの種類について説明すると、燃料ポンプとして、例えば、インタンク方式の燃料ポンプと、アウトタンク方式の燃料ポンプとの二種類の方式のものが挙げられる。
インタンク方式の燃料ポンプは、例えば、ガソリン等の液体状燃料の液中に燃料ポンプそのものが浸漬されつつ使用される方式のものである。このため、例えばインタンク方式の燃料ポンプに用いられる焼結軸受1、2は、必ずしも含油されていなくてもよいものであるが、初期摩耗を少しでも抑えるために、インタンク方式の燃料ポンプに用いられる焼結軸受1、2は、含油されたものが用いられることが好ましい。
これに対し、アウトタンク方式の燃料ポンプは、ガソリン等の液体状燃料の液中に燃料ポンプそのものが浸漬されることなく大気中で使用される方式のものである。例えばアウトタンク方式の燃料ポンプに用いられる焼結軸受についても必ずしも含油されていなくてもよいものであるが、初期摩耗を少しでも抑えるために、アウトタンク方式の燃料ポンプに用いられる焼結軸受についても含油されていることが好ましい。
本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受の縦断面図を図2に示す。燃料ポンプ用焼結軸受(以下、単に焼結軸受ともいう)1は、内周に軸受面1aを有する円筒状に形成される。焼結軸受1の内周にアーマチュア50(図1参照)の軸52を挿入し、その状態で軸52を回転させると、焼結軸受1の無数の空孔に保持された潤滑油が温度上昇に伴って軸受面1aに滲み出す。この滲み出した潤滑油によって、軸52の外周面と軸受面1aの間の軸受隙間に油膜が形成され、軸52が軸受1によって相対回転可能に支持される。焼結軸受2は、焼結軸受1と形状や寸法などが異なるが機能的には同じであるので、焼結軸受1を例にとって説明し、図2に符号2を併記して焼結軸受2の説明は省略する。
本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受1は、各種粉末を混合した原料粉末を金型に充填し、これを圧縮して圧粉体を成形した後、圧粉体を焼結することで形成される。
原料粉末は、アルミニウム−銅合金粉末、銅粉末、燐−銅合金粉末、黒鉛粉末と焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを混合した混合粉末である。各粉末の詳細を以下に述べる。
[アルミニウム−銅合金粉末]
40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を粉砕し、粒度調整した。アルミニウム−銅合金粉末の粒径は100μm以下で、平均粒径は35μmである。ここで、本明細書において、平均粒径とは、レーザ回析により測定した粒径の平均値を意味する。具体的には、(株)島津製作所製SALD−3100により、5000粉末をレーザ回析で測定したときの粒径の平均値とする。
アルミニウム−銅合金粉末を用いることで、黒鉛、燐等の添加剤の効果を引き出し、焼結軸受材として耐腐食性、強度、摺動特性等に優れる。また、合金化されているので、比重の小さいアルミニウム単体粉体の飛散に伴う取り扱い上の問題はない。
アルミニウム青銅組織は、α相が最も硫化腐食、有機酸腐食に対する耐腐食性および初期なじみに優れる。40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を用いることで、黒鉛が添加されても強度が得られ焼結軸受が製造可能となる。組織がγ相になると、耐摩耗性には優れるが、耐有機酸腐食性および初期なじみが劣化する。アルミニウム青銅組織は、γ相とα相との比γ相/α相を、0.10≦γ相/α相≦0.25とすることが好ましい。γ相/α相の比が0.10未満では耐摩耗性が低下し好ましくなく、一方、0.25を超えると初期なじみ性、耐有機酸腐食性が低下するので、好ましくない。
[銅粉末]
銅粉末は、アトマイズ粉、電解粉、粉砕粉があるが、銅にアルミニウムを十分に拡散させるには、樹枝状の電解粉が有効であり、成形性、焼結性、摺動特性に優れる。そのため、本実施形態では、銅粉として電解粉を用いた。また、アルミニウムを銅へ十分に拡散させるためには、粉末形状が異なる電解銅粉を2種類用い、アスペクト比が2以上の電解銅粉の割合W1と2未満の電解銅粉の割合W2との比W2/W1を3〜9とすることが好ましい。アスペクト比が2以上の電解銅粉は、アルミニウムの拡散のためには有効であるが、成形性が悪い。比W2/W1が、3未満であると成形性の面から好ましくなく、一方、9を超えるとアルミニウムの拡散が不十分となるので好ましくない。
本実施形態では、電解銅粉の平均粒径は85μmのものを用いた。前述したアルミニウム−銅合金粉の平均粒径d1と電解銅粉の平均粒径d2との比d2/d1を2〜3とすることが好ましい。比d2/d1がこの範囲にあると、アルミニウムを銅に十分拡散させることができ、耐腐食性に優れる。このため、本実施形態では、アルミニウム−銅合金粉の平均粒径d1を35μm、電解銅粉の平均粒径d2を85μmとした。ただし、これに限ることなく、アルミニウム−銅合金粉末の平均粒径は20〜65μm程度のものが使用可能であり、電解銅粉の粒径は200μm以下で、平均粒径は60〜120μm程度のものが使用可能である。
[燐合金粉末]
燐合金粉末は、7〜10重量%燐−銅合金粉末を用いた。燐は、焼結時の固液相間の濡れ性を高める効果がある。燐の配合量は、0.1〜0.6重量%、具体的には0.1〜0.4重量%が好ましい。0.1重量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、上記の0.6重量%好ましくは0.4重量%を超えると、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しγ相の析出が増え焼結体が脆くなる。
[黒鉛粉末]
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%が好ましく、例えば3〜5重量%としてもよい。3重量%未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量%を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量%を超えると、材料強度が低下し、アルミニウムの銅への拡散を阻害するので好ましくない。一般的に黒鉛を4重量%以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。本実施形態では、黒鉛粉末は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末を用いた。
[フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウム]
アルミニウム−銅合金粉末は、焼結時にその表面に生成する酸化アルミニウムの皮膜が焼結を著しく阻害するが、焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム−銅合金粉末の焼結温度である850〜900℃で溶融しながら徐々に蒸発し、アルミニウム−銅合金粉末の表面を保護して酸化アルミニウムの生成を抑制することにより、焼結を促進しアルミニウムの拡散を増進させる。フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、焼結時に蒸発、揮散するので、焼結軸受の完成品には殆ど残らない。
焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、合計で0.05〜0.2重量%程度で添加することが好ましい。0.05重量%未満では、焼結助剤としての効果が不十分となり、緻密で適宜の強度を有する焼結体が得られない。一方、0.2重量%を超えると、それ以上添加しても焼結助剤としての効果は頭打ちとなり、コスト的な観点から0.2重量%以下に止めることが好ましい。
本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受および後述する製造方法では、アルミニウム含有量が8.5〜10重量%、燐が0.1〜0.4重量%で、残部の主成分が銅となるような割合で、アルミニウム−銅合金粉末、電解銅粉末および燐合金粉末を混合し、この合計100重量%に対して、黒鉛の配合量が3〜5重量%になるように黒鉛粉末を混合して原料粉末とした。焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量%添加した。
詳しく説明すると、例えば、本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受および後述する製造方法では、アルミニウム含有量が8.5〜10重量部、燐が0.1〜0.4重量部で、残部の主成分が銅となるような割合で、アルミニウム−銅合金粉末、電解銅粉末および燐合金粉末を混合し、この合計100重量部に対して、黒鉛の配合量が3〜5重量部になるように黒鉛粉末を混合して原料粉末とした。黒鉛の配合量は、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量部に対して、3〜10重量部が好ましく、例えば3〜5重量部としてもよい。3重量部未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量部を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量部を超えると、材料強度が低下し、アルミニウムの銅への拡散を阻害するので好ましくない。一般的に黒鉛を4重量部以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。本実施形態では、黒鉛粉末は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末を用いた。焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量部、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量部添加した。
図3に本実施形態に係る焼結軸受の断面の金属組織の模式図を示す。図3(a)は図2のA部を拡大した図である。同様に、図3(b)は図2のB部を、図3(c)は図2のC部を、それぞれ、拡大した図である。すなわち、図3(a)は内径側の軸受面の表層部の金属組織を示し、図3(b)は内部の金属組織を示し、図3(c)は外径面の表層部の金属組織を示す。図3(a)、(b)、(c)に示すように、ハッチングを付した3がアルミニウム−銅合金組織で、表面および内部気孔の周りに酸化アルミニウム皮膜4が存在する。このため、耐食性および耐摩耗性に優れる。図示は省略するが、アルミニウム−銅合金組織3の粒界部には燐が多くある。気孔内には遊離黒鉛5が分布しているので、潤滑性、耐摩耗性に優れる。
図3(a)に示すように、内径側の軸受面に形成された開放気孔db1と軸受面の表層の内部気孔db2が形成されている。図3(b)に示すように軸受内部には気孔diが形成され、図3(c)に示すように外径面に形成された解放気孔do1と外径面の表層に形成された内部気孔do2が形成されている。軸受面に形成された開放気孔db1、軸受面の表層の内部気孔db2、軸受内部には気孔di、外径面に形成された解放気孔do1および外径面の表層に形成された内部気孔do2は、それぞれ連通している。
焼結軸受1は、後述する製造方法(図13参照)において、焼結後に軸受の外径面1bと内径側の軸受面1aの両方がサイジング加工されている。そして、アルミニウム青銅系焼結軸受は、焼結することにより膨張するので、軸受の外径面1bが内径側の軸受面1aよりも大きな量でサイジングされる。そのため、外径面1b側の表層部の気孔do〔図3(c)参照〕は、軸受面1a側の表層部の気孔db〔図3(a)参照〕よりも多くつぶされる。外径面1b側の表層部の気孔do、軸受面1a側の表層部の気孔dbおよびつぶされない軸受内部の気孔di〔図3(b)参照〕の大きさを比較すると、do<db<diの関係になる。このような関係になっているので、軸受面1a側では、耐食性、油膜形成性を向上させることができ、一方、封孔状態に近い外径面1b側や端面1c側では、耐食性、保油性を向上させることができる。
焼結軸受1の気孔do、db、di内には、潤滑油が含浸されている。これにより、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。潤滑油としては鉱油、ポリαオレフィン(PAO)、エステル、液状グリース等を使用することができる。ただし、軸受の使用用途にとっては、必ずしも潤滑油を含浸する必要はない。
図2に焼結軸受1の表層の圧縮層をハッチングで示す。ハッチングは、軸受1の半径方向の上側半分にだけに付して、下側半分は図示を省略する。焼結軸受1の表層は圧縮層を有する。外径面1b側の表層の圧縮層Poの密度比αoおよび軸受面1a側の表層の圧縮層Pbの密度比αbは、いずれも内部の密度比αiより高く、密度比αo、αbのいずれもが80%≦αoおよびαb≦95%の範囲に設定されている。密度比αoおよびαbが80%未満では軸受強度が不十分となり、一方、95%を超えると含油量が不足し、好ましくない。
そして、外径面1b側の表層の圧縮層Poの深さの平均値をTo、軸受面1a側の表層の圧縮層Pbの深さの平均値をTbとし、軸受面の内径寸法D1との比をそれぞれTo/D1およびTb/D1とすると、1/100≦To/D1およびTb/D1≦1/15に設定することが好ましい。ここで、密度比αは次式で表される。
α(%)=(ρ1/ρ0)×100
ただし、ρ1:多孔質体の密度、ρ0:その多孔質体に細孔がないと仮定した場合の密度
To/D1およびTb/D1が1/100未満では気孔のつぶれが不十分となり、一方、1/15を超えると気孔がつぶれ過ぎて好ましくない。
次に、本実施形態に至るまでの検証結果を図4〜8に基づいて説明する。図4、5、7および8における破線X1〜X4は、それぞれの試験項目の許容レベルを示す。
図4は、アルミニウム(Al)配合量と硫化腐食性の関係を試験した結果を示す。アルミニウム配合量が多くなるほど耐腐食性が向上することが確認できた。この試験結果より、燃料ポンプ用焼結軸受の耐硫化腐食性に対して、アルミニウムの配合量は8.5重量%以上が必要であることが分かる。
[試験条件]
・溶剤:市販ガソリンに300ppm硫黄を添加した。
・温度:80℃
・時間:300時間
・試験方法:浸漬
図5は、アルミニウム配合量と有機酸腐食性の関係を試験した結果を示す。アルミニウム配合量が多くなるほど耐腐食性が低下することが分かった。ただし、アルミニウム配合量9.0質量%付近から重量変化率が穏やかになる。アルミニウム配合量が多くなるほど重量変化率が大きくなる要因は、銅イオンとアルミニウムイオンの溶出であり、この銅イオンとアルミニウムイオンの溶出が多くなる要因は、アルミニウム組織のγ相の析出が大きくなるためであることが考えられる。この試験結果より、燃料ポンプ用焼結軸受の耐有機酸腐食性に対して、アルミニウムの配合量は10重量%以下が必要であることが分かる。
[試験条件]
・溶剤:濃度2%の有機酸。
・温度:50℃
・時間:100時間
・試験方法:浸漬
図6は、アルミニウム配合量と銅イオン溶出量の関係を試験した結果を示す。アルミニウム配合量が多くなるほど銅イオンの溶出量が減少し、アルミニウム配合量8.5質量%付近から急激に銅イオンの溶出量が減少することが確認できた。銅イオン溶出量が減少する要因は、アルミニウム配合量が増えると拡散が十分に進むことが考えられる。この試験結果からも、アルミニウムの配合量は8.5重量%以上が必要であることが分かる。
[試験条件]
・溶剤:濃度2%の有機酸。
・温度:50℃
・時間:100時間
・試験方法:浸漬
図7は、アルミニウム配合量と初期なじみ時間の関係を試験した結果を示す。アルミニウム配合量と初期なじみ時間は比例関係になることが確認できた。これは、アルミニウム配合量が増加するとアルミニウム組織に硬質のγ相が増加するためであると考えられる。この試験結果より、燃料ポンプ用焼結軸受の初期なじみに対して、アルミニウムの配合量は10重量%以下が必要であることが分かる。
[試験条件]
・PV値:50MPa・m/min
・試料サイズ:内径5mm×外径10mm×幅7mm
・試験時間:30min
図8は、アルミニウム配合量と摩擦係数の関係を試験した結果を示す。アルミニウム配合量と摩擦係数は比例関係になることが確認できた。これは、アルミニウム配合量が増加するとアルミニウム組織に硬質のγ相が増加するためであると考えられる。アルミニウム配合量10重量%以下では、許容レベルX4に対して十分に余裕があることが分かる。
[試験条件]
・PV値:50MPa・m/min
・試料サイズ:内径5mm×外径10mm×幅7mm
・試験時間:30min
表1に第1の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受の硬さを測定した結果を示す。表1に示す硬さの値は、試験荷重25gにおけるビッカース硬さ(Hv:Vickers hardness)に基づいて評価した値である。以下、硬さの値については、ビッカース硬さ(Hv)に基づく値として説明する。また、比較として銅系焼結軸受の硬さを比較例1として併記した。
Figure 0006513767
表1の如く、銅系焼結軸受の硬さが70〜80であるのに対し、第1の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受の硬さは、例えば120〜220であり、この結果から、第1の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受は、銅系焼結軸受よりも耐摩耗性に優れた焼結軸受であると判定できる。これは、柔らかい相であるα相の硬さが120〜140であり、硬い相であるγ相の硬さが200〜220であり、第1の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受のいずれの相の硬さも、銅系焼結軸受の硬さよりも硬いことによる。
図4〜8および表1に示す試験結果より、燃料ポンプ用焼結軸受として、アルミニウム配合量が8.5〜10重量%であれば使用可能であり、9.0〜9.5重量%が最適なアルミニウム配合量であることが確認できた。
次に、燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法についての第1の実施形態を説明する。図9に示すような原料粉末準備工程S1、成形工程S2、焼結工程S3、サイジング工程S4、含油工程S5を経て製造される。
[原料粉末準備工程S1]
原料粉末準備工程S1では、焼結軸受1の原料粉末が準備・生成される。原料粉末は、40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を17〜20重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を2〜4重量%、電解銅粉末を残重量%とする合計100重量%に対して、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、黒鉛粉末を3〜5重量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量%添加した。潤滑剤を添加することにより、後述する圧粉体をスムーズに離型することができ、離型に伴う圧粉体の形状の崩れを回避することができる。具体的には、上記の原料粉末Mを、例えば、図10に示すV型混合機10の缶体11に投入し、缶体11を回転させて均一に混合する。
例えば、40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を17〜20重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を2〜4重量%、電解銅粉末を残重量%とする合計100重量%(黒鉛部分は含まれない)の合金部分に対し、アルミニウムの含有量が、例えば8.5重量%以上10重量%以下、具体的には9重量%以上9.5重量%以下となるようにする。
例えば、原料粉末は、40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を17〜20重量部、7〜10重量%燐−銅合金粉末を2〜4重量部、電解銅粉末を残重量部とする合計100重量部に対して、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量部、黒鉛粉末を3〜10重量部、例えば3〜5重量部、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.1〜1重量部添加したものが使用可能とされる。
例えば、40〜60重量%アルミニウム−銅合金粉末を17〜20重量部、7〜10重量%燐−銅合金粉末を2〜4重量部、電解銅粉末を残重量部とする合計100重量部(黒鉛部分は含まれない)の合金部分に対し、アルミニウムの含有量が、例えば8.5重量部以上10重量部以下、具体的には9重量部以上9.5重量部以下となるようにする。
[成形工程S2]
成形工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、焼結軸受1の形状をなした圧粉体1’(図13参照)を形成する。圧粉体1’は、焼結温度以上で加熱することにより形成される焼結体1”の密度比αが70%以上で80%以下となるように圧縮成形される。図13では、簡便的に、圧粉体には符号1’、焼結体には符号1”を併記している。
具体的には、例えばサーボモータを駆動源としたCNCプレス機に圧粉体形状に倣ったキャビティを画成してなる成形金型をセットし、キャビティ内に充填した上記の原料粉末を200〜700MPaの加圧力で圧縮することにより圧粉体1’を成形する。圧粉体1’の成形時において、成形金型は70℃以上に加温してもよい。
本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受1の製造方法では、アルミニウム源として、アルミニウム−銅合金粉末を用いることにより、流動性に起因する成形性の低下による圧粉体の強度不足の問題が改善され、比重の小さいアルミニウム単体粒子の飛散に伴う取り扱い上の問題はない。また、生産効率がよく多量生産に好適である。
[焼結工程S3]
焼結工程S3では、圧粉体1’を焼結温度で加熱し、隣接する原料粉末同士を焼結結合させることによって焼結体1”を形成する。図11に示すメッシュベルト式連続炉15を使用し、メッシュベルト16に圧粉体1’を多量に投入し、焼結体1”を形成する。これにより、安定した品質、製造方法を実現することができる。
焼結工程において重要なことは、銅にアルミニウムを十分拡散させ耐腐食性を向上させることと、アルミニウム青銅組織をα相にすることで、耐腐食性と軸受性能(初期なじみ)を向上させることである。γ相になると硬くなり、耐摩耗性には優れるが、耐有機酸腐食性は低下する。そのため、できる限りγ相の析出は抑えるようにアルミニウム量を減らすことが必要であることが判明した。
さらに、アルミニウム組織は、γ相とα相との比γ相/α相を、0.10≦γ相/α相≦0.25とすることが好ましい。γ相/α相の比が0.10未満では耐摩耗性が低下し好ましくなく、一方、0.25を超えると初期なじみ性、耐有機酸腐食性が低下するので、好ましくない。
上記を満足する焼結条件として、焼結温度は900〜950℃が好ましく、さらに、900〜920℃(例えば、920℃)が好ましい。また、雰囲気ガスは、水素ガス、窒素ガスあるいはこれらの混合ガスとし、焼結時間は、長くした方が耐腐食性に良く、燃料ポンプ用焼結軸受では20〜60分(例えば、30分)が好ましい。
アルミニウム−銅合金粉末は、共晶温度548℃以上になると様々な液相が発生する。液相が発生すると膨張し、発生した液相により焼結ネックが形成され、緻密化に至り、寸法が収縮していく。本実施形態では、メッシュベルト式連続炉15で焼結することにより、焼結体1”の表面が酸化され、焼結が阻害されることにより緻密化に至らず、寸法が膨張したままとなる。ただし、焼結体1”の内部は、酸化されず焼結されるため、焼結体1”の強度は十分確保することができる。メッシュベルト式連続炉15を使用したので、圧粉体1’の投入から取出しまで焼結時間を短く多量生産でき、コスト低減を図ることができる。また、焼結軸受の機能面では、強度は十分確保することができる。
上記の焼結工程においては、添加された燐合金粉末が効果を発揮することにより、良質の焼結体を形成することができる。燐により、焼結時の固液相間の濡れ性を高め、良好な焼結体が得られる。燐の配合量としては、0.1〜0.6重量%、具体的には0.1〜0.4重量%が好ましい。0.1重量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、上記の0.6重量%好ましくは0.4重量%を超えると、得られた焼結体が偏析し脆くなる。
さらに、黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%が好ましく、例えば3〜5重量%としてもよい。3重量%未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量%を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量%を超えると、材料強度が低下し、アルミニウムの銅への拡散を阻害するので好ましくない。一般的に黒鉛を4重量%以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。本実施形態では、黒鉛粉末は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末を用いた。
[サイジング工程S4]
サイジング工程S4では、焼結により圧粉体1’と比較して膨張した焼結体1”を寸法整形する。図12にサイジング工程S4の詳細を示す。サイジング加工の金型は、ダイス20、上パンチ21、下パンチ22およびコア23とからなる。図12(a)に示すように、コア23と上パンチ21が上方に後退した状態で、下パンチ22上に焼結体1”をセットする。図12(b)に示すように、最初にコア23が焼結体1”の内径に入り、その後、図12(c)に示すように、上パンチ21により焼結体1”がダイス20に押し込まれ、上下パンチ21、22により圧縮される。これにより、焼結体1”の表面が寸法整形される。サイジング加工により、膨張した焼結体1”の表層の気孔をつぶし、製品内部と表層部に密度差が生じる。
図13にサイジング加工により焼結体1”が圧縮される状態を示す。サイジング加工前の焼結体1”を2点鎖線で示し、サイジング加工後の製品1を実線で示す。2点鎖線で示すように、焼結体1”は径方向および幅方向に膨張している。このため、焼結体1”は、外径面1bを内径側の軸受面1aより多く圧縮される。その結果、外径面1b側の表層の気孔do〔図3(c)参照〕は、内径側の軸受面1bの表層の気孔db〔図3(a)参照〕よりも多く潰され、潰されない軸受内部の気孔di〔図3(b)参照〕に対して、do<db<diの関係になる。このような関係になっているので、内径側の軸受面1aでは、耐食性、油膜形成性を向上させることができる。一方、封孔状態に近い外径面1bや端面1cでは、耐食性、保油性を向上させることができる。
上記のサイジング工程の金型をダイス20、一対のパンチ21、22およびコア23から構成し、パンチ21、22とダイス20により焼結体1”の軸方向両側と外径側から圧縮し、焼結体1”の内径側をコア23により整形することにより、アルミニウム青銅系焼結軸受の焼結による膨張を有効利用し、焼結軸受1の寸法整形と共に所望の気孔を形成することができる。
また、上記のダイス20の内径寸法と焼結体1”の外径寸法との寸法差およびコア23の外径寸法と焼結体1”の内径寸法との寸法差を加減することにより、焼結体1”の表面の気孔の大きさを設定することができる。これにより、焼結軸受1の表面の気孔の大きさを容易にコントロールすることができる。さらに、図示は省略するが、軸受面1a(図13参照)を回転サイジングすることで、軸受面1aの気孔を小さくすることができる。
[含油工程S5]
含油工程S5は、製品1(焼結軸受)に潤滑油を含浸する工程である。図14に含油装置を示す。含油装置25のタンク26内に製品1を投入し、その後、潤滑油27をタンク26内に注入する。そして、タンク26内を減圧することにより、製品1の気孔do、db、di(図3参照)内に潤滑油27を含浸する。これにより、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。潤滑油としては鉱油、ポリαオレフィン(PAO)、エステル、液状グリース等を使用することができる。ただし、軸受の使用用途に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
以上のような工程で製造された本実施形態の焼結軸受1は、耐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化、低コスト化を図ることができる。燃料ポンプ用焼結軸受として、粗悪なガソリンによる硫化腐食、有機酸およびバイオ燃料に対して腐食を抑制し、かつ、初期なじみ、耐久性等の性能に優れる。
次に、本発明に係る燃料ポンプ用焼結軸受についての第2の実施形態および製造方法についての第2の実施形態を説明する。第1の実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受および製造方法では、アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、アルミニウム−銅合金粉末と電解銅粉を用いたが、第2の実施形態では、銅単体の電解銅粉を添加せず、アルミニウム−銅合金粉末を用いた点が第1の実施形態と異なる。
さらに厳しい使用環境に対しては、銅単体の粉末を添加すると、銅単体が偏った部分が生じることにより、耐腐食性に問題があるという知見を得た。この知見を基に種々検討の結果、アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、アルミニウム−銅合金粉末を用い、銅単体の粉末を添加しないという着想により、本実施形態に至った。
本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受および製造方法における、アルミニウム含有量が8.5〜10重量%、燐が0.1〜0.4重量%で、残部の主成分が銅とする組成は、第1の実施形態と同じである。しかし、原料粉末は次のように異なる。すなわち、銅単体の電解銅粉を添加せずに、前記組成になるような割合で、アルミニウム−銅合金粉末および燐合金粉末を混合し、この合計100重量%に対して、黒鉛の配合量が3〜5重量%になるように黒鉛粉末を混合して原料粉末とした。また、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、さらに、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛を0.1〜1重量%添加した。
例えば、燃料ポンプ用焼結軸受および製造方法における、アルミニウム含有量が8.5〜10重量部、燐が0.1〜0.4重量部、必要に応じて黒鉛の配合量が3〜10重量部、例えば3〜5重量部で、残部の主成分が銅とする組成のものが使用可能とされる。この場合、例えば原料粉末は次のようになる。すなわち、銅単体の電解銅粉を添加せずに、前記組成になるような割合で、アルミニウム−銅合金粉末および燐合金粉末を混合し、この合計100重量部に対して、黒鉛の配合量が3〜10重量部、例えば3〜5重量部になるように黒鉛粉末を混合して原料粉末とした。黒鉛の配合量は、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量部に対して、3〜10重量部が好ましく、例えば3〜5重量部としてもよい。3重量部未満では、燃料ポンプ用焼結軸受として黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5重量部を超えると、例えばアルミニウムの銅への拡散が阻害され始めることが懸念される。黒鉛の添加量が10重量部を超えると、材料強度が低下し、アルミニウムの銅への拡散を阻害するので好ましくない。一般的に黒鉛を4重量部以上添加すると成形することができないが、造粒黒鉛を使用することで成形を可能にした。本実施形態では、黒鉛粉末は、天然黒鉛、又は人造黒鉛の微粉を樹脂バインダで造粒後粉砕し、粒径145メッシュ以下の黒鉛粉末を用いた。また、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量部、さらに、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛を0.1〜1重量部添加した。
銅源として、アルミニウム―銅合金粉末を用い、銅単体の粉末を添加しない本実施形態のアルミニウム青銅組織は、γ相とα相との比γ相/α相を、0<γ相/α相≦0.10とすることが好ましい。0<γ相/α相≦0.10の範囲であれば、耐有機酸腐食性、初期なじみ性に優れる。
本実施形態に係る焼結軸受の断面の金属組織は、図3の模式図で示した第1の実施形態と同様であるので、図3について前述した内容を準用し、重複説明を省略する。
また、本実施形態の焼結軸受1の表層の圧縮層の状態も、図2に示す第1の実施形態の焼結軸受と同様であるので、図2について前述した内容を準用し、重複説明を省略する。
次に、本実施形態に至るまでの検証結果を図15および図16に基づいて説明する。図15における破線X2は、試験項目の許容レベルを示す。図示は省略するが、アルミニウム配合量と硫化腐食性の関係については、第1の実施形態における焼結軸受よりも第2の実施形態における焼結軸受のほうに良好な結果が確認された。また、初期なじみ時間の関係および摩擦係数の関係については、第1の実施形態における焼結軸受の試験結果と、第2の実施形態における焼結軸受の試験結果とは、略同等の結果とされたことから、ここではその詳細な説明を省略する。
図15は、アルミニウム配合量と有機酸腐食性の関係を試験した結果を示す。試験条件は図5と同じである。図15において◆印は図5に示した第1の実施形態の焼結軸受の試験結果であるが、◇印で示した本実施形態の焼結軸受は、アルミニウムの配合量8.5重量%において、第1の実施形態よりも有機酸耐腐食性がさらに向上することが確認できた。アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、銅単体の粉末を添加せずに、アルミニウム−銅合金粉末を用いたので、銅単体が偏った部分が略なくなり、その部分による腐食の発生が回避され、耐腐食性が向上したものと考えられる。これと相俟って、アルミニウム−銅合金粉末を用いることにより、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つ耐腐食性が向上し、焼結軸受全体の耐腐食性が向上したものと考えられる。
図16は、アルミニウム配合量と銅イオン溶出量出量の関係を試験した結果を示す。試験条件は図6と同じである。図16においても◆印は図6に示した第1の実施形態の焼結軸受の試験結果であるが、◇印で示した本実施形態の焼結軸受は、アルミニウムの配合量8.5重量%において、第1の実施形態よりも銅イオン溶出量が減少することが確認できた。
表2に第2の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受の硬さを測定した結果を示す。表2に示す硬さの評価の仕方等と表1に示す硬さの評価の仕方等とは同じであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
Figure 0006513767
表2の如く、銅系焼結軸受の硬さが70〜80であるのに対し、第2の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受の硬さは、例えば100〜240であり、この結果から、第2の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受は、銅系焼結軸受よりも耐摩耗性に優れた焼結軸受であると判定できる。これは、柔らかい相であるα相の硬さが100〜140であり、硬い相であるγ相の硬さが200〜240であり、第2の実施形態における燃料ポンプ用焼結軸受のいずれの相の硬さも、銅系焼結軸受の硬さよりも硬いことによる。
図15、16および表2の試験結果より、本実施形態の燃料ポンプ用焼結軸受は、さらに厳しい使用環境に対しても耐腐食性を確保できることが確認できた。
次に、製造方法についての第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態の製造方法も、図9に示す第1の実施形態の焼結軸受の製造方法と同様であるので、前述した内容を準用し、原料粉末準備工程S1および成形工程S2の相違するところのみを説明する。
[原料粉末準備工程S1]
原料粉末準備工程S1では、焼結軸受1の原料粉末が準備される。原料粉末は、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末、好ましくは8〜10重量%アルミニウム−銅合金粉末を90〜97重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を1〜6重量%とする合計100重量%に対して、黒鉛粉末を3〜5重量%、焼結助剤としてフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量%、成形性を容易にするための潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.1〜1重量%添加した。7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末は、粉砕して粒度調整したものを用いた。第1の実施形態と同様、上記の原料粉末を、例えば、図10に示すV型混合器10の缶体11に投入し、缶体11を回転させて均一に混合する。
例えば、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末を90〜97重量%、7〜10重量%燐−銅合金粉末を1〜6重量%とする合計100重量%(黒鉛部分は含まれない)の合金部分に対し、アルミニウムの含有量が、例えば8.5重量%以上10重量%以下、具体的には9重量%以上9.5重量%以下となるようにする。
例えば、原料粉末は、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末、好ましくは8〜10重量%アルミニウム−銅合金粉末を90〜97重量部、7〜10重量%燐−銅合金粉末を1〜6重量部とする合計100重量部に対して、黒鉛粉末を3〜10重量部、例えば3〜5重量部、焼結助剤としてフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2重量部、成形性を容易にするための潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.1〜1重量部添加したものが使用可能である。
例えば、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末を90〜97重量部、7〜10重量%燐−銅合金粉末を1〜6重量部とする合計100重量部(黒鉛部分は含まれない)の合金部分に対し、アルミニウムの含有量が、例えば8.5重量部以上10重量部以下、具体的には9重量部以上9.5重量部以下となるようにする。
[成形工程S2]
成形工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、焼結軸受1の形状をなした圧粉体1’(図13参照)を形成する。本実施形態では、アルミニウム源および銅源となる原料粉末として、銅単体の粉末を添加せずに、アルミニウム−銅合金粉末を用いたので、銅単体が偏った部分が略なくなり、その部分による腐食の発生が回避される。これにより、耐腐食性が向上する。また、アルミニウム−銅合金粉末を用いることにより、アルミニウム−銅合金粉の粒一つ一つの耐腐食性が向上し、燃料ポンプ用焼結軸受全体の耐腐食性が向上する。
本実施形態の製造方法に基づく燃料ポンプ用焼結軸受では、特に厳しい使用環境に対しても耐腐食性を確保することができる。また、第1の実施形態の焼結軸受と同様、強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化、低コスト化を図ることができる。
以上の各実施形態の説明では、本発明を、軸受面1aを真円形状とした真円軸受に適用する場合を例示したが、本発明は真円軸受に限らず、軸受面1aや軸52の外周面にヘリングボーン溝、スパイラル溝等の動圧発生部を設けた流体動圧軸受にも同様に適用することができる。
本実施形態の焼結軸受は、例えば、燃料ポンプの種類等により、潤滑油等の油類が含まれていない燃料ポンプ用焼結軸受、少量の潤滑油が含まれた燃料ポンプ用焼結軸受、潤滑油が十分に含まれた燃料ポンプ用焼結軸受等の各種燃料ポンプ用焼結軸受が使用可能である。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 燃料ポンプ用焼結軸受
1’ 圧粉体
1” 焼結体
1a 軸受面
1b 外径面
1c 端面
2 燃料ポンプ用焼結軸受
3 アルミニウム銅合金組織
4 酸化アルミニウム皮膜
5 遊離黒鉛
15 メッシュベルト式連続炉
20 ダイス
21 上パンチ
22 下パンチ
23 コア
40 燃料ポンプ
52 軸
D1 軸受面の内径寸法
db 気孔
di 気孔
do 気孔
Ti 圧縮層
To 圧縮層

Claims (7)

  1. 燃料と接触する環境下で使用される燃料ポンプ用焼結軸受であって、
    8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含み、全体にアルミニウム−銅合金が焼結された組織と黒鉛組織とが分散しており、銅単体の偏った部分がないことを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受。
  2. 前記アルミニウム−銅合金の組織は、α相を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
  3. 前記アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100重量%に対して、3〜10重量%の黒鉛が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
  4. 前記燃料ポンプ用焼結軸受は、焼結助剤としての錫が添加されていないことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受において、アルミニウムの含有量を9〜9.5重量%としたことを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受。
  6. 燃料と接触する環境下で使用され、8.5〜10重量%のアルミニウムおよび0.1〜0.6重量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法であって、
    この製造方法は、原料粉末として、銅単体の粉末を添加せず、アルミニウム−銅合金粉、燐−銅合金粉、および黒鉛粉を用い、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する成形工程と、前記圧粉体からアルミニウム−銅合金組織および黒鉛組織を有し、銅単体の偏った部分がない焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
  7. 前記原料粉末としてのアルミニウム−銅合金粉が、7〜11重量%アルミニウム−銅合金粉末であることを特徴とする請求項に記載の燃料ポンプ用焼結軸受の製造方法。
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