JP2013217493A - 焼結軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 3〜12質量%のアルミニウムおよび0.05〜0.5質量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ焼結軸受1であって、この焼結軸受1が、原料粉末に添加した焼結助剤によりアルミニウム−銅合金が焼結された組織を有し、かつ焼結軸受1の表層部の気孔db、doを内部の気孔diより小さくしたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
α(%)=(ρ1/ρ0)×100
ただし、ρ1:多孔質体の密度、ρ0:その多孔質体に細孔がないと仮定した場合の密度
銅粉末は、焼結軸受用として汎用されている球状や樹枝状の銅粉が使用可能であり、例えば、還元粉、電解粉、水アトマイズ粉等が用いられる。粒度は、100mesh通過粉末で350mesh通過粉末比率が40%以下である。
40〜60質量%のアルミニウム合金粉末と残部を銅粉末とした混合粉末を還元性又は不活性雰囲気中において加熱処理した後、粉砕し、粒度調整した銅、アルミニウムおよびアルミニウム銅合金組成からなる粉末(以下、アルミニウム−銅合金粉末という)である。アルミニウム−銅合金粉末の好ましい粒度は、80mesh通過粉末で350mesh通過粉末比率が60%以下である。アルミニウム−銅合金粉末を用いることにより、粉末の硬さに起因する成形性の低下による圧粉体の強度不足の問題が改善され、比重の小さいアルミニウム単体粒子の飛散に伴う取り扱い上の問題はない。
燐は、焼結時の固液相間の濡れ性を高め、珪素粉末添加により生ずる液相発生温度を低温側へ移行させる窒化物被膜生成を抑制する。燐の配合量は、0.05〜0.5質量%が好ましい。0.05質量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、0.5質量%を越えると、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しγ相が増え焼結体が脆くなる。
珪素は焼結助剤として添加する。珪素は、焼結過程で形成された焼結進行阻害相に対して、銅珪素系液相を発生させ、焼結を促進させる。珪素の配合量は1〜4質量%が好ましい。1質量%未満では、発生する液相量が少なく低温下での液相焼結促進効果が不十分となり、緻密で適宜の硬さを有する焼結体が得られない。一方、4質量%を越えると、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しγ相が増え焼結体が脆くなる。
錫は焼結助剤として添加する。錫は、珪素粉末添加に伴う成形性の低下を補い、さらに燐と同様に珪素粉末添加により生成される液相発生温度を低下させる効果がある。錫の配合量は0.5〜2質量%が好ましい。0.5質量%未満では錫粉末添加による圧粉密度の上昇効果が得られず、一方、2質量%を越えると、粒界に高濃度の錫が析出し、焼結体の外観品質の低下をきたし好ましくない。
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、珪素、錫、燐、銅および不可避不純物の合計100質量%に対して、1〜5質量%が好ましい。1質量%未満では黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5質量%を越えると、強度が低下し好ましくない。
α(%)=(ρ1/ρ0)×100
ただし、ρ1:多孔質体の密度、ρ0:その多孔質体に細孔がないと仮定した場合の密度
To/D1およびTb/D1が1/100未満では気孔のつぶれが不十分となり、一方、1/15を越えると気孔がつぶれ過ぎて好ましくない。なお、本明細書ではToおよびTbを総称してTという。
原料粉末準備工程S1では、焼結軸受1の原料粉末が準備・生成される。原料粉末は、銅粉末を81質量%、50質量%アルミニウム−銅合金粉末を12質量%、珪素粉末を3質量%、錫粉末を1質量%、8質量%燐−銅合金粉末を3質量%とする合計100質量%に対して、黒鉛粉末を3質量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.5質量%添加した。潤滑剤を添加することにより、後述する圧粉体をスムーズに離型することができ、離型に伴う圧粉体の形状の崩れを回避することができる。具体的には、上記の原料粉末Mを、例えば、図4に示すV型混合機10の缶体11に投入し、缶体11を回転させて均一に混合する。
圧粉工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、焼結軸受1の形状をなした圧粉体1’(図7参照)を形成する。圧粉体1’は、焼結温度以上で加熱することにより形成される焼結体1”の密度比αが70%以上で80%以下となるように圧縮成形される。図7では、簡便的に、圧粉体には符号1’、焼結体には符号1”を併記している。
焼結工程S3では、圧粉体1’を焼結温度で加熱し、隣接する原料粉末同士を焼結結合させることによって焼結体1”を形成する。図5に示すメッシュベルト式連続炉15を使用し、メッシュベルト16に圧粉体1’を多量に投入し、酸化を可及的に防止するために還元雰囲気である窒素ガスおよび水素ガスの混合ガス雰囲気下、あるいは、窒素ガス雰囲気下で、圧粉体1’を850〜950℃(例えば900℃)で10〜60分間加熱することにより焼結体1”を形成する。これにより、メッシュベルト式連続炉の負荷が軽減され、安定した品質、製造方法を実現することができる。
サイジング工程S4では、焼結により圧粉体1’と比較して膨張した焼結体1”の寸法整形する。図6にサイジング工程S4の詳細を示す。サイジング加工の金型は、ダイス20、上パンチ21、下パンチ22およびコア23とからなる。図6(a)に示すように、コア23と上パンチ21が上方に後退した状態で、下パンチ22上に焼結体1”をセットする。図6(b)に示すように、最初にコア23が焼結体1”の内径に入り、その後、図6(c)に示すように、上パンチ21により焼結体1”がダイス20に押し込まれ、上下パンチ21、22により圧縮される。これにより、焼結体1”の表面が寸法整形される。サイジング加工により、膨張した焼結体1”の表層の気孔をつぶし、製品内部と表層部に密度差が生じる。
含油工程S5は、製品1(焼結軸受)に潤滑油を含浸する工程である。図8に含油装置を示す。含油装置25のタンク26内に製品1を投入し、その後、潤滑油27をタンク26内に注入する。そして、タンク26内を減圧することにより、製品1の気孔do、db、di(図2参照)内に潤滑油27を含浸する。これにより、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。潤滑油としては鉱油、ポリαオレフィン(PAO)、エステル、液状グリース等を使用することができる。ただし、軸受の使用用途に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
アルミニウム含有銅系合金粉末は、焼結時にその表面に生成する酸化アルミニウムの皮膜が焼結を著しく阻害するが、焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム含有銅系合金粉末の焼結温度である850〜900℃で溶融しながら徐々に蒸発し、アルミニウム含有銅系合金粉末の表面を保護して酸化アルミニウムの生成を抑制することにより、焼結を促進しアルミニウムの拡散を増進させる。フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、焼結時に蒸発、揮散するので、焼結軸受の完成品には殆ど残らない。
原料粉末は、銅粉末を残質量%、40〜60質量%アルミニウム−銅合金粉末を14〜20質量%、8質量%燐−銅合金粉末を2〜4質量%とする合計100質量%に対して、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2質量%、黒鉛粉末を1〜5質量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.5質量%添加した。
焼結工程において、添加された燐合金粉末、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムが以下に述べる効果を発揮することにより、良質の焼結体を形成することができる。まず、燐により、焼結時の固液相間の濡れ性を高める効果があるので、良好な焼結体が得られる。燐の配合量としては、0.05〜0.5質量%が好ましい。0.05質量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、0.5質量%を越えると、得られた焼結体が脆くなる。また、焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム含有銅系合金粉末の焼結温度である850〜900℃で溶融しながら徐々に蒸発し、アルミニウム含有銅系合金粉末の表面を保護して酸化アルミニウムの生成を抑制することにより、焼結を可能にする。フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、焼結時に蒸発、揮散するので、焼結軸受の完成品には殆ど残らない。尚、蒸発、揮散するので、圧粉体をケース等に入れて焼結する。焼結助剤としてのフッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100質量%に対して、合計で0.05〜0.2質量%程度で添加することが好ましい。
(1)アルミニウム配合量と耐腐食性の関係では、アルミニウムの量が増えると銅へ拡散が増進し耐腐食性効果が大きい。
(2)焼結温度と耐腐食性の関係では、焼結温度を高くするとアルミニウムの拡散が増進し耐腐食性効果が大きい。
(3)焼結軸受の密度と耐腐食性の関係では、密度を高くすると耐腐食性効果が僅かに向上する。
(4)添加剤(燐、亜鉛、珪素)は、焼結過程でのアルミニウムの拡散の促進で、アルミニウム量を減らすことができ耐腐食性と初期なじみを劣化するアルミニウム組織のγ相の析出を削減できる。
銅粉末は、アトマイズ粉、電解粉、粉砕粉があるが、銅にアルミニウムを十分に拡散させるには、樹枝状の電解粉が有効であり、成形性、焼結性、摺動特性に優れる。そのため、本実施形態では、銅粉として電解粉を用いた。粒度は、100mesh通過粉末で350mesh通過粉末比率が40%以下とする。
50質量%アルミニウム−銅合金粉末を粉砕し、粒度調整した。アルミニウム銅合金粉末の好ましい粒度は145mesh通過粉末で350mesh通過粉末比率が60%以上である。アルミニウム−銅合金粉末を用いることで、黒鉛、燐、亜鉛等の添加剤の効果を引き出し、焼結軸受材として耐腐食性、強度、摺動特性等に優れる。また、合金化されているので、比重の小さいアルミニウム単体粉体の飛散に伴う取り扱い上の問題はない。
燐合金粉末は、前述した第1および第2の実施形態と同様、8質量%燐−銅合金粉末を用いた。燐は、焼結時の固液相間の濡れ性を高め、珪素粉末添加により生ずる液相発生温度を低温側へ移行させる効果がある。燐の配合量は、0.05〜0.5質量%が好ましい。0.05質量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、一方、0.5質量%を越えると、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しγ相の析出が増え焼結体が脆くなる。
亜鉛合金粉末として、亜鉛−銅合金粉末を用いた。亜鉛は、融点が低く、銅、アルミニウムの焼結を促進、また、アルミニウムの拡散を促進する。さらに、耐食性に優れる。
亜鉛の配合量は、1質量%〜5質量%が好ましい。1質量%未満では、銅、アルミニウムの焼結促進やアルミニウムの拡散促進の効果が得られない。一方、5質量%を越えると、焼結時に亜鉛が蒸発し焼結炉を汚すと共に、焼結が進み過ぎてアルミニウムが偏析しアルミニウムの拡散が阻害される。
珪素は焼結助剤として添加する。珪素は、焼結過程で形成された焼結進行阻害相に対して、銅珪素系液相を発生させ、焼結を促進させる。珪素は、焼結過程でアルミニウムの拡散を増進するので、アルミニウム量を減らし、γ相を削減できる。珪素の配合量は0.5〜3質量%が好ましい。0.5質量%未満では、焼結過程でアルミニウムの拡散を増進効果が不十分であり、これに伴いγ相の削減効果が不十分となる。一方、3質量%を越えると、焼結の昇温時に珪素が反応しアルミニウムが黒く酸化し、変色不具合が生じる。
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、珪素、錫、燐、銅および不可避不純物の合計100質量%に対して、1〜5質量%が好ましい。1質量%未満では黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5質量%を越えると、強度が低下し好ましくない。
フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムは、前述した第2の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
原料粉末は、電解銅粉末を残質量%、40〜60質量%アルミニウム−銅の合金粉末を14〜20質量%、8質量%燐−銅合金粉末を2〜4質量%、珪素粉末を1〜3質量%および20〜40質量%亜鉛−銅合金粉末を6〜8質量%とする合計100質量%に対して、焼結助剤として、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムを合計で0.05〜0.2質量%、黒鉛粉末を1〜5質量%、成形性を容易にするためにステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤を0.5質量%添加した。
焼結工程において重要なことは、銅にアルミニウムを十分拡散させ耐腐食性を向上させることと、アルミニウム組織をα相にすることで、耐腐食性と軸受性能(初期なじみ)を向上させることである。γ相になると硬くなり、耐摩耗性には優れるが、耐腐食性は低下する。そのため、できる限りγ相の析出は抑えるようにアルミニウム量を減らすことが必要であることが判明した。
本実施形態の焼結軸受においても、第1および第2の実施形態と同様、図6に示すように、サイジング工程でパンチ21、22とダイス20により焼結体1”の軸方向両側と外径側から圧縮することにより、焼結体1”の内径側をコア23により整形することにより、アルミニウム青銅系焼結軸受の焼結による膨張を有効利用し、焼結軸受1の寸法整形と共に所望の気孔を形成することができる。また、上記のダイス20の内径寸法と焼結体1”の外径寸法との寸法差およびコア23の外径寸法と焼結体1”の内径寸法との寸法差を加減することにより、焼結体1”の表面の気孔の大きさを設定することができる。これにより、焼結軸受1の表面の気孔の大きさを容易にコントロールすることができる。さらに、図示は省略するが、軸受面1a(図7参照)を回転サイジングすることで、軸受面1aの気孔を小さくすることができる。
1’ 圧粉体
1” 焼結体
1a 軸受面
1b 外径面
1c 端面
2 軸
3 アルミニウム銅合金組織
4 酸化アルミニウム皮膜
5 遊離黒鉛
15 メッシュベルト式連続炉
20 ダイス
21 上パンチ
22 下パンチ
23 コア
40 燃料ポンプ
D1 軸受面の内径寸法
db 気孔
di 気孔
do 気孔
Ti 圧縮層
To 圧縮層
Claims (11)
- 3〜12質量%のアルミニウムおよび0.05〜0.5質量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ焼結軸受であって、この焼結軸受が、原料粉末に添加した焼結助剤によりアルミニウム−銅合金が焼結された組織を有し、かつ前記焼結軸受の表層部の気孔を内部の気孔より小さくしたことを特徴とする焼結軸受。
- 前記焼結助剤として、原料粉末に1〜4質量%の珪素および0.5〜2質量%の錫が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の焼結軸受。
- 前記焼結助剤として、前記アルミニウム、燐、残部の主成分を銅とする原料粉末および不可避不純物の合計100質量%に対して、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウムが合計で0.05〜0.2質量%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の焼結軸受。
- 請求項3に記載の焼結軸受に亜鉛が2〜4質量%添加されていることを特徴とする焼結軸受。
- 請求項3又は請求項4に記載の焼結軸受に珪素が0.5〜3質量%添加されていることを特徴とする焼結軸受。
- 前記銅の原料粉末が電解銅粉を主体とすることを特徴とする請求項1および請求項3〜5のいずれか一項に記載の焼結軸受。
- 前記原料粉末および不可避不純物の合計100質量%に対して、1〜5質量%の黒鉛が添加されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼結軸受。
- 前記焼結軸受の表層に圧縮層を有し、この圧縮層の密度比(α1)が内部の密度比(α2)より高く、前記密度比(α1)が80%≦α1≦95であると共に、前記圧縮層の深さの平均値(T)と前記軸受面の内径寸法(D1)との比(T/D1)が1/100≦T/D1≦1/15であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の焼結軸受。
- 前記焼結軸受の外表面のうち、軸受面の気孔がその他の外表面の気孔より大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の焼結軸受。
- 前記焼結軸受が含油軸受であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の焼結軸受。
- 請求項1および請求項3〜9のいずれか一項に記載の焼結軸受が燃料ポンプに使用され、アルミニウムの含有量を8〜9質量%としたことを特徴とする焼結軸受。
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