JP2009007650A - 焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性が良く、取扱い時の安全性が高く、900℃以下の低焼結温度下においても、緻密で優れた特性を有するCu−Al焼結合金の得られる焼結Al含有Cu合金用混合粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上記の課題は、40〜60質量%Al粉末と残部がCu粉末の混合粉末を還元性または不活性雰囲気中で540〜560℃の加熱処理を10〜60分間施し、粉砕して得られたAl−Cu部分化合金粉末、或いはCu塩水溶液中にAl粉末を浸漬して40〜60質量%Cuを析出させたCu被覆Al粉末をAl源とした焼結Al含有Cu合金用混合粉末に、0.05〜1質量%のP、0.5〜4質量%のSiおよび0.1〜1質量%のSnの3成分を添加することにより解決される。
【選択図】なし
【解決手段】上記の課題は、40〜60質量%Al粉末と残部がCu粉末の混合粉末を還元性または不活性雰囲気中で540〜560℃の加熱処理を10〜60分間施し、粉砕して得られたAl−Cu部分化合金粉末、或いはCu塩水溶液中にAl粉末を浸漬して40〜60質量%Cuを析出させたCu被覆Al粉末をAl源とした焼結Al含有Cu合金用混合粉末に、0.05〜1質量%のP、0.5〜4質量%のSiおよび0.1〜1質量%のSnの3成分を添加することにより解決される。
【選択図】なし
Description
本発明は、成形性および焼結性の優れた焼結Al含有Cu合金用混合粉末及びその製造方法に関するものである。
Al含有Cu合金は、優れた機械的特性と耐食性を有し、種々の産業製品に用いられている。従来から多量生産に適した粉末冶金法による焼結Al含有Cu合金を得るための研究開発が続けられているが、焼結時に生成する酸化Alの皮膜が焼結を阻害するために十分な強度を有する焼結体を容易に得ることができず広く実用には供されてない。
Cu粉末とAl粉末の混合粉末を原料粉末とする焼結においては、Al−Cu合金の548℃からの共晶融体の出現を契機として、γ2相形成の生成熱による異常膨張により、焼結密度は圧粉密度よりも低くなり緻密な焼結体は得難い(例えば、非特許文献1参照)。また焼結進行阻害原因となるAl含有粉末表面の安定なAl2O3皮膜の破壊については、Cの存在下、1000℃以上の高温下で0.13Pa以下の真空雰囲気下で進行し、1000℃のH2雰囲気下での還元は困難である(例えば、非特許文献2および非特許文献3参照)。従って広く利用されているCu系の焼結炉による還元性ガス雰囲気下において、緻密で優れた機械的特性を有する焼結体の得られる焼結Al含有Cu合金用混合粉末を提供することは極めて困難である。
三谷、横田著「日本金属学会誌」日本金属学会出版、1970年、第34巻 904頁 橋本、大森他著「粉体および粉末冶金」粉体粉末冶金協会、1982年、第29巻 第6号 215頁 橋本、大森他著「粉体および粉末冶金」粉体粉末冶金協会、1983年、第30巻 第2号 68頁
三谷、横田著「日本金属学会誌」日本金属学会出版、1970年、第34巻 904頁 橋本、大森他著「粉体および粉末冶金」粉体粉末冶金協会、1982年、第29巻 第6号 215頁 橋本、大森他著「粉体および粉末冶金」粉体粉末冶金協会、1983年、第30巻 第2号 68頁
これまでにCu粉末とAl源をAl−Cu合金粉末とした混合粉末を用いて、Al−Cu合金の548℃の共晶温度で急激に発生する液相を利用した焼結性の改良技術が公開されているが、圧粉密度に対する焼結密度の上昇度合が低く緻密な焼結体が得られなかった(例えば、特許文献1参照)。
特公昭48−29963号公報
また、Cu粉末とAl源をAl−Cu合金粉末とした混合粉末にTi或いはPを少量添加した焼結促進効果を得る技術(例えば、特許文献2および特許文献3参照)も開示されているが、Al源に6.5〜10質量%Al−Cu合金粉末を用いた混合粉末においては合金粉末の硬さに起因する成形性の低下が圧粉体の強度不足をきたし、ハンドリング時の破損問題がある。一方、Al源に67質量%Al−Cu合金粉末を用いた混合粉末では、焼結時に前記共晶融体の急激な出現によるγ2相の生成熱による膨張が関与し、TiまたはPによる焼結促進効果は不十分なものとなり、緻密で機械的強度の優れた焼結体は得られない。
特開昭56−152901号公報
特開昭56−152902号公報
さらに、2〜14質量%Alに1〜12質量%Snを含有させCu−Al−Sn組成として、焼結時に発生するCu−Sn合金の液相による焼結促進効果によって、成形性に優れた純Al粉末またはAl合金粉末を利用可能とした技術(例えば、特許文献4参照)が開示されている。しかし、Al粉末を用いると多量継続的に取り扱う混合成形工程においては、金型へのAl付着によるガジリの発生、他の粉末よりも軽くて飛散し易いAl粉末に対する設備上の安全対策が必要となる問題点がある。また、高濃度Sn添加品においても顕著な焼結促進効果は930℃以上の焼結温度で得られるもので、広く利用されているCu系焼結炉での焼結には適さず、またSn添加に伴う原材料のコスト増も伴い生産、経済性面で問題がある。
特開2001−271129号公報
本発明は、上記従来技術の問題点をその原因となる混合原料粉末のAl源として純Al粉末或いはCu−Al合金粉末の使用を避け、900℃程度の比較的低い焼結温度下においても緻密で機械的強度に優れた焼結体の得られる多量生産に適した焼結Al含有Cu合金用混合粉末及びその製造方法を提供する。
本発明は、このような従来の問題点を解決することを目的としてなされたものである。その結果、
(1)成形性が良く圧粉体の強度が容易に得られる焼結Al含有Cu合金用混合粉末のAl源として、40〜60質量%のAl粉末と残部をCu粉末とした混合粉末を非酸化性、或いは還元性雰囲気下540〜560℃の温度で30分間の加熱処理を施し、得られたケーキを粉砕、粒度調整をしたCu、AlおよびAl−Cu合金組成からなる部分拡散合金粉末(以下、Al−Cu部分拡散合金粉末と称する)および/またはCu塩水溶液中にAl粉末を浸漬して得られた40〜60質量%Alと残部CuとするCu被覆Al粉末を用いることによって、粉末の硬さに起因する成形時の問題が改善され、同時にAl粉末とCu粉末の加熱やメッキによる造粒で、軽いAl単体粒子の吸引飛散に伴う取扱上の問題も解決する、という研究結果が得られたのである。
(1)成形性が良く圧粉体の強度が容易に得られる焼結Al含有Cu合金用混合粉末のAl源として、40〜60質量%のAl粉末と残部をCu粉末とした混合粉末を非酸化性、或いは還元性雰囲気下540〜560℃の温度で30分間の加熱処理を施し、得られたケーキを粉砕、粒度調整をしたCu、AlおよびAl−Cu合金組成からなる部分拡散合金粉末(以下、Al−Cu部分拡散合金粉末と称する)および/またはCu塩水溶液中にAl粉末を浸漬して得られた40〜60質量%Alと残部CuとするCu被覆Al粉末を用いることによって、粉末の硬さに起因する成形時の問題が改善され、同時にAl粉末とCu粉末の加熱やメッキによる造粒で、軽いAl単体粒子の吸引飛散に伴う取扱上の問題も解決する、という研究結果が得られたのである。
前記(1)記載の発明による粉末をAl源として、Cu粉末を加えて目的濃度のAl含有比率に調整された焼結Al含有Cu合金用混合粉末は優れた成形性を有するものの、900℃以下の還元ガス雰囲気下で加熱して得られた焼結体の密度および強度は十分ではなく、そのために本発明者は、900℃以下の温度で加熱して得られた焼結体においても緻密で機械的強度に優れた焼結体の得られる研究を行った。その結果、
(2)AlとCu成分の合計が100質量%に対して、P,SiおよびSnの3成分をそれぞれP=0.05〜1質量%、Si=0.5〜4質量%、Sn=0.1〜1質量%の範囲で共存させることによって、900℃以下の焼結温度で、緻密で優れた機械的強度の有する焼結体が得られることを見出した。Pは焼結時の固液相間の濡れ性を高め、Si成分添加により生ずる液相発生温度を低温側へ移行させる効果がある。Siは焼結過程で形成された焼結進行阻害相に対して、Cu−Si系液相を発生させ、焼結を促進させる。SnはSi成分添加に伴う成形性の低下を補い、さらにPと同様にSi成分添加により生成される液相発生温度を低下させる効果がある。PおよびSnの両成分共存下においては、その相乗効果により、Si成分添加により生成する液相発生温度は880℃近傍まで低下し、低温度下での焼結体の緻密化を実現した。また、Si成分添加による硬さの上昇は、同程度の硬さを得るAl含有Cu合金粉末のAl濃度の低減を可能とし、焼結原料粉末の易焼結化を高めた。
(2)AlとCu成分の合計が100質量%に対して、P,SiおよびSnの3成分をそれぞれP=0.05〜1質量%、Si=0.5〜4質量%、Sn=0.1〜1質量%の範囲で共存させることによって、900℃以下の焼結温度で、緻密で優れた機械的強度の有する焼結体が得られることを見出した。Pは焼結時の固液相間の濡れ性を高め、Si成分添加により生ずる液相発生温度を低温側へ移行させる効果がある。Siは焼結過程で形成された焼結進行阻害相に対して、Cu−Si系液相を発生させ、焼結を促進させる。SnはSi成分添加に伴う成形性の低下を補い、さらにPと同様にSi成分添加により生成される液相発生温度を低下させる効果がある。PおよびSnの両成分共存下においては、その相乗効果により、Si成分添加により生成する液相発生温度は880℃近傍まで低下し、低温度下での焼結体の緻密化を実現した。また、Si成分添加による硬さの上昇は、同程度の硬さを得るAl含有Cu合金粉末のAl濃度の低減を可能とし、焼結原料粉末の易焼結化を高めた。
本発明の効果としては、成形性に優れ、低焼結温度でも緻密で優れた機械的強度を有する焼結Al含有Cu合金を経済的に容易に得ることが可能となり、従来焼結Cu系合金にて対応できなかった機械的強度、耐食性および耐熱性を求められる焼結部品への用途展開ができる。
本発明の焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、Pが0.05〜1質量%、Siが0.5〜4質量%、Snが0.1〜1質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする。
又、上記の焼結Al含有Cu合金用混合粉末を製造するための本発明の製法は、40〜60質量%のAl粉末と残部をCu粉末とした混合粉末を還元性または不活性雰囲気中において加熱処理した後、粉砕を行うことによって、Al、CuおよびAl−Cu合金の3組成よりなる部分拡散合金粉末を製造し、これをAl源として準備する工程と、前記Al源を用いて、1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、P0.05〜1質量%、Si0.5〜4質量%、Sn0.1〜1質量%を添加する工程を含むことを特徴とする。この際、部分拡散合金粉末の好ましい粒度は、180μm通過粉末で45μm通過粉末比率60質量%以下である。180μm以上の粒度では焼結体に粗大な空孔を生じ、45μm通過粉比率が60質量%を超えると見掛密度が低下して流動性が悪化し、好ましくない。尚、本発明では、加熱処理を行う際の温度範囲は540〜560℃であり、540℃よりも低い場合には凝集固化が認められず、逆に560℃よりも高い場合には、圧粉密度が低下し、成形性が低下する。この際の加熱処理時間としては10〜60分間が好適である。
又、上記の焼結Al含有Cu合金用混合粉末を製造するための本発明の製法は、金属塩水溶液(例えば、硫酸銅水溶液)中にAl粉末を浸漬して、イオン化傾向の差で金属AlとCuイオンを置換することで、40〜60質量%のCuによりAl表面が被覆されたCu被覆Al粉末を得、このようにして得られたCu被覆Al粉末をAl源として準備する工程と、前記Al源を用いて、1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、P0.05〜1質量%、Si0.5〜4質量%、Sn0.1〜1質量%を添加する工程を含むことを特徴とするものでもある。
本発明の焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、Cu粉末とAl源を軟質なAl−Cu部分拡散合金粉末或いはCu被覆Al粉末とした混合粉末である。このようなAl源からなる焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、Cu粉末とAl粉末の混合粉末に近い良好な成形性とCu−Al合金粉末の混合粉が有する取扱時の安全性を確保するものである。
このように、本発明による焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、そのAl源とする粉末の軟質化とAl−Cuの複合粉末化することにより、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕および〔特許文献3〕に記載のAl源がCu−Al合金粉末からなるAl含有Cu合金用粉末よりも、遥かに良好な成形性が得られ、〔特許文献4〕に記載されたAl粉末を混合した焼結材料粉末では得られない使用工程における集塵設備等へのAl粉末の優先的回収を解消した安全性の確保されるものである。
また、Al含有Cu合金用粉末へP,SiおよびSnの3成分元素を共存させることによる液相焼結促進と低Al濃度での焼結体の硬さ上昇効果は、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕、〔特許文献3〕および〔特許文献4〕に記載されたAl含有Cu合金用粉末では得られなかった900℃以下の焼結温度条件下での、緻密で優れた機械的強度の有する焼結体を得ることにつなげたものである。
本発明によると、Al粉末は噴霧法と機械粉砕法によるものが一般的であるが、粉末の取扱易さと経済的観点から噴霧粉末が好ましい。Cu粉末は圧粉体強度の得られる電解法により製造した粒度−74μmの粉末が好ましく、さほど圧粉体強度の必要としない場合は、流動性の良い噴霧Cu粉末も利用可能である。Al−Cu部分拡散合金粉末組成は40〜60質量%のAlの範囲とするのが好ましく、40質量%未満のAlとして得られた粉末をAl源とした焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、Cu粉末混合比率の減少による加圧成形時の圧粉密度の低下と融点の高い合金相生成による低温焼結下でのCu−Si系発生液相量を減少させ、焼結促進元素の添加効果が小さくなることによる。逆に60質量%を超えるAlを含有する粉末は、Cu粒子と未反応のAl粒子の増加により、Al源として配合された時に、未反応Al粒子は吸引飛散し、集塵設備にはAl混合粉末と同様の安全対策が必要となり好ましくないことによる。
560℃を超えて加熱処理行うとCu−Al合金(θ)の生成が進み、Al源として配合された粉末の圧粉密度の低下をきたす。逆に540℃よりも低い温度で加熱処理を行ったものは、Cu粒子とAl粒子の凝集固化を図ることができない。
560℃を超えて加熱処理行うとCu−Al合金(θ)の生成が進み、Al源として配合された粉末の圧粉密度の低下をきたす。逆に540℃よりも低い温度で加熱処理を行ったものは、Cu粒子とAl粒子の凝集固化を図ることができない。
Cu被覆Al粉末においてもAlの範囲を40〜60質量%の範囲とするのが好ましい。Alが40質量%未満である粉末は、焼結過程で合金化した粉末比率が高くなり、先に記載した部分拡散合金粉末と同様に液相焼結促進効果が小さくなることと、Cu被覆比率の増加によるコスト的な観点から好ましくない。Alの割合の上限が60質量%である理由は、Al比率の上昇による見掛密度の低下により、配合するCu粉末よりも吸引飛散され易い粉末となり、製造工程中の飛散粉回収設備において、Al混合粉末と同様の防爆対策が必要となるからである。
本発明によるとP、SiおよびSnの3成分共存下での焼結促進効果を得るためには、Al源とする粉末はAlが40質量%以上含み残部がCuとなる部分拡散合金およびCu被覆粉末が好ましい。40質量%未満のAlとして得られた粉末をAl源とした焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、低温焼結下での発生液相量が少なくなり、十分な焼結促進効果が得られない。
添加するP、SiおよびSnにおいて、Pの添加はP単体での取扱が困難であることから、Cu、Fe或いはNiとの合金粉末を利用するのが一般的であるが、低温度での焼結促進効果と見掛密度が混合他粉末に近く均質混合のされ易い機械粉砕法による15質量%P−Cu合金粉末の粒度−74μmの粉末とするのが好ましい。P成分としての添加量は、AlとCu合計100質量%に対して、0.05質量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、逆に1質量%を超えると、得られた焼結体が脆くなり、最適には0.1〜0.5質量%である。
Siの添加は機械粉砕によるSi粉末或いはCuまたはFeとの合金粉末での利用も可能であるが、見掛密度の低いSi粉末を避けSiの均質分散化と経済的な利点を考慮し、Fe−75質量%Si合金を機械粉砕法により製造した粒度−63μmの粉末とするのが好ましい。Si成分としての添加量はAlとCu合計100質量%に対して、0.5質量%未満では発生する液相量が少なく低温下での液相焼結促進効果が不十分となり、緻密で硬さの有する焼結体が得られず、逆に4質量%を超えるSiとして得られた焼結体は硬くて脆くなり、最適には1〜3質量%である。
Snの添加はその軟質な特性を得るために、Sn合金粉末での添加は避け、混合他粉末の見掛密度に近く均質混合のされ易い搗砕法により製造した粒度−74μmの粉末を用いるのが好ましい。AlとCu合計100質量%に対して、0.1質量%未満の添加ではSn粉末添加による圧粉密度の上昇効果が得られず、逆に1質量%を超えると粒界に高濃度Snが析出し、焼結体外観品質の低下をきたし好ましくないことによるものである。
添加するP、SiおよびSnにおいて、Pの添加はP単体での取扱が困難であることから、Cu、Fe或いはNiとの合金粉末を利用するのが一般的であるが、低温度での焼結促進効果と見掛密度が混合他粉末に近く均質混合のされ易い機械粉砕法による15質量%P−Cu合金粉末の粒度−74μmの粉末とするのが好ましい。P成分としての添加量は、AlとCu合計100質量%に対して、0.05質量%未満では固液相間の焼結促進効果が乏しく、逆に1質量%を超えると、得られた焼結体が脆くなり、最適には0.1〜0.5質量%である。
Siの添加は機械粉砕によるSi粉末或いはCuまたはFeとの合金粉末での利用も可能であるが、見掛密度の低いSi粉末を避けSiの均質分散化と経済的な利点を考慮し、Fe−75質量%Si合金を機械粉砕法により製造した粒度−63μmの粉末とするのが好ましい。Si成分としての添加量はAlとCu合計100質量%に対して、0.5質量%未満では発生する液相量が少なく低温下での液相焼結促進効果が不十分となり、緻密で硬さの有する焼結体が得られず、逆に4質量%を超えるSiとして得られた焼結体は硬くて脆くなり、最適には1〜3質量%である。
Snの添加はその軟質な特性を得るために、Sn合金粉末での添加は避け、混合他粉末の見掛密度に近く均質混合のされ易い搗砕法により製造した粒度−74μmの粉末を用いるのが好ましい。AlとCu合計100質量%に対して、0.1質量%未満の添加ではSn粉末添加による圧粉密度の上昇効果が得られず、逆に1質量%を超えると粒界に高濃度Snが析出し、焼結体外観品質の低下をきたし好ましくないことによるものである。
本発明による焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、200〜500MPaで金型成型した後に、非酸化性或いは還元性雰囲気中880〜920℃での焼結により、優れた機械的特性および耐食性を有する焼結体となる。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
〔実施例1〕
噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末と電解法により製造した粒度−74μmのCu粉末を用意した。表1に示される割合で配合した混合粉末の見掛密度試験を実施した後、A−1〜9の各混合粉末を窒素ガス雰囲気中で表1に示される温度まで昇温後30分間の熱処理を施し、各熱処理済み混合粉末を黒鉛ボートから鉄鉢に取り出し、造粒固化ケーキ生成の有無を目視判定後、粉砕し−150μmの粉末に粒度を調整したAl−Cu部分拡散合金粉末を作成した。表1に凝集固化ケーキ生成の有無、熱処理前後の見掛密度試験および粉塵爆発試験結果を示した。またA−3、A−6、A−7の各熱処理後得られた粉末と50質量%Al‐Cu母合金粉砕粉末および50質量%Al粉末と50質量%Cu粉末の混合粉末のX線回折試験を実施し、図11に示す。
噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末と電解法により製造した粒度−74μmのCu粉末を用意した。表1に示される割合で配合した混合粉末の見掛密度試験を実施した後、A−1〜9の各混合粉末を窒素ガス雰囲気中で表1に示される温度まで昇温後30分間の熱処理を施し、各熱処理済み混合粉末を黒鉛ボートから鉄鉢に取り出し、造粒固化ケーキ生成の有無を目視判定後、粉砕し−150μmの粉末に粒度を調整したAl−Cu部分拡散合金粉末を作成した。表1に凝集固化ケーキ生成の有無、熱処理前後の見掛密度試験および粉塵爆発試験結果を示した。またA−3、A−6、A−7の各熱処理後得られた粉末と50質量%Al‐Cu母合金粉砕粉末および50質量%Al粉末と50質量%Cu粉末の混合粉末のX線回折試験を実施し、図11に示す。
〔実施例2〕
Cu濃度30g/Lの硫酸銅水溶液と噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末を用意した。表2に示される体積の硫酸銅水溶液を60℃に加温した中へ表2に示される質量のAl粉末を投入し、これを攪拌しつつ置換メッキを行い、硫酸銅水溶液の色調が無色となった時点を終点とした。そして、濾別、洗浄、乾燥し、各条件B−1〜5のCu被覆Al粉末を作成した。得られた粉末のCu定量分析および粉塵爆発試験を実施し、それらの結果を表2に示した。
Cu濃度30g/Lの硫酸銅水溶液と噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末を用意した。表2に示される体積の硫酸銅水溶液を60℃に加温した中へ表2に示される質量のAl粉末を投入し、これを攪拌しつつ置換メッキを行い、硫酸銅水溶液の色調が無色となった時点を終点とした。そして、濾別、洗浄、乾燥し、各条件B−1〜5のCu被覆Al粉末を作成した。得られた粉末のCu定量分析および粉塵爆発試験を実施し、それらの結果を表2に示した。
〔実施例3〕
前記による実施例1と実施例2で作成したAl−Cu部分拡散合金粉末とCu被覆Al粉末および50質量%Al−Cu母合金を機械粉砕法により製造した粒度−74μmのAl−Cu合金粉末、電解法により製造した粒度−74μmのCu粉末と噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末を用意した。各粉末を表3に示された割合に配合して90質量%Cu−10質量%Al組成とし、さらに0.5質量%のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤として添加後、混合してC−1〜16の圧粉密度試験用の各混合粉末をそれぞれ作成した。この混合粉末各3.00gを円柱形状の断面積が100mm2とした金型に充填し、300MPaで成形して得られた円柱形状圧粉体の圧粉密度を表3に示した。
前記による実施例1と実施例2で作成したAl−Cu部分拡散合金粉末とCu被覆Al粉末および50質量%Al−Cu母合金を機械粉砕法により製造した粒度−74μmのAl−Cu合金粉末、電解法により製造した粒度−74μmのCu粉末と噴霧法により製造した粒度−74μmのAl粉末を用意した。各粉末を表3に示された割合に配合して90質量%Cu−10質量%Al組成とし、さらに0.5質量%のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤として添加後、混合してC−1〜16の圧粉密度試験用の各混合粉末をそれぞれ作成した。この混合粉末各3.00gを円柱形状の断面積が100mm2とした金型に充填し、300MPaで成形して得られた円柱形状圧粉体の圧粉密度を表3に示した。
(1)Al−Cu部分拡散合金粉末の安全性と圧粉密度に対する熱処理温度の影響
表1に示される凝集固化ケーキの生成有無の判定結果から、本発明に従う熱処理温度範囲の下限から外れるA−6では凝集固化が認められず、見掛密度試験値においても熱処理前の混合粉末の試験値と差異はなく、吸引、飛散され易い低い値を示す。また逆に、熱処理温度範囲の上限を超えるA−7をAl源とした表3に示されるCu−10質量%Al組成に調整された混合粉末C−7の圧粉密度は、図3に示されるように処理温度の上昇に伴い圧粉密度は低下し、比較例C−15の50質量%Al−Cu合金粉末を用いた混合粉末と同水準の低い値を示し成形性は悪化する。これは図11のX線回折試験結果により、A−6の530℃熱処理ではAlとCuが強く検出され、合金化は殆ど進行なくAlとCu粉末の混合粉末の試験結果に近い形態が確認される。A−7の570℃熱処理粉末では逆にCu、Alが殆ど検出されず、母合金粉砕粉末に近い形態まで合金化が進行していることが窺える。A−3の550℃熱処理ではCu、AlおよびCuAl2の各ピークが検出され、生成された造粒粉末はCu、AlとCuAl2より形成されていることが確認される。
本発明はCu−Al二元系状態図による548℃の共晶を利用して、AlとCu粒子の接触部分での共晶生成による周囲粒子の造粒をはかり、Al粉末の取扱にかかる問題解消と、混合粉末に近い良好な成形性を有する部分拡散合金粉末を得るものである。これは図1に示される540℃から560℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、Al粉末とCu粉末の結合をはかり、粉末の見掛密度を高めて吸引、飛散され難いAl−Cu部分拡散合金粉末を得るものである。しかし、560℃を超える温度による処理粉末では、AlのCu粉末への拡散が進行した粉末硬度の高いCu−Al合金粉末化が進み、図3からも判るように良好な成形性を有する粉末は得られないことは明白である。
表1に示される凝集固化ケーキの生成有無の判定結果から、本発明に従う熱処理温度範囲の下限から外れるA−6では凝集固化が認められず、見掛密度試験値においても熱処理前の混合粉末の試験値と差異はなく、吸引、飛散され易い低い値を示す。また逆に、熱処理温度範囲の上限を超えるA−7をAl源とした表3に示されるCu−10質量%Al組成に調整された混合粉末C−7の圧粉密度は、図3に示されるように処理温度の上昇に伴い圧粉密度は低下し、比較例C−15の50質量%Al−Cu合金粉末を用いた混合粉末と同水準の低い値を示し成形性は悪化する。これは図11のX線回折試験結果により、A−6の530℃熱処理ではAlとCuが強く検出され、合金化は殆ど進行なくAlとCu粉末の混合粉末の試験結果に近い形態が確認される。A−7の570℃熱処理粉末では逆にCu、Alが殆ど検出されず、母合金粉砕粉末に近い形態まで合金化が進行していることが窺える。A−3の550℃熱処理ではCu、AlおよびCuAl2の各ピークが検出され、生成された造粒粉末はCu、AlとCuAl2より形成されていることが確認される。
本発明はCu−Al二元系状態図による548℃の共晶を利用して、AlとCu粒子の接触部分での共晶生成による周囲粒子の造粒をはかり、Al粉末の取扱にかかる問題解消と、混合粉末に近い良好な成形性を有する部分拡散合金粉末を得るものである。これは図1に示される540℃から560℃の温度範囲で熱処理を施すことにより、Al粉末とCu粉末の結合をはかり、粉末の見掛密度を高めて吸引、飛散され難いAl−Cu部分拡散合金粉末を得るものである。しかし、560℃を超える温度による処理粉末では、AlのCu粉末への拡散が進行した粉末硬度の高いCu−Al合金粉末化が進み、図3からも判るように良好な成形性を有する粉末は得られないことは明白である。
(2)Al−Cu部分拡散合金粉末の安全性と圧粉密度に対するAl混合比率の影響
図2に示すように、Al粉末混合比率を30〜70質量%へと高めるに従い熱処理前後の両粉に見掛密度の低下は顕著であるが、Al粉末の混合比率を範囲外の70質量%Alとした表1によるA−9では粉塵爆発が確認される。また、熱処理により得られた粉末の見掛密度の上昇は小さく、熱処理前の値に近いもので低い。これはAl比率が高くなると、混合粉末を黒鉛ボートに充填した加圧成形されていない状態での加熱処理では、Cu粒子と接触しないAl粒子が増え、共晶温度直上の熱処理であるが、AlのCu粒子への拡散に伴う液相生成量は少なくなり、造粒固化ケーキの解砕時に未反応Al粒子が多数再分散するためと考えられる。従って、軽くて吸引飛散され易いAl粉末比率は増加し、Al粉末取扱にかかる問題解消とならないことは明らかである。逆にAl混合比率下限を外れる30質量%AlとしたA−8は、熱処理前後の見掛密度の上昇比率か高く、吸引飛散の少ない見掛密度の高い粉末を得られるが、その粉末をAl源としてCu−10質量%Al組成に調整された表3による混合粉末C−8の圧粉密度は、図4に示すように熱処理粉末のAl混合比率の低下に比例して低くなり、目的とする高圧粉密度を示す粉末は得られない。これは部分化合金粉末成分中のAl比率の減少に伴い組成の調整時に添加されるCu粉末配合量が減少することによるものと考えられる。
図2に示すように、Al粉末混合比率を30〜70質量%へと高めるに従い熱処理前後の両粉に見掛密度の低下は顕著であるが、Al粉末の混合比率を範囲外の70質量%Alとした表1によるA−9では粉塵爆発が確認される。また、熱処理により得られた粉末の見掛密度の上昇は小さく、熱処理前の値に近いもので低い。これはAl比率が高くなると、混合粉末を黒鉛ボートに充填した加圧成形されていない状態での加熱処理では、Cu粒子と接触しないAl粒子が増え、共晶温度直上の熱処理であるが、AlのCu粒子への拡散に伴う液相生成量は少なくなり、造粒固化ケーキの解砕時に未反応Al粒子が多数再分散するためと考えられる。従って、軽くて吸引飛散され易いAl粉末比率は増加し、Al粉末取扱にかかる問題解消とならないことは明らかである。逆にAl混合比率下限を外れる30質量%AlとしたA−8は、熱処理前後の見掛密度の上昇比率か高く、吸引飛散の少ない見掛密度の高い粉末を得られるが、その粉末をAl源としてCu−10質量%Al組成に調整された表3による混合粉末C−8の圧粉密度は、図4に示すように熱処理粉末のAl混合比率の低下に比例して低くなり、目的とする高圧粉密度を示す粉末は得られない。これは部分化合金粉末成分中のAl比率の減少に伴い組成の調整時に添加されるCu粉末配合量が減少することによるものと考えられる。
(3)Cu被覆Al粉末の安全性と圧粉密度に対するCu被覆比率の影響
表2に示されるCu被覆Al粉末の粉塵爆発試験結果から、Cu被覆比率を30質量%とした本発明のCu被覆範囲下限から外れるB−4では粉塵爆発が確認され、Cu被覆比率の低下に従って混合されるCu粉末よりも軽くて集塵設備に回収され易くなることから、安全上の対策が必要となる。また、Cu被覆Al粉末をAl源として、表3に示されるCu−10質量%Al成分に調整された記号C−10〜14の圧粉密度試験結果は何れも高い値を示し、比較例として掲げたC−15の50Al−Cu合金粉末をAl源とした混合粉末よりも圧粉密度は高く、成形性が良好であることは図5でも明確である。これは軟質なAlにCuを析出させたものであり、粉末硬さがAl−Cu合金粉末よりも低いことによるものである。
表2に示されるCu被覆Al粉末の粉塵爆発試験結果から、Cu被覆比率を30質量%とした本発明のCu被覆範囲下限から外れるB−4では粉塵爆発が確認され、Cu被覆比率の低下に従って混合されるCu粉末よりも軽くて集塵設備に回収され易くなることから、安全上の対策が必要となる。また、Cu被覆Al粉末をAl源として、表3に示されるCu−10質量%Al成分に調整された記号C−10〜14の圧粉密度試験結果は何れも高い値を示し、比較例として掲げたC−15の50Al−Cu合金粉末をAl源とした混合粉末よりも圧粉密度は高く、成形性が良好であることは図5でも明確である。これは軟質なAlにCuを析出させたものであり、粉末硬さがAl−Cu合金粉末よりも低いことによるものである。
〔実施例4〕
(成形性および焼結性に対するP,Si,Snの3元素添加の影響)
前記実施例1によるA−3の熱処理温度550℃とした50質量%Al−Cu部分拡散合金粉末、実施例2のB−2によるCu被覆50質量%Al粉末、実施例3で用いたのと同じ50質量%Al−Cu合金粉末、Cu粉末、Al粉末および焼結促進効果を得ることを目的とした何れも粒度−74μmの15質量%P-Cu合金粉末、Fe−75Si合金粉末とSn粉末を用意した。各粉末を表4に示された割合に配合した合計100質量%に対して、さらに0.5質量%のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤として添加後、混合してD−1〜19の各混合粉末をそれぞれ作成した。この混合粉末各3.00gを円柱形状の断面積が100mm2とした金型に充填し、300MPaで成形して得られた圧粉体の圧粉密度試験後、圧粉体をステンレス製ボートに載せて、水素と窒素混合ガス(H2:N2=3:1)気流中にて、6質量%Al配合としたD−1〜14は890℃で、10質量%AlとしたD−15〜19は900℃で30分間加熱し、得られた焼結体の焼結密度および硬さ試験を実施し、それぞれの結果と焼結密度を圧粉密度で除した値を表4に示した。また、D−1〜19の各混合粉末4.00gを外形14mm、内径7mmの円筒形状となる金型に充填し、400MPaで成形して得られた圧粉体を前記と同じ焼結条件下でD−1〜14は890℃で、D−15〜19は900℃で30分間加熱し、得られた円筒形状焼結体の圧環強度試験を行い表4に併せてその結果を示した。
さらに、D−1、D−3、D−4、D−5、D−6およびD−8の各混合粉末を圧粉密度試験と同条件で成形した圧粉体を作成し、それぞれ100〜200mgの小片に加工後、窒素雰囲気中での示差熱分析試験を行いその結果を図12に示した。
(成形性および焼結性に対するP,Si,Snの3元素添加の影響)
前記実施例1によるA−3の熱処理温度550℃とした50質量%Al−Cu部分拡散合金粉末、実施例2のB−2によるCu被覆50質量%Al粉末、実施例3で用いたのと同じ50質量%Al−Cu合金粉末、Cu粉末、Al粉末および焼結促進効果を得ることを目的とした何れも粒度−74μmの15質量%P-Cu合金粉末、Fe−75Si合金粉末とSn粉末を用意した。各粉末を表4に示された割合に配合した合計100質量%に対して、さらに0.5質量%のステアリン酸亜鉛粉末を潤滑剤として添加後、混合してD−1〜19の各混合粉末をそれぞれ作成した。この混合粉末各3.00gを円柱形状の断面積が100mm2とした金型に充填し、300MPaで成形して得られた圧粉体の圧粉密度試験後、圧粉体をステンレス製ボートに載せて、水素と窒素混合ガス(H2:N2=3:1)気流中にて、6質量%Al配合としたD−1〜14は890℃で、10質量%AlとしたD−15〜19は900℃で30分間加熱し、得られた焼結体の焼結密度および硬さ試験を実施し、それぞれの結果と焼結密度を圧粉密度で除した値を表4に示した。また、D−1〜19の各混合粉末4.00gを外形14mm、内径7mmの円筒形状となる金型に充填し、400MPaで成形して得られた圧粉体を前記と同じ焼結条件下でD−1〜14は890℃で、D−15〜19は900℃で30分間加熱し、得られた円筒形状焼結体の圧環強度試験を行い表4に併せてその結果を示した。
さらに、D−1、D−3、D−4、D−5、D−6およびD−8の各混合粉末を圧粉密度試験と同条件で成形した圧粉体を作成し、それぞれ100〜200mgの小片に加工後、窒素雰囲気中での示差熱分析試験を行いその結果を図12に示した。
(1)Sn添加による圧粉密度への影響
表4のD−1〜8に50質量%Al−Cu部分拡散合金粉末をAl源としたCu−6質量%Al混合粉末へのP、Si、およびSnの各添加組合せによる圧粉密度試験結果が示されているが、Sn添加効果をD−1と7、D−2と8、D−5と6、D−3と4でそれぞれ比較すると、何れも図6に示すようにSnを添加したD−7,8,6,4で圧粉密度が上昇し、軟質なSn添加による圧粉密度上昇効果は明確であり、比重の小さいSi成分添加に伴う圧粉密度低下を補うものである。
表4のD−1〜8に50質量%Al−Cu部分拡散合金粉末をAl源としたCu−6質量%Al混合粉末へのP、Si、およびSnの各添加組合せによる圧粉密度試験結果が示されているが、Sn添加効果をD−1と7、D−2と8、D−5と6、D−3と4でそれぞれ比較すると、何れも図6に示すようにSnを添加したD−7,8,6,4で圧粉密度が上昇し、軟質なSn添加による圧粉密度上昇効果は明確であり、比重の小さいSi成分添加に伴う圧粉密度低下を補うものである。
(2)P,Si,Snの3成分添加による焼結体特性への影響
表4に示すD−1〜8の890℃での焼結密度試験結果から、P,Si,Snの3成分を添加したD−4で顕著に焼結時の密度上昇が確認される。焼結密度を圧粉密度で除した対圧粉密度比を示す図7では、その比が1.0以下にあるSnのみ添加したD−7では焼結膨張し、また他の1或いは2成分いずれの組合せによる添加においてもその比は1.03以下で焼結による密度の顕著な上昇効果はなく、3成分添加のD−4のみにその比が1.15と大きな上昇が確認され、相乗効果による焼結促進が図られたことは明白である。一方焼結体の圧環強度は高焼結密度の得られたP,Si,Snの3成分を添加したD−4が図8で示されるように、他と水準の異なる高い値を示す。硬さ試験においてはSi成分を添加したD−3,4,5,および6は他の添加されていないものと先の図8で比較すると、顕著に硬さの上昇が認められ、効果は明確である。
表4に示すD−1〜8の890℃での焼結密度試験結果から、P,Si,Snの3成分を添加したD−4で顕著に焼結時の密度上昇が確認される。焼結密度を圧粉密度で除した対圧粉密度比を示す図7では、その比が1.0以下にあるSnのみ添加したD−7では焼結膨張し、また他の1或いは2成分いずれの組合せによる添加においてもその比は1.03以下で焼結による密度の顕著な上昇効果はなく、3成分添加のD−4のみにその比が1.15と大きな上昇が確認され、相乗効果による焼結促進が図られたことは明白である。一方焼結体の圧環強度は高焼結密度の得られたP,Si,Snの3成分を添加したD−4が図8で示されるように、他と水準の異なる高い値を示す。硬さ試験においてはSi成分を添加したD−3,4,5,および6は他の添加されていないものと先の図8で比較すると、顕著に硬さの上昇が認められ、効果は明確である。
(3)異なるAl源を用いたCu−6質量%Al混合粉末でのP,Si,Snの3成分添加による焼結体特性への影響
異なるAl源を用いてAl含有比率を6質量%とした表4の記号D−1,D−4,D−9〜14の試験結果から、Al−Cu部分拡散合金粉末、Cu被覆Al粉末、Al−Cu母合金およびAl粉末とAl源は異なっていても、Cu−Al混合粉末に対するP,Si,Snの3成分添加をしたD−4,D−12〜14の圧粉密度に対する焼結密度の上昇は、図9に示すように顕著である。また、得られた焼結体の圧環強度および硬さにおいても、3成分の添加されていないD−1,D−9〜11とそれぞれ比較すると図10に示されるように、3成分添加による890℃でのCu−Al混合粉末に対する焼結促進効果は明らかである。図12に示す示差熱分析結果でSi成分の添加されていないD−1およびD−8では700から950℃の温度間に変化は検出されない。一方、Si成分の添加されているD−3、−4、−5および−6では882から928℃の間に吸熱反応の起点があり、Si、PおよびSnの3成分添加したD−4の起点が最も低い882℃である。これはD−5において検出される928℃のCu−Si系の液相に対して、さらにP、Sn成分が加わり、液相発生温度を低下せしめたものと考えられ、これらの試験結果からもSi、PおよびSnの3成分添加による相乗効果が液相焼結を促進させることは明確である。
異なるAl源を用いてAl含有比率を6質量%とした表4の記号D−1,D−4,D−9〜14の試験結果から、Al−Cu部分拡散合金粉末、Cu被覆Al粉末、Al−Cu母合金およびAl粉末とAl源は異なっていても、Cu−Al混合粉末に対するP,Si,Snの3成分添加をしたD−4,D−12〜14の圧粉密度に対する焼結密度の上昇は、図9に示すように顕著である。また、得られた焼結体の圧環強度および硬さにおいても、3成分の添加されていないD−1,D−9〜11とそれぞれ比較すると図10に示されるように、3成分添加による890℃でのCu−Al混合粉末に対する焼結促進効果は明らかである。図12に示す示差熱分析結果でSi成分の添加されていないD−1およびD−8では700から950℃の温度間に変化は検出されない。一方、Si成分の添加されているD−3、−4、−5および−6では882から928℃の間に吸熱反応の起点があり、Si、PおよびSnの3成分添加したD−4の起点が最も低い882℃である。これはD−5において検出される928℃のCu−Si系の液相に対して、さらにP、Sn成分が加わり、液相発生温度を低下せしめたものと考えられ、これらの試験結果からもSi、PおよびSnの3成分添加による相乗効果が液相焼結を促進させることは明確である。
(4)Cu−10質量%Al混合粉末でのP,Si,Sn添加による焼結体特性への影響
異なるAl源を用いてAl含有比率を10質量%とした表4の記号D−15〜19の試験結果から、3成分の添加による圧粉密度に対する焼結密度はその比が1.05〜1.13で、添加されない記号D−15の0.96と比較すると3成分添加による緻密化効果は明白である。同様に焼結体の圧環強度と硬さにおいても、表4の結果から3成分の添加効果は明らかである。
異なるAl源を用いてAl含有比率を10質量%とした表4の記号D−15〜19の試験結果から、3成分の添加による圧粉密度に対する焼結密度はその比が1.05〜1.13で、添加されない記号D−15の0.96と比較すると3成分添加による緻密化効果は明白である。同様に焼結体の圧環強度と硬さにおいても、表4の結果から3成分の添加効果は明らかである。
本焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、高強度、耐磨耗、耐熱、耐食性の要求される高荷重軸受や化学、食品工業用機械部品等に焼結合金として実用可能である。
Claims (3)
- 1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、Pが0.05〜1質量%、Siが0.5〜4質量%、Snが0.1〜1質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末。
- 粉末冶金に使用される焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末を製造するための方法であって、当該方法が、40〜60質量%のAl粉末と残部をCu粉末とした混合粉末を還元性または不活性雰囲気中において加熱処理した後、粉砕を行い、Al源として、Al、CuおよびAl−Cu合金の3組成よりなる部分拡散合金粉末を製造する工程、及び、前記Al源を用いて、1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、P0.05〜1質量%、Si0.5〜4質量%、Sn0.1〜1質量%を添加する工程を含むことを特徴とする焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末の製造方法。
- 粉末冶金に使用される焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末を製造するための方法であって、当該方法が、金属塩水溶液中にAl粉末を浸漬して、イオン化傾向の差で金属AlとCuイオンを置換することにより、Al源として、Cu被覆が40〜60質量%を占めるCu被覆Al粉末を製造する工程、及び、前記Al源を用いて、1〜12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、P0.05〜1質量%、Si0.5〜4質量%、Sn0.1〜1質量%を添加する工程を含むことを特徴とする焼結アルミニウム含有銅合金用混合粉末の製造方法。
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