JP6513630B2 - 車両 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、カバー部材で操舵回動部の周辺部を広く覆えるようにすることを目的とする。
また、本発明は、車体フレーム(11)と、当該車体フレーム(11)のヘッドパイプ(17)に支持されて操舵軸線(Cs)まわりに回動する操舵回動部(13)と、当該操舵回動部(13)に取り付けられる操舵ハンドル(26)とを備えた車体(10)を備え、前記操舵回動部(13)を上方から覆うカバー部材(810)を備えた車両において、前記カバー部材(810)は、前記車体(10)に固定される固定カバー(811)と、当該固定カバー(811)の上面開口(813e)を覆うとともに当該固定カバー(811)に対して回動可能な可動カバー(812)とを備え、前記固定カバー(811)は、前記固定カバー(811)の前記上面開口(813e)で前記操舵軸線(Cs)の全周を覆い、前記固定カバー(811)は、箱状部(813)と、前記箱状部(813)の上面部(813a)における車幅方向の中央部に設けられて前記可動カバー(812)側に延びる筒状部(813d)とを備え、前記筒状部(813d)の内周部は、前記上面開口(813e)を形成し、前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル(26)と一体に回動することを特徴とする。
また、本発明は、車体フレーム(11)と、当該車体フレーム(11)のヘッドパイプ(17)に支持されて操舵軸線(Cs)まわりに回動する操舵回動部(13)と、当該操舵回動部(13)に取り付けられる操舵ハンドル(26)とを備えた車体(10)を備え、前記操舵回動部(13)を上方から覆うカバー部材(810)を備えた車両において、前記カバー部材(810)は、前記車体(10)に固定される固定カバー(811)と、当該固定カバー(811)の上面開口(813e)を覆うとともに当該固定カバー(811)に対して回動可能な可動カバー(812)とを備え、前記固定カバー(811)は、前記固定カバー(811)の前記上面開口(813e)で前記操舵軸線(Cs)の全周を覆い、前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル(26)と一体に回動し、前記操舵ハンドル(26)を前記操舵回動部(13)に対して前記操舵軸線(Cs)まわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構(540)を前記操舵回動部(13)の上方に備え、前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル回動機構(540)を上方から覆うことを特徴とする。
また、上記発明において、前記開口部(812c)は、前記ハンドルホルダ(560)の外形に沿って形成されていても良い。
また、上記発明において、前記可動カバー(812)は、前記操舵軸線(Cs)の軸方向視で円形の上壁部(812a)と、当該上壁部(812a)の周縁部から前記固定カバー(811)側に延出する筒状の周壁部(812b)とを備えても良い。
また、上記発明において、前記操舵ハンドルを前記操舵回動部に対して前記操舵軸線まわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構を備え、前記カバー部材は、前記操舵ハンドル回動機構を上方から覆う構成としても良い。
また、上記発明において、開口部は、ハンドルホルダの外形に沿って形成されていても良い。この構成によれば、可動カバーをハンドルホルダによって高い精度で位置決めできるとともに、ハンドルホルダの周囲を広く覆うことができる。
また、上記発明において、可動カバーは、開口部の周縁部に沿って上方に延びるリブを備えても良い。この構成によれば、リブによって可動カバーの剛性を向上できるとともに、ハンドルホルダをリブで側方から覆うことができる。また、リブをハンドルホルダに当接させる場合には、可動カバーとハンドルホルダとの当接面積を大きくでき、可動カバーをハンドルホルダに効果的に位置決めできる。
また、上記発明において、ヘッドパイプを前方から覆うフロントカバーが設けられ、フロントカバーは、その上縁から後方に延出する延出カバー部を備え、延出カバー部の後縁部は、可動カバーの前縁部に連続していても良い。この構成によれば、延出カバー部によって、フロントカバーの上縁と可動カバーの前縁部との間を覆うことができる。
また、上記発明において、操舵ハンドルを操舵回動部に対して操舵軸線まわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構を備え、カバー部材は、操舵ハンドル回動機構を上方から覆う構成としても良い。この構成によれば、カバー部材で操舵ハンドル回動機構を効果的に隠すことができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の左側面図である。
車両1は、車体10と、車体10の前方に配置される前輪2と、車体10の後方に配置される後輪3とを備える自動二輪車である。
車体10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持される走行用のパワーユニットとしてのエンジン12と、車体フレーム11の前端部の操舵軸線Csまわりに回動する操舵回動部13と、運転者が着座するシート14と、車体フレーム11等を覆う車体カバー15とを備える。車両1は、運転者がシート14に跨るようにして乗車する鞍乗り型車両である。後輪3はエンジン12の動力で駆動される駆動輪である。なお、前輪2のホイールに前輪2の駆動用のモータを内蔵し、前輪2を駆動輪としても良い。
ヘッドパイプ17は、側面視で、鉛直方向に対して後傾して配置される筒状部材である。ヘッドパイプ17は、前輪2及び後輪3と同様に、車両1における車幅方向(左右方向)の中央に配置される。操舵軸線Csはヘッドパイプ17の軸線に一致する。
フロントフォーク25L,25Rは、前輪2の左右に一対で設けられ、前輪2は、フロントフォーク25L,25Rの下端部に設けられて車幅方向に延びる車軸2aに軸支される。
フロントフォーク25L,25Rは、操舵回動部13と一体に回転する。操舵回動部13の上部には、運転者が操作する操舵ハンドル26が、ハンドル支持部材としての操舵ハンドル回動機構540(図5)を介して取り付けられている。すなわち、運転者によって操舵ハンドル26が回転操作されると、操舵軸線Csを中心に操舵回動部13が回動し、前輪2が左右方向に操舵される。
車体カバー15は、ヘッドパイプ17の前方に位置するフロントカバー27と、ヘッドパイプ17とシート14との間の部分を覆うタンクカバー28とを有する。
図2は、トレール長が正の状態にある車両1の左側面図である。図3は、トレール長が負の状態にある車両1の左側面図である。図4は、前輪2の操舵方向と車両1の重心位置との関係を示す模式図である。なお、図2及び図3では、車両1の重心位置等が図の下部に図示されている。また、図2〜図4では、車両1の前後方向が方向Xで示され、車両のロール方向(方向Xの軸の軸まわり方向)が方向Yで示されている。なお、車体前方FRは方向X上に位置し、車体左方LHは方向Y上に位置する。
トレール長tは、上記基準姿勢状態において、前輪2の接地点P0と操舵軸線Csの接地点P1との距離である。トレール長tは、接地点P0を基準に、前方側を正の方向、後方側を負の方向とする。前輪2の接地点P0は、車軸2aの真下に位置する。また、後輪3の接地点P3は、後輪3の車軸3aの真下に位置する。
図2では、操舵軸線Csの接地点P1が前輪2の接地点P0の前方に位置しており、トレール長tは正の値である。図3では、操舵軸線Csの接地点P1が前輪2の接地点P0の後方に位置しており、トレール長tは負の値である。
図2の状態から、操舵軸線Csに対しフロントフォーク25L,25Rをさらに後傾させると、前輪2の接地点P0が前方に移動し、図3のようにトレール長tは負の値となる。
ここで、図2に示すトレール長tが正の状態を、「通常状態」と呼ぶ。また、図3に示すトレール長tが負の状態を、「トレール長変更状態」と呼ぶ。すなわち、「通常状態」から車体10に対しフロントフォーク25L,25Rを後方側により寝かせた状態が、「トレール長変更状態」である。
走行中の車両1は、前輪2が転がることによって操舵された方向(舵を切られた方向)に接地点が移動することから、重心CGに対して操舵された方向と反対向きの力が発生する。すなわち、車体が倒れる方向に操舵すると、車体を起こす向きの力が発生する。
これに対し、車両1の停止時は、図4中の左側部分に示すように、「通常状態」において前輪2が操舵される(図4では右側に操舵)と車両1の重心CGは、操舵方向と同方向(右方向)に移動する。このため、車両1が停止時に「通常状態」にある場合、車体が倒れる方向に操舵されると、より車体を倒す方向に力が発生する。これは走行中とは逆方向である。すなわち、操舵によって発生する車両1の重心CGにかかる力の方向は、車速の変化に伴って反転する。このように、「通常状態」では、重心CGにかかる力の方向が反転する車速域が存在するため、操舵によって車体の倒れを制御することが難しくなり、操舵によって車両1を自立させるように制御を実現することが困難である。
なお、力Fに加えて、前輪2の操舵による前輪2のロール方向の接地点の移動による力を、車両1を自立させるための制御に考慮しても良い。
図5は、車両1の前部を前方から見た正面図である。図6は、「通常状態」における車両1の前部の左側面図である。図7は、「トレール長変更状態」における車両1の前部の左側面図である。図8は、車両1の前部を右前方から見た斜視図である。図9は、図5のIX−IX断面図である。ここで、図5〜図9では、車体カバー15を取り外した状態が図示されている。図6及び図7では、左側のフロントフォーク25Lは不図示である。図8では、フロントフォーク25L,25Rは不図示である。
また、トレール長可変機構30は、電動モータ42の回転を減速してボールねじ機構43に伝達する減速機45と、電動モータ42の回転を規制するロック機構46と、ボールねじ機構43を揺動部41及び操舵回動部13に連結するリンク機構47とを備える。
また、フロントフォーク25L,25Rは、ボトムブリッジ49よりも上方に設けられる連結部材50によっても、車幅方向に連結されている。
各フロントフォーク25は、図6の「通常状態」では、その軸方向に延びるフォーク軸線25a(軸線)が、操舵軸線Csと略平行となる姿勢で、ヘッドパイプ17よりも前方に配置されている。
各フロントフォーク25は、ボトムブリッジ49に支持される固定チューブ25bと、固定チューブ25bに対して軸方向にストローク自在に設けられる可動チューブ25c(図1)と、フォークキャップ25dとを備える。
連結部材50は、固定チューブ25bの上端部を左右に連結し、ボトムブリッジ49は、固定チューブ25bの下部を左右に連結する。
操舵回動部13のトップブリッジ33は、ヘッドパイプ17よりも前方に延びる前端部に、車幅方向に延びる筒状の揺動軸支持部33aを備える。揺動軸48は、揺動軸支持部33aに挿通されることでトップブリッジ33に連結されている。
詳細には、揺動軸48は、車両1の側面視では、操舵軸線Cs上に位置し、操舵軸線Csに重なる位置に配置されている。
すなわち、フロントフォーク25L,25Rは、その上端部に設けられる揺動軸48を介してトップブリッジ33に連結されており、操舵軸線Cs上に位置する揺動軸48を中心に前後方向に揺動可能である。
図6の「通常状態」からリンク機構47が作動すると、図7のようにボトムブリッジ49が前方に移動し、フロントフォーク25L,25Rは揺動軸48を中心に揺動する。リンク機構47の詳細は後述する。
本第1の実施の形態によれば、フロントフォーク25L,25Rは、前輪2と共に操舵軸線Csを中心に回動可能であるとともに、前輪2と共に揺動軸48を中心に前後に揺動可能である。
ハウジング53は、ねじ軸51の一端部(下端部)を支持する下壁部53aと、ハウジング53の他端(上端)側を支持する上壁部53bと、下壁部53aの周縁部と上壁部53bの周縁部とを上下に繋ぐ柱状の複数の連結部53cとを備える。
ガイド部材54は、下壁部53aと上壁部53bとを繋ぐ軸状に形成されており、ねじ軸51の後方に配置されている。
ナット部材52は、ねじ軸51上に設けられるナット部52aと、ガイド部材54上に設けられる移動部52bとを一体に備える。移動部52bは、後方のヘッドパイプ17側へハウジング53の外側に延びるねじ機構側リンク連結部52cを備える。
ボールねじ機構43は、側面視において、ねじ軸51が鉛直方向よりも後傾した姿勢となるように配置される。ねじ軸51は、操舵軸線Csよりも大きく後傾している。
ブラケット36は、操舵軸線Csよりも後傾した取付面36bを前面に備える。ボールねじ機構43は、ハウジング53の上部の後面部が取付面36bに当接して配置されており、取付面36bに後方から挿通されるボルト56によって、取付面36bに固定されている。
ボールねじ機構43は、支持片57,57の前端部に車幅方向外側から挿通されて連結部53cに締結されるボルト58によって、支持片57,57に固定されている。
ボールねじ機構43は、ブラケット36を介して操舵回動部13に固定されており、前輪2の操舵方向に合わせて操舵回動部13と一体に回動する。
第1のリンク61は、車幅方向に延びる連結軸61dを介してボトム部材34に回動自在に取り付けられる。
第2のリンク62は、車幅方向に延びる連結軸62cを介して揺動部側リンク連結部49aに回動自在に取り付けられる。
第2のリンク62のアーム部62a,62aの先端部は、車幅方向外側から第1のリンク61の筒状部61bに重なり、この先端部及び筒状部61bに挿通される連結軸62dを介して第1のリンク61に対して回動自在に取り付けられる。
図5〜図10を参照し、減速機45は、箱状の減速機ケース65と、減速機ケース65に支持されて減速機ケース65内に収容される第1の伝達軸66及び第2の伝達軸67とを備える。
減速機45は、ボールねじ機構43の上面に取り付けられている。詳細には、減速機45は、減速機ケース65の下面部がボールねじ機構43の上壁部53bに固定されている。すなわち、減速機45は、ボールねじ機構43を介してブラケット36に支持されている。
減速機ケース65は、図6等の側面視では、上壁部53bに沿って前上がりに前方に延びている。
減速機ケース65は、ボールねじ機構43の上面に固定されるねじ機構側ケース部65aと、ねじ機構側ケース部65aから前方且つ車幅方向外側へ延びるモータ側ケース部65bとを一体に備える。
カップリングユニット70は、筒状のケース71と、ケース71内に収容される駆動側カップリング部材72及び従動側カップリング部材73とを備える。
ケース71は、その上端がモータ側ケース部65bの下面に固定されており、ねじ軸51と略平行に延びている。
電動モータ42は、回転軸42bがケース71内に下方から入るように配置されるとともに、モータ本体部42aがケース71の下端に固定される。すなわち、電動モータ42は、カップリングユニット70、減速機ケース65、ボールねじ機構43及びブラケット36を介して、車体10の操舵回動部13に取り付けられている。
電動モータ42は、ケース71に固定された状態では、回転軸42bの軸線42cがボールねじ機構43のねじ軸51と平行になる。また、軸線42cは、図10の側面視では、鉛直方向に対し操舵軸線Csよりも後傾した姿勢で、車両1の上下方向に指向している。
電動モータ42は、モータ側ケース部65bから下方に吊り下げられるように設けられているため、ボールねじ機構43の前側且つボールねじ機構43から側方にオフセットされた位置にある。また、電動モータ42は、図5の正面視では、左右のフロントフォーク25L,25Rの間に位置している。
入力軸75は、電動モータ42の回転軸42bの軸線42cと同軸上に配置されており、回転軸42b及びねじ軸51に対し平行である。
入力軸75は、減速機45の第1の伝達軸66に噛み合っている。入力軸75は、その上端部がベアリングを介してモータ側ケース部65bの上面部76に支持され、その下端部がベアリングを介してモータ側ケース部65bの下面部77に支持される。
電動モータ42の回転軸42bの上端部には、駆動側カップリング部材72が接続されている。駆動側カップリング部材72は従動側カップリング部材73に接続されている。
入力軸75は、モータ側ケース部65bの上面部76の上方に位置するロック部75a(図10)を上端に備える。ロック機構46は、モータ側ケース部65bの上面部76に上方から取り付けられている。
すなわち、ロック機構46が通電されていない状態では、入力軸75が回転不能であるため、電動モータ42も回転不能である。ロック機構46が通電されている状態では、入力軸75が回転可能であるため、電動モータ42も回転可能である。
自動操舵機構31は、操舵用駆動源としての操舵用モータ80(駆動源)と、操舵用モータ80の駆動力を操舵回動部13に伝達する駆動力伝達部材としての操舵リンク81(リンク)とを備える。
操舵用モータ80は、ヘッドパイプ17の後方でメインフレーム18に支持されている。
操舵リンク81は、操舵用モータ80の回転軸80aからヘッドパイプ17の側方を通るように前方に延びて、操舵回動部13のトップブリッジ33に連結される。
車両1は、操舵用モータ80、トレール長可変機構30の電動モータ42、ロック機構46、フロントフォーク25L,25Rのアクチュエータ25g、エンジン12、後述するハンドル回動用モータ105、及び、後述するハンドル回動ロック機構544(ロック機構)の動作の制御処理を実行する制御装置83を備える。
また、車両1は、制御装置83の制御処理に必要な各種状態量を検出するためのセンサとして、車体10のロール方向の傾斜角を検出する車体傾斜センサ84と、前輪2の操舵軸線Csまわりの操舵角を検出する操舵角センサ85と、トレール長tを検出するトレール長センサ86と、車両1の走行速度を検出する車速センサ87と、操舵ハンドル26のアクセルグリップの操作量を検出するアクセル操作量センサ88と、フロントフォーク25L,25Rの軸方向の長さを検出するフォーク長センサ89と操舵ハンドル26の回動角を検出するハンドル回動角センサ90とを備える。
制御装置83は、アクセル操作量センサ88の出力に基づいてエンジン12を駆動し、車両1を走行させる。
詳細には、電動モータ42の回転は、電動モータ42側から順に、回転軸42b、駆動側カップリング部材72及び従動側カップリング部材73、入力軸75、減速機45の第1の伝達軸66、第2の伝達軸67、及び、入力歯車51bを介してボールねじ機構43のねじ軸51に伝達される。
電動モータ42の回転は、減速機45によって大きく減速されてねじ軸51に伝達される。
ナット部材52がねじ軸51上を移動することで、リンク機構47が変形し、リンク機構47の変形に伴って、第2のリンク62に連結されたボトムブリッジ49が前後に移動する。
ボトムブリッジ49が前後方向に移動することで、フロントフォーク25L,25Rが揺動軸48を中心に前後に揺動し、トレール長tが変更される。
また、「通常状態」では、ボトムブリッジ49の後面がボトム部材34の前面に当接することで、フロントフォーク25L,25Rの後方への揺動位置が規制されている。
本第1の実施の形態では、ロック機構46は、電動モータ42の回転の伝達経路において、減速機45の第1の伝達軸66よりも上流で、入力軸75上に設けられている。これにより、「通常状態」からナット部材52が下方に移動しようとする場合であっても、ボールねじ機構43から入力軸75に伝達されるトルクは小さくなる。このため、ロック機構46のロック能力の容量を小さくした場合であっても、ロック機構46によってフロントフォーク25L,25Rの揺動を規制できる。
また、フロントフォーク25L,25Rは、側面視でフォーク軸線25aに重なる位置に配置される揺動軸48を中心に揺動するため、フロントフォーク25L,25Rが揺動する際の慣性重量を小さくできる。このため、小さな駆動力によってフロントフォーク25L,25Rを揺動させることができるとともに、フロントフォーク25L,25Rを速く揺動させてトレール長tの変更を迅速に行うことができる。
制御装置83は、車速センサ87により検出される車速が、所定速度(例えば、時速4キロメートル)を超えている場合、車両1を「通常状態」に維持する。「通常状態」で走行中の場合、制御装置83は、ロック機構46に通電しておらず、フロントフォーク25L,25Rの揺動はロックされている。また、「通常状態」では、制御装置83は、自動操舵機構31の操舵用モータ80の制御量を小さくする。このため、「通常状態」では、運転者が操舵ハンドル26を介して前輪2を操舵する。
まず、制御装置83は、「通常状態」においてロック機構46に通電してフロントフォーク25L,25Rの揺動のロック状態を解除する。次に、制御装置83は、電動モータ42を駆動して、フロントフォーク25L,25Rを揺動軸48を中心として前方に揺動させて「トレール長変更状態」にし、ロック機構46への通電を停止して、フロントフォーク25L,25Rの揺動を規制する。
「トレール長変更状態」では、制御装置83の制御によって車両1が自立するため、車両1が停車状態であっても、スタンドや運転者による支え無しに、車両1は自立する。
詳細には、「通常状態」から「トレール長変更状態」に変化すると、フロントフォーク25L,25Rがより後傾することで車両1の車高が低くなる。このため、制御装置83は、「トレール長変更状態」へ変化した状態であっても「通常状態」と同様の車高を得られるようにアクチュエータ25gを駆動してフロントフォーク25L,25Rの全長を長くする。これにより、トレール長tの変更による車両1の操縦性の変化を小さくできる。
図12は、操舵回動部13の周辺部を右後方側から見た斜視図である。図13は、操舵回動部13の上部及び操舵ハンドル26の周辺部を後方から見た図である。図14は、図13のXIV−XIV断面図であり、操舵回動部13の周辺部の断面を示している。
左右の上側フレーム18b,18bは、ヘッドパイプ17の後面から後方に行くに連れて、互いの車幅方向の間隔が大きくなるように設けられている。
ハウジング503は、上側フレーム18b,18bの上方延出部501,501を車幅方向に繋ぐように上方延出部501,501に固定されるベース部503aと、ベース部503aの車幅方向の中央部から上方に延びる筒状の収納部503bとを備える。
操舵用モータ80は、回転軸80aがハウジング503内に下方から入るように配置されるとともに、モータ本体部80bがベース部503aの下面に固定されることで、ハウジング503に取り付けられている。すなわち、操舵用モータ80は、ハウジング503及び上方延出部501,501を介してメインフレーム18に支持されている。
操舵用モータ80は、軸線80cが側面視で操舵軸線Csと平行になるように固定されており、軸線80cが上下方向に指向している。操舵用モータ80は、側面視で軸線80cがヘッドパイプ17と平行になるように配置されている。
このように、操舵用モータ80を、上側フレーム18b,18b及び上側フレーム18b,18bで覆うことで、操舵用モータ80を保護できるとともに、操舵用モータ80を隠して外観性を向上できる。また、操舵用モータ80が車幅の中央に配置されるため、車両1の車幅方向の重量バランスが良い。
減速機502は、回転軸80aの軸線80cと同軸上に設けられる波動歯車装置であり、高い減速比が得られるものである。減速機502は、例えばハーモニックドライブ(登録商標)である。
連結アーム81bは、その後端部が連結軸81cによって回動アーム81aの外端部に連結される。連結アーム81bは、ヘッドパイプ17に対して車幅方向の一側にオフセットされた位置を前後方向に延びる。
操舵リンク81は、回動アーム81aの回動軸、連結軸81c、連結軸81d、及び、操舵軸線Csを可動軸として動作するリンクである。
操舵用モータ80は、ヘッドパイプ17の後面近傍で上側フレーム18b,18bから上方に延出しているため、ヘッドパイプ17の上方に位置するトップブリッジ33に近い。このため、操舵リンク81によって操舵用モータ80をトップブリッジ33に容易に接続できる。
車両1は、操舵ハンドル26を操舵回動部13に対して操舵軸線Csまわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構540を備える。
図12〜図15を参照し、操舵ハンドル回動機構540は、トップブリッジ33の上面に設けられている。
また、操舵ハンドル回動機構540は、ハンドル回動用モータ543と同軸に設けられる駆動プーリ555と、駆動プーリ555と回転部542とを接続するベルト状の動力伝達部材556とを備える。
ケース541は、箱状のケース本体部541aと、ケース本体部541aの後面から後方に延びる板状の後方延出部541bとを備える。後方延出部541bは、操舵軸線Csに直交するように後下がりに傾斜している。
ケース541は、ケース本体部541aの底面が支持部33c,33cの上面に載置されており、左右の支持部33c,33cを車幅方向に繋ぐように配置されている。
ケース541は、上方からケース本体部541aに挿通される各ケース固定ボルト541cによって支持部33c,33cに固定されている。
回転部542は、ケース本体部541aに回動自在に支持される回動軸557と、回動軸557に固定される被動プーリ558と、回動軸557の上端に接続される減速部材559と、減速部材559に接続されるハンドルホルダ560とを備える。
回動軸557の軸線557aは回転部542の回転中心である。回動軸557は、ステアリングシャフト32の上方に位置するとともに、操舵軸線Csと同軸上に配置されており、軸線557aが上下方向に指向している。
被動プーリ558は動力伝達部材556を介して駆動プーリ555に接続されている。
減速部材559は、回動軸557の軸線557aと同軸上に設けられる波動歯車装置であり、高い減速比が得られるものである。減速部材559は、例えばハーモニックドライブ(登録商標)である。
操舵ハンドル26は、車幅方向における中央部がキャップ560bとハンドル支持部560cとの間に狭持されることで、ハンドルホルダ560に固定されている。
ハンドル回動ロック機構544、回動軸557、被動プーリ558、減速部材559、及び、ハンドルホルダ560は、回動軸557の軸線557a(操舵ハンドルの回動軸線)と同軸上に設けられている。このため、回転部542及びハンドル回動ロック機構544をコンパクトに設けることができる。
回転部542は、回動軸557と一体に回動するロック部557b(図15)を回動軸557の下端部に備える。
ハンドル回動ロック機構544は、電磁石に通電されていない状態では、その作動部が付勢部材によって付勢されて回動軸557のロック部557bに係合し、回動軸557の回動を規制する。
また、ハンドル回動ロック機構544は、電磁石に通電されている状態では、その作動部が電磁石の磁力によって上記付勢部材に抗してロック部557bから離れ、係合が解除される。
すなわち、ハンドル回動ロック機構544が通電されていない状態では、回動軸557が回転不能であるため、動力伝達部材556等を介して回動軸557に接続されているハンドル回動用モータ543も回転不能である。ハンドル回動ロック機構544が通電されている状態では、回動軸557が回転可能であるため、ハンドル回動用モータ543も回転可能である。
ハンドル回動用モータ543は、回転軸543bがケース541の後方延出部541bに下方から貫通するように配置されるとともに、モータ本体部543aが後方延出部541bの下面に固定されている。すなわち、ハンドル回動用モータ543は、後方延出部541bから下方に吊り下げるようにして固定されている。
ハンドル回動用モータ543の回転軸543bの軸線543cは、回動軸557の軸線557aと平行である。
回転軸543bには駆動プーリ555が固定されている。動力伝達部材556は、駆動プーリ555から後方延出部541bの上面に沿って前方へ延び、被動プーリ558に接続される。
操舵ハンドル26は、ハンドルホルダ560が回動することで、回動軸557の軸線557aまわり、すなわち操舵軸線Csまわりに回動する。操舵ハンドル26は、操舵回動部13に対して独立して回動可能である。
なお、本第1の実施の形態では、軸線557a及び操舵軸線Csは同軸であるが、軸線557aが操舵軸線Csからずれていた場合であっても、操舵ハンドル26は操舵軸線Csまわりに回動すると見なすことができる。
ハンドル回動ロック機構544は、ハンドル回動用モータ543から操舵ハンドル26までの回転の伝達経路において、減速部材559よりも上流に設けられている。
図16は、操舵ハンドル回動制御処理のフローチャートである。
まず、制御装置83は、車速センサ87により検出される車速Vが、所定速度(例えば、時速4キロメートル)以下であるか否かを判定する(ステップS1)。
車速Vが停止状態(時速0キロメートル)も含み所定速度以下である場合(ステップS1:YES)、制御装置83は、ハンドル回動ロック機構544に通電し、ハンドル回動ロック機構544による回動軸557のロックを解除する(ステップS2)。これにより、ハンドル回動用モータ543を回転させることが可能となる。
例えば、自動操舵機構31によって前輪2が右に5°操舵される場合、制御装置83は、前輪2の操舵の角速度と同一の角速度で操舵ハンドル26が左に5°回動するようにハンドル回動用モータ543を駆動する。この場合、操舵ハンドル26は、操舵回動部13に対して相対回動するが、車体フレーム11に対しては回動せずに上記基準位置に留まり、実質的には、操舵回動部13上で静止した状態となる。操舵ハンドル26は、操舵軸線Csと同軸の軸線557aを中心に回動するため、左右に移動しない。
これにより、自動操舵機構31によって前輪2が操舵されたとしても操舵ハンドル26が車体フレーム11に対して回動しないため、操舵ハンドル26を把持している運転者に自動操舵機構31による前輪2の操舵が影響することを防止できる。
制御装置83は、ステップS4では、例えば、前輪2の操舵角度の検出値と操舵ハンドル26の回動位置(回動角)の目標値との偏差に所定値のゲインKを乗じることで、ハンドル回動用モータ543の電流指令値(通電電流の目標値)を決定する。ここで、操舵ハンドル26の回動位置の目標値は0°である。
このため、車速Vが小さいときは、前輪2の操舵量に対する操舵ハンドル26の逆方向への回動量が大きくなり、車速Vの増加に伴って、前輪2の操舵量に対する操舵ハンドル26の逆方向への回動量は小さくなる。
また、車速Vが時速2キロメートルで自動操舵機構31によって前輪2が右に10°操舵される場合、車速Vが時速0キロメートルの場合よりもゲインKが小さくなるため、操舵ハンドル26は、例えば左に5°操舵される。この場合、操舵ハンドル26は基準位置に対して右に5°回動した状態となる。
本第1の実施の形態では、車速Vが大きく、自動操舵機構31による前輪2の操舵が行われない状態では、ハンドル回動ロック機構544によって操舵ハンドル26がトップブリッジ33に直接的に接続される。このため、運転者は、操舵ハンドル26を介して前輪2を直接的に操舵できる。
また、ハンドル回動ロック機構544は、通電されていない状態になるとロック状態となるため、電源が供給されていない状態であっても、運転者は操舵ハンドル26を介して前輪2を直接的に操舵できる。
車体カバー15は、操舵回動部13を上方から覆うカバー部材810を備える。カバー部材810は、車幅の中央に位置するとともに、前後方向においてフロントカバー27とタンクカバー28との間に配置される。
カバー部材810は、操舵ハンドル26の下方に配置されており、トップブリッジ33の上面に設けられる操舵ハンドル回動機構540を上方から覆う。
図18〜図22を参照し、カバー部材810は、車体10に固定される固定カバー811と、固定カバー811の上面を上方から覆う可動カバー812とを備える。
箱状部813は、側面視で後下がりに延びる上面部813aと、上面部813aの前縁から下方に延びる前面部813bと、上面部813aの左右の側縁からそれぞれ下方に延びる側面部813c,813cとを備える。箱状部813の下面は下方に開放している。
後部延出部814は、上面部813aの後縁部からタンクカバー28の前縁28aまで後方に延び、前縁28aに連続する。固定カバー811は、例えば、後部延出部814がタンクカバー28に取り付けられることで車体10に固定される。なお、固定カバー811は、車体カバー15の他のカバーや車体フレーム11等に固定されても良い。
後部延出部814の上面には、前後方向に延びる複数の上面リブ814aが形成されている。
可動カバー812は、上壁部812aにおける車幅方向の中央部に、上壁部812aを上下方向に貫通する開口部812cを備える。また、可動カバー812は、開口部812cの周縁部に沿って上方に延びるリブ812dを備える。
可動カバー812は、固定カバー811の上面開口813eを上方から覆うように配置され、周壁部812bの下縁部が固定カバー811の筒状部813dの上縁部に近接する。
ケース541の上部及びハンドルホルダ560は、固定カバー811の上面開口813eに被せられる可動カバー812によって上方から覆われる。
ハンドルホルダ560の上部は、可動カバー812の開口部812cを通って上方に露出する。
可動カバー812は、ハンドルホルダ560のベース部材560aに固定されている。このため、可動カバー812は、操舵ハンドル26の回動に伴って、操舵ハンドル26及び操舵回動部13と一体に回動する。すなわち、可動カバー812は固定カバー811に対して相対回動する。可動カバー812の回動軸線は、操舵軸線Csに一致している。
開口部812cは、ハンドル支持部560c,560cの外形、すなわちハンドル支持部560c,560cの前面、後面及び左右の外側面に沿って形成されている。このため、開口部812cにハンドル支持部560c,560cを良好に嵌合させることができる。
図18及び図19に示すように、キャップ560bは、リブ812dを上方から覆うハンドルカバー815によって上方から覆われる。
延出カバー部27cは、上縁27bから後下がりに延びて、可動カバー812の周壁部812bの前縁部に連続している。このため、ヘッドパイプ17とフロントカバー27との間に配置されたトレール長可変機構30を、延出カバー部27cで上方から覆って隠すことができる。また、延出カバー部27cの後縁部27dは、周壁部812bに沿って円弧上に形成されているため、延出カバー部27cは広い範囲を覆うことができる。
また、メインフレーム18は、上側フレーム18b,18bがヘッドパイプ17から左右一対で後方へ延び、操舵用モータ80は、車幅方向において左右の上側フレーム18b,18bの間の位置に配置されているため、左右の上側フレーム18b,18bを利用して操舵用モータ80を効果的に支持できる。また、操舵用モータ80が左右の上側フレーム18b,18bの間の空間に位置するため、上側フレーム18b,18bで操舵用モータ80を覆うことで、操舵用モータ80を保護できるとともに操舵用モータ80を隠して外観性を向上できる。
また、左右の上方延出部501,501を車幅方向に繋ぐクロス部材であるハウジング503が設けられ、操舵用モータ80はハウジング503の下面に取り付けられている。これにより、ハウジング503によってメインフレーム18の剛性を向上できるとともに、ハウジング503で操舵用モータ80を覆うようにして、操舵用モータ80を保護でき且つ外観性を向上できる。
また、操舵用モータ80は、電動モータであり、その回転軸80aの軸線80cが上下方向に指向する向きで配置されているため、操舵用モータ80を車幅方向にコンパクトに配置できる。
さらに、操舵用モータ80は、ヘッドパイプ17に対し車幅方向外側に位置する操舵リンク81を介して操舵回動部13に連結されているため、操舵用モータ80によって操舵回動部13に大きな駆動力を作用させることができ、操舵回動部13を容易に回動させることができる。
さらに、操舵ハンドル回動機構540は、ハンドル回動用モータ543の回転を減速して操舵ハンドル26に伝達する減速部材559を備えているため、操舵ハンドル26をハンドル回動用モータ543で容易に回動させることができる。また、操舵ハンドル26側からハンドル回動用モータ543側への動力の伝達は増速方向となるため、操舵ハンドル26を介して操舵回動部13を回動させる場合には、操舵ハンドル26が操舵回動部13に対して相対回転し難いため、操舵ハンドル26を介して操舵回動部13を回動させ易い。
さらに、ハンドル回動用モータ543は、回転部542の後方に配置されるとともに、ケース541に取り付けられているため、ハンドル回動用モータ543を、回転部542を駆動し易い位置にコンパクトに設けることができる。
また、ハンドル回動ロック機構544は、操舵ハンドル26の回動軸線である回動軸557の軸線557aと同軸に設けられるため、ハンドル回動ロック機構544をコンパクトに設けることができる。
また、操舵ハンドル26の回動軸線である回動軸557の軸線557aは、操舵軸線Csと同軸であるため、操舵回動部13が左右に操舵された状態であっても、操舵ハンドル26は操舵軸線Cs上で回動することができる。このため、操舵ハンドル26の動きを効果的に小さくすることができ、操舵ハンドル26の動きを運転者に伝わり難くできる。
また、制御装置83は、車速センサ87によって検出される車速Vに応じて、逆方向への操舵ハンドル26の回動量を変化させるため、操舵ハンドル26の回動量を車速Vに応じた適切な回動量にできる。
また、操舵回動部13を自動で回動させる自動操舵機構31を備えるため、自動操舵機構31によって前輪2が自動で操舵された際の操舵ハンドル26の回動量を小さくできる。
また、車速センサ87によって検出される車速Vが所定速度を超えていることが検出されると、ハンドル回動ロック機構544によって、操舵ハンドル26が操舵回動部13に対し相対回動不能にロックされる。これにより、車速Vが所定速度を超えた状態では、ハンドル回動ロック機構544によって操舵ハンドル26が操舵回動部13に直接的に接続されるため、運転者は、操舵ハンドル26を介して前輪2を直接的に操舵できる。
また、可動カバー812は、開口部812cの周縁部に沿って上方に延びるリブ812dを備えるため、リブ812dによって可動カバー812の剛性を向上できるとともに、ハンドルホルダ560をリブ812dで側方から覆うことができる。また、リブ812dをハンドルホルダ560に当接させる場合には、可動カバー812とハンドルホルダ560との当接面積を大きくでき、可動カバー812をハンドルホルダ560に効果的に位置決めできる。
また、ヘッドパイプ17を前方から覆うフロントカバー27が設けられ、フロントカバー27は、その上縁27bから後方に延出する延出カバー部27cを備え、延出カバー部27cの後縁部は、可動カバー812の前縁部に連続している。このため、延出カバー部27cによって、フロントカバー27の上縁27bと可動カバー812の前縁部との間を覆うことができる。
また、電動モータ42は、車両側面視において操舵回動部13の前方に配置されるとともに、その回転軸42bの軸線42cが上下方向に指向するように配置されているため、電動モータ42をコンパクトに配置でき、操舵慣性を低減できる。なお、軸線42cは車両1の上下方向に指向していれば良く、例えば、軸線42cは、略鉛直方向を指向しても良く、また、図10のように車両側面視で傾斜した姿勢で上下方向に指向していても良い。
また、トレール長可変機構30は、電動モータ42の回転を減速してボールねじ機構43に伝達する減速機45を備え、電動モータ42の回転を規制するロック機構46が、電動モータ42の回転の伝達経路において、減速機45よりも上流に設けられている。これにより、揺動部41側からボールねじ機構43及び減速機45を介して電動モータ42に伝達される回転は増速方向となるため、揺動部41側から減速機45を介して電動モータ42に伝達されるトルクは小さくなる。このため、減速機45の上流にロック機構46を設けることで、容量の小さな小型のロック機構46であっても電動モータ42の回転を規制でき、トレール長可変機構30の動作を容易に規制できる。
さらに、トレール長可変機構30は、ボールねじ機構43を揺動部41及び操舵回動部13に連結するリンク機構47を備え、操舵回動部13は、車体フレーム11のヘッドパイプ17に軸支されるステアリングシャフト32と、ステアリングシャフト32の上端部に固定されるトップブリッジ33と、ステアリングシャフト32の下端部に固定されるボトム部材34とを備え、揺動部41は、トップブリッジ33に設けられる揺動軸48を介して揺動可能に支持されるとともに、リンク機構47を介してボトム部材34に連結されている。これにより、トップブリッジ33の揺動軸48を中心に揺動可能な揺動部41を、ボトム部材34に連結されるリンク機構47を介して揺動させることができ、コンパクトな構造で揺動部41を揺動させてトレール長tを変更できる。
また、ヘッドパイプ17の前方で操舵回動部13のトップブリッジ33とボトム部材34とを繋ぐブラケット36が設けられ、電動モータ42は、ブラケット36を介して車体10に支持されている。これにより、ブラケット36は、ヘッドパイプ17の前方でトップブリッジ33とボトム部材34とを繋ぐため、操舵軸線Csに近い。このため、操舵軸線Csの近くに電動モータ42を配置でき、操舵慣性を低減できる。
また、フロントフォーク25L,25Rは、フロントフォーク25L,25Rの上面を塞ぐフォークキャップ25dを備え、揺動軸48はフォークキャップ25dに設けられているため、フォークキャップ25dを利用する簡単な構造で揺動軸48を設けることができる。
さらに、フロントフォーク25L,25Rは、その軸方向の長さを変更可能な電子制御式サスペンションであり、車両1は、トレール長可変機構30の動作による車高の変化に応じて、この車高の変化を小さくするように電子制御式サスペンションを駆動する制御装置83を備える。このため、トレール長可変機構30でトレール長tを変更した場合であっても、車高の変化を小さくできる。また、車両1の停止時に、電子制御式サスペンションによって車高を下げることで、運転者(ライダー)の足付き性を向上できる。
以下、図23及び図24を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第2の実施の形態は、操舵用モータ80と操舵回動部13との間の伝達トルクを可変とする構造を備える点が、上記第1の実施の形態と異なる。
図23に示すように、自動操舵機構531は、操舵用モータ80と、減速機502(図14)と、ハウジング503と、伝達トルク可変機構610とを備える。
伝達トルク可変機構610は、操舵リンク81と、トップブリッジ33の上面に設けられるねじ機構611とを備える。
ねじ機構611は、トップブリッジ33の上面に設けられる伝達トルク変更用モータ611aと、一端が伝達トルク変更用モータ611aに連結されたねじ軸611bと、ねじ軸611b上に設けられるナット611cと、ねじ軸611bの他端を支持するベアリング611dとを備える。
ねじ軸611bは、トップブリッジ33上を、伝達トルク変更用モータ611aから操舵リンク81が位置する側へ車幅方向に延び、トップブリッジ33の車幅方向の外端部に設けられたベアリング611dに他端を支持されている。
操舵リンク81の連結アーム81bの前端部は、連結軸81dによってナット611cに連結されている。
すなわち、ねじ軸611bにおいて距離Lの部分は、操舵用モータ80から操舵回動部13へトルクを伝達するトルク伝達アームとして機能し、このトルク伝達アームの長さである距離Lを可変とすることで、操舵用モータ80から操舵回動部13への伝達トルクが可変となる。
図24の状態では、図23の状態に対し、ナット611cがステアリングシャフト32側に移動しており、図23の状態よりもトルク伝達アームの長さである距離Lが小さい。すなわち、図24の状態は、図23よりも「トルク伝達アームの長さが小さい状態」に設定されている。また図23の状態は、図24の状態よりも「トルク伝達アームの長さが大きい状態」に設定されている。
また、「トルク伝達アームの長さが大きい状態」の状態では、操舵回動部13側から操舵用モータ80を回動させようとする場合、伝達トルクが小さくなるため、操舵用モータ80を回動させ難い。このため、「トルク伝達アームの長さが大きい状態」の状態では、操舵用モータ80が停止している際に運転者が操舵ハンドル26を介して手動で操舵回動部13を回動させる場合、操舵用モータ80が抵抗(フリクション)となり、操舵回動部13の操舵が重くなる。
また、「トルク伝達アームの長さが小さい状態」では、操舵回動部13側から操舵用モータ80を回動させようとする場合、伝達トルクが大きくなるため、操舵用モータ80を回動させ易い。このため、「トルク伝達アームの長さが小さい状態」では、操舵用モータ80が停止している際に運転者が操舵ハンドル26を介して手動で操舵回動部13を回動させる場合、操舵用モータ80の抵抗が小さくなり、操舵回動部13の操舵が軽くなる。
この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第3の実施の形態では、運転者の手動による操舵回動部13の操舵を軽くするために、操舵用モータ80と操舵回動部13との間の動力伝達経路から操舵用モータ80を切り離し可能な切り離し機構を備える。
この切り離し機構(不図示)は、例えば操舵用モータ80の動力の伝達経路において操舵用モータ80と操舵リンク81との間に介装される電磁クラッチを備える。
制御装置83は、車速センサ87により検出される車速が、所定速度(例えば、時速4キロメートル)を超えており、自動操舵機構31で前輪2を操舵しない場合、上記電磁クラッチへの通電を停止して、操舵用モータ80を上記動力伝達経路から切り離す。これにより、運転者が操舵ハンドル26を操舵する際に操舵用モータ80が抵抗にならないため、手動で容易に前輪2を操舵することができる。
さらに、制御装置83は、操舵用モータ80に動作異常等の異常があることを検出した場合、上記電磁クラッチへの通電を停止して、操舵用モータ80を上記動力伝達経路から切り離す。これにより、操舵用モータ80に異常が発生した場合であっても、操舵用モータ80が操舵の抵抗にならないため、運転者が手動で容易に前輪2を操舵することができる。
この第4の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第4の実施の形態は、運転者の手動による操舵回動部13の操舵を軽くするために、操舵用モータ80が操舵力を補助する点が上記第1の実施の形態と異なる。
上記トルクセンサは、運転者が操舵ハンドル26を介して手動で操舵回動部13を回動させる場合の運転者側の負荷をトルクとして検出する。
制御装置83は、上記トルクセンサの検出値に基づいて、この検出値が小さくなるように(例えば検出値が0になるように)操舵用モータ80を駆動する。これにより、操舵用モータ80の駆動力によって、手動による操舵回動部13の操舵を補助でき、運転者が手動で容易に前輪2を操舵することができる。
この第5の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第5の実施の形態は、車体フレーム11に対する操舵ハンドル26の回動位置が所定の上記基準位置となるように、付勢部材713によって操舵ハンドル26を付勢する原点復帰機構710が設けられている点が上記第1の実施の形態と異なる。
原点復帰機構710は、図15には不図示であるが、図15のケース541に設けられる。
原点復帰機構710は、操舵ハンドル回動機構540の回動軸557上に固定されるカム711と、カム711に当接する押圧部材712と、押圧部材712がカム711に当接するように押圧部材712を付勢する付勢部材713とを備える。
カム711は、回動軸557の軸線557a側に向かって窪む凹部711aをその外周部の一部に備える。凹部711aは略V字状に窪んでいる。
押圧部材712は、カム711に対して進退自在に設けられるスライド部712aと、スライド部712aに支持されて凹部711aに当接する当接部712bとを備える。スライド部712aは、ケース541に支持される。当接部712bは、回動軸557の軸線557aと平行な軸を中心に回動可能なローラである。
また、上記基準位置の状態では、当接部712bが凹部711aの底部711bに前方側から嵌まっている。
図26では、ハンドル回動用モータ543によって回動軸557が回動されて操舵ハンドル26が基準位置に対して回動されている。この状態では、ハンドル回動用モータ543は、原点復帰機構710の上記復元力に抗して操舵ハンドル26を回動させている。
図26の状態において、ハンドル回動用モータ543に動作異常が発生し、ハンドル回動用モータ543によって操舵ハンドル26を図25の基準位置に戻せなくなった場合、操舵ハンドル26は、原点復帰機構710の復元力によって基準位置に戻る。このため、ハンドル回動用モータ543に異常が発生した場合であっても、操舵ハンドル26を速やかに基準位置に戻すことができる。
なお、原点復帰機構710の復元力が十分に大きい場合、ハンドル回動ロック機構544によって回転部542を回転不能にしなくとも、運転者は、原点復帰機構710によって基準位置に固定された操舵ハンドル26を介して前輪2を操舵できる。
上記第1の実施の形態では、操舵用モータ80は、モータ本体部80bの下部が上側フレーム18b,18bの間の空間に位置しているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。操舵用モータ80は、モータ本体部80bが車幅方向において左右の上側フレーム18b,18bの間に位置していれば、モータ本体部80bが上側フレーム18b,18bの間の空間の上方に配置されても良い。
上記第1〜第5の実施の形態では、自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両、4輪以上を備えた鞍乗り型車両、及び、スクーターなどの鞍乗り型車両に適用可能である。
10 車体
11 車体フレーム
13 操舵回動部
17 ヘッドパイプ
26 操舵ハンドル
27 フロントカバー
27b 上縁
27c 延出カバー部
27d 後縁部
540 操舵ハンドル回動機構
560 ハンドルホルダ
810 カバー部材
811 固定カバー
812 可動カバー
812c 開口部
812a 上壁部
812b 周壁部
812d リブ
813e 上面開口
Cs 操舵軸線
Claims (9)
- 車体フレーム(11)と、当該車体フレーム(11)のヘッドパイプ(17)に支持されて操舵軸線(Cs)まわりに回動する操舵回動部(13)と、当該操舵回動部(13)に取り付けられる操舵ハンドル(26)とを備えた車体(10)を備え、前記操舵回動部(13)を上方から覆うカバー部材(810)を備えた車両において、
前記カバー部材(810)は、前記車体(10)に固定される固定カバー(811)と、当該固定カバー(811)の上面開口(813e)を覆うとともに当該固定カバー(811)に対して回動可能な可動カバー(812)とを備え、
前記固定カバー(811)は、前記固定カバー(811)の前記上面開口(813e)で前記操舵軸線(Cs)の全周を覆い、
前記車体は前記ヘッドパイプ(17)を前方から覆うフロントカバー(27)を有し、
前記固定カバー(811)は、前記フロントカバー(27)に対し別体で設けられ、
前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル(26)と一体に回動することを特徴とする車両。 - 車体フレーム(11)と、当該車体フレーム(11)のヘッドパイプ(17)に支持されて操舵軸線(Cs)まわりに回動する操舵回動部(13)と、当該操舵回動部(13)に取り付けられる操舵ハンドル(26)とを備えた車体(10)を備え、前記操舵回動部(13)を上方から覆うカバー部材(810)を備えた車両において、
前記カバー部材(810)は、前記車体(10)に固定される固定カバー(811)と、当該固定カバー(811)の上面開口(813e)を覆うとともに当該固定カバー(811)に対して回動可能な可動カバー(812)とを備え、
前記固定カバー(811)は、前記固定カバー(811)の前記上面開口(813e)で前記操舵軸線(Cs)の全周を覆い、
前記固定カバー(811)は、箱状部(813)と、前記箱状部(813)の上面部(813a)における車幅方向の中央部に設けられて前記可動カバー(812)側に延びる筒状部(813d)とを備え、前記筒状部(813d)の内周部は、前記上面開口(813e)を形成し、
前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル(26)と一体に回動することを特徴とする車両。 - 車体フレーム(11)と、当該車体フレーム(11)のヘッドパイプ(17)に支持されて操舵軸線(Cs)まわりに回動する操舵回動部(13)と、当該操舵回動部(13)に取り付けられる操舵ハンドル(26)とを備えた車体(10)を備え、前記操舵回動部(13)を上方から覆うカバー部材(810)を備えた車両において、
前記カバー部材(810)は、前記車体(10)に固定される固定カバー(811)と、当該固定カバー(811)の上面開口(813e)を覆うとともに当該固定カバー(811)に対して回動可能な可動カバー(812)とを備え、
前記固定カバー(811)は、前記固定カバー(811)の前記上面開口(813e)で前記操舵軸線(Cs)の全周を覆い、
前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル(26)と一体に回動し、
前記操舵ハンドル(26)を前記操舵回動部(13)に対して前記操舵軸線(Cs)まわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構(540)を前記操舵回動部(13)の上方に備え、
前記可動カバー(812)は、前記操舵ハンドル回動機構(540)を上方から覆うことを特徴とする車両。 - 前記可動カバー(812)の上面には、前記操舵回動部(13)に前記操舵ハンドル(26)を支持するハンドルホルダ(560)が嵌合する開口部(812c)が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両。
- 前記開口部(812c)は、前記ハンドルホルダ(560)の外形に沿って形成されていることを特徴とする請求項4記載の車両。
- 前記可動カバー(812)は、前記開口部(812c)の周縁部に沿って上方に延びるリブ(812d)を備えることを特徴とする請求項4または5記載の車両。
- 前記可動カバー(812)は、前記操舵軸線(Cs)の軸方向視で円形の上壁部(812a)と、当該上壁部(812a)の周縁部から前記固定カバー(811)側に延出する筒状の周壁部(812b)とを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両。
- 前記ヘッドパイプ(17)を前方から覆うフロントカバー(27)が設けられ、
前記フロントカバー(27)は、その上縁から後方に延出する延出カバー部(27c)を備え、当該延出カバー部(27c)の後縁部(27d)は、前記可動カバー(812)の前縁部に連続していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両。 - 前記操舵ハンドル(26)を前記操舵回動部(13)に対して前記操舵軸線(Cs)まわりに相対回動可能にする操舵ハンドル回動機構(540)を備え、
前記カバー部材(810)は、前記操舵ハンドル回動機構(540)を上方から覆うことを特徴とする請求項1または2記載の車両。
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