JP6513454B2 - 研磨物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨物の製造方法に関する。
従来、金属や半金属、非金属、その酸化物等の材料表面に対して、研磨用組成物を用いた研磨加工が行われており、研磨用組成物の組成や研磨プロセスに関して様々な検討がなされている。例えば特許文献1には、研磨用組成物に特定のポリマーを含有させることによって洗浄後の基板汚れを少なくすることが記載されている。特許文献2,3には、砥粒の粒径や材質が異なる複数種類の研磨用組成物を用いて多段階の研磨を行うことが記載されている。特許文献4は、シリカ溶液から異物を除去する方法および該方法により調製されたシリカ溶液を含む研磨液に関する。
特開2006−167817号公報 特開2011−233748号公報 特開2013−031909号公報 特開2013−170119号公報
ところで、例えば磁気ディスク基板の研磨においては、高容量化のため、より高品質な表面に仕上げることが要求されており、従来は問題とされてこなかったレベルでの欠陥抑制が求められている。そこで、ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む研磨用組成物による研磨後の表面を詳細に解析したところ、上記研磨後の表面において検出される欠陥のなかに、該表面に付着した微小なフィルム状物質を原因とするものが含まれていることが明らかになった。このフィルム状物質は、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカにおいて、該コロイダルシリカの原料に由来して不可避的に含まれることが判明している。また、上記フィルム状物質の構成材料は、少量の金属アルカリを含有し得るシリケート化合物であることが判明している。
珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ(以下「シリカS」ともいう。)を使用しなければ、上記フィルム状物質の付着による欠陥が生じることはない。そこで、シリカSに代えて、他の製造方法(上記ケイ酸アルカリ含有液を原料に用いない製造方法)により得られたシリカ粒子を用いることが考えられる。しかし、そのようなシリカ粒子は概して高価である。また、シリカSには種々の特性(例えば、平均粒子径や粒子形状等)を有するものがあり、他の製造方法で得られたシリカ粒子では代替できないものもある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを使用し、かつ、より表面品質のよい研磨物を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。関連する他の目的は、上記ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを使用し、かつ、上記欠陥を低減する方法を提供することである。
この明細書により提供される研磨物の製造方法は、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む研磨用組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、シリカ粒子を含む表面処理液で上記研磨対象物を表面処理する工程(2)とを、この順に含む。ここで、上記工程(2)の表面処理液に含まれるシリカ粒子は、上記ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ以外のシリカ粒子である。このように、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ(シリカS)を用いて研磨した後に、シリカS以外のシリカ粒子(以下「シリカNS」ともいう。)を用いて表面処理することにより、シリカSの使用による弊害(典型的には、フィルム状物質の付着による欠陥)を解消または軽減し、研磨対象物の表面品質を向上させることができる。したがって、シリカSの使用による利点を享受し、かつ表面品質のよい研磨物を得ることができる。
上記表面処理液に含まれるシリカ粒子(シリカNS)としては、例えば、金属ケイ素を原料とするシリカ粒子を好ましく利用し得る。ここに開示される技術は、このようなシリカNSを含む表面処理液を用いて工程(2)を行う態様で好適に実施され得る。なかでも好ましいシリカNSとして、アルコキシド法コロイダルシリカが挙げられる。
工程(1)の研磨用組成物に含まれるシリカSは、平均一次粒子径D1が80nm以下であることが好ましい。このようなシリカSを含む研磨用組成物によると、研磨対象物の表面粗さを効果的に低減することができる。したがって、その後に工程(2)を行うことにより、表面品質の高い研磨物を効率よく製造することができる。
工程(1)に用いる研磨用組成物は、pHが5以下であることが好ましい。このような研磨用組成物によると、工程(1)において研磨対象物の加工性を高めて、効果的に低粗度に仕上げることができる。したがって、その後に工程(2)を行うことにより、表面品質の高い研磨物を効率よく製造することができる。
工程(2)に用いる表面処理液は、pHが7以下であることが好ましい。このような表面処理液によると、該表面処理液がシリカNSを含むことの効果がよりよく発揮され、研磨対象物の表面品質を好適に改善することができる。
工程(1)に用いる研磨用組成物は、典型的には、厚さ100nm未満のフィルム状物質を含有する。このようなサイズのフィルム状物質は、シリカSを含む組成物から精度よく除去することが殊に困難である。したがって、このようなフィルム状物質を含有する研磨用組成物で研磨する工程(1)の後に工程(2)を行うことが特に有意義である。
ここに開示される製造方法は、例えば、磁気ディスク基板を製造する方法として好適である。磁気ディスク基板の分野では、高容量化や高信頼性のために、より欠陥の少ない表面が求められている。したがって、磁気ディスク基板は、ここに開示される技術の好ましい適用対象となり得る。
また、ここに開示される製造方法は、ガラス基板を製造する方法としても好適である。上記フィルム状物質は、後述するようにガラス材料に対しては特に付着しやすく、かつ取れにくい傾向にある。したがって、ガラス基板の製造においては、工程(1)より後で工程(2)を行うことが特に有意義である。例えば、磁気ディスク用ガラス基板(ガラス磁気ディスク基板)やフォトマスク用ガラス基板等のガラス基板の製造に好適である。
この明細書によると、また、研磨対象物の表面処理に使用される表面処理液が提供される。その表面処理液は、ここに開示されるいずれかの製造方法における工程(2)で用いられる。上記表面処理液はシリカ粒子を含み、該シリカ粒子はシリカS以外のシリカ粒子である。かかる表面処理液によると、研磨対象物の表面品質を効果的に改善することができる。
この明細書によると、また、シリカSを用いる研磨物の製造において、該研磨物の表面の欠陥を低減する方法が提供される。その方法は、シリカSを含む研磨用組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、シリカ粒子を含む表面処理液で上記研磨対象物を表面処理する工程(2)とを、この順に含む。ここで、上記表面処理液に含まれるシリカ粒子は、シリカS以外のシリカ粒子である。上記欠陥低減方法によると、研磨物表面の欠陥を有意に低減することができる。
フィルム状物質を示すSEM画像である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<研磨対象物>
ここに開示される技術の適用対象は特に限定されない。ここに開示される技術は、シリカSを含む研磨用組成物により研磨可能な種々の研磨対象物を研磨することを含む研磨物の製造や、上記研磨物の製造における欠陥の低減に適用することができる。
研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属またはこれらの合金、およびそれらの材料を使用した半導体配線に使用される薄膜;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得るが、これらに限定されない。また、これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される技術は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨に好ましく適用され得る。
ここに開示される技術は、ガラス材料の研磨に好ましく適用され得る。ここで「ガラス材料の研磨」とは、研磨対象面の少なくとも一部がガラス材料により構成されている研磨対象物を研磨することをいい、全体がガラス材料により構成されている研磨対象物(典型的にはガラス基板)を研磨することを包含する。上記ガラス材料の例としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、結晶化ガラス等が挙げられる。結晶化ガラスの例としては、主結晶相がスポジューメン、ムライト、ホウ酸アルミニウム系結晶、β−石英固溶体、α−クオーツ、コージェライト、エンスタタイト、セルシアン、ウォラストナイト、アノーサイト、フォルステライト、リチウムメタシリケート、リチウムダイシリケート等であるものが挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、磁気ディスク用ガラス基板(ガラス磁気ディスク基板)やフォトマスク用ガラス基板等のガラス基板に対して好ましく適用され得る。
ここに開示される技術は、ケイ酸を含有するガラス材料(以下「ケイ酸含有ガラス材料」ともいう。)の研磨に好ましく適用され得る。上記フィルム状物質は、上述のように少量のアルカリ金属を含有し得るシリケート化合物であり、ケイ酸含有ガラス材料においては該フィルム状物質が特に付着しやすく、かついったん付着したフィルム状物質が除去され難い。また、フィルム状物質とケイ酸含有ガラス材料とはこのように似た組成を有するため、ケイ酸含有ガラス材料を傷めずにフィルム状物質のみを除去する化学的処理条件を設定することが難しい。すなわち、フィルム状物質を除去するための化学的処理条件を厳しくすると、ケイ酸含有ガラス材料(研磨対象物)の表面品質の低下を招きやすい傾向にある。したがって、ケイ酸含有ガラス材料の研磨では、ここに開示される技術を適用してフィルム状物質の付着を防止することが特に有意義である。例えば、ケイ酸含有ガラス材料により構成された表面を有するガラス基板への適用が好ましく、高レベルの欠陥低減が求められるガラス磁気ディスク基板への適用が特に好ましい。
ここに開示される技術は、研磨後の表面の欠陥(特に、概ね平坦な形状(卓状等)の凸欠陥)を高度に低減し得ることから、磁気ディスク基板の研磨に好ましく適用され得る。例えば、アルミノシリケートガラス等のガラス材料により構成されたガラス磁気ディスク基板や、アルミニウム合金の表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni−P基板)を研磨する用途に好適である。ガラス磁気ディスク基板の研磨への適用が特に好ましい。ここでいうアルミノシリケートガラスには、結晶構造を有しているものや、化学強化処理を施したものが含まれ得る。化学強化処理は研磨後に行ってもよい。
以下、ガラス基板に適用する場合を主な例として本発明をより具体的に説明するが、本発明の適用対象をガラス基板に限定する意図ではない。
<研磨用組成物(1)>
工程(1)に用いられる研磨用組成物(以下「研磨用組成物(1)」ともいう。)は、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む。ここで「珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ」とは、
珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム含有液)を用いて製造されたコロイダルシリカをいう。例えば、珪砂をアルカリ溶液中でオートクレーブ処理して得られたケイ酸アルカリ溶液を希釈した後、イオン交換処理により脱アルカリした活性ケイ酸の核形成および粒子成長を少なくとも経て製造されるコロイダルシリカが挙げられる。このような方法で製造されたコロイダルシリカ(シリカS)には、不可避的に、その原料に由来するフィルム状物質が混在している。したがって、上記フィルム状物質を排除する意図的かつ適切な処理を高精度に行わない限り、シリカSを含む研磨用組成物には上記フィルム状物質が不可避的に含まれている。すなわち、研磨用組成物(1)は、典型的には、シリカSとともにフィルム状物質を含んでいる。また、研磨用組成物がフィルム状物質を含む場合には、そのことから該研磨用組成物がシリカSを含むことを推定できる。
ここに開示される技術において、組成物がフィルム状物質を含むか否かは、以下の方法により評価することができる。すなわち、評価対象の組成物を含む分散液サンプルを、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過する。このとき、上記メンブレンフィルタで濾過する分散液サンプルの量が、当該メンブレンフィルタの濾過面積1cm当たり、固形分基準で30mgとなるようにする。分散液サンプルを孔径0.2μmのメンブレンフィルタに通液できない場合には、該分散液サンプルを事前に3倍以上の孔径のメンブレンフィルタ(すなわち、孔径0.6μm以上のメンブレンフィルタ)で濾過する前処理を行うことができる。孔径0.2μmのメンブレンフィルタとしては、例えばポリカーボネート製メンブレンフィルタ(ADVANTEC社製の商品名「K020A−047A」)を用いることができる。
分散液サンプルを孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過した後、該メンブレンフィルタ上の残渣物を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察する。観察は、無作為に選択した12.7μm×9.5μm×100視野について行う。判別しにくい場合は、必要に応じてズームして確認を行う。そして、それらの視野のなかにフィルム状物質の存在が認められる場合には、当該組成物がフィルム状物質を含むと評価する。上記100視野のなかにフィルム状物質の存在が認められない場合には、当該組成物がフィルム状物質を実質的に含まないと評価する。
なお、ここに開示される技術において、上記の方法によりフィルム状物質を含むか否かを評価する対象には、研磨用組成物のほか、洗浄液、表面処理液、リンス液等、研磨物の製造過程において使用され得る任意の組成物も含まれ得る。また、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカの水分散液等、このような組成物の製造に用いられる原料として使用され得る材料も、上記方法による評価の対象となり得る。
(フィルム状物質)
上記フィルム状物質は、例えば図1に示すように、典型的には矩形状(具体的には長方形状)を呈する微小なフィルム(換言すると、薄片または薄膜)である。このフィルム状物質は、多くは長方形状の形態で存在しており、通常、その厚さLは凡そ100nm未満(典型的には凡そ50nm以下)である。また、通常、上記フィルム状物質の長辺の長さLは凡そ0.5μm以上であり、短辺の長さLは凡そ0.1μm以上である。したがって、長辺と短辺との比によっては、フィルム状物質の形状は、短冊状、帯状等と表現され得る。
このようなフィルム状物質を含む研磨用組成物が研磨対象物に供給されると、該研磨対象物の表面と上記フィルム状物質の表面とが面接触し得る。このとき、研磨対象物の表面とフィルム状物質の表面とが密接すると、研磨対象物上の特定の位置にフィルム状物質が継続的に留まる状態、すなわちフィルム状物質の付着(固着)が生じる。このような面接触により研磨対象物の表面に付着したフィルム状物質は、該フィルム状物質が薄く平坦な形状を有することもあって、一般的なスクラブや超音波付与等の手法でアルカリ洗浄液や水による洗浄を行っても研磨対象物表面に残存してしまい、結果的に凸欠陥の原因となり得る。また、例えば化学的な洗浄の条件をより厳しくして研磨対象物表面のフィルム状物質を除去しても、研磨対象物のうちフィルム状物質が付着していた部分は該フィルム状物質が付着していなかった部分(非付着部分)に比べて化学的な洗浄による表面除去量が少なくなるので、やはり凸欠陥の原因となり得る。ここに開示される技術によると、このようなフィルム状物質に起因する凸欠陥(典型的には、概ね平坦な形状(卓状等)の凸欠陥)が抑制された研磨物を効率よく製造し得る。
フィルム状物質の長径Lは、通常0.5μm以上である。したがって、ここでいうフィルム状物質の代表的な形状として、厚さが100nm未満であり、かつ長径Lが0.5μm以上である形状が挙げられる。フィルム状物質の長径Lは、典型的には凡そ0.7μm以上であり、例えば凡そ1μm以上であり得る。所定以上の長径L(長さ)を有するフィルム状物質は、研磨対象物表面と接触し得る面積が大きいため、付着力が強くなりがちである。したがって、ここに開示される技術の適用効果がよりよく発揮され得る。長径Lの上限は特に限定されないが、通常は5μm以下であり、典型的には3μm以下である。長径Lが小さくなると、シリカSを含む研磨用組成物からフィルム状物質を精度よく除去することがますます困難になるため、ここに開示される技術の適用意義が大きくなる。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が上記長径Lを有するフィルム状物質を含む態様でも好適に実施され得る。
フィルム状物質の短径Lは、通常0.1μm以上、典型的には凡そ0.2μm以上であり、例えば凡そ0.3μm以上であり得る。所定以上の短径L(幅)を有するフィルム状物質は、研磨対象物表面と接触し得る面積が大きいため、付着力が強くなりがちである。したがって、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。短径Lの上限は特に限定されないが、通常は1.5μm以下であり、典型的には1μm以下である。短径Lが小さくなると、シリカSを含む研磨用組成物からフィルム状物質を精度よく除去することがますます困難になるため、ここに開示される技術の適用意義が大きくなる。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が上記短径Lを有するフィルム状物質を含む態様でも好適に実施され得る。
なお、長径Lは、フィルム状物質が長方形状を有する場合はその長辺とする。フィルム状物質は必ずしも長方形状を有するとは限らないため、そのような場合には便宜的に最長径を長径Lとすればよい。短径Lは、フィルム状物質が長方形状を有する場合はその短辺とする。長方形状以外のフィルム状物質においては、長径Lと直交する方向における最も長い差渡し長さを短径Lとすればよい。
フィルム状物質の厚さLは、典型的には50nm以下、例えば凡そ30nm以下であり、一般的には凡そ20nm以下である。フィルム状物質の厚さLが小さくなると、シリカSを含む研磨用組成物からフィルム状物質を精度よく除去することがますます困難になるため、ここに開示される技術の適用意義が大きくなる。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が上記厚さLを有するフィルム状物質を含む態様でも好適に実施され得る。厚さLの下限は特に限定されないが、通常は凡そ3nm以上、例えば5nm以上である。
特に限定するものではないが、フィルム状物質の厚さLに対する長径Lの比(L/L)は、凡そ10より大きく、15以上(例えば50以上、典型的には100以上)であることが好ましい。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が上記比(L/L)を満たすフィルム状物質を含む態様でも好適に実施され得る。
上記フィルム状物質は、少なくとも、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液(例えばケイ酸ナトリウム含有液)を用いるコロイダルシリカの製造において副次的に生成することがわかっている。したがって、上記フィルム状物質は、少なくとも、上記製法によって得られたコロイダルシリカを含む組成物に不可避的に含まれ得る成分である。
(シリカS)
研磨用組成物(1)は、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ(シリカS)を含有する。上記研磨用組成物は、シリカSの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上(例えば、粒子径、粒子形状等が異なる2種以上)のシリカSを組み合わせて含んでいてもよい。
研磨用組成物(1)は、典型的には、シリカSを砥粒として含む。ここで「砥粒として含む」とは、研磨対象物に対する研磨作用を発揮し得る態様で含まれていることをいう。研磨用組成物(1)における砥粒は、シリカSから実質的に構成されていてもよく、シリカSと他の砥粒との組合せにより構成されていてもよい。ここで、砥粒がシリカSから実質的に構成されるとは、砥粒の95重量%以上(典型的には98重量%以上)がシリカSからなることをいう。他の種類の砥粒についても同様である。
ここに開示される技術において、研磨用組成物(1)は、シリカSを砥粒として含むものに限定されない。換言すると、研磨用組成物(1)は、砥粒以外の目的でシリカSを含むものであってもよく、砥粒としてのシリカSと砥粒以外の目的で含有されるシリカSとの両方を含むものであってもよい。シリカSの機能や使用目的にかかわらず、シリカSを含む組成物には上記フィルム状物質がともに含まれ得る。ここに開示される技術によると、シリカSの機能や使用目的にかかわらず、上記フィルム状物質に起因する欠陥(例えば、該フィルム状物質の付着による凸欠陥)を抑制することができる。
以下、シリカSを主に砥粒として利用する態様について主に説明するが、この明細書により開示される技術思想はかかる態様に限定されない。
研磨用組成物(1)に含有されるシリカSは、一次粒子の形態であってもよく、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であってもよい。また、一次粒子の形態のシリカSと二次粒子の形態のものとが混在していてもよい。
シリカSの平均一次粒子径D1は特に制限されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、例えば12nm以上である。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、D1は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。ここに開示される技術は、より高品位の表面を得やすい等の観点から、D1が30nm以下(より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは25nm未満、例えば20nm未満)のシリカSを用いる態様でも好ましく実施され得る。
なお、ここに開示される技術において、シリカSその他の粒子の平均一次粒子径D1とは、BET法に基づく平均粒子径をいう。上記平均一次粒子径D1は、BET法により測定される比表面積S(m/g)から、D1(nm)=2727/Sの式により算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
シリカSの平均二次粒子径D2は特に限定されないが、研磨速度等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、例えば12nm以上である。また、より平滑性の高い表面を得るという観点から、上記D2は、200nm以下が適当であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。ここに開示される技術は、より高品位の表面を得やすい等の観点から、D2が50nm以下(より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは25nm未満、例えば20nm未満)のシリカSを用いる態様でも好ましく実施され得る。
なお、ここに開示される技術において、シリカSその他の粒子の平均二次粒子径D2は、測定対象物の水分散液を測定サンプルとして、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いた動的光散乱法により測定することができる。
シリカSのD2は、一般に、D1と同等以上(D2/D1≧1)であり、典型的にはD1よりも大きい(D2/D1>1)。特に限定するものではないが、研磨効果および研磨後の表面平滑性の観点から、シリカSのD2/D1は、通常は1.0〜3.0の範囲にあることが適当であり、1.0〜2.5の範囲が好ましく、1.0〜2.3の範囲がより好ましい。より高い表面平滑性を得る観点から、D2/D1が1.0〜2.0(より好ましくは1.0〜1.5、例えば1.0〜1.4)であるシリカSを好ましく使用し得る。なお、後述する実施例ではD2/D1が1.1〜1.4の範囲にあるシリカSを使用した。
シリカSの粒子形状は特に限定されず、例えば球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭形状、突起付き形状(例えば、金平糖形状)、ラグビーボール形状等が挙げられる。表面粗さ低減の観点から、球形に近いシリカSを好ましく使用し得る。
特に限定するものではないが、シリカSの長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.05以上(例えば1.1以上)である。平均アスペクト比の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、シリカSの平均アスペクト比は、表面粗さ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。ここに開示される技術は、平均アスペクト比が1.25未満(例えば1.20以下、典型的には1.15未満)のシリカSを用いる態様でも好ましく実施され得る。
シリカSの形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、SEMを用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
シリカSの密度は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの密度の増大によって、研磨対象物を研磨する際に、研磨レートが向上し得る。研磨対象物の表面(研磨対象面)に生じるスクラッチを低減する観点からは、上記密度が2.3以下のシリカ粒子が好ましい。砥粒(典型的にはシリカ)の密度としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
ここに開示されるシリカSは、上述のように、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液を用いて製造されたものである。かかるシリカSを含む組成物(例えば、研磨用組成物(1))は、上記ケイ酸アルカリ含有液に由来するアルカリ金属(例えば、Na,K,Li等のアルカリ金属)を含み得る。シリカSを含む組成物は、典型的にはNaを含み得る。
(溶媒)
研磨用組成物(1)は、典型的には、シリカSを分散させる溶媒(以下、溶媒および分散媒を包含する媒体の意味で用いられる。)として水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。
研磨用組成物(1)は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物(1)に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
(シリカS以外の砥粒)
研磨用組成物(1)は、シリカSに加えて、シリカS以外の砥粒を含んでいてもよい。シリカS以外の砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。シリカS以外の砥粒としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも使用可能である。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、酸化クロム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。シリカS以外の砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカS以外の砥粒としては、無機粒子が好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子が好ましい。上記砥粒はシリカ粒子であってもよい。シリカS以外のシリカ粒子(シリカNS)の例としては、珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液を用いる方法以外の方法により製造されたコロイダルシリカ(例えば、アルコキシド法コロイダルシリカ)、乾式法シリカ(例えばフュームドシリカ)等が挙げられる。例えば、後述する表面処理液(2)に用いられるシリカNSと同様のシリカ粒子を、研磨用組成物(1)において、上記シリカS以外の砥粒として使用し得る。
特に限定するものではないが、シリカS以外の砥粒としては、上述したシリカSにおける好ましい平均一次粒子径D1、平均二次粒子径D2およびD2/D1の1または2以上を満たすものを好ましく採用し得る。
特に限定するものではないが、研磨用組成物(1)に含まれる砥粒に占めるシリカSの割合は、典型的には50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。ここに開示される技術は、砥粒が実質的にシリカSから構成される態様で好ましく実施され得る。なお、シリカSの含有量にかかわらず、フィルム状物質が含まれ得る限り、ここに開示される技術の適用効果は発揮され得る。したがって、ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)に含まれる砥粒に占めるシリカSの割合が50重量%未満、例えば25重量%以下、あるいは10重量%以下、さらには5重量%以下である態様でも好ましく実施され得る。
(pH)
研磨用組成物(1)のpHは特に制限されない。研磨用組成物(1)のpHは、例えば、pH12.0以下(典型的にはpH1.0〜12.0)とすることができ、pH10.0以下(典型的にはpH1.0〜10.0)としてもよい。好ましい一態様において、研磨用組成物のpHは、pH7.0以下(例えばpH1.0〜7.0)とすることができ、pH6.0以下(典型的にはpH1.2〜6.0、例えばpH1.2〜5.5)とすることがより好ましく、pH5.0以下(例えばpH1.5〜5.0)とすることがさらに好ましい。研磨用組成物(1)のpHは、例えばpH4.5以下(典型的にはpH2.0〜4.5、好ましくはpH2.5〜4.3、より好ましくはpH2.5〜4.0)とすることができる。上記pHは、例えば、ガラス磁気ディスク基板等のガラス材料の研磨に用いられる研磨液(例えばポリシング用の研磨液)に好ましく適用され得る。ガラス材料の研磨において、より平滑性の高い表面を得るために、研磨用組成物のpHとしてpH2.5を超える範囲(典型的にはpHが2.5より大きく4.3以下の範囲、例えばpHが2.5より大きく以上3.8以下の範囲)を好ましく採用することができる。pHの調整には、必要に応じて後述するpH調整剤等を使用することができる。
(その他の成分)
研磨用組成物(1)は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、酸やアルカリ剤等のpH調整剤、酸化剤、キレート剤、界面活性剤、水溶性高分子、防錆剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。ここに開示される技術は、また、研磨用組成物が酸化剤、水溶性高分子、界面活性剤、キレート剤等の添加剤を実質的に含まない態様で実施されてもよい。かかる組成の研磨用組成物は、例えば、ガラス材料(ガラス磁気ディスク基板等)の研磨において用いられる研磨用組成物として好適である。研磨用組成物(1)は、例えば、シリカSおよび不可避的に含有され得るフィルム状物質、溶媒およびpH調整剤から実質的に構成されていてもよい。
研磨用組成物(1)に含ませ得る酸の例としては、炭酸、塩酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等の無機酸;有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸等の有機酸;が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸としては、炭素数が1〜18程度のものが好ましく、炭素数が1〜10程度のものがより好ましい。有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ニコチン酸等の飽和カルボン酸;クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸等の不飽和カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イミノ二酢酸等の飽和ジカルボン酸および不飽和ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、イセチオン酸、タウリン等のスルホン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等のホスホン酸;等が挙げられる。研磨効率の観点から好ましい酸として、硫酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。マレイン酸、クエン酸、イセチオン酸等の有機酸を用いることにより、より高い平滑性が実現される傾向にある。また、例えばガラス材料の研磨に用いられる研磨用組成物において、酸化力の低い酸(例えば、標準水素電極に対する標準酸化還元電位が0.5V以下の酸、具体的には硫酸、クエン酸等)を好ましく採用し得る。なお、酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。酸の塩としては特に制限はなく、例えば適当な金属やアンモニウム等との塩が挙げられる。酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸を含む態様において、研磨用組成物(1)中における該酸の含有量(複数の酸を含む態様では、それらの合計含有量)は、所望のpHが得られるように適宜設定することができる。特に限定するものではないが、酸の含有量は、例えば0.1g/L以上とすることができ、研磨レート等の観点から、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは5g/L以上である。また、研磨組成物(1)の貯蔵安定性等の観点から、上記含有量は、70g/L以下が適当であり、好ましくは50g/L以下、例えば30g/L以下である。
アルカリ剤の例としては、アルカリ金属塩(水酸化物塩を含む。以下同じ。)、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。好適例としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウム、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸水素アンモニウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム、臭素酸カリウム、ソルビン酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸カルシウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化アンモニウム、過ヨウ素酸カリウム、フェリシアン化カリウム、酢酸アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。なかでも、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムが好ましい。このようなアルカリ剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ剤を含む態様において、該アルカリ剤の含有量(複数のアルカリ剤を含む態様では、それらの合計含有量)は、所望のpHが得られるように適宜設定することができる。特に限定するものではないが、アルカリ剤の含有量は、例えば0.1g/L以上とすることができる。上記含有量は、研磨レート等の観点から、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは5g/L以上である。また、研磨組成物の貯蔵安定性等の観点から、上記含有量は、70g/L以下が適当であり、好ましくは50g/L以下、例えば30g/L以下である。
好ましい一態様において、上述した酸およびアルカリ剤を、pHの緩衝作用が発揮され得るように組み合わせて使用することができる。特に限定するものではないが、このような緩衝系として、例えば、クエン酸とクエン酸ナトリウムのような弱酸とその強塩基塩との組合せや、硫酸と硫酸アンモニウムのような強酸とその弱塩基塩との組合せなどを利用することができる。
酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩等が挙げられるが、これらに限定されない。このような酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、ペルオキソ二硫酸、過ヨウ素酸、臭素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、過硫酸、それらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等、が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。このような酸化剤は、典型的には前述の酸と合わせて用いられることにより、研磨促進剤として効果的に作用し得る。例えば、金属材料(例えばニッケルリンメッキされた磁気ディスク基板)の研磨に用いられる研磨用組成物において、このような酸化剤を好ましく使用し得る。
酸化剤を含む態様において、研磨用組成物(1)中における該酸化剤の含有量(複数の酸化剤を含む場合には、それらの合計含有量)は、例えば0.01g/L以上とすることができる。上記含有量は、研磨レート等の観点から、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは0.5g/L以上である。また、経済性等の観点から、酸化剤の含有量は、100g/L以下が適当であり、好ましくは75g/L以下、より好ましくは60g/L以下である。
ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が酸化剤を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。例えば、研磨対象物がシリコンウェーハである場合、研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、当該組成物が研磨対象物に供給されることで該研磨対象物の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより研磨レートが低下してしまうことがあり得るためである。また、研磨対象物がガラス材料(例えば、ガラス磁気ディスク基板)である場合にも、通常、酸化剤は不要である。例えば、少なくとも過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムおよびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムのいずれをも実質的に含有しない研磨用組成物(1)が好ましい。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量(例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。
研磨用組成物(1)には、水溶性高分子を含有させてもよい。水溶性高分子を含有させることにより、研磨用組成物による研磨後の表面粗さ(例えば、磁気ディスク基板の表面粗さ)がより一層低減され得る。水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、スルホン酸基を有するポリマー、アクリル系ポリマー等が挙げられる。具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体やブロック共重合体、ポリビニルアルコール、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が水溶性高分子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
水溶性高分子を含む態様において、研磨用組成物(1)中における該水溶性高分子の含有量(複数の水溶性高分子を含む態様では、それらの合計含有量)は、例えば0.01g/L以上とすることができる。上記含有量は、表面平滑性等の観点から、好ましくは0.05g/L以上、より好ましくは0.08g/L以上、さらに好ましくは0.1g/L以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、10g/L以下とすることが適当であり、好ましくは5g/L以下、例えば1g/L以下である。
研磨用組成物(1)には、任意成分として、界面活性剤(典型的には、分子量1×10未満の水溶性有機化合物)を含ませることができる。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤としては、特に限定されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。ここに開示される技術は、研磨用組成物(1)が任意成分としての界面活性剤を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(研磨液)
ここに開示される技術において、研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。ここに開示される研磨用組成物を含む研磨液の他の例として、該組成物のpHを調整してなる研磨液が挙げられる。
研磨液における砥粒の含有量は特に制限されないが、通常は0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.15重量%以上(例えば1重量%以上、典型的には3重量%以上)である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。経済性の観点から、通常、上記含有量は30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。また、上記含有量は15重量%以下であってもよく、例えば10重量%以下とすることができ、5重量%以下(さらには2重量%以下、例えば1重量%以下)であってもよい。
(濃縮液)
ここに開示されるいずれかの研磨用組成物は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は2倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は、例えば2倍〜10倍である。
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に前述の溶媒を加えて混合することにより行うことができる。また、上記溶媒が混合溶媒である場合、該溶媒の構成成分のうち一部の成分のみを加えて希釈してもよく、それらの構成成分を上記溶媒とは異なる量比で含む混合溶媒を加えて希釈してもよい。また、後述するように多剤型の研磨用組成物においては、それらのうち一部の剤を希釈した後に他の剤と混合して研磨液を調製してもよく、複数の剤を混合した後にその混合物を希釈して研磨液を調製してもよい。
上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50重量%以下とすることができる。研磨用組成物の安定性(例えば、砥粒の分散安定性)や濾過性等の観点から、通常、上記含有量は、好ましくは45重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を30重量%以下としてもよく、20重量%以下(例えば15重量%以下)としてもよい。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上(例えば5重量%以上)である。
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成され得る。
<表面処理液(2)>
工程(2)は、工程(1)より後で行われる工程である。工程(2)に用いられる表面処理液(以下「表面処理液(2)」ともいう。)は、シリカ粒子としてシリカNSを含む。一般にシリカNSはフィルム状物質を含まないため、表面処理液(2)は、典型的にはフィルム状物質を実質的に含まない組成物である。
表面処理液(2)に含まれるシリカNSとしては、金属ケイ素を原料とするシリカ粒子を好ましく利用し得る。上記金属ケイ素を原料とするシリカ粒子の例には、金属ケイ素を原料とするアルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されるコロイダルシリカ(アルコキシド法コロイダルシリカ)や、金属ケイ素をアルカリに溶解したケイ酸アルカリ溶液をイオン交換処理により脱アルカリした活性ケイ酸の核形成および粒子成長を少なくとも経て製造されるコロイダルシリカ、無機アルカリ一価金属化合物とアンモニアとアミンとを含む水溶液に加温下で金属ケイ素を反応させることにより製造されるシリカ粒子、金属ケイ素と水とを反応させて得られるシリカ粒子、四塩化ケイ素やトリクロロシラン等のシラン化合物を典型的には水素火炎中で燃焼させることで得られるシリカ粒子(フュームドシリカ)、金属ケイ素と酸素の反応により生成するシリカ粒子等が含まれる。ここに開示される技術におけるシリカNSの一好適例として、アルコキシド法コロイダルシリカが挙げられる。アルコキシド法コロイダルシリカの製造には、通常、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等)のようなアルコキシシランが用いられる。なお、一般にアルコキシド法コロイダルシリカと称される材料であれば、その製造に用いるアルコキシシランが金属ケイ素を原料とするものか否かを問わず、ここに開示される技術におけるシリカNSとして好ましく使用することができる。
シリカNSは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術は、表面処理液(2)に含まれるシリカ粒子が実質的にシリカNSから構成される態様で好ましく実施され得る。
ここで、工程(2)より行われる「表面処理」とは、研磨対象物の表面に表面処理液(2)を適用して行われる処理を包括的に指す概念である。上記表面処理は、典型的には、研磨対象物の表面に存在し得るフィルム状物質(典型的には、工程(1)において研磨対象物の表面に付着し、工程(2)の開始時まで残留しているフィルム状物質)を該表面から取り除く処理であり、かかる目的を達成し得る限り、研磨対象物の洗浄、リンス、研磨等として把握される処理であり得る。表面処理液(2)は、フィルム状物質に似た組成のシリカNSを含むので、該シリカNSの作用によりフィルム状物質を研磨対象物から効果的に除去することができる。また、表面処理液(2)自体はフィルム状物質を実質的に含まないので、該表面処理液(2)に由来するフィルム状物質が研磨対象物に付着する事態を回避することができる。
シリカNSの平均一次粒子径D1、平均二次粒子径D2およびD2/D1は、特に限定されない。例えば、上述したシリカSにおける好ましいD1、D2およびD2/D1を、シリカNSにおいても好ましく適用することができる。より高品質の表面を得る観点から、シリカNSの平均一次粒子径D1(以下「D1NS」ともいう。)は、好ましくは80nm以下、より好ましくは30nm以下である。フィルム状物質を取り除く効果をよりよく発揮する観点から、D1NSは、好ましくは12nm以上、より好ましくは15nm以上である。好ましい一態様において、D1NSが20nm以上であってもよい。シリカSのD1(以下「D1」ともいう。)とシリカNSのD1(D1NS)との関係は特に限定されず、D1NS<D1であってもよく、D1<D1NSであってもよく、D1とD1NSとが同程度であってもよい。シリカSのD2(D2)とシリカNSのD2(D2NS)との関係についても同様である。
ここに開示される技術は、D1<D1NSである態様で好ましく実施され得る。このことによって、工程(2)におけるフィルム状物質の除去効率が向上する傾向にある。例えば、より短時間の処理またはより少量の表面処理液(2)によってフィルム状物質を効果的に除去することができる。このことは、研磨物の生産性や、シリカNSの使用量の節約による原料コスト低減の観点から有利である。
表面処理液(2)は、典型的には、シリカNSを分散させる溶媒を含む。溶媒としては、研磨用組成物(1)と同様のものを好ましく用いることができる。
表面処理液(2)は、シリカNSに加えて、シリカ粒子以外の粒子を含むものであってもよい。シリカ粒子以外の粒子としては、研磨用組成物(1)に使用し得る砥粒として例示した材料のうち、シリカ粒子以外の材料を適宜採用することができる。ここに開示される技術は、表面処理液(2)に含まれる粒子が実質的にシリカ粒子(典型的にはシリカNS)から構成される態様で好ましく実施され得る。
表面処理液(2)のpHは特に制限されない。表面処理液(2)のpHは、例えば、pH12.0以下(典型的にはpH1.0〜12.0)とすることができ、pH10.0以下(典型的にはpH1.0〜10.0)としてもよい。好ましい一態様において、表面処理液(2)のpHは、pH7.0以下(例えばpH1.0〜7.0)とすることができ、pH6.0以下(典型的にはpH1.2〜6.0、例えばpH1.2〜5.5)とすることがより好ましく、pH5.0以下(例えばpH1.5〜5.0)とすることがさらに好ましい。表面処理液(2)のpHは、例えばpH4.5以下(典型的にはpH2.0〜4.5、好ましくはpH2.5〜4.3、より好ましくはpH2.5〜4.0)とすることができる。上記pHは、例えば、ガラス磁気ディスク基板等のガラス基板の製造において好ましく適用され得る。pHが2.5を超える(典型的にはpHが2.5より大きく4.3以下、例えばpH3.0以上4.3以下の)表面処理液(2)を用いてもよい。pHの調整には、必要に応じて、研磨用組成物(1)と同様のpH調整剤等を使用することができる。
表面処理液(2)は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、研磨用組成物(1)と同様の公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。ここに開示される技術は、また、表面処理液(2)が酸化剤を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。かかる組成の表面処理液は、例えば、研磨対象物がガラス材料(ガラス磁気ディスク基板等)である態様において好ましく採用され得る。好ましい一態様において、表面処理液(2)は、シリカNS、溶媒およびpH調整剤(例えば酸)から実質的に構成され得る。
表面処理液(2)におけるシリカNSの含有量は特に限定されない。例えば、上述した研磨液または濃縮液と同様の砥粒含有量を、表面処理液(2)におけるシリカNSの含有量にも適用することができる。研磨用組成物(1)の砥粒含有量と表面処理液(2)のシリカNS含有量とは、同程度であってもよく異なってもよい。表面処理液(2)のシリカNS含有量を研磨用組成物(1)の砥粒含有量と同等またはそれ以上とすることにより、フィルム状物質の除去効率が向上する傾向にある。例えば、より短時間の処理またはより少量の表面処理液(2)によってフィルム状物質を除去することができる。また、表面処理液(2)のシリカNS含有量を研磨用組成物(1)の砥粒含有量よりも低くすることにより、研磨対象物の表面が必要以上に除去されることを抑制しつつ、該研磨対象物の表面からフィルム状物質を的確に除去できる傾向にある。
<研磨物の製造方法>
(工程(1))
ここに開示される技術における工程(1)は、好ましくは、研磨対象物をポリシング(精密研磨)する工程である。工程(1)が適用される研磨対象物は、ラッピング(粗研磨)、グラインディング、めっき等の工程を経て得られた研磨対象物であり得る。
特に限定するものではないが、工程(1)は、例えば以下のようにして実施することができる。すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物(1)を含有する研磨液を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に、濃度調整(例えば希釈)、pH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、上記研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。また、多剤型の研磨用組成物の場合、上記研磨液を用意することには、それらの剤を混合すること、該混合の前に1または複数の剤を希釈すること、該混合の後にその混合物を希釈すること、等が含まれ得る。
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。研磨機としては、研磨対象物の形状や研磨目的に応じた公知の研磨機を適宜採用し得る。例えば、ガラス基板のポリシングを行う場合には、ラッピング工程を経たガラス基板を研磨機にセットし、該研磨機の研磨パッドを通じて上記ガラス基板の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、ガラス基板の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。工程(1)に用いる研磨パッドの種類は特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。砥粒を含まない研磨パッドの使用が好ましく、なかでもスウェードタイプの研磨パッドが好ましい。
研磨液の供給終了に続いてリンス処理を行ってもよい。このリンス処理は、典型的には、研磨液に代えてリンス液を研磨対象面に供給することにより行われる。リンス液としては、特に限定されないが、例えば水を好ましく用いることができる。あるいは、シリカSその他の固形分を含まない他は研磨液と同じ成分を含むリンス液を使用してもよい。
研磨対象物のポリシングは、ひとつのポリシング工程により行われてもよく、1次ポリシング工程(1次研磨工程)とファイナルポリシング工程(最終研磨工程)とを含む複数のポリシング工程により行われてもよい。ここに開示される技術は、工程(1)が研磨対象物のファイナルポリシング工程である態様で好ましく実施され得る。なお、ファイナルポリシング工程とは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。ただし、ファイナルポリシング工程の後工程として工程(2)を実施することは許容され得る。
ここに開示される技術は、また、工程(1)がファイナルポリシング工程よりも上流のポリシング工程である態様で実施されてもよい。ここで、ファイナルポリシング工程よりも上流のポリシング工程とは、典型的には、ラッピング工程とファイナルポリシング工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。ここに開示される技術における工程(1)は、例えば、ファイナルポリシング工程の直前に行われるポリシング工程であってもよい。
工程(1)は、シリカSを含む研磨用組成物を用いるポリシング工程(典型的には、フィルム状物質を含む研磨用組成物を用いるポリシング工程)のうち最後の工程であることが好ましい。工程(1)の後、シリカSを含まない研磨用組成物を用いるポリシング工程をさらに行ってもよい。工程(1)より後に行われるポリシング工程は、工程(2)の前に行ってもよく、工程(2)の後に行ってもよい。工程(1)において研磨対象物の表面に付着し得るフィルム状物質の影響拡大を抑える観点からは、工程(1)と工程(2)との間に他のポリシング工程を配置しないことが好ましい。ここに開示される製造方法が工程(1)より後(好ましくは工程(2)より後)に行われるポリシング工程を含む場合、該ポリシング工程は、シリカSを含まず、かつ工程(1)に用いたシリカSよりも平均一次粒子径の小さい砥粒を含む研磨用組成物を用いて行うことが好ましい。
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)を経た研磨対象物を表面処理液(2)で表面処理する工程であって、当該処理によって上記研磨対象物表面からフィルム状物質を取り除くことが可能な種々の態様で行うことができる。
工程(2)の好ましい一態様として、研磨パッドを有する研磨機を用い、該研磨機にセットされている研磨対象物と上記研磨パッドとの間に表面処理液(2)を供給しながら上記研磨対象物と上記研磨パッドとを相対移動させる態様が挙げられる。研磨機としては、工程(1)と同様、研磨対象物の形状や研磨目的に応じた公知の研磨機を適宜採用し得る。工程(2)に用いる研磨パッドの種類は特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。砥粒を含まない研磨パッドの使用が好ましく、なかでもスウェードタイプの研磨パッドが好ましい。表面処理液の供給終了に続いてリンス処理を行ってもよい。このリンス処理は、例えば、工程(1)におけるリンス処理と同様にして行うことができる。
工程(2)は、研磨機Aを用いて工程(1)を実施した後、引き続きその研磨機Aを用いて(換言すると、研磨機Aから研磨対象物を取り外すことなく)行ってもよく、工程(1)に用いた研磨機Aとは異なる研磨機Bを用いて行ってもよい。工程(1)に用いた研磨機Aとは異なる研磨機Bを用いて工程(2)を行うことにより、工程(1)に用いた研磨用組成物が工程(2)に混入することが防止される。これにより、工程(2)を行うことの効果がよりよく発揮され、より表面品質のよい研磨物が製造される傾向にある。
特に限定するものではないが、研磨機を用いて工程(2)を行う場合、工程(2)において1バッチあたりに使用されるシリカNSの総重量WNSは、工程(1)において1バッチあたりに使用されるシリカSの総重量Wと概ね同等またはそれ以下とすることができる。ここで、WおよびWNSは、各工程の継続時間と、研磨用組成物(1)および表面処理液(2)の各々の供給レートに基づいて、研磨対象面の単位面積当たりの値として算出される。ここに開示される技術によると、コスト面で有利なシリカSを利用しつつ、比較的少量のシリカNSを有効に利用してシリカSによる研磨後に生じ得る表面欠陥を改善し、高品質の表面を有する研磨物を得ることができる。WNS/Wは、例えば1以下とすることができ、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下である。好ましい一態様において、WNS/Wを0.2以下としてもよい。
特に限定するものではないが、研磨機を用いて工程(2)を行う場合、工程(2)を実施する時間(表面処理時間)T2は、工程(1)を実施する時間(研磨時間)T1と概ね同等またはそれ以下とすることができる。ここに開示される技術によると、コスト面で有利なシリカSを利用しつつ、シリカNSを有効に利用して、比較的短時間の処理によりシリカSによる研磨後に生じ得る表面欠陥を改善し、高品質の表面を有する研磨物を生産性よく得ることができる。T2/T1は、例えば1以下とすることができ、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下である。好ましい一態様において、T2/T1を0.2以下としてもよい。T2の具体値は特に限定されないが、例えば20分以下とすることができ、経済性の観点から15分以下とすることが好ましく、10分以下とすることがさらに好ましい。また、フィルム状物質をよりよく除去する観点から、T2は、通常は5秒以上とすることが適当であり、10秒以上とすることが好ましい。
工程(2)における研磨対象物表面の除去量(研磨取り代)は特に限定されず、所望の欠陥低減効果が得られるように設定することができる。好ましい一態様において、上記研磨取り代を1000nm以下とすることができ、500nm以下、さらには200nm以下としてもよい。工程(2)における研磨取り代を少なくすることにより、シリカNSの使用量を低減し得る。工程(2)における研磨取り代の下限は特に限定されないが、フィルム状物質をよりよく除去する観点から、通常は5nm以上とすることが適当であり、10nm以上とすることが好ましい。なお、ここでいう研磨取り代は、工程(2)における研磨対象物の重量変化および該研磨対象物の密度から算出できる。
工程(2)の他の態様として、表面処理液(2)の存在下で研磨対象物の表面を研磨テープで研磨する態様;表面処理液(2)の存在下で研磨対象物の表面をワイピングテープでクリーニングする態様;表面処理液(2)の存在下で研磨対象物の表面をポリビニルアルコール(PVA)製等のスポンジでスクラブ洗浄する態様;等が挙げられる。これらの処理は、研磨対象物が表面処理液(2)に浸漬された状態で行ってもよい。工程(2)の他の態様として、研磨対象物を表面処理液(2)に浸漬して超音波を付与する態様;研磨対象物の表面に高圧の表面処理液(2)を噴射する態様;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて行うことができる。例えば、スクラブ洗浄と超音波付与とを順次にまたは並行して行ってもよい。
(工程(P))
ここに開示される研磨物製造方法は、工程(1)に先立って行われるポリシング工程(以下「工程(P)」ともいう。)をさらに含み得る。工程(P)を含む態様によると、ポリシング工程全体の所要時間を短縮して研磨物の生産性を高める効果が実現され得る。また、工程(P)を実施することにより、例えば、ポリシング工程の開始時に存在する欠陥(例えば凹み欠陥)が効率よく解消され得る。工程(P)は、1種類の研磨用組成物を使用する1つのポリシング工程であってもよく、2種以上の研磨用組成物を順次に使用して行われる2以上のポリシング工程を含んでもよい。
工程(P)に使用する研磨用組成物(以下「研磨用組成物(P)」ともいう。)は特に限定されない。例えば、砥粒としては、工程(1)に用いられる研磨用組成物(1)について例示したシリカS以外の砥粒およびシリカSのいずれも使用可能である。研磨用組成物(P)がシリカSを含む場合、該シリカSは、研磨用組成物(1)に含まれるシリカSと同一であってもよく、異なってもよい。研磨用組成物(P)に含まれるシリカSと、研磨用組成物(1)に含まれるシリカSとの相違は、例えば、粒子径、粒子形状、密度その他の特性の1または2以上における相違であり得る。
研磨用組成物(P)に含まれる砥粒の平均一次粒子径D1は、研磨用組成物(1)に含まれるシリカSの平均一次粒子径D1と同等またはそれ以上であることが好ましい。例えば、D1/D1を1〜100とすることができ、通常は2〜50とすることが適当である。好ましい一態様において、研磨用組成物(P)に含まれる砥粒として、D1が10nm〜1000nm(より好ましくは20nm〜700nm、さらに好ましくは30nm〜500nm)程度のものを好ましく採用し得る。
研磨用組成物(P)が砥粒としてシリカ粒子を含む場合、該シリカ粒子としては、シリカSおよびシリカNSのいずれも使用可能である。特に限定するものではないが、平均一次粒子径D1が10nm〜1000nm(より好ましくは20nm〜700nm、さらに好ましくは30nm〜500nm、例えば30nm〜200nm)程度のシリカ粒子を研磨用組成物(P)の砥粒として好ましく採用し得る。研磨用組成物(1)に含まれるシリカSの1〜50倍(より好ましくは1.5〜30倍、例えば2〜20倍)の平均一次粒子径D1を有するシリカ粒子が好ましい。
研磨用組成物(P)が砥粒としてシリカ粒子を含む場合、該シリカ粒子の形状(外形)は特に限定されず、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭形状、突起付き形状(例えば、金平糖形状)、ラグビーボール形状等が挙げられる。シリカ粒子は、同形状の1種を単独で使用してもよく、形状の異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、ピーナッツ形状、繭形状、突起付き形状を有するシリカ粒子が好ましく、突起付きシリカ粒子がより好ましい。
研磨対象物がガラス材料である場合、研磨用組成物(P)に好ましく使用し得る砥粒として、セリア、ジルコニア、チタニアおよびシリカが例示される。なかでも好ましいものとしてセリアおよびシリカが挙げられる。セリアとしては、平均一次粒子径D1が10nm〜1000nm(より好ましくは30nm〜700nm、さらに好ましくは100nm〜500nm)程度の粒子を好ましく使用し得る。
研磨用組成物(P)における砥粒含有量は特に限定されない。例えば、上述した研磨液または濃縮液と同様の砥粒含有量を、研磨用組成物(P)における砥粒の含有量にも適用することができる。
研磨用組成物(P)は、典型的には、上記のような砥粒を分散させる溶媒を含む。溶媒としては、研磨用組成物(1)と同様のものを好ましく用いることができる。
研磨用組成物(P)のpHは特に制限されず、例えばpH12.0以下(典型的にはpH1.0〜12.0)とすることができ、pH10.0以下(典型的にはpH1.0〜10.0)としてもよい。好ましい一態様において、研磨用組成物(P)のpHは、pH9.0以下(例えばpH2.0〜9.0)とすることができ、pH8.0以下(典型的にはpH2.5〜8.0、例えばpH3.0〜8.0)とすることがより好ましい。上記pHは、例えば、ガラス磁気ディスク基板等のガラス基板の製造において好ましく適用され得る。砥粒としてセリアを用いる場合、研磨用組成物(P)のpHは、例えばpH3.0〜9.0とすることができ、pH4.0〜8.0としてもよく、さらにはpH5.0〜7.5としてもよい。pHの調整には、必要に応じて、研磨用組成物(1)と同様のpH調整剤等を使用することができる。
研磨用組成物(P)は、必要に応じて、研磨用組成物(1)と同様の公知の添加剤(例えば水溶性高分子等)を含有してもよい。添加剤として水溶性高分子を含む場合、その使用量は、通常、0.05g/L〜20g/Lとすることが適当であり、1g/L〜10g/Lとすることが好ましい。ここに開示される技術は、研磨用組成物(P)が酸化剤を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。かかる組成の研磨用組成物(P)は、例えば、研磨対象物がガラス材料(ガラス磁気ディスク基板等)である態様において好ましく採用され得る。好ましい一態様において、研磨用組成物(P)は、砥粒、溶媒、pH調整剤(例えば酸)および必要に応じて使用される水溶性高分子から実質的に構成され得る。
工程(P)は、研磨パッドを有する研磨機を用い、該研磨機にセットされている研磨対象物と上記研磨パッドとの間に研磨用組成物(P)を含有する研磨液を供給しながら上記研磨対象物と上記研磨パッドとを相対移動させる態様で好ましく実施され得る。研磨機としては、工程(1)と同様、研磨対象物の形状や研磨目的に応じた公知の研磨機を適宜採用し得る。工程(P)に使用する研磨パッドの種類は特に限定されない。例えば、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもの等のいずれを用いてもよい。砥粒を含まない研磨パッドの使用が好ましく、なかでもスウェードタイプの研磨パッドが好ましい。研磨液の供給終了に続いてリンス処理を行ってもよい。このリンス処理は、例えば、工程(1)におけるリンス処理と同様にして行うことができる。
(洗浄処理)
ここに開示される技術は、工程(1)と工程(2)との間で研磨対象物の洗浄を行う態様で実施することができる。ここでいう洗浄とは、典型的には研磨機外で行われる処理である。例えば、工程(1)と工程(2)とを異なる研磨機により行う場合、工程(1)に用いた研磨機Aから研磨対象物を取り外して工程(2)に用いる研磨機Bに移動させる間に上記洗浄を行う態様を好ましく採用し得る。洗浄は、1または2以上の適当な洗浄液(典型的には、粒子を含まない洗浄液)を用いて行うことができる。例えば、汎用の超音波洗浄やスクラブ洗浄等を、単独であるいは組み合わせて行うことができる。
洗浄後の研磨対象物は、イソプロピルアルコール(IPA)蒸気による乾燥、温風による乾燥、スピン乾燥等の公知の方法により乾燥させてもよく、あるいは乾燥させなくてもよい。好ましい一態様において、洗浄後の研磨対象物を乾燥させることなく次工程(例えば工程(2))を開始することができる。このことによって、工程(2)においてフィルム状物質が除去されやすくなる傾向にある。
ここに開示される技術は、また、工程(1)と工程(2)との間で研磨対象物の洗浄を行わない態様でも好ましく実施され得る。例えば、研磨機Aを用いて工程(1)を実施した後、研磨対象物の洗浄を行うことなく、工程(1)に用いた研磨機Aとは異なる研磨機Bを用いて工程(2)を行う態様を好ましく採用し得る。ここに開示される技術によると、かかる態様においてもフィルム状物質の付着による欠陥を効率よく低減し得る。工程(1)の終了から工程(2)の開始までの間に研磨対象物の表面を乾燥させないことが好ましい。これにより、工程(2)を行うことの効果がよりよく発揮され、より表面品質のよい研磨物が製造され得る。
(乾燥)
ここに開示される技術は、上記洗浄後の乾燥に限らず、工程(1)の終了から工程(2)の開始までの間に研磨対象物の表面を乾燥させない態様で好ましく実施され得る。すなわち、工程(1)の終了から工程(2)の開始までの間、研磨対象物の表面が濡れた状態に維持される態様で好ましく実施され得る。このことによって、工程(1)において付着し得るフィルム状物質が研磨対象物表面に強く固着することが抑制され、工程(2)においてフィルム状物質が除去されやすくなる傾向にある。したがって、より表面品質のよい研磨物が製造され得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定する意図ではない。
<実施例1>
以下の研磨工程を表1に示す順序で実施して、ガラス基板の研磨を行った。ガラス基板としては、直径65mm(約2.5インチ)の磁気ディスク用アルミノシリケートガラス基板を使用した。工程(P)および工程(1)は同じ研磨機を用いて連続して行った。
(工程(P))
イオン交換水中に、セリア(平均一次粒子径300nm)を5重量%、ポリアクリル酸(重量平均分子量約2000)を0.5重量%の濃度で含み、pH6に調整された研磨用組成物(P)を研磨液に使用して、以下の研磨条件(A)でガラス基板を研磨した。
[研磨条件(A)]
研磨機A:スピードファム社製の両面研磨装置、型式「9B−5P」
研磨パッド:スウェードパッド
研磨圧力:130g/cm
上定盤回転数:13rpm
下定盤回転数:40回転/分
研磨液の供給レート:150mL/分(掛け流し)
研磨液の温度:25℃
研磨時間:20分間
(その後、研磨液に代えてイオン交換水を30秒間供給するリンス処理を行った。)
(工程(1))
珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ(シリカS;平均一次粒子径は17nm)をイオン交換水中に12.6重量%の濃度で含み、クエン酸でpH3に調整された研磨用組成物(1)を研磨液に使用する他は、研磨条件(A)と同様にしてガラス基板を研磨した。
(洗浄−乾燥処理)
工程(1)を終えたガラス基板を以下の条件で洗浄し、乾燥させた。
[洗浄条件]
対象のガラス基板を、120kHzの超音波を付与したアルカリ洗浄液(スピードファムクリーンシステム(株)から入手可能な「CSC−102B」を体積基準で200倍に希釈したもの)に浸漬した後、120kHzの超音波を付与した純水中でPVA製スポンジによるスクラブ洗浄を行い、次いで950kHzの超音波を付与したイオン交換水に浸漬した後、イソプロピルアルコール(IPA)雰囲気中に引き上げて乾燥させた。
(工程(2))
アルコキシド法により製造されたコロイダルシリカ(平均一次粒子径D1は25nm)をイオン交換水中に12.6重量%の濃度で含み、クエン酸でpH3に調整された表面処理液(2)を使用して、以下の表面処理条件(B)でガラス基板の表面処理を行った。
[表面処理条件(B)]
研磨機B:スピードファム社製の両面研磨装置、型式「9B−5P」
研磨パッド:スウェードパッド
研磨圧力:130g/cm
上定盤回転数:13rpm
下定盤回転数:40回転/分
表面処理液の供給レート:150mL/分(掛け流し)
表面処理液の温度:25℃
表面処理時間:10分間
(その後、表面処理液に代えてイオン交換水を30秒間供給するリンス処理を行った。)
<実施例2>
本例では、工程(1)を終えたガラス基板を、そのまま、表面が濡れたままの状態で研磨機Bにセットした。すなわち、工程(1)と工程(2)との間で上記洗浄−乾燥処理を行わなかった。その他の点は実施例1と同様にしてガラス基板を研磨した。
<実施例3>
本例では、工程(P)の後に上記洗浄−乾燥処理を行い、研磨機Bを用いて工程(1)および工程(2)を連続して行った。その他の点は実施例1と同様にしてガラス基板を研磨した。
<実施例4,5>
工程(1)に先立って工程(P)を行わない他は実施例1,2とそれぞれ同様にしてガラス基板を研磨した。
<比較例1>
工程(1)の後に工程(2)を行わない他は実施例3と同様にしてガラス基板を研磨した。
研磨後のガラス基板を上記の洗浄条件で洗浄した後、以下の評価を行った。
<欠陥評価>
各例に係るガラス基板の表面をKLA Tencor社製の検査装置「CandelaOSA7100」で検査し、所定の領域(ディスク中心からの半径位置が20mm〜31mmの領域)における欠陥の所在を検出した。次いで、該ガラス基板を上記の洗浄条件で再洗浄した後、再洗浄前と同じ領域を同様に検査して欠陥の所在を検出した。そして、再洗浄後の検査において再洗浄前と同じ位置に検出された欠陥を「残留欠陥」としてカウントした。
上記欠陥評価の結果を、比較例1を100%とする相対値に換算して表1に示す。残留欠陥が多いことは、再洗浄によっても除去できない強固な付着物による欠陥が多いことを意味する。表1には、各実施例および比較例に係る研磨プロセスの概要を併せて示している。各研磨プロセスは、表の上から下へと順に実施される。
表1に示されるように、シリカSを含む研磨用組成物による工程(1)の後に、シリカNS(ここでは、アルコキシド法コロイダルシリカ)を含む表面処理液により工程(2)を行った実施例1〜5によると、工程(1)の後に工程(2)を行わない比較例1に比べて、残留欠陥を大幅に低減することができた。実施例1と実施例3との対比から、工程(1)と工程(2)とを異なる研磨機で行うことにより、残留欠陥をよりよく低減し得ることがわかる。また、実施例1と実施例2との対比から、工程(1)の後、工程(2)の開始まで研磨対象物の表面を濡れた状態に保つことにより、工程(2)において残留欠陥を低減する効果が向上し得ることがわかる。実施例4と実施例5との対比においても同様の傾向がみられる。なお、実施例4,5の残留欠陥が実施例1,2に比べて多いのは、ここで適用した研磨条件ではフィルム状物質の付着以外の理由による欠陥が実施例1,2に比べて多かったためと考えられる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (8)

  1. 珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む研磨用組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、
    シリカ粒子を含む表面処理液で前記研磨対象物を表面処理する工程(2)と
    をこの順に含み、
    ここで、前記表面処理液に含まれるシリカ粒子は、前記ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ以外のシリカ粒子であり、
    前記研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均一次粒子径D1は5nm以上100nm以下であり、
    前記表面処理液に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径D1は5nm以上100nm以下であり、
    前記研磨用組成物は厚さ100nm未満のフィルム状物質を含み、前記表面処理液は厚さ100nm未満のフィルム状物質を含まない、研磨物の製造方法。
  2. 前記表面処理液に含まれるシリカ粒子は、前記ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ以外のシリカ粒子であって、金属ケイ素を原料とするシリカ粒子である、請求項1に記載の研磨物の製造方法。
  3. 前記表面処理液に含まれるシリカ粒子はアルコキシド法コロイダルシリカである、請求項1または2に記載の研磨物の製造方法。
  4. 前記研磨用組成物に含まれる前記コロイダルシリカの平均一次粒子径D1は5nm以上80nm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨物の製造方法。
  5. 前記表面処理液のpHが7以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨物の製造方法。
  6. 前記研磨対象物が磁気ディスク基板である、請求項1からのいずれか一項に記載の研磨物の製造方法。
  7. 前記研磨対象物がガラス磁気ディスク基板またはフォトマスク基板である、請求項1からのいずれか一項に記載の研磨物の製造方法。
  8. 珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを用いる研磨物の製造において、該研磨物の表面の欠陥を低減する方法であって、
    珪砂を出発原料とするケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカを含む研磨用組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、
    シリカ粒子を含む表面処理液で前記研磨対象物を表面処理する工程(2)と
    をこの順に含み、
    ここで、前記表面処理液に含まれるシリカ粒子は、前記ケイ酸アルカリ含有液に由来するコロイダルシリカ以外のシリカ粒子であり、
    前記研磨用組成物に含まれるコロイダルシリカの平均一次粒子径D1は5nm以上100nm以下であり、
    前記表面処理液に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径D1は5nm以上100nm以下であり、
    前記研磨用組成物は厚さ100nm未満のフィルム状物質を含み、前記表面処理液は厚さ100nm未満のフィルム状物質を含まない、欠陥低減方法。
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