JP6513022B2 - 軽質アルケノールの酵素的脱水による揮発性ジエンの製造 - Google Patents

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Description

本発明は、生物学的方法により共役ジエン、特に揮発性ジエンを製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、特に、リナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)などのアルケノールデヒドラターゼを使用することによって、酵素的脱水により軽質アルケノールからブタジエン、イソプレン又はジメチルブタジエンを製造する方法に関する。
共役ジエン、例えば、ブタジエン又はイソプレンなどの1,3−ジエンは、産業に重要な分子である。イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)は、式Cを有する共役ジエンである。イソプレンは、全産業に重要な化合物であり、接着剤にも多くの用途を有する。イソプレンは、以下のいくつかの経路を用いて化学的に製造される。
油からの抽出蒸留(C5留分)
イソアミレンの脱水素
イソペンタンの二重脱水素
イソブテンとホルムアルデヒドの反応
アセトンとアセチレンの反応
プロピレン二量体化
国際公開第2009/076676号は、イソプレンへの代謝経路について報告している。該経路は、メバロン酸経路における下流中間体、すなわちイソプレニルピロリン酸又はプレニルピロリン酸の脱リン酸化−脱水に基づいている。この方法は、全メバロン酸経路、すなわち、メバロン酸の二重リン酸化、その後のイソプレニルピロリン酸への脱カルボン酸−脱水、プレニルピロリン酸へのさらなる異性化及び最終的なイソプレンへの二重脱リン酸化/脱水を経ることを必要とするという欠点を有する。
ブタジエン(1,3−ブタジエン)は、式Cを有する共役ジエンである。ブタジエンは、合成ゴム、ナイロン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、プラスチック、ラテックスの製造にモノマーとして用いられる重要な工業用化学物質である。ブタジエンを製造するための種々の可能な選択肢が存在する。ブタジエンは、例えば、エチレン及び他のオレフィンを製造するために用いられる水蒸気分解工程の副産物として製造される。この工程において、ブタジエンは、C4流中に存在し、通常、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中への抽出とその後の極性非プロトン性溶媒からのストリッピングにより、他の副産物から単離される。ブタジエンは、ノルマルブタンの接触脱水素によって製造することもでき、或いはエタノールから製造することもできる。後者の場合、2種の異なる方法が用いられている。一段階製造方法では、エタノールを金属酸化物触媒上で400〜450℃でブタジエン、水素及び水に変換させる(Kirshenbaum, I. (1978)、Butadiene In M. Grayson (編)、Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、4巻、313〜337頁、New York: John Wiley & Sons)。二段階製造方法では、エタノールをアセトアルデヒドに酸化し、これをタンタル促進多孔質シリカ触媒上で325〜350℃で追加のエタノールと反応させて、ブタジエンを生成する(Kirshenbaum, I. (1978)、上記文献中)。ブタジエンは、ノルマルブタンの接触脱水素によっても製造することができる。
過去20年間に、遺伝子工学技術により、微生物の代謝を改善することが可能となり、ひいては、それらの微生物がさもなければ低い収量で産生する重要な物質を製造するためにそれらを使用することが可能となった。天然に存在する代謝経路を増強することにより、これらの技術は、産業上適切な多くの化合物を生物学的に製造する新たな方法を開拓するものである。動物飼料用のアミノ酸、生分解性プラスチック又は織物繊維などのいくつかの工業用化合物が現在遺伝子組換え生物を用いて日常的に製造されている。
上記の化合物を製造するための環境にやさしく、費用対効果が高く、簡単な方法を提供することが依然として必要とされている。
本出願は、特許請求の範囲に明確に述べる実施形態を提供することによって、この必要性に対応するものである。
本発明は、軽質アルケノールの変換に基づく、特に軽質アルケノールの酵素的脱水による揮発性ジエン化合物、特に1,3−ジエンなどの共役ジエンの合成のための新規生体触媒の設計に基づいている。本発明は、脱水反応を触媒する酵素を用いることによって前記変換を生物学的に行わせることができるという実証に基づいている。本発明は、in vitroで、無細胞系において、又は生物、特に微生物を用いることにより実施することができる。本発明はまた、炭素源、特に、炭水化物(特にグルコース)、ポリオール(特にグリセロール)、生分解性ポリマー(特に、デンプン、セルロース、ポリ−3−ヒドロキシアルケノエート)からの1,3−ジエンなどの共役ジエンの製造に関し、この炭素源が、微生物により軽質アルケノールに変換され、次いでそれが1,3−ジエンなどの共役ジエンに変換される。
より詳細には、本発明は、アルケノールデヒドラターゼを使用することにより、一般式C2nOに対応する化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)に酵素的に変換するステップを含むことを特徴とする、共役ジエンの製造方法に関する。変換は、脱水である。
式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物は、本発明との関連で、軽質アルケノールと呼ばれる。
一つの好ましい実施形態において、nは4である。この場合、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、式COに対応する。この式に対応する化合物は、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)、ブタ−3−エン−2−オール及びブタ−3−エン−1−オール(イソクロチルアルコール)である。本発明の方法によるこれらの化合物の変換の結果として生ずるジエンは、ブタジエンである。特に好ましい実施形態において、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)又はブタ−3−エン−2−オールであり、生成するジエンは、ブタジエンである。
他の好ましい実施形態において、nは5である。この場合、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、式C10Oに対応する。この式に対応する化合物は、2−メチルブタ−2−エン−1−オール、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)、3−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−1−オール及び3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)である。本発明の方法によるこれらの化合物の変換の結果として生ずるジエンは、イソプレンである。より好ましい実施形態において、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、2−メチルブタ−2−エン−1−オール、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)、3−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−2−オール又は3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)であり、生成するジエンは、イソプレンである。より好ましい実施形態において、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)、3−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−2−オール又は3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)であり、生成するジエンは、イソプレンである。特に好ましい実施形態において、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)又は2−メチルブタ−3−エン−2−オールであり、生成するジエンは、イソプレンである。
他の好ましい実施形態において、nは6である。この場合、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、式C12Oに対応する。この式に対応する化合物は、2,3−ジメチルブタ−2−エン−1−オール、2,3−ジメチルブタ−3−エン−2−オール及び2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールである。本発明の方法によるこれらの化合物の変換の結果として生ずるジエンは、ジメチルブタジエンである。特に好ましい実施形態において、本発明による方法において基質として用いられる軽質アルケノールは、2,3−ジメチルブタ−2−エン−1−オール又は2,3−ジメチルブタ−3−エン−2−オールであり、生成するジエンは、ジメチルブタジエンである。
一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物は、3つの群、すなわち、
(i)式Iの第一級アリルアルコール(PRA):
(ii)式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA):

及び
(iii)式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA):

に細分することができ、式中、R及びRは、H及びCHから独立に選択される。
一つの好ましい実施形態において、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物は、式Iの第一級アリルアルコール(PRA)であり、

式中、R及びRは、H及びCHから独立に選択される。この式に対応する化合物は、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)、2−メチルブタ−2−エン−1−オール、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)及び2,3−ジメチルブタ−2−エン−1−オールである(図1参照)。一つの好ましい実施形態において、第一級アリルアルコールは、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)であり、生成するジエンは、ブタジエンである。他の好ましい実施形態において、第一級アリルアルコールは、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)であり、生成するジエンは、イソプレンである。
他の好ましい実施形態において、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物は、式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)であり、

式中、R及びRは、H及びCHから独立に選択される。この式に対応する化合物は、ブタ−3−エン−2−オール、3−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−2−オール及び2,3−ジメチルブタ−3−エン−2−オールである(図2参照)。一つの好ましい実施形態において、STAは、ブタ−3−エン−2−オールであり、生成するジエンは、ブタジエンである。他の好ましい実施形態において、STAは、2−メチルブタ−3−エン−2−オールであり、生成するジエンは、イソプレンである。
さらなる好ましい実施形態において、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物は、式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)であり、

式中、R及びRは、H及びCHから独立に選択される。この式に対応する化合物は、ブタ−3−エン−1−オール(イソクロチルアルコール)、2−メチルブタ−3−エン−1−オール、3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)及び2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールである(図3参照)。一つの好ましい実施形態において、ホモアリルアルコールは、3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)であり、生成するジエンは、イソプレンである。
図4に、本発明の方法による上記のPRA、PHA及びSTA化合物の共役ジエンへの変換に関する概要図を示す。
本発明との関連で、sp2 C=C二重結合におけるZ/E反転のために又はキラルsp3 C中心におけるR/S反転のために立体異性体が存在する化合物に言及する場合、これらのすべての立体異性体が、そのような化合物への言及に含まれる。例えば、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)への言及は、シス(Z)及びトランス(E)立体異性体を意味する。同様に、2−メチルブタ−2−エン−1−オールへの言及は、シス(Z)及びトランス(E)立体異性体を意味する。さらに、ブタ−3−エン−2−オール、3−メチルブタ−3−エン−2−オール、2−メチルブタ−3−エン−1−オール又は2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、R及びS異性体の両方を意味する。
一つの好ましい実施形態において、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)への言及は、シス(Z)立体異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)への言及は、トランス(E)立体異性体を意味する。他の実施形態において、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)への言及は、両立体異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、ブタジエンである。
一つの好ましい実施形態において、2−メチルブタ−2−エン−1−オールへの言及は、シス(Z)立体異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、2−メチルブタ−2−エン−1−オールへの言及は、トランス(E)立体異性体を意味する。他の実施形態において、ブタ−2−メチルブタ−2−エン−1−オールへの言及は、両立体異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、イソプレンである。
一つの好ましい実施形態において、ブタ−3−エン−2−オールへの言及は、R異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、ブタ−3−エン−2−オールへの言及は、S異性体を意味する。他の実施形態において、ブタ−3−エン−2−オールへの言及は、両異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、ブタジエンである。
一つの好ましい実施形態において、3−メチルブタ−3−エン−2−オールへの言及は、R異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、3−メチルブタ−3−エン−2−オールへの言及は、S異性体を意味する。他の実施形態において、3−メチルブタ−3−エン−2−オールへの言及は、両異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、イソプレンである。
一つの好ましい実施形態において、2−メチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、R異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、2−メチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、S異性体を意味する。他の実施形態において、2−メチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、両異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、イソプレンである。
一つの好ましい実施形態において、2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、R異性体を意味する。他の好ましい実施形態において、2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、S異性体を意味する。他の実施形態において、2,3−ジメチルブタ−3−エン−1−オールへの言及は、両異性体を含む混合物を意味する。これらのいずれかを本発明による方法における基質として用いる場合、生成物は、ジメチルブタジエンである。
上述のように、本発明による方法は、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換がアルケノールデヒドラターゼを用いることにより達成されることを特徴とする。アルケノールデヒドラターゼは、アルケノールを脱水することができる酵素であり、好ましくは、それは、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する少なくとも1つの化合物を脱水することができ、反応の生成物は、C2n−2+HOである。この活性は、付随の実施例に記載されているアッセイにより測定することができる。本発明による方法において用いられるアルケノールデヒドラターゼの例は、「リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼ」(EC4.2.1.127)と表され、カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))菌株65Phenにおいて同定されたアルケノールデヒドラターゼである(Brodkorbら、J. Biol. Chem. 285巻(2010)、30436〜30442頁)。リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼは、モノテルペンの嫌気性分解に関与する二元機能酵素である。天然酵素は、160kDaの分子量を有することが見出され、40kDaのサブユニットのホモ四量体であると推測されている。該酵素は、in vitroで2つの反応を熱力学的推進力によって両方向に触媒する。一方で、該酵素は、第一級アリルアルコールであるゲラニオールの、第三級アリルアルコールモチーフを有するその立体異性体リナロールへの異性化を触媒する。他方で、該酵素は、第三級アルコールであるリナロールからの、共役ジエンモチーフを有する分子である対応する非環式モノテルペンであるベータ−ミルセンへの水の脱離(脱水)を触媒する。図5に嫌気的条件下でin vitroでリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼにより触媒される反応の概要を示す。カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)において、タンパク質は、膜を通しての輸送の後に切断される周辺細胞質位置におけるシグナルペプチドを有する前駆体タンパク質として発現する。酵素は、EC4.2.1.127と分類される。リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼは、嫌気的条件下で以下の反応を触媒する能力を有する。
リナロール ⇔ ミルセン+H
この活性は、例えば、Brodkorbら(上記文献中)に記載されているようなアッセイにより測定することができる。そのようなアッセイにおいては、バイアルを35℃にあらかじめ加温し、無酸素性タンパク質溶液をバイアルに移し、DTTを2mMまで加える。反応混合物をブチルセプタムで密封し、ヘッドスペースをCO/N(10/90(容積/容積))でフラッシュする。反応は、異なる濃度のリナロールを加え、35℃でインキュベートすることにより開始させる。リナロールのミルセンへの変換は、例えば、ガスクロマトグラフィーによりミルセンの生成を調べることにより評価する。
好ましい実施形態において、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼは、嫌気的条件下でゲラニオールのリナロールへの異性化を触媒する能力も有する:
ゲラニオール ⇔ リナロール
この活性は、例えば、Brodkorbら(上記文献中)に記載されているようなアッセイにより測定することができる。そのようなアッセイにおいては、バイアルを35℃にあらかじめ加温し、無酸素性タンパク質溶液をバイアルに移し、DTTを2mMまで加える。反応混合物をブチルセプタムで密封し、ヘッドスペースをCO/N(10/90(容積/容積))でフラッシュする。反応は、異なる濃度のゲラニオールを加え、35℃でインキュベートすることにより開始させる。ゲラニオールのリナロールへの変換は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより、ミルセン、すなわち、酵素により触媒される第2の反応の生成物の生成を調べることにより評価する。
ゲラニオール、リナロール及びミルセンは、それぞれアリルアルコール及び炭化水素のクラスに属する、植物により産生される非環式C10−テルペノイドである。Luddecke及びHarder(Z. Naturforsch. 66c(2011)、409〜412頁)は、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの高い基質特異性について報告した。本発明者らは、今般、驚くべきことにリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼが式C2nO(式中、3<n<7である。)の化合物に作用することができ、それらを共役ジエンに変換することができることを見出した。付随の実施例において、このことを、ブタ−2−エン−1−オール(クロチルアルコール)のブタジエンへの、ブタ−3−エン−2−オールのブタジエンへの、3−メチルブタ−2−エン−1−オール(プレノール)のイソプレンへの、3−メチルブタ−3−エン−1−オール(イソプレノール)のイソプレンへの、及び2−メチルブタ−3−エン−2−オールのイソプレンへの変換に関連して示す。このように、本発明者らは、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼが、報告された高い基質特異性にもかかわらず、その天然基質よりはるかに短いアルケノールも予期しないことに変換することができることを示すことができた。したがって、一つの実施形態において、本発明による方法において用いるアルケノールデヒドラターゼは、リナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)である。
発明による方法において用いることができるアルケノールデヒドラターゼの配列の例を配列番号1(図6)に示す。アルケノールデヒドラターゼの配列は、UniProtKB/TrEMBLデータベースで受託番号E1XUJ2のもとにアクセスすることもできる。これらの配列は、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼと分類されるアルケノールデヒドラターゼを表す。好ましい実施形態において、本発明による方法は、配列番号1に示すアミノ酸配列又は配列番号1と少なくともx%同一である配列を含み、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換を触媒することができるアルケノールデヒドラターゼを使用するものであり、xは、30〜100の整数であり、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99である。
本発明で用いている「アルケノールデヒドラターゼ」という用語は、したがって、配列番号1と上で示した程度の配列同一性を示し、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換を触媒することができる酵素を意味する。配列番号1又は対応するヌクレオチド配列をコードする配列を用いることにより、当業者が、上で示した変換を触媒することができるさらなるアルケノールデヒドラターゼを同定することが可能である。
アルケノールデヒドラターゼ、例えば、リナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)のそのような変異体は、下でさらに述べるように、N又はC末端、好ましくはC末端における欠失を示す欠失型異形も含む。付随の実施例に、そのような短縮型異形が上述の変換を触媒する能力を維持していることが示されている。
好ましくは、同一性の程度は、各配列を配列番号1のアミノ酸配列と比較することにより決定する。比較する配列が同じ長さを有さない場合、同一性の程度は、好ましくは、より長い配列におけるアミノ酸残基と同一であるより短い配列におけるアミノ酸残基の百分率又はより短い配列におけるアミノ酸残基と同一であるより長い配列におけるアミノ酸残基の百分率を指す。配列同一性の程度は、好ましくはCLUSTALなどの適切なコンピュータアルゴリズムを用いて当技術分野で周知の方法により決定することができる。
特定の配列が参照配列と、例えば、80%同一であるかどうかを判断するためにClustal解析法を用いる場合、デフォルト設定値を用いてもよく、又は設定値は、好ましくは次の通りである:アミノ酸配列の比較についてマトリックス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;延長ギャップペナルティ:0.05;遅延発散:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列の比較については、延長ギャップペナルティは、好ましくは5.0に設定する。
好ましくは、同一性の程度は、配列の完全な長さにわたって計算する。
さらに、「相同性」という用語を本発明との関連で用いる場合、この用語は、好ましくは「配列同一性」を意味する。
上述のように、カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))において同定された「リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼ」と呼ばれるアルケノールデヒドラターゼは、周辺細胞質腔中への輸送を保証するシグナルペプチドを有する。好ましい実施形態において、本発明による方法は、そのようなシグナル配列を示さない酵素を用いる。hisタグの挿入によるシグナルペプチドの分断は、大腸菌(E. coli)における酵素の発現を妨げず、活性タンパク質の細胞内産生をもたらすことが実施例において示されている。
本発明による方法において用いるリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼは、天然に存在するアルケノールデヒドラターゼであり得る。或いは、それは、例えば、酵素の活性、安定性、特に熱安定性等を例えば変化又は改善させる突然変異又は他の変化を導入することにより、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどの天然に存在するアルケノールデヒドラターゼから得られるアルケノールデヒドラターゼであり得る。
付随の実施例に、リナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)の短縮型異形、好ましくはC末端における欠失を示す短縮型異形も上述の変換を効率的に触媒することが示されている。したがって、「アルケノールデヒドラターゼ」という用語は、欠失、特にC末端における欠失により、リナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)などのアルケノールデヒドラターゼから得られる酵素も含む。より好ましくは、それは、C末端の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基の欠失により、配列番号1に示すアミノ酸配列を示す酵素から得られる酵素である。
本出願との関連で、「リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼ」又は「リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの活性を有するタンパク質/酵素」という用語は、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換を触媒することができるが、それらの天然基質、すなわち、ゲラニオール、リナロール及び/又はミルセンに対する低い親和性を有するにすぎない、或いはそれらの天然基質をもはや受け入れない、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼから得られる酵素も含む。好ましい基質のそのような変化は、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換を改善し、発生する可能性のある望ましくない副産物の生成を低減することを可能にする。タンパク質の所望の酵素活性を修正し、及び/又は改善する方法は、当業者に周知であり、例えば、ランダム突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発及び所望の特性を有する酵素のその後の選択又はいわゆる「指向進化」、DNAシャフリング若しくはin vivo進化などのアプローチを含む。
例えば、原核細胞における遺伝子操作のために、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼをコードする核酸分子をプラスミドに導入することができ、これにより、DNA配列の組換えによる突然変異誘発又は配列の修正が可能になる。標準的な方法(Sambrook及びRussell (2001)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press、Cold Spring Harbor、NY、USA参照)により、塩基交換を行うこと、又は天然若しくは合成配列を加えることが可能である。DNA断片は、断片にアダプター及びリンカーを加えることにより、互いに結合させることができる。さらに、適切な制限部位をもたらす又は余剰のDNA若しくは制限部位を除去する遺伝子操作手段を用いることができる。挿入、欠失又は置換が可能であるそれらの場合、in vitro突然変異誘発、「プライマー修復」、制限又はライゲーションを用いることができる。一般的に、配列解析、制限解析並びに生化学及び分子生物学の他の方法を解析法として実施する。次に、得られるリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼ変異体は、それらの酵素活性について、並びに、特に、例えばゲラニオール、リナロール及び/又はミルセンよりもむしろ、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を基質として選択するそれらの能力について、試験する。
共役ジエン化合物の生成に関して改善された酵素特性を有する変異体を同定するためのそのような方法は、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物が天然基質よりも短いという事実から、酵素の触媒部位における立体的及び/又は電子的補完を可能にする補因子の存在下においても実施することができる。
好ましい実施形態において、本発明による方法において用いられるアルケノールデヒドラターゼは、高い熱安定性を有する。そのような酵素は、例えば、アルケノールデヒドラターゼをコードする核酸配列をランダムに突然変異させ、得られる突然変異体をより高い熱安定性についてスクリーニングすることを含む常用の方法によって得ることができる。好ましくは、アルケノールデヒドラターゼは、68℃以上の温度で安定であり、酵素的に活性である。ジメチルブタジエンの沸点が大気圧で68℃であるので、そのような酵素を用い、本発明による方法を68℃以上の温度で実施することは、ジメチルブタジエンが反応物から気体として排出され、気相から容易に回収することができるという利点がある。
アルケノールデヒドラターゼの改変された異形、例えば、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を基質として受け入れる又は選択するが、その天然基質に対する低い親和性を有する又はその天然基質をもはや受け入れない変異体、或いはより高い熱安定性を有する変異体は、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどの天然に存在するアルケノールデヒドラターゼから、或いは既に改変され、最適化され、又は合成により調製されたアルケノールデヒドラターゼから得ることができる。
本発明による方法は、in vitroで、例えば、単離酵素の又は酵素若しくは部分的に精製された酵素調製物を含む細胞溶解物の存在下で実施することができる。in vitroは、好ましくは無細胞系中を意味する。一つの実施形態において、方法において用いる酵素は、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)に変換するために精製された形態で用いる。しかし、酵素及び基質の製造及び精製の費用が高いため、そのような方法は、費用がかかる可能性がある。
したがって、他の好ましい実施形態において、タンパク質精製費用を節約するために、方法において用いる酵素は、非精製抽出物として、或いは非溶解細菌の形態で反応物中に存在する。しかし、そのような方法に関連する費用は、基質を製造し精製する費用のために、依然としてかなり高い可能性がある。
in vitroでの反応において、天然又は組換え、精製又は未精製の酵素を、酵素が活性であることを可能にする物理化学的条件で基質の存在下でインキュベートし、ジエンの生成を可能にするのに十分な期間にわたりインキュベーションを継続する。インキュベーションの終了時に、そのような化合物の生成を測定するためのガスクロマトグラフィー又は比色試験などの当業者に公知の検出系を用いることにより、ジエン化合物の存在を任意に測定する。
本発明の特に好ましい実施形態においては、方法をin vitroで実施し、酵素を固定化する。種々の担体に酵素を固定化する手段及び方法は、当業者に周知である。
他の好ましい実施形態において、本発明による方法を、酵素を産生する生物、好ましくは微生物の存在下で培養基中で実施する。したがって、本発明のそのような実施形態において、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼを産生する生物、好ましくは微生物を用いる。好ましい実施形態において、(微)生物は、宿主により産生される酵素が産生宿主に対して異種である点で組換え型である。したがって、方法は、酵素を分離又は精製する必要なしに、直接、培養培地中で実施することができる。特に有利な方法で、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を内因的に産生するという天然又は人工的特性を有し、また溶液中に存在する炭素源からジエン化合物を直接産生するように、天然に又は改変されて、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼを発現又は過剰発現する(微)生物を用いる。
例えば、本発明による方法は、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を産生する微生物を用いることにより実施することができる。例えば、Perezら(Phytochemistry 19 (1980)、183〜187頁)は、アリルリン酸を加水分解することができるオレンジ(Citrus sinensis)からの酵素、例えば、プレノール二リン酸をプレノール及び二リン酸に変換することができるプレニルジホスファターゼ(EC3.1.7.1)を記載している。そのような酵素をコードする核酸配列は、プレノールを産生することができるように、対応する基質を産生する微生物に導入することができる。さらに、Withersら(Appl. Environ. Microbiol. 73 (2007)、6277〜6283頁)は、例えば、メバロン酸ベースのイソペンテニルピロリン酸生合成経路を組み込み、枯草菌(Bacillus subtillis)株6051のnudF遺伝子も発現した大腸菌(E. coli)細胞を記載した。nudF遺伝子によりコードされるタンパク質は、プレニル二リン酸前駆体に直接作用し、イソペンテノール(イソプレノール)の産生をもたらす。
したがって、本発明による方法の一つの実施形態において、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を産生することができ、アルケノールデヒドラターゼを(過剰)発現するように遺伝子操作された微生物を使用することが好ましく、前記アルケノールデヒドラターゼは、好ましくは宿主微生物と異なる生物に由来する。遺伝子改変は、例えば、アルケノールデヒドラターゼをコードする対応する遺伝子を染色体に組み込むこと、プロモーター及びコーディング配列が好ましくは異なる生物に由来する、酵素コーディング配列の上流のプロモーターを含むプラスミドから酵素を発現させること、又は当業者に公知の他の方法であり得る。或いは、他の細菌又は酵母は、固有の利点を有する可能性があり、選択され得る。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)などの好極限性細菌、又はクロストリジウム(Clostridiae)科の嫌気性細菌、微小藻類、又は光合成細菌を用いることができる。
一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物の合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子を単離すること、及びこれらの遺伝子を他の生物、特に、例えば、大腸菌(E. coli)、サッカロミセス属(Saccharomyces)若しくはピチア属(Pichia)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)などの好極限性細菌、又はクロストリジウム(Clostridiae)科の嫌気性細菌、微小藻類、又は光合成細菌などの微生物に導入することが考えられる。
好ましい実施形態において、本発明による方法において用いる(微)生物は、アルケノールデヒドラターゼをコードする核酸分子を含むように遺伝子改変されている(微)生物である。上述のようなアルケノールデヒドラターゼをコードする核酸分子は、単独で又はベクターの一部として用いることができる。核酸分子は、核酸分子に含まれるポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列をさらに含み得る。「作動可能なように連結した」又は「作動可能に連結した」という用語は、本説明を通して用いているように、発現制御配列と適合する条件下で発現が達成されるように発現させるポリヌクレオチドにおける1つ又は複数の発現制御配列とコーディング領域との間の連結を意味する。
発現は、異種DNA配列の好ましくは翻訳可能mRNAへの転写を含む。菌類及び細菌における発現を保証する調節エレメントは、当業者に周知である。それらは、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル、標的シグナルなどを含む。ベクターに関する説明に関連して、下でさらに例を示す。
核酸分子に関連して用いるプロモーターは、その起源に関して及び/又は発現させる遺伝子に関して同種又は異種である。適切なプロモーターは、例えば、構成的発現に適するプロモーターである。しかし、外的影響によって決定される時点においてのみ活性化されるプロモーターも用いることができる。人工的及び/又は化学的誘導性プロモーターをこれに関連して用いることができる。
ベクターは、ベクターに含まれる前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列をさらに含み得る。これらの発現制御配列は、細菌及び菌類における転写及び翻訳可能RNAの合成を保証するのに適し得る。
さらに、改変された生物学的特性を場合により有するポリペプチドの合成につながる、分子生物学において通常の方法(例えば、Sambrook及びRussell (2001)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press、Cold Spring Harbor、NY、USA参照)により、種々の突然変異をポリヌクレオチドに挿入することが可能である。例えば、アミノ酸配列の改変がポリペプチドの生物学的活性又は調節に影響を及ぼす位置における、点突然変異の導入が考えられる。
さらに、修飾基質又は生成物特異性を有する突然変異体を作製することができる。好ましくは、そのような突然変異体は、高い活性を示す。さらに、上で定義した酵素をコードするポリヌクレオチドへの突然変異の導入は、前記ポリヌクレオチドによりコードされる酵素の遺伝子発現率及び/又は活性が、例えば、熱安定性に関して最適化されることを可能にする。
細菌又は菌類の遺伝子改変のために、上で定義した酵素又はこれらの分子の一部をコードするポリヌクレオチドをプラスミドに導入することができ、これにより、DNA配列の組換えによる突然変異誘発又は配列改変が可能である。標準的方法(Sambrook及びRussell (2001)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press、Cold Spring Harbor、NY、USA参照)により、塩基交換を実施すること、又は天然若しくは合成配列を付加することが可能である。DNA断片は、断片にアダプター及びリンカーを加えることにより、互いに結合させることができる。さらに、適切な制限部位をもたらす又は余剰のDNA若しくは制限部位を除去する遺伝子操作手段を用いることができる。挿入、欠失又は置換が可能である、それらの場合、in vitro突然変異誘発、「プライマー修復」、制限又はライゲーションを用いることができる。一般的に、配列解析、制限解析並びに生化学及び分子生物学の他の方法を解析法として実施する。
(微)生物に導入されたポリヌクレオチドは、上述の活性を有するポリペプチドの産生をもたらすために発現させられる。種々の発現系の概要は、例えば、Methods in Enzymology 153 (1987)、385〜516頁、Bitterら(Methods in Enzymology 153 (1987)、516〜544頁)及びSawersら(Applied Microbiology and Biotechnology 46 (1996)、1〜9頁)、Billman-Jacobe (Current Opinion in Biotechnology 7 (1996)、500〜4頁)、Hockey (Trends in Biotechnology 12 (1994)、456〜463頁)、Griffithsら(Methods in Molecular Biology 75 (1997)、427〜440頁)に含まれている。酵母発現系の概要は、例えば、Hensingら(Antonie van Leuwenhoek 67 (1995)、261〜279頁)、Bussineauら(Developments in Biological Standardization 83 (1994)、13〜19頁)、Gellissenら(Antonie van Leuwenhoek 62 (1992)、79〜93頁)、Fleer(Current Opinion in Biotechnology 3 (1992)、486〜496頁)、Vedvick (Current Opinion in Biotechnology 2 (1991)、742〜745頁)及びBuckholz (Bio/Technology 9 (1991)、1067〜1072頁)によって示されている。
発現ベクターは、文献に広く記載されている。通例、それらは、選択マーカー遺伝子及び選択された宿主における複製を保証する複製起点だけでなく、細菌又はウイルスプロモーター及び大部分の場合、転写の終結シグナルも含む。プロモーターと終結シグナルとの間には一般的にコーディングDNA配列の挿入を可能にする少なくとも1つの制限部位又はポリリンカーが存在する。対応する遺伝子の転写を天然で制御するDNA配列は、選択される宿主生物において活性である場合、プロモーター配列として用いることができる。しかし、この配列は、他のプロモーター配列のために交換することもできる。遺伝子の構成的発現を保証するプロモーター及び遺伝子の発現の意図的な制御を可能にする誘導プロモーターを用いることが可能である。これらの特性を有する細菌及びウイルスプロモーター配列は、文献に詳細に記載されている。微生物(例えば、大腸菌(E. coli)、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae))における発現のための調節配列は、文献に十分に記載されている。下流配列の特に高い発現を可能にするプロモーターは、例えば、T7プロモーター(Studierら、Methods in Enzymology 185 (1990)、60〜89頁)、lacUV5、trp、trp−lac UV5(DeBoerら、in Rodriguez及びChamberlin(編)、Promoters, Structure and Function;Praeger、New York (1982)、462〜481頁;DeBoerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983)、21〜25頁)、lp1、rac(Borosら、Gene 42 (1986)、97〜100頁)である。誘導プロモーターは、好ましくはポリペプチドの合成のために用いられる。これらのプロモーターは、構成的プロモーターより高いポリペプチド収量をしばしばもたらす。最適量のポリペプチドを得るために、2段階法がしばしば用いられる。最初に、宿主細胞を比較的に高い細胞密度まで最適条件下で培養する。第2の段階で、用いるプロモーターの種類に応じて転写を誘導する。この点について、ラクトース又はIPTG(=イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)により誘導することができるtacプロモーターが特に適している(deBoerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983)、21〜25頁)。転写の終結シグナルも文献に記載されている。
アルケノールデヒドラターゼをコードするコーディング領域は、当業者に公知の方法で改変することができる。例えば、hisタグのようなタンパク質の精製を簡単にするタグを挿入することが可能である(実施例1参照)。さらに、周辺細胞質における局在化を保証し、それにより、タンパク質が細胞内で産生されることを可能にする酵素のシグナル配列を欠失又は分断させることも可能である。培養培地中へのタンパク質の分泌を可能にする分泌シグナルをコーディング領域に結合させることも可能である。
アルケノールデヒドラターゼが他のポリペプチド部分、例えば、他の酵素に融合している融合タンパク質としてアルケノールデヒドラターゼを発現させることも可能である。本発明によるポリヌクレオチド又はベクターによる宿主細胞の形質転換は、例えば、Sambrook及びRussell (2001)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、CSH Press、Cold Spring Harbor、NY、USA;Methods in Yeast Genetics、A Laboratory Course Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1990に記載されているような標準的方法により行うことができる。宿主細胞は、特に、pH値、温度、塩濃度、曝気、抗生物質、ビタミン、微量元素等に関する、用いる特定の宿主細胞の要件に適合する栄養培地中で培養する。
本発明に用いる生物は、原核生物又は真核生物であり得、好ましくは、それらは、微生物である。本発明との関連で、「微生物」という用語は、細菌のみならず、酵母などの菌類も意味し、また藻類及び古細菌も意味する。「微生物」という用語は、植物細胞又は動物細胞も含む。特定の実施形態において、微生物は、細菌である。本発明による方法において用いる好ましい細菌は、バシラス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、チモモナス(Zymomonas)、メチロバクター(Methylobacter)又はエセリキア(Escherichia)属の細菌である。特に好ましい実施形態において、細菌は、エセリキア(Escherichia)属に、より一層好ましくは大腸菌(Escherichia coli)種に属する。他の好ましい実施形態において、細菌は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種に又はチモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)種に又はコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)種に属する。
他の好ましい実施形態において、微生物は、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を内因的に産生し、それを上文で述べたジエン化合物に変換するように改変された、好ましくはエセリキア(Escherichia)属の組換え細菌である。
本発明との関連で、「微生物」という用語は、細菌のみならず、酵母などの菌類も意味し、また藻類及び古細菌も意味する。一つの好ましい実施形態において、微生物は、細菌である。原則として、あらゆる細菌を用いることができる。本発明による方法において用いる好ましい細菌は、バシラス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)、チモモナス(Zymomonas)又はエセリキア(Escherichia)属の細菌である。特に好ましい実施形態において、細菌は、エセリキア(Escherichia)属に、より一層好ましくは大腸菌(Escherichia coli)種に属する。他の好ましい実施形態において、細菌は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種に又はチモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)種に又はコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)種に属する。
他の好ましい実施形態において、微生物は、菌類、より好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)又はピキア(Picha)属の、より一層好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)種の菌類である。
特に好ましい実施形態において、微生物は、組換え菌類、好ましくは一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を産生し、それを上文で述べたジエン化合物に変換する酵母である。
他の好ましい実施形態において、本発明による方法は、アルケノールデヒドラターゼを発現する光合成微生物を使用する。好ましくは、微生物は、光合成細菌又は微小藻類である。より一層好ましくは、そのような微生物は、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を内因的に産生するという天然又は人工的特性を有する。この場合、微生物は、溶液中に存在するCOから直接ジエンを産生することができる。
他の好ましい実施形態において、本発明による方法は、アルケノールデヒドラターゼを発現する多細胞生物を使用する。そのような生物の例は、植物又は動物である。
一つの実施形態において、方法は、標準的培養条件(細菌の好気性生育を可能にする発酵槽中、1気圧で30〜37℃)で微生物を培養することを含む。ブタジエン及びイソプレンは、それぞれ−4℃及び34℃の沸点を有し、34℃又はより高い温度を培養に選択する場合、既に気体状態であることになる。好ましい実施形態において、方法は、非標準的条件下、好ましくは好熱性生物の培養条件に対応するより高い温度で微生物を培養することを含む。この実施形態は、より高い沸点を有するそれらのジエンでさえ、特にジメチルブタジエン(68℃の沸点を有する)が培養基から気体として排出し、気相から容易に収集することができるという利点を有する。したがって、特に、ジメチルブタジエンが生成する本発明による方法のそれらの実施形態において、微生物は、68℃以上の高い温度で培養することができる好熱性微生物である。
さらなる好ましい実施形態において、微生物を使用する本発明による方法は、微生物が担体上に固定化されるように実施する。
さらなる好ましい実施形態において、本発明の方法を微好気的条件で実施する。これは、産生されたジエン化合物を含む気体流出物中の残留酸素濃度を最小限にするために注入空気の量が制限されていることを意味する。
他の好ましい実施形態において、本発明による方法は、産生されたジエンが反応物から気体として排出されるような条件下で実施する。これは、反応の熱力学的平衡が共役ジエンの生成の方向に移動するという利点を有する。方法が気体のジエンを収集するステップをさらに含むことが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、方法は、反応中気体の形態の産生されたジエンを収集するためのシステムの存在下で実施する。
特定の実施形態において、方法は、気相中に存在する産生されたジエン(ブタジエン、イソプレン又はジメチルブタジエン)を検出することも含む。空気又は他の気体の環境中で産生されるジエンの存在は、少量でさえも、様々な技術を用いることにより、特に、赤外若しくはフレームイオン化検出付きのガスクロマトグラフィーシステムを用いることにより、又は質量分析と連結することにより、検出することができる。
本発明はまた、本発明による方法に関連して上文で述べたように、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換のためのリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼを産生する生物の使用に関する。好ましい実施形態において、そのような生物は、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼをコードする少なくとも1つの核酸分子の導入により、遺伝子組換えされているという意味で組換え生物である。好ましくは、そのような核酸分子は、生物に対して異種であり、これは、それが前記生物において天然で存在しないことを意味する。好ましい実施形態において、そのような生物は、一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を産生する生物である。
本発明はまた、本発明による方法に関連して上文で述べたように、一般式C2nOに対応する化合物のC2n−2+HO(式中、3<n<7である。)への変換のためのリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼの使用に関する。
さらに、本発明はまた、アルケノールデヒドラターゼを産生する生物及び一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を含む組成物に関する。本発明はまた、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼなどのアルケノールデヒドラターゼ及び一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する化合物を含む組成物に関する。
列挙した種々の構成要素の好ましい実施形態に関しても、本発明による方法に関連して上文で示したのと同じことが当てはまる。
一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する第一級アリルアルコール(PRA)を図式的に示す図である。特に、基質/系統名/式/カテゴリー/R/R/生成物を示す。 一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する第二級及び第三級アリルアルコール(STA)を図式的に示す図である。基質/系統名/式/カテゴリー/R/R/生成物 一般式C2nO(式中、3<n<7である。)に対応する第一級ホモアリルアルコール(PHA)を図式的に示す図である。基質/系統名/式/カテゴリー/R/R/生成物 本発明の方法による上記のPRA、PHA及びSTA化合物の共役ジエンへの変換に関する概略図である。 リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼにより触媒される反応の概要を示す図である。 カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))由来のリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼのアミノ酸配列を示す図である。 22時間のインキュベーションの後の80mMトランスクロチルアルコールを用いた酵素(黒)及び無酵素(赤)アッセイについて得られたGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 22時間のインキュベーションの後の80mM 3−ブテン−2−オールを用いた酵素(黒)及び無酵素(赤)アッセイについて得られたGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 22時間のインキュベーションの後の80mMイソプレノールを用いた酵素(黒)及び無酵素(青)アッセイについて得られたGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 22時間のインキュベーションの後の80mM 2−メチル−3−ブテン−2−オールを用いた酵素(赤)及び無酵素(黒)アッセイについて得られたGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 実施例7に記載した一連のトランスクロチルアルコール濃度における1,3−ブタジエンの生成の速度論を示す図である。 実施例8に記載した一連のブタ−3−エン−2−オール濃度における1,3−ブタジエンの生成の速度論を示す図である。 18時間のインキュベーションの後の50mMブタ−3−エン−1−オールを用いた酵素(赤)及び無酵素(黒)アッセイから得られたGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 6時間のインキュベーションの後の160mM 2−メチルブタ−3−エン−2−オールを用いた酵素(赤)及び無酵素(黒)アッセイから得られた代表的なGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 1時間のインキュベーションの後の50mM 3−メチルブタ−3−エン−2−オールを用いた酵素(赤)及び無酵素(黒)アッセイから得られた代表的なGC/FIDクロマトグラムを示す図である。 クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換の全反応及びブタ−3−エン−2−オールの1,3−ブタジエンへの脱水反応におけるリナロールデヒドラターゼの短縮型異形の活性をそれぞれ示す図である。 クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換の全反応及びブタ−3−エン−2−オールの1,3−ブタジエンへの脱水反応におけるリナロールデヒドラターゼの短縮型異形の活性をそれぞれ示す図である。 組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼがシス−又はトランス−クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換を触媒することができることを示す図である。
本発明の他の態様及び利点について、以下の実施例に記載するが、これらの実施例は、例示目的で示すものであって、限定のためのものではない。
リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの遺伝子の大腸菌(E. coli)におけるクローニング及び発現
クローニング及び細菌培養
カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))のゲノムから推測されたリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの配列を、大腸菌(E. coli)のコドン使用頻度に適合するようにオリゴヌクレオチド連結により発生させた。精製のための親和性タグを得るために6ヒスチジンコドンのストレッチをメチオニン開始コドンの後に挿入した。このようにして合成した遺伝子をpET25b(+)発現ベクター(ベクターはGeneArt AGにより構築された)にクローニングした。コンピテント大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)を熱ショック法によりこのベクターで形質転換させた。陰性対照として、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)株を空のベクターで形質転換させた。形質転換細胞をZYM−5052自己誘導培地(Studier FW、Prot. Exp. Pur. 41 (2005)、207〜234頁)上で振とう(160rpm)しながら37℃で6時間生育させ、タンパク質発現を18℃で一夜(約12時間)継続させた。4℃、10,000rpmで20分間の遠心分離により細胞を収集し、ペレットを−80℃で凍結した。
細胞溶解物の調製
100mlの培養細胞からのペレットを氷上で解凍し、4mlの50mM Tris−HCl pH7.5に再懸濁した。次いで、10μlのリソナーゼ(Novagen)を加えた。細胞を室温で10分間インキュベートし、次いで、氷に20分間戻した。Bradford法(Biorad)を用いて、タンパク質濃度を測定した。
(2E)−2−ブテン−1−オール(トランスクロチルアルコール)からの1,3−ブタジエンの生成
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris HCl pH7.5
2mM D,L−ジチオトレイトール
0〜80mM(2E)−2−ブテン−1−オール(トランスクロチルアルコール)
pHを7.5に調整した
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.25mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2mlの密封ガラスバイアル(Interchim)中で振とうしながら37℃で1〜22時間インキュベートした。次いで、1mlのヘッドスペース相を採取し、フレームイオン化検出器(FID)を装着したガスクロマトグラフVarian 450−GCに注入した。窒素を1.5ml/分の流量のキャリヤーガスとして用いた。揮発性化合物は、130℃における等温モードを用いてRt−Alumina Bond/NaSOカラム(Restek)でクロマトグラフィーにより分離した。酵素反応生成物は、1,3−ブタジエン標準(Sigma)との比較により同定した。これらのGC条件下では、ブタジエンの保持時間は、7.6分であった。1,3−ブタジエンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを用いた酵素アッセイで認められた。無酵素対照アッセイではブタジエンシグナルは認められなかった(図7)。この変換のターンオーバー数は、酵素活性部位当たりの基質分子で、約3×10−5−1に達した。
3−ブテン−2−オールからの1,3−ブタジエンの生成
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris HCl pH7.5
2mM D,L−ジチオトレイトール
0〜80mM 3−ブテン−2−オール
pHを7.5に調整した
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.25mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2mlの密封ガラスバイアル(Interchim)中で振とうしながら37℃で1〜22時間インキュベートした。1,3−ブタジエンの生成は、実施例2で述べたようにGC/FID法により分析した。1,3−ブタジエンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを用いた酵素アッセイで認められた。無酵素対照アッセイではブタジエンシグナルは認められなかった(図8)。この変換のターンオーバー数は、酵素活性部位当たりの基質分子で、約10−4−1に達した。同様の実験をR及びS純鏡像体ブタ−3−エン−2−オールも用いて行ったところ、同様の結果が認められた。
3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)からの2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の生成
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris HCl pH7.5
2mM D,L−ジチオトレイトール
0〜80mM 3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)
pHを7.5に調整した
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.25mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2.0mlの密封ガラスバイアル(Interchim)中で振とうしながら37℃で1〜22時間インキュベートした。次いで、100μlのヘッドスペース相を採取し、フレームイオン化検出器(FID)を装着したガスクロマトグラフVarian 450−GCに注入した。ヘッドスペース相からの揮発性化合物を、1.5ml/分の流量のキャリヤーガスとして窒素を用いてRtx−1カラム(Restek)で分離した。各試料のオーブンサイクルは、100℃で4分間、130℃の温度まで20℃/分で昇温、130℃で1.5分間保持であった。総稼働時間は、7分であった。酵素反応生成物は、イソプレン標準(Sigma)との比較により同定した。これらのGC条件下では、イソプレンの保持時間は、3.08分であった。イソプレンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを用いた酵素アッセイで認められた。プレノールの自然分解に対応するイソプレンのわずかなシグナルが無酵素対照アッセイで認められた(表1)。この変換のターンオーバー数は、酵素活性部位当たりの基質分子で、約3×10−4−1に達した。
3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)からの2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の生成
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris HCl pH7.5
2mM D,L−ジチオトレイトール
0〜80mM 3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)
pHを7.5に調整した
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.25mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2mlの密封ガラスバイアル(Interchim)中で振とうしながら37℃で1〜22時間インキュベートした。イソプレンの生成は、実施例4で述べたようにGC/FID法により分析した。イソプレンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを用いた酵素アッセイで認められた。無酵素対照アッセイではイソプレンシグナルは認められなかった(図9)。この変換のターンオーバー数は、酵素活性部位当たりの基質分子で、約3×10−5−1に達した。
2−メチル−3−ブテン−2−オールからの2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の生成
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris HCl pH7.5
2mM D,L−ジチオトレイトール
0〜80mM 2−メチル−3−ブテン−2−オール
pHを7.5に調整した
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.25mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2mlの密封ガラスバイアル(Interchim)中で振とうしながら37℃で1〜22時間インキュベートした。イソプレンの生成は、実施例4で述べたようにGC/FID法により分析した。イソプレンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを用いた酵素アッセイで認められた。無酵素対照アッセイではイソプレンシグナルは認められなかった(図10)。この変換のターンオーバー数は、酵素活性部位当たりの基質分子で、約10−3−1に達した。
(E)−ブタ−2−エン−1−オール(トランスクロチルアルコール)からの1,3−ブタジエンの生成の速度論
細胞溶解及び上清の調製
以下の修正を加えた実施例1で述べた手順に従って細胞溶解物を調製した。200mlの培養細胞から得られたペレットを氷上で解凍し、4mM D,L−ジチオトレイトール、20mMグルタチオン、25mM MgCl及び25mM KClを添加した3mlの50mM Tris−HCl pH7.5に再懸濁した。次いで10μlのリソナーゼ(Merck)を加えた。細胞を室温で10分間インキュベートし、次いで氷に20分間戻した。4℃で13000rpmで10分間遠心分離することにより、細胞溶解物を清澄化した。収集した上清をAmicon Ultra−4 10kDaフィルターユニット(Millipore)で濃縮した。上清のSDS−PAGE分析により、リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの発現レベルを推定した。総タンパク質濃度は、Bradford法(Biorad)を用いて測定した。
酵素アッセイ
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris−HCl pH7.5
0〜160mM トランスクロチルアルコール(Alfa Aesar)
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.2〜0.4mlの上清を0.5mlの反応混合物に加えた。アッセイにおけるリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの濃度は、約1.2mg/mlであった。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の上清を含む無酵素対照反応を並行して実施した。反応物を2ml密封ガラスバイアル(Interchim)中で37℃で振とうしながらインキュベートした。アッセイチューブを−80℃で凍結することにより、反応を停止させた。ブタジエンの生成は、5.5時間のインキュベーション期間にわたって採取した試料の一部を分析することにより測定した。生成した1,3−ブタジエンの量は、実施例2で述べた手順に従ってガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量した。図11に一連のトランスクロチルアルコール濃度における1,3−ブタジエンの生成の速度論を示す。
ブタ−3−エン−2−オールからの1,3−ブタジエンの生成の速度論
実施例7で述べた手順に従って、組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む清澄化細胞溶解物を調製した。
酵素アッセイ
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris−HCl pH7.5
0〜160mM ブタ−3−エン−2−オール(Sigma−Aldrich)
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.2〜0.4mlの上清を0.5mlの反応混合物に加えた。アッセイにおけるリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの濃度は、約1.2mg/mlであった。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の上清を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2ml密封ガラスバイアル(Interchim)中で37℃で振とうしながらインキュベートした。アッセイチューブを−80℃で凍結することにより、反応を停止させた。ブタジエンの生成は、5.5時間のインキュベーション期間にわたって採取した試料の一部を分析することにより測定した。生成した1,3−ブタジエンの量は、実施例2で述べた手順に従ってガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量した。図12に一連のブタ−3−エン−2−オール濃度における1,3−ブタジエンの生成の速度論を示す。
ブタ−3−エン−1−オール(イソクロチルアルコール)からの1,3−ブタジエンの生成
細胞溶解物の調製
以下の修正を加えた実施例1で述べた手順に従って細胞溶解物を調製した。200mlの培養細胞から得られたペレットを氷上で解凍し、4mM D,L−ジチオトレイトール、20mMグルタチオン、25mM MgCl及び25mM KClを添加した3mlの50mM Tris−HCl pH7.5に再懸濁した。次いで10μlのリソナーゼ(Merck)を加えた。細胞を室温で10分間インキュベートし、次いで氷に20分間戻した。
酵素アッセイ
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris−HCl pH7.5
50mM ブタ−3−エン−1−オール(Sigma)
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.4mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2ml密封ガラスバイアル(Interchim)中で37℃で振とうしながら18時間インキュベートした。次いで、1mlのヘッドスペース相を採取し、フレームイオン化検出器(FID)を装着したガスクロマトグラフVarian 450−GCに注入した。窒素を6ml/分の流量のキャリヤーガスとして用いた。揮発性化合物は、130℃における等温モードを用いてJ&W GS−Alumina(30m×0.53mmID)カラム(Restek)でクロマトグラフィーにより分離した。酵素反応生成物は、1,3−ブタジエン標準(Sigma−Aldrich)との比較により同定した。これらのGC条件下では、ブタジエンの保持時間は、3.05分であった。1,3−ブタジエンがリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの存在下での酵素アッセイで生成し、無酵素対照アッセイではブタジエンシグナルは認められなかった(図13)。
2−メチルブタ−3−エン−2−オールからの2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の生成
他のラウンドの実験中に、実施例6で試験した反応を再現させ、結果を確認した。正確なアッセイ条件は、以下の通りであった。
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む清澄化細胞溶解物を実施例7で述べた手順に従って調製した。
酵素アッセイ
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris−HCl pH7.5
160mM 2−メチルブタ−3−エン−2−オール(Sigma)
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.2〜0.4mlの上清を0.5mlの反応混合物に加えた。アッセイにおけるリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの濃度は、約1.2mg/mlであった。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の上清を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2ml密封バイアル(Interchim)中で37℃で振とうしながら6時間インキュベートした。アッセイチューブを−80℃で凍結することにより、反応を停止させた。
次いで、1mlのヘッドスペース相を採取し、フレームイオン化検出器(FID)を装着したガスクロマトグラフVarian 450−GCに注入した。窒素を1.5ml/分の流量のキャリヤーガスとして用いた。揮発性化合物は、155℃における等温モードを用いてRt−Alumina Bond/NaSOカラム(Restek)でクロマトグラフィーにより分離した。酵素反応生成物は、イソプレン標準(Sigma−Aldrich)との比較により同定した。これらのGC条件下では、イソプレンの保持時間は、7.5分であった。
イソプレンのかなりの生成がリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの存在下での酵素アッセイの構成で認められた。無酵素対照アッセイではイソプレンシグナルは認められなかった(図14)。
3−メチルブタ−3−エン−2−オールからの2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の生成
細胞溶解物の調製
以下の修正を加えた実施例1で述べた手順に従って細胞溶解物を調製した。200mlの培養細胞から得られたペレットを氷上で解凍し、4mM D,L−ジチオトレイトール、20mMグルタチオン、25mM MgCl及び25mM KClを含む3mlの50mM Tris−HCl pH7.5に再懸濁した。次いで10μlのリソナーゼ(Merck)を加えた。細胞を室温で10分間インキュベートし、次いで氷に20分間戻した。
酵素アッセイ
酵素アッセイを以下の条件下で実施した。
50mM Tris−HCl pH7.5
50mM 3−メチルブタ−3−エン−2−オール(Sigma−Aldrich)
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む0.45mlの細胞溶解物を0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含む無酵素対照反応を並行して実施した。アッセイ対象物を2ml密封ガラスバイアル(Interchim)中で37℃で振とうしながら1時間インキュベートした。次いで、1mlのヘッドスペース相を採取し、フレームイオン化検出器(FID)を装着したガスクロマトグラフVarian 450−GCに注入した。窒素を6ml/分の流量のキャリヤーガスとして用いた。揮発性化合物は、150℃における等温モードを用いてJ&W GS−Alumina(30m×0.53mmID)カラム(Restek)でクロマトグラフィーにより分離した。酵素反応生成物は、イソプレン標準(Sigma−Aldrich)との比較により同定した。これらのGC条件下では、イソプレンの保持時間は、3.85分であった。かなりの量のイソプレンがリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの存在下での酵素アッセイで生成し、3−メチルブタ−3−エン−2−オールの自然分解に対応するイソプレンのわずかなシグナルが無酵素対照アッセイで認められた(図15、表2)。
リナロールデヒドラターゼの短縮型変異体:クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換の全反応及びブタ−3−エン−2−オールの1,3−ブタジエンへの脱水反応に関する活性
リナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの活性及び溶解度の改善を探求する様々なスクリーニングが、C末端部分が短縮している酵素の9種の変異体の集合の同定につながった。野生型全長酵素は、配列番号1に示すM1−K397に相当する。観測された短縮型異形は、配列番号1に示すM1−L385、M1−R386、M1−P388、M1−P389、M1−A391、M1−K393、M1−L394、M1−A395及びM1−G396である。これらのC末端短縮型異形において、タンパク質の長さのみが変更され、タンパク質配列の残りの部分は未変化のままである。最短の変異体(M1−L385)は、96.9%の同一性を有する。
活性は、以下のアッセイにより試験した。
本アッセイを以下のように構成した。市販のpET25b+発現ベクターにクローニングしたリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼC末端短縮型変異体の集合をBL21(DE3)コンピテント細胞に形質転換した。単離クローンを用いて、1mlの自己誘導培地(Studier FW、Prot.Exp.Pur. 41、(2005)、207〜234頁)に接種し、700rpm及び85%の湿度に設定した振とうインキュベーター中で30℃で一夜20〜22時間生育した。細胞をペレットにし、−80℃で一夜保存した。発現組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼ変異体を含むこれらの細胞ペレットを50mM Tris−HCl pH7.5、25mM KCl、25mM MgCl2、4mM DTT、10mMグルタチオンと50mMトランスクロチルアルコール(Alfa Aesar)又は50mM ブタ−3−エン−2−オール(Sigma Aldrich)を含む反応混合物に再懸濁した。対照反応は、空の発現ベクターpeT25b+又は野生型酵素を発現する発現ベクターを含む細菌クローンを用いて開始した。この反応混合物を37℃で16時間インキュベートし、80℃で5分間のインキュベーションにより反応を停止させた。次いで、生成した1,3−ブタジエンの量をガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量した。GCヘッドスペース分析のために、300μlのヘッドスペースガスを、Restek RT−Aluminaカラム(5m×0.32mm)及びフレームイオン化検出システム(FID)を装着したBruker GC450システムに注入した。1,3−ブタジエンを検出するために用いたGC分析法は、140℃の一定オーブン温度、200℃の注入器ポート温度と1:4のスプリット比及び250℃のFID検出器温度により特徴づけられる。窒素をキャリヤーガス(1.25ml/分の一定流量)として用い、空気(空気流量300ml/分)、窒素(28ml/分の流量)及び水素(30ml/分の流量)の混合物をFID検出システムに供給するために用いた。
クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換の全反応及びブタ−3−エン−2−オールの1,3−ブタジエンへの脱水反応に関するリナロールデヒドラターゼの上記の短縮型異形の活性をそれぞれ図16に示す。
組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼはクロチルアルコールのシス及びトランスクロチルアルコール立体異性体の1,3−ブタジエンへの変換を触媒する 組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼをコードする遺伝子を市販のNovagen peT−25b+細菌発現ベクターにサブクローニングし、BL21(DE3)コンピテント細胞に形質転換し、適切な抗生物質を添加したLB寒天プレート上に沈着させた。BL21(DE3)コンピテント細胞を、後の酵素アッセイに陰性対照として用いるためにpeT−25b+ベクターによっても形質転換した。単一形質転換体を用いて、500mlの自己誘導培地(Studier F. W.、2005;上記文献中)に接種し、培養基を振とうインキュベーター中で30℃で一夜インキュベートした。細胞ペレットを、50μlのMerck Novagenリソナーゼを添加した7.5mlの溶解緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、4mM DTT、25mM MgCl、25mM KCl)に再懸濁する前に−80℃で一夜保存した。細胞懸濁液を室温で10分間、その後、氷上で20分間インキュベートした。次いで、細胞溶解物を遠心分離により清澄化し、上清をろ過濃縮機(Amicon Ultra−Millipore)を用いて2倍に濃縮した。濃縮可溶性画分中に存在する組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼの量を、ゲルデンシトメトリーを用いてSDS−PAGEゲル上でウシ血清アルブミン校正曲線と対照して推定した。酵素反応は、225μlの細胞溶解物上清、250μlの最終反応容積中0〜100mMの範囲のトランス−クロチルアルコール(Alfa Aesar)又はシス−クロチルアルコール(ChemSampCo)、4mM DTT、25mM MgCl2、25mM KCl、4mMグルタチオン及び50mM Tris−Cl pH7.5を含む2mlガラスバイアル(Interchim)中で開始した。酵素反応は、組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼを含む細胞溶解物又は空の発現ベクターで形質転換した細胞から得られた細胞溶解物を用いて開始した。バイアルを密封し、37℃で4時間インキュベートした。80℃で5分間インキュベートすることによって酵素反応を停止させ、反応ヘッドスペース中に存在する1,3−ブタジエンをガスクロマトグラフィー(GC)により定量した。GCヘッドスペース分析のために、300μlのヘッドスペースガスを、Restek RT−Aluminaカラム(5m×0.32mm)及びフレームイオン化検出システム(FID)を装着したBruker GC450システムに注入した。1,3−ブタジエンを検出するために用いたGC分析法は、140℃の一定オーブン温度(等温モード)、200℃の注入器ポート温度と1:4のスプリット比及び250℃のFID検出器温度により特徴づけられる。窒素をキャリヤーガス(1.25ml/分の一定流量)として用い、空気(空気流量300ml/分)、窒素(28ml/分の流量)及び水素(30ml/分の流量)の混合物をFID検出システムに供給するために用いた。酵素反応生成物は、1,3−ブタジエン標準(Sigma−Aldrich)との比較により同定した。これらのGC条件下では、ブタジエンの保持時間は、1.05分である。図17に組換えリナロールデヒドラターゼ−イソメラーゼがシス−又はトランス−クロチルアルコールの1,3−ブタジエンへの変換を触媒することができることが示されている。無酵素対照反応では有意な1,3−ブタジエンシグナルは認められなかった。

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
アルケノールデヒドラターゼを使用することにより、一般式C 2n Oに対応する化合物をC 2n−2 +H O(式中、3<n<7である)に酵素的に変換するステップを含むことを特徴とする、共役ジエンの製造方法。
[2]
前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物が、式Iの第一級アリルアルコール(PRA)である、[1]に記載の方法。
[式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
[3]
前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物が、式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)である、[1]に記載の方法。
[式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
[4]
前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物が、式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)である、[1]に記載の方法。
[式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
[5]
in vitroで実施される、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記方法は、アルケノールデヒドラターゼを産生する微生物を使用することにより実施されることを特徴とする、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記微生物が、一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物を産生することができる、[6]に記載の方法。
[8]
一般式C 2n Oに対応する化合物をC 2n−2 +H O(式中、3<n<7である)に変換するための、アルケノールデヒドラターゼ又はアルケノールデヒドラターゼを産生する微生物の使用。
[9]
アルケノールデヒドラターゼを産生する生物及び一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物を含む組成物。
[10]
アルケノールデヒドラターゼ及び一般式C 2n O(式中、3<n<7である)に対応する化合物を含む組成物。
[11]
前記アルケノールデヒドラターゼがリナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)である、[1]から[7]のいずれかに記載の方法、[8]に記載の使用又は[9]若しくは[10]に記載の組成物。
[12]
前記アルケノールデヒドラターゼが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも30%同一であるアミノ酸配列を含み、一般式C 2n Oに対応する化合物をC 2n−2 +H O(式中、3<n<7である)に変換する酵素活性を示すタンパク質である、[1]から[7]若しくは[11]のいずれかに記載の方法、[8]若しくは[11]に記載の使用又は[9]、[10]若しくは[11]に記載の組成物。
[13]
nが4であり、生成するジエン化合物がブタジエンである、[1]から[7]、[11]若しくは[12]のいずれかに記載の方法又は[8]、[11]若しくは[12]に記載の使用、あるいはnが4である、[9]、[10]、[11]若しくは[12]に記載の組成物。
[14]
nが5であり、生成するジエン化合物がイソプレンである、[1]から[7]、[11]若しくは[12]のいずれかに記載の方法又は[8]、[11]若しくは[12]に記載の使用、あるいはnが5である、[9]、[10]、[11]若しくは[12]に記載の組成物。
[15]
nが6であり、生成するジエン化合物がジメチルブタジエンである、[1]から[7]、[11]若しくは[12]のいずれかに記載の方法又は[8]、[11]若しくは[12]に記載の使用、あるいはnが6である、[9]、[10]、[11]若しくは[12]に記載の組成物。

Claims (19)

  1. アルケノールデヒドラターゼを使用することにより、一般式C2nOで表される化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である)に酵素的に変換するステップを含み、
    前記アルケノールデヒドラターゼがリナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)であり、
    前記アルケノールデヒドラターゼが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、
    前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)で表される化合物が、
    式Iの第一級アリルアルコール(PRA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    または
    式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    であることを特徴とする、共役ジエンの製造方法。
  2. in vitroで実施される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法は、アルケノールデヒドラターゼを産生する微生物を使用することにより実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記微生物が、一般式C2nO(式中、3<n<7である)で表される化合物を産生することができる、請求項に記載の方法。
  5. 一般式C2nOで表される化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である)に変換するための、アルケノールデヒドラターゼ又はアルケノールデヒドラターゼを産生する微生物の使用であって、
    前記アルケノールデヒドラターゼがリナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)であり、
    前記アルケノールデヒドラターゼが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、
    前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)で表される化合物が、
    式Iの第一級アリルアルコール(PRA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    または
    式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    である、使用。
  6. アルケノールデヒドラターゼを産生する生物及び一般式C2nO(式中、3<n<7である)で表される化合物を含む組成物であって、前記アルケノールデヒドラターゼがリナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)であり、
    前記アルケノールデヒドラターゼが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み
    前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)で表される化合物が、
    式Iの第一級アリルアルコール(PRA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    または
    式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    である、組成物
  7. アルケノールデヒドラターゼ及び一般式C2nO(式中、3<n<7である)で表される化合物を含む組成物であって、
    前記アルケノールデヒドラターゼがリナロールデヒドラターゼ(EC4.2.1.127)であり、
    前記アルケノールデヒドラターゼが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、
    前記一般式C 2n O(式中、3<n<7である)で表される化合物が、
    式Iの第一級アリルアルコール(PRA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    式IIの第二級又は第三級アリルアルコール(STA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    または
    式IIIの第一級ホモアリルアルコール(PHA)
    [式中、R 及びR は、H及びCH から独立に選択される。]
    である、組成物。
  8. 前記アルケノールデヒドラターゼが、一般式C2nOで表される化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である)に変換する酵素活性を示すタンパク質である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  9. nが4であり、生成するジエン化合物がブタジエンである、請求項1からおよびのいずれか一項に記載の方法。
  10. nが5であり、生成するジエン化合物がイソプレンである、請求項1からおよびのいずれか一項に記載の方法。
  11. nが6であり、生成するジエン化合物がジメチルブタジエンである、請求項1からおよびのいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記アルケノールデヒドラターゼが、一般式C2nOで表される化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である)に変換する酵素活性を示すタンパク質である、請求項に記載の使用。
  13. nが4であり、生成するジエン化合物がブタジエンである、請求項または12に記載の使用。
  14. nが5であり、生成するジエン化合物がイソプレンである、請求項または12に記載の使用。
  15. nが6であり、生成するジエン化合物がジメチルブタジエンである、請求項または12に記載の使用。
  16. 前記アルケノールデヒドラターゼが、一般式C2nOで表される化合物をC2n−2+HO(式中、3<n<7である)に変換する酵素活性を示すタンパク質である、請求項またはに記載の組成物。
  17. nが4である、請求項または16に記載の組成物。
  18. nが5である、請求項または16に記載の組成物。
  19. nが6である、請求項または16に記載の組成物。

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