JP6512718B2 - 試料中のセレンおよびケイ素の検出および定量化のためのシステムおよび方法 - Google Patents

試料中のセレンおよびケイ素の検出および定量化のためのシステムおよび方法 Download PDF

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Description

(優先権)
本出願は、2014年5月1日に出願された「Systems and Methods for Detection and Quantification of Selenium and Silicon in Samples」と題する米国仮特許出願番号第61/987,429号に基づく優先権およびその利益を主張しており、この仮特許出願の内容はその全体が参考として本明細書中に援用される。
(技術分野)
本発明は、一般に、試料の組成分析に関する。特定の実施形態では、本発明は、試料中のセレン(Se)および/またはケイ素(Si)を検出および定量化するためのシステムおよび方法に関する。
(背景)
質量分析法(MS)は、定量的および定性的用途の両方を有する、未知の試料物質の元素組成を判定するための分析技法である。例えば、MSは、未知の物質を同定する、分子中の元素の同位体組成を判定する、およびその断片化を観察することによって特定の物質の構造を判定するために、ならびに試料中の特定の物質の量を定量化するために有用である。質量分析計は、典型的には、多くの異なる利用可能な方法の1つを使用して試験試料をイオン化して、正に荷電した粒子のストリーム、すなわち、イオンストリームを形成することによって作動する。次いでイオンストリームは、質量鑑別(時間または空間における)に付されて、質量対電荷(m/z)比によってイオンストリーム中の異なる粒子集団が分離される。下流の質量分析器は、目的の分析データ、例えば、異なる粒子の集団の相対濃度、生成物または断片イオンの質量対電荷比、および他の潜在的に有用な分析データを計算するために質量鑑別された粒子集団の強度を検出することができる。
質量分析法では、目的のイオン(「分析物イオン」)は、分析物イオンと実質的に同じ名目上のm/z比を有する他の望まれないイオン集団(「干渉物(interferer)イオン」)とイオンストリーム中に共存し得る。一部の場合では、干渉物イオンのm/z比は、同一ではないが、それが質量分析器の分解能の範囲内に入る分析物イオンのm/z比に十分近く、それによって質量分析器が2つのタイプのイオンを区別することができないようにする。質量分析器の分解能の改善は、このタイプの干渉(一般に「同重体」または「スペクトル干渉」と呼ばれる)に対処する一手法である。しかし、より高い分解能の質量分析器は、質量分解能が増大するにつれてより遅い抽出速度を有し、重要なイオン信号を失う傾向がある。さらに、達成可能な分解能に対する限界に直面する場合もある。
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)は、微量元素分析を実施するために最適な計測器として世界中の研究所に支持を得てきている。ICP−MS計測器の検出限界は、周期表の多くについて、1パートパービリオン(ppb)レベル、またはそれ未満であり、分析動作範囲は、9桁であり、生産性は、他の技法より優れており、同位体分析を容易に実現することができる。ICP−MS計測装置で実施されるほとんどの分析は、定量的であるが、ICP−MSは、半定量的分析および定性分析を同様に実施することができ、例えば、80の検出可能な、鑑別可能な元素のいずれも検出および/または定量化することによって未知の分析物を同定および/または定量化する。
ICP−MS分析では、試料は、典型的には、エアロゾル液滴としてアルゴンプラズマ中に導入される。プラズマは、エアロゾルを乾燥させ、分子を解離させ、次いでコンポーネントから電子を取り出し、それによって一価イオンを形成し、これらは、質量分析計として公知の質量フィルタリングデバイスへと向けられる。ほとんどの市販のICP−MSシステムは、質量範囲を迅速にスキャンする四重極質量分析計を用いる。任意の所定の時間において、ただ1つの質量対電荷(m/z)比が、入口から出口へと質量分析計を通過することが許可されることになる。質量分析計を出た後、イオンは、検出器として機能を果たす電子増倍管の第1のダイノードに打ち当たる。イオンの衝撃により、電子のカスケードが放出され、これらは、測定可能なパルスとなるまで増幅される。測定されるパルスの強度は、特定の元素の較正曲線を構成する標準物質と比較されて、試料中のその元素の濃度が判定される。
ほとんどのICP−MS計測器は、以下のコンポーネントを含む:ネブライザーおよびスプレーチャンバーから構成される試料導入システム;イオン源として機能を果たすアルゴンプラズマを発生させるためのICPトーチおよびRFコイル;大気圧ICPイオン源を高減圧質量分析計につなぐインターフェース;イオン光学系、四重極、および検出器に高減圧をもたらす減圧システム;質量分析計に先行し、達成可能な検出限界を劣化させ得る干渉を除去するために使用される衝突/反応セル;中性種および光子がイオンビームから除かれるのを保証しながら四重極へと所望のイオンを導くイオン光学系;イオンをこれらの質量対電荷比(m/z)によって選別する質量フィルターとして作用する質量分析計;四重極を出る個々のイオンを計数する検出器;ならびに最終濃度結果を得ることに使用するための計測器制御およびデータ処理の態様を制御するデータ処理およびシステム制御装置。
誘導結合プラズマイオン源では、3つの同心管、典型的には石英を含むトーチの端部が、高周波電流を供給される誘導コイル中に配置される。次いでアルゴンガスの流れをトーチの2つの最外側の管の間に導入することができ、そこでアルゴン原子は、誘導コイルの高周波磁場と相互作用してアルゴン原子から電子を解放することができる。この作用は、ほんのわずかのアルゴンイオンおよび自由電子を伴ってほとんどアルゴン原子から構成される高温(おそらく10,000K)プラズマを生成する。次いで分析物試料が、例えば、液体の霧状ミストとしてアルゴンプラズマを通過させられる。霧状試料の液滴は蒸発し、液体中に溶解した任意の固体は、原子へと分解され、プラズマ中の極めて高い温度に起因して、これらの最も緩く結合した電子が剥がされて一価イオンを形成する。
したがって、ICPイオン源によって発生するイオンストリームは、目的の分析物イオンに加えて、高濃度のアルゴンおよびアルゴンベーススペクトル干渉イオンを含有することが多い。例えば、より一般的なスペクトル干渉イオンの一部は、Ar、ArO、Ar 、ArCl、ArH、およびMAr(式中、Mは、試料がイオン化のために懸濁されるマトリックス金属を表す)を含み、他のスペクトル干渉イオン、例えば、N 、CO、ClO、MOなども含み得る。グロー放電およびエレクトロスプレーイオン源を含めた他のタイプのイオン源も、無視できない濃度のスペクトル干渉イオンを生成し得る。
分析物イオンと干渉物イオンとを区別するために高分解能質量分析器を使用することは別として、イオンストリーム中のスペクトル干渉の効果を軽減する別のやり方は、質量分析段階の上流で干渉物イオンを選択的に排除することである。一手法によれば、イオンストリームは、分析物イオンに対して実質的に不活性なままでありながら望まれない干渉物イオンと反応性である選択されたガスで満たされた、反応セルまたは四重極がセルとして使用される場合の動的反応セル(DRC)と呼ばれる加圧されたセルを通過させることができる。イオンストリームが反応セル中の反応ガスと衝突するにつれて、干渉物イオンは、分析物イオンと実質的に同じまたは同様の質量対電荷(m/z)比をもはや有さない生成物イオンを形成する。代替手法では、ガスは、望まれない干渉物イオンに対して実質的に不活性なままでありながら、分析物イオンと反応性である。例えば、分析物イオンは、望まれない干渉物イオンと実質的に同じ質量対電荷(m/z)比をもはや有さない、反応ガスとの生成物イオンを選択的に形成し得る。これは、「質量シフト」手法と呼ばれ、分析物イオンは、より高い、干渉を含まないm/z比でその対応する生成物イオンとして検出される。
生成物イオンの質量対電荷(m/z)比が分析物のものと実質的に異なる場合、慣例的な質量フィルタリングをセルに適用して、分析物イオンの流れを著しく破壊することなく生成物干渉物イオンを排除することができる。したがって、イオンストリームをバンドパス質量フィルターにかけて、分析物イオンのみをかなりの割合で質量分析段階に送ることができる。干渉物イオンを排除するためのDRCなどの反応セルの使用は、例えば、米国特許第6,140,638号;同第6,627,912号;および同第6,875,618号に記載されている。これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
一般に、反応セルは、目的の分析物に応じてパーツパートリリオン(ppt:一兆分率)または一兆分率以下の程度でさえの極めて低い検出限界をもたらし得る。同じ同位体について、ある特定の制限事項または制約が反応セルに課される。一例を挙げると、反応ガスは、干渉物イオンのみと反応性であり、分析物と反応性であってはならない(または分析物のみと反応性であり、干渉物イオンと反応性であってはならない)ので、反応セルは、目的の分析物イオンに感受性である。異なる反応ガスが、異なる分析物に用いられる必要があり得る。他の場合では、特定の分析物にとって公知の適当な反応ガスがない場合がある。一般に、すべてのスペクトル干渉に対処するために単一の反応ガスを使用することは可能でないかも知れない。
セレン(Se)は、低レベル、典型的には1リットル当たり20から80マイクログラム(μg/L)の間において人の健康にとって必須な元素であるが、上昇したレベルで有毒となる。さらに、セレンは、その毒性および生物学的利用能に影響する異なる形態で存在する。特に非常に低いレベルの濃度における様々な形態のセレンの濃度を判定することにおいて利益がある。
ICP−MSは、試料中のセレン種およびセレン含有化合物を検出および定量化するのに使用されている。しかし、従来の四重極ICP−MSを用いると、セレンの最も豊富な同位体、80Seを、同じ質量対電荷比(m/z)で存在するアルゴンプラズマに由来する干渉性40Ar 二量体に起因して判定のために使用することができない。結果として、セレンは通常、わずか8.7%の存在量である82Se同位体を使用して判定される。これは、従来のICP−MSを使用して0.5〜10μg/Lの範囲にセレンについての検出能力を制限する。
セレン検出の改善は、反応ガスとして例えばメタン(CH)を使用してAr バックグラウンドを排除する反応セルチャンバーを用いて実現されている。しかし、反応セル中で反応ガスとしてメタンを使用することは、セレンについての新しい干渉イオンを創製する、結果として生じる複雑な気相化学および副反応に起因してある特定の複合試料の分析にとって効果的でない。
高い検出精度が要求されることが多い別の元素は、ケイ素(Si)であり、これは、石油製品、例えば、ディーゼル燃料、ナフサ、トルエン、ガソリンなどの混入物である。例えば、石油化学産業では、キシレンまたは別の溶媒中で、10倍(10×)希釈で分析され得る有機化合物の一クラスであるナフサ中のケイ素を測定する強い要望がある。複雑な有機マトリックスを有するこのような試料の分析は、マトリックスの特質、すなわち、揮発性溶媒中に希釈されなければならない高粘度試料のために挑戦的である。
ICP−MSは、複雑な有機マトリックスを有する試料中のケイ素種を検出および定量化するのに使用されている。しかし、ケイ素の主要な同位体(m/z 28、92.2%の存在量)の検出は、多原子干渉、すなわち、N およびCOからの干渉を被る。例えばキシレンなどの有機溶媒中で、従来のICP−MSは、マトリックス中に存在する過剰量の炭素に起因して通常よりはるかに高いCO信号を検出する。
水溶液中のケイ素(28Si)検出の改善は、反応ガスとしてアンモニア(NH)を使用することによって干渉性イオン種を排除するためのDRCなどの反応セルチャンバーを用いて実現されている。しかし、アンモニアは、水溶液中のケイ素を検出するのに有効であり得るが、アンモニアは、COなどの干渉性種が支配的である有機マトリックス中のケイ素を検出するのに有効でない。
反応セル手法の代替案として、イオンストリームが実質的に不活性なガスと加圧されたセル内部で衝突される衝突セルオペレーションを用いることができる。これは時に、運動エネルギー弁別(KED)と呼ばれる。ここでは、分析物イオンと干渉物イオンの両方が、不活性ガスと衝突され、イオンにおける運動エネルギーの平均的な喪失を引き起こす。衝突に起因して喪失される運動エネルギーの量は、イオンの衝突断面に関連し、それは、イオンの元素組成に関連する。2つ以上の結合した原子から構成される多原子イオン(分子イオンとしても公知)は、単一の荷電した原子のみから構成される一原子イオンが有するより大きい衝突断面を有する傾向がある。これは、多原子イオン中の2つ以上の結合した原子間の原子間隔に起因する。したがって、不活性ガスは、多原子原子と優先的に衝突して、同じm/z比の一原子原子で見られるよりも、平均で運動エネルギーの大きい喪失を引き起こすことができる。そのとき、衝突セルの下流端に確立した適当なエネルギー障壁は、多原子干渉物の有意な部分を捕捉し、下流の質量分析器に送るのを防止することができる。
反応セルオペレーションに対して、衝突セルオペレーションは、不活性ガスの選択が特定の干渉物および/または目的の分析物イオンに実質的に依存しないために、作動するために一般により万能であり、より単純であるという利益を有する。ヘリウムであることが多い単一不活性ガスは、干渉物および分析物イオンの相対的な衝突断面が上述した通りである限り、異なるm/z比の多くの異なる多原子干渉を有効に除去することができる。同時に、ある特定の欠点が衝突セルオペレーションに伴う。特に、衝突セルオペレーションは、エネルギーが低減された分析物イオンの一部が干渉物イオンとともに捕捉され、質量分析四重極に到達することを妨げられるために、反応セルオペレーションより低いイオン感受性を有し得る。したがって、同じ低レベルのイオン(例えば、pptまたはppt以下)を、衝突セルオペレーションを使用して検出することができない。検出限界は、反応セルオペレーションに対して衝突セルオペレーションを使用して、10〜1000倍悪くなり得ることが観察されている。これは、感受性に乏しい衝突セルオペレーションによるセレンおよびケイ素の検出に当てはまる。
米国特許第6,140,638号明細書 米国特許第6,627,912号明細書 米国特許第6,875,618号明細書
したがって、特に低レベルにおいて試料中のセレンを検出するための改良法およびシステムに対する必要性がある。試料、特に、石油製品などの複雑な有機マトリックスを有する試料中のケイ素を検出するための改良法およびシステムの必要性もある。
(発明の要旨)
試料中のセレン(Se)および/またはケイ素(Si)の改善された検出および定量化のための方法およびシステムが本明細書に記載されている。誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の反応セル中で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用すると、特に、複雑なマトリックスを有する試料中、および/または低レベルの分析物を有する試料中で、分析物SeおよびSiについて干渉性イオン種が有効に排除される(または実質的に低減される)ことが見出されている。この結果は、二酸化炭素(CO)がこの能力においてこれまで使用されてこなかったという点で驚くべきであり、その理由は、それが、干渉性イオン種を低減または排除するその能力を制限し得るであろうと想定された複雑な気相化学および副反応に起因して効果的でないと以前に仮定されていたためである。
一態様では、本発明は、試料中のセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法に関し、この方法は(それだけに限らないが、以下のステップを含む):イオン化源(例えば、プラズマなどのイオン化されたキャリアガス)に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成し、前記複数のイオン種は:(i)1種または複数の分析物イオン種であって、試料中に存在する目的の1種または複数の種のイオン化された形態であり、前記目的の1種または複数の種は、セレン(例えば、任意の1種または複数のセレン同位体、例えば、同位体80Se、78Se、77Se、76Se、および74Seの任意の1種または複数)を含み、前記1種または複数の分析物イオン種は、Seを含む、分析物イオン種;ならびに(ii)Seのm/zと実質的に等価な(例えば、その2%または1%以内の)名目上のm/zを有する1種または複数の干渉物イオン種を含む、ステップと;イオン化された試料ストリームをチャンバー(例えば、動的反応セル、他のタイプの反応セル、または任意の種類の他の適当なエンクロージャーもしくはチャネル)中に入れて、それによりイオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させる(例えば、動的反応セル、または他のタイプの反応セル内で)ステップであって、それによってCOを1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成する(例えば、1種または複数の生成物は、1種または複数の中性種を含む)ステップと;イオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させた後、試料中のセレンを検出および/または定量化するために、得られた生成物ストリームを質量分析器および検出器(例えば、質量分析計)に向けるステップと、を含む。
ある特定の実施形態では、イオン化源(例えば、キャリアガス)は、アルゴンを含み、1種または複数の干渉物イオン種は、Ar (例えば、Ar の任意の1種または複数の同位体)を含む。
ある特定の実施形態では、導入するステップは、イオン化源中に液体の霧状ミストとして試料を導入することを含む。
ある特定の実施形態では、試料は、飲料水試料である。ある特定の実施形態では、試料は、土壌ダイジェスト(soil digest)または海水などの環境試料である。ある特定の実施形態では、試料は、海水であり、目的の1種または複数の種は、78Seを含む。
ある特定の実施形態では、試料は、生物学的試料である(例えば、試料は、尿、唾液、組織、血清、血液、および/または血漿を含む)。
ある特定の実施形態では、試料は、ヒトによって消費できる生成物(例えば、食物、ビタミン、栄養補給剤、および/または飲料)を含む。
ある特定の実施形態では、接触させるステップは、0.1mL/分(または代わりに、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、もしくは1.1mL/分)の最小CO流速を有する反応ガスストリーム、および30L/分を超えない(または代わりに、25L/分を超えない、もしくは20L/分を超えない)イオン化原料ガス(例えば、イオン化されたキャリアガス、例えば、プラズマガス)流れを用いて行われる。ある特定の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも20μL/分(または代わりに、少なくとも75、100、125、150、175、200、もしくは225μL/分)の液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる。ある特定の実施形態では、接触させるステップは、5mL/分を超えない(例えば、3、2、または1.5mL/分を超えない、例えば、250〜300μL/分の間、または1.0〜1.5mL/分の間、例えば、LC−ICP−MSによるSe種形成について後者の範囲)液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる。
別の態様では、本発明は、試料中のケイ素(Si)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法に関し、イオン化源(例えば、プラズマなどのイオン化されたキャリアガス)に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成し、前記複数のイオン種は:(i)1種または複数の分析物イオン種であって、試料中に存在する目的の1種または複数の種のイオン化された形態であり、前記目的の1種または複数の種は、ケイ素(例えば、任意の1種または複数のケイ素同位体、例えば、28Si、29Si、および30Siの任意の1種または複数)を含み、前記1種または複数の分析物イオン種は、Siを含む、分析物イオン種;ならびに(ii)Siのm/zと実質的に等価な(例えば、その2%または1%以内の)名目上のm/zを有する1種または複数の干渉物イオン種を含む、ステップと;イオン化された試料ストリームをチャンバー(例えば、動的反応セル、他のタイプの反応セル、または任意の種類の他のエンクロージャーもしくはチャネル)中に入れて、それによりイオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させる(例えば、動的反応セル、または他のタイプの反応セル内で)ステップであって、それによってCOを1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成する(例えば、1種または複数の生成物は、1種または複数の中性種を含む)ステップと;イオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させた後、試料中のケイ素を検出および/または定量化するために、得られた生成物ストリームを質量分析器および検出器(例えば、質量分析計)に向けるステップと、を含む。
ある特定の実施形態では、1種または複数の干渉物イオン種は、COおよびN の一方または両方を含む。
ある特定の実施形態では、導入するステップは、イオン化源中に液体の霧状ミストとして試料を導入することを含む。
ある特定の実施形態では、試料は、溶媒(例えば、溶媒は、キシレンなどの有機溶媒、または無機溶媒である)中の希釈物である。
ある特定の実施形態では、試料は、石油化学試料、例えば、ディーゼル燃料、ナフサ、トルエン、またはガソリンである。ある特定の実施形態では、石油化学試料は、有機マトリックス(例えば、ナフサ)を含む。
ある特定の実施形態では、試料は、金属(例えば、鋼)、半導体、および鉱物からなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む。ある特定の実施形態では、試料は、フォトレジストを含む。
ある特定の実施形態では、接触させるステップは、0.1mL/分(または代わりに、0.2、0.3、もしくは0.4mL/分)の最小CO流速を有する反応ガスストリーム、および40L/分を超えない(または代わりに、35L/分を超えない、もしくは30L/分を超えない)イオン化原料ガス(例えば、イオン化されたキャリアガス、例えば、プラズマガス)の流れを用いて行われる。ある特定の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも50μL/分(または代わりに、少なくとも75、100、125、150、もしくは175μL/分)の液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる。ある特定の実施形態では、液体試料取込み速度は、5.0mL/分を超えない(例えば、3、2、または1.5mL/分を超えない、例えば、250〜300μL/分の間、または1.0〜1.5mL/分の間、例えば、LC−ICP−MSによるSe種形成について後者の範囲)。
本発明の所定の態様に関して記載した実施形態の要素は、本発明の別の態様の様々な実施形態において使用され得る。例えば、1つの独立請求項から従属する従属請求項の特徴は、他の独立請求項のいずれかの装置および/または方法において使用することができることが企図される。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
試料中のセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法であって、
イオン化源に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成し、前記複数のイオン種は、
(i)1種または複数の分析物イオン種であって、前記試料中に存在する目的の1種または複数の種のイオン化された形態であり、前記目的の1種または複数の種は、セレンを含み、前記1種または複数の分析物イオン種は、Se を含む、分析物イオン種;および
(ii)Se のm/zと実質的に等価な名目上のm/zを有する、1種または複数の干渉物イオン種
を含む、ステップと
前記イオン化された試料ストリームをチャンバー中に入れて、それにより前記イオン化された試料ストリームを、CO を含む反応ガスストリームと接触させ、それによって前記CO を前記1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成するステップと
前記イオン化された試料ストリームを、CO を含む前記反応ガスストリームと接触させた後、前記試料中のセレンを検出および/または定量化するために、得られた生成物ストリームを質量分析器および検出器に向けるステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記イオン化源が、アルゴンを含み、前記1種または複数の干渉物イオン種が、Ar を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記導入するステップが、前記イオン化源中に液体の霧状ミストとして前記試料を導入することを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記試料が飲料水試料である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記試料が環境試料である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記環境試料が土壌ダイジェストである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記環境試料が海水であり、前記目的の1種または複数の種が 78 Seを含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記試料が生物学的試料である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記試料が、ヒトによって消費できる生成物を含む、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記接触させるステップが、0.1mL/分の最小CO 流速を有する反応ガスストリーム、および30L/分を超えないイオン化原料ガスの流れを用いて行われる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記接触させるステップが、少なくとも20μL/分の液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記接触させるステップが、5mL/分を超えない液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
試料中のケイ素(Si)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法であって、
イオン化源に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成し、前記複数のイオン種は、
(i)1種または複数の分析物イオン種であって、前記試料中に存在する目的の1種または複数の種のイオン化された形態であり、前記目的の1種または複数の種は、ケイ素を含み、前記1種または複数の分析物イオン種は、Si を含む、分析物イオン種;および
(ii)Si のm/zと実質的に等価な名目上のm/zを有する、1種または複数の干渉物イオン種
を含む、ステップと、
前記イオン化された試料ストリームをチャンバー中に入れて、それにより前記イオン化された試料ストリームを、CO を含む反応ガスストリームと接触させ、それによって前記CO を前記1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成するステップと、
前記イオン化された試料ストリームを、CO を含む前記反応ガスストリームと接触させた後、前記試料中のケイ素を検出および/または定量化するために、得られた生成物ストリームを質量分析器および検出器に向けるステップと
を含む、方法。
(項目14)
前記1種または複数の干渉物イオン種が、CO およびN の一方または両方を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記導入するステップが、前記イオン化源中に液体の霧状ミストとして前記試料を導入することを含む、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
前記試料が、溶媒中の希釈物である、項目13から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記試料が、石油化学試料である、項目13から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記石油化学試料が、有機マトリックスを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記試料が、金属、半導体、および鉱物からなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、項目13から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記試料がフォトレジストを含む、項目13から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記接触させるステップが、0.1mL/分の最小CO 流速を有する反応ガスストリーム、および40L/分を超えないイオン化原料ガスの流れを用いて行われる、項目13から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記接触させるステップが、少なくとも50μL/分の液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記液体試料取込み速度が、5.0mL/分を超えない、項目21または22に記載の方法。
本開示の上記および他の目的、態様、特徴、および利点は、添付の図面と併せて解釈される以下の記載を参照することによってより明らかとなり、より良好に理解されることになる。
図1は、本発明の例示的な実施形態による、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する、分析物78Seに対する干渉性イオン78Ar {例えば、40Ar38Ar}の除去を実証するプロットである。
図2は、本発明の例示的な実施形態による、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する、分析物80Seに対する干渉性イオン40Ar {例えば、40Ar40Ar}および64Zn16の除去を実証するプロットである。
図3は、本発明の例示的な実施形態による、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する、分析物28Siに対する干渉性イオン14 および1216の除去を実証するプロットである。
図4は、本発明の例示的な実施形態による、試料中のケイ素(Si)および/またはセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法を実施するための例示的なマルチモードICP−MSシステムを表すブロック図である。
図5は、本発明の例示的な実施形態による、試料中のケイ素(Si)および/またはセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための例示的な方法を例示する流れ図である。
本開示の特徴および利点は、図面と併せて解釈されるとき、以下に示した詳細な説明からより明らかとなり、ここで同様の参照文字は、全体にわたって対応する要素を識別する。図面において、同様の参照番号は一般に、同一の、機能的に同様の、かつ/または構造的に同様の要素を示す。
(詳細な説明)
請求項に係る発明のシステム、デバイス、方法、およびプロセスは、本明細書に記載の実施形態からの情報を使用して展開されるバリエーションおよび改作を包含することが企図されている。本明細書に記載のシステム、デバイス、方法、およびプロセスの改作および/または改変は、関連技術における当業者によって実施され得る。
本記載全体にわたって、物品、デバイス、およびシステムが、特定のコンポーネントを有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されている場合、またはプロセスおよび方法が、特定のステップを有する、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されている場合、さらに、列挙したコンポーネントから本質的になり、またはこれらからなる本発明の物品、デバイス、およびシステムが存在し、しかも列挙した処理ステップから本質的になり、またはこれらからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが企図されている。
ステップの順序、またはある特定の行為を実施するための順序は、本発明が実働可能であるままである限り重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上のステップまたは行為を同時に行うことができる。
例えば、背景技術セクションにおける任意の刊行物の本明細書での言及は、刊行物が、本明細書に提示した請求項のいずれかに対する先行技術として機能を果たすことを認めるものではない。背景技術セクションは、明確さの目的で提示されており、任意の請求項に対する先行技術の記載としての意味ではない。
誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)などの反応セルチャンバー内での反応ガスとしての二酸化炭素(CO)の使用を特徴として備える方法およびシステムが本明細書に記載されている。反応ガスとしてCOを使用すると、特に、複雑なマトリックスを有する試料中、および/または低レベルの分析物を有する試料中の分析物セレン(Se)およびケイ素(Si)に対する干渉性イオン種が有効に排除され(または実質的に低減され)、それによってより低い検出限界での、かつ/または複雑なマトリックスを有する試料中でのこれらの分析物のより正確な検出が可能になることが見出されている。
本明細書に記載のイオン化源の創製が誘導結合プラズマ(ICP)質量分析計システムについて実証されているが、他のイオン化源も同様に使用することができる。例えば、一部の実施形態では、電子イオン化、化学イオン化、イオン付着イオン化、ガス放電イオン源、脱離イオン化源、スプレーイオン化(例えば、エレクトロスプレーイオン化)、および/またはアンビエントイオン化源を使用することができる。一部の実施形態では、ICPに加えて、他のガス放電イオン源として、それだけに限らないが、マイクロ波誘導プラズマ、グロー放電、スパークイオン化、およびクローズドドリフトイオン源が挙げられる。
したがって、試料中のセレン(Se)および/またはケイ素(Si)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法およびシステムが本明細書に記載されている。結果として生じるビームは、例えば、質量分析計(MS)、例えば、線形四重極MS、四重極イオントラップMS、イオンサイクロトロン共鳴MS、飛行時間型MS、磁気および/または電気セクターMS、ならびに四重極イオントラップ飛行時間型MSを介して分析され得る。種形成分析のための他のツールとの質量分析計(MS)の併用、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および/またはフィールドフロー分別(FFF)を伴った質量分析計(MS)の使用も企図されている。
(セレン検出および定量化)
アルゴンがICP−MS中でプラズマを維持するキャリアガスとして使用される場合、セレンの主要な同位体、78Se(23.8%の存在量)および80Se(49.6%の存在量)は、アルゴンベースの多原子干渉、Ar を有する。さらに、複雑なマトリックスを有する環境試料について、現在使用されている反応ガス、メタン(CH)は、新しい干渉の形成をもたらし得る。
対照的に、二酸化炭素(CO)は、反応ガスとして使用されるとき、新しい干渉を創製することなく主要な干渉と迅速に反応することが見出されている。二酸化炭素(CO)は、Seと非反応性(または無視できるほどに反応性)であり(速度定数kは、5×10−13cm分子−1−1未満である)、反応式1に示したように、Se検出における主な干渉と迅速に反応する:
(CO流速の最適化:Seを検出するためのAr の除去)
図1は、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)、具体的には、PerkinElmer,Inc.(Waltham、MA)によって製造されたNexION 300D ICP−MSの動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する分析物78Seに対する干渉性イオン78Ar {例えば、40Ar38Ar}の除去を実証するプロット100である。この実験および本明細書に記載の他の実験の計測器条件は(別段に示されていない限り)、1600WのRF電力、ガラス同軸ネブライザーの使用、ガラスサイクロンスプレーチャンバーの使用、およびニッケルコーンの使用であった。
マトリックス、本実施例では、水中の1重量パーセント(wt.%)の硝酸(HNO)溶液を吸引し、強度の読みを、DRCへの二酸化炭素(CO)の複数の流速のそれぞれにおいて78Se分析物について得、図1のプロットに示した。得られた曲線102は、図1(対数プロット)中で「マトリックス=1% HNO」と標識されている。二酸化炭素(CO)流速が増大するにつれて、測定される強度は一般に減少する。
次に、10十億分率(ppb)のセレン(Se)スパイクを伴った、マトリックス(1wt.%のHNO溶液)を含有する溶液を吸引し、強度の読みを、DRCに注入した二酸化炭素(CO)の複数の流速のそれぞれにおいて分析物78Seについて得た。得られた曲線104は、図1中で(同じ対数プロット中で)「マトリックス+10ppb Se」と標識されている。
「マトリックス」曲線102および「マトリックス+10ppb」曲線104から、分析物のバックグラウンド当量濃度(BEC)を、DRCに注入した二酸化炭素(CO)の各流速について計算し、得られたBEC曲線106をプロットした。BECは、マトリックス中の分析物混入ならびに干渉性イオン種の不完全な反応および/または除去の関数である。二酸化炭素(CO)の最適な流れは、BECが最小限にされている場合に実現および/または判定することができる。本実施例では、図1に示したように、分析物78SeのBECは、25〜40十億分率(ppt)の範囲であった。図1中のプロットは、分析物78Seに対する干渉性種78Ar {例えば、40Ar38Ar}の有効な除去を実証する。
(CO流速の最適化:Seを検出するためのAr およびZnの除去)
図2は、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)、やはりNexION 300D ICP−MSの動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する分析物80Seに対する干渉性イオン40Ar {例えば、40Ar40Ar}および64Zn16の除去を実証するプロット200である。マトリックス、本実施例では、水(HO)中の1百万分率(ppm)の亜鉛(Zn)溶液を吸引し、強度の読みを、DRCへの二酸化炭素(CO)の複数の流速において80Se分析物について得、図2のプロットに示した。得られた曲線202は、図2中で(対数プロット中で)「マトリックス=1ppm Zn」と標識されている。二酸化炭素(CO)流速が増大するにつれて、測定される強度は、一般に減少することが分かる。
次に、2ppbのセレン(Se)スパイクを伴った、マトリックス(水中1ppmのZn溶液)を含有する溶液を吸引し、強度の読みを、DRCに注入した二酸化炭素(CO)の複数の流速のそれぞれにおいて80Se分析物について得た。得られた曲線204は、図2中で「マトリックス+2ppb Se」と標識されている。
「マトリックス」曲線202および「マトリックス+2ppb Se」曲線204から、分析物のバックグラウンド当量濃度(BEC)を、DRCへのCOの各流速について計算し、得られたBEC曲線206をプロットした。バックグラウンド当量濃度は、マトリックス中の分析物混入ならびに干渉性イオン種の不完全な反応/除去の関数である。二酸化炭素(CO)の最適な流れは、BECが最小限にされている場合に実現および/または判定することができる。図2に示したように、BECは、60〜120百万分率(ppt)の範囲であった。図2中のプロットは、分析物80Seに対する干渉性種40Ar および64Zn16の有効な除去を実証する。
(COを使用するスパイク回収試験 − 飲料水標準参照物質(SRM)マトリックス中のSe検出)
ICP−MSのDRC内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用してセレン(Se)を検出し、干渉性種を除去するための別の一連の実験では、以下の条件を使用した:1.2L/分の補助流;15L/分のプラズマ流;注入器直径2.0mm;室温でのスプレーチャンバー温度;酸素(O)流なし(スプレーチャンバー中への);0.6または1.2mL/分のCO流(より高い流速は、高い亜鉛(Zn)含有量を伴うマトリックス中で80の質量対電荷(m/z)比でZnOを低減するのに有用であることが判明した);0.80のRPq(マシュー(Mathieu)方程式からのqパラメータ);および250μL/分の試料取込み。
最初に、干渉性イオン種を排除して環境試料中のセレン(Se)を検出することを実証するために、飲料水SRMマトリックスをスパイク回収試験について使用した。スパイク回収試験を実施して、著しいマトリックス抑制を伴うことなく分析することができる試料中の分析物のレベルを判定することができる。較正を、2、5、および10μg/LのSeを含む水中の1wt.%の硝酸(HNO)溶液中で実施した(外部)。COの2つの異なる流速(0.6または1.2mL/分)を使用して飲料水SRM中の78Seおよび80Seを検出した結果を、それぞれ表1および表2に示す。
上記表1および表2に示したように、両方のセレン(Se)同位体、78Seおよび80Seについての良好な回収が、両方の二酸化炭素(CO)流速、0.60mL/分および1.20mL/分で実現された。
(COを使用するスパイク回収試験 − 土壌ダイジェストSRMマトリックス中のSe検出)
追加の実験を行って、土壌ダイジェストSRMマトリックス(河川堆積物、土壌溶液、および河口土壌(estuarian soil)を含む)中のセレン(Se)を、干渉性イオン種を排除して検出した。較正を、2、5、および10μg/LのSeを含む水中の1wt.%の硝酸(HNO)溶液中で実施した(外部)。COの2つの異なる流速(0.6または1.2mL/分)を使用して土壌ダイジェストSRM中の78Seおよび80Seを検出した結果を、それぞれ表3および表4に示す。
表3および表4に示したように、両方のSe同位体、78Seおよび80Seについての良好な回収が、3つすべての土壌ダイジェストマトリックスについて、両方のCO流速で実現された。
(COを使用するスパイク回収試験 − スパイクした、およびスパイクしていない干渉物質チェック標準A(Interferents Check Standard A)(ICS−A)マトリックス中のSe検出)
次に、0、1、または5μg/LのSeでスパイクして、チェック標準、干渉物質チェック標準A(ICS−A)中で、セレン(Se)を、干渉性イオン種を排除して検出する実験を行った。較正を、2、5、および10μg/LのSeを含む水中の1wt.%の硝酸(HNO)溶液中で実施した(外部)。COの2つの異なる流速(0.6および1.2mL/分)を使用してスパイクした、およびスパイクしていない干渉物質チェック溶液A中の78Seおよび80Seを検出した結果を、それぞれ表5および表6に示す。
表5および表6に示したように、80Seについての良好な回収が、両方のCO流速で見られた。
したがって、干渉性イオン種を排除し、それによって環境試料中のSeのレベルの正確な定量化を可能にするための、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)内での反応ガスとしての二酸化炭素(CO)の使用が実証される。
(ケイ素(Si)検出および定量化)
ICP−MSを介した試料中のケイ素(Si)の検出および定量化について、DRC内の反応ガスとしてのアンモニア(NH)の先の使用は、COなどの干渉性種が支配的である有機マトリックス中のケイ素(Si)の検出にとって効果的でないことが証明されている。石油化学産業では、例えば、キシレンまたは他の適当な溶媒中で、約10倍(10×)希釈で典型的には分析される有機化合物の一クラスであるナフサ中のSiを測定する強い要望がある。ケイ素の主要な同位体(92.2%の存在量で28の質量対電荷(m/z)比)は、多原子干渉、すなわち、N およびCOを被る。キシレンなどの有機溶媒中で、CO信号は、過剰量の炭素に起因して通常よりはるかに高い。
二酸化炭素(CO)が反応ガスとして使用されるとき、それは、新しい干渉を創製することなく主要な干渉(COおよびN )と迅速に反応することが見出されている。二酸化炭素(CO)は、Siと非反応性であり、以下の通り反応式2および3に示したように、ケイ素(Si)検出において主な干渉と迅速に反応する。
本明細書に記載の実験は、反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用すると、有機溶媒中で10μg/Lという低いレベルでのケイ素(Si)の測定が可能になることを実証する。
(CO流速最適化:Siを検出するためのN およびCOの除去)
図3は、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)、具体的には、PerkinElmer,Inc.(Waltham、MA)によって製造されたNexION 300D ICP−MSの動的反応セル(DRC)内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用する分析物28Siに対する干渉性イオン14 および1216の除去を実証するプロット300である。この実験および本明細書に記載の他のものの計測器条件は(別段に注記されていない限り)、1600WのRF電力、ガラス同軸ネブライザーの使用、ガラスサイクロンスプレーチャンバーの使用、およびニッケルコーンの使用であった。
マトリックス、この場合、半導体産業で使用される有機溶媒であるPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を吸引し、強度の読みを、DRCに注入した二酸化炭素(CO)の複数の流速のそれぞれにおいて28Si分析物について得、図3のプロット中に示した。得られた曲線302は、図3(対数プロット)中で「マトリックス=PGMEA」と標識されている。二酸化炭素(CO)流速が増大するにつれて、測定される強度は、減少することが分かる。
次に、50十億分率(ppb)のケイ素(Si)スパイクを伴った、マトリックス(PGMEA)を含有する溶液を吸引し、強度の読みを、DRCへの二酸化炭素(CO)の複数の流速のそれぞれにおいて28Si分析物について得た。得られた曲線304は、図3中で「マトリックス+50ppb Si」と標識されている。「マトリックス」曲線302および「マトリックス+50ppb Si」曲線304から、分析物のバックグラウンド当量濃度(BEC)を、DRCへの二酸化炭素(CO)の各流速について計算し、得られたBEC曲線306をプロットした。BECは、マトリックス中の分析物混入および干渉性イオン種の不完全な反応/除去の関数である。二酸化炭素(CO)の最適な流れは、BECが最小限にされている場合に実現および/または判定することができる。ここでは、BECは、約30十億分率(ppb)であった。図3中のプロットは、分析物28Siに対する干渉性種14 および1216の有効な除去を実証する。試料は、著しいケイ素(Si)混入を有し、高いBECをもたらす。それでもやはり、質量対電荷(m/z)比28での信号は、反応ガスとしての二酸化炭素(CO)を用いて有意に低減され、ケイ素(Si)スパイクを見ることを可能にする。
(COを使用するスパイク回収試験 − ナフサ試料中のSi検出)
ICP−MSのDRC内で反応ガスとして二酸化炭素(CO)を使用してケイ素(Si)を検出し、干渉性種を除去するための別の一連の実験では、以下の条件を使用した:2.0L/分の補助流;20L/分のプラズマ流;0.85mmの注入器直径;−20℃でのスプレーチャンバー温度;40mL/分のO流(スプレーチャンバー中への);0.5mL/分のCO流;0.50のRPq;および190μL/分の試料取込み(Viton+PTFE管材料)。
それぞれキシレン中に10倍(10×)希釈して、ナフサ試料を使用した(ストダード(Stoddard)溶剤、リグロイン、および石油エーテル)。較正を、10、20、30、および40μg/LのSiを含むキシレン中で実施した(外部)。0.5mL/分の流速のCOを使用する28Siの検出の結果を以下の表7に示す(μg/L単位)。
10十億分率(ppb)未満の読みが実現され、良好なスパイク回収がすべてのマトリックスについて見られた。
したがって、干渉性イオン種を排除し、それによって有機溶媒中のSiのレベルの正確な定量化を可能にするための、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)の動的反応セル(DRC)内での反応ガスとしての二酸化炭素(CO)の使用が実証される。
(ICP−MSシステム)
図4は、本発明に記載の実施形態による、試料中のケイ素(Si)および/またはセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための例示的なマルチモード誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)システム400のブロック図である。
図4では、ICP−MSシステム402は、分析物試料404を受け取るための試料導入システムを含む。分析物試料404は、好ましくは液体であり、または液体中に分配されているが、一部の実施形態では、分析物試料は固体である。一部の実施形態では、分析物試料404は、例えば、蠕動ポンプ406によって、または自己吸引によってネブライザー408に導入されて、分析物試料が微細液滴410のエアロゾルに変換される。ネブライザー408の例として、それだけに限らないが、同軸、クロスフロー、バビントン、V−グルーブ、HEN(「高効率」)、およびMCN(「マイクロ同軸」)ネブライザーを挙げることができる。ネブライザー408によって発生する微細液滴410を、スプレーチャンバー412に通過させて、ある特定のサイズ未満である微細液滴414のみが、ICPトーチ418およびRF−コイル420によって発生するアルゴンから典型的には構成されるプラズマ416に入ることを可能にすることができる。一部の実施形態では、スプレーチャンバー412の例としては、それだけに限らないが、スコットまたはサイクロンチャンバーがある。プラズマガス(例えば、アルゴン)は、プラズマガス源424に結合されたガス調節器422によって導入することができる。一部のインプリメンテーションでは、ICPトーチ418は、RF−コイル420によって覆われた一連の同軸石英管を含み得る。一部の実施形態では、RFコイル420は、RF発生器426に結合され、それによってエネルギー供給される。
プラズマ414に入った後、微細液滴414は、微細液滴414がガスになるまで乾燥および加熱される。加熱されたガス414の原子がプラズマ416を通って移動し続けるにつれて、これらは、プラズマ416からエネルギーを吸収し、一価イオンを形成する。一価イオン424は、プラズマ416を出て、イオンビーム424としてイオン光学系アセンブリー428に向けられる。
イオン光学系アセンブリー428は、プラズマ416とのインターフェースを提供する。一部のインプリメンテーションでは、イオン光学系アセンブリー428は、減圧チャンバー430内で高減圧環境を維持しながらイオンビーム424の通過を可能にするためのオリフィスを有する一連のインバーテッドコーンを含む。減圧環境は、イオンビーム424のイオンがイオン光学アセンブリー428と検出器432との間のガス分子と何らかの事情で衝突する機会を低減する。一部のインプリメンテーションでは、減圧チャンバー430は、例えば、高減圧環境をもたらすために一緒に作動するターボ分子ポンプおよび機械的な粗引きポンプなどの1つまたは複数の減圧ポンプ433に結合されている。一部のインプリメンテーションでは、減圧ポンプ433、および/または別のポンプは、イオン光学アセンブリー428のインターフェース領域を減圧にするのに用いられ得る。
一部の実施形態では、ICP−MSシステム402は、指定質量範囲のイオンのみをセル440に渡すのを可能にし、中性粒子および光子などのイオン化されていない材料の通過を防止する(または実質的に低減する)ための四重極イオン偏向器(QID)434を含む。QID434は、測定ドリフトを引き起こし、または目的の分析イオンの検出限界を劣化させる場合のあるイオン化されていない材料をフィルタリングするように構成されている。イオン化されていない材料は、検出器432によってイオンとして誤って計数される場合がある。一部のインプリメンテーションでは、QID434は、ビームのイオン化されていない部分(例えば、中性粒子、光子、および他のイオン化されていない粒子)からビーム438のイオン化された部分(分析物イオンを含む)を分ける(すなわち、フィルタリングする)ために、イオン光学アセンブリー428から受け取られるイオンビーム436の方向を変えるように構成された、磁気源または電磁源であり得るいくつかのロッドを含む。代わりに、ある特定のインプリメンテーションでは、このような質量プレフィルタリング機能をもたらすために、オートレンズアセンブリーが用いられ得る。
一部の実施形態では、ICP−MSシステム402は、1種または複数の衝突セルおよび/または反応セルを含む。一部のインプリメンテーションでは、衝突セルまたは反応セルは、ICP−MSのオペレーションの選択されたモードに応じて、ユニバーサルセル440として統合される場合があり、反応セルチャンバーまたは衝突セルチャンバーとして作動される場合がある。ユニバーサルセル440は、イオンストリーム438中の干渉物イオン種(78Ar 40Ar 64Zn1614 、および1216など)と反応させるためにチャンバーに加圧ガス443(例えば、二酸化炭素(CO))を供給する1つまたは複数のガス源441に結合し得る。ユニバーサルセル440は、干渉物質のより低いエネルギーイオンから高エネルギー分析物イオン(目的のイオン)をさらに区別するために、衝突モードでICP−MSシステム402を作動している間などにエネルギーを与えられ得るエネルギー障壁を任意選択で含む。ユニバーサルセル440は、その内部空間内に四重極ロッドセットを含み得る。四重極ロッドセットは、四重極場を創製するのに適したRF電圧を受け取るために電圧源につなげられ得る。
したがって、ある特定の実施形態では、反応セル(またはこの場合では、ユニバーサルセル)440は、加圧されたチャンバーを含み、この中にイオン化された試料ストリーム438が入れられて、二酸化炭素(CO)と接触され、それによって、二酸化炭素(CO)を1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成する。イオンストリーム438は、分析物イオン種、例えば、Se(例えば、とりわけ80Se78Se)および/またはSi(例えば、とりわけ28Si)などを含む。イオンストリーム438は、特定の分析物イオン種に対する干渉物イオン種(例えば、78Ar 40Ar 64Zn1614 、および1216)も含む。ユニバーサルセル440内で、二酸化炭素(CO)は、干渉物イオン種と迅速に反応する一方、分析物イオン種と非反応性(または無視できるほどに反応性)のままである。結果として生じる反応は、式1〜3で上記に示したように副生物イオン(例えば、CO )を生成する。副生物イオンは、分析物イオンと同じ、または実質的に同じm/z比をもはや有さず、従来の質量フィルタリングを適用して、分析物イオンの流れを破壊することなく生成物干渉物イオンを排除することができる。例えば、ストリームをバンドパス質量フィルターにかけて、分析物イオンのみを質量分析段階に送ることができる。干渉物イオンを排除するための反応セルの使用は、米国特許第6,140,638号;同第6,627,912号;および同第8,426,804号にさらに記載されている。ある特定の実施形態では、四重極セルロッドによって発生する四重極場は、セル440の出口端に向かって入口端からその長さに沿って送られているイオンを径方向に閉じ込め、セルからの分析物イオン種の通過を可能にし、セルからの副生物イオンの通過を制限する。
図4に戻って参照すると、ある特定の実施形態では、セル440内でイオン化された試料ストリームが反応ガスストリームと接触した後、得られる生成物ストリームは、分析物イオン種を検出および/または定量化するために質量分析器および検出器に向けられる。図4に示したように、一部の実施形態では、ICP−MSシステム402は、質量によって一価イオンを互いに分離するための四重極質量分析計442などの質量分析計を含む。一部の実施形態では、四重極質量分析計442は、イオンビーム中の所定のイオンと関連したただ1つの質量−電荷(m/z)比(例えば、予め指定されたm/z比)にイオン444の通過を制限する。一部のインプリメンテーションでは、飛行時間型または磁気セクター質量分析計が用いられ得る。四重極質量分析計442は、指定された電圧および周波数のRF電力をもたらすRF発生器446と結合することができる。四重極質量分析計442は、イオンを分離するために直流および交流電場の両方を用いることができる。
四重極質量分析計442の後で、検出器432が質量フィルタリングされたイオン444を受け取って、検出された分析物イオン種の数に対応する電子信号を生成する。検出器432は、被測定信号を処理するための信号処理回路および増幅回路に結合することができる。検出器432は、各質量電荷についての全信号を計数し、これは集められて質量スペクトルを形成し得る。測定された強度値の大きさは、較正標準に基づいてスケール変更されてもよく、その結果、出力は、元素または分析物イオンの濃度に比例するスケールで提供される。
一部の実施形態では、ICP−MSシステム402は、他の機能の中でも、四重極マスフィルター442の作動、ICPトーチ418およびRFコイル420によるプラズマ416の点火、減圧チャンバー430の圧力調節、ユニバーサルセル440の作動、および/または四重極イオン偏向器434の作動を運営および監視するための1つまたは複数の制御装置を含む。制御装置400は、ICP−MSシステム402の様々な機械的および電気的コンポーネントに作動可能に接続され得る。
一部の実施形態では、制御装置400は、ICP−MSシステムの作動に必要なアルゴリズム、コンピュータープログラム、および/またはコンピューターアプリケーションを実行することができるハードウェアおよび/またはソフトウェアを含む。例えば、制御装置400は、プロセッサー、およびプロセッサーによって実行されるとき、プロセッサーにICP−MSシステムの作動に必要な機能を実施させる命令が自己に記憶された非一時的コンピューター可読媒体を含み得る。
図5は、本発明の例示的な実施形態による、試料中のケイ素(Si)および/またはセレン(Se)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための例示的な方法を例示する流れ図500である。ステップ502は、イオン化されたキャリアガス(例えば、プラズマ)などのイオン化源に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成するステップである。複数のイオン種は、(i)試料中の目的の種(分析物)のイオン化された形態である1種または複数の分析物イオン種;および(ii)分析物種の1種または複数のm/zと実質的に等価な(したがって、それと検出干渉を創製する)名目上のm/zを有する1種または複数の干渉物イオン種を含む。本実施例では、分析物イオン種は、SeおよびSiのいずれか、または両方を含み、干渉物イオン種は、78Ar 40Ar 64Zn1614 、および1216のうちの1種または複数を含み得る。
ステップ504は、イオン化された試料ストリームをチャンバー(例えば、反応セル、例えば、動的反応セル、または他の適当なエンクロージャーもしくはチャネルなど)中に入れて、それによりイオン化された試料ストリームを、二酸化炭素(CO)を含有する反応ガスストリームと接触させるステップである。ある特定の実施形態では、チャンバーは、イオン化された試料ストリームをセル中に導入する前、かつ/または導入中に反応ガスで加圧され、反応ガス「ストリーム」は、例えば、反応ガスのある特定の圧力および/または濃度を維持するに十分な、チャンバー内に既にある反応ガスの体積を含み、かつ/またはチャンバーに供給される反応ガスのストリームを含む。イオン化された試料ストリーム中の干渉物イオン種が二酸化炭素と接触すると、反応が生じ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物、例えば、CO などのイオン種、ならびにAr、CO、およびNなどの中性種が生成される。副生物イオンは、分析物イオンと同じ、または実質的に同じm/z比をもはや有さず、従来の質量フィルタリングを適用して、分析物イオンの流れを破壊することなく生成物干渉物イオンを排除することができる。副生物中性種は、分析物イオンの検出を干渉しない。
イオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させた後、ステップ506は、得られた生成物ストリームを、試料中の分析物イオン(単数または複数)、例えば、Seおよび/またはSiを検出および/または定量化するための質量分析器および検出器に向けるステップである。例えば、質量分析器は、四重極質量分析計であり得、その結果、検出器が質量フィルタリングされたイオンを受け取って、検出された分析物イオン種の数に対応する電子信号を生成する。信号は、例えば、試料中の分析物の濃度を判定するために、分析されて検出された分析物が定量化され得る。
(均等物)
本発明を、特定の好適な実施形態を参照して特に示し、記載してきたが、形態および詳細における様々な変更を、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および射程から逸脱することなく、その中で行うことができることが当業者によって理解されるべきである。

Claims (11)

  1. 試料中のケイ素(Si)を検出および/または定量化するためのイオンのストリームを生成するための方法であって、
    イオン化源に試料を導入するステップであって、それによって、複数のイオン種を含むイオン化された試料ストリームを生成し、前記複数のイオン種は、
    (i)1種または複数の分析物イオン種であって、前記試料中に存在する目的の1種または複数の種のイオン化された形態であり、前記目的の1種または複数の種は、ケイ素を含み、前記1種または複数の分析物イオン種は、Siを含む、分析物イオン種;および
    (ii)Siのm/zと実質的に等価な名目上のm/zを有する、1種または複数の干渉物イオン種
    を含む、ステップと、
    前記イオン化された試料ストリームをチャンバー中に入れて、それにより前記イオン化された試料ストリームを、COを含む反応ガスストリームと接触させ、それによって前記COを前記1種または複数の干渉物イオン種の少なくとも1種と反応させ、干渉物イオン種でない1種または複数の生成物を生成するステップと、
    前記イオン化された試料ストリームを、COを含む前記反応ガスストリームと接触させた後、前記試料中のケイ素を検出および/または定量化するために、得られた生成物ストリームを質量分析器および検出器に向けるステップと
    を含む、方法。
  2. 前記1種または複数の干渉物イオン種が、COおよびN の一方または両方を含む、請求項に記載の方法。
  3. 前記導入するステップが、前記イオン化源中に液体の霧状ミストとして前記試料を導入することを含む、請求項またはに記載の方法。
  4. 前記試料が、溶媒中の希釈物である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記試料が、石油化学試料である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記石油化学試料が、有機マトリックスを含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記試料が、金属、半導体、および鉱物のうちの少なくとも1種を含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記試料がフォトレジストを含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記接触させるステップが、0.1mL/分の最小CO流速を有する反応ガスストリーム、および40L/分を超えないイオン化原料ガスの流れを用いて行われる、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記接触させるステップが、少なくとも50μL/分の液体試料取込み速度から生じるイオン化された試料ストリームを用いて行われる、請求項に記載の方法。
  11. 前記液体試料取込み速度が、5.0mL/分を超えない、請求項10に記載の方法。
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