JP7093207B2 - ヘビーナフサ中のケイ素元素の定量方法およびヘビーナフサの製造方法 - Google Patents
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(1)ヘビーナフサ中のケイ素元素を定量する方法であって、
シリコン化合物としてヘキサメチルシクロトリシロキサンを含むヘビーナフサを誘導結合プラズマ装置に導入し、-10℃以上10℃以下の温度に制御したチャンバー内で霧化した後、プラズマに導入し原子化ないしイオン化してケイ素元素量を定量する
ことを特徴とするヘビーナフサ中のケイ素元素量の定量方法、
(2)ヘビーナフサ中のケイ素元素を定量する方法であって、
シリコン化合物としてヘキサメチルシクロトリシロキサンを含むヘビーナフサを有機溶媒で希釈することなく誘導結合プラズマ装置に導入し、-10℃以上10℃以下の温度に制御したチャンバー内で霧化した後、プラズマに導入して原子化し、次いで発光分光分析装置を検出器として反応ガスとして二酸化炭素を使用することなくケイ素元素量を定量する
上記(1)に記載のヘビーナフサ中のケイ素元素量の定量方法、
(3)減圧残渣油を重質油熱分解装置で熱分解することによりヘビーナフサを製造する方法であって、上記(1)または(2)に記載の方法により定量されるケイ素元素量に基づいて、重質油熱分解装置に添加する消泡剤の添加量を制御する
ことを特徴とするヘビーナフサの製造方法、
(4)上記(1)または(2)に記載の方法により定量されるケイ素元素量が2mg/L未満となるように重質油熱分解装置に添加する消泡剤の添加量を制御する上記(3)に記載のヘビーナフサの製造方法
を提供するものである。
本発明に係るナフサ中のケイ素元素量の定量方法は、ナフサ中のケイ素元素を定量する方法であって、シリコン化合物を含むナフサを誘導結合プラズマ装置に導入し、10℃以下の温度に制御したチャンバー内で霧化した後、プラズマに導入し原子化ないしイオン化してケイ素元素量を定量することを特徴とするものである。
以下、本発明の内容を、適宜図面を用いつつ説明するものとする。
なお、本出願書類において、沸点範囲は、JIS K2254、JIS K2601に準じて測定される値を意味する。
なお、本出願書類において、15℃における密度は、JIS K2249に準じて測定される値を意味する。
図1は、誘導結合プラズマ装置の装置構成を示す概略説明図である。
図1に例示するように、一般に誘導結合プラズマ装置1においては、液体試料(ナフサ)2がキャリアガス(ネブライザーガス)3とともにポンプでネブライザー4に導入され、ネブライザー4からチャンバー(スプレーチャンバー)5内に霧化した状態2’で供給される。
なお、上記キャリアガスを誘導結合プラズマ装置に導入する速度(流速)は、ネブライザーからチャンバーへの液体試料(ナフサ)の噴射速度に対応することから、ネブライザーからチャンバーへの液体試料(ナフサ)の好適な噴射速度も上記と同様である。
チャンバー内の温度の下限は特に制限されないが、通常、-10℃以上であることが適当である。
なお、余剰の試料溶液はドレイン(廃液)11として排出される。
そして、気化したヘキサメチルシクロトリシロキサンは、ガス状であるために霧化した液滴よりもキャリアガスによってチャンバーから(後述する)プラズマへ搬送されやすい状態にあると考えられる。そのため、誘導結合プラズマ装置内に導入されたヘビーナフサ試料溶液中のヘキサメチルシクロトリシロキサンの含有割合に比較して、キャリアガスによってチャンバーから(後述する)プラズマへ搬送されるヘビーナフサ試料中のヘキサメチルシクロトリシロキサンの含有割合が高くなり、ヘビーナフサ中のケイ素元素の含有量に誤差を生じると考えられた。
これに対し、本発明に係るナフサ中のケイ素元素の定量方法においては、誘導結合プラズマ装置内に導入されたシリコン化合物を含むヘビーナフサを10℃以下に温度制御したチャンバー内で霧化することにより、チャンバー内におけるヘキサメチルシクロトリシロキサンの揮発を抑制し、霧化して液滴に溶けたままの状態の量に対する気相へ揮発する量の比率が他のシリコン化合物と同等になると考えられ、このためにケイ素元素の含有量の検出値へ与える誤差を抑制し得ると考えられる。
図1に例示するように、プラズマガス(クーラントガス)6は、適宜補助ガス7とともにトーチ管8に導入され、トーチ管8の先端部に配置した誘導コイル9から高周波電流を流すことによりトーチ管8内に電磁場を生成し、この電磁場によってプラズマガス6を構成する原子同士が衝突し電離して高エネルギーのプラズマ(誘導結合プラズマ)10を生成する。
また、補助ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、酸素ガス等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記トーチ管としては石英製のものが挙げられる。
誘導結合プラズマ装置に備えられる検出器としては、発光分光分析装置(OES(Optical Emission Spectroscopy)またはAES(Atomic Emission Spectroscopy))、質量分析装置(MS(Mass Spectorometer))等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記質量分析装置(MS)は、誘導結合プラズマ装置中で測定試料から発生する種々のイオンを電場および磁場によって分離し、分離した各イオンの量から元素濃度を算出する検出装置である。
このため、本発明によれば、ナフサ中のケイ素元素を高精度に定量する方法を提供することができる。
本発明に係るナフサの製造方法は、減圧残渣油を重質油熱分解装置で熱分解することによりナフサを製造する方法であって、本発明に係るナフサ中のケイ素元素の定量方法により定量されるケイ素元素量に基づいて、重質油熱分解装置に添加する消泡剤の添加量を制御することを特徴とするものである。
上記規定値は、重質油熱分解装置で得られるナフサの用途等に応じて適宜規定すればよい。
重質油熱分解装置に加える消泡剤の添加量を上記のとおり制御することにより、例えばリフォーマー触媒への被毒を効果的に抑制することができる。
1.試料調製
(1)標準試薬であるCONOSTAN社製S-21(21元素(Ag、Al、B、Ba、 Ca、Cd、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、P、Ph、Si、Sn、Ti、V、Zn)が同じ濃度で溶解している標準試薬)、(2)ヘキサメチルシクロトリシロキサン(環状D3、沸点134℃)、(3)オクタメチルシクロテトラシロキサン(環状D4、沸点175℃)、(4)消泡剤である信越化学工業(株)製信越シリコーンKF96を、ケイ素元素濃度が同一になるように試料調製した。
上記試料(1)~(4)を、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP6500)に各々導入し、以下の条件下でケイ素元素量を定量した。
<誘導結合プラズマ(ICP)の設定条件>
高周波出力 :1,300W
プラズマガス :アルゴンガス
プラズマガス流量 :12L/分間
補助ガス :混合ガス(アルゴン90%、酸素10%)
補助ガス流量 :0.50L/分間
キャリアガス :アルゴンガス
キャリアガス流量 :0.25L/分間
試料導入速度(ポンプ):0.56mL/分間(30rpm)
ネブライザーガス流量 :0.25L/分間
チャンバー圧力 :常圧
チャンバー温度 :-5℃
<発光分光器(AES)の設定条件>
分光器 :エシェル型
検出器 :CID(Collision-induced dissociation(衝突誘起解離))
シリコン測定波長 :251.611nm
(1)標準試薬であるCONOSTAN社製S-21のケイ素元素濃度に対する信号強度を感度100%としたときにおける、測定試料(2)~測定試料(4)のケイ素元素濃度に対する信号強度を図2および表1に示す。
(1)試料調製
(1)標準試薬であるCONOSTAN社製S-21(21元素(Ag、Al、B、Ba、 Ca、Cd、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、P、Ph、Si、Sn、Ti、V、Zn)が同じ濃度で溶解している標準試薬)、(2)ヘキサメチルシクロトリシロキサン(環状D3、沸点134℃)、(3)オクタメチルシクロテトラシロキサン(環状D4、沸点175℃)、(4)消泡剤である信越化学工業(株)製信越シリコーンKF96を、各シリコン濃度が同一になるように試料調製した。
上記試料(1)~(4)を、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP6500)に各々導入し、以下の条件下でケイ素元素量を定量した。
<誘導結合プラズマ(ICP)の設定条件>
高周波出力 :1,300W
プラズマガス :アルゴンガス
プラズマガス :12L/分間
補助ガス :混合ガス(アルゴン90%、酸素10%)
補助ガス流量 :0.50L/分間
キャリアガス :アルゴンガス
キャリアガス流量 :0.25L/分間
試料導入速度(ポンプ):0.56mL/分間(30rpm)
ネブライザーガス流量 :0.25L/分間
チャンバー圧力 :常圧
チャンバー温度 :20℃
<発光分光器(AES)の設定条件>
分光器 :エシェル型
検出器 :CID(Collision-induced dissociation(衝突誘起解離))
ケイ素元素測定波長 :251.611nm
(i)標準試薬であるCONOSTAN社製S-21のケイ素元素濃度に対する信号強度を感度100%としたときにおける、測定試料(ii)~測定試料(iv)のケイ素元素濃度に対する信号強度を図3および表1に示す。
測定対象となるヘビーナフサとして、いずれもコーカーヘビーナフサであるヘビーナフサ1およびヘビーナフサ2を用意した。
上記ヘビーナフサ1およびヘビーナフサ2を、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP6500)に各々導入し、以下の条件下で各ヘビーナフサ中のケイ素元素濃度を測定したところ、ヘビーナフサ1中のケイ素元素濃度は0mg/L、ヘビーナフサ2中のケイ素元素濃度は10mg/Lであった。
上記各ヘビーナフサ中のケイ素元素濃度は、既知濃度のケイ素元素を含む標準試料の発光強度と対比することにより算出した。
<誘導結合プラズマ(ICP)の設定条件>
高周波出力 :1,300W
プラズマガス :アルゴンガス
プラズマガス流量 :12L/分間
補助ガス :混合ガス(アルゴン90%、酸素10%)
補助ガス流量 :0.50L/分間
キャリアガス :アルゴンガス
キャリアガス流量 :0.25L/分間
試料導入速度(ポンプ):0.56mL/分間(30rpm)
ネブライザーガス流量 :0.25L/分間
チャンバー圧力 :常圧
チャンバー温度 :-5℃
<発光分光器(AES)の設定条件>
分光器 :エシェル型
検出器 :CID(Collision-induced dissociation(衝突誘起解離))
シリコン測定波長 :251.611nm
また、ヘビーナフサ1およびヘビーナフサ2中のケイ素元素濃度を別途ガスクロマトグラフで定量したところ、ヘビーナフサ1中のヘキサメチルシクロトリシロキサン(環状D3)に由来するケイ素元素濃度は0mg/L、オクタメチルシクロテトラシロキサン(環状D4)に由来するケイ素元素濃度は0mg/Lであり、ヘビーナフサ2中の環状D3に由来するケイ素元素濃度は5mg/L、環状D4に由来するケイ素元素濃度は5mg/Lであった。
表2に示すように、実施例2で用いたヘビーナフサ1またはヘビーナフサ2に対し、適宜、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(環状D3、沸点134℃)またはオクタメチルシクロテトラシロキサン(環状D4、沸点175℃)を添加して、測定試料を調製した。
上記各測定試料を、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP6500)に各々導入し、以下の条件下で各ヘビーナフサ中のケイ素元素濃度(測定試料中のケイ素元素濃度(mg/L)(分析値))を測定した。結果を表2に示す。
なお、上記各ヘビーナフサ中のケイ素元素濃度は、既知濃度のケイ素元素を含む標準試料の発光強度と対比することにより算出した。
<誘導結合プラズマ(ICP)の設定条件>
高周波出力 :1,300W
プラズマガス :アルゴンガス
プラズマガス流量 :12L/分間
補助ガス :混合ガス(アルゴン90%、酸素10%)
補助ガス流量 :0.50L/分間
キャリアガス :アルゴンガス
キャリアガス流量 :0.25L/分間
試料導入速度(ポンプ):0.56mL/分間(30rpm)
ネブライザーガス流量 :0.25L/分間
チャンバー圧力 :常圧
チャンバー温度 :-5℃(実施例3~実施例5)、20℃(比較例2~比較例4)
<発光分光器(AES)の設定条件>
分光器 :エシェル型
検出器 :CID(Collision-induced dissociation(衝突誘起解離))
シリコン測定波長 :251.611nm
2 液体試料
2’ 霧化した試料
3 キャリアガス(ネブライザーガス)
4 ネブライザ
5 チャンバー
6 プラズマガス(クーラントガス)
7 補助ガス
8 トーチ管
9 誘導コイル
10 プラズマ
11 トレイン(廃液)
Claims (4)
- ヘビーナフサ中のケイ素元素を定量する方法であって、
シリコン化合物としてヘキサメチルシクロトリシロキサンを含むヘビーナフサを誘導結合プラズマ装置に導入し、-10℃以上10℃以下の温度に制御したチャンバー内で霧化した後、プラズマに導入し原子化ないしイオン化してケイ素元素量を定量する
ことを特徴とするヘビーナフサ中のケイ素元素量の定量方法。 - ヘビーナフサ中のケイ素元素を定量する方法であって、
シリコン化合物としてヘキサメチルシクロトリシロキサンを含むヘビーナフサを有機溶媒で希釈することなく誘導結合プラズマ装置に導入し、-10℃以上10℃以下の温度に制御したチャンバー内で霧化した後、プラズマに導入して原子化し、次いで発光分光分析装置を検出器として反応ガスとして二酸化炭素を使用することなくケイ素元素量を定量する
請求項1に記載のヘビーナフサ中のケイ素元素量の定量方法。 - 減圧残渣油を重質油熱分解装置で熱分解することによりヘビーナフサを製造する方法であって、
請求項1または請求項2に記載の方法により定量されるケイ素元素量に基づいて、重質油熱分解装置に添加する消泡剤の添加量を制御する
ことを特徴とするヘビーナフサの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の方法により定量されるケイ素元素量が2mg/L未満となるように重質油熱分解装置に添加する消泡剤の添加量を制御する請求項3に記載のヘビーナフサの製造方法。
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