JP6511806B2 - 多関節ロボット及び多関節ロボットの制御方法 - Google Patents

多関節ロボット及び多関節ロボットの制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、予め設定された軌道情報を用いてアーム先端を動作させる多関節ロボット及び多関節ロボットの制御方法に関するものである。
従来、複数のアーム要素を回転可能に接続したアームを駆動させ、アーム先端を所定の位置に移動させる多関節ロボットがある。
例えば、特許文献1に示される多関節ロボットの一種である搬送装置は、軌道情報生成装置によって事前に生成された軌道情報を用いて、アーム先端の移動制御を行うものである。ここで、移動制御に用いる軌道情報は、アームの動力学モデルをもとに、最適化手法を用いて所望の始点から終点までの移動時間が極力短くなるように生成される。
また、駆動のための軌道情報を予め保持せず、与えられた2点間を直線又は円弧によって補間する経路をリアルタイムで算出して、算出したデータをもとに駆動制御を行う多関節ロボットもある。
特開2011−167827号公報
しかしながら、軌道情報を予め生成する場合には、生成した軌道情報を記憶装置に記憶しておく必要があり、多関節ロボットのアーム先端のとり得る軌道の数を増加させるには、記憶装置の記憶容量を増加させなければならない。また、軌道情報を予め生成する場合、多関節ロボットをセッティングする際に、生成する軌道情報の数に応じて軌道生成のための軌道計算時間も必要となる。
一方、搬送経路をリアルタイムで算出する場合も、始点と終点を直線や円弧の組み合わせによって接続するためにティーチング作業等によって中継点を設定する必要があり、この設定に時間がかかるうえ、各軸のトルク、回転数、角度、加速度など多くの制約条件を考慮して最適経路を通る中継点を設定するのは熟練者であっても困難である。また、多関節ロボットが中継点の補間演算を行う必要があるため、ロボットの制御手段に負荷がかかることとなる。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、記憶装置の容量を増加させることなく適切なアーム先端の位置制御を行うことができ、リアルタイムで搬送経路を算出する場合に必要なティーチング作業の削減を可能とするとともに、位置制御のための軌道情報の導出に要する軌道計算時間を短縮することが可能な多関節ロボット及び多関節ロボットの制御方法を提供することにある。
本発明は、係る目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明の多関節ロボットは、EFEMに設置され、複数のアーム要素を水平方向に回転可能に接続したアームと、前記アーム要素を駆動する駆動手段に動作指令を出力することで、アーム先端の位置制御を行う制御手段とを備える多関節ロボットであって、前記制御手段は、前記アーム先端を動作させる複数の移動先のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応し、時系列に沿って設定される各アーム要素の位置情報を含んで構成され、前記アームおよびこれに保持されている被搬送物が、拡張禁止領域に進入しないことを制約条件として生成される、軌道情報を記憶する軌道情報記憶部と、前記アーム先端の現在位置及び目標位置を始点及び終点として設定する設定部と、当該設定部が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報に基づいて前記動作指令を生成する動作指令生成部とを備え、前記動作指令生成部は、前記軌道情報記憶部に前記設定部が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報が記憶されておらず、前記設定部が設定した始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報が記憶されている場合に、当該関連軌道情報に基づいて前記動作指令を生成するように構成されており、前記拡張禁止領域が、前記関連軌道情報に基づいて生成された動作指令を用いて前記アーム要素が駆動された場合の適切な軌道からのズレを考慮して設定される領域であって、前記アームの進入が禁止される禁止領域を、内側に拡張した領域である、ことを特徴とする。
このように構成すると、軌道情報記憶部が時系列に沿って設定される各アーム要素の位置情報を含んで構成される軌道情報を記憶し、動作指令生成部が設定部の設定した始点及び終点に対応する軌道情報に基づいて動作指令を出力することでアーム先端の位置制御を行うことから、軌道情報を一度用意すれば、同じ構成の多関節ロボットに情報を共有利用できるため、中継点の調整作業が不要となる。また、軌道情報記憶部に記憶された軌道情報によって動作指令を生成するため、中継点の補間演算といったリアルタイム演算が不要となり、低スペックの演算機でも適切な動作指令を生成することが可能となるとともに、リアルタイムでの搬送経路の算出のために必要なティーチング作業を削減することも可能となる。また、設定部が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報が記憶されておらず、設定部が設定した始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報が記憶されている場合に、当該関連軌道情報に基づいて前記動作指令を生成することから、軌道情報記憶部に記憶する軌道情報の削減ができ、大容量の記憶装置を搭載せずに、アーム先端の位置制御を行うことができる。さらに、軌道情報を削減することで、同じ容量の記憶装置を用いて、より多くの動作指令を生成することが可能となる。加えて、軌道情報の導出に要する軌道計算時間を短縮することも可能となる。
また、軌道情報記憶部に記憶する軌道情報を削減する構成としては、前記関連軌道情報は、前記設定部により設定される始点と終点とを入れ替えた組み合わせに対応する軌道情報である逆向軌道情報を含んでおり、前記動作指令生成部は、前記逆向軌道情報の時系列を逆にして利用することで前記動作指令を生成可能であることも好適である。
さらに、軌道情報記憶部に記憶する軌道情報を削減する他の構成として、前記関連軌道情報は、前記設定部により設定される始点及び終点に対して、前記アームの回転中心を通る直線を挟んで対称な位置にある始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報である対称軌道情報を含んでおり、前記動作指令生成部は、前記対称軌道情報の位置情報を対称変換して利用することで前記動作指令を生成可能であることも有効である。
加えて、多関節ロボットがアーム要素としての第1ハンド及び第2ハンドを備える場合に、軌道情報記憶部に記憶する軌道情報を削減することを可能とするためには、前記アームの反基端側において、前記アーム要素としての第1ハンド及び第2ハンドが同一の回転軸を中心として回転可能に設けられ、前記制御手段は、前記アーム先端をなす第1ハンド先端及び第2ハンド先端の位置制御を行うものであり、前記動作指令生成部は、前記軌道情報記憶部に記憶された軌道情報に基づいて、前記第1ハンド先端及び第2ハンド先端の位置制御を行うために用いる動作指令を生成することが効果的である。
また、本発明の多関節ロボットの制御方法は、EFEMに設置され、複数のアーム要素を水平方向に回転可能に接続したアームと、前記アーム要素を駆動する駆動手段と、アーム先端を動作させる複数の移動先のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応し、前記アームおよびこれに保持されている被搬送物が、拡張禁止領域に進入しないことを制約条件として生成される軌道情報を記憶する軌道情報記憶部とを備え、前記駆動手段に動作指令を出力することで前記アーム先端の位置制御を行う多関節ロボットの制御方法であって、現在位置情報及び目標位置情報から始点及び終点を設定するステップと、設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されているか否かを判定するステップと、前記軌道情報が軌道情報記憶部に存在すると判定した場合に、当該軌道情報に基づいて動作指令を生成するステップと、前記軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されていないと判定した場合に、前記始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されているか否かを判定するステップと、前記関連軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されていると判定した場合に、当該関連軌道情報に基づいて動作指令を生成するステップと、を備え、前記拡張禁止領域が、前記関連軌道情報に基づいて生成された動作指令を用いて前記アーム要素が駆動された場合の適切な軌道からのズレを考慮して設定される領域であって、前記アームの進入が禁止される禁止領域を、内側に拡張した領域であることを特徴とする。この発明を用いても、上記と同様の効果を得ることが可能となる。
以上説明した本発明によれば、記憶装置の容量を増加させることなく適切なアーム先端の位置制御を行うことができ、リアルタイムで搬送経路を算出する場合に必要なティーチング作業の削減を可能とするとともに、位置制御のための軌道情報の導出に要する軌道計算時間を短縮することが可能な多関節ロボット及び多関節ロボットの制御方法を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係る多関節ロボットを模式的に示す構成図。 同多関節ロボットのEFEM内における移動先の例を示す平面図。 同多関節ロボットのアームの可動領域を示す説明図。 同多関節ロボットの位置情報の時系列データ及び軌道情報を示す図。 同多関節ロボットの動作を示すフローチャート。 同多関節ロボットの軌道情報を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態に係る多関節ロボットを、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の多関節ロボットは、図1に示すように、被搬送物であるウェーハWを搬送する搬送装置1であり、アーム2と、アーム2を駆動する駆動手段3と、アーム2の駆動を制御する制御手段4と、ウェーハWを受け渡す目標位置を受け付ける受付手段5とを備える。
この搬送装置1は、図2に示すように、複数のロードポート51〜54を備えるEFEM(Equipment Front End Module)50の搬送室50a内に設置され、これらロードポート51〜54及び、EFEM50と隣接するロードロック室60等が、ウェーハWの所定の移動先である基点P1〜P5として設定される。また、搬送装置1を立ち上げた直後のアーム先端2bの初期位置(アーム基端2aと一致)も基点P0として設定される。
ここで、以下の説明においては、ロードポート51〜54が並ぶ方向をX軸方向、X軸方向及び垂直方向に直交する方向をY軸方向と定義し、X軸に対して反時計回りに角度θを定義する。また、本願において、EFEM50は平面視した場合においてアーム2の回転中心であるアーム基端2aを通るY軸と平行な直線である対称軸Lを挟んで線対称に構成されている。
アーム2は、図1に示すように、基台20に基端部21aが接続された第1アーム要素21と、第1アーム要素21の先端部21bに基端22aが接続された第2アーム要素22と、第2アーム要素22の先端部22bに基端23a,24aが接続され先端にウェーハWを載置するための保持部23b,24bが設定された第3アーム要素及び第4アーム要素としての第1ハンド23及び第2ハンド24とを備え、各アーム要素21〜24はそれぞれ軸21c〜23cを中心として水平方向に回転可能に接続されている。なお、第1ハンド23と第2ハンド24とは同一の構成であるため、以下では第1ハンド23の説明のみを行う。また、保持部23bがウェーハWを保持した時のウェーハWの中心位置をアーム先端2bと定める。
駆動手段3は、アーム要素21〜23の基端部21a〜23aに設けられるサーボモータ(図示せず)を備えており、各サーボモータの駆動により、軸21c回りの基台20とアーム要素21との間の角度θ1、軸22c回りのアーム要素21,22間の角度θ2、及び、軸23c回りのアーム要素22,23間の角度θ3を変更することで、アーム先端2bを所望の位置に移動させることが可能となっている。また、各サーボモータはエンコーダ31を備えており、上述した軸21c〜23c回りの角度θ1〜θ3を検出することが可能である。以降では、動作順n、つまり時系列に沿って設定される各アーム要素21〜23の角度(θ1(n),θ2(n),θ3(n))を、アーム要素21〜23の位置情報Aとする(図4(a)参照)。
制御手段4は、受付手段5が受け付けた目標位置情報及びエンコーダ31によって得られる現在位置情報をアーム先端2bの始点及び終点として設定する設定部41と、予め生成されたアーム先端2bの軌道情報RをデータベースDとして記憶する軌道情報記憶部42と、軌道情報記憶部42に記憶された軌道情報Rに基づいて駆動手段3に出力する動作指令Cを生成する動作指令生成部43とを備える。ここで、受付手段5は、ディスプレイ、キーボードやマウス等の既知の操作部、あるいは上位のシステムからアーム先端2bの目標位置を示す目標位置情報を受け付けるものである。この制御手段4は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるものであり、メモリ記憶装置には予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するようになっている。なお、この制御手段4は、実際にはトルク、回転数、角度、加速度等のアクチュエータ能力も加味して動作指令Cを生成しており、エンコーダ31から得られたアーム要素21〜23の角度(θ1(n),θ2(n),θ3(n))に応じて、動作指令Cを補正することも可能となっている。また、制御手段4は、軌道情報RのデータベースDへの登録機能及び、データベースDからの読み出し機能も有しており、データベースDには複数の軌道情報Rが登録されている。
ここで、軌道情報Rは、動力学モデルと制約条件とに基づいて導き出せる軌道情報のうち、その移動時間が最小となる適切な軌道情報を最適化手法により生成するものである。最適化手法としては、従来既知のものを適宜使用することが可能であり、例えば、特開2011−167827号公報に開示されるものを利用して生成することが可能である。
ただし、本願においては、制約条件の1つとして、図3に示すように、EFEM50、ロードポート51〜54及びロードロック室60等の壁50bによって設定される禁止領域V1を内側、すなわち搬送装置1側に所定距離h拡張した拡張禁止領域V2が、アーム2及びアーム2に保持されたウェーハWが侵入できない領域として設定される。この所定距離hは、例えば10mm程度とされる。このように、軌道情報Rは、アーム先端2bに保持させたウェーハWが拡張禁止領域V2に進入しないことを制約条件の1つとして生成されることから、ウェーハWが壁50b等の障害物に衝突することを防止することが可能となっている。
そして、このようにして生成された軌道情報Rは、上述した位置情報Aの時系列に沿った集合として構成されるものであり(図4(a)参照)、軌道情報記憶部42は、この軌道情報Rをアーム先端2bの移動先である基点P0〜P5から選択される始点及び終点の組み合わせと対応させて記憶する。具体的には、軌道情報記憶部42のデータベースDには、図4(b)に示すように、例えば(始点,終点)の組み合わせとして、(P0,P1),(P0,P2),(P1,P2)に対応する軌道情報Rである軌道情報R1〜R3等が記憶されている。また、これら軌道情報R1〜R3は、(始点,終点)の組み合わせとして、上述した(P0,P1),(P0,P2),(P1,P2)と所定の関係性を有する(P1,P0),(P2,P0),(P2,P1)に対応する関連軌道情報Rrである逆向軌道情報Ri1〜Ri3としての役割も有しており、これによって、(始点,終点)の組み合わせが(P1,P0),(P2,P0),(P2,P1)である場合の軌道情報Rを別途データベースDが保持しなくてよいようになっている。なお、逆向軌道情報Riについての詳細は後述する。
そして、動作指令生成部43は、データベースDの軌道情報Rから、動作順に記憶されたアーム要素21〜23の位置情報Aを制御周期毎に順に読み出して駆動手段3の各サーボモータを動作させる動作指令Cを生成し、この動作指令Cを受けた駆動手段3は、位置情報Aの角度になるよう駆動手段3の各サーボモータを動作させるようになっている。
以下、制御手段4が目標位置情報及び現在位置情報から動作指令Cを生成する生成過程について、図1を参照しつつ図5のフローチャートを用いて具体的に説明する。
まず、ステップS1において、設定部41は、エンコーダ31から現在のアーム要素21〜23の角度θ1〜θ3である現在位置情報を取得するとともに、受付手段5から目標位置情報を取得する。次に、ステップS2において、設定部41は、現在位置情報からアーム先端2bの現在位置を始点として設定し、目標位置情報から、アーム先端2bの目標位置を終点として設定する。
次に、ステップS3において、動作指令生成部43は、設定部41が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報R(以下、対応軌道情報Rcとする)が軌道情報記憶部42のデータベースDに存在するか否かを判定する。対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42のデータベースDに存在すると判定した場合は、ステップS4に移行し、動作指令生成部43はデータベースDの対応軌道情報Rcを読み込むことでこの対応軌道情報Rcに基づいて動作指令Cを生成する。
一方、対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42のデータベースDに存在しないと判定した場合は、ステップS5に移行し、動作指令生成部43は、ステップS2において設定部41が設定した始点と終点の組み合わせに対し、この始点と終点とを入れ替えた組み合わせに対応する軌道情報R(以下、逆向軌道情報Riとする)が軌道情報記憶部42のデータベースDに存在するか否かを判定する。
そして、この始点と終点が逆である逆向軌道情報Riが軌道情報記憶部42のデータベースDに存在すると判定した場合は、ステップS6に移行し、動作指令生成部43は、データベースDに存在する逆向軌道情報Riの時系列を逆にして利用する、すなわち逆読込みして用いることで動作指令Cを生成する。なお、この逆向軌道情報Riは、後述する理由により、ステップS3においてデータベースDに存在しないと判定され取得できなかった、アーム先端2bを設定部41が設定した始点から終点まで移動させるための対応軌道情報Rcの時系列を逆にしたものとほぼ一致するようになっている。
一方、動作指令生成部43が、逆向軌道情報Riが軌道情報記憶部42のデータベースDに存在しないと判定した場合は、ステップS7に移行し、データベースDに利用できる軌道情報Rが存在しないこと通知する信号を出力する。この場合、搬送装置1は、所定のインタフェースを通じて動作指令Cが生成できないことを搬送装置1の使用者に通知して動作を停止するか、又は、周知のリアルタイム制御によって、アーム2の動作を行う。
なお、図6(a)及び(b)は、アーム先端2bのある2つの基点Pa,Pbについて、(始点,終点)の組み合わせを(Pa,Pb)とした場合の軸21c〜23c回りの時系列の角度θ1(n)〜θ3(n)(軌道情報Ra)と、始点及び終点を入れ替え、(始点,終点)の組み合わせを(Pb,Pa)とした場合の軸21c〜23c回りの時系列の角度θ1(n)〜θ3(n)(軌道情報Rb)とを、それぞれ最適化手法を用いて計算した結果を正規化して示すグラフである。そして、図6(b)の軌道情報Rbを表すグラフと、図6(a)のグラフの左右を反転させた、すなわち時系列を逆にした図6(c)のグラフとはほぼ重なるようになっている。つまり、設定部41が(始点,終点)の組み合わせを(Pb,Pa)と設定した場合に、この始点と終点を入れ替えた組み合わせ(Pa,Pb)に対応する逆向軌道情報Ri(図6(c)参照)は、最適化手法を用いて計算した軌道情報Rb(図6(b)参照)とほぼ同一となり、最適化手法を用いなくても適切な軌道を描く動作指令Cを生成することが可能であるといえる。
そして、現在までに、本発明者によって、どのような基点の組み合わせについても、時系列を逆にしたグラフはほぼ重複し、設定部41が設定した始点及び終点を入れ替えた組み合わせに対応する逆向軌道情報Riを使用することで、最適化手法を用いて計算した場合とほぼ同一の動作指令Cを生成可能であることが確認されている。なお、関連軌道情報Rrとしての逆向軌道情報Riに基づいて生成された動作指令Cによって搬送装置1を動作させた場合、適切な軌道に対して多少なりともズレが生じる場合もあるが、本願では、軌道情報Rが、アーム2の進入を禁止される禁止領域V1を所定距離h拡張された拡張禁止領域V2を制約条件として生成されることから、最適な軌道からのズレによってアーム2やウェーハWが壁50b等の障害物に衝突することを防止することが可能となっている。
このように、制御手段4が目標位置情報及び現在位置情報から逆向軌道情報Riに基づいて動作指令Cを生成することで、軌道情報記憶部42のデータベースDに記憶する軌道情報Rの数を削減することが可能となる。例えば、アーム先端2b移動先として基点P0,P1,P2の3点が設定された場合、本来であれば3!=6通り分の軌道情報Rを記憶する必要がある。ところが、本実施形態においては、図4(b)に示すように、(始点,終点)の組み合わせとして、(P0,P1),(P0,P2),(P1,P2)に対応する3通りの軌道情報R1〜R3(=対応軌道情報Rc(0,1),Rc(0,2),Rc(1,2))のみを記憶するだけで、これらの軌道情報R1〜R3を逆向軌道情報Ri(1,0),Ri(2,0),Ri(2,1))として、(始点,終点)の組み合わせが(P1,P0),(P2,P0),(P2,P1)である軌道の動作指令Cを生成することも可能となるため、記憶する軌道情報Rの数を1/2にして、記憶装置を効率的に利用することが可能となる。ただし、記憶する軌道情報Rの数は、1/2まで削減する必要はなく、記憶装置の容量に応じて増減させることが可能である。
なお、以上では同一の構成である第1ハンド23と第2ハンド24のうち第1ハンド23についてのみ説明を行ったが、本実施形態においては、第1ハンド23と第2ハンド24の対称性を用いてこれらのハンド23,24の軌道情報Rを共通化しており、この共通化によっても軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Cを削減することが可能となっている。
以上のように、本実施形態の多関節ロボットである搬送装置1は、複数のアーム要素21〜23を回転可能に接続したアーム2と、アーム要素21〜23を駆動する駆動手段3に動作指令Cを出力することで、アーム先端2bの位置制御を行う制御手段4とを備える搬送装置1であって、制御手段4は、アーム先端2bを動作させる複数の移動先である基点P0〜P5のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応し、時系列に沿って設定されるアーム要素21〜23の位置情報Aを含んで構成される軌道情報Rを記憶する軌道情報記憶部42と、アーム先端2bの現在位置及び目標位置を始点及び終点として設定する設定部41と、設定部41が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報Rである対応軌道情報Rcに基づいて動作指令Cを生成する動作指令生成部43とを備え、動作指令生成部43は、軌道情報記憶部42に対応軌道情報Rcが記憶されておらず、設定部41が設定した始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報Rrが記憶されている場合に、関連軌道情報Rrに基づいて動作指令Cを生成するように構成されたものである。
このように構成すると、軌道情報記憶部42が時系列に沿って設定されるアーム要素21〜23の位置情報Aを含んで構成される軌道情報Rを記憶し、動作指令生成部43が設定部41の設定した始点及び終点に対応する軌道情報Rに基づいて動作指令Cを出力することでアーム先端2bの位置制御を行うことから、軌道情報Rを一度用意すれば、同じ構成の多関節ロボットに情報を共有利用できるため、中継点の調整作業が不要となる。また、軌道情報記憶部42に記憶された軌道情報Rによって動作指令Cを生成するため、中継点の補間演算といったリアルタイム演算が不要となり、低スペックの演算機でも適切な動作指令Cを生成することが可能となるとともに、リアルタイムでの搬送経路の算出のために必要なティーチング作業を削減することも可能となる。また、対応軌道情報Rcが記憶されておらず、関連軌道情報Rrが記憶されている場合に、関連軌道情報Rrに基づいて動作指令Cを生成することから、軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Rの削減ができ、大容量の記憶装置を搭載せずに、アーム先端2bの位置制御を行うことができる。さらに、軌道情報Rを削減することで、同じ容量の記憶装置を用いて、より多くの動作指令Cを生成することが可能となる。加えて、軌道情報Rの導出に要する軌道計算時間を短縮することも可能である。
また、関連軌道情報Rrは、設定部41により設定される始点と終点とを入れ替えた組み合わせに対応する軌道情報Rである逆向軌道情報Riを含んでおり、動作指令生成部43は、逆向軌道情報Riの時系列を逆にして利用することで動作指令Cを生成可能であることから、軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Rを好適に削減することが可能である。
そして、搬送装置1が第1ハンド23及び第2ハンド24を備えており、アーム基端2a側において、アーム要素としての第1ハンド23及び第2ハンド24が同一の回転軸23cを中心として回転可能に設けられ、制御手段4は、アーム先端2bをなす第1ハンド先端2b1及び第2ハンド先端2b2の位置制御を行うものであり、動作指令生成部43は、軌道情報記憶部42に記憶された軌道情報Rに基づいて、第1ハンド先端2b1及び第2ハンド先端2b2の位置制御を行うために用いる動作指令Cを生成しているため、軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Cを削減することが可能となっている。
また、以上のように説明した搬送装置1による作用を方法としての側面から見た場合、この搬送装置1の制御方法は、複数のアーム要素21〜23を回転可能に接続したアーム2と、アーム要素21〜23を駆動する駆動手段3と、アーム先端2bを動作させる複数の移動先である基点P0〜P5のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応する軌道情報Rを記憶する軌道情報記憶部42とを備え、駆動手段3に動作指令Cを出力することでアーム先端2bの位置制御を行う搬送装置1の制御方法であって、現在位置情報及び目標位置情報から始点及び終点を設定するステップS2と、設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報Rである対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42に記憶されているか否かを判定するステップS3と、対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42に存在すると判定した場合に、対応軌道情報Rcに基づいて動作指令Cを生成するステップS4と、対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42に記憶されていないと判定した場合に、始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報Rrが軌道情報記憶部42に記憶されているか否かを判定するステップS5と、関連軌道情報Rrが軌道情報記憶部42に記憶されていると判定した場合に、関連軌道情報Rrに基づいて動作指令Cを生成するステップS6と、を備えるようにしたものといえる。そして、こうした搬送装置1の制御方法を実現することにより、上記の効果を生じさせることが可能となっているものといえる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態における搬送装置1は、図2に示すように、EFEM50の搬送室50aの中央に設置され、上述したように、EFEM50は搬送装置1のアーム2の回転中心であるアーム基端2a(基点P0)を通るY軸と平行な対称軸Lを挟んで線対称に構成され、ロードポート51〜54の基点P1と基点P4、基点P2と基点P3はそれぞれ対称軸Lを挟んで対称な位置関係にあるため、軌道の対称性を利用して軌道情報記憶部42の記憶する軌道情報Rを削減することも可能である。
具体的には、アーム要素21〜23の動作順nにおける位置情報Aである軸21c〜23c回りの角度を(θ1(n),θ2(n),θ3(n))と表すと、対称軸Lに関して対称な位置情報は直線θ=π/2を対称軸とする対称変換により(π−θ1(n),π−θ2(n),π−θ3(n))と表すことが可能である。そのため、例えば、設定部41が始点及び終点の組み合わせとして設定した(P0,P4)に対応する軌道情報Rである対応軌道情報Rcが軌道情報記憶部42のデータベースDに存在しない場合にも、(P0,P4)の組み合わせに対して、対称軸Lを挟んで対称な位置にある(P0,P1)の組み合わせに対する軌道情報Rを関連軌道情報Rrである対称軌道情報Rsとし、この対称軌道情報Rsを用いて(P0,P4)に対応する軌道と対称な軌道を描く動作指令Cを生成することが可能となっている。
このように、関連軌道情報Rrは、設定部41により設定される始点及び終点に対して、アーム2の回転中心を通る対称軸Lを挟んで対称な位置にある始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報である対称軌道情報Rsを含んでおり、動作指令生成部43は、対称軌道情報Rsの位置情報を対称変換して利用することで動作指令Cを生成可能となるよう構成しても、軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Rを削減することが可能である。
さらに、関連軌道情報Rrとして逆向軌道情報Riと対称軌道情報Rsとを組み合わせることも可能であり、こうすることによって、軌道情報記憶部42に記憶する軌道情報Rの数を1/2よりもさらに削減にすることができる。
また、上述の実施形態においては、位置情報Aをアーム要素21〜23の軸21c〜23c回りの角度によって表していたが、座標の取り方はこれに限定されず、例えば各軸21c〜23cのXY座標によって表すことも可能である。さらに、アーム先端2bが描く軌道も同一平面内に限定されず、本発明を、3次元空間を自在に移動する多関節ロボットに対しても適用可能である。
さらに、上述した実施形態においては、多関節ロボットとして被搬送物であるウェーハWを搬送する搬送装置1を想定していたが、このような多関節ロボットは搬送装置1に限定されず、加工装置や溶接装置のようなものであっても良い。
また、上述した実施形態においては、アーム先端2bの所定の移動先として基点P0〜P5を想定していたが、移動先である基点は上記の点に限定されない。例えば、基点として、ロードポートの手前、アライナ、ワークステーション等も設定することができる。このように、基点を増加させても、必要な軌道情報Rを削減することができる。
加えて、上述した実施形態では軌道情報Rとして最適化手法によって予め生成したデータを使用していたが、多関節ロボットのセッティング時にロボット上の計算機で計算してもよく、また、ロボットによってティーチングを行い、そのデータを利用してロボット上の計算機で計算して軌道情報Rを生成することも可能である。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
A…位置情報
C…動作指令
L…対称軸
P0〜P5…基点(移動先)
R…軌道情報
Rc…対応軌道情報
Rr…関連軌道情報
Ri…逆向軌道情報
Rs…対称軌道情報
V1…禁止領域
V2…拡張禁止領域
W…ウェーハ(被搬送物)
1…搬送装置(多関節ロボット)
2…アーム
2b,2b1,2b2…ハンド先端(アーム先端)
3…駆動手段
4…制御手段
21〜24…アーム要素
23…第1ハンド
24…第2ハンド
41…設定部
42…軌道情報記憶部
43…動作指令生成部

Claims (5)

  1. EFEMに設置され、
    複数のアーム要素を水平方向に回転可能に接続したアームと、
    前記アーム要素を駆動する駆動手段に動作指令を出力することで、アーム先端の位置制御を行う制御手段とを備える多関節ロボットであって、
    前記制御手段は、前記アーム先端を動作させる複数の移動先のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応し、時系列に沿って設定される各アーム要素の位置情報を含んで構成され、前記アームおよびこれに保持されている被搬送物が、拡張禁止領域に進入しないことを制約条件として生成される、軌道情報を記憶する軌道情報記憶部と、
    前記アーム先端の現在位置及び目標位置を始点及び終点として設定する設定部と、
    当該設定部が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報に基づいて前記動作指令を生成する動作指令生成部とを備え、
    前記動作指令生成部は、前記軌道情報記憶部に前記設定部が設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報が記憶されておらず、前記設定部が設定した始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報が記憶されている場合に、当該関連軌道情報に基づいて前記動作指令を生成するように構成されており、
    前記拡張禁止領域が、
    前記関連軌道情報に基づいて生成された動作指令を用いて前記アーム要素が駆動された場合の適切な軌道からのズレを考慮して設定される領域であって、前記アームの進入が禁止される禁止領域を、内側に拡張した領域である、ことを特徴とする多関節ロボット。
  2. 前記関連軌道情報は、前記設定部により設定される始点と終点とを入れ替えた組み合わせに対応する軌道情報である逆向軌道情報を含んでおり、
    前記動作指令生成部は、前記逆向軌道情報の時系列を逆にして利用することで前記動作指令を生成可能であることを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
  3. 前記関連軌道情報は、前記設定部により設定される始点及び終点に対して、前記アームの回転中心を通る直線を挟んで対称な位置にある始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報である対称軌道情報を含んでおり、
    前記動作指令生成部は、前記対称軌道情報の位置情報を対称変換して利用することで前記動作指令を生成可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の多関節ロボット。
  4. 前記アームの反基端側において、前記アーム要素としての第1ハンド及び第2ハンドが同一の回転軸を中心として回転可能に設けられ、
    前記制御手段は、前記アーム先端をなす第1ハンド先端及び第2ハンド先端の位置制御を行うものであり、
    前記動作指令生成部は、前記軌道情報記憶部に記憶された軌道情報に基づいて、前記第1ハンド先端及び第2ハンド先端の位置制御を行うために用いる動作指令を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多関節ロボット。
  5. EFEMに設置され、複数のアーム要素を水平方向に回転可能に接続したアームと、前記アーム要素を駆動する駆動手段と、アーム先端を動作させる複数の移動先のうちいずれかを始点として他のいずれかを終点とした組み合わせに対応し、前記アームおよびこれに保持されている被搬送物が、拡張禁止領域に進入しないことを制約条件として生成される軌道情報を記憶する軌道情報記憶部とを備え、前記駆動手段に動作指令を出力することで前記アーム先端の位置制御を行う多関節ロボットの制御方法であって、
    現在位置情報及び目標位置情報から始点及び終点を設定するステップと、
    設定した始点及び終点の組み合わせに対応する軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されているか否かを判定するステップと、
    前記軌道情報が軌道情報記憶部に存在すると判定した場合に、当該軌道情報に基づいて動作指令を生成するステップと、
    前記軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されていないと判定した場合に、前記始点及び終点の組み合わせと所定の関係性を有する始点及び終点の組み合わせに対応する関連軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されているか否かを判定するステップと、
    前記関連軌道情報が軌道情報記憶部に記憶されていると判定した場合に、当該関連軌道情報に基づいて動作指令を生成するステップと、
    を備え
    前記拡張禁止領域が、
    前記関連軌道情報に基づいて生成された動作指令を用いて前記アーム要素が駆動された場合の適切な軌道からのズレを考慮して設定される領域であって、前記アームの進入が禁止される禁止領域を、内側に拡張した領域であることを特徴とする多関節ロボットの制御方法。
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