JP6504390B2 - 改変型ピラノース酸化酵素 - Google Patents
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Description
[態様1]
ピラノース酸化酵素のアミノ酸配列において、
配列番号2で示されるアミノ酸配列のP147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含み、
改変前のピラノース酸化酵素に比べて、蛋白量あたりのピラノース脱水素酵素活性(PDH比活性)と蛋白量あたりのピラノース酸化酵素活性(POD比活性)との比(PDH/POD)が大きくなっている、改変型ピラノース酸化酵素。
[態様2]
ピラノース酸化酵素活性を有するタンパク質のアミノ酸配列であって、配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列、配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の類似性を有するアミノ酸配列、又は配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列において、
配列番号2で示されるアミノ酸配列のP147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含む、
態様1記載の改変型ピラノース酸化酵素。
[態様3]
P147に対応する位置のアミノ酸がプロリンであり、L214に対応する位置のアミノ酸がロイシン又はイソロイシンであり、L216に対応する位置のアミノ酸がロイシンであり、Q421に対応する位置のアミノ酸がグルタミンであり、H423に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであり、及びF447に対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニンである、態様1又は2記載の改変型ピラノース酸化酵素。
[態様4]
P147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置の少なくとも1つのアミノ酸残基がアラニンに置換された、態様1〜3の何れか1項に記載の改変型ピラノース酸化酵素。
[態様5]
配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する酵素のPDH/PODを1倍とした場合に、PDH/PODが少なくとも2倍である、態様1〜4の何れか1項に記載の改変型ピラノース酸化酵素。
[態様6]
態様1〜5の何れか1項に記載の改変型ピラノース酸化酵素をコードするポリヌクレオチド。
[態様7]
態様6記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
[態様8]
態様7記載のベクターで形質転換された形質転換細胞。
[態様9]
態様8の形質転換細胞を培養し、得られた培養物から改変型ピラノース酸化酵素を採取することを特徴とする、改変型ピラノース酸化酵素の製造方法。
[態様10]
態様1〜5の何れか1項に記載の改変型ピラノース酸化酵素を使用するピラノース測定方法。
[態様11]
態様1〜5の何れかに1項記載の改変型ピラノース酸化酵素を含むピラノース測定試薬組成物。
[態様12]
態様1〜5の何れかに1項記載の改変型ピラノース酸化酵素を含むピラノース測定用バイオセンサ。
本明細書の“酸素への電子供与能”とは、酵素が、基質であるピラノースから受け取った電子を酸素に供与する能力である。本発明では、後述のピラノース酸化酵素活性測定法により測定した。
本明細書の“メディエータへの電子供与能”とは、酵素が、基質であるピラノースから受け取った電子をメディエータに供与する能力である。本発明では、後述のピラノース脱水素酵素活性測定法により測定した。
本発明の“改変率(倍)”とは、各酵素の蛋白量あたりのピラノース脱水素酵素活性(PDH比活性)と蛋白量あたりのピラノース酸化酵素活性(POD比活性)との比(PDH/POD)を算出し、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する酵素(WT)のPDH/PODを1倍とした場合の、各改変型酵素のPDH/PODの倍率である。尚、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する酵素(WT)のPDH/PODは、0.63である。
ピラノース酸化酵素のアミノ酸配列において、
配列番号2で示されるアミノ酸配列のP147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含む。尚、該改変型ピラノース酸化酵素は改変前のピラノース酸化酵素に比べて、PDH/PODが大きくなっている。
(a)配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2、9、10、11、12、13もしくは14で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
において、配列番号2で示されるアミノ酸配列のP147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸残基における置換を含むアミノ酸配列を有するタンパク質である。尚、改変前のタンパク質である、前記(a)、(b)及び(c)に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、何れもピラノース酸化酵素活性を有する。
同一性は、GENETYX(株式会社ゼネティックス製)の塩基配列同士又はアミノ酸配列同士のホモロジー解析により算出されたidentityの値に基づく。
(変異導入遺伝子の取得)
変異導入用プライマーを用いてPCRにより変異導入を行った。具体的には、テンプレートのアンチセンス鎖に、5’側をリン酸化させたプライマーをアニールさせ、ポリメラーゼで伸長させた。伸長したDNA断片を同反応液中でDNAリガーゼを用いてつなぎ、変異導入された部分以外が鋳型と相補的なものを得るという手法で行った。
ピラノース酸化酵素(POD)遺伝子に部位特異的変異を導入するために、下記のようなプライマーをデザインし、合成した。
配列番号2のアミノ酸配列の147番目のプロリン(P)をアラニン(A)に置換させる(P147A)ためのプライマーをPROD-P147A(配列番号3)とした。同様に、その他のアミノ酸置換用のプライマーを、PROD-L214A、PROD-L216A、PROD-Q421A、PROD-H423A及びPROD-F447A(配列番号4〜8)とした。
PROD-P147A:5’TGGACCTGCGCTACAGCGGAGTTCTTCAAGGAA 3’(配列番号3)
PROD-L214A:5’CGCGGTATCAAACCTGCCCCGCTCGCATGTCAT 3’(配列番号4)
PROD-L216A:5’ATCAAACCTCTCCCGGCCGCATGTCATCGTCTT 3’(配列番号5)
PROD-Q421A:5’TTCCCTTGGCACGCAGCGATTCATCGCGACGCG 3’(配列番号6)
PROD-H423A:5’TGGCACGCACAGATTGCTCGCGACGCGTTCAGC 3’(配列番号7)
PROD-F447A:5’GTCGACCTAAGGTTCGCTGCTCGTCAGGCCAGA 3’(配列番号8)
100μM プライマー 2μl、10× T4 polynucleotide kinase buffer 5μl、0.1M ATP 1.0μl、滅菌水 41μl及び10U/μl T4 polynucleotide kinase 1μlを混合し、37℃で60分間インキュベートした。これにより、5’側リン酸化プライマーを調製した。
未変異のPOD遺伝子をプラスミドpET21a(+)のマルチクローニングサイトにあるNdeI−EcoRI部位に挿入した、プラスミドpET21a(+)/PODを変異導入PCRのテンプレートとした。尚、該POD遺伝子配列は、配列番号1に記載の塩基配列である。
1)65℃ 5分
2)95℃ 2分
3)95℃ 30秒
4)50℃ 30秒
5)65℃ 10分
上記の3)〜5)を30サイクル繰り返す
6)75℃ 10分
各PCR産物にDpnIを1μl加えて37℃で1時間インキュベートすることで、テンプレートプラスミドを分解した。
DpnI処理後の各サンプルで、各大腸菌JM109を形質転換した。培養した各大腸菌からプラスミド抽出を行った。抽出した各プラスミドベクターの挿入部分の塩基配列を解析した結果、挿入部分のPOD遺伝子には何れも目的の変異が導入されていたことが確認できた。変異導入遺伝子を含む各プラスミドベクターを、pET21a(+)/P147A、pET21a(+)/L214A、pET21a(+)/L216A、pET21a(+)/Q421A、pET21a(+)/H423A及びpET21a(+)/F447Aとした。
(改変型酵素の活性評価)
(1)変異株の取得
実施例1で得られた変異導入遺伝子を含む各プラスミドベクターで、各大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。変異導入遺伝子を含む各形質転換大腸菌を、変異株とした。各変異株を、液体培地で培養後、遠心分離により集菌した。尚、液体培地は、アンピシリンを終濃度100μg/mL、IPTGを終濃度0.1mM含む。
集菌した各変異株を、DNaseIを終濃度2.5μg/mL、リゾチームを終濃度0.1mg/mLになるように添加した50mMリン酸緩衝液(KPB)(pH7.5)に懸濁した。該懸濁液を、各々96ディープウェルに0.4mLずつ分注し、37℃で15分インキュベートした。次に、Tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、和光純薬製)を終濃度1%になるように添加し、37℃で15分インキュベートした。更に、該液を−80℃で凍結させ、37℃で融解させた。続いて、遠心分離して各々沈殿を除去し、上清(CFE)を回収した。回収した各CFEを、改変型酵素液とした。各改変型酵素を、P147A、L214A、L216A、Q421A、H423A及びF447Aとした。
水2.1mL、10mM KPB(pH7.0)0.1mL、50U/mL ペルオキシダーゼ0.2mL、12.4mM 4−アミノアンチピリン0.2mL、210mM フェノール0.2mL及び1M D−グルコース0.1mLを混合し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、これに酵素試料0.1mLを加えて、500nmにおけるΔOD/minを測定し、初速度法により次式を用いて活性を算出した。
ピラノース酸化酵素(POD)活性(U/mL)=(ΔOD/min×3.0(mL)×酵素の希釈倍率)/(10.66×1/2×1.0×酵素添加量(mL))
※10.66:500nmにおけるキノンイミン色素の分子吸光係数
※1.0 :光路長(cm)
本法により、酸素への電子供与能を測定した。
水0.61mL、100mM KPB(pH7.0)1mL、3mM DCIP 0.14mL、3mM 1−m−PMS0.2mL、1M D−グルコース1mLを混合し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、これに酵素試料0.05mLを加えて、600nmにおけるΔOD/minを測定し、初速度法により次式を用いて活性を算出した。
ピラノース脱水素酵素(PDH)活性(U/mL)=(ΔOD/min×3.0(mL)×酵素の希釈倍率)/(16.3×1.0×酵素添加量(mL))
※16.3:600nmにおけるDCIPの分子吸光係数
※1.0 :光路長(cm)
本法により、メディエータへの電子供与能を測定した。
蛋白濃度測定は、BIO−RADプロテインアッセイキットを用いたブラッドフォード法によって測定した。測定値は比活性の算出に使用した。
(2)で得た各改変型酵素について、前記の方法でPOD活性、PDH活性及び蛋白濃度を測定した。尚、実施例1でPCRのテンプレートに使用したPOD構造遺伝子を含む形質転換大腸菌を未変異株とした。改変型酵素液と同様に、未変異株からCFEを調製し、未変異型酵素液(WT)とした。
全ての改変型酵素において、POD比活性が低下しており、アミノ酸置換P147A、L214A、L216A、Q421A、H423A又はF447Aによって、WTに比べて改変型酵素の酸素への電子供与能が60%以下に低下したことが分かった。
WTのPDH/PODは0.629だった。これは、WTが、メディエータへの電子供与能より、酸素への電子供与能の方が高いことを意味する。これに対し、得られた改変型酵素P147A、L214A、L216A、Q421A、H423A又はF447Aは、PDH/PODが1.46、4.39、3.14、5.33、44.4又は23.1と、何れも改変前のピラノース酸化酵素(WT)に比べてPDH/PODが大きくなっており、具体的には何れもPDH/PODが1.0以上だった。
得られた改変型酵素P147A、L214A、L216A、Q421A、H423A又はF447Aは、改変率(倍)が2.3、7.0、5.0、8.5、71又は37と、何れも2倍以上だった。
このことから、本願で得られた改変型酵素は全て、酸素よりもメディエータへ電子を供与する能力が、WTに比べて2倍以上高くなったことが分かった。
(改変型酵素の精製)
pET21a(+)/H423Aで形質転換した変異株の培養菌体をリン酸緩衝液に懸濁し、超音波破砕した。続いて、遠心分離して沈殿を除去し、上清(CFE)を回収した。回収したCFEを、熱処理した後、硫安分画処理した。処理後のサンプルを脱塩し、最終的に陰イオン交換樹脂(商品名:DEAEセルロファインA500m、東ソー製)カラムで夾雑蛋白を除去し、精製酵素を得た。該精製酵素をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供したところ、約70kDaの単一バンドを示すことを確認した。
(改変型酵素を用いた1,5−AGの測定)
実施例3で得た精製酵素を使用し、実施例2(4)のPDH活性測定法に基づき、分光光度計を用いて1,5−AGの定量を行った。基質として、終濃度が0.01、0.05、0.1、1.0、10、20、50mMとなるように1,5−AGを添加した。測定結果から酵素活性を算出し、1,5−AG濃度(0.01、0.05、0.1、1.0、10、20、50mM)に対して相対値(%)でプロットした結果を、図2に示した。
図2に示したように、本発明の改変型ピラノース酸化酵素を用いて、少なくとも0.01〜50mMの濃度範囲で1,5−AGの定量が可能であることが分かった。
(改変型酵素を用いたグルコースの測定)
実施例3で得た精製酵素を使用し、実施例2(4)のPDH活性測定法に基づき、分光光度計を用いてグルコースの定量を行った。基質として、終濃度が1.0、3.0、10、20、55mMとなるようにグルコースを添加した。測定結果から酵素活性を算出し、グルコース濃度(1.0、3.0、10、20、55mM)に対して相対値(%)でプロットした結果を、図3に示した。
図3に示したように、本発明の改変型ピラノース酸化酵素を用いて、少なくとも1.0〜55mMの濃度範囲でグルコースの定量が可能であることが分かった。
Claims (9)
- 配列番号2で示されるアミノ酸配列、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列において、
配列番号2で示されるアミノ酸配列のP147、L214、L216、Q421、H423又はF447に対応する位置のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸残基がアラニンに置換され、
蛋白量あたりのピラノース脱水素酵素活性(PDH比活性)と蛋白量あたりのピラノース酸化酵素活性(POD比活性)との比(PDH/POD)が、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する酵素のPDH/PODを1倍とした場合に、少なくとも2倍である、改変型ピラノース酸化酵素。 - P147に対応する位置のアミノ酸がプロリンであり、L214に対応する位置のアミノ酸がロイシン又はイソロイシンであり、L216に対応する位置のアミノ酸がロイシンであり、Q421に対応する位置のアミノ酸がグルタミンであり、H423に対応する位置のアミノ酸がヒスチジンであり、又はF447に対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニンである、請求項1記載の改変型ピラノース酸化酵素。
- 請求項1又は2に記載の改変型ピラノース酸化酵素をコードするポリヌクレオチド。
- 請求項3記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
- 請求項4記載のベクターで形質転換された形質転換細胞。
- 請求項5の形質転換細胞を培養し、得られた培養物から改変型ピラノース酸化酵素を採取することを特徴とする、改変型ピラノース酸化酵素の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の改変型ピラノース酸化酵素を使用するピラノース測定方法。
- 請求項1又は2に記載の改変型ピラノース酸化酵素を含むピラノース測定試薬組成物。
- 請求項1又は2に記載の改変型ピラノース酸化酵素を含むピラノース測定用バイオセンサ。
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