以下では、本発明における試料台の詳細及び当該試料台が適応される荷電粒子線装置について説明する。ただし、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明は、荷電粒子線を照射することによって試料を観察する装置、例えば走査電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、走査透過電子顕微鏡、これらと試料加工装置との複合装置、またはこれらを応用した解析・検査装置にも適用可能である。なお、本発明における試料台と当該試料台が載置される荷電粒子線装置とにより、透過荷電粒子線像の観察が可能な観察システムを構成する。
また、本明細書において「試料台」とは試料を載置した状態で荷電粒子線装置から試料とともに取り外しできるユニットのことを意味する。具体的には、以下で説明するように、当該「試料台」ユニットは発光部材と土台とを有していてもよいし、発光部材のみで形成されていてもよい。
<概要>
はじめに、本実施例の概要に関して説明する。本実施例では、試料内部を透過または散乱した荷電粒子線を光に変換し、その光を検出することで透過荷電粒子線像を生成する荷電粒子顕微鏡、観察システムについて説明する。より具体的には、試料が載置される試料台の少なくとも一部は荷電粒子線の照射により発光する発光部材で形成され、当該発光部材上にある試料を透過または散乱した荷電粒子線が当該発光部材に照射されることで光が発生し、その光を荷電粒子顕微鏡に備えられた検出器で検知することで、透過荷電粒子線像を生成する。つまり、本実施例では試料を透過した荷電粒子線を直接検出するのではなく、光に変換して検出する。以下に詳述するように、荷電粒子線を光に変換する発光部材には外部から接続される電源ケーブルや信号線等の配線が不要である。そのため、同じ試料台を用いて荷電粒子線顕微鏡とその他の装置で観察することができ、装置間の試料の移動に際して電気配線を外すという非常に手間な作業が不要となる。また、発光部材自体または発光部材を有する試料台を簡単に装置に着脱できるので、どのような試料でも簡単に試料を試料台にセットすることが出来る。特に、顕微鏡観察用の試料台上で試料自体を培養させる必要がある培養細胞などを観察する場合に非常に有効である。
さらに、図1に示すように本実施例の試料台を用いれば荷電粒子線顕微鏡による観察と光学顕微鏡などの他の装置による観察とを同じ試料台で行うことができる。図1には本実施例における荷電粒子線を光に変換または増幅して発光させることが可能な検出素子500(発光部材ともいう)を具備する試料台600と、荷電粒子線顕微鏡601と、光学顕微鏡602を示す。試料台600上には試料6が搭載可能である。
本実施例において、この試料台の具備された検出素子は透明な部材で作られているとよい。以下、本明細書において、「透明」の意味は、特定の波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能、またはすべての波長領域の可視光もしくは紫外光がもしくは赤外光通過可能ということである。紫外光は波長がおおよそ10〜400nmであり、可視光は波長がおおよそ380nmから750nmであり、赤外光とは波長がおおよそ700nm〜1mm(=1000μm)程度の波長の領域のことを言う。例えば、多少の色が混在されていても透けて見えれば特定の波長領域の可視光が通過可能ということであり、無色透明であればすべての波長領域の可視光が通過可能という意味である。ここで「通過可能」とは少なくとも当該波長領域の光によって光学顕微鏡観察が可能な光量の光が通過することを指す(例えば透過率50%以上であることが望ましい)。また、ここで特定の波長領域とは少なくとも光学顕微鏡の観察に用いる波長領域を含む波長領域である。そのため、本実施例の試料台の一面側からの光が試料を透過することによって得られる「光透過信号」を試料台のもう一面側から検出することが可能な一般的な光学顕微鏡(透過型光学顕微鏡)に用いることが可能である。光学顕微鏡としては、生物顕微鏡、実体顕微鏡、倒立型顕微鏡、金属顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザ顕微鏡等の光を用いた顕微鏡ならばどんなものでもかまわない。また、ここでは説明のため「顕微鏡」としているが、本発明は画像の拡大率に関らず、試料に光を照射することで情報を取得する装置一般に適用可能である。
本実施例では、荷電粒子線顕微鏡内で発生された荷電粒子線が試料6に照射された後に試料の内部を透過または散乱した「荷電粒子透過信号」を、試料台に具備された検出素子にて検出することにより、透過荷電粒子顕微鏡画像を取得することが可能である。後述するように、検出素子500からの光を電気信号に変換及び増幅するために荷電粒子線顕微鏡601内には光検出器503を備える。
また、電子顕微鏡と光学顕微鏡では得られる情報が異なるため、電子顕微鏡と光学顕微鏡の両方で同一試料を観察したい要求が近年非常に増えている。しかしながら、例えば特許文献1の検出器兼試料台は光を透過することができず、実質的に、光学顕微鏡による観察ができない電子顕微鏡向けの試料台であった。このため電子顕微鏡向けの試料と光学顕微鏡向けの試料を作り分けなければならず、試料作成に手間がかかる等の問題があった。
本実施例の試料台は電子顕微鏡などの荷電粒子線顕微鏡装置に搭載可能であるため、光学顕微鏡と共用に用いられる共通試料台となりうる。つまり、図中矢印で図示したように同一試料台を各顕微鏡間で移動させて観察することで、それぞれの顕微鏡観察向けに試料を複数作製したり試料を移し変えたりすることなく、一つの試料台に試料を配置したまま荷電粒子線観察と光学観察が可能である。なお、図1のように個別に配置された各顕微鏡にて同一試料台を搭載してもよいし、後述するように、光学顕微鏡と荷電粒子顕微鏡が一体化された複合型顕微鏡装置を用いてもよい。以下で、試料台、試料搭載方法、画像取得原理、装置構成等の詳細に関して説明する。
<試料台の説明>
図2を用いて、本実施例における試料台の詳細について説明する。本実施例の試料台は荷電粒子線を光に変換する検出素子500とそれを支持する土台501(透明である場合には透明部材ともいう)から構成される。光学顕微鏡での観察と荷電粒子顕微鏡での観察を同じ試料台で行う場合には、検出素子500と土台501は透明であることが望ましい。試料6は検出素子500上に直接搭載される。または、後述するように膜などの部材を介して間接に搭載されても良い。土台501は、理想的には無色透明であるが、多少の色が混在されていてもかまわない。土台501としては、透明ガラス、透明プラスチック、透明の結晶体などである。蛍光顕微鏡などで観察したい場合は、蛍光が吸収されない方がよいのでプラスチックがよい。本実施例の試料台では、少なくとも、試料が配置される箇所と試料台において試料が配置される箇所と対向する面との間にある検出素子と土台501とが「透明」であれば光学的な顕微鏡観察が可能である。なお、後述するように土台501は必ずしもなくともよい。
検出素子500は例えば数keVから数十keVぐらいまでのエネルギーで飛来してくる荷電粒子線を検知し、荷電粒子線が照射されると可視光や紫外光や赤外光などの光を発光する素子である。本実施例の試料台に用いられる場合、当該検出素子は試料台に載置された試料の内部を透過または散乱した荷電粒子を光に変換する。検出素子としては例えばシンチレータ、ルミネッセンス発光材、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)素子やYAP(イットリウム・アルミニウム・ペロブスカイト)素子などである。発光波長は、可視光、紫外光、赤外光のうち特定のまたは任意のいずれかの波長領域であればよい。シンチレータの例としてはSiNなど無機材でできた無機シンチレータや、ポリエチレンテレフタレートなど発光することが可能な材料が含有するプラスチックシンチレータあるいは有機シンチレータや、アントラセンなどが含有した液体シンチレータが塗布された材料などである。荷電粒子線を光に変換可能な素子であれば検出素子500はどのような材料であってもかまわない。なお、検出素子は着脱可能な固体に限らず、荷電粒子線が照射されることによって蛍光を発生する蛍光剤がコーティングされた薄膜や微粒子であってもよい。本実施例では、これらも含め、荷電粒子を受光面に受けることにより光を発生する部材を総称して発光部材と称する。荷電粒子線の固体内平均自由行程は荷電粒子線の加速電圧に依存するが数十nmから数十μmである。そのため、検出素子500の上面の発光領域も検出素子表面から同程度の厚みの領域となる。よって、検出素子500の厚みはこの厚みを上回っていればよい。一方で、前述の通り、光学顕微鏡観察を同じ試料台で行うことを考えた場合には、光学顕微鏡にて観察した際の光透過信号ができるかぎり透過可能な必要があるので、多少の色が混在された検出素子の場合はできるかぎり薄いほうがよい。
また、検出素子500は荷電粒子線が照射されることによって蛍光を発生する蛍光剤がコーティングされた薄膜や微粒子であってもよい。製作方法としては、例えば、蛍光剤を水やアルコールなどの溶媒に溶かして、プレパラート上にスピンコーティングやディップコーティングする方法を採用することが可能である。またはスプレーなどでコーティングしてもよい。
光学顕微鏡にて良く用いられる試料台としてスライドグラス(又はプレパラート)やディッシュ(又はシャーレ)などの透明試料台がある。つまり、本実施例における荷電粒子線を光変換することが可能な検出素子を具備した試料台をこれら光学顕微鏡向けの一般的なスライドグラス(例えば約25mm×約75mm×約1.2mm)の形状にすれば、これまでユーザが使用していたような経験や感覚で試料搭載や試料観察が可能である。このため、光学顕微鏡で一次的にスクリーニングし、選別された試料をそのまま荷電粒子顕微鏡で詳細観察するといった使い方をすることができる。または、一般の高性能の透過型荷電粒子線顕微鏡装置での試料調製は大変な労力を要するので、本実施例における試料台による観察を高性能の透過型荷電粒子線顕微鏡観察前のスクリーニングとすることも可能である。また光学顕微鏡ユーザが保有している光学顕微鏡用のスライドグラスのケースや試料搭載装置などもそのまま利用することができる。図2ではスライドグラスの断面図のような形状を図示したが、図3のようにディッシュ(又はシャーレ)の形状としてもよい。図3(a)は断面図で、図3(b)は矢視図である。図2と比べて試料が配置される箇所の周縁部に側壁504があるので、液体など試料が漏れ出ることがない。
図2や図3では検出素子500の上面と土台501の上面位置が一致して図示している。これまで光学顕微鏡ユーザがスライドグラスやシャーレを使っていた時と同じ感覚や経験で試料搭載ができるようにするためには、このように検出素子500の上面(すなわち試料を配置する箇所)と土台501の上面を同じ高さに一致させて、検出素子500と土台501との間に凹凸があまりない状態とするのが望ましい。図4に、検出素子500の上面と土台501の上面とが一致している試料台の例を示す。製作方法としては、検出素子500と土台501を別々に製作し、土台501はガラスやプラスチックなどの透明材に凹部をつけて、そこに検出素子500をはめ込めばよい。もし、どちらかが出っ張っているようなら磨くなどの光学研磨平面出しを行ってもよい。土台501と検出素子500間は接着剤や両面テープや機械的なはめあいなどで固定されている。または化学結合によって結合されていてもよい。または、はじめから埋め込んで製作した後で検出素子が試料台表面に露出するまで光学研磨をしてもよい。
もし、非常に大きな検出素子を使うことが可能であれば、図5(a)のように試料台全面を検出素子としてもよい。すなわち、検出素子自体を試料台として用いる、または透明部材の試料を載置する面側の全ての領域が発光部材となっていてもよい。この場合、試料台上のどこにおいても荷電粒子線による透過信号を取得することが可能となる。また別の形態として、図5(b)のように透明部材上に検出素子を複数配置してもよい。試料が複数ある場合などはこのようにすることで、どの検出素子位置にどの試料があるかなどが分かりやすくすることができる。
前述のように荷電粒子線の固体内平均自由行程は荷電粒子線の加速電圧に依存するが数十nmから数十μmであるため、その平均自由行程よりも十分薄い膜502を検出素子500と試料との間に配置してもよい。すなわち、検出素子500を覆う薄い膜502の上に試料が載置される。この試料台を図6(a)に示す。この厚みは図中Aで記載されている。この薄い膜502は、荷電粒子線に対して透明である必要がある。すなわち、荷電粒子線の少なくとも一部が透過可能な厚さおよび材質である必要がある。光学顕微鏡での観察の場合には薄い膜502はさらに光に対して透明である必要もある。このような薄い膜502を配置すると、検出素子500の表面の汚れや傷などを防止することが可能である。但し、薄い膜502が絶縁物の場合、真空中にて荷電粒子線が検出素子500に照射される際に帯電し、試料の観察が難しくなることがある。そのため、図6(a)の薄い膜502を導電部材とすることにより前記帯電を除去することも可能となる。また、図6(b)のように薄い膜502と土台501を一体成形して同一部材としてもよい。つまり、土台501内部に検出素子500を埋め込んで製造して、その後光学研磨により検出素子500の上面と土台501との距離をAまで研磨することにより図6(b)の試料台の製作が可能となる。これは、図6(a)の試料台と比べて部材種類が少ないので、低価格で検出素子500の表面の汚れや傷などを防止することが可能となる。また、図示しないが、図A部で示された部位は凹凸などの形状があってもよい。この場合、搭載した試料と検出素子500との間に所定の距離の空間つまり所定の種類や圧力のガス材を配置することが可能となる。このように、発光部材と試料との間には、固体や液体や気体など所定の部材が配置され、この所定の部材を介して試料が発光部材の上に配置されていてもよい。
光学顕微鏡にて良く用いられるスライドグラス(又はプレパラート)やディッシュ(又はシャーレ)では、試料が試料台と分離しないように、試料と試料台の密着性を高めるための物質が試料台に塗布されている場合がある。例えば、試料が細胞等の生体試料の場合、細胞表面は脂質二重層のリン酸脂質による負の荷電状態であるため、正の荷電状態の分子(リジンやアミノシランなど)をスライドグラスなどの試料台上に塗布することによって、細胞試料が試料台からの剥離することを防止することがある。そのため、試料台600または検出素子500にも同様に正の荷電状態の分子が付着されていてもよい。または、液体を多く含んだ状態の試料を搭載しやすくなるように親水性を有する材料が塗布されていてもよい。または、生きた細胞や細菌が搭載または培養しやすくなるようにコラーゲンのような生体試料と親和性が高い材料を塗布してもよい。なお、ここで塗布とは、散布、浸漬、コーティング等試料台表面にコーティング材を付着させる方法を広く含むものとする。また、所定の位置だけに前記分子や膜が配置させてもよい。ここで、所定の位置とは検出素子500のうち一部の領域という意味である。例えば、所定の位置だけに正の荷電状態の分子を配置した場合、試料が細胞等の生体試料の場合、所定の位置のみに前記試料を配置することが可能となる。例えば、観察したい領域を狭めることで、観察時間を短くしたい場合などに本手法が有用となる。また、荷電粒子線が照射された際に帯電が発生しないように少なくとも試料が載置される面に導電性部材(帯電防止部材)が具備されていてもよい。導電性部材とは例えばカーボン材や金属材あるいは導電性有機物などである。これら分子やコーティング材や帯電防止膜などは図6(a)のA部で示した位置に配置される。
また、ユーザのこれまでの経験や感覚で試料搭載が可能であれば、図7(a)のように検出素子500は試料台600の表面から多少出っ張っていてもかまわない。例えば、数百μm以下の厚みをもつ検出素子500を土台501上に貼りつけるといった方法により製作可能である。この場合では土台501が非常に簡単な形状をしており、検出素子500の面積も小さいので、低コストに試料台の製作が可能である。また、検出素子500自体が低コストに製作可能または入手可能であれば、図7(b)のように、透明部材と検出素子との厚みが同じであり、試料台上面から下面までが検出素子500となっている形状としてもよい。この場合、土台501は検出素子500を支持するための土台の役割となる。
検出素子500が非常に低コストで製作可能であるのであれば、図8に示すように試料台600全体を検出素子500としてもよい。つまり、土台501が無い状態となる。図8(a)は例えばスライドガラスのように単なる平坦な試料台である。これに対して、図8(b)、図8(c)は試料台が凹形状となっている例である。試料はこの凹部に載置されることで、液体試料の場合にもこぼれることがない。図8(b)は例えばシャーレのように試料が側面からこぼれることがないような試料容器であり、図8(c)は試料を格納する場所が複数ある培養容器(マイクロプレートあるいはタイタープレート)などである。発光部材は図8(a)(b)(c)いずれの形状でもよいし、図示した以外の形状でもよい。この場合、材料が一種類だけなので、製造コストがかからないなどのメリットがある。
もし、検出素子500を今までユーザが使いなれているスライドガラスなどの大きさにする必要があれば、図7(a)のように検出素子500をスライドガラスの上に貼り付けるだけでもよい。スライドガラスと同じサイズにすることで、例えば、スライドガラス用のケースに格納する場合や、スライドガラス用の試料ホルダに搭載する場合や、光学顕微鏡のスライドガラス用サイズの試料ステージの搭載する場合に利便性が向上する。検出素子500がプラスチックで構成されたプラスチックシンチレータなどの場合は、非常に低コストで製作可能であれば、図8(a)自体をスライドガラスの大きさにしてもよい。
図9に説明するように、本実施例の試料台は培養容器と一体化することも可能である。の例は、試料が生体試料の場合において、発光部材上で試料を培養または増殖でき、試
料台に試料を移動させる作業が省略できる点で好適である。試料台600の上に容器700を配置する(図9(a))。容器700は例えば上側及び下側が開放面となっている円管状部材である。次に、容器700内部に細胞などの試料6及び培養液などの試料に栄養やエネルギーを与えることが可能な栄養材を含む培地701を搭載する(図9(b))。培地701は固体、液体、気体のいずれであってもよい。なお、培地701が試料台600と容器700間から漏れ出ないように、ゴムやパッキンなどの漏れ防止部材を具備されていてもよい。その後、培養した後で、培養液などの培地701を除去する(図9(c))。その後、容器700を試料台600からはがすことで、試料6が検出素子500に貼りついた状態を作ることが可能となる(図9(d))。図中、検出素子500および容器700は一つしか記載されていないが、一つの試料台の上に複数配置してもよい。なお、荷電粒子線(透過光学観察をする場合はさらに光)が透過しなければならないために試料は薄い必要がある。例えば、数十nmから数十μm程度の厚みである。そのため、前述の培養された培養細胞は培養された後に前記厚み程度となっている必要がある。培養細胞としては、培養された神経細胞や血球細胞あるいはiPS細胞などがある。または、細菌やウイルス類でもかまわない。当該手法を用いることにより、試料台600上で培養した細胞試料を、試料台600に搭載されたままで透過荷電粒子顕微鏡画像及び光学顕微鏡画像を取得することが可能となる。
または、図10(a)のように既存の培養容器に検出素子500をおくだけでもよい。この方法で試料を配置した例を図10(b)に示す。ここで、培養細胞を検出素子500上で培養して荷電粒子顕微鏡装置及び光学顕微鏡装置にて観察する手順例を述べる。初めに、図10(a)のように培養容器808の中に所望の大きさの発光部材500をいれておく。次に、図10(b)のように培養液806及び試料807等を注入し、培養等を行う。次に、図10(c)のように検出素子500を試料807が搭載されたまま取り出す。次に、固定、乾燥処理あるいは金属染色や免疫染色などの所望の前処理を行った後に、図10(d)のように必要に応じて取り外して光学顕微鏡602や荷電粒子顕微鏡601で観察することが可能となる。なお、光学顕微鏡にて観察する場合は、このまま観察することも可能であるし、スライドガラスのような透明部材の上に配置して観察してもよい。また、培養容器は図11のように複数の培養が行える培養容器(マイクロプレートまたはタイタープレート)などを用いてもよい。この場合、複数の検出素子500を入れておくことで、複数の試料調製を同時に行うことが可能となる。また、前述の通り、発光部材である検出素子500がプラスチックシンチレータなどのように安価でかつ加工性のよいものであれば、培養容器808そのものを検出素子500としてもよい。
試料台600は荷電粒子線顕微鏡だけでなく光学顕微鏡によって用いられることが可能であるが、後述する通り、試料が搭載されている面とは反対側に対物レンズ251が配置された倒立型光学顕微鏡によっても当該試料台上の試料を観察することが可能である。このような場合、光学顕微鏡の対物レンズ251を出来る限り試料に接近させたい場合がある。対物レンズ251と試料6との距離をLとすると、Lを数百μm程度以下にしたい場合がある。
検出素子500を備えた試料台600全体を距離L以下に薄くする方法が考えられるが、試料台600そのものが薄すぎて強度が弱いことがある。そこで、試料台の試料が載置される部分の透明部材を他の部分より薄くしてもよい。すなわち、図12(a)のように試料台600の厚み(図中B部)よりも、試料が配置されている部分及び検出素子500部に厚みが薄い領域を作ることによって、試料6と対物レンズ251との距離をLとすることが可能となる。これによれば試料台の両端が分厚いので試料台600自体の強度は高くできる。また、ユーザのこれまでの経験や感覚で試料搭載が可能であれば、図12(b)のように両端が厚い領域は反対側にあってもよいし、試料載置面の上下両側に厚い領域があってもよい。
また、試料台600上に試料6に関する情報である文字、番号、バーコード、絵などが記載可能な紙やシール部を備えてもよい。この場合、試料台に搭載された試料6の管理をすることが容易となる。
図示しないが、観察試料の上部または内部または周辺にイオン液体が配置されていてもよい。イオン液体は電子照射面に導電性を付与することができる性質を有する。イオン液体が観察試料の内部や周辺部に配置されていることによって、真空中で荷電粒子線を照射させた時に、試料が帯電することを防止することが可能となる。さらに、試料にイオン液体を含ませることで、試料をウェットな状態を保つことが可能となる。そのため、イオン液体を含んだウェット試料を透過または散乱してきた荷電粒子線による発光を検出することで、ウェットな試料の透過画像を取得することが可能となる。イオン液体を試料に搭載する方法は、試料をイオン液体中に含浸させてもよいし、スプレーなので試料にイオン液体を吹きかけるなどしてもよい。
図示しないが、検出素子500を使用する前に汚れや傷などがあれば、予め有機溶剤等で洗浄するか、機械的あるいは化学的な研磨剤を用いて研磨するか、イオンビームなどで検出素子500をスパッタリングして平坦な表面をつくってもよい。また、傷や汚れが目立たなくなるように、荷電粒子線が透過可能で且つ光学顕微鏡の光源の光や検出素子500が発光する光に対して出来る限り透明な部材を配置あるいはコーティングしてもよい。
<方法及び原理の説明>
以下で、本実施例の試料台を用いた光検出方法及び透過荷電粒子線が取得可能な原理について説明する。図13に、検出素子500上に試料6が配置されている状態を示している。試料台の下には光検出器503を示している。光検出器503は検出素子500からの光信号を電気信号に変換または増幅することが可能である。変換または増幅された電気信号は通信線を介して制御部やコンピュータに入力され、これらの制御系により画像化される。取得された画像(透過荷電粒子線画像)はモニタ等に表示されてもよい。
ここでは、試料内で密度が高い部位508と密度が低い部位509があることを考える。試料内で密度が高い部位508に一次荷電粒子線510が照射された場合、荷電粒子線は大多数が後方散乱されるため、検出素子500には荷電粒子線は到達しない。一方、試料内で密度が低い部位509に一次荷電粒子線511が照射された場合、荷電粒子線は検出素子500まで透過することが可能となる。その結果、検出素子500にて試料内部の密度差を検出(すなわち光信号に変換)することが可能となる。この透過具合は荷電粒子線の加速エネルギーによってかわる。そのため、荷電粒子線の加速エネルギーを変えることで観察したい内部情報とその領域を変えることも可能である。
光検出器503と試料台との間(図中h部分)は空間があってもよいが、光を出来る限り効率よく検出するためには、この高さhは出来る限り短い方がよい。試料台と光検出器503は接触していてもよい。また、光検出器503の受光面積を大きくすることによって、光を出来る限り効率よく検出してもよい。または、試料台と光検出器503の間の空間のh部に光を効率よく伝達させる光伝達路を配置してもよい。一例として図14に検出器と発光部材との間に光伝達路811を設ける例について説明する。試料台600は試料ステージ5上に配置されているとする。試料ステージ下に光が伝達するための光伝達経路811は、光を前記光伝達経路811の外に漏れ出ないようにして通過させるための光反射材809及び光を光検出器503に導くための光反射材810で形成されている。光伝達経路811の構成はこの例に限られない。
検出素子500で発光した光は図14中試料台600以下に通過し、光伝達経路811を入射する。光伝達経路に入った光は光反射材809によって光の軌道が制御される。光反射材810に到達した光の進行方向は光反射材810によって検出素子503方向に向きを変えられ、光伝達経路811を経由して検出素子503にて光が検出される。光伝達経路811は光を伝達することが可能な固体物質でもよいし、空気中や真空中などでもよい。発光の波長領域を通過させることが可能な固体材料とは、例えば、石英、ガラス、光ファイバー、プラスチック等、光に対して透明または半透明な材料である。この構成にすると、光検出器503をステージから分離して配置することができるので、光検出器503に接続される配線や電気回路を試料台や試料台を保持する試料ステージとは離れた位置に配置することが可能となる。なお、図13や図14では、光検出器503は試料台600の下側に配置されているが、後述するように横方向や上側などに配置されていてもかまわない。
ここで、図15を用いて、試料を通過した荷電粒子線が検出素子500に照射されることにより光が発光する領域に関して説明する。試料6は検出素子500上の試料接着層812に接着または接触している。試料接着層とは前述した通り、細胞などが接着しやすくする層や、荷電粒子線による帯電を除去するための導電膜層などである。この厚み幅をAとすると、例えば数keVから数十keVぐらいまでのエネルギーで飛来してきた荷電粒子線が発光部材までに届くくらいに幅Aは薄い必要がある。これは例えば数nmから数百nm程度である。試料接着層812を通過した荷電粒子線は検出素子500に侵入し、発光814が発生する。この発光する発光領域813は荷電粒子線の侵入深さ及びその侵入時及び侵入中のエネルギーに依存する。例えば、数keVから数十keVぐらいまでのエネルギーの荷電粒子線の場合、発光領域813は数十nmから数μm程度である。この厚みをBとすると、もし検出素子500の厚みが幅Bよりも厚いならば、幅Bで表される領域以外(図中C部)は発光に寄与しないことになる。発光を図中下側で検出するために、発光に寄与しない領域C及び試料台600は発光が出来る限り損失しない程度に透明であることが望ましい。また、図示しないが発光領域813からの光は検出素子500内部で様々な方向に散乱する。そこで、例えば図中A部あるいは検出素子500の側面側に光を反射することが可能な金属膜をつけることによって、発生した光が図中上側や側面側に逃げないようにして、全ての光を図中下側に伝導させることも可能である。
試料台に試料を搭載する方法を以下で述べる。荷電粒子線(光学顕微鏡観察を併用する場合にはさらに光)が透過しなければならないために、試料は薄い必要がある。例えば、数十nmから数十μm程度の厚みである。検出素子500上に直接搭載可能な試料としては例えば細胞が含まれている液体や粘膜、血液や尿など液状生体検体、切片化された細胞、液体中の粒子、菌やカビやウイルスのような微粒子、微粒子や有機物などを含むソフトマテリアル材などである。試料の搭載方法は、前述の培養の他にも、以下の方法が考えられる。例えば、試料を液体の中に分散させて、この液体を検出素子に付着させる方法がある。また、試料を荷電粒子線が透過可能な厚さに切片化して、切片化された試料を検出素子上に配置してもよい。より具体的には、例えば綿棒の先端に試料を付着させこれを検出器上に塗りつけてもよいし、スポイトで垂らしてもよい。また微粒子の場合は検出器上に振りかけてもよい。スプレーなどで塗布してもよいし、液体を試料台に高速回転させて塗布するスピンコーティング法を用いてもよいし、液体に試料台をつけて引き上げることによって塗布するディップコーティング法を用いてもよい。いずれの方法にしても、試料厚みを数十nmから数十μm程度の厚みにすることができればどのような方法であってもかまわない。
次に、図16を用いて顕微鏡観察するまでの手順例を記載する。はじめに、試料を搭載するための検出素子500(発光試料台)を準備する。次に、必要に応じて検出素子500に所定の部材を配置する。ここで、所定の部材とは、前述の通り、試料と試料台の密着性を高めるための物質や導電性物質や光を反射するための物質や、何らかの所定のガス材などである。もし、所定の部材を配置する必要がなければ本ステップは不要である。次に、検出素子500上に試料を搭載する。次に、荷電粒子顕微鏡または光学顕微鏡に搭載し観察するステップに移動する。ステップAは荷電粒子顕微鏡にて観察するステップで、ステップBは光学顕微鏡にて観察するステップである。Aのステップでは、はじめに、前述のように試料が搭載された検出素子500を荷電粒子顕微鏡装置内に配置する。次に、荷電粒子線を試料に照射することにより、試料から荷電粒子線を透過または散乱させる。次に、荷電粒子が検出素子500に到達すると発光するので、この発光を発光検出器により検出する。次に、下位制御部37などで、検出器で検出された信号を試料の透過荷電粒子像を生成する。荷電粒子顕微鏡装置による観察が終了したら、荷電粒子顕微鏡装置外に試料を取り出す。必要に応じてBの光学顕微鏡による観察ステップに移る。光学顕微鏡による観察ステップBでは、まず、試料が搭載された検出素子500を光学顕微鏡装置内に配置する。前述のとおり、光学顕微鏡装置に配置する際に、スライドガラスの形状である必要があれば、検出素子500をスライドガラス上に載せることも可能である。次に、光学顕微鏡にて観察する。観察が終了したら、荷電粒子顕微鏡装置に戻して再観察してもよい。ステップAとBは入れ替えてもよいし、後述するように、荷電粒子顕微鏡装置と光学顕微鏡装置が一体化された装置であれば、同時に観察してもよい。
<真空の荷電粒子線装置観察時の説明>
ここで、図17に、一般的な荷電粒子線装置に本実施例の試料台を搭載した装置を記載する。荷電粒子顕微鏡は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する筐体7(以下、真空室と称することもある)およびこれらを制御する制御系によって構成される。荷電粒子顕微鏡の使用時には荷電粒子光学鏡筒2と筐体7の内部は真空ポンプ4により真空排気される。真空ポンプ4の起動および停止動作も制御系により制御される。図中、真空ポンプ4は一つのみ示されているが、二つ以上あってもよい。
荷電粒子光学鏡筒2は、一次荷電粒子線を発生する荷電粒子源8、発生した荷電粒子線を集束して鏡筒下部へ導き、一次荷電粒子線を試料6上に走査する光学レンズ1などの要素により構成される。荷電粒子光学鏡筒2は筐体7内部に突き出すように設置されており、真空封止部材123を介して筐体7に固定されている。荷電粒子光学鏡筒2の端部には、上記一次荷電粒子線の照射により得られる二次的荷電粒子(二次電子または反射電子等)を検出する検出器3が配置される。検出器3は図示した位置ではなくても筺体7内部であればどこでもよい。
試料6に到達した荷電粒子線によって試料内部または表面から反射荷電粒子や透過荷電粒子などの二次的荷電粒子を放出する。この二次的荷電粒子を検出器3にて検出する。検出器3は数keVから数十keVのエネルギーで飛来してくる荷電粒子線を検知及び増幅することができる検出素子である。例えば、シリコン等の半導体材料で作られた半導体検出器や、ガラス面またはその内部にて荷電粒子信号を光に変換することが可能なシンチレータ等である。
本実施例の荷電粒子顕微鏡は、制御系として、装置使用者が使用するコンピュータ35、コンピュータ35と接続され通信を行う上位制御部36、上位制御部36から送信される命令に従って真空排気系や荷電粒子光学系などの制御を行う下位制御部37を備える。コンピュータ35は、装置の操作画面(GUI)が表示されるモニタと、キーボードやマウスなどの操作画面への入力手段を備える。上位制御部36、下位制御部37およびコンピュータ35は、各々通信線43、44により接続される。
下位制御部37は真空ポンプ4、荷電粒子源8や光学レンズ1などを制御するための制御信号を送受信する部位であり、さらには検出器3の出力信号をディジタル画像信号に変換して上位制御部36へ送信する。図では検出器3からの出力信号を、プリアンプなどの増幅器53を経由して下位制御部37に接続している。もし、増幅器が不要であればなくてもよい。
上位制御部36と下位制御部37ではアナログ回路やディジタル回路などが混在していてもよく、また上位制御部36と下位制御部37が一つに統一されていてもよい。なお、図17に示す制御系の構成は一例に過ぎず、制御ユニットやバルブ、真空ポンプまたは通信用の配線などの変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例の荷電粒子線顕微鏡の範疇に属する。
筐体7には、一端が真空ポンプ4に接続された真空配管16が接続され、内部を真空状態に維持できる。同時に、筐体内部を大気開放するためのリークバルブ14を備え、試料台を装置内部に導入時に筐体7の内部を大気開放することができる。リークバルブ14は、なくてもよいし、二つ以上あってもよい。また、筐体7におけるリークバルブ14の配置箇所は、図17に示された場所に限られず、筐体7上の別の位置に配置されていてもよい。
筐体7は側面に開口部を備えており、この開口部には蓋部材122及び真空封止部材124によって装置内部の真空気密を保っている。本実施例の荷電粒子顕微鏡は、前述のように試料台に搭載された試料を筺体7内部にいれた後に試料と荷電粒子光学鏡筒との位置関係を変更するための試料ステージ5を備えている。試料ステージ5には前述の発光部材または発光部材を有する試料台が着脱可能に配置される。蓋部材122が支持する底板となる支持板107が取り付けられており、ステージ5が支持板107に固定されている。ステージ5は、面内方向へのXY駆動機構および高さ方向へのZ軸駆動機構などを備えている。支持板107は、蓋部材122の対向面に向けて筺体7内部に向かって延伸するよう取り付けられている。Z軸駆動機構およびXY駆動機構からはそれぞれ支軸が伸びており、各々蓋部材122が有する操作つまみ51および操作つまみ52と繋がっている。装置ユーザは、これらの操作つまみを操作することにより、試料の位置を調整することが可能である。また、後述するように、蓋部材122上には光学顕微鏡が具備できる構成としてもよい。
試料ステージ5の上には検出素子500を具備した試料台600を搭載できる。前述の通り検出素子500では荷電粒子線を光に変換する。この光を検出して電気信号に変換及び信号増幅するための光検出器503を試料ステージ5上またはステージ近傍に備える。前述の通り、光信号を効率よく検出するために、検出素子500を備えた試料台とこの光検出器は近接していてもよいし、接触していてもよい。またはこれらの間に光伝達路を配置してもよい。図では、光検出器は試料ステージに具備されているが、光検出器503は筐体7のどこかに固定されていてもよいし、筐体7の外部にあってもよい。筺体7外部にある場合は、検出素子500で変換された光信号はガラスや光ファイバーなどの光を伝達するための光伝達路が試料台500近傍にあり、その光伝達路の中を光信号が伝達することにより光検出器にて信号を検出することが可能となる。光検出器は例えば半導体検出素子やフォトマルチプライヤーなどである。いずれにしても、本実施例の光検出器では前述の試料台の検出素子で発光され、透明部材を通過した光を検出するものである。
図ではステージ5の上部に光検出器503が具備されている様子を図示している。ステージ5に具備された光検出器503からは配線504経由でプリアンプ基板505が接続される。プリアンプ基板505は配線507などを経由し下位制御部37に接続される。図では、プリアンプ基板505は筐体7内部にあるが筐体7外部にあってもよい。試料ステージ5上に突起506がありここに試料台600を配置する。これにより試料台5の固定ができ位置ずれ防止をすることができる。また、試料台600とステージ5上の両面テープなどで固定してもよい。但し、前述のとおり本実施例の試料台が光学顕微鏡にて用いられる場合には、試料台600の下面に両面テープを張り付けることは好ましくなく、試料台600の側面などに両面テープなどで位置ずれ防止部材を取り付けることが望ましい。試料台600を光検出器503上に搭載すると、土台501の真下に光検出器503が配置されるために、試料6を透過して検出素子500にて発光した光を効率よく検出することが可能である。これらの装置及び方法により荷電粒子線装置を用いた透過荷電粒子画像を取得することが可能である。さらに、本実施例の試料台が透明部材で形成されている場合には、試料台を荷電粒子線装置外部に取り出した後に光学顕微鏡にて観察することも可能である。
また、本実施例の荷電粒子線装置には検出器3と検出素子500の両方があるので、検出器3で試料から発生または反射してきた二次的荷電粒子を取得し、同時に検出素子500にて試料を透過または散乱されてきた透過荷電粒子を取得することができる。したがって、下位制御部37等を用いて、二次的荷電粒子線画像と透過荷電粒子画像のモニタ35への表示を切り替えることが可能である。また、前記二種類の画像を同時に表示させることも可能である。
<大気圧の荷電粒子線装置観察時の説明>
次に、図18を用いて、大気圧下で観察可能な荷電粒子線装置に本実施例を適応した構成を説明する。本実施例の荷電粒子線装置は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する第1の筐体(以下、真空室と称することもある)7、第1の筐体7に挿入して使用される第2の筐体(以下、アタッチメントと称することもある)121、第2の筐体内に配置される試料ステージ5、およびこれらを制御する制御系によって構成される。制御系などの基本的な構成は図18と同等なので詳細な説明は省略する。
第2の筐体121の直方体形状の側面のうち少なくとも一側面は開放面となっている。本体部121の直方体形状の側面のうち隔膜保持部材155が設置される面以外の面は、第2の筺体121の壁によって構成されている。または第2の筺体121自体には壁がなく第1の筺体7に組み込まれた状態で第1の筺体7の側壁によって構成されても良い。第2の筐体121は、上記の開口部を通って第1の筐体7内部に挿入され、第1の筺体7に組み込まれた状態で観察対象である試料6を格納する機能を持つ。第1の筐体7と第2の筺体121間は真空封止部材126を介して上記側面側の外壁面に固定される。第2の筺体121は第1の筺体7の側面または内壁面または荷電粒子光学鏡筒のいずれに固定されても良い。これによって、第2の筐体121全体が第1の筐体7に嵌合される。上記の開口部は、荷電粒子顕微鏡の真空試料室にもともと備わっている試料の搬入・搬出用の開口を利用して製造することが最も簡便である。つまり、もともと開いている穴の大きさに合わせて第2の筐体121を製造し、穴の周囲に真空封止部材126を取り付ければ、装置の改造が必要最小限ですむ。また、第2の筐体121は第1の筐体7から取り外しも可能である。
第2の筐体121の側面は大気空間と少なくとも試料の出し入れが可能な大きさの面で連通した開放面であり、第2の筐体121の内部に格納される試料6は、観察中、大気圧状態または若干の負圧状態または所望のガス種状態に置かれる。なお、図18は光軸と平行方向の装置断面図であるため開放面は一面のみが図示されているが、図18の紙面奥方向および手前方向の第1の筺体の側面により真空封止されていれば、第2の筺体121の開放面は一面に限られない。第2の筺体121が第1の筺体7に組み込まれた状態で少なくとも開放面が一面以上あればよい。第2の筺体の開放面により、試料は第2の筺体(アタッチメント)内部と外部の間で搬入および搬出が可能である。
第2の筺体121の上面側には荷電粒子線が透過または通過可能な隔膜10が設けられている。この隔膜10は第2の筺体121から着脱可能である。第1の筐体7には真空ポンプ4が接続されており、第1の筐体7の内壁面と第2の筐体の外壁面および隔膜10によって構成される閉空間(以下、第1の空間とする)を真空排気可能である。これにより、本実施例では、隔膜10により第1の空間11が高真空に維持される一方、第2の空間12は大気圧または大気圧とほぼ同等の圧力のガス雰囲気に維持されるので、装置の動作中、荷電粒子光学鏡筒2側を真空状態に維持でき、かつ試料6および前述の試料台を大気圧または所定の圧力の雰囲気に維持することができる。隔膜10は隔膜保持部材155によって保持され、隔膜10の交換は隔膜保持部材155を交換することで可能となる。
本実施例の荷電粒子顕微鏡の場合、第2の筐体121の少なくとも一側面をなす開放面を蓋部材122で蓋うことができるようになっている。蓋部材122には試料ステージなどが具備されている。
本実施例の荷電粒子顕微鏡においては、第2の筐体121内に置換ガスを供給する機能または第一の空間とは異なった気圧状態を形成可能な機能を備えている。荷電粒子光学鏡筒2の下端から放出された荷電粒子線は、高真空に維持された第1の空間を通って、図18に示す隔膜10を通過し、更に、大気圧または若干の負圧状態に維持された第2の空間に侵入する。すなわち第2の空間は第1の空間より真空度が悪い(低真空度の)状態である。大気空間では荷電粒子線は気体分子によって散乱されるため、平均自由行程は短くなる。つまり、隔膜10と試料6の距離が大きいと一次荷電粒子線または一次荷電粒子線の照射により発生する二次荷電粒子、反射荷電粒子もしくは透過荷電粒子が試料及び検出器3や検出素子500まで届かなくなる。一方、荷電粒子線の散乱確率は、気体分子の質量数や密度に比例する。従って、大気よりも質量数の軽いガス分子で第2の空間を置換するか、少しだけ真空引きすることを行えば、荷電粒子線の散乱確率が低下し、荷電粒子線が試料に到達できるようになる。また、第2の空間の全体ではなくても、少なくとも第2の空間中の荷電粒子線の通過経路、すなわち隔膜と試料との間の空間の大気をガス置換できればよい。置換ガスの種類としては、窒素や水蒸気など、大気よりも軽いガスであれば画像S/Nの改善効果が見られるが、質量のより軽いヘリウムガスや水素ガスの方が、画像S/Nの改善効果が大きい。
以上の理由から、本実施例の荷電粒子顕微鏡では、蓋部材122にガス供給管100の取り付け部(ガス導入部)を設けている。ガス供給管100は連結部102によりガスボンベ103と連結されており、これにより第2の空間12内に置換ガスが導入される。ガス供給管100の途中には、ガス制御用バルブ101が配置されており、管内を流れる置換ガスの流量を制御できる。このため、ガス制御用バルブ101から下位制御部37に信号線が伸びており、装置ユーザは、コンピュータ35のモニタ上に表示される操作画面で、置換ガスの流量を制御できる。また、ガス制御用バルブ101は手動にて操作して開閉してもよい。
置換ガスは軽元素ガスであるため、第2の空間12の上部に溜まりやすく、下側は置換しにくい。そこで、蓋部材122でガス供給管100の取り付け位置よりも下側に第2の空間の内外を連通する開口を設ける。例えば図18では圧力調整弁104の取り付け位置に開口を設ける。これにより、ガス導入部から導入された軽元素ガスに押されて大気ガスが下側の開口から排出されるため、第2の筐体121内を効率的にガスで置換できる。なお、この開口を後述する粗排気ポートと兼用しても良い。
また、ヘリウムガスのような軽元素ガスであっても、電子線散乱が大きい場合がある。その場合は、ガスボンベ103を真空ポンプにすればよい。そして、少しだけ真空引きすることによって、第2の筐体内部を極低真空状態(すなわち大気圧に近い圧力の雰囲気)にすることが可能となる。例えば、第2の筐体121または蓋部材122に真空排気ポートを設け、第2の筐体121内を一度真空排気する。その後置換ガスを導入してもよい。この場合の真空排気は、第2の筐体121内部に残留する大気ガス成分を一定量以下に減らせればよいので高真空排気を行う必要はなく、粗排気で十分である。
ただし、生体試料など水分を含む試料などを観察する場合、一度真空状態に置かれた試料は、水分が蒸発して状態が変化する。従って、完全に蒸発する前に観察するか、上述のように、大気雰囲気から直接置換ガスを導入する方が好ましい。上記の開口は、置換ガスの導入後、蓋部材で閉じることにより、置換ガスを効果的に第2の空間内に閉じ込めることができる。
このように本実施例では、試料が載置された空間を大気圧(約105Pa)から約103Paまでの任意の真空度に制御することができる。従来のいわゆる低真空走査電子顕微鏡では、電子線カラムと試料室が連通しているので、試料室の真空度を下げて大気圧に近い圧力とすると電子線カラムの中の圧力も連動して変化してしまい、大気圧(約105Pa)〜103Paの圧力に試料室を制御することは困難であった。本実施例によれば、第2の空間と第1の空間を薄膜により隔離しているので、第2の筐体121および蓋部材122に囲まれた第2の空間の中の雰囲気の圧力およびガス種は自由に制御することができる。したがって、これまで制御することが難しかった大気圧(約105Pa)〜103Paの圧力に試料室を制御することができる。さらに、大気圧(約105Pa)での観察だけでなく、その近傍の圧力に連続的に変化させて試料の状態を観察することが可能となる。
上記開口の位置に三方弁を取り付ければ、この開口を粗排気ポートおよび大気リーク用排気口と兼用することができる。すなわち、三方弁の一方を蓋部材122に取り付け、一方を粗排気用真空ポンプに接続し、残り一つにリークバルブを取り付ければ、上記の兼用排気口が実現できる。
上述の開口の代わりに圧力調整弁104を設けても良い。圧力調整弁104は、第2の筐体121の内部圧力が1気圧以上になると自動的にバルブが開く機能を有する。このような機能を有する圧力調整弁を備えることで、軽元素ガスの導入時、内部圧力が1気圧以上になると自動的に開いて窒素や酸素などの大気ガス成分を装置外部に排出し、軽元素ガスを装置内部に充満させることが可能となる。なお、図示したガスボンベまたは真空ポンプ103は、荷電粒子顕微鏡に備え付けられる場合もあれば、装置ユーザが事後的に取り付ける場合もある。
本荷電粒子線装置の試料ステージ5の上には検出素子500を具備した試料台を搭載できる。試料ステージの上に前述の試料台を載置した状態において、検出素子500は試料に対して隔膜の反対側に載置された状態となる。試料ステージ近傍の光検出器503などの配置構成などは図17と同様である。本構成の場合は、真空引き等により発生する水分蒸発などの形状変化を最大限に低減させた透過荷電粒子線信号の取得が可能である。また、試料空間を高真空に真空引きすることが不要であるため非常に高スループットで試料台600上試料の透過荷電粒子線顕微鏡画像の取得が可能となる。
<光学顕微鏡観察時の説明>
図19に、光学顕微鏡にて観察する場合を示す。はじめに、光学顕微鏡250に関して説明する。光学顕微鏡250は対物レンズ252などの光学レンズを備える。光学レンズを経由した顕微鏡情報は接眼レンズ207に投影される。または、CCDカメラなどによってディジタル信号に変換され図示しないモニタに表示させてもよい。本実施例における試料台600は光学顕微鏡の光軸251に対して図中横方向か紙面方向に動かすことが可能なXY駆動機構や対物レンズ252との距離を変更することが可能なZ軸駆動機構などの駆動機構204を備えた試料ステージ258上に配置される。試料ステージ258上の光学顕微鏡の光軸251部周辺には開口部259があり、その開口部の上に本実施例の試料台600が配置される。光学顕微鏡250には白色光や紫外光や波長が制御された光やレーザなどの光子線を発することが可能な光源を備える。光源は図中試料台600の上側から光を照射するための光源255、または試料台600の下側から光を照射するための光源256などである。なお、光源は光学顕微鏡250が配置された部屋の光源や太陽光などでもかまわない。なお、光源は図示しない通信線や電線などによって光の光量及び消灯点灯用の電源が供給・制御される。図では上記説明した2か所に光源が配置されているが最低1つあればよい。以上、2つの光源位置を例にあげたが、上記以外の場所に配置されてもよい。試料台上の試料6の観察倍率または焦点位置を変更するために光学顕微鏡250は光学レンズ駆動機構253を有する。光学レンズ駆動機構253によって対物レンズ252を光学顕微鏡の光軸251方向に動かすことによって、試料台600上の試料6に焦点を合わせることができる。また、図示しないが対物レンズ252ではなく、光学顕微鏡250内部の光学レンズが光軸251方向に動くことによって焦点を変えてもよい。
光源256から発せられた光は光学顕微鏡250内部のミラー等を経由して対物レンズ251あるいはその周辺部から放出され、試料台600に到達する。試料台600に到達した光子線は土台501及び検出素子500を通過し、試料に到達される。試料から反射してきた反射光は再度検出素子500及び土台501を通過して、対物レンズ251に到達する。これにより、対物レンズ251に照射された光信号は光学顕微鏡251内部で結像され、接眼レンズ207にて試料の光学顕微鏡観察が実施できる。また、光源位置が光源255である場合は、光源255から放出された光子線はまず試料に照射される。試料から透過してきた光子線を検出素子500及び土台501を通過し、対物レンズ等を経由して光学顕微鏡像を形成することが可能となる。
なお、本図で説明した光学顕微鏡は光学レンズ等が試料下側に配置された倒立型光学顕微鏡であるが、光学系が試料上に配置された正立型光学顕微鏡であってもよい。その場合も光源がどこにあってもよい。
以上、光学顕微鏡により本実施例における試料台600上の試料6を観察する方法及び装置について説明した。前述の通り、検出素子500及び土台501が光源からの光に対して透明であると、このように試料及び試料台に光を透過させた光学顕微鏡観察が可能であるとともに図17や図18で示したような荷電粒子線顕微鏡装置にて真空中または大気中の荷電粒子顕微鏡画像を取得することが可能となる。
実施例1では検出素子500で発光した光が検出素子500および試料台600を通過して、検出素子500または試料台600の下側でその光を検出する構成について説明した。本実施例では、検出素子500で生じた光を検出素子500や試料台600の上側または横側で検出する試料台及び装置構成等について述べる。なお、検出素子500の材料や形状、検出素子上に試料が接着しやすくする層や、荷電粒子線による帯電を除去するための導電膜層を設けることなど、本実施例において特段の言及がない部分に関しては実施例1と同様なので、詳細な説明は省略する。
はじめに、図20を用いて光の発生と発光の検出の原理に関して説明する。試料6は検出素子500上の試料接着層812に接着または接触している。この試料接着層に関しては実施例1と同様なので詳細な説明は省略する。試料接着層812を通過した荷電粒子線は検出素子500に侵入し、発光814が生じる。試料6を透過または散乱してきた荷電粒子線が検出素子500に到達されると紫外光や可視光や赤外光などが発光する。発光波長は検出器で検出可能な波長の範囲であればいずれの波長でもかまわない。この発光領域の厚みBに関しても、実施例1と同様なので詳細な説明は省略する。実施例1と同様に試料内で密度が高い部位508と密度が低い部位509があることを考えると、試料内で密度が低い部位509に一次荷電粒子線511が照射された場合、荷電粒子線は検出素子500まで透過することが可能となる。密度が低い試料下の発光領域813より生じた光814は図中下側だけでなく、図中上側にも放出される。つまり、荷電粒子線を走査して走査した場所の光信号を試料より上側で取得しても、この取得された光信号は試料6内部の透過情報あるいは透過画像を表す信号であることになる。また、この原理によれば、検出素子500中の発光領域に寄与しない領域Cは必ずしも透明である必要はない。また、同様に試料台600も必ずしも透明である必要はない。例えば、試料台600などはアルミなどの金属部材にしてもかまわない。もし、実施例1で述べたように光透過型の光学顕微鏡にて観察したい場合は、検出素子500と試料台600を分離してから検出素子500だけを用いればよい。この場合、検出素子500は前記用いられる光透過型の光学顕微鏡の光に対して出来る限り透明である必要がある。
また、図中下方向にも発光領域813より生じた光が放出されるので、光検出率を高めるために、光試料台600と検出素子500の間に光反射部815を設けて光を反射して反射光816を発生させてもよい。光反射部815は、検出素子500の下面に光を反射させるための光反射膜を設ける、または試料台600を光が反射しやすくするための磨かれた金属にする、または試料台600と検出素子500との間に光を反射するための金属フィルムを配置するなどによって構成する。この場合は、領域Bは発光を出来る限り損失がないように伝達するくらい透明であることが望ましい。光反射部815を設ける代わりに、光検出器800とは別に、検出素子500の下側にも検出器を設け、これらの検出器で同時に光を検出してその検出信号を合成してもよい。
荷電粒子線を直接検出する方式では透過した荷電粒子線を検出するための検出器の位置が少なくとも試料より下方に限定されてしまうが、このように透過荷電粒子線を光に変換して検出することで、検出器の設置位置の自由度が格段に増し、試料の横方向や試料より上方向の検出器からの信号でも透過荷電粒子線像を形成することができる。上述の通り透過荷電粒子線により生じる光は発光部材内部で全方位に生じるため、試料に対してどの方位に検出器が設置されていてもこの光を検出することができるからである。なお、具体的には、試料の「横方向」とは試料が載置されている水平面と検出器の検出面が交わる位置のことを指し、試料の「上方向」とは試料が載置されている水平面より検出器の検出面が上方(荷電粒子源側)にある位置のこと指す。
次に、本実施例での装置構成例を図21に示す。図21では図17と同様に荷電粒子光学鏡筒2、筐体7、真空ポンプ4、試料ステージ5および制御系などによって構成される。これらの各要素の動作、機能または各要素に付加される付加要素は、実施例1とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。本実施例の場合も実施例1と同様に、試料を透過または散乱してきた荷電粒子線を光信号に検出するための検出素子500が試料下に配置される。検出素子500は荷電粒子線が照射されると紫外光や可視光や赤外光などを発光することが可能な発光部材である。検出素子500にて発光した光信号は筐体7内に具備される検出器3、または光検出器800に光を伝達する光伝達路801を経由した光を検出することが可能な光検出器800によって検出される。本図では検出器3と光検出器800の二つの検出器が図示されているが、どちらか一方のみであってもよいし両方あってもよい。また、これ以外の場所に荷電粒子線や光を検出する検出器が配置されており、これを用いて発光部材からの光を検出してもよい。例えば、上述の検出器の代わりに荷電粒子光学鏡筒内に配置された検出器を用いることもできるし、上述の検出器とともに荷電粒子光学鏡筒内の検出器を用いることもできる。この検出器3または光検出器800にて試料の内部透過信号を取得することが可能である。なお、図示しないが、試料ステージを動かした時に発光部材500が試料台またはステージ上から落下することがないように、発光部材500が試料台あるいはステージとの間を両面テープなどで固定してもよい。もし、発光部材に両面テープを接触させることによる汚れを発生させたくない場合は、前述のように発光部材500の側面や上面などを抑える部品を備えてもよい。
以下で、検出器3に関して詳細を説明する。検出器3は検出素子500にて生じた光信号を検出することが可能な検出器であり、例えばシリコン等の半導体材料で作られた半導体検出器である。半導体検出器では光信号が入射されると電子正孔対が発生するため、光信号が電気信号に変換される。この電気信号は信号増幅回路53などによって信号増幅され、下位制御部37または上位制御部36を経由して画像情報としてコンピュータ35の画面に表示されたり、メモリやハードディスク等の記憶部に記憶されたりする。半導体検出器の場合は、シリコン等で構成されており、厚みを非常に薄く製作することが可能である。このため、半導体検出器を使えば荷電粒子光学鏡筒と試料間の非常にせまい位置に配置することが可能となる。例えば、一般的な荷電粒子線装置は荷電粒子光学鏡筒と試料との距離が狭いほうが画像の分解能があがるため、荷電粒子光学鏡筒と試料との距離を狭くしたい場合などは薄い半導体検出器3を用いて光検出することが望ましい。
次に、光検出器800について説明する。光検出器800は光信号を電気信号に変換および増幅することが可能な光電子増倍管(フォトマルチプライヤー)などである。検出素子500にて生じた光は当該発光の波長領域を通過させることが可能な光伝達路801を経由して筺体7外部にある光増倍管などの光検出器800に到達する。発光の波長領域を通過させることが可能な光伝達路801の材料とは、例えば、石英、ガラス、光ファイバー、プラスチック等、光に対して透明または半透明な材料である。光が光電子増倍管などの光検出器800に到達しやすくなるように、光伝達路801周辺に光反射材等を配置してもよい。光増倍管に到達した光は増幅され、電気信号に変換される。この電気信号は信号増幅回路802などによって信号増幅され、下位制御部37または上位制御部36を経由して画像情報としてコンピュータ35の画面に表示されたり、メモリやハードディスク等の記憶部に記憶されたりする。
図22に光伝達路801の別の構成を示す。図22(a)では光を伝達させるための光伝達路801は、光を効率的に集められるように、荷電粒子光学鏡筒と試料との間に配置されている。より具体的には荷電粒子光学鏡筒の直下、例えば対物レンズ下部に設けられている。図示された光伝達路801は一次荷電粒子線が通過可能なように中心に穴803を備えてあるアニュラー型の光伝達路である。光伝達路801には光が一旦光伝達路801に入ったら外に漏れ出ることが無いように、光電子増倍管などの光検出器800側に光を伝達するための光反射材804(図中一点鎖線)が具備されている。本構成の場合、検出素子500から放出された光を広い角度で集められるので、より効率的に光を検出することが可能となる。図22(b)では光を伝達させるための光伝達路801を検出素子の真横に備えている。光伝達路801は光ファイバーなどのように柔軟性がある部材にしてもよい。この例では試料に光伝達路801を近接させることが可能であるため光を集めるのが非常に効率的となる。また、前述したように一般的な荷電粒子線装置では荷電粒子光学鏡筒と試料との距離が狭いほうが画像の分解能があがるため、荷電粒子光学鏡筒と試料との距離をより狭くしたい場合などは図22(b)の構成が望ましくなる。
光伝達路801は前述の位置以外に配置されていてもよく、例えば、試料ステージ5の下側もしくは横側、または荷電粒子光学鏡筒の内部などに配置されていてもよい。光伝達路801を用いれば光電子増幅器などの光検出器800は筺体7内部にあっても外部にあってもよく、検出器配置の自由度が増す。また、光電子増倍管などの光検出器800を比較的試料近傍に配置可能であれば、光伝達路801は不要としてもよい。光増幅器及び光伝達路の位置や変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例の荷電粒子線顕微鏡の範疇に属する。
もし、試料6を、発光部材である検出素子500上ではなく、従来の発光しない試料台に搭載するならば、試料6から反射されてきた反射荷電粒子線は検出器3で取得することが可能となる。つまり、同一の装置で、試料搭載する台を発光部材にすれば試料透過像が取得可能となるし、試料搭載する台を非発光部材にすれば一般的な荷電粒子線装置になる。したがって、本実施例の試料台を用いれば、大幅な装置改変作業や透過荷電粒子観察専用装置の使用をしなくても、従来の走査電子顕微鏡などの装置で簡便に透過荷電粒子画像を取得することができる。
なお、図21の装置構成で本実施例の試料台を用いた場合、検出器3では前述の通り試料から反射されてきた荷電粒子線と試料台の発光部材からの光が同時に検出されることになる。そのため、検出素子3で反射荷電粒子のみを検出したい場合には、検出素子3で試料台の発光部材からの光を検出させないようにするために検出素子3の表面に光を反射または吸収させるための光吸収体を設けてもよい。または、検出素子3が半導体検出素子の場合には、空乏層位置を制御するなどして、光に対して検出感度を落とすような工夫をしてもよい。
また、図21では筺体7内部の空間が非常に大きい装置構成に関して説明したが、図23のように筺体7側面の小さい領域から試料及び試料台を導入するサイドエントリー方式の装置構成で実施してもよい。なお、各光学レンズを制御するための制御系や、検出信号を検出するための検出系や、筺体7や荷電粒子光学鏡筒2内部を排気するための真空ポンプ等は自明のため省略する。試料6下の検出素子500からの発光は筺体7内部等に配置された光検出器にて検出することが可能となる。検出素子500からの発光を検出するための光検出器は筺体7の内部や外部または試料台7や試料ステージ5、または図中光学鏡筒2のどこかに配置されていればよく、光増幅器及び光伝達路の位置や変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例の荷電粒子線顕微鏡の範疇に属する。
また、図17、図21または図23のような装置構成で、試料ステージ5に試料を傾斜させることが可能な機構を具備させることによって、試料を傾斜させて様々な角度から試料内部の観察をしてもよい。試料傾斜を連続的またはある角度ごとに断続的に動かして画像を連続撮影または連続観察して、これらの画像をコンピュータ等の制御部で演算することで得られた内部構造の情報をトモグラフィとして保存または表示してもよい。内部構造の情報をハードディスク等の記憶部に保存してもよい。本機能があれば試料内部の微細構造を様々な角度から観察することによって、試料内部の3次元構造を把握することが可能となる。または、荷電粒子線光学鏡筒からの荷電粒子線が試料に照射される角度を変更することが可能な光学レンズを荷電粒子線光学鏡筒2に備えることでトモグラフィ観察を実現してもよい。この場合、試料ステージ5に試料傾斜機能を設ける必要がないので装置構成が簡便となる。また、上記保存または表示している画像を用いて立体観察するステレオ観察をしてもよい。ステレオ観察時には、角度を変えて撮像した2枚の画像を用いてもよいし、色を変えた画像を重ね合わせた画像を用いてもよいし、3次元観察が可能なモニタなどの表示部に3次元表示させてもよい。