以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、ウォータージェット装置1の側面図である。ウォータージェット装置1は、高圧噴流を噴射して対象物を削孔するものであり、対象物としての鉄筋コンクリート体2の側面に削孔方向を略水平にした状態で取り付けられている。以下の説明では、この姿勢を基準として、削孔方向を前方として説明する。ウォータージェット装置1は、鉄筋コンクリート体2に取り付けられるガイド体3と、ガイド体3に取り付けられてガイド体3によって支持されるウォータージェット本体4とを主要素として備えている。
ガイド体3は、アンカーボルト5によって鉄筋コンクリート体2に固定される正面視矩形状のベース6と、ベース6に立設され、ベース6の底面すなわち鉄筋コンクリート体2の側面と直交する方向に延在するガイドシャフト7と、後述するガイドパイプ15を削孔方向に摺動可能に保持するガイド手段であるパイプガイド8(8A、8B)とを有している。本実施形態では、パイプガイド8として、ガイドシャフト7に摺動可能かつ位置固定可能に取り付けられた第1パイプガイド8Aと、鉄筋コンクリート体2に形成された下孔2a内に挿入された状態で鉄筋コンクリート体2に取り付けられる第2パイプガイド8Bとの2つが用いられている。
ベース6は、鉄筋コンクリート体2への取付状態において、上端の左右方向の中央にガイドシャフト7の基端部を保持している。ガイドシャフト7は、I字状の断面形状(図3参照)を呈する概ね一定断面のガイド部材であり、削孔方向に複数のギヤが列設されたラック7aを上面の後ろ寄りの位置に有している。本実施形態では、ラック7aは1m超の長さを有し、ガイドシャフト7はそれよりも長い長さとされており、一回の削孔作業で1m程度、削孔を進めることができる。ベース6およびガイドシャフト7には、コアドリル装置50(図7(B))に一般的に用いられているものを利用することができる。第1パイプガイド8Aはガイドシャフト7におけるラック7aが設けられた位置よりも前方に固定され、第2パイプガイド8Bは鉄筋コンクリート体2の内部に嵌め込まれて固定される。ガイドシャフト7の詳細については後述する。
ウォータージェット本体4は、ガイドシャフト7に摺動自在に取り付けられ、スイベル9を保持するスイベル保持具10を有している。スイベル9は、図示しない高圧ポンプに上流端が接続されて高圧の削孔水を供給する高圧ホースが接続される固定部材9aと、固定部材9aと相対回転可能に接続されるとともに固定部材9aから削孔水の供給を受ける回転部材9bとを有するジョイントである。スイベル9の回転部材9bには、後述するランス11を固定的に連結するための締結部材であるナット9cが一体に取り付けられている。また、スイベル保持具10の内部には、ラック7aのギヤに噛み合うピニオンギヤが回転可能に設けられている。ピニオンギヤにはその回転を操作するためのハンドル10aが連結されており、ハンドル10aを操作することで作業者はスイベル保持具10を前進および後退させることが可能である。
スイベル9の回転部材9bには、ナット9cを介してランス11が相対回転不能に連結される。ランス11の内部には、スイベル9の回転部材9bから供給される高圧の削孔水を流通させる流路11a(図3参照)が形成されている。ランス11は、削孔水を前方へ供給するとともに回転部材9bと共に回転して回転力を伝達する回転シャフトである。ランス11の先端(前端)には、供給された削孔水を噴出させるノズル12を有する円柱状のノズルホルダ13(13A、13B)が着脱可能に取り付けられる。ノズルホルダ13の詳細については後述する。
スイベル保持具10の後面側には、スイベル9の回転部材9bを回転駆動する駆動源として電動モータ14が固定されている。電動モータ14が回転作動すると、回転力がスイベル9の回転部材9bおよびランス11を介してノズルホルダ13に伝達され、ノズルホルダ13が回転する。
一方、スイベル保持具10の前面側には、管状のガイドパイプ15がランス11を取り囲むように固定されている。ガイドパイプ15は、ランス11の外径よりも大きな内径を有する一方、ノズルホルダ13の外径よりも小さな外径有する本体部16と、本体部16の基端側に一体に設けられるとともにスイベル保持具10に着脱可能に固定され、本体部16よりも大きな内径および外径を有する筒状の基部17と、本体部16の少なくとも前端の内部に設けられ、ランス11を回転可能に保持するベアリング(図2のボールベアリング18)とを有している。ガイドパイプ15は、ランス11の長さに対応する長さ、具体的にはスイベル保持具10への取付状態において前端がランス11の前端よりも若干手前に位置する長さとされている。したがって、ガイドパイプ15の前端から前方に若干離間した位置にノズルホルダ13が配置される。
なお、詳細は後述するが、一度の削孔で貫通しないほど厚い鉄筋コンクリート体2を削孔する場合には、長さの異なる複数本のガイドパイプ15およびランス11を用意する。つまり、ガイドパイプ15やランス11を継ぎ足すのではなく、一本もので長さが段階的に異なるものをそれぞれ用意する。これにより、装置の製造コストは若干高くなるが、継ぎ部の剛性低下による孔の直線性低下を防止できるうえ、削孔作業中の継ぎ部の緩みによる作業の中断を防止でき、品質の向上と作業効率の向上とが達成される。
ガイドパイプ15の基部17の周壁には回転確認窓17aが形成されている。回転確認窓17aが形成されることにより、ガイドパイプ15に覆われたランス11の回転を作業員が目視で確認できるようになっている。また、この回転確認窓17aは、スイベル9の回転部材9bとランス11とを締結するナット9cと軸方向に対応する位置に周方向に長い長孔として形成されている。これにより、回転確認窓17aから工具を差し込んでナット9cの締め付けを行うことが可能になっており、削孔作業中に回転部材9bとランス11との締結が緩んだ場合であっても、ガイドパイプ15をスイベル保持具10から取り外すことなくナット9cを締め付けることができる。
図2はガイドパイプ15の先端部の縦断面図を示している。ガイドパイプ15の本体部16は、先端に内径が拡大した薄肉部16aを有しており、薄肉部16aの先端側の内面には軸方向に互いに離間する2条の環状溝16bが形成されている。両環状溝16bにはスナップリング19が嵌着される。薄肉部16aにおける後側のスナップリング19の後方には、前述したボールベアリング18が2つ設置されており、両ボールベアリング18を介してランス11の軸方向荷重がガイドパイプ15により支持される。両スナップリング19の間には、これらに挟まれるようにシール部材20が装着されている。ガイドパイプ15の先端にシール部材20が配置されることにより、ウォータージェットによる破砕くず(骨材など)がガイドパイプ15とランス11との間の隙間に侵入することが防止される。
図3に示すように、第1パイプガイド8Aは、ガイドシャフト7に摺動可能に嵌合するスライダ部21と、スライダ部21に取り付けられた高さ調整部22と、高さ調整部22のスライダ部21と相反する側に取り付けられた保持部23とを有している。スライダ部21、高さ調整部22および保持部23は、左右に一対に設けられた長ボルト24によって共締めされた一体となっている。保持部23にはリニアブッシュ25が設置されており、このリニアブッシュ25によってガイドパイプ15が削孔方向に摺動可能に保持される。すなわち、第1パイプガイド8Aは、ガイドパイプ15を保持することで、間接的にランス11を軸方向に摺動自在に保持している。
図4に示すように、第2パイプガイド8Bは、鉄筋コンクリート体2の下孔2aに沿った輪郭を有し、鉄筋コンクリート体2に固定される円筒状の外枠31と、外枠31の内面に等間隔に設置され、径方向内側に向けて突出する3本の支柱32と、3本の支柱32によって外枠31の中央に保持された保持部33とを有している。保持部33にはリニアブッシュ35が設置されており、このリニアブッシュ35によってガイドパイプ15が削孔方向に摺動可能に保持される。すなわち、第2パイプガイド8Bは、ガイドパイプ15を保持することで、間接的にランス11を軸方向に摺動自在に保持している。保持部33と外枠31との間の環状空間のうち支柱32間に形成される3つの空間は、ウォータージェットによる破砕くずを外部に排出するための排出口36として機能する。外枠31の大きさは、後述する大口径孔42よりも小さくても構わないが、下孔2aは、二度明けになる手間を排除するために、最初から大口径孔42と同じかそれ以上の大きさとしておくとよい。
なお、ノズルホルダ13はガイドパイプ15よりも大径であり、リニアブッシュ35を通すことができないため、ノズルホルダ13が取り付けられていない状態のガイドパイプ15を第2パイプガイド8Bのリニアブッシュ35に通した後にノズルホルダ13をガイドパイプ15の先端に取り付け、その後、第2パイプガイド8Bを鉄筋コンクリート体2の下孔2a内に設置する手順により、ウォータージェット装置1は図1に示す状態とされる。
前述したように、一度の削孔で貫通しないほど厚い鉄筋コンクリート体2を削孔する場合には、長さの異なる複数本のガイドパイプ15およびランス11が用意される。一方、ランス11のノズルホルダ取付部の形状は共通である。そのため、ノズルホルダ13は、長さの異なるランス11を用いるたびに付け替えて使用すればよい。一方、一度の削孔で形成できないほど、すなわち、高圧ポンプの定格や高圧ホースの径、ランス11の径などによって制限される高圧水量によって一度に削孔できないほど太い径の孔を削孔する場合には、異なる複数のノズルホルダ13を使用する。図5および図6を参照しながらノズルホルダ13の概要について説明する。
図5は、削孔時に最初に使用するノズルホルダ13(以下、第1ノズルホルダ13Aと称する)であり、(A)は側面図を、(B)は正面図を、(C)は使用状態の側面図を示している。(A)および(B)に示すように、第1ノズルホルダ13Aの後面にはランス11が接続され、第1ノズルホルダ13Aの内部にはランス11の流路11aに接続する高圧水路13aが正面視で中央に形成されている。図示例では、高圧水路13aから第1ノズルホルダ13Aの外面に至るノズル12(孔)が3本形成されている。当然であるが、各ノズル12の流路断面積および全てのノズル12の合計流路断面積は、高圧水路13aの流路断面積よりも小さい。
3本のノズル12のうちの1本は、ランス11の軸線11Xに沿って削孔方向と平行に形成されて第1ノズルホルダ13Aの前面の中央に開口している。他の1本は、ランス11の軸線11Xに対して第1の傾斜角度θ1をもって形成され、第1ノズルホルダ13Aの前面における中央から若干偏倚した位置に開口している。最後の1本は、ランス11の軸線11Xに対して第1の傾斜角度θ1よりも大きな第2の傾斜角度θ2をもって形成され、第1ノズルホルダ13Aの前面における中央からより偏倚した位置に開口している。
したがって、削孔時には(C)に示すように、3本のノズル12の延在方向に沿って3本のウォータージェットが第1ノズルホルダ13Aの前面から前方ないし斜め前方に噴射され、この状態でランス11および第1ノズルホルダ13Aが回転しながら一定速度で前進することにより、第1ノズルホルダ13Aの径よりも大きいが比較的小径の孔(以下、小口径孔41と称する)が形成される。なお、ウォータージェットは、研磨材を含まない液体のみからなるものである。そのため、コンクリートは破砕するが、鉄筋などの鋼材は破砕されずにそのまま残る。破砕されたコンクリートのくず(骨材)は、ウォータージェットに使われた水と共にガイドパイプ15の外周に形成される空間を通って小口径孔41の入口側に押し流され、図4の第2パイプガイド8Bの排出口36を通って鉄筋コンクリート体2の外部に排出される。
なお、下孔2aに第2パイプガイド8Bを設置した後には、図1に示すように、下孔2aよりも大きな径を有し、ガイドパイプ15を挿通させる孔が円形の底板に形成された水処理パッド44を鉄筋コンクリート体2の表面に取り付けておき、下孔2aから排出される排水を水処理パッド44で受けると同時に、水処理パッド44に接続したバキュームホース45で吸引して同時回収を実施する。
また、詳細な図示は省略するが、小口径孔41の出口側の鉄筋コンクリート体2の表面にも同様の水処理パッド46(図8(D)参照。ただし、ガイドパイプ15用の挿通孔はない。)を遅くとも小口径孔41が貫通する前に取り付けておき、小口径孔41が貫通したときのウォータージェットの飛散を防止する。なお、出口側の水処理パッド46は、小口径孔41貫通時のウォータージェットの飛散防止だけでなく、後述する大口径孔42削孔時の排水処理用としても活用される。
図6は、小口径孔41の形成後に使用するノズルホルダ13(以下、第2ノズルホルダ13Bと称する)であり、同様に(A)は側面図を、(B)は正面図を、(C)は使用状態の側面図を示している。(A)および(B)に示すように、第2ノズルホルダ13Bの後面にはランス11が接続され、第2ノズルホルダ13Bの内部にはランス11の流路11aに接続する高圧水路13aが正面視で中央に形成されている。図示例では、高圧水路13aから第2ノズルホルダ13Bの外面に至るノズル12(孔)が3本形成されている。
3本のノズル12のうちの1本は、ランス11の軸線11Xに対して第2の傾斜角度θ2(図5)よりも大きな第3の傾斜角度θ3をもって形成され、第2ノズルホルダ13Bの前面の外周部に開口している。他の1本は、ランス11の軸線11Xに対して第3の傾斜角度θ3よりも大きな第4の傾斜角度θ4をもって形成され、第2ノズルホルダ13Bの前面外周縁付近に開口している。最後の1本は、ランス11の軸線11Xに対して第4の傾斜角度θ4よりも大きな第5の傾斜角度θ5をもって形成され、第2ノズルホルダ13Bの側面に開口している。
したがって、削孔時には(C)に示すように、3本のノズル12の延在方向に沿って3本のウォータージェットが第2ノズルホルダ13Bの前面または側面から斜め前方ないし概ね径方向に噴射され、この状態でランス11および第2ノズルホルダ13Bが回転しながら一定速度で前進することにより、小口径孔41よりも大径の孔(以下、大口径孔42と称する)が形成される。言い換えれば、小口径孔41が大口径孔42に拡径される。
なお、大口径孔42の削孔時にも、ウォータージェットが研磨材を含まないため、コンクリートのみが破砕され、鉄筋などの鋼材は破砕されない。破砕されたコンクリートのくず(骨材)は、ウォータージェットに使われた水と共にガイドパイプ15の外周に形成される空間を通って大口径孔42の入口側に押し流されるか、前方の小口径孔41を通って小口径孔41の出口側に押し流される。いずれに押し流された破砕くずを含む排水も、水処理パッド44、46で受けられると同時に、バキュームホース45で吸引されて同時回収される。
更に大径の孔を削孔する場合には、第2ノズルホルダ13Bの前進速度を遅くするか、図示省略するが、例えば第5傾斜角度のノズル12のみが複数形成されたノズルホルダ13を使用して再度拡径すればよい。
このように、実施形態に係るウォータージェット装置1は、ガイド体3と、スイベル保持具10と、ランス11と、ノズルホルダ13と、電動モータ14と、ガイドパイプ15と、パイプガイド8とを有することにより、電動モータ14がランス11を回転駆動しながらノズル12から噴出されたウォータージェットが対象物を断面円形に破砕し、スイベル保持具10がガイド体3に沿って摺動することで、対象物に所望の径の孔を穿設することができる。
そして、ランス11をガイドパイプ15で取り囲み、電動モータ14によってランス11をガイドパイプ15の内部で回転させる簡単な構成となっているため、故障が発生しづらい。また、削孔長が長い場合にも、回転するランス11は、ガイドパイプ15によって保持されるため振れ回ることはなく、孔径が必要以上に大きくなって削孔効率が低下したり、ランス11やノズルホルダ13が孔の内壁面に接触して損傷または磨耗したりすることもない。
本実施形態では、パイプガイド8が、ガイド体3における鉄筋コンクリート体2への固定用のベース6側に設けられた第1パイプガイド8Aを含んでいる。そのため、第1パイプガイド8Aを予めガイド体3に固定しておくことができ、削孔作業の効率化が可能になる。特に、短い孔を穿設する場合(壁厚が小さい場合)に効果的である。
また本実施形態では、パイプガイド8が、鉄筋コンクリート体2に取り付けられる第2パイプガイド8Bを含んでいる。そのため、ガイドパイプ15が第2パイプガイド8Bによってより先端側(ノズルホルダ13側)で保持されるため、穿設する孔の方向がより正確になる。また、第2パイプガイド8Bからスイベル保持具10までの距離、すなわち支持点間距離が長くなるため、長を穿設する場合にガイドパイプ15がランス11と共に振れ回ることが抑制される。
ガイドパイプ15が対象物に穿設された孔に挿入されてしまうと、ランス11は見えなくなるため、破砕くず(骨材など)が挟まってランス11の回転が止まってしまったときに作業員はこれに気付きにくいが、前述したように、ガイドパイプ15のスイベル保持具10側の基部17に回転確認窓17aが形成されているため、ランス11の回転を回転確認窓17aから目視で容易に確認することができる。
更に、スイベル9は、スイベル保持具10と一体をなし、ホースが接続される固定部材9aと、固定部材9aに対して相対回転可能に設けられた回転部材9bとを有し、回転確認窓17aが、ランス11とスイベル9の回転部材9bとを連結するナット9cに対応する位置に設けられている。そのため、ランス11とスイベル9の回転部材9bとの連結が緩んだ場合に、ガイドパイプ15をスイベル保持具10から外すことなく、窓から挿入した工具でナット9cを締め直すことができ、作業効率が一層向上する。
次に、図7〜図11を参照しながら、実施形態に係るウォータージェット装置1を用いて鉄筋コンクリート体2を削孔する(大口径孔42を穿設する)手順について説明する。
まず、図7を参照して準備作業の手順を説明する。ここでは、(A)に示すように、鉄筋コンクリート体2が4m程度の厚さを有する橋脚であり、耐震補強用のPC鋼線を追加するために、想像線で示す約4mの大口径孔42(貫通孔)を形成する。まず(B)に示すように、鉄筋コンクリート体2における大口径孔42の穿設を予定する位置の一方の側面にウォータージェット装置1のガイド体3を固定し、ガイド体3に公知のコアドリル装置50をセットする。コアドリル装置50を駆動してコアビットを回転させ、コアドリルの回転速度が極端に低くならない程度にハンドル50aを操作してコアドリル装置50に前進力を加えてコア孔を形成する。その後、(C)に示すように、コアドリル装置50を撤去し、楔や糸を用いた公知の手法でコアを取り出して、有底の下孔2aを形成する。下孔2aの直径は、前述したように大口径孔42の直径以上とするとよい。
次に、図8および図9を参照して小口径孔41の穿設手順を説明する。
まず図8の(D)に示すように、第1パイプガイド8Aをガイド体3に取り付けるとともに、それぞれ1m強程度の長さを有する第1ランス11Aおよび第1ガイドパイプ15Aをウォータージェット本体4にセットする。ウォータージェット本体4の第1ガイドパイプ15Aを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第1ランス11Aの先端に小口径用の第1ノズルホルダ13Aを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに挿入して鉄筋コンクリート体2に固定するとともにウォータージェット本体4をガイド体3に取り付ける。また、鉄筋コンクリート体2における小口径孔41の入口側の面に水処理パッド44およびバキュームホース45をセットする。鉄筋コンクリート体2における小口径孔41の出口側の面にも水処理パッド46およびバキュームホース45をセットしておく。
続いて(E)に示すように、電動モータ14を駆動して第1ランス11Aおよび第1ノズルホルダ13Aを回転させつつ軸方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一定速度で前進させて小口径孔41を1m程度穿設する。削孔中、破砕されたコンクリートくずおよびウォータージェットに使われた水は共に小口径孔41の入口側に押し流されてくるため、水処理パッド44で受けてバキュームホース45で排出処理を行う。その後、第2パイプガイド8Bの鉄筋コンクリート体2に対する固定を解除してウォータージェット本体4を後退させ、一旦第1ノズルホルダ13Aを取り外して第1ランス11Aおよび第1ガイドパイプ15Aをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて(F)に示すように、それぞれ2m強程度の長さを有する第2ランス11Bおよび第2ガイドパイプ15Bをウォータージェット本体4にセットする。すなわち、ランス11をより長さの長いものに交換するランス交換を行う。ウォータージェット本体4の第2ガイドパイプ15Bを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第2ランス11Bの先端に第1ノズルホルダ13Aを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに挿入して鉄筋コンクリート体2に固定するとともにウォータージェット本体4をガイド体3に取り付ける。
続いて(G)に示すように、電動モータ14を駆動して第2ランス11Bおよび第1ノズルホルダ13Aを回転させつつ軸方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一定速度で前進させて小口径孔41を更に1m程度穿設して2m程度とする。その後、(E)で説明した要領で、一旦第1ノズルホルダ13Aを取り外して第2ランス11Bおよび第2ガイドパイプ15Bをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて図9(H)に示すように、(F)と同じ要領で、それぞれ3m強程度の長さを有する第3ランス11Cおよび第3ガイドパイプ15Cをウォータージェット本体4にセットし、第3ガイドパイプ15Cを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第3ランス11Cの先端に第1ノズルホルダ13Aを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに、ウォータージェット本体4をガイド体3にそれぞれセットする。
続いて(I)に示すように、電動モータ14を駆動して第3ランス11Cおよび第1ノズルホルダ13Aを回転させつつ軸方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一速度で前進させて小口径孔41を更に1m程度穿設して3m程度とする。その後、(E)で説明した要領で、一旦第1ノズルホルダ13Aを取り外して第3ランス11Cおよび第3ガイドパイプ15Cをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて(J)に示すように、(F)と同じ要領で、それぞれ4m強程度の長さを有する第4ランス11Dおよび第4ガイドパイプ15Dをウォータージェット本体4にセットし、第4ガイドパイプ15Dを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第4ランス11Dの先端に第1ノズルホルダ13Aを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに、ウォータージェット本体4をガイド体3にそれぞれセットする。
続いて(K)に示すように、電動モータ14を駆動して第4ランス11Dおよび第1ノズルホルダ13Aを回転させつつ軸方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一速度で前進させて小口径孔41を更に1m程度穿設して鉄筋コンクリート体2を貫通させる。貫通時には、第1ノズルホルダ13Aから噴出されるウォータージェットを水処理パッド46で受けて飛散を防止する。貫通後、第1ノズルホルダ13A、第4ランス11Dおよび第4ガイドパイプ15Dはウォータージェット本体4から取り外す。
なお、小口径孔41の削孔中に鉄筋などの埋設物に突き当たった場合には、第1ノズルホルダ13Aが当接してウォータージェット本体4が前進できなくなるため、ウォータージェット本体4を撤去して小口径孔41の内部を確認する。障害物が切断を許されない鉄筋などである場合には、位置をずらして最初から作業をやり直す。また、第1ノズルホルダ13Aが障害物に衝突せずに進んだ場合であっても、小口径孔41の貫通後にその内壁面を検査する。切断を許されない鉄筋などが露出している場合には、次に説明する大口径孔42の位置を適宜ずらす、すなわちガイド体3の固定位置をずらすとよい。
次に、図10および図11を参照して大口径孔42の穿設手順を説明する。ここでは、大口径孔42の穿設位置を小口径孔41の位置からずらさないものとして説明する。
まず図10の(L)に示すように、それぞれ1m強程度の長さを有する上記第1ランス11Aおよび第1ガイドパイプ15Aをウォータージェット本体4に再びセットする。ウォータージェット本体4の第1ガイドパイプ15Aを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第1ランス11Aの先端に今度は第2ノズルホルダ13Bを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに挿入して鉄筋コンクリート体2に固定するとともにウォータージェット本体4をガイド体3に取り付ける。鉄筋コンクリート体2における大口径孔42の入口側の面に水処理パッド44およびバキュームホース45を、大口径孔42の出口側の面に水処理パッド46およびバキュームホース45をセットしておく点は、図8で説明した小口径孔41を削孔するときと同じである。
続いて(M)に示すように、電動モータ14を駆動して第1ランス11Aおよび第2ノズルホルダ13Bを回転させつつ径方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一定速度で前進させて大口径孔42を1m程度穿設する。削孔中、破砕されたコンクリートくずおよびウォータージェットに使われた水は共に小口径孔41の入口側に押し流されてくるため、水処理パッド44で受けてバキュームホース45で排出処理を行う。また、コンクリートくずおよびウォータージェットに使われた水は、鉄筋コンクリート体2における小口径孔41の出口側にも流れ出てくるため、出口側の面に取り付けた水処理パッド46のバキュームホース45も稼働させておく。その後、第2パイプガイド8Bの鉄筋コンクリート体2に対する固定を解除してウォータージェット本体4を後退させ、一旦第2ノズルホルダ13Bを取り外して第1ランス11Aおよび第1ガイドパイプ15Aをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて(N)に示すように、それぞれ2m強程度の長さを有する上記第2ランス11Bおよび第2ガイドパイプ15Bをウォータージェット本体4にセットする。すなわち、ランス11をより長さの長いものに交換するランス交換を行う。ウォータージェット本体4の第2ガイドパイプ15Bを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第2ランス11Bの先端に第2ノズルホルダ13Bを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに挿入して鉄筋コンクリート体2に固定するとともにウォータージェット本体4をガイド体3に取り付ける。
続いて、(O)に示すように、電動モータ14を駆動して第2ランス11Bおよび第2ノズルホルダ13Bを回転させつつ径方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一定速度で前進させて大口径孔42を更に1m程度穿設して2m程度とする。その後、(M)で説明した要領で、一旦第2ノズルホルダ13Bを取り外して第2ランス11Bおよび第2ガイドパイプ15Bをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて図11(P)に示すように、(N)と同じ要領で、それぞれ3m強程度の長さを有する上記第3ランス11Cおよび第3ガイドパイプ15Cをウォータージェット本体4にセットする。ウォータージェット本体4の第3ガイドパイプ15Cを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第3ランス11Cの先端に第2ノズルホルダ13Bを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに、ウォータージェット本体4をガイド体3にそれぞれセットする。
続いて(Q)に示すように、電動モータ14を駆動して第3ランス11Cおよび第2ノズルホルダ13Bを回転させつつ径方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一速度で前進させて大口径孔42を更に1m程度穿設して3m程度とする。その後、(M)で説明した要領で、一旦第2ノズルホルダ13Bを取り外して第3ランス11Cおよび第3ガイドパイプ15Cをウォータージェット本体4から取り外す。
続いて(R)に示すように、(N)と同じ要領で、それぞれ4m強程度の長さを有する上記第4ランス11Dおよび第4ガイドパイプ15Dをウォータージェット本体4にセットする。ウォータージェット本体4の第4ガイドパイプ15Dを第2パイプガイド8Bに挿入した後、第4ランス11Dの先端に第2ノズルホルダ13Bを取り付け、第2パイプガイド8Bを下孔2aに、ウォータージェット本体4をガイド体3にそれぞれセットする。
続いて(S)に示すように、電動モータ14を駆動して第4ランス11Dおよび第2ノズルホルダ13Bを回転させつつ径方向成分を主に有するウォータージェットを噴出させて鉄筋コンクリート体2のコンクリートを破砕しながらウォータージェット本体4を一速度で前進させて大口径孔42を更に1m程度穿設して鉄筋コンクリート体2を貫通させ、大口径孔42の穿設が完了する。
このように、最初に小口径孔41を穿設した(図8、図9)後、拡径用の第2ノズルホルダ13Bを用いて小口径孔41を拡径しながら大口径孔42を穿設する(図10、図11)ことにより、小口径孔41を穿設しているときに埋設物に突き当たった場合には、位置をずらして再度小口径孔41を穿設するとしても、ロスする作業時間が少なくて済む。また、小口径孔41を穿設し終えた後に小口径孔41の内壁面を確認し、露出している埋設部がある場合には大口径孔42の中心を小口径孔41の中心からずらすことも可能なため、作業がロスになることが防止される。つまり、埋設物を避けながら効率的に所望の径の孔を穿設することができる。
また、小口径孔41を穿設する際(図8、図9)、および大口径孔42を穿設する際(図10、図11)に、長さの短いランス11を先に用いて小口径孔41または大口径孔42を途中まで穿設した後、それよりも長いランス11に取り替えて小口径孔41または大口径孔42を延長するランス交換を少なくとも1回行うため、削孔作業中にランス11を移動させる距離が短くなり、ウォータージェット本体4を摺動可能に支持するガイド体3の長さも短くて済む。そして、長さが短くなるため、ガイド体3の撓みが小さくなり、より高精度に孔をあけることが可能になる。また、ガイド体3に要求される剛性が小さくなるため、ガイド体3の小型化も可能である。
そして、本実施形態では、小口径孔41を穿設する前に、大口径孔42の直径以上の直径を有するコアドリル装置50を用いて鉄筋コンクリート体2の削孔予定位置に有底の下孔2aを穿設し(図7(B)、(C))、小口径孔41を穿設する際(図8、図9)および大口径孔42を穿設する際(図10、図11)に、下孔2aに設置した第2パイプガイド8Bによってランス11が軸方向に摺動自在に間接的に保持される。そのため、ランス11は、ウォータージェット本体4の摺動支持部であるスイベル保持具10と第2パイプガイド8Bとの2箇所で支持され、その支持剛性が高くなり、孔(41、42)の位置精度も高くなる。特に、第2パイプガイド8Bがガイド体3ではなく鉄筋コンクリート体2によって支持され、支持点間隔が長くなるため、長い孔(41、42)を穿設する場合にもランス11が振れ回ることが抑制される。
加えて、大口径孔42を穿設する際(図10、図11)には、ウォータージェット本体4を一定の速度で摺動させることにより、大口径孔42の孔径を一定にすることができる。なお、本実施形態では、作業員がハンドル10aを操作してウォータージェット本体4を一定速度で前進させているが、スイベル保持具10を設定した所定の速度で前進させる前進駆動装置を設けてより一定した速度でウォータージェット本体4を前進させてもよい。
<変形実施形態>
次に、図12および図13を参照して、本発明の変形実施形態に係るウォータージェット装置1について説明する。なお、上記実施形態と同一の部材や部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図12に示すように、本変形実施形態に係るウォータージェット装置1は、上記実施形態の構成に加え、ガイドシャフト7の後部(ベース6と相反する側)を支持する支持架台60を備えている。支持架台60は、ガイドシャフト7の後部の削孔方向に直交する方向の荷重(本変形実施形態では特に上下方向荷重)を支持できるものであれば、その具体的構成は限定されるものではない。本変形実施形態では、支持架台60は、鉄筋コンクリート体2の削孔位置よりも下方の支持面61(地盤や鉄筋コンクリート体2の上向き面など)上に単管パイプを組んで設置された仮設の足場を利用している。
具体的には、支持架台60は、ガイド体3に取り付けられたウォータージェット本体4を取り囲むように立設され、下端に高さ調整用のジャッキ62aを備えた4本の支柱62と、4本の支柱62の上部および下部を連結するように矩形に配置された上下の水平つなぎ材63と、下側の水平つなぎ材63上に設置された足場板64と、後側の2本の支柱62に掛け渡されてガイドシャフト7の後端を支持する支持単管65および支持単管65に固定されたクランプ66とを有している。なお、図13に併せて示すように、ガイドシャフト7の後端にはアングル7bが上下方向に延在するように取り付けられており、クランプ66はアングル7bの1辺を把持することでガイドシャフト7の後端を固定している。
このように、ウォータージェット装置1が、ガイド体3における鉄筋コンクリート体2への固定端と相反する側を支持する支持手段として支持架台60を更に備えることにより、ランス11の回転によるガイド体3の後部のぶれを軽減させることができるため、より正確に鉄筋コンクリート体2に小口径孔41および大口径孔42を穿設することができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として鉄筋コンクリート体2を削孔対象物として説明を行ったが、対象物はこれに限られるものではなく、広く適用することができる。また、上記変形実施形態では、ガイド体3の後部を支持する支持手段として仮設の足場を利用した支持架台60を用いているが、例えば、ガイド体3の後部に係止した4本のチェーンブロックによって上下左右の引張力を加えてガイド体3の後部を固定する形態とすることなども可能である。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、各作業の手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素や手順は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。