以下、本発明の自動二輪車の車体骨格の製造方法が適用される自動二輪車の車体骨格組立システムの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いる前後方向及び左右方向は、自動二輪車の運転者の視点に基づく方向を意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車製造システム(車体骨格組立システム)1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施形態の自動二輪車製造システム1によって製造される車体骨格10を示す図である。本実施形態の自動二輪車製造システム1は、自動二輪車の車体骨格10を組み立てて次の工程が行われる次工程ライン300に移送するためのものである。
まず、自動二輪車製造システム1によって製造される車体骨格10について説明する。図2に示すように、車体骨格10は、メインフレーム11と、フロントモジュール12と、リアモジュール13と、エンジン15と、を主要な構成として備える。
メインフレーム11は、車体骨格10のベースとなるものであり、エンジン15が取り付けられる。本実施形態のメインフレーム11は、メインフレーム11のフロント側に配置されるフロント側エンジン支持部201と、リア側に配置されるリア側エンジン支持部202と、によって前後方向でエンジン15を挟持する。フロント側エンジン支持部201及びリア側エンジン支持部202は、エンジン15の前後方向のサイズにあわせて前後方向に間隔をあけて配置されており、いずれも後下方に延び出るように形成される。本実施形態では、3本のハンガーボルト210によってメインフレーム11にエンジン15が固定される。
フロントモジュール12は、フロントに配置される前輪232を支持するサスペンションモジュールである。フロントモジュール12は、フロントフォーク231と、フロントフォーク231に支持される前輪232と、前輪232の車軸となるフロントアクスル233と、を主要な構成として備える。
リアモジュール13は、リアに配置される後輪242を支持するホイールモジュールである。リアモジュール13は、スイングアーム241と、スイングアーム241に支持される後輪242と、後輪242の車軸となるリアアクスル243と、を主要な構成として備える。リアモジュール13は、ピボットシャフト211を介してメインフレーム11に連結される。
車体骨格10の主要な構成は、以上の通りである。次に、この車体骨格10の組立を行う自動二輪車製造システム1について説明する。図1に示すように、自動二輪車製造システム1は、メインフレーム組立設備101と、フレーム結合設備102と、リアモジュール組立設備103と、車体骨格組立設備104と、締結設備105と、を主要な設備として備える。
まず、メインフレーム組立設備101について説明する。メインフレーム組立設備101には、メインフレーム把持ジグ20と、圧送装置24と、が配置される。
メインフレーム把持ジグ20には、作業員によって上流工程で製造されたメインフレーム11が供給される。本実施形態のメインフレーム把持ジグ20は、ベース板21と、ベース板21の両面に配置されるフレーム係止部22と、ステム取付装置23と、を備える。
ベース板21は、水平方向で回転可能に構成される(図1の矢印参照)。ベース板21の一側の面は、後述の第2ロボット32側を向いており、ベース板21の他側の面のフレーム係止部22にメインフレーム11が供給される。本実施形態のフレーム係止部22は、上下を逆にした状態でメインフレーム11を係止する。ベース板21は、作業員が図略の操作ボタンを操作するとベース板21が180度回転し、メインフレーム11が供給された面が、第2ロボット32側を向くようになっている。なお、作業員によって供給されるメインフレーム11は、ステムシャフト等が取り付けられていない未完成のメインフレーム11である。
ステム取付装置23は、フレーム係止部22に係止されたメインフレーム11に対し、ステムシャフトを取り付ける機構である。
圧送装置24は、スチームボールをメインフレーム11に圧送する装置である。圧送装置24は、メインフレーム把持ジグ20の第2ロボット32側に配置される。
本実施形態では、メインフレーム組立設備101で、次工程に送るためのメインフレーム11の組立作業が行われる。メインフレーム11が係止されたフレーム係止部22が第2ロボット32側を向いた状態で、圧送装置24によってスチールボールが圧送される。スチームボールの圧送後、ステム取付装置23によってステムシャフトの取付作業が行われる。これにより、メインフレーム11が次工程に送られる状態になる。
次に、フレーム結合設備102について説明する。フレーム結合設備102には、フロントモジュール搬送部41と、結合部品搬送部42と、が接続される。また、フレーム結合設備102には、第1ロボット31と、第2ロボット32と、フロントアクスル挿入装置55と、第3ロボット33と、が配置される。
フロントモジュール搬送部41は、上流工程で前輪232がフロントフォーク231に取り付けられたフロントモジュール12を搬送する搬送ラインである。結合部品搬送部42は、フロントモジュール12とメインフレーム11を結合するための部品を搬送するラインである。本実施形態では、結合部品搬送部42によってトップブリッジ235等の部品がフレーム結合設備102まで搬送される。
第1ロボット31は、フロントモジュール搬送部41のフレーム結合設備102側の横に配置される。第1ロボット31は、複数の関節を有するアームと、アームの先端に取り付けられるエンドエフェクタと、を備える。第1ロボット31は、そのエンドエフェクタが把持機構を有し、フロントモジュール搬送部41によって搬送されてきたフロントモジュール12をフレーム結合設備102の組付位置に移送する。
第2ロボット32は、メインフレーム組立設備101とフレーム結合設備102の間に配置される。第2ロボット32は、複数の関節を有するアームと、アームの先端に取り付けられるエンドエフェクタと、を備える。第2ロボット32は、そのエンドエフェクタが把持機構を有し、メインフレーム把持ジグ20からメインフレーム11を受け取り、フレーム結合設備102までメインフレーム11を移送する。
フロントアクスル挿入装置55は、フレーム結合設備102の組付位置に移送されたフロントモジュール12に対してフロントアクスル233を挿入する。
第3ロボット33は、フロントモジュール搬送部41の横であって、フレーム結合設備102と第1ロボット31の間に配置される。第3ロボット33は、複数の関節を有するアームと、アームの先端に取り付けられるエンドエフェクタと、を備える。第3ロボット33は、そのエンドエフェクタが把持機構を有し、結合部品搬送部42によって搬送されてきたトップブリッジ235をフレーム結合設備102の組付位置に移送する。
本実施形態では、フレーム結合設備102で、以下のようにメインフレーム11とフロントモジュール12が結合される。第1ロボット31によって組付位置にセットされたフロントモジュール12に対してフロントアクスル挿入装置55によってフロントアクスル233が挿入される。次に、フロントモジュール12のフロントフォーク231がメインフレーム11の挿入箇所に挿入され、フロントモジュール12にメインフレーム11が組み付けられる。第3ロボット33は、フロントモジュール12がメインフレーム11に組み付けられた状態でトップブリッジ235を取り付け、メインフレーム11とフロントモジュール12が結合される。なお、第1ロボット31は、このトップブリッジ235の締結作業に並行してフロントアクスル233の仮締結を行う。エンジン15が固定される前に、メインフレーム11にフロントモジュール12が結合されるので、エンジン15を取り付けたメインフレーム11に対してフロントモジュール12を結合する場合に比べ、容易に位置調整を行うことができ、ロボットによる結合作業をスムーズに行うことが可能になっている。
次に、リアモジュール組立設備103について説明する。リアモジュール組立設備103には、リアモジュール部品搬送部47が接続される。また、リアモジュール組立設備103には、第4ロボット34と、第5ロボット35と、リアアクスル挿入装置56と、が配置される。
リアモジュール部品搬送部47は、上流工程で製造されたリアモジュール13を構成する部品を搬送する搬送ラインである。本実施形態では、リアモジュール部品搬送部47によって、スイングアーム241及び後輪242がリアモジュール組立設備103まで搬送される。また、リアモジュール部品搬送部47の搬送方向は、車体骨格組立設備104を挟んだフロントモジュール搬送部41の搬送方向と同じ方向になっている。
第4ロボット34は、リアモジュール部品搬送部47のリアモジュール組立設備103側の横に配置される。第4ロボット34は、複数の関節を有するアームと、アームの先端に取り付けられるエンドエフェクタと、を備える。第4ロボット34は、リアモジュール部品搬送部47によって搬送されてきた後輪242をリアモジュール組立設備103の組付位置に移送する。
第5ロボット35は、リアモジュール部品搬送部47の横であって、リアモジュール組立設備103と第4ロボット34の間に配置される。第5ロボット35は、複数の関節を有するアームと、アームの先端に取り付けられるエンドエフェクタと、を備える。第5ロボット35は、そのエンドエフェクタが把持機構を有し、リアモジュール部品搬送部47によって搬送されてきたスイングアームをリアモジュール組立設備103の組付位置に移送し、第4ロボット34によって移送された後輪に組み付ける。
リアアクスル挿入装置56は、リアモジュール組立設備103の組付位置でスイングアーム241がセットされた後輪242に対してリアアクスル243を挿入する。
本実施形態では、リアモジュール組立設備103で、以下のようにリアモジュール13が組み立てられる。第4ロボット34によって組付位置にセットされた後輪242に対して第5ロボット35がスイングアーム241を上方からセットする。次に、第5ロボット35は、組付位置でスイングアーム241の先端を車体骨格組立設備104側に向ける姿勢変更を行う。この状態で、リアアクスル挿入装置56によってリアアクスル243がリアモジュール13に挿入されるとともに、第5ロボット35によってリアアクスル243の仮締結が行われる。
次に、車体骨格組立設備104について説明する。図3は、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11及びリアモジュール13が車体骨格組立設備104に搬送される様子を示す図である。
図3に示すように、車体骨格組立設備104には、車体骨格搬送部45と、結合フレーム搬送部46と、リアモジュール搬送部50と、が配置される。
車体骨格搬送部45は、車体骨格組立設備104で組み立てられた車体骨格10を搬送するコンベアである。本実施形態では、車体骨格搬送部45の上流側から供給されたエンジン15が車体骨格組立設備104の組付位置まで搬送される。車体骨格搬送部45の下流側の端部は、後述する締結設備105に接続される。
結合フレーム搬送部46は、フレーム結合設備102でフロントモジュール12が結合されたメインフレーム11を車体骨格組立設備104まで搬送する。本実施形態の結合フレーム搬送部46は、ハンガー装置51と、フロントモジュールガイド部52と、を備える。ハンガー装置51は、フロントモジュール12が取り付けられたメインフレーム11を上方から把持する。フロントモジュールガイド部52は、フレーム結合設備102と車体骨格組立設備104の間を直線状に接続するガイドレールである。フレーム結合設備102から車体骨格組立設備104への搬送は、ハンガー装置51でメインフレーム11の上部を把持し、フロントモジュール12の下部をフロントモジュールガイド部52にガイドさせながら行われる。
リアモジュール搬送部50は、リアモジュール組立設備103で組み立てられたリアモジュール13を車体骨格組立設備104まで搬送するラインである。
本実施形態のリアモジュール搬送部50は、リアモジュールガイド部53と、スライド移送装置54と、を備える。リアモジュールガイド部53は、リアモジュール組立設備103の組付位置と車体骨格組立設備104の組付位置との間を直線的に接続するガイドレールである。スライド移送装置54は、リアモジュール13のスイングアーム241を係止可能に構成されるとともに、リアモジュールガイド部53に沿ってリアモジュール組立設備103と車体骨格組立設備104の間を移動可能に構成される。リアモジュール組立設備103から車体骨格組立設備104への搬送は、リアモジュール13を係止したスライド移送装置54の移動によって行われる。なお、搬送時のリアモジュール13は、スライド移送装置54によって、スイングアーム241の先端が車体骨格組立設備104側に向いた姿勢が維持された状態となる。これにより、車体骨格組立設備104の所定位置で、リアモジュール13の姿勢を大きく変える必要がなくなり、速やかに次工程に移ることが可能になっている。
ここで、車体骨格搬送部45と、結合フレーム搬送部46と、リアモジュール搬送部50と、の配置関係について説明する。本実施形態では、車体骨格搬送部45は、フロントモジュール搬送部41とリアモジュール部品搬送部47の間の中央に配置されている。車体骨格10の搬送方向は、フロントモジュール搬送部41及びリアモジュール部品搬送部47の搬送方向と平行な方向になっている。また、結合フレーム搬送部46のフロントモジュールガイド部52と、リアモジュール搬送部50のリアモジュールガイド部53と、は車体骨格組立設備104を挟んで略同一直線状に配置されている。
以上のように、本実施形態の自動二輪車製造システム1は、車体骨格10を構成する部品が車体骨格組立設備104に集約されるようにレイアウトされている。これにより、車体骨格搬送部45、結合フレーム搬送部46及びリアモジュール搬送部50に囲まれる空間に、各工程を行うロボット(第1ロボット31〜第5ロボット35)及びメインフレーム把持ジグ20等のメインフレーム組立設備101を集約配置でき、スペースの効率的な活用が実現される。
また、本実施形態では、フレーム結合設備102によるメインフレーム11とフロントモジュール12の結合作業と、リアモジュール組立設備103によるリアモジュール13の組立作業と、は並行して行われる。これにより、車体骨格組立設備104に車体骨格10を形成するための部品の供給を効率的に行うことができる。
次に、車体骨格組立設備104における車体骨格10の組立工程について説明する。図4は、車体骨格組立設備104での車体骨格10の形成から締結設備105への搬送までの流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、車体骨格搬送部45によってエンジン15が車体骨格組立設備104に供給される(S101)。
次に、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11が車体骨格組立設備104の組付位置に移送される(S102)。本実地形態では、ハンガー装置51は、組付位置におけるメインフレーム11の後部が上方に傾いた姿勢を維持しながら、該メインフレーム11を組付位置まで搬送する。ハンガー装置51は、車体骨格組立設備104の組付位置に至る手前で、メインフレーム11の後部を下げて、エンジン15にメインフレーム11をセットする(図3の矢印参照)。このように、エンジン15にメインフレーム11を取り付ける際に、メインフレーム11の姿勢を傾斜させておくことで、フロント側エンジン支持部201及びリア側エンジン支持部202がエンジン15に干渉することなく、メインフレーム11を組付位置まで搬送させることが可能になっている。
メインフレーム11の移送とともに(S102)、リアモジュール13が車体骨格組立設備104の組付位置に移送される(S103)。本実施形態では、リアモジュール13は、スライド移送装置54によって、スイングアーム241の先端が水平方向を向いた状態で車体骨格組立設備104の組付位置まで移送される。なお、スライド移送装置54へのリアモジュール13のセットは、上述のリアモジュール13の組立工程においてスイングアーム241の先端を車体骨格組立設備104側に傾けたときに同時に行われる。これにより、リアモジュール13の組立完了と同時に車体骨格組立設備104への搬送を開始できる。
S102及びS103の動作は、並行して行われる。これにより、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11及びリアモジュール13を組付位置まで集約する時間を短縮でき、組立効率を向上させることができる。
本実施形態では、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11及びリアモジュール13が車体骨格組立設備104の組付位置まで搬送されると、作業員による車体骨格10の仮固定作業が行われる。作業員によって、フロント側のハンガーボルト210と、リア側上部のハンガーボルト210と、リア側下部のハンガーボルト210と、ピボットシャフト211と、の挿入が行われ、メインフレーム11にエンジン15及びリアモジュール13が仮固定さる。作業員は、作業が完了すると、作業完了ボタン(図示省略)によって作業が完了したことを自動二輪車製造システム1に通知する(S104)。
作業員による作業が完了すると(S104)、自動二輪車製造システム1は、車体骨格10の搬送を開始する(S105)。本実施形態では、車体骨格組立設備104で仮固定された車体骨格10は、車体骨格搬送部45によって締結設備105まで搬送される。即ち、車体骨格10の前後方向が、搬送方向に直交する方向を向いた状態で搬送される。本実施形態では、車体骨格10は、車体骨格組立設備104で仮固定された段階で車体骨格10の前後方向が搬送方向に直交する方向を向いているので、その姿勢を変えることなく、そのまま搬送される。
次に、締結設備105について説明する。締結設備105には、車体骨格締結ロボットとして、締結搬送ロボット61が2台配置される。2台の締結搬送ロボット61は、締結対象の車体骨格10の左右方向の一側に、前後方向に沿って並列配置される。なお、2台の締結搬送ロボット61は、同様の構成であるが、以下の説明において、フロント側に配置される締結搬送ロボット61をフロント側締結搬送ロボット61aとし、リア側に配置される締結搬送ロボット61をリア側締結搬送ロボット61bとして説明することがある。
2台の締結搬送ロボット61は、協働してハンガーボルト210、ピボットシャフト211、フロントアクスル233及びリアアクスル243の締結作業を行った後、車体骨格10を次工程のラインまで搬送させる搬送作業を行う。この締結搬送ロボット61の詳細な構成について説明する。図5は、2台の締結搬送ロボット61によって車体骨格10の締結作業が行われる様子を示す図である。なお、図5は、車体骨格搬送部45の上流側から見た様子を示しており、車体骨格搬送部45の図示については省略している。図6は、2台の締結搬送ロボット61によって車体骨格10が移送される様子を示す図である。図7は、締結搬送ロボット61のエンドエフェクタ70の拡大図である。図8は、本実施形態のナットランナ80の拡大図である。
図5及び図6に示すように、締結搬送ロボット61は、複数の関節を有するアーム65と、アーム65の先端に取り付けられるエンドエフェクタ70と、を備えている。
本実施形態の締結搬送ロボット61が備えるエンドエフェクタ70は、把持ベース71と、ナットランナ80と、ボルトヘッド対応部90と、を備える。以下、エンドエフェクタ70の各構成について説明する。
把持ベース71は、略U字状に形成される部材である。把持ベース71は、U字の一側の端部がアーム65の先端に回転可能に連結される。
図7及び図8に示すように、ナットランナ80は、把持ベース71のU字の他側の端部にナットランナ取付部72を介して取り付けられる。ナットランナ取付部72は、屈曲部を有する板状部材であり、このナットランナ取付部72によってナットランナ80は、その先端がアーム65側を向くように支持される。
ナットランナ80は、細長に形成されるナットランナ本体部81と、ナットランナ本体部81の先端に配置されるソケット部82と、を備える。
ナットランナ本体部81は、細長の円筒状に形成される。ナットランナ本体部81には、ソケット部82を回転させる駆動手段や後述するソケット部82の切替を行うための駆動手段が内蔵されている。
ソケット部82は、作業を行うナットのサイズに応じて径を変更可能に構成される。
本実施形態のソケット部82は、第1ソケット83と、第2ソケット84と、を備える。
第1ソケット83は、円筒状に形成されており、その先端側の内径が締結対象のナットに対応するように形成される。
第2ソケット84は、その外側面が第1ソケット83の内側の形状に対応するように構成されている。そして、第2ソケット84の先端側の内径は、第1ソケット83よりも小さいサイズのナットに対応するように形成される。
第2ソケット84は、ナットランナ本体部81に内蔵される駆動機構によって、第1ソケット83の先端よりも外側に位置する突出位置と、第1ソケット83の先端よりも内側に位置する退避位置と、の間を移動可能になっている。ナットランナ本体部81には、スプリング等の弾性部材や駆動機構が内蔵されており、第2ソケット84の進退を可能にしている。なお、第2ソケット84の退避位置は、第1ソケット83による締結作業時に、締結対象のナットに干渉しない位置に設定されている。
このように、締結作業を行う対象のナットによって第1ソケット83と第2ソケット84の切替を行うことができるようになっている。例えば、締結作業を行う対象のナットのサイズが大きい場合には、第2ソケット84を退避位置に移動させて第1ソケット83で締結作業を行う。ナットのサイズが小さい場合は、第2ソケット84を突出位置に移動させて第2ソケット84で締結作業を行う。これにより、ソケットの取替作業を行うことなく、一連の締結作業を速やかに完了させることができる。
ボルトヘッド対応部90は、把持ベース71におけるアーム65側の端部に配置される。本実施形態のボルトヘッド対応部90は、基台91と、第1軸押さえ部92と、第2軸押さえ部93と、を備える。
基台91は、把持ベース71に対してスライド移動可能に構成される。この基台91に、第1軸押さえ部92及び第2軸押さえ部93が配置される。
第1軸押さえ部92及び第2軸押さえ部93は、何れも、ナットランナ80の軸押さえ部として機能する。第1軸押さえ部92は、締結作業を行う対象のボルトヘッドのサイズが大きい場合に対応し、第2軸押さえ部93は、第1軸押さえ部92よりも小さいサイズのボルトヘッドに対応する。本実施形態では、第1軸押さえ部92及び第2軸押さえ部93は、基台91の移動方向に並列配置されており、基台91の移動によって、ナットランナ80の先端に対向させる軸押さえ部を切り替えることができる。
締結設備105に配置される締結搬送ロボット61の主要な構成は、以上の通りである。本実施形態では、2台の締結搬送ロボット61の協働によって、ハンガーボルトの締結作業及び車体骨格の搬送作業が行われる。
次に、2台の締結搬送ロボット61による締結設備105における締結作業及び搬送作業について説明する。図9は、2台の締結搬送ロボット61による締結作業及び移送作業の流れを示すフローチャートである。
車体骨格搬送部45によって車体骨格10が締結設備105の締結作業位置まで搬送される。この締結作業位置で位置決めされた状態で、フロント側締結搬送ロボット61aとリア側締結搬送ロボット61bによる締結作業がそれぞれ行われる。
図9に示すように、車体骨格10が締結設備105の締結作業位置で位置決めされると(S501)、フロント側締結搬送ロボット61aによる締結作業と、リア側締結搬送ロボット61bによる締結作業と、が並行して行われる。
まず、フロント側締結搬送ロボット61aによる締結作業について説明する。フロント側締結搬送ロボット61aは、リア側上部で仮締結されたハンガーボルト210の締結を行う(S502)。S502の締結作業が完了すると、フロント側で仮締結されたハンガーボルト210の締結を行う(S503)。
ハンガーボルト210は、この締結作業における他の締結対象(フロントアクスル233)に比べ、そのボルトヘッドのサイズが小さく、締結作業で用いられるナットについてもサイズが小さいものが用いられる。そのため、S502及びS503の締結作業は、ナットランナ80のソケットが第2ソケット84に切り替えられるとともに、ボルトヘッド対応部90の軸押さえ部が第2軸押さえ部93に切り替えられた状態で行われる。
フロント側締結搬送ロボット61aは、S503の作業が完了すると、フロントアクスルの締結作業を開始する(S504)。S504の締結作業では、フロントアクスル233のナットのサイズに対応するため、ナットランナ80のソケットを第2ソケット84から第1ソケット83に切り替えられる。ボルトヘッド対応部90の軸押さえ部は、切り替えられることなく、第2軸押さえ部93のままで締結作業が行われる。
次に、リア側締結搬送ロボット61bによる締結作業について説明する。リア側締結搬送ロボット61bは、リア側下部で仮締結されたハンガーボルト210の締結を行う(S505)。ハンガーボルト210のナットの形状に応じて、S505の締結作業は、ナットランナ80のソケットが第2ソケット84に切り替えられるとともに、ボルトヘッド対応部90の軸押さえ部が第2軸押さえ部93に切り替えられた状態で行われる。
リア側締結搬送ロボット61bは、S505の作業が完了すると、ピボットシャフト211の締結作業を開始する(S506)。ピボットシャフト211のナットのサイズに対応するため、ナットランナ80のソケットが第2ソケット84から第1ソケット83に切り替えられる。それとともに、ボルトヘッド対応部90の軸押さえ部も第2軸押さえ部93から第1軸押さえ部92に切り替えられる。
リア側締結搬送ロボット61bは、S506の作業が完了すると、リアアクスル243の締結作業を開始する(S507)。このリアアクスル243の締結作業では、ナットランナ80は、第2ソケット84のままであり、軸押さえ部も第1軸押さえ部92のまま締結作業が行われる。
また、本実施形態では、フロント側締結搬送ロボット61aによるリア側上部のハンガーボルト210の締結作業(S502)と、リア側締結搬送ロボット61bによるリア側下部のハンガーボルト210の締結作業(S505)と、は略同じタイミングで行われる。同様に、フロント側締結搬送ロボット61aによるフロント側のハンガーボルト210の締結作業(S503)と、リア側締結搬送ロボット61bによるピボットシャフト211の締結作業(S506)と、は略同じタイミングで行われる。フロント側締結搬送ロボット61aによるフロントアクスル233の締結作業(S504)と、リア側締結搬送ロボット61bによるリアアクスル243の締結作業(S507)と、についても略同じタイミングで行われる。
フロント側締結搬送ロボット61a及びリア側締結搬送ロボット61bは、フロントアクスルの締結作業(S504)及びリアアクスルの締結作業(S507)が完了すると、車体骨格10の持上動作を開始する(S508)。フロント側締結搬送ロボット61aは、S504の作業完了後、ナットランナ80及びボルトヘッド対応部90をナット及びフロントアクスル233から離間させることなく、フロントアクスル233の締結部分を保持した状態で持上動作を開始する。同様に、リア側締結搬送ロボット61bは、S507の作業完了後、ナットランナ80及びボルトヘッド対応部90をナット及びリアアクスル243から離間させることなく、リアアクスル243の締結部分を保持した状態で持上げ動作を開始する。
フロント側締結搬送ロボット61a及びリア側締結搬送ロボット61bが同期して持上動作を行うことによって車体骨格10が車体骨格搬送部45から離間する。フロント側締結搬送ロボット61a及びリア側締結搬送ロボット61bは、持ち上げた車体骨格10を次工程ライン300に移送する(S509)。
このように、フロント側締結搬送ロボット61a及びリア側締結搬送ロボット61bの2台のロボットが同期して締結作業及び次工程への搬送作業が行われる。また、車体骨格10の前部に位置するフロントアクスル233の締結部分を保持するとともに、車体骨格10の後部に位置するリアアクスル243の締結部分を保持するので、バランス良く車体骨格10を持ち上げて次工程ライン300に安定的に搬送することが可能になっている。
以上説明した本実施形態の自動二輪車製造システム1によれば、以下のような効果を奏する。自動二輪車製造システム1は、エンジン15を支持するメインフレーム11を組み立てるメインフレーム組立設備101と、前輪232を支持するフロントモジュール12とメインフレーム11を結合するフレーム結合設備102と、後輪242を支持するリアモジュール13を組み立てるリアモジュール組立設備103と、メインフレーム11にエンジン15及びリアモジュール13が組み付けられて車体骨格10が形成される組付位置まで、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11及びリアモジュール13を移動させる車体骨格組立設備104と、車体骨格組立設備104で組み立てられた車体骨格10に対して締結作業を行う締結設備105と、を備える。
これにより、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11とリアモジュール13を取付位置に集約させるための構成を自動化でき、車体骨格10の組付作業を効率的に行うことができる。従って、作業員の負担を大幅に軽減して省人化も達成できる。車体骨格10を形成するための設備を取付位置の周囲に集中的に配置することができ、省スペース化も実現できる。また、メインフレーム11とフロントモジュール12の結合を行いつつ、リアモジュールを組み立てるので、車体骨格を形成するまでの時間を大幅に短縮できる。
自動二輪車製造システム1は、車体骨格組立設備104で組み立てられた車体骨格10を、その前後方向を搬送方向に直交する方向に向かせた状態で、締結設備105まで搬送する車体骨格搬送部45を更に備える。
これにより、前後方向に長い車体骨格10が横向きの状態で搬送されることになるので、1台の車体骨格10を搬送するためのスペースを小さくすることができ、搬送効率を大幅に上昇させることができる。搬送効率が向上するので、搬送ラインの短縮化も容易に実現できる。
フレーム結合設備102とリアモジュール組立設備103は、所定の間隔をあけて配置されており、車体骨格組立設備104は、フレーム結合設備102とリアモジュール組立設備103の間に配置される。
これにより、フロントモジュール12が結合されたメインフレーム11及びリアモジュール13を車体骨格組立設備104に集約するための構成をコンパクトにまとめることができる。このようにレイアウトされることにより、車体骨格10を形成するための部品を移動させるための経路を短縮でき、車体骨格の組立効率も向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、各設備のレイアウトを変更したり、各ロボットが作業を行うタイミングを事情に応じて変更したりすることが可能である。例えば、車体骨格組立設備104におけるハンガーボルト210、ピボットシャフト211の仮締結についてもロボットによって行う構成とすることができる。