JP6497491B1 - 電気接点およびそれを用いた真空バルブ - Google Patents

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Abstract

母材(31)と高融点物質粒子(32)と金属間化合物(33)とを含んだ電気接点(10、11)において、母材中にMnX化合物(Xは、TeまたはSe)およびMn−Cu固溶相とXとの化合物を含む金属間化合物を分散配置しており、高融点物質粒子の粒径を当該高融点物質粒子のビッカース硬さが0Hvより大きく200Hv未満の場合は0.1μm以上100μm以下、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが200Hv以上の場合は0.1μm以上10μm以下とし、X原子を1.5質量%以上15質量%以下とし、Mn/(Mn+X)の原子量比は、20原子%以上80原子%以下としている。

Description

この発明は、高電圧配電設備のひとつである真空遮断器に用いられる真空バルブおよびそれに用いられる電気接点に関する。
高電圧配電設備のひとつである真空遮断器は、高電圧配電設備の故障や異常時に電流を遮断するために用いられている。真空遮断器は、電流を遮断する機能を有する真空バルブを備えている。真空バルブは、高真空に保たれた絶縁容器内部で、固定電極と可動電極とが同軸対向配置された構造を有している。
配電設備に過負荷電流または短絡電流が発生した際には、これらの電極が瞬時に開極されて電流が遮断される。しかし、電極間にアークが発生するため瞬時に電流が遮断されることはない。交流電流を遮断する際には、交流電流が小さくなるにつれアークが弱くなり、アークが消滅することで遮断が成立する。このように、交流電流がゼロとなる前の時点で瞬間的に電流が遮断される現象が起こる。この現象は裁断と呼ばれている。
裁断時には開閉サージと呼ばれる大きなサージ電圧が発生するが、配電設備に接続されている機器が容量性または誘導性の機器である場合、その大きなサージ電圧でその機器が損傷する場合がある。このサージ電圧を低くするためには、裁断が発生する時点の電流(裁断電流)を小さくする必要がある。裁断電流を小さくするには、開極時に電極間に発生するアークを交流電流のゼロ点近くまで持続させることによって実現できる。
アークの持続は真空中にある粒子数に依存しており、裁断時に真空中への粒子の供給が必要となる。供給される粒子としては金属粒子と熱電子との二つがある。従来の低裁断電流特性を有する電気接点材料には、導電成分のAgと高融点の金属やその炭化物(WCなど)との混合物が選定されている。これは、発生するアークによる電極加熱によって、導電成分のAgの蒸発と高融点金属やその炭化物の熱電子放出とが促進されアークが持続されるためである。
熱電子放出能を電流密度で示したリチャードソン・ダッシュマンの式によれば、熱電子放出能は、材料の仕事関数と温度とに依存することが知られている。とくに温度の寄与率は大きい。そのため、高融点金属やその炭化物は融点が高いために広く用いられている。以上の観点から、優れた低裁断電流特性を発揮するAg−WC電気接点を用いた真空バルブが開発され実用化されている。
従来の真空バルブにおいては、低コストの観点からAgに替えてCuを導電成分とした電気接点材料において、TeやSeなどを添加することで安定した低裁断特性が得られている(例えば、特許文献1、2参照)。これは、TeやSeの沸点が金属の中で非常に低く、アーク照射による電極加熱によってこの低沸点金属が多量に蒸発することでアークの持続を可能としている。
特開2007−332429号公報(3頁、図2) 特開2014−56784号公報(4頁、図2)
従来のCuを導電成分とした電気接点においては、低沸点金属の添加により低裁断電流特性を実現している。しかしながら、低沸点金属の選択的蒸発は、電気接点の材料消耗とも捉えることができる。そのため、開閉回数の増大と共に低沸点金属が消耗し、接点間の空間への金属蒸気の供給量が減少して低裁断電流特性が劣化する。
この問題に対して、低沸点金属の添加量を多くすることが考えられるが、低沸点金属の過剰な添加は電気接点が脆くなる。そのため、低沸点金属の過剰な添加は、電気接点の加工時や開極時に割れが発生するという問題がある。したがって、低沸点金属を添加した従来の電気接点では、低裁断電流特性と機械強度の確保とを同時に満足することができなかった。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、低沸点金属を添加した電気接点において、低裁断電流特性と機械強度の確保とを同時に満足することを目的とする。
この発明に係る電気接点においては、Cu100原子%に対してMnが0原子%より多く10原子%以下固溶した母材と、母材中に分散して配置された金属の粒子および当該金属の炭化物粒子の少なくとも一方の高融点物質粒子と、X原子(Xは、TeまたはSe)を含み母材中に分散して配置された金属間化合物とを含み、前記金属は、W、Ta、Cr、Mo、Nb、TiおよびVの中から選ばれた少なくとも1つの金属であり、高融点物質粒子の粒径は、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが0Hv以上200Hv未満の場合は0.1μmより大きく100μm以下、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが200Hv以上の場合は0.1μm以上10μm以下であり、全体を100質量%とした場合、高融点物質粒子は20質量%以上80質量%以下であり、X原子は1.5質量%以上15質量%以下であり、残部は前記母材であると共に、金属間化合物は、MnX化合物およびMn−Cu固溶相とXとの化合物を含み、Mn/(Mn+X)の原子量比は、20原子%以上80原子%以下としたものである。
この発明は、母材と高融点物質粒子と金属間化合物とを含んだ電気接点において、母材中にMnX(Xは、TeまたはSe)およびMnX化合物、およびMn−Cu固溶相とXとの化合物を含む金属間化合物を分散配置しており、高融点物質粒子の粒径を、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが0HVより大きく200Hv未満の場合は0.1μm以上100μm以下、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが200Hv以上の場合は0.1μm以上10μm以下とし、全体を100質量%とした場合、高融点物質粒子を20質量%以上80質量%以下とし、X原子を1.5質量%以上15質量%以下とし、Mn/(Mn+X)の原子量比は、20原子%以上80原子%以下としているので、低裁断電流特性と機械強度の確保とを同時に満足することができる。
この発明の実施の形態1を示す真空バルブの模式図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態1における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態1における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態1における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態1における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態1の強度試験における試験片の模式図である。 この発明の実施の形態1の強度試験方法の模式図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の断面図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態1における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態1におけるMn−Teの状態図である。 この発明の実施の形態1におけるCu−Teの状態図である。 この発明の実施の形態2における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態3における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態4における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態4における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態5における高融点物質粒子のビッカース硬さを示す特性表である。 この発明の実施の形態5における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態5における電気接点の組成および特性を示す一覧表である。 この発明の実施の形態5における電気接点の特性図である。 この発明の実施の形態5における電気接点の特性図である。
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1に係る真空バルブの断面模式図である。本実施の形態の真空バルブ1は、遮断室2を備えている。この遮断室2は、円筒状の絶縁容器3と、その両端に封止金具4a、4bにより固定された金属蓋5a、5bとで構成されており、その内部は真空気密に保たれている。遮断室2内には、固定電極棒6と可動電極棒7とが対向して取り付けられている。固定電極棒6および可動電極棒7の端部には、固定電極8および可動電極9がロウ付によりそれぞれ取り付けられている。可動電極棒7には、ベローズ12が取り付けられ、遮断室2の内部を真空気密に保持しながら可動電極9の軸方向の移動を可能にしている。可動電極9の軸方向の移動によって、可動電極9が固定電極8に接触したり離れたりする。固定電極8および可動電極9の接触部には、固定電気接点10および可動電気接点11がロウ付によりそれぞれ取り付けられている。ベローズ12の上部には、金属製のベローズ用アークシールド13が設けられている。このベローズ用アークシールド13は、ベローズ12にアーク蒸気が付着することを防止している。また、固定電極8および可動電極9を覆うように、遮断室2内に金属製の絶縁容器用アークシールド14が設けられている。この絶縁容器用アークシールド14は、絶縁容器3の内壁にアーク蒸気が付着することを防止している。固定電極8および可動電極9にそれぞれ取り付けられた固定電気接点10および可動電気接点11の少なくとも一方には、本実施の形態による電気接点が使用されている。
一般的に、固定電極8および可動電極9並びに固定電気接点10および可動電気接点11は、円盤状の形状を有する。以下、本実施の形態の電気接点の形状は、円盤状であるとして説明する。
始めに、本実施の形態の電気接点の製造方法について説明する。本実施の形態の電気接点は、原料粉末を混合して所望のプレス金型でプレスして成形体を作製する工程と、この成形体を仮焼きして焼結体を得る工程と、この焼結体にCuを溶浸させて溶浸体を得る工程と、得られた溶浸体を所望の形状に加工して電気接点を得る工程とを経て製造される。以下、本実施の形態の電気接点の製造方法について詳細に説明する。
原料粉末を混合して所望のプレス金型でプレスして成形体を作製する工程においては、Cu粉末とWC粉末とMn粉末とTe粉末とを混合し、この混合粉末をプレス機によって圧縮成形することでCu-WC-Mn-Te成形体を得る。混合粉末の質量を100質量%としたとき、WC粉末の質量は20〜80質量%、Te粉末の質量は1.5〜15質量%、残部がCu粉末およびMn粉末の質量となるように調整する。このとき、Mn粉末の質量は、Mn/(Mn+Te)の原子量比が25以上80以下となるように調整する。
一般に、WC粒子のような硬質で塑性変形を起こさない粉体が細かくなると粉体の比表面積が大きいために、加圧成型の場合には粉体同士の接触点近傍に空隙が多数存在して緻密化が困難となる。そのため、粒径が細かいと所望の密度を有する成形体を得るためのプレス成形圧が高くなり過ぎ成形時に割れが発生する場合がある。そのため、WC粉末の平均粒径は0.1μm以上であることが望ましい。
なお、原料粉末の平均粒径は、例えばレーザ回折式粒度分布装置で測定した粒度分布における平均粒径を採用する。
成形体を仮焼きして焼結体を得る工程においては、Cu-WC-Mn-Te成形体を水素雰囲気下または1×10−5Pa以下の真空下で500〜950℃で焼結する。この焼結温度はTeの沸点の988℃よりも30℃以上低ければよい。
焼結体にCuを溶浸させて溶浸体を得る工程においては、大きさが焼結体と同等もしくはそれより小さいCu円板またはCu角板を焼結体の直下に置き、水素雰囲気下または1×10−5Pa以下の真空下でCuの融点(1083℃)以上1130℃未満の温度で溶浸する。溶浸の温度が1130℃以上であると、焼結体中に存在する低沸点金属の金属間化合物の融点を超えるため、Teの昇華が始まり焼結体が膨張して緻密な電気接点が得られない場合がある。なお、Cu円板またはCu角板と焼結体との配置は、どちらが上であってもよい。また、2枚のCu円板で焼結体を上下から挟んで配置してもよい。
溶浸体を所望の形状に加工して電気接点を得る工程においては、真空バルブ用の固定電気接点あるいは可動電気接点として、設計上の必要な厚さおよび直径となるまで接点材料を研削する。最後に、端部にテーパー加工あるいは表面を研磨することで電気接点を得ることができる。
次に、実施例および比較例を挙げてより詳細に説明する。
[実施例1]
平均粒径10μmのCu粉末と、平均粒径6.3μmのWC粉末と、平均粒径40μmのTe粉末と、平均粒径30μmのMn粉末とをボールミルなどを用いて30分間混合して均一な混合粉末を作製した。得られた混合粉末を内径φ23mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて400Mpaの圧力で圧縮成形し、厚さ5mmの成形体を作製した。得られた成形体を水素雰囲気下900℃で2時間焼結し、焼結体を作製した。得られた焼結体を厚さ2mm直径φ20mmのCu円板の上に置き、水素雰囲気下1110℃で2時間溶浸して実施例1の電気接点を得た。混合粉末作製時のCu粉末、WC粉末、Te粉末およびMn粉末の質量比を調整して電気接点の組成を調整した。実施例1で得られた電気接点の組成を図2(表1)に示す。
[実施例2〜12]
実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。ただし、混合粉末作製時の各粉末の質量比を調整し、電気接点の組成比を変えている。実施例2〜4で得られた電気接点の組成を図2(表1)に、実施例5〜8で得られた電気接点の組成を図3(表2)に、実施例9〜12で得られた電気接点の組成を図4(表3)にそれぞれ示す。
[比較例1〜7]
実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。ただし、混合粉末作製時の各粉末の質量比を調整し、電気接点の組成比を変えている。比較例1〜3で得られた電気接点の組成を図2(表1)に、比較例4〜5で得られた電気接点の組成を図3(表2)に、比較例6〜7で得られた電気接点の組成を図4(表3)にそれぞれ示す。
[実施例13]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が9μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。実施例13で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[実施例14]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が3μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。実施例14で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[実施例15]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が1μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。実施例15で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[比較例8]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が25μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。比較例8で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[比較例9]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が12μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。比較例9で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[比較例10]
実施例1において、平均粒径6.3μmのWC粉末に替えて平均粒径が0.08μmのWC粉末を用いて、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。比較例9で得られた電気接点の組成を図5(表4)に示す。
[実施例16]
実施例1において、焼結体をCu円板の上に置いて溶浸したことに替えて、焼結体をCu円板の下に置いて溶浸して、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。実施例16で得られた電気接点の組成を図6(表5)に示す。
[実施例17]
実施例1において、焼結体を厚さ2mm直径φ20mmのCu円板の上に置いて溶浸したことに替えて、厚さ1mm縦横18mmのCu角板で焼結体を挟んで溶浸して、それ以外は実施例1と同じ手順で電気接点を作製した。実施例17で得られた電気接点の組成を図6(表5)に示す。
次に、電気接点の機械強度の評価について説明する。図7は、本実施の形態の強度試験における試験片の模式図である。実施例および比較例で得られた電気接点の形状は、厚さ5mm直径φ23mmである。図7に示すように、実施例および比較例で得られた電気接点20から幅3.5mmの試験片21を4本切り出す。図8は、本実施の形態の強度試験の方法を示す模式図である。幅3.5mm、厚さ5mm、長さが約23mmの試験片21に対して、支点間距離15mmで厚さ方向に荷重を印加し、試験片が破断したときの荷重を測定し、最大曲げ応力を算出した。4本の試験片の最大曲げ応力の平均値を各実施例および比較例の最大曲げ応力とした。
次に、電気接点の裁断特性および遮断特性の評価について説明する。実施例および比較例で得られた厚さ5mm直径φ23mmの電気接点を機械加工して、厚さ3mm直径φ20mmの試験接点を作製した。さらに、試験接点の端部から内側2mmまでの部分には表面に対して約15°のテーパー加工を施した。この試験接点を2つ作製して、それぞれを固定接点および可動接点とする評価用真空バルブを組み立てた。この評価用真空バルブを用いて裁断電流試験および遮断電流試験を行い、各実施例および比較例の裁断特性および遮断特性を評価した。
裁断電流試験は、20Ωの抵抗と評価用真空バルブとを直列接続した回路を組み、AC200V電源を用いて10Aの電流で通電し、真空バルブを閉極した状態からを開極したときにアーク電流がゼロになる直前の電流を測定し、その電流を裁断電流とした。裁断電流試験は、同じ真空バルブを用いて1000回実施し、その平均値を各実施例および比較例の裁断電流値とした。なお、遮断時に発生するサージ電圧上昇による電気機器の損傷を避ける観点から裁断電流値が1A以下である必要がある。
遮断試験は、サイリスタと評価用真空バルブとを直列接続した回路を組み、真空バルブを閉極した状態でコンデンサバンクからの放電を利用した通電電流を流し、真空バルブを開極したときに、正常に遮断できるか否かで遮断試験の合否を判定した。コンデンサバンクは外部電源で充電される。通電電流を2kAから1kAずつ上げて遮断試験を行い、4kAで遮断試験が成功した時点で遮断試験の合否を判定した。なお、遮断試験の成功とは、真空バルブを開極したときに、再点弧やアークの継続が発生しない場合をいう。裁断特性としての裁断電流および遮断特性としての遮断試験の合否を、図2〜6(表1〜5)に示す。
図9は、本実施の形態の実施例1で作製した電気接点の内部組織構造を示す断面図である。図9は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察された電気接点の断面写真である。走査型電子顕微鏡の波長分散型X線分光またはエネルギー分散型X線分光による組成分析機能を用いて内部構造の組成分布を測定した。図9に示すように、Cuを導電成分とした母材31中に、高融点物質粒子であるWC粒子32、Mn−Cu−Te金属間化合物33およびMnO粒子34が分散している。また、X線回折装置(XRD)を用いてMn−Cu−Te金属間化合物33の組成を分析したところ、MnTe、CuTe、MnおよびCuが固溶しあうことで、本来のMnTeおよびCuTeからそれぞれピークシフトした(Mn,Cu)Teおよび(Mn,Cu)Teが形成されていることがわかった。
なお、WC粒子の粒径は、図9に示す走査型電子顕微鏡で観察された電気接点の断面写真から算出した。例えば、得られた断面写真上に任意に直線を引き、その直線上にあるWC粒子の数とWC粒子上の長さを測定する。WC粒子上の長さをWC粒子数で除することでWC粒子の平均粒径が得られる。本実施の形態においては、任意に複数の直線を引き、その複数の直線から得られる平均粒径の平均値をWC粒子の粒径に採用した。また、WC粒子はその他の粒子に比べ白色な画像で得られるため、断面写真の二値化し画像処理により粒度分布を算出することも可能である。
図10は、図2(表1)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図2(表1)において、WC粒子の組成比、WC粒子の粒径およびTeの組成比は一定であるので、横軸にMn/(Mn+Te)比、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
実施例1のMn/(Mn+Te)=23.6原子%(at%)の電気接点は、最大曲げ応力が269MPaとなり、電気接点加工時に割れが発生することなく、電気接点の加工が可能であった。一方で、Mn/(Mn+Te)=0原子%(比較例1)およびMn/(Mn+Te)=13.4原子%(比較例2)の電気接点は、最大曲げ応力がそれぞれ124MPaおよび156MPaであり強度不十分であった。そのため、電気接点加工時に割れが発生した。そのため、裁断試験および遮断試験を行うことができなかった。なお、最大曲げ強度は、電気接点を安定して加工することができる観点から200MPa以上が必要である。
Mnの組成比を増加させたMn/(Mn+Te)=53.7原子%(実施例2)、Mn/(Mn+Te)=69.9原子%(実施例3)およびMn/(Mn+Te)=77.7原子%(実施例4)の電気接点は、最大曲げ応力がそれぞれ358MPa、371MPa、および362MPaであり、実施例1よりも強度が向上した。これは、Mn添加によって脆弱なCuTeの生成を抑え、劈開破壊を誘発しない結晶構造がNiAs型のMnTeが生成したことで電気接点が脆くなることを抑制できたためと考えられる。MnとTeとは原子量比が1:1で結合したMnTe金属間化合物を生成するため、Mn/(Mn+Te)が50原子%以下ではMn添加量によって接点強度が上昇し、Mn/(Mn+Te)が50原子%以上では機械強度が飽和していることがわかる。裁断電流値はすべて1A以下となっており、低裁断特性を有していることがわかった。また電気接点中のMnは、熱処理中に存在する微量な酸素と反応してMnOが5原子%以下で生成していることがわかった。これにより、Mnは裁断値に有効な低沸点金属であるTeがTeOとなることを抑制する犠牲材として働いていることが判明した。
一方、Mn/(Mn+Te)=82.3原子%(比較例3)の電気接点は、遮断試験は不合格となり、電流値4kAでの遮断の失敗が散見された。これは、Mn組成比が過剰となり、Cu中に固溶するMn量が増加して電気接点の導電率が低下し、遮断時に発生する熱が放熱しにくくなったことでアークが遮断できず再点弧が発生したためと考えられる。
以上の結果から、Mn/(Mn+Te)比は、20原子%以上80原子%以下である必要がある。
図11は、図3(表2)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図3(表2)において、WC粒子の組成比、WC粒子の粒径およびMn/(Mn+Te)比は一定であるので、横軸にTeの組成比(質量%)、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
Teの組成比を1.0質量%(wt%)(比較例4)とした電気接点は、裁断電流値が1.52Aとなり裁断性能が低下した。これは、低沸点金属のTe量が少なくなったためアークを持続するだけの金属蒸気の発生が不足したためと考えられる。
Teの組成比を1.5〜15.0質量%(実施例5〜8)とした電気接点は、裁断電流値が1A以下となり裁断性能が向上した。
一方、Teの組成比を17.0質量%(比較例5)とした電気接点は、裁断電流値が1A以下で裁断性能は向上するが、遮断試験は不合格となった。その理由は、低沸点金属のTe量が多く金属蒸気の発生量が増加することで電流値4kAではアークが遮断できず再点弧が発生したためと考えられる。
なお、Mn/(Mn+Te)を53.7質量%と一定としているため、CuTeの生成により電気接点が脆くなることを抑制でき接点割れは発生しなかった。Teの組成比が増加すると電気接点内にMnTe化合物ができるため母材との界面の割合が増える。そのため、最大曲げ応力が低下傾向であるが実用上問題はなかった。
以上の結果から、Teの組成比は、1.5質量%以上15質量%以下である必要がある。
図12は、図4(表3)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図3(表2)において、WC粒子の粒径、Mnの組成比およびMn/(Mn+Te)比は一定であるので、横軸にWC粒子の組成比(質量%)、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
WC粒子の組成比を20〜80質量%(実施例9〜12)とした電気接点は、裁断電流値は1A以下であると共に遮断試験も合格であり、電気特性は良好であった。
一方、WC粒子の組成比を15質量%(比較例6)とした電気接点は、裁断電流値が1.3Aと裁断性能が低下した。WC粒子の組成比を15質量%では、熱電子放出量が少なかったためと想定される。また、WC粒子の組成比を85質量%(比較例7)とした電気接点は、混合粉末中に硬質なWC粒子が過剰に存在するため相対的に塑性変形するCuが少なくなり、成形体作製時に金型から取り出すと同時に砕ける結果となった。
以上の結果から、WC粒子の組成比は、20質量%以上80質量%以下である必要がある。
図13は、図5(表4)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図3(表2)において、WC粒子の組成比(質量%)、Mnの組成比およびMn/(Mn+Te)比は一定であるので、横軸にWC粒子の粒径(μm)、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
WC粒子の粒径を1〜9μm(実施例13〜25)とした電気接点は、裁断性能および遮断性能に問題はなかった。また、加工時の割れや成形体作製時の破壊も発生しなかった。
一方、WC粒子の粒径を25μm(比較例8)とした電気接点は、最大曲げ応力が103MPaと低く接点への電気接点の加工時に割れが発生し、実用に対して強度が足りない結果となった。これは粗大なWC粒子に起因して電気接点の母材とWC粒子との界面が粗大となりこの界面から破壊が進んだと考えられる。また、WC粒子の粒径を12μm(比較例9)とした電気接点は、最大曲げ応力が258MPaと機械強度上問題はなかったが、遮断試験では不合格となった。これは、WC粒子が大きくなると電気接点の表面凹凸が増えることで、遮断時に発生するアークが局所的に集中し、電流値4kAではアークが遮断できず再点弧が発生したためと考えられる。
さらに、WC粒子の粒径を0.08μm(比較例10)とした電気接点は、成形体の作製時に割れが発生した。一般に、WC粒子のような硬質で塑性変形を起こさない粉体が細かくなると粉体の比表面積が大きいために、加圧成型の場合には粉体同士の接触点近傍に空隙が多数存在して緻密化が困難となる。そのため所望の成形体を得るには成形圧が高くする必要がある。必要以上に成形圧を加えると歪みが発生し、成形体に割れが発生したと考えられる。
以上の結果から、WC粒子の粒径は、0.1μm以上10μm以下である必要がある。
図5(表4)に示した実施例16、17は、それぞれCu円板を成形体の下、およびCu角板を成形体の上下に配置して溶浸したものである。Cu円板を成形体の上に配置して溶浸した実施例1と比較して、機械強度、裁断特性および遮断特性に差異は見られなかった。
これらの実施例および比較例から、Cu100原子%に対してMnが0原子%より多く10原子%以下固溶した母材と、母材中に分散して配置されたWC粒子と、MnTe化合物、およびMn−Cu固溶相とTeとの化合物を含む金属間化合物とを含み、WC粒子の粒径を、0.1μm以上10μm以下とし、全体を100質量%とした場合、WC粒子は、20質量%以上80質量%以下であり、Te原子は、1.5質量%以上15質量%以下であり、残部は前記母材であると共に、Mn/(Mn+Te)の原子量比を、20原子%以上80原子%以下とした電気接点は、低裁断電流特性と機械強度の確保とを同時に満足することができる。
このような構成された電気接点において、低裁断特性を有するために必要なTeの蒸発は、MnTeの固相線またはCuTe固相線以上の温度まで電極がアークによって熱せられることにより得られる。図14はMn−Teの状態図、図15はCu−Teの状態図である。図14および図15に示すように、MnTeの固相線およびCuTe固相線はそれぞれ1149℃および1129℃であり、それ以上の温度ではTeは昇華する。MnTeおよびCuTeの金属間化合物の沸点が近いため、金属間化合物からのTe蒸気発生能に差異はなく、Te濃度は1.5質量%以上であれば、低裁断特性が得られる。
また、Mnを添加して導電成分のCu中にMnを固溶させることで、電気接点の導電率を低くすることができる。適度な低導電率は、遮断時に電気接点表面温度を上昇させることができる。その結果、MnTeやCuTeからのTeの昇華およびWC粒子の高融点金属からの熱電子放出が促進され、低裁断特性が得られる。
さらに、MnはTeよりも反応性が高く、熱処理において不可避的に発生する電気接点のTeの酸化を防ぎMnOを形成する。TeOの沸点は、MnTeやCuTeの沸点よりも高いため、TeOは生成されにくくなり、Teの蒸発が妨げられることになる。その結果、導電成分に添加されたMnは、Teの酸化を防ぐ犠牲材として働いている。
なお、本実施の形態において、高融点物質粒子としてWC粒子を用いて実施例および比較例を説明したが、融点が1600℃以上の高融点材料であれば、WC粒子(融点3058℃)に替えて用いることができる。融点が1600℃以上の高融点材料として、金属であればW(融点3407℃)、Ta(融点2985℃)、Cr(融点1857℃)、Mo(融点2623℃)、Nb(融点2477℃)、Ti(融点1666℃)およびV(融点1917℃)を用いることができる。また、それらの炭化物TaC(融点4258℃)、Cr(融点2168℃)、MoC(融点2795℃)、NbC(融点3886℃)、TiC(融点3530℃)およびVC(融点2921℃)を用いることもできる。
また、本実施の形態において、低沸点金属としてTeを用いて実施例および比較例を説明したが、Teに替えてTeと同族でMnおよびCuとの状態図が類似するSeを用いることもできる。
これまでに本発明者らは、従来の低裁断特性を有する電気接点の問題点である、Te(またはSe)を添加した電気接点が脆くなる要因を究明してきた。三点曲げ試験によって破断した電気接点において、SEMによる破断面観察から検討したところ、電気接点に添加したTe(またはSe)が、Cuと金属間化合物CuTe(またはCuSe)を形成していることを確認した。さらに、その金属間化合物は、層状に剥離した跡が見られたことから、CuTe(またはCuSe)が劈開破壊して粒内破壊の原因となることを見出した。
本実施の形態の電気接点であれば、脆くなる要因であるCuTe(またはCuSe)の形成が抑制されており、MnとTeとはMn:Te=1:1の金属間化合物を形成し、結晶構造のプロトタイプはNiAs型であることから層状剥離を抑制することができることがわかった。
さらに、Mn/(Mn+Te)比を、25〜80原子%とすることで電気接点の機械強度を確保できる。
このような構造の電気接点は、低沸点金属の選択的蒸発による低裁断特性を有したまま、脆くなることを抑制することができ、とくにMnに対するMn+Te濃度を規定することで、所望の強度を有する電気接点が作製できる、つまりは、溶着引きはがし力を自由に制御することができることにより大電流遮断特性が改善する。
なお、本実施の形態による接点材料には、原料に含まれる微量の不可避的不純物(Ag、Al、Fe、Siなど)が含まれてもよい。
実施の形態2.
実施の形態1で説明した電気接点は、Cu-WC-Mn-Te焼結体にCu円板またはCu角板を用いてCuを溶浸させていた。実施の形態2においては、Cu-WC焼結体にCuに加えてMnおよびTeを溶浸させて製造した電気接点について説明する。
[実施例18]
始めに、平均粒径10μmのCu粉末と平均粒径6.3μmのWC粉末を30分間混合して均一な混合粉末を作製した。この混合粉末を内径φ23mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて400Mpaの圧力で圧縮成形し、厚さ5mmの成形体を作製した。これとは別に、平均粒径10μmのCu粉末と平均粒径30μmのMn粉末と平均粒径40μmのTe粉末とを30分間混合し均一な混合粉末を作製した。この混合粉末を内径φ20mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて200MPaの圧力で圧縮成形し、厚さ2.2mmの成形体を作製した。
次に、このCu-WC成形体およびCu-Mn-Te成形体を水素雰囲気下900℃で2時間それぞれ個別に焼結した。
次に、焼結して得られたCu-WC焼結体の下にCu-Mn-Te焼結体を置き、水素雰囲気下1110℃で2時間溶浸して実施例18の電気接点を得た。
本実施例において、混合粉末作製時のCu粉末、WC粉末、Te粉末およびMn粉末の質量比を調整して電気接点の組成を調整した。また、作製した電気接点の機械強度、裁断特性および遮断特性は実施の形態1と同様に評価した。
実施例18で得られた電気接点の組成および特性を図16(表6)に示す。実施例18の電気接点は、実施の形態1の実施例1〜12の接点と同様な特性が得られた。
実施例1〜12に示す実施の形態1では、Cu−WC−Mn−Te成形体を仮焼結するときに成形体が僅かに膨張する。これは、成形体内でCuとTeとMnとが反応して体積膨張するためと考えられる。
一方、本実施の形態のように、Cu−WC成形体と被溶浸材のCu−Mn−Te成形体とを別々に仮焼結することで、Cu−WC成形体の体積膨張がなく安定して電気接点を製造することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、Cu-WC-Mn-Te焼結体にCuを溶浸させて電気接点を製造していた。また、実施の形態2では、Cu-WC焼結体にCu−Mn−Teを溶浸させて電気接点を製造していた。実施の形態3においては、溶浸を用いずに焼結のみで製造した電気接点について説明する。
[実施例19]
始めに、平均粒径10μmのCu粉末と平均粒径6.3μmのWC粉末と、平均粒径30μmのMn粉末と平均粒径40μmのTe粉末とを30分間混合し均一な混合粉末を作製した。この混合粉末を内径φ23mmのダイス金型(鋼製)に入れ、油圧プレス機を用いて650Mpaの圧力で圧縮成形し、厚さ5mmのCu-WC-Mn-Te成形体を作製した。
次に、このCu-WC-Mn-Te成形体を水素雰囲気下1110℃で2時間焼結した。
次に、焼結して得られたCu-WC-Mn-Te焼結体を油圧プレス機を用いて650Mpaの圧力で再圧縮し、水素雰囲気下1110℃で2時間再焼結して実施例19の電気接点を得た。
本実施例において、混合粉末作製時のCu粉末、WC粉末、Te粉末およびMn粉末の質量比を調整して電気接点の組成を調整した。また、作製した電気接点の機械強度、裁断特性および遮断特性は実施の形態1と同様に評価した。
実施例19で得られた電気接点の組成および特性を図17(表7)に示す。実施例19の電気接点は、実施の形態1の実施例1〜12の接点と同様な特性が得られた。また、実施例19で得られた電気接点の相対密度は95.3%であった。ここで、相対密度とは、相対密度(%)=(電気接点材料の測定密度/組成分析値から求めた電気接点材料の理論密度)×100で求められる。もし、相対密度が95%以下となった場合は、再圧縮および再焼結を繰り返すことで、相対密度を95%以上とすることができる。
実施の形態1および実施の形態2で説明した溶浸を用いた電気接点の製造方法においては、溶浸のときに液化したCuやCu−Mn−Teを成形体へ流し込むため、成形体の気孔率のばらつきによって製造時に組成ばらつきが発生しやすい。
一方、本実施の形態のように、焼結のみで作製された電気接点は、成形体を焼き固める工程のみであるため、成形時の気孔率の違いによる組成ばらつきが小さい。
実施の形態4.
実施の形態1では高融点物質粒子としてWC粒子を用いていたが、実施の形態4では高融点物質粒子としてWC粒子を用いた。
本実施の形態では、実施の形態1で用いたWC粒子に替えて、WCに比べてビッカース硬さが低いW粒子を用いた電気接点について説明する。本実施の形態における電気接点は、WC粒子に替えてW粒子を用いた以外は実施の形態1と同様であり、電気接点の製造方法および電気接点の裁断特性並びに遮断特性の評価方法も実施の形態1と同様である。
図18(表8)は、本実施の形態の実施例および比較例の組成および特性を示す一覧表である。また、図19は、図18(表8)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図18(表8)においてW粒子の組成比(質量%)、Mnの組成比およびMn/(Mn+Te)比は一定であるので、図19では横軸にW粒子の粒径(μm)、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
Wのビッカース硬さは360Hvであり純金属の中ではもっと硬度の高い材料である。本実施の形態では、実施の形態1のWC粒子を用いた電気接点と同様に、粒径が25μm(比較例11)では機械加工時に割れが発生した。また、W粒子の粒径を0.08μm(比較例12)とした電気接点は、成形体の作製時に割れが発生した。実施の形態1のWC粒子と同様に、硬質で塑性変形を起こさない粉体が細かくなると粉体の比表面積が大きいために、加圧成型の場合には粉体同士の接触点近傍に空隙が多数存在して緻密化が困難となる。そのため所望の成形体を得るには成形圧が高くする必要がある。必要以上に成形圧を加えると歪みが発生し、成形体に割れが発生したと考えられる。
実施の形態1で用いたWCのビッカース硬さは690Hvであり、本実施の形態で用いたWのビッカース硬さは360Hvである。実施の形態1および本実施の形態の結果から、高融点物質粒子のビッカース硬さ200Hv以上の高融点物質粒子の場合、その粒径は0.1μm以上10μm以下である必要がある。
実施の形態5.
実施の形態1ではビッカース硬さが690HvのWC粒子を、実施の形態4ではビッカース硬さが360HvのW粒子を高融点物質粒子として用いた場合、それらの粒子の粒径は0.1μm以上10μm以下としていた。実施の形態5では、硬度が比較的小さい材料を高融点物質粒子として用いた場合について説明する。
始めに、高融点物質粒子の硬度について説明する。高融点物質粒子は、金属の中でCuやAgなどの導電性金属に比べて比較的硬い材料である。そのため、機械加工時に硬い材質を削ることによって電気接点に負荷が発生する。実施の形態1で述べたように、Mnを添加していないものや粒径が大きいものを使用した電気接点では母材強度が弱いため、電気接点が機械加工時の負荷に耐えられず、結果として割れが発生する。
以上の観点から電気接点材料を機械加工するときに発生する負荷は、電気接点材料に含まれる高融点物質粒子の硬度に関係していると言える。図20(表9)は、高融点物質粒子に用いられる金属およびその炭化物のビッカース硬さを示した特性表である。図20(表9)は、ビッカース硬さで記載しているが、換算表を用いればロックウェル硬さやブリネル硬さでもよい。なお、炭化物は製法や組成または硬度の測定方法によってビッカース硬さの値にばらつきが発生する。そのため、図20(表10)に示した値は一例を示すものであって多少値が異なったとしても、以下の実施例においては問題ないと判断した。また、図20(表9)に示す金属においては、全ての炭化物は純金属に比べて硬度が高いといえる。
本実施の形態では、実施の形態1で用いたWC粒子に替えて、WCに比べてビッカース硬さが小さいMo粒子またはCr粒子を用いた電気接点について説明する。本実施の形態における電気接点は、WC粒子に替えてMo粒子またはCr粒子を用いた以外は実施の形態1と同様であり、電気接点の製造方法および電気接点の裁断特性並びに遮断特性の評価方法も実施の形態1と同様である。
図21(表10)は、本実施の形態におけるMo粒子を用いた場合の実施例および比較例の組成および特性を示す一覧表である。また、図22(表11)は、本実施の形態におけるCr粒子を用いた場合の実施例および比較例の組成および特性を示す一覧表である。
さらに、図23および図24は、それぞれ図21(表10)および図22(表11)に示した実施例および比較例の組成および特性を示す特性図である。図21(表10)および図22(表11)において、Mo粒子あるいはCr粒子の組成比(質量%)、Mnの組成比およびMn/(Mn+Te)比は一定であるので、図23および図24では横軸にMo粒子あるいはCr粒子の粒径(μm)、縦軸に最大曲げ応力および裁断電流値としている。
図23および図24から、ビッカース硬さが160HvのMoや、ビッカース硬さが120HvのCrを高融点物質粒子として用いた場合、粒径が25μmであっても機械加工時に割れは発生せず、粒径が100μmでも遮断試験にも合格であった。ビッカース硬さが200Hv以下の場合、高融点物質粒子の粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲であれば、裁断性能および遮断性能に問題はなかった。また、加工時の割れや成形体作製時の破壊も発生しなかった。
ビッカース硬さが200Hv以下の材料を高融点物質粒子として用いた場合、粒径が100μmのときに三点曲げ試験による機械強度は100MPaを下回っているが、機械加工時に割れが発生しなかった。これは、機械加工時に発生する割れは高融点物質粒子の硬さに依存しているといえる。機械加工は硬い材質を削るほど被切削品である電気接点に大きな負荷がかかる。そのため実施の形態1で述べたWCは純金属に比べて硬いため、電気接点として割れることなく機械加工ができる強度の下限は200MPaであった。一方、WCに比べて軟質なMoやCrは機械加工時の負荷がWCの場合に比べて少ないことから、強度が100MPa以下でも割れることなく機械加工ができたものと考えられる。このように、WCやWよりも軟質な高融点物質粒子を用いた場合、電気接点の機械強度は低くなるが粒径が25μmでも割れが発生せず、100μmまでは実用上問題はなかった。
実施の形態1では、WCの粒径が大きくなるにつれ機械加工時に割れが発生するのに加えて遮断不可がみられていたが、MoやCrでは粒径が10μm以上であっても遮断不可が見られなかった。WCでは粒径が大きくなるにつれて表面凹凸が大きくなるため、アークが集中することで遮断不可となったと推測した。一方、MoやCrはWCに比べて軟質な材料であるため、機械加工時に高融点物質粒子それ自身が削られて表面凹凸があまり大きくならなかったことで遮断が安定したと推定される。
本実施の形態においては、高融点物質粒子の粒径が100μmより大きい場合は遮断試験では不合格となった。高融点物質粒子それ自身が削られて表面凹凸が小さくなってはいても、削られた高融点物質粒子の粒径が大きいため、アークが高融点物質粒子の部分に留まったためと考えられる。なお、MoやCrでは粒径が小さい場合でも柔らかい粒子であるため塑性変形しやすく、0.5μmでも成形可能であった。
以上のことから、高融点物質粒子のビッカース硬さが200Hv以下であれば、その粒径は0.1μm以上100μmであっても問題ないことがわかる。
1 真空バルブ、 2 遮断室、 3 絶縁容器、 4a、4b 封止金具、 5a、5b 金属蓋、 6 固定電極棒、 7 可動電極棒、8 固定電極、 9 可動電極、 10 固定電気接点、 11 可動電気接点、 12 ベローズ、 13 ベローズ用アークシールド、 14 絶縁容器用アークシールド、 20 電気接点、 21 試験片、 31 母材、32 WC粒子、 33 Mn−Cu−Te金属間化合物、 34 MnO粒子

Claims (4)

  1. Cu100原子%に対してMnが0原子%より多く10原子%以下固溶した母材と、
    前記母材中に分散して配置された金属の粒子および当該金属の炭化物粒子の少なくとも一方の高融点物質粒子と、
    X原子(Xは、TeまたはSe)を含み前記母材中に分散して配置された金属間化合物と
    を含む電気接点であって、
    前記金属は、W、Ta、Cr、Mo、Nb、TiおよびVの中から選ばれた少なくとも1つの金属であり、
    前記高融点物質粒子の粒径は、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが0HV以上200HV以下の場合は0.1μm以上100μm以下、当該高融点物質粒子のビッカース硬さが200HV以上の場合は0.1μm以上10μm以下であり、
    全体を100質量%とした場合、
    前記高融点物質粒子は20質量%以上80質量%以下であり、
    前記X原子は1.5質量%以上15質量%以下であり、
    残部は前記母材であると共に、
    前記金属間化合物は、MnX化合物およびMn及びCuが固溶しあうMn−Cu固溶相とXとの化合物を含み、
    Mn/(Mn+X)の原子量比は、20原子%以上80原子%以下である
    ことを特徴とする電気接点。
  2. 前記Mn及びCuが固溶しあうMn−Cu固溶相とXとの化合物は、
    (Mn,Cu)Xおよび(Mn,Cu)2Xの少なくとも一方の組成であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点。


  3. 前記母材は、
    さらにMnOが5原子%含まれている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気接点。
  4. 固定電極と、
    この固定電極に接触したり離れたりする可動電極と、
    前記固定電極および前記可動電極を真空中に保持する遮断室と
    を備えた真空バルブであって、
    前記固定電極および前記可動電極の接触部にそれぞれ設けられた固定電気接点および可動電気接点の少なくとも一方は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された電気接点が用いられた
    ことを特徴とする真空バルブ。
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