JP6496899B2 - 浸潤性髄膜腫判別用試薬、及びその判別方法 - Google Patents

浸潤性髄膜腫判別用試薬、及びその判別方法 Download PDF

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本発明は、浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬、及びそれを用いた浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別方法に関する。
髄膜腫は、脳最外部を覆う硬膜に発生する脳腫瘍の一種である。その発症頻度は比較的高く、2.3〜7.8人/10万人ともいわれ、日本では原発性脳腫瘍中1位を占めている。また両側に聴神経鞘腫のできる難病の神経線維腫症2型(NF2, neurofibromatosis type 2)患者では約半数に髄膜腫が発生する。
髄膜腫の多くはWHO分類によれば、脳腫瘍の病理組織学的な悪性度が最も低いGrade I、すなわち良性腫瘍であり、また前述のように髄膜腫は硬膜由来であることから適切な外科的措置により脳自体にダメージを与えることなく完全に切除することが可能である。そのため予後は一般的に良好で、完治が期待できる。一方、髄膜腫のうち約10%は、WHO Grade II(atypical)又はGrade III(anaplastic)に属するいわゆる悪性髄膜腫であり、これらは再発性が高く、その治療も困難を極める。
ここで問題となるのが、病理組織学的にはGrade Iを示しながら浸潤傾向の強い一群の髄膜腫が存在することである(非特許文献1及び2)。このような浸潤性髄膜腫は、良性髄膜腫と診断されてしまう上に、全摘出が難しく再発性が高いことから予後が不良となるケースが多い。以前からその存在は指摘されていたが、近年手術技術の進歩によりこれら浸潤性髄膜腫に対する摘出手術の機会が増えたことにより、その治療困難さが改めて問題となっている。
浸潤性髄膜腫は、MRIやCT画像からある程度は診断可能であるものの、完全な判別は困難であり、特に腫瘍が小さい場合には良性髄膜腫として看過されてしまう傾向にある。また、病理診断で判別することはほとんど不可能で、非浸潤性のGrade I髄膜腫と区別はできない。それ故、現在のところ浸潤性髄膜腫を正確に判別する方法は知られていない。
したがって、Grade Iの髄膜腫であっても、それが浸潤性髄膜腫か否かを正確に判別する技術の開発が求められている。
Pieper D.R. and Al-Mefty O., 1999, Neurosurgery, 45:231-238 Pieper D.R. et al., 1999, Neurosurgery 44:742-747
本発明は、浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を容易かつ正確に判別する方法を開発し、提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために複数のGrade I髄膜腫患者から摘出された組織に対して網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果を用いてクラスタ分析を行ったところ、浸潤傾向が強い浸潤性グループと、浸潤傾向のない非浸潤性グループとを識別できる2つのクラスタが形成されることを見出した。また、2つのクラスタ間における遺伝子の発現レベルを比較した結果、当該クラスタリングと遺伝子発現レベルとの間に相関関係が見られる21種の遺伝子群を分離することができた。そして、被験者由来の試料におけるこれらの遺伝子の発現レベルを測定することによって、その被験者が浸潤傾向の強い髄膜腫患者(浸潤性髄膜腫患者)であるか、又は浸潤傾向のない髄膜腫患者(非浸潤性髄膜腫患者、すなわち良性髄膜腫患者)であるかを容易かつ正確に判別することに成功した。本発明は、当該知見に基づくものであって、以下を提供する。
(1)被験者由来の試料から以下の(a)及び(b)の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判別する方法。
(a)Homo sapiens F-box protein 32 (FBXO32)(配列番号1)
(b)Homo sapiens βGlcNAc β 1,4-galactosyltransferase polypeptide 1 (B4GALT1)(配列番号2)
(2)被験者由来の試料から以下の(c)の遺伝子の発現プロファイルをさらに得て、前記全ての遺伝子の発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判別する、(1)に記載の方法。
(c)Homo sapiens basic helix-loop-helix family member e40 (BHLHE40) (配列番号3)
(3)被験者由来の試料から以下の(d)及び/又は(e)の遺伝子の発現プロファイルをさらに得て、前記全ての遺伝子の発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判別する、(2)に記載の方法。
(d)Homo sapiens ezrin (EZR)(配列番号4)
(e)Homo sapiens nebulin, transcript variant X27 (NEB)(配列番号5)
(4)被験者由来の試料から以下の(f)及び/又は(g)の遺伝子の発現プロファイルをさらに得て、前記全ての遺伝子の発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判別する、(3)に記載の方法。
(f)Homo sapiens G protein-coupled receptor class C group 5 member A (GPRC5A)(配列番号6)
(g)Homo sapiens serpin peptidase inhibitor clade A member 1 (SERPINA1)(配列番号7)
(5)被験者由来の試料から以下の(h)〜(u)の遺伝子の発現プロファイルをさらに得て、前記全ての遺伝子の発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判別する、(4)に記載の方法。
(h)Homo sapiens mucin 4 (MUC4) (配列番号8)
(i)Homo sapiens SPARC related modular calcium binding 1 (SMOC1) (配列番号9)
(j)Homo sapiens dual specificity phosphatase 5(DUSP5) (配列番号10)
(k)Homo sapiens CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP) delta (CEBPD)(配列番号11)
(l)Homo sapiens interferon stimulated exonuclease gene 20kDa (ISG20) (配列番号12)
(m)Homo sapiens integrin α5 (ITGA5) (配列番号13)
(n)Homo sapiens neuroepithelial cell transforming 1 (NET1) (配列番号14)
(o)Homo sapiens AF4/FMR2 family member 2(AFF2) (配列番号15)
(p)Homo sapiens vascular endothelial growth factor A (VEGFA) (配列番号16)
(q)Homo sapiens FOS-like antigen 2 (FOSL2) (配列番号17)
(r)Homo sapiens tumor protein p53 inducible nuclear protein 2 (TP53INP2) (配列番号18)
(s)Homo sapiens scavenger receptor cysteine rich domain containing group B (4 domains) (SRCRB4D) (配列番号19)
(t)Homo sapiens transforming growth factor β receptor 1 (TGFBR1) (配列番号20)
(u)Homo sapiens jun proto-oncogene (JUN) (配列番号21)
(6)遺伝子の発現プロファイルが遺伝子の発現レベルの相対値である、(1)〜(5)のいずれか記載の方法。
(7)被験者の前記遺伝子の発現プロファイルを、浸潤性髄膜腫患者及び非浸潤性髄膜腫患者における前記遺伝子の発現プロファイルと比較する、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記被験者が髄膜腫既往歴者である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記試料が組織又は体液である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)以下の(a)及び(b)の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドからなる浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
(a)Homo sapiens F-box protein 32 (FBXO32)(配列番号1)
(b)Homo sapiens βGlcNAc β 1,4-galactosyltransferase polypeptide 1 (B4GALT1)(配列番号2)
(11)以下の(c)の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドをさらに含む、(10)に記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
(c)Homo sapiens basic helix-loop-helix family member e40 (BHLHE40) (配列番号3)
(12)以下の(d)及び/又は(e)の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドをさらに含む、(11)に記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
(d)Homo sapiens ezrin (EZR)(配列番号4)
(e)Homo sapiens nebulin, transcript variant X27 (NEB)(配列番号5)
(13)以下の(f)及び/又は(g)の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドをさらに含む、(12)に記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
(f)Homo sapiens G protein-coupled receptor class C group 5 member A (GPRC5A)(配列番号6)
(g)Homo sapiens serpin peptidase inhibitor clade A member 1 (SERPINA1)(配列番号7)
(14)以下の(h)〜(u)の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドをさらに含む、(13)に記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
(h)Homo sapiens mucin 4 (MUC4) (配列番号8)
(i)Homo sapiens SPARC related modular calcium binding 1 (SMOC1) (配列番号9)
(j)Homo sapiens dual specificity phosphatase 5(DUSP5) (配列番号10)
(k)Homo sapiens CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP) delta (CEBPD) (配列番号11)
(l)Homo sapiens interferon stimulated exonuclease gene 20kDa (ISG20) (配列番号12)
(m)Homo sapiens integrin α5 (ITGA5) (配列番号13)
(n)Homo sapiens neuroepithelial cell transforming 1 (NET1) (配列番号14)
(o)Homo sapiens AF4/FMR2 family member 2(AFF2) (配列番号15)
(p)Homo sapiens vascular endothelial growth factor A (VEGFA) (配列番号16)
(q)Homo sapiens FOS-like antigen 2 (FOSL2) (配列番号17)
(r)Homo sapiens tumor protein p53 inducible nuclear protein 2 (TP53INP2) (配列番号18)
(s)Homo sapiens scavenger receptor cysteine rich domain containing group B (4 domains) (SRCRB4D) (配列番号19)
(t)Homo sapiens transforming growth factor β receptor 1 (TGFBR1) (配列番号20)
(u)Homo sapiens jun proto-oncogene (JUN) (配列番号21)
(15)ヌクレオチドを担体上に固相化した、(10)〜(14)のいずれかに記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
本発明の浸潤性髄膜腫判別方法によれば、髄膜腫が浸潤性髄膜腫か非浸潤性髄膜腫かを正確に判別することができる。
本発明の21種の浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の発現プロファイルに基づいて、34名の髄膜腫既往歴患者由来の髄膜腫サンプルに対して行った階層クラスタリングを示す図である。前記患者のうち、枠で囲った5名の患者は、MRI又はCT画像診断において浸潤性髄膜腫と診断された患者である。階層クラスタリングの結果から、この5名は、全てAクラスタに属することがわかった。また、星印を付けたMe#032サンプルの患者もAクラスタに属することがわかった。この患者は、画像診断において非浸潤性髄膜腫と診断されたものの、その後の診断で髄膜腫に浸潤傾向が確認されている。
1.浸潤性髄膜腫判別方法
1−1.構成及び定義
本発明の第1の態様は、浸潤性髄膜腫判別方法である。本態様の浸潤性髄膜腫判別方法は、被験者由来の試料から特定の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいて該被験者における髄膜腫が浸潤性であるか又は非浸潤性髄膜腫であるかの判別を補助する方法である。
本明細書において「浸潤性髄膜腫」とは、硬膜から発生した髄膜腫が頭蓋内方向のみでなく頭蓋外方向へも浸潤性に発育している特殊なタイプの腫瘍であり、頭蓋底の骨に浸潤し、さらに頭蓋外まで進展している髄膜腫と定義した。一方、「非浸潤性髄膜腫」は一般的な髄膜腫であり、腫瘍は硬膜から内側に向かって頭蓋内のみへ発育する。「浸潤性」及び「非浸潤性」は、腫瘍の発育パターンの違いによる分類であり、病理診断によるWHO Grade分類とは直接関係しない。前述のように、多くの髄膜腫は、病理学的にはWHO Grade Iであり良性髄膜腫と診断されるが、一部の髄膜腫は、Grade II(atypical)、Grade III(anaplastic)に分類される悪性髄膜腫である。浸潤性髄膜腫もその多くはWHO分類でGrade Iと診断されるが、一部にWHO Grade II 又はGrade IIIの浸潤性髄膜腫も存在する。
本明細書において「被験者」とは、試料を提供し、検査に供されるヒト個体をいう。被験者は、髄膜腫罹患歴のある個体又は髄膜腫罹患の疑いのある個体のいずれであってもよい。ここでいう髄膜腫罹患歴のある個体とは、現在髄膜腫に罹患している患者、及び過去髄膜腫に罹患し、手術により髄膜腫を切除した髄膜腫既往歴者を含む。病理組織学的にGrade Iに分類された髄膜腫既往歴者は、浸潤性髄膜腫である可能性を有することから、被験者として好適である。また、ここでいう髄膜腫罹患の疑いのある個体とは、他の診断方法により髄膜腫罹患の可能性が診断されたものの、その確証が得られていない個体をいう。
本明細書において「試料」とは、前記被験者から採取され、本実施形態の判定方法に供されるものであって、例えば、組織、細胞、体液又は腹腔洗浄液が該当する。ここでいう「組織」及び「細胞」は、被験者のいずれの部位由来でもよいが、好ましくは生検により採取された、又は手術により切除された、髄膜腫又は髄膜腫細胞である。また、ここでいう「体液」とは、被験者から採取された液体状の生体試料をいう。例えば、髄液(脳脊髄液)、血液(血清、血漿及び間質液を含む)、尿、リンパ液、消化液、腹水、胸水、神経根周囲液、各組織若しくは細胞の抽出液等が挙げられる。好ましくは、髄液又は血液である。
組織又は細胞の採取は、生検又は手術により切除されたものを入手すればよい。また、体液の採取は、当該分野の公知の方法に基づいて行なえばよい。例えば、髄液であれば、公知の腰椎穿刺によって、又は手術時に術野から採取すればよく、血液やリンパ液であれば、公知の採血方法に従えばよい。本態様の浸潤性髄膜腫判別方法において必要となる試料の量は、特に限定するものではないが、組織又は細胞であれば少なくとも10μg、好ましくは少なくとも0.1mgあればよい。また髄液、血液、リンパ液、又は神経根周囲液のような体液であれば、少なくとも0.1mL、好ましくは少なくとも1mL、より好ましくは少なくとも10mLの容量があればよい。
本態様の方法で用いる遺伝子は、表1に示すヒト由来の21種の遺伝子である。
Figure 0006496899
上記21種の遺伝子は、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子となり得る。本態様の浸潤性髄膜腫判別方法では、取得する上記21種の遺伝子の発現プロファイルが多いほど精度の高い判別が可能となる。本態様の方法では、少なくとも配列番号1で示す塩基配列からなるヒトFBXO32遺伝子及び配列番号2で示す塩基配列からなるヒトB4GALT1遺伝子の発現プロファイルを得ることで、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫を判別することができる。
上記2つの遺伝子に加えて、配列番号3で示す塩基配列からなるヒトBHLHE40遺伝子の発現プロファイルを得ることで、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫をより正確に判別することができる。
また、上記3つの遺伝子に加えて、配列番号4で示す塩基配列からなるヒトEZR遺伝子の発現プロファイル及び/又は配列番号5で示す塩基配列からなるヒトNEB遺伝子の発現プロファイルを得ることで、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫をさらに正確に判別することができる。
さらに、上記配列番号1〜4、配列番号1〜3及び5、又は配列番号1〜5に加えて、配列番号6で示す塩基配列からなるヒトGPRC5A遺伝子及び/又は配列番号7で示す塩基配列からなるヒトSERPINA1遺伝子の発現プロファイルを得ることで、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫を一層正確に判別することができる。
通常は、上記7つの遺伝子で浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫を高精度に判別することが可能であるが、必要に応じて、表1の配列番号8〜21で示す塩基配列からなる遺伝子の少なくとも一つの発現プロファイルをさらに得ることで、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜腫を一層正確に判別することができる。
本明細書において「遺伝子の発現プロファイル」とは、遺伝子の発現レベルに関する情報をいう。本明細書では、特に複数の遺伝子の発現レベルに関する情報から構築される遺伝子発現パターンをいう。
本明細書において「遺伝子の発現レベル」とは、遺伝子の発現量(転写産物量)、発現強度又は発現頻度をいう。ここでいう遺伝子の発現レベルは、野生型遺伝子の発現レベルに限らず、点突然変異遺伝子等の変異遺伝子の発現レベルも含み得る。また、遺伝子の発現を示す転写産物には、スプライスバリアントのような異型転写産物(バリアント)及びそれらの断片も含み得る。変異遺伝子、転写産物、又はその断片に基づく情報であっても本発明における遺伝子の発現プロファイルの構築が可能だからである。
前記変異遺伝子の例として、例えば、表1に記載の配列番号で示される21種の遺伝子の塩基配列において、1個又は複数個のヌクレオチドが欠失、置換又は付加された変異遺伝子、表1に記載の配列番号で示される遺伝子の塩基配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の塩基同一性を有する変異遺伝子、及び前記遺伝子の部分塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチド断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする変異遺伝子が挙げられる。なお、本明細書において「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両塩基配列の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの、表1に記載の遺伝子の全塩基数に対する比較するヌクレオチドの塩基配列中の同一塩基数の割合(%)をいう。「複数個のヌクレオチド」とは、2〜30個、2〜14個、2〜10個、2〜8個、2〜6個、2〜5個、2〜4個、又は2〜3個のヌクレオチドをいう。また、「ストリンジェントな条件」とは、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味する。一般に、低塩濃度で、かつ高温であるほど高ストリンジェントな条件となる。低ストリンジェントな条件とは、例えば、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、1×SSC、0.1% SDS、37℃程度で洗浄する条件であり、より厳しくは0.5×SSC、0.1% SDS、42℃〜50℃程度で洗浄する条件である。さらに厳しい高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば50℃〜70℃、55℃〜68℃、又は65℃〜68℃で、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件が好ましい。前記SSC、SDS及びに温度の組み合わせは、例示に過ぎない。当業者は、前記SSC、SDS及びに温度に加えて、プローブ濃度、プローブ塩基長、ハイブリダイゼーション時間等のその他の条件を適宜組み合わせてハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定することもできる。
遺伝子の発現レベルは、対象とする遺伝子の転写産物、すなわちmRNAの産生量、又はその翻訳産物であるタンパク質の産生量若しくは活性等の測定により得ることができる。遺伝子の発現レベルは、試料中のmRNA量やタンパク質量をngやμg等の容量で表した絶対値であってもよいし、また対照値に対する吸光度や標識分子による蛍光強度等で表した相対値であってもよい。
1−2.方法
遺伝子の転写産物の測定は、mRNAの測定であっても、またmRNAから逆転写されて得られたcDNAの測定であってもよい。一般に遺伝子の転写産物の測定には、上記の遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて、遺伝子の発現レベル又はその断片をターゲットとして測定する方法が採用される。プローブの塩基長は、限定はしないが、好ましくは10bp〜遺伝子全長、より好ましくは15bp〜遺伝子全長、さらに好ましくは30bp〜遺伝子全長である。プライマーの塩基長は、限定はしないが、10〜50bp、好ましくは15〜30bpである。このような測定方法は、当該分野で公知の全ての方法を用いることができる。例えば、ノーザンブロット法、マイクロアレイ法、定量PCR法、デジタルPCR法等が挙げられる。
マイクロアレイ法は、基板上に固定化した前記21種の遺伝子の少なくともヒトFBXO32遺伝子(配列番号1)及びヒトB4GALT1遺伝子(配列番号2)の、好ましくは前記2つの遺伝子に加えて、ヒトBHLHE40遺伝子(配列番号3)の、より好ましくは前記3つの遺伝子に加えてヒトEZR遺伝子(配列番号4)及び/又はヒトNEB遺伝子(配列番号5)の、さらに好ましくは前記遺伝子に加えてヒトGPRC5A遺伝子(配列番号6)及び/又はヒトSERPINA1遺伝子(配列番号7)の、一層好ましくは前記遺伝子に加えてヒトMUC4遺伝子(配列番号8)、ヒトSMOC1遺伝子(配列番号9)、ヒトDUSP5遺伝子(配列番号10)、ヒトCEBPD遺伝子(配列番号11)、ヒトISG20遺伝子(配列番号12)、ヒトITGA5遺伝子(配列番号13)、ヒトNET1遺伝子(配列番号14)、ヒトAFF2遺伝子(配列番号15)、ヒトVEGFA遺伝子(配列番号16)、ヒトFOSL2遺伝子(配列番号17)、ヒトTP53INP2遺伝子(配列番号18)、ヒトSRCRB4D遺伝子(配列番号19)、ヒトTGFBR1遺伝子(配列番号20)、及びヒトJUN遺伝子(配列番号21)からなる群から選択される一以上の遺伝子の、より一層好ましくは21種全ての遺伝子の、転写産物における塩基配列からなるヌクレオチド若しくはその一部、又はその塩基配列に相補的な配列を含むヌクレオチドをプローブとして、蛍光物質等で標識した被験者由来のmRNA又はcDNAを、前記プローブを固定した基板に接触させて、両者のハイブリダイズによって基板上で発生する蛍光を、マイクロアレイリーダーを用いて測定する方法である。測定した蛍光強度により、mRNA量若しくはcDNA量又はレファレンスmRNAに対するそれらの存在比を決定することができる。
定量PCR法には、増幅産物をアガロースゲルで電気泳動後にインターカレーターで染色し、分解された増幅産物をケミルミネッセンスアナライザーで定量する方法、又はリアルタイムRT-PCR法等がある。リアルタイムRT-PCR法には、例えば、SYBR(登録商標)Green等を用いるインターカレーター法、Taqman(登録商標)プローブ法、及びサイクリングプローブ法が挙げられる。これらはいずれも公知の方法であり、当該技術分野における適当なプロトコルにも記載されているので、それらを参照すればよい。そのようなプロトコルとしては、例えば、Green & Sambrook, Molecular Cloning, 2012, Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Pressが挙げられる。この他、ATAC-PCR法(Kato,K.et al.,Nucl.Acid Res., 1997, 25: 4694-4696)、Body Map法(Gene, 1996, 174: 151-158)、Serial analysis of gene expression(SAGE)法(米国特許第527,154号、第544,861号、欧州特許公開第0761822号)、MAGE(Microanalysis of Gene Expression)(特開2000-232888号)等を利用することもできる。一例として、リアルタイムRT-PCR法で遺伝子の転写産物を定量する方法について、以下で簡単に説明をする。リアルタイムRT-PCR法は、試料中のmRNAから逆転写反応によって調製されたcDNAを鋳型として、PCRの増幅産物が特異的に蛍光標識される反応系において、増幅産物に由来する蛍光強度を検出する機能の備わった温度サイクラー装置を用いてPCRを行うことで、反応中の産物の量をリアルタイムでモニタリングして、その結果をコンピュータで回帰分析する方法である。PCR産物を標識する方法としては、蛍光標識したプローブを用いる方法(例えば、TaqMan(登録商標)PCR法)と、2本鎖DNAに特異的に結合する試薬を用いる方法とがある。TaqMan(登録商標)PCR法は、5’末端部がクエンチャー物質で、また3’末端部が蛍光色素で修飾されたプローブを用いる。通常は、5’末端部のクエンチャー物質が3’末端部の蛍光色素を抑制しているが、PCRが行われるとTaqポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により当該プローブが分解され、それによってクエンチャー物質の抑制が解除されるため蛍光を発するようになる。その蛍光量は、PCR生成物の量を反映する。PCR産物が検出限界に到達するときのサイクル数(CT)と初期鋳型量とは逆相関の関係にあることから、リアルタイム測定法ではCTを測定することによって初期鋳型量を定量している。数段階の既知量の鋳型を用いてCTを測定し、検量線を作製すれば、未知試料の初期鋳型量の絶対値を算出することができる。RT-PCRで使用する逆転写酵素は、例えば、M-MLV RTase、ExScript RTase(TaKaRa社)、Super Script II RT(ライフテクノロジーズ社)等を使用することができる。
上記遺伝子の発現レベルを測定することで、被験者における遺伝子の発現プロファイルを得ることができる。得られた発現プロファイルを解析することによって、被験者の髄膜腫罹患の有無、及び罹患している若しくは罹患していた髄膜腫が浸潤性か非浸潤性かを判別することが可能となる。例えば、被験者から得られた発現プロファイルが、浸潤性髄膜腫患者群から得られた対応する遺伝子の発現プロファイルと類似している場合、その被験者は、浸潤性髄膜腫に罹患している、罹患するリスクが大きい、又は罹患していたと判定することができる。また、被験者から得られた遺伝子の発現プロファイルが、非浸潤性髄膜腫患者群から得られた対応する遺伝子の発現プロファイルと類似している場合、その被験者は、非浸潤性髄膜腫に罹患していると判定することができる。これにより、たとえ病理診断及びMRI又はCT画像診断等でGrade Iの非浸潤性髄膜腫と診断された場合であっても、浸潤性髄膜腫に罹患している又は罹患していたと判定された場合、術後の髄膜腫細胞の採り残し等により、再発するリスクが高いと認定することができる。さらに、髄膜腫罹患の疑いがある被験者から得られた遺伝子の発現プロファイルを健常人群、浸潤性髄膜腫患者群、非浸潤性髄膜腫患者群のそれぞれで得られた対応する遺伝子の発現プロファイルと比較し、いずれの発現プロファイルに類似するかを評価することにより、その被験者の髄膜腫罹患の有無、及び罹患している場合は、浸潤性髄膜腫又は非浸潤性髄膜のいずれに罹患しているかを判定することができる。
遺伝子の発現プロファイルは、例えば、蛍光強度等の発現シグナルのパターンをデジタル数値化し、数値レベルで記録される。遺伝子の発現プロファイルの比較は、例えば、パターン比較ソフトウェアを用いて行うことができる。パターン分析は、クラスタ分析、コックスハザード分析、判別分析等を利用することができる。
クラスタ分析とは、遺伝子発現パターンの類似した遺伝子どうし又はサンプルどうしをグルーピングする統計的手法である。データ間の類似度(例えば、ユークリッド距離等)を定義し、その類似度を用いることにより、遺伝子発現パターンの類似したサンプルどうしをグループ化することができる。階層的クラスタ分析は、解析用ソフトウェア「Expression View Pro」(マイクロダイアグノスティック社)、「GeneMaths XT」(インフォコム社)、「GeneSprin」(アジレント・テクノロジー社)又は「treeview」(スタンフォード大学)等を用いても行うことができる。予め浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判定するための判別分析モデルを構築しておき、該判別分析モデルに被験者から得られた遺伝子の発現プロファイルに関するデータを入力し、髄膜腫罹患の有無、及び罹患している場合は、浸潤性又は非浸潤性髄膜の判別を行うことができる。例えば、病理試験でGrade Iに分類された髄膜腫既往歴者において、判明した浸潤髄膜腫群と非浸潤髄膜腫群の2つのクラスタからなる判別分析モデルに、髄膜腫に罹患した新たな被験者に由来する遺伝子の発現データを加えて、クラスタ分析を行うことにより、その新たな被験者が浸潤髄膜腫と非浸潤髄膜腫のいずれの群に入るかで判別することができる。また、例えば、判別分析から判別式を得て、蛍光強度と髄膜腫罹患、及び浸潤性又は非浸潤性髄膜を関連付け、判別式にデジタル数値化した被験者の発現シグナルのパターンを代入することにより、髄膜腫罹患の有無、及び罹患している場合は、浸潤性又は非浸潤性髄膜の判別を行うこともできる。
1−3.効果
本態様の浸潤性髄膜腫判別方法によれば、特定の遺伝子の発現プロファイルという新たな指標によって、手術により摘出した髄膜腫の検体から、摘出程度(全摘出か、部分摘出か、生検か)に関らず髄膜腫が浸潤性か非浸潤性かを正確に判別することが可能となる。これまでは手術で全摘出できなかった髄膜腫が病理組織学的にGrade Iと診断された場合に、残存腫瘍には追加治療をせずに経過をみる場合が多かったが、本態様の方法により浸潤性髄膜腫であるという結果が出た場合、早期に追加治療を行うなどの術後の治療方針を決める重要な判断材料となることが想定される。また、手術で全摘出したと判断している場合にも、再発の可能性が高いことを事前に予測することができるため、MRIによる患者の経過観察をより密に行うことで再発を早期に発見して早期対応ができるというメリットがある。
特に、術前のMRI又はCT画像からは浸潤性が判断できない腫瘍の場合でも、本態様の浸潤性髄膜腫判別方法によれば、医師以外の者が客観的に判別することができる。
2.浸潤性髄膜腫判別用試薬
本発明の第2の態様は、浸潤性髄膜腫判別用試薬である。本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬は、被験者由来の試料に適用することで、その被験者が髄膜腫に罹患しているか、罹患しているのであれば浸潤性髄膜腫であるか、非浸潤性髄膜腫であるかを判別することができる。
2−1.構成
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬は、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物を検出するヌクレオチド、又は浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物を検出するヌクレオチド若しくはポリペプチドを含む。以下、それぞれに対して具体的に説明をする。
2−1−1.浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物を検出するヌクレオチド
本明細書において「浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物を検出するヌクレオチド」とは、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物、すなわちmRNA又はcDNAを検出するためのプローブ又はプライマーをいう。本態様のプローブ又はプライマーは、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドからなる。
本明細書において「浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子」とは、表1に記載の21種の遺伝子である。浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子は、21種の遺伝子全てである必要はなく、前記21種のうち、少なくとも配列番号1で示す塩基配列からなるヒトFBXO32遺伝子及び配列番号2で示す塩基配列からなるヒトB4GALT1遺伝子であればよい。好ましくは前記2つの遺伝子に加えて、配列番号3で示す塩基配列からなるヒトBHLHE40遺伝子であればよい。より好ましくは前記3つの遺伝子に加えて、配列番号4で示す塩基配列からなるヒトEZR遺伝子及び/又は配列番号5で示す塩基配列からなるヒトNEB遺伝子であればよい。さらに好ましくは配列番号1〜4、配列番号1〜3及び5、又は配列番号1〜5で示す塩基配列からなる遺伝子に加えて、配列番号6で示す塩基配列からなるヒト GPRC5A遺伝子及び/又は配列番号7で示す塩基配列からなるヒトSERPINA1遺伝子であればよい。一層好ましくは配列番号8〜21で示す塩基配列からなる遺伝子の少なくとも一つ、特に好ましくは表1に示す21種全ての遺伝子である。
また、「浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物を検出するヌクレオチド」には、前記遺伝子の塩基配列において1個又は複数個のヌクレオチドが欠失、置換又は付加されたヌクレオチド、前記遺伝子の塩基配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の塩基同一性を有するヌクレオチド、及び前記遺伝子の部分塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチド断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸で酵素活性を保持するヌクレオチドも含まれる。このようなヌクレオチドの具体的な例として、21種の遺伝子の各種変異体(バリアント)や点突然変異遺伝子等の変異遺伝子が挙げられる。
「その断片」とは、前記浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子のヌクレオチド断片をいう。
上記したプローブ又はプライマーの調製は当業者に既知であり、例えば、Green & Sambrook, Molecular Cloning, 2012, Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press又は Ausubel F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, last update 2013, Wileyに記載された方法に準じて行えばよい。
また、本態様で用いるヌクレオチドは、上記遺伝子のセンス鎖よりなるヌクレオチド、アンチセンス鎖よりなるヌクレオチドのいずれをも用いることもできる。
本態様のプライマー又はプローブの塩基長は特に限定されない。プローブの場合、ハイブリダイゼーションに使用するのであれば、少なくとも10塩基長以上から遺伝子全長、好ましくは15塩基長以上から遺伝子全長、より好ましくは30塩基長以上から遺伝子全長、さらに好ましくは50塩基長以上から遺伝子全長であり、マイクロアレイに使用するのであれば、10〜200塩基長、好ましくは20〜150塩基長、より好ましくは30〜100塩基長である。一般に、プローブが長いほどハイブリダイゼーション効率が上昇し、感度は高くなる。一方、プローブが短いほど感度は低くなるが、逆に特異性が上昇する。また、プライマーの場合、通常、10〜50塩基長、好ましくは15〜30塩基長である。
本態様のプライマー及び/又はプローブを構成するヌクレオチドは、通常DNA、RNA等の天然核酸であるが、必要に応じてPNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid;登録商標)、メチルホスホネート型DNA、ホスホロチオエート型DNA、2'-O-メチル型RNA等の化学修飾核酸や擬似核酸を含んでいてもよい。天然核酸に化学修飾核酸や擬似核酸を組み合わせで構成することもできる。
また、プライマー及びプローブは、蛍光物質及び/又はクエンチャー物質等の標識物質を用いて標識することもできる。標識物質は、限定されず、市販のものを用いることができる。例えば、蛍光物質であればFITC、Texas、Cy3、Cy5、Cy7、Cyanine3、Cyanine5、Cyanine7、FAM、HEX、VIC、フルオレサミン及びその誘導体、及びローダミン及びその誘導体等を用いることができる。クエンチャー物質であれば、AMRA、DABCYL、BHQ-1、BHQ-2、又はBHQ-3等を用いることができる。プライマー及びプローブにおける標識物質の標識位置は、その修飾物質の特性や、使用目的に応じて適宜定めればよい。一般的には、5’又は3’末端部に修飾されることが多い。また、一つのプライマー及びプローブ分子が一以上の標識物質で標識されていても構わない。これらの物質のヌクレオチドへの標識は公知の方法で行うことができる。
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬がプローブの場合、浸潤性髄膜腫判別用試薬は、複数の浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子又はその断片を基板上に固定したDNAマイクロアレイ又はDNAマイクロチップの状態で提供することもできる。各プローブを固定する基板の素材は、限定はしないが、ガラス板、石英板、シリコンウェハー等が通常使用される。基板の大きさは、例えば、3.5mm×5.5mm、18mm×18mm、22mm×75mmなどが挙げられるが、これはプローブのスポット数やそのスポットの大きさなどに応じて様々に設定することができる。プローブは、1スポットあたり通常0.1μg〜0.5μgのヌクレオチドが用いられる。ヌクレオチドの固定化方法には、ヌクレオチドの荷電を利用してポリリジン、ポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミン等のポリ陽イオンで表面処理した固相担体に静電結合させる方法や、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基などの官能基を導入した固相表面に、アミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入したヌクレオチドを共有結合により結合させる方法が挙げられる。
2−1−2.浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物を検出するヌクレオチド
本明細書において「浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物を検出するヌクレオチド」とは、前記浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物であるタンパク質(以下、「浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質」と表記する)を検出するための核酸アプタマーである。本態様の核酸アプタマーは、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質のアミノ酸配列を認識して、結合することで、そのタンパク質を特異的に検出することができる。
「核酸アプタマー」とは、核酸で構成されるアプタマーであって、水素結合等を介した一本鎖核酸分子の二次構造、さらに三次構造に基づいて形成される立体構造によって標的物質と強固、かつ特異的に結合し、標的物質の生理活性等の機能を特異的に阻害又は抑制する能力を持つリガンド分子をいう。核酸アプタマーを構成するヌクレオチドは、通常は天然核酸であるRNA及び/又はDNAであるが、転写又は複製可能な非天然型ヌクレオチドを含んでいてもよい。好適には、RNAのみで構成されるRNAアプタマー、又はDNAのみで構成されるDNAアプタマーである。
本態様の核酸アプタマーは、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質を標的分子として、当該分野で公知の方法により作製することができる。例えば、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法を用いた試験管内選別法が挙げられる。SELEX法とは、例えば、RNAアプタマーを分離する場合であれば、「ランダム配列領域とその両端にプライマー結合領域を有する多数のRNA分子によって構成されるRNAプールから標的分子である浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質に結合したRNA分子を選択する。回収したRNA分子をRT-PCR反応によって増幅した後、得られたcDNA分子を鋳型として転写を行い、選択されたRNA分子の増幅産物を得て、それを次のラウンドのRNAプールにする。」という一連のサイクルを数〜数十ラウンド繰り返して、標的分子に対して、より結合力の強いRNA分子を選択する方法である。一方、SELEX法で、DNAアプタマーを分離する場合には、「ランダム配列領域とその両端にプライマー結合領域を有する多数のDNA分子によって構成されるDNAプールから標的分子である浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質に結合したDNA分子を選択する。選択したDNA分子をPCR反応によって増幅し、それを次のラウンドのDNAプールにする。」という一連のサイクルを数〜数十ラウンド繰り返して、標的分子に対して、より結合力の強いDNA分子を選択する方法である。ランダム配列領域とプライマー結合領域の塩基配列長は特に限定はしない。一般的にランダム配列領域は、20〜80塩基、プライマー結合領域は、それぞれ15〜40塩基の範囲が好ましい。標的分子への特異性を高めるためには、予め標的分子に類似する分子とRNAプール又はRNAプールとを混合し、標的分子と結合しなかったRNA分子又はDNA分子からなるプールを用いればよい。以上の方法によって最終的に得られた核酸分子を本態様の核酸アプタマーとして利用する。なお、SELEX法は、公知の方法であり、具体的な方法は、例えば、Panら(Proc. Natl. Acad. Sci. 1995, U.S.A.92: 11509-11513)に準じて行えばよい。
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬は、表1に記載の21種の遺伝子がコードするタンパク質の全てに対する核酸アプタマーを含む必要はない。すなわち、前記21種のタンパク質のうち、少なくともヒトFBXO32及びヒトB4GALT1のそれぞれに対する核酸アプタマーを含んでいればよい。前記2つのタンパク質に対する核酸アプタマーに加えて、ヒトBHLHE40に対する核酸アプタマーを含んでいれば好ましく、前記3つのタンパク質に対する核酸アプタマーに加えて、ヒトEZR及び/又はヒトNEBに対する核酸アプタマーを含んでいればより好ましい。また、ヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40及びヒトEZR、ヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40及びヒトNEB、又はヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40、ヒトEZR及びヒトNEBに加えて、ヒトGPRC5A及び/又はヒトSERPINA1に対する核酸アプタマーを含んでいれば、さらに好ましい。一層好ましくは配列番号8〜21で示す塩基配列からなる遺伝子の翻訳産物のうち少なくとも一つ、特に好ましくは21種の遺伝子全ての翻訳産物に対する核酸アプタマーを含むことである。
核酸アプタマーは、蛍光物質等の標識物質を用いて標識することもできる。標識物質の種類は、標的分子への結合能を阻害しない範囲において、上述した標識物質のいずれを使用してもよい。また、浸潤性髄膜腫判別用試薬が前述のプローブの場合の時と同様に、核酸アプタマーを固相担体上に固定した状態で提供することもできる。核酸アプタマーを固定する固相担体の素材は限定しない。例えば、前述した基板と同様の素材を使用することができる。
2−1−3.浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物を検出するポリペプチド
本明細書において「浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の翻訳産物を検出するポリペプチド」とは、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質を検出するための抗体又はそのフラグメントである。本態様の抗体又はその断片は、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質の一部をエピトープとして認識し、抗原抗体反応によってそれに特異的に結合することで、そのタンパク質を検出することができる。ここでいう「一部」とは、5〜15個、好ましくは5〜10個、より好ましくは6〜10個の連続するアミノ酸からなる一若しくは複数の領域をいう。
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬は、表1に記載の21種の遺伝子がコードするタンパク質の全てに対する抗体又はそのフラグメントを含む必要はない。すなわち、前記21種の遺伝子がコードするタンパク質うち、少なくともヒトFBXO32及びヒトB4GALT1のそれぞれに対する抗体又はそのフラグメントを含んでいればよい。前記2つのタンパク質に対する抗体又はそのフラグメントに加えて、ヒトBHLHE40に対する抗体又はそのフラグメントを含んでいれば好ましく、前記3つのタンパク質に対する抗体又はそのフラグメントに加えて、ヒトEZR及び/又はヒトNEBに対する抗体又はそのフラグメントを含んでいればより好ましい。また、ヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40及びヒトEZR、ヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40及びヒトNEB、又はヒトFBXO32、ヒトB4GALT1、ヒトBHLHE40、ヒトEZR及びヒトNEBに加えて、ヒトGPRC5A及び/又はヒトSERPINA1に対する抗体又はそのフラグメントを含んでいれば、さらに好ましい。一層好ましくは配列番号8〜21で示す塩基配列からなる遺伝子の翻訳産物のうち少なくとも一つ、特に好ましくは21種のタンパク質全ての翻訳産物に対する抗体又はそのフラグメントを含むことである。
本態様の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は組換え抗体のいずれであってもよい。より特異的な検出を可能にするためには、モノクローナル抗体又は組換え抗体が好ましい。抗体のグロブリンタイプは、特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、IgYのいずれであってもよいが、IgG及びIgMが好ましい。また、本態様の抗体の由来生物種は、特に限定はしない。哺乳動物及び鳥を含めたあらゆる動物由来とすることができる。例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ロバ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、ニワトリ、又はヒトなどが挙げられる。
本明細書において前記「組換え抗体」とは、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体及び合成抗体をいう。
「キメラ抗体」とは、ある抗体において、軽鎖及び重鎖の定常領域(C領域:Constant region)を他の抗体の軽鎖及び重鎖のC領域で置換した抗体である。例えば、マウス抗ヒトモノクローナル抗体において、その軽鎖及び重鎖のC領域を適当なヒト抗体のC領域と置換した抗体が該当する。つまり、この場合、CDRを包含する可変領域(V領域:Variable region)はマウス抗体由来であり、C領域はヒト抗体由来となる。
「ヒト化抗体」とは、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト抗体のCDRを標的抗原に対するヒト以外の哺乳動物由来の抗体中のCDRと置換したモザイク抗体である。例えば、マウス抗ヒトFBXO32抗体の各CDR領域(CDR1〜CDR3)をコードするDNA配列を、適当なヒト抗体由来の対応する各CDRをコードするDNA配列と置換した組換え抗体遺伝子を調製し、それを発現させることによって得られる抗体が該当する。
「合成抗体」とは、化学的方法又は組換えDNA法を用いることによって合成した抗体をいう。例えば、適当な長さと配列を有するリンカーペプチド等を介して、特定の抗体の一以上のVL及び一以上のVHを人工的に連結させた一量体ポリペプチド分子、又はその多量体ポリペプチドが該当する。このようなポリペプチドの具体例としては、一本鎖Fv(scFv :single chain Fragment of variable region)(Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995, Pierce Chemical Co., Rockford, IL参照)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)又はテトラボディ(tetrabody)等が挙げられる。免疫グロブリン分子において、VL及びVHは、通常別々のポリペプチド鎖(軽鎖と重鎖)上に位置する。一本鎖Fvは、これら2つのポリペプチド鎖上のV領域を十分な長さの柔軟性リンカーによって連結し、1本のポリペプチド鎖に包含した構造を有する合成抗体断片である。一本鎖Fv内において両V領域は、互いに自己集合して1つの機能的な抗原結合部位を形成することができる。一本鎖Fvは、それをコードする組換えDNAを、公知技術を用いてファージゲノムに組み込み、発現させることで得ることができる。ダイアボディは、一本鎖Fvの二量体構造を基礎とした構造を有する分子である(Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448)。トリアボディ、及びテトラボディは、ダイアボディと同様に一本鎖Fv構造を基本としたその三量体、及び四量体構造を有する。それぞれ、三価、及び四価の抗体断片であり、多重特異性抗体であってもよい。
本態様の抗体は、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質との解離定数が、10-8M以下、好ましくは10-9M以下、より好ましくは10-10M以下の高い親和性を有することが好ましい。上記解離定数は、当該分野で公知の技術を用いて測定することができる。例えば、BIAcoreシステム(GE Healthcare社)により速度評価キットソフトウェアを用いて測定してもよい。
本態様のポリクローナル抗体は、適当な動物に浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質を免疫する当該分野で公知の方法により得ることができる。また、モノクローナル抗体も当該分野の慣用技術である公知の方法により得ることができる。例えば、浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質でマウス等を免疫した後、免疫された動物から抗体産生細胞を採取する。その抗体産生細胞を骨髄腫(ミエローマ)細胞株に融合させ、それによりハイブリドーマ細胞を生成し、そして標的抗原として用いた浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質等に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定すればよい。
「そのフラグメント」とは、前記抗体の抗原結合活性を有するペプチド断片であって、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv等が挙げられる。
本態様の抗体又はそのフラグメントは、修飾されていてもよい。ここでいう「修飾」とは、抗体検出に必要な標識、又は抗原特異的結合活性化に必要な機能上の修飾を含む。標識には、例えば、前述の蛍光物質、蛍光タンパク質(例えば、PE、APC、GFP)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)、又はビオチン若しくは(ストレプト)アビジンによる標識が挙げられる。また、修飾には、標的抗原である浸潤性髄膜腫判別用マーカータンパク質に対する親和性を調整するため行われる抗体のグリコシル化等が挙げられる。具体的には、例えば、抗体のフレームワーク領域(FR:Framework region)において、グリコシル化部位を構成するアミノ酸残基に、置換を導入してグリコシル化部位を除去し、それによって、その部位のグリコシル化を喪失させる改変等がある。
本態様の抗体又はそのフラグメントは、固相担体上に固定化されていてもよい。固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。固定化は、固相担体と抗体又はそのフラグメントとを物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬は、上記各試薬を組み合わせたキットの状態であってもよい。この場合、前記ヌクレオチドやポリペプチドに加えて、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の転写産物又は翻訳産物の検出に用いる他の試薬、例えば、バッファや二次抗体、検出及び結果判別に用いる説明書を含んでいてもよい。
2−2.効果
本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬によれば、髄膜腫罹患の有無を客観的かつ正確に判定することができる。特に、従来の病理診断では判別することがほとんど不可能であったGrade Iを示しながら浸潤傾向の強い一群の髄膜腫に対しても、本態様の浸潤性髄膜腫判別用試薬を用いて被験者由来の試料を検することで容易に判別することが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、この実施例は単なる一例示に過ぎず、本発明は実施例に記載の範囲に限定されるものではない。
<実施例1>
(目的)
浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子を選抜する。
(方法と結果)
1.DNAマイクロアレイの作製
マイクロアレイ用合成DNAを用いてDNAマイクロアレイを作製した。DNAマイクロアレイの作製方法は、非特許文献12(Schena, M. et al., 1995, Science, 270, 467-470)に記載の作製方法を参照した。具体的には、超微量分注装置(マイクロダイアグノスティク社製)を用いて、同社推奨のプロトコルに従ってヒト遺伝子断片ライブラリー(マイクロダイアグノスティック社製)をスライドガラス(松波硝子工業社製、HAコートスライドガラス)にプリントして作製した。このDNAマイクロアレイを気相恒温器内にて80℃で1時間静置し、さらにUVクロスリンカー(Hoefer社製、UVC500)を用いて120mJの紫外線を照射した。DNAマイクロアレイの後処理は、特許第4190899号に記載の方法に従った。
2.標識cDNAの調製
2−1.mRNAの調製
インフォームドコンセントを得たGrade Iの髄膜腫既往歴のある34名の患者から外科手術により摘出された髄膜腫由来の組織を試料として摘出し、直ちに液体窒素にて凍結した。続いて、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて凍結組織から全RNAの抽出を行った。具体的な抽出方法は、添付のプロトコルに従った。次に、抽出した各患者由来の全RNAから、mRNAを調製した。mRNAの調製は、Poly(A)Pureキット(Ambion社製)を用いて、添付のプロトコルに従って行った。
2−2.標識cDNAの調製
調製したmRNAを鋳型として逆転写反応により検体標識cDNAを調製した。具体的には、2.0μgの前記mRNA、SuperScript II(登録商標)逆転写酵素(ライフテクノロジーズ社製)、Cyanine5 -deoxyuridinetriphosphate(Cyanine 5-dUTP)(Perkin Elmer社製)を用いて、核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)により調製した。
対照用mRNAとして、ヒト共通レファレンス(マイクロダイアグノスティック社製)を使用した。ヒト共通レファレンスは、22種のヒト由来の細胞株(A431細胞、A549細胞、AKI細胞、HBL-100細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、HL60細胞、IMR-32細胞、Jurkat細胞、K562細胞、KP4細胞、MKN7細胞、NK-92細胞、Raji細胞、RD細胞、Saos-2細胞、SK-N-MC細胞、SW-13細胞、T24細胞、U251細胞、U937細胞、及びY79細胞)のそれぞれから調製されたmRNAを等量混合したものである。ヒト共通レファレンスを鋳型とする対照標識cDNAは、色素標識デオキシヌクレオチドにCyanine3-deoxyuridinetriphosphate(Cyanine 3-dUTP)(Perkin Elmer社製)を用いた以外は、前記検体標識cDNAと同様に調製した。標識cDNAの具体的な調製方法については、各社推奨のプロトコルにそれぞれ従った。
前記検体標識cDNA及び対照標識cDNAを同一試験管内で混合して混合標識cDNAとした後、Micropure EZ(ミリポア社製)及びMicrocon YM30(登録商標)(ミリポア社製)を用いて精製した。具体的な精製方法については同社推奨のプロトコルに従った。
精製後の混合標識cDNAに対して核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)に付属のハイブリダイゼーションバッファー及び純水を用いて15μLに調整し、標識cDNA溶液とした。
3.ハイブリダイゼーション
前記標識cDNA溶液を99℃で5分間加熱して熱変性させて、標識プローブを調製した。標識プローブを「1.DNAマイクロアレイの作製」で作製したDNAマイクロアレイ上に滴下し、ハイブリダイゼーションカセット(マイクロダイアグノスティック社製)に格納した。該ハイブリダイゼーションカセットを気相恒温器(三洋電機バイオメディカ社製)に入れ、42℃で20時間静置した状態で保温した。
ハイブリダイゼーションカセットからDNAマイクロアレイを取り出し、核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)付属のハイブリダイゼーション洗浄溶液を用い、同社推奨のプロトコルに従ってDNAマイクロアレイを洗浄した。
4.浸潤性髄膜腫判別用試薬の選出
4−1.遺伝子発現レベルの測定
各遺伝子の発現レベルは、前記「3.ハイブリダイゼーション」においてDNAマイクロアレイ上に固定されたオリゴDNAと結合した標識プローブの蛍光強度に基づいて測定した。洗浄後のDNAマイクロアレイ上の蛍光をスキャナGenePix4000B(Axon Instrument社製)を用いて測定した後、スキャナに付属の解析ソフトウェアGenePixPro(Axon Instrument社製)を用いて光学的に評価し、蛍光強度の相対値を数値化した。具体的には、DNAマイクロアレイ上に固定されたオリゴDNAスポットにおける検体標識cDNA由来の蛍光強度(Cyanine 5蛍光強度)と対照標識cDNA由来の蛍光強度(Cyanine 3蛍光強度)をスポット毎に測定し、各スポットにおけるCyanine5/Cyanine3蛍光強度比(対数変換相対的発現比:log2比)を算出することで、スポット間の遺伝子発現レベルの補正(スケーリング)を行った。また、DNAマイクロアレイ上のスポット以外の場所における蛍光強度からバックグラウンドを算出し、ノイズとして各スポットの蛍光強度比から控除した。
4−2.浸潤性髄膜腫判別用試薬の選出
前記「2−1.mRNAの調製」で被験試料を提供し、病理学的臨床診断においてGrade Iと診断された髄膜腫既往歴のある34名の患者においてMRI又はCT画像から浸潤性髄膜腫と診断された5名(Me#005、Me#008、Me#010、Me#020、Me#021)と非浸潤性髄膜腫と診断された29名の間で遺伝子発現レベルの相対比を比較して、各遺伝子のlog2比に対するスチューデントt検定を行い、P値を算出した。両者の間で発現レベルの平均値差の絶対値が1.0以上、かつ、P値が0.001未満である遺伝子群を抽出した。
その結果、表1に示す21種の遺伝子が浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子として選出された。
4−3.クラスタ分析
選出された前記21種の浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の発現パターンに基づいて、解析用ソフトウェア「Expression View Pro」(マイクロダイアグノスティック社製)を用いて階層的クラスタ分析を行った。
その結果、浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子として選出された前記21種の遺伝子の発現パターンを用いた場合、図1に示すようにサンプルは2つのクラスタに分類することが明らかとなった。このうち一方のクラスタ(Aクラスタ)は、浸潤性髄膜腫と診断された5名全員を含む12名のサンプルからなり、前記21種の遺伝子の発現レベルが平均的に高い群である。他方のクラスタ(Bクラスタ)は、全て非浸潤性髄膜腫と診断された22名からなり、前記21種の遺伝子の発現レベルが比較的低い群である。
ここで、Aクラスタには、図1に示すようにMRI又はCT画像診断において非浸潤性髄膜腫と診断された7名の患者(枠で囲われていない患者)が包含される。このうち星印を付けたMe#032サンプルの患者は、その後の診断で髄膜腫に浸潤傾向が確認されている。つまり、Aクラスタは、浸潤性髄膜腫群のクラスタであり、このクラスタに分類された場合には、たとえ診断時に非浸潤性髄膜腫であっても、その後に浸潤性髄膜腫に移行する潜在的浸潤移行性を有することを示している。したがって、このクラスタに含まれる他の6名の非浸潤性髄膜腫患者(Me#004、Me#012、ME#016、Me#026、Me#030、及びMe#031)も非浸潤性髄膜腫細胞を切除しきれずに取り残した場合、将来浸潤性髄膜腫細胞に移行する可能性が極めて高いことを示唆している。
上記のように本実施例で選出された21種の浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子を用いてその発現レベルを測定し、必要に応じてクラスタ分析することによって、Grade Iと診断された髄膜腫における浸潤性髄膜腫を判別することが可能となる。
<実施例2:浸潤性髄膜腫判別方法による浸潤性髄膜腫の判別>
(目的)実施例1で得られた遺伝子セットによる浸潤性髄膜腫判別方法の検証
(方法)
インフォームドコンセントを得たGrade Iの髄膜腫既往歴のある新たな被験者15名(実施例1における遺伝子セットの抽出・特定には関わっていない被験者者)より採取された試料(髄膜腫組織)を用いたことを除けば、実施例1に記載の方法と同じ操作を行った。
実施例1で得られた34名の被験者における21種の浸潤性髄膜腫判別用マーカー遺伝子の発現プロファイルに、前記新たな被験者である15名(Me#039〜Me#049)に由来する試料から得られた前記マーカー遺伝子の発現プロファイルを1名ずつ加えて、計35名の発現プロファイルについて実施例1と同様にクラスタ分析を行い、「浸潤性」又は「非浸潤性」の判定を行った。
(結果)
結果を表2に示す。
Figure 0006496899
MRI又はCT画像診断によって「浸潤性」と診断された2つの被験者サンプル(Me#039及びMe#044)は、本発明の浸潤性髄膜腫判別方法では全て(100%)Aクラスタに分類され「浸潤性」と判定された。一方、MRI又はCT画像診断によって「非浸潤性」と診断された被験者サンプル(13検体)のうち、本発明の浸潤性髄膜腫判別方法では12検体(92.3%)が「非浸潤性」と判定された。MRI又はCT画像診断と本発明の浸潤性髄膜腫判別方法で異なる判定がなされた1検体(Me#048)はGrade Iと診断され、髄膜腫を切除した髄膜腫既往歴者ではあるが、浸潤性髄膜腫群の遺伝子発現パターンに類似していることから、癌細胞の性質自体は高い浸潤性能を有している可能性が高い。したがって、手術において癌細胞が取り残されていた場合には再発性が高いことが予測され、術後の経過をより注意深く観察する必要があることがわかる。このように、本発明の浸潤性髄膜腫判別方法によれば、高い確率で浸潤性髄膜腫と非浸潤性髄膜腫を判別し、また、従来方法では良性髄膜腫と診断され看過されていた非浸潤性髄膜腫のうち潜在的浸潤移行性を示す浸潤性髄膜腫も、容易かつ正確に判別することが可能となる。

Claims (7)

  1. 被験者由来の試料から以下の(1)〜(21)で示す21種の遺伝子の発現プロファイルを得て、該発現プロファイルに基づいて該被験者における浸潤性又は非浸潤性髄膜腫を判定するための情報を提供する方法。
    (1)Homo sapiens F-box protein 32 (FBXO32)(配列番号1)
    (2)Homo sapiens βGlcNAc β 1,4-galactosyltransferase polypeptide 1 (B4GALT1)(配列番号2)
    (3)Homo sapiens basic helix-loop-helix family member e40 (BHLHE40) (配列番号3)
    (4)Homo sapiens ezrin (EZR)(配列番号4)
    (5)Homo sapiens nebulin, transcript variant X27 (NEB)(配列番号5)
    (6)Homo sapiens G protein-coupled receptor class C group 5 member A (GPRC5A)(配列番号6)
    (7)Homo sapiens serpin peptidase inhibitor clade A member 1 (SERPINA1)(配列番号7)
    (8)Homo sapiens mucin 4 (MUC4) (配列番号8)
    (9)Homo sapiens SPARC related modular calcium binding 1 (SMOC1) (配列番号9)
    (10)Homo sapiens dual specificity phosphatase 5(DUSP5) (配列番号10)
    (11)Homo sapiens CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP) delta (CEBPD) (配列番号11)
    (12)Homo sapiens interferon stimulated exonuclease gene 20kDa (ISG20) (配列番号12)
    (13)Homo sapiens integrin α5 (ITGA5) (配列番号13)
    (14)Homo sapiens neuroepithelial cell transforming 1 (NET1) (配列番号14)
    (15)Homo sapiens AF4/FMR2 family member 2(AFF2) (配列番号15)
    (16)Homo sapiens vascular endothelial growth factor A (VEGFA) (配列番号16)
    (17)Homo sapiens FOS-like antigen 2 (FOSL2) (配列番号17)
    (18)Homo sapiens tumor protein p53 inducible nuclear protein 2 (TP53INP2) (配列番号18)
    (19)Homo sapiens scavenger receptor cysteine rich domain containing group B (4 domains) (SRCRB4D) (配列番号19)
    (20)Homo sapiens transforming growth factor β receptor 1 (TGFBR1) (配列番号20)
    (21)Homo sapiens jun proto-oncogene (JUN) (配列番号21)
  2. 遺伝子の発現プロファイルが遺伝子の発現レベルの相対値である、請求項1記載の方法。
  3. 被験者の前記遺伝子の発現プロファイルを、浸潤性髄膜腫患者及び非浸潤性髄膜腫患者における前記遺伝子の発現プロファイルと比較する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記被験者が髄膜腫既往歴者である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記試料が組織又は体液である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  6. 以下の(1)〜(21)で示す21種の遺伝子又はその断片の塩基配列を含むヌクレオチドからなる浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
    (1)Homo sapiens F-box protein 32 (FBXO32)(配列番号1)
    (2)Homo sapiens βGlcNAc β 1,4-galactosyltransferase polypeptide 1 (B4GALT1)(配列番号2)
    (3)Homo sapiens basic helix-loop-helix family member e40 (BHLHE40) (配列番号3)
    (4)Homo sapiens ezrin (EZR)(配列番号4)
    (5)Homo sapiens nebulin, transcript variant X27 (NEB)(配列番号5)
    (6)Homo sapiens G protein-coupled receptor class C group 5 member A (GPRC5A)(配列番号6)
    (7)Homo sapiens serpin peptidase inhibitor clade A member 1 (SERPINA1)(配列番号7)
    (8)Homo sapiens mucin 4 (MUC4)(配列番号8)
    (9)Homo sapiens SPARC related modular calcium binding 1 (SMOC1) (配列番号9)
    (10)Homo sapiens dual specificity phosphatase 5(DUSP5) (配列番号10)
    (11)Homo sapiens CCAAT/enhancer binding protein (C/EBP) delta (CEBPD) (配列番号11)
    (12)Homo sapiens interferon stimulated exonuclease gene 20kDa (ISG20) (配列番号12)
    (13)Homo sapiens integrin α5 (ITGA5) (配列番号13)
    (14)Homo sapiens neuroepithelial cell transforming 1 (NET1) (配列番号14)
    (15)Homo sapiens AF4/FMR2 family member 2(AFF2) (配列番号15)
    (16)Homo sapiens vascular endothelial growth factor A (VEGFA) (配列番号16)
    (17)Homo sapiens FOS-like antigen 2 (FOSL2) (配列番号17)
    (18)Homo sapiens tumor protein p53 inducible nuclear protein 2 (TP53INP2) (配列番号18)
    (19)Homo sapiens scavenger receptor cysteine rich domain containing group B (4 domains) (SRCRB4D) (配列番号19)
    (20)Homo sapiens transforming growth factor β receptor 1 (TGFBR1) (配列番号20)
    (21)Homo sapiens jun proto-oncogene (JUN) (配列番号21)
  7. ヌクレオチドを担体上に固相化した、請求項に記載の浸潤性又は非浸潤性髄膜腫の判別用試薬。
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