以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
前述のように、非水電解質二次電池の電池容量を増加させる1つの手法として、ケイ素材を主材として用いた負極を非水電解質二次電池の負極として用いることが検討されている。
このケイ素材を用いた非水電解質二次電池には、炭素材を用いた非水電解質二次電池と同等に近いサイクル特性が望まれているが、炭素材を用いた非水電解質二次電池と同等のサイクル安定性を示す負極材は提案されていなかった。また、特に酸素を含むケイ素化合物は、炭素材と比較し初回効率が低いため、その分電池容量の向上は限定的であった。
そこで、本発明者等は、非水電解質二次電池の負極に用いた際に、良好なサイクル特性および初回効率が得られる負極活物質について鋭意検討を重ね、本発明に至った。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は負極活物質粒子を含み、該負極活物質粒子はケイ素化合物(SiOx:0.5≦x≦1.6)を含有し、表面の少なくとも一部に炭素被膜を有するケイ素系活物質粒子である。そして、炭素被膜は、炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したX線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が、1.5°以上4.5°以下のものであり、かつ炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したラマンスペクトルにおいて、1330cm−1と1580cm−1に散乱ピークを有し、それらの散乱ピークの強度比I1330/I1580が、0.7<I1330/I1580<2.0を満たすものである。
本発明の負極活物質は、ケイ素化合物を含有する負極活物質粒子を有するので、電池容量が大きく、この負極活物質粒子の表面の少なくとも一部が炭素被膜で被覆されていることで、優れた導電性を有するものとなる。
また、炭素被膜を単離して測定したX線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が1.5°を下回る場合は、電解液の含浸性が悪く、サイクル特性及び初回充放電特性といった電池特性が悪化する。また、2θ=25.5°のピークの半価幅が4.5°を上回る場合は、ケイ素系活物質粒子の導電性が悪化する。また、炭素被膜を単離して測定したラマンスペクトルにおける散乱ピークの強度比I1330/I1580の値2.0以上であると、I1330に由来する乱雑な結合様式をもつ炭素成分が多いため炭素被膜の抵抗率が大きくなり、ケイ素系活物質粒子の表面の導電性が不足し、電池特性が悪化する。また、強度比I1330/I1580の値が0.7以下であると、ケイ素化合物表面に電流集中が起こりやすく、充放電時にLiの微小析出が発生し、電池特性が悪化する。更に、強度比I1330/I1580の値が0.7以下であると、I1580に由来する黒鉛等の炭素成分が多くなり、イオン電導性及び炭素被膜のケイ素化合物のLi挿入に伴う膨張への追随性が悪化し、容量維持率が悪化する。
それに対し、本発明の負極活物質は、炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したX線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が、1.5°以上4.5°以下、かつ炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したラマンスペクトルにおいて、散乱ピークの強度比I1330/I1580が、0.7<I1330/I1580<2.0であるので、二次電池に使用した場合、上記した電池特性の悪化が発生しづらく、高電池容量、良好なサイクル特性及び初回充放電特性が得られる。
<1.非水電解質二次電池用負極>
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質を用いた負極について説明する。図1は、非水電解質二次電池用負極活物質を用いた負極の概略断面図である。
[負極の構成]
図1に示すように、負極10は、負極集電体11の上に負極活物質層12を有する構成になっている。この負極活物質層12は負極集電体11の両面、又は、片面だけに設けられていても良い。さらに、本発明の負極活物質が用いられたものであれば、負極集電体11はなくてもよい。
[負極集電体]
負極集電体11は、優れた導電性材料であり、かつ、機械的な強度に長けた物で構成される。負極集電体11に用いることができる導電性材料として、例えば銅(Cu)やニッケル(Ni)があげられる。この導電性材料は、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しない材料であることが好ましい。
負極集電体11は、主元素以外に炭素(C)や硫黄(S)を含んでいることが好ましい。負極集電体の物理的強度が向上するためである。特に、充電時に膨張する活物質層を有する場合、集電体が上記の元素を含んでいれば、集電体を含む電極変形を抑制する効果がある。上記の含有元素の含有量は、特に限定されないが、100ppm以下であることが好ましい。これは、より高い変形抑制効果が得られるからである。
負極集電体11の表面は、粗化されていても、粗化されていなくても良い。表面が粗化されている負極集電体は、例えば、電解処理、エンボス処理、又は化学エッチングされた金属箔などである。表面が粗化されていない負極集電体は例えば、圧延金属箔などである。
[負極活物質層]
負極活物質層12は、本発明の負極活物質を含んでおり、電池設計上、さらに負極結着剤や負極導電助剤など、他の材料を含んでいても良い。負極活物質として、ケイ素化合物(SiOx:0.5≦x≦1.6)を含有する負極活物質粒子(ケイ素系活物質粒子)の他に炭素系活物質なども含んでいても良い。本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、この負極活物質層12を構成する材料となる。
本発明の負極活物質に含まれるケイ素系活物質粒子はリチウムイオンを吸蔵、放出可能なケイ素化合物を含有している。
上記のように本発明の負極活物質が含有する負極活物質粒子はケイ素化合物(SiOx:0.5≦x≦1.6)を含む酸化ケイ素材である。ケイ素化合物の組成としてはxが1に近い方が好ましい。これは、高いサイクル特性が得られるからである。また、本発明におけるケイ素材組成は必ずしも純度100%を意味しているわけではなく、微量の不純物元素を含んでいても良い。
また、上述のように、本発明の負極活物質に含まれるケイ素系活物質粒子は、表面の少なくとも一部が炭素被膜で被覆されている。そして、上述のように、炭素被膜は、炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したX線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が、1.5°以上4.5°以下のものであり、かつ炭素被膜をケイ素系活物質粒子から単離して測定したラマンスペクトルにおいて、1330cm−1と1580cm−1に散乱ピークを有し、それらの散乱ピークの強度比I1330/I1580が、0.7<I1330/I1580<2.0を満たすものである。
このとき、炭素被膜は、ケイ素系活物質粒子から単離した場合の嵩密度が1.0×10−2g/cm3以上1.2×10−1g/cm3以下であることが好ましい。ケイ素系活物質粒子から単離した場合の炭素被膜の嵩密度が、上記範囲であれば、電池を構成したときの電解液の含浸性と、結着性をともに優れたものとすることができる。そして、炭素被膜を単離して測定した嵩密度が1.0×10−3g/cm以上1.2×10−2g/cm3以下である場合は、充放電時の電子伝導性が適当な値となるため、Liの析出等が起こりにくいと同時に負極の導電性がより均一となりやすく、維持率及び初回効率が向上する。
またこのとき、ケイ素系活物質粒子から単離した炭素被膜の嵩密度をH(g/cm3)、ケイ素系活物質粒子の質量に対する、ケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の質量の割合をI(質量%)とした場合、H/Iが1.0×10−1g/cm3以上1.0g/cm3以下であることが好ましい。H/Iが、上記の範囲を満たすものであれば、炭素被膜の密度が適切な値となり、ケイ素系活物質粒子の表面における結着剤が適度に吸着されるものとなる。
ケイ素系活物質粒子から炭素被膜を単離する方法は、例えば以下の単離方法を使用できる。まず、テフロン(登録商標)製ビーカーに、炭素被膜を持つケイ素化合物を加え、さらにイオン交換水、エタノールを加えて、テフロン(登録商標)製撹拌棒でよく撹拌する。その後、フッ化水素酸を加えて撹拌し、硝酸を加え、適時イオン交換水を追加し、さらに硝酸を加えて3時間放置する。その後、得られた黒色溶液をろ過することで、単離した炭素被膜をろ取する。その後、単離した炭素被膜を水で洗浄し、さらにエタノールで洗浄後、200℃で10時間真空乾燥する。このようにして得られた、単離した炭素被膜を測定対象として、X線回折及びラマン分光法等の各種分析を行うことができる。そして、単離した炭素被膜に対して各種分析を行うことで、芯材のケイ素化合物等の影響を除去し、純粋な炭素被膜の特性を測定することが可能となる。
また、単離した炭素被膜の嵩密度Hを測定する方法としては、例えば以下のような測定方法を使用できる。まず、ガラス製の100mLメスシリンダー(JIS R 3505規格に則ったもの)の風袋を事前に測定し、そのメスシリンダーに単離した炭素被膜(上記の一例のように200℃で10時間乾燥し密閉したもの又は湿度2%以下の雰囲気で保存したもの)を約10mL入れ、メスシリンダーを10回程度軽くたたいて粉体を平らにならす。このときメスシリンダーの炭素粉末の充填された面より上に炭素粉末の大幅な付着(体積比で全体の5%以上)がないことを確認する。このならした炭素粉末の体積及び質量を求め、(炭素粉末の質量)/(炭素粉末の体積)を嵩密度として算出できる。
また、X線回折スペクトルは、例えば、銅を対陰極としCu−Kα線源を使用する一般的なX線回折法により測定することができる。
また、ラマンスペクトルは、顕微ラマン分析(即ち、ラマンスペクトル分析)で得ることができ、得られたラマンスペクトルにより、ダイヤモンド構造を有する炭素成分とグラファイト構造を有する炭素成分の割合を求めることができる。即ち、ダイヤモンドはラマンシフトが1330cm−1、グラファイトはラマンシフトが1580cm−1に鋭いピークを示し、その強度比により簡易的にダイヤモンド構造を有する炭素成分とグラファイト構造を有する炭素成分の割合を求めることができる。ダイヤモンドは高強度、高密度、高絶縁性であり、グラファイトは電気伝導性に優れている。そのため、上記の強度比を満たす炭素被膜は、上記のそれぞれの特徴が最適化され、結果として充放電時に伴う電極材料の膨張・収縮による電極破壊を防止でき、かつ導電ネットワークを有する負極活物質となる。
また、本発明においてケイ素系活物質粒子のメディアン径は特に限定されないが、中でもケイ素系活物質粒子のメディアン径が0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。この範囲であれば、充放電時においてリチウムイオンの吸蔵放出がされやすくなるとともに、粒子が割れにくくなるからである。ケイ素系活物質粒子のメディアン径が0.5μm以上であれば表面積が増加することがないため、電池不可逆容量を低減することができる。一方、ケイ素系活物質粒子のメディアン径が20μm以下であれば、粒子が割れにくく、新生面が出にくい。
また、本発明において、負極活物質粒子が含有するケイ素化合物のX線回折により得られる(111)結晶面に起因する回折ピークの半値幅(2θ)が1.2°以上であり、その結晶面に起因する結晶子サイズが7.5nm以下であることが好ましい。このような半値幅及び結晶子サイズを有するケイ素化合物は結晶性の低いものである。このように結晶性が低くSi結晶の存在量が少ないケイ素化合物を負極活物質粒子が含有することにより、電池特性を向上させることができる。また、このような結晶性の低いケイ素化合物が存在することで、安定的なLi化合物の生成を行うことができる。
また、負極活物質粒子が含有するケイ素化合物において、29Si−MAS−NMR スペクトルから得られるケミカルシフト値として、−20〜−74ppmで与えられるアモルファスシリコン領域のピーク面積Aと−75〜−94ppmで与えられる結晶性シリコン領域のピーク面積Bと−95〜−150ppmに与えられるシリカ領域のピーク面積Cが式(1)を満たすことが好ましい。なお、ケミカルシフトはテトラメチルシランを基準としたものである。
式(1):5.0≧A/B≧0.01、6.0≧(A+B)/C≧0.02
Liの挿入に伴う膨張が抑えられるアモルファスシリコンの割合が高いほど、電池とした時に、負極の膨張が抑えられ、サイクル特性が向上する。また、上記式(1)の範囲を満たすものであれば、アモルファスシリコンや結晶性シリコンといったシリコン成分に対してシリカ成分の割合が小さいので、ケイ素化合物内での電子伝導性の低下を抑制できるため、電池特性を向上させることができる。
29Si−MAS−NMR スペクトルは、例えば下記条件で測定を行うことができる。
29Si MAS NMR(マジック角回転核磁気共鳴)
・装置: Bruker社製700NMR分光器
・プローブ: 4mmHR−MASローター 50μL
・試料回転速度: 10kHz
・測定環境温度: 25℃
また、炭素被膜の含有率が、負極活物質粒子(すなわち、表面に炭素被膜を有するケイ素系活物質粒子)に対し0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。この炭素被膜の含有率は、より好ましくは4質量%以上20質量%以下である。
この含有率が0.1質量%以上であれば、電気伝導性を確実に向上させることが可能である。また、含有率が25質量%以下であれば、電池特性が向上し、電池容量が大きくなる。炭素系化合物を含む炭素被膜の被覆手法は特に限定されないが、糖炭化法、炭化水素ガスの熱分解法が好ましい。この場合、炭素被膜は炭素を含む化合物を熱分解することで得られたものである。これらの方法であれば、ケイ素系活物質粒子の表面における、炭素被膜の被覆率を向上させることができるからである。
また、本発明において、ケイ素系活物質粒子の表面における炭素被膜の平均厚さが、5nm以上500nm以下であることが好ましい。平均厚さが5nm以上であれば、十分な導電性が得られ、導電性の向上に伴い、電池特性は向上する。また、平均厚さが500nm以下であれば、炭素被膜の厚さがケイ素系活物質粒子の粒径に対して大きくなり過ぎず、負極活物質中のケイ素化合物割合を高く維持でき、非水電解質二次電池とした場合のエネルギー密度が向上する。なお、ケイ素系活物質粒子の表面における、炭素被膜の平均厚さは、例えば、FIB−TEM(Focused Ion Beam − Transmission Electron Microscope)による断面観察により求めることができる。
また、本発明において、ケイ素系活物質粒子の表面における炭素被膜の平均被覆率が、30%以上のものであることが好ましい。平均被覆率が30%以上であれば、炭素成分が導電性向上に特に有効に働き、電池特性が向上する。なお、平均被覆率は、SEM−EDX(Scanning Electron Microscope− Energy Dispersive X−ray Spectroscope)による局所組成解析により、表面の(炭素の検出強度)/(ケイ素の検出強度)として定義できる。
また、本発明において、炭素被膜は、TOF−SIMSによって、CyHz系化合物のフラグメントが検出され、該CyHz系化合物のフラグメントとして、6≧y≧2、2y+2≧z≧2y−2の範囲を満たすものが少なくとも一部に検出されることが好ましい。CyHz系フラグメントのような化合物フラグメントが検出される表面状態であれば、CMCやポリイミドなどの負極バインダーとの相性がよくなり、電池特性が向上する。
この場合、特に、炭素被膜で検出されるCyHz系化合物のフラグメントは、TOF−SIMSにおけるC4H9の検出強度DとC3H5の検出強度Eが2.5≧D/E≧0.3の関係を満たすものであることが好ましい。上記検出強度の比D/Eが2.5以下であれば、表面の電気抵抗が小さいため、導電性が向上し、電池特性が向上する。また、上記検出強度の比D/Eが0.3以上であれば、表面の炭素被膜を十分に形成できている状態であるため、表面全体で炭素被膜により導電性が向上し、電池特性が向上する。また、検出されるCyHz系化合物のフラグメントの種類および量は、CVD条件(ガス、温度)及びその後処理条件を変えることで調整可能である。ここでいう後処理としては、CVD処理後に、例えば950〜1200℃で、真空あるいはアルゴン雰囲気下で焼成処理を行ってもよい。
TOF−SIMSは、例えば下記条件で測定を行うことができる。
アルバック・ファイ社製 PHI TRIFT 2
・一次イオン源:Ga
・試料温度:25℃
・加速電圧:5kV
・スポットサイズ:100μm×100μm
・スパッタ:Ga、100μm×100μm、10s
・陰イオン質量スペクトル
・サンプル:圧粉ペレット
また、本発明において、ケイ素系活物質粒子の表面に形成された炭素被膜の真密度が1.2g/cm3以上1.9g/cm3以下であることが好ましい。炭素被膜の真密度が、1.9g/cm3以下であれば、ケイ素化合物の表面の炭素被膜が緻密になり過ぎないため、内部のケイ素化合物まで電解液が含浸しやすく、サイクル特性や初期充放電特性などの電池特性が向上する。また、真密度が1.2g/cm3以上であると、ケイ素系活物質粒子の比表面積が適切な値となり、負極を製造する際に結着剤を適切な量だけ吸着して結着剤の効果を向上させ、電池特性が向上する。
ここで、ケイ素系活物質粒子の表面に形成された炭素被膜の密度は、例えば、図2に示すように、ケイ素化合物と炭素被膜の総量に対する炭素被膜の炭素被膜の含有率(質量%)とケイ素化合物と炭素被膜から成る粒子の密度とのプロットを数か所作成し、線形近似で炭素被膜の含有率が100質量%となる点の外挿を行い、炭素被膜のみの密度を算出することで求めることができる。すなわち、ここで測定される炭素被膜の密度は、単離して測定されるものではない。
本発明では、ケイ素系活物質粒子の比表面積が1.0m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。ケイ素系活物質粒子の比表面積が、上記範囲であれば、電池を構成したときの電解液の含浸性と、結着性をともに優れたものとすることができる。また、比表面積はBET法により測定できる。
また、本発明において、ケイ素系活物質粒子の少なくとも一部にLiを含有することが好ましい。ケイ素系活物質粒子にLiを含有させるには、Liをケイ素化合物にドープすればよい。Liをケイ素化合物にドープする方法としては、例えば、ケイ素化合物と金属リチウムを混合して加熱する熱ドープ法や、電気化学的方法があげられる。ケイ素化合物に、Li化合物が含まれていることにより、初回効率が向上する。また、非水電解質二次電池とした場合の負極の初回効率が上昇するため、サイクル試験時の正極と負極のバランスずれが抑制され、維持率が向上する。
負極導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、鱗片状黒鉛等の黒鉛、ケチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のいずれか1種以上があげられる。これらの導電助剤は、ケイ素系活物質粒子よりもメディアン径の小さい粒子状のものであることが好ましい。
また、本発明の負極活物質は、ケイ素系活物質粒子に加え、さらに、炭素系活物質粒子を含んでもよい。これにより、本発明の負極活物質が含まれる負極活物質層12(図1参照)の電気抵抗を低下させるとともに、充電に伴う膨張応力を緩和することが可能となる。この炭素系活物質としては、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、カーボンブラック類などが挙げられる。中でも、炭素系活物質粒子は、黒鉛材料であることが好ましい。黒鉛材料は、他の炭素系活物質粒子よりも良好な初回効率、容量維持率を発揮することができる。
また、本発明において、ケイ素化合物を含有する負極活物質粒子(ケイ素系活物質粒子)と炭素系活物質粒子の合計の質量に対する、ケイ素系活物質粒子の質量の割合が5質量%以上であることが好ましい。また、ケイ素系活物質粒子の質量の割合は90質量%未満であることがより好ましい。このような割合でケイ素系活物質粒子を含む負極活物質であれば、非水電解質二次電池の負極に使用した場合に、良好な初回効率及び容量維持率が得られる。もちろん、ケイ素系活物質粒子の質量の割合が90質量%以上100%以下であっても、本発明の負極活物質を使用すれば、高電池容量、良好なサイクル特性、及び良好な初回充放電特性が得られる。
また、ケイ素系活物質粒子の平均粒径Fが、炭素系活物質粒子の平均粒径Gに対し、25≧G/F≧0.5の関係を満たすことが好ましい。すなわち、炭素系活物質粒子の平均粒径が、ケイ素系活物質粒子の平均粒径と略同等以上の大きさであることが望ましい。これは、電池の充放電の際のLi挿入・脱離に伴い膨張収縮するケイ素系活物質粒子が炭素系活物質粒子に対して同等以下の大きさである場合、合材層の破壊を防止することができるからである。このように、炭素系活物質粒子がケイ素系活物質粒子に対して大きくなると、充電時の負極体積密度、初期効率が向上し、電池エネルギー密度が向上する。
図1の負極活物質層12は、例えば塗布法で形成される。塗布法とはケイ素系活物質粒子と上記した結着剤など、また必要に応じて導電助剤、炭素系活物質粒子を混合したのち、有機溶剤や水などに分散させ塗布する方法である。
[負極の製造方法]
続いて、本発明の負極活物質を含有する負極の製造方法について説明する。
最初に、負極に含まれる負極材の製造方法を説明する。まず、SiOx(0.5≦x≦1.6)で表されるケイ素化合物を作製する。次に、ケイ素化合物の表面を炭素被膜で被覆する。ここで、ケイ素化合物にLiを挿入することにより、該ケイ素化合物の表面若しくは内部又はその両方にLi化合物を生成させて該ケイ素化合物を改質してもよい。
その後、炭素被膜が被覆されたケイ素化合物の粒子の一部を取り出し、該取り出されたケイ素化合物の粒子から、炭素被膜を単離し、X線回折スペクトル及びラマンスペクトルを測定する。そして、X線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が1.5°以上4.5°以下であり、かつ、ラマンスペクトルにおいて、1330cm−1と1580cm−1に散乱ピークを有し、それらの散乱ピークの強度比I1330/I1580が0.7<I1330/I1580<2.0を満たしたものを取り出した元の炭素被膜を被覆されたケイ素化合物の粒子を負極活物質粒子として選別する。そして、選別した炭素被膜が被覆されたケイ素化合物の粒子を用いて非水電解質二次電池用負極材を作製する。
より具体的には、負極材は、例えば、以下の手順により製造することができる。
まず、酸化珪素ガスを発生する原料(気化出発材)を不活性ガスの存在下もしくは減圧下900℃〜1600℃の温度範囲で加熱し、酸化ケイ素ガスを発生させる。この場合、原料は金属珪素粉末と二酸化珪素粉末の混合物であり、金属珪素粉末の表面酸素及び反応炉中の微量酸素の存在を考慮すると、混合モル比が、0.8<金属珪素粉末/二酸化珪素粉末<1.3の範囲であることが望ましい。粒子中のSi結晶子は仕込み範囲や気化温度の変更、また生成後の熱処理で制御される。発生したガスは吸着板に堆積される。反応炉内温度を100℃以下に下げた状態で堆積物を取出し、ボールミル、ジェットミルなどを用いて粉砕、粉末化を行う。
次に、得られた粉末材料の表面に炭素被膜を被覆する。得られた粉末材料の表面に炭素被膜を生成する手法としては、熱分解CVDが望ましい。熱分解CVDは炉内に粉末材料をセットし、炭化水素ガスを充満させ炉内温度を昇温させる。分解温度は特に限定しないが特に1200℃以下が望ましい。より望ましいのは950℃以下であり、ケイ素化合物の粒子の意図しない不均化を抑制することが可能である。
熱分解CVDによって炭素被膜を生成する場合、例えば、炉内の温度を調節することによって、ラマンスペクトルにおいて所望のピーク強度比I1330/I1580を満たす炭素被膜を粉末材料の表面に形成することができる。また、炭素被膜の量、厚み、及び単離した炭素被膜の嵩密度H(g/cm3)とケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の割合I(質量%)の比H/Iは、CVD温度、時間及びCVD時の粉末材料(ケイ素化合物粉体)の攪拌度などを調節することで制御できる。また、炭素被膜の真密度はCVD時のガス流量などを調節することによって制御できる。
続いて、炭素被膜を被覆したケイ素化合物の粒子の一部を取り出し、例えば、上記した炭素被膜の単離方法、X線回折法、及びラマン分光法を使用して、取り出されたケイ素化合物の粒子から炭素被膜を単離し、X線回折スペクトル及びラマンスペクトルを測定する。そして、X線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が1.5°以上4.5°以下であり、かつ、ラマンスペクトルにおいて、散乱ピークの強度比I1330/I1580が0.7<I1330/I1580<2.0を満たす場合に、取り出した元の炭素被膜を被覆されたケイ素化合物の粒子を負極活物質粒子として選別する。
尚、上記ケイ素化合物の粒子の選別は、必ずしも負極材の製造の都度行う必要はなく、一度、X線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅が1.5°以上4.5°以下であり、かつ、ラマンスペクトルにおいて、散乱ピークの強度比I1330/I1580が0.7<I1330/I1580<2.0を満たす炭素被膜が得られる製造条件を見出して選択すれば、その後は、その選択された条件と同じ条件で負極材を製造することができる。
続いて、負極活物質粒子と負極結着剤、導電助剤など他の材料とを混合し負極材としたのち、有機溶剤又は水などを加えてスラリーとする。
次に、負極集電体の表面に負極材のスラリーを塗布し、乾燥させて図1に示す負極活物質層12を形成する。この時、必要に応じて加熱プレスなどを行っても良い。このようにして負極を製造できる。
また、ケイ素化合物よりメディアン径の小さい炭素系材料を導電助剤として添加する場合、例えば、アセチレンブラックを選択して添加することができる。
炭化水素ガスは特に限定することはないが、CnHm組成のうち3≧nが望ましい。製造コストを低くすることができ、分解生成物の物性が良いからである。
<2.リチウムイオン二次電池>
次に、上記したリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
[ラミネートフィルム型二次電池の構成]
図3に示すラミネートフィルム型二次電池20は、主にシート状の外装部材25の内部に巻回電極体21が収納されたものである。この巻回体は正極、負極間にセパレータを有し、巻回されたものである。また正極、負極間にセパレータを有し積層体を収納した場合も存在する。どちらの電極体においても、正極に正極リード22が取り付けられ、負極に負極リード23が取り付けられている。電極体の最外周部は保護テープにより保護されている。
正負極リードは、例えば外装部材25の内部から外部に向かって一方向で導出されている。正極リード22は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成され、負極リード23は、例えば、ニッケル、銅などの導電性材料により形成される。
外装部材25は、例えば融着層、金属層、表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。そして、このラミネートフィルムは融着層が電極体21と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外周縁部同士が融着、又は接着剤などで張り合わされている。融着部は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムであり、金属部はアルミ箔などである。保護層は例えば、ナイロンなどである。
外装部材25と正負極リードとの間には、外気侵入防止のため密着フィルム24が挿入されている。この材料は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン樹脂である。
[正極]
正極は、例えば、図1の負極10と同様に、正極集電体の両面又は片面に正極活物質層を有している。
正極集電体は、例えば、アルミニウムなどの導電性材により形成されている。
正極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵放出可能な正極材のいずれか1種又は2種以上を含んでおり、設計に応じて結着剤、導電助剤、分散剤などの他の材料を含んでいても良い。この場合、結着剤、導電助剤に関する詳細は、例えば既に記述した負極結着剤、負極導電助剤と同様である。
正極材料としては、リチウム含有化合物が望ましい。このリチウム含有化合物は、例えばリチウムと遷移金属元素からなる複合酸化物、又はリチウムと遷移金属元素を有するリン酸化合物があげられる。これらの正極材の中でもニッケル、鉄、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上を有する化合物が好ましい。これらの化学式として、例えば、LixM1O2あるいはLiyM2PO4で表される。式中、M1、M2は少なくとも1種以上の遷移金属元素を示す。x、yの値は電池充放電状態によって異なる値を示すが、一般的に0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10で示される。
リチウムと遷移金属元素とを有する複合酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムと遷移金属元素とを有するリン酸化合物としては、例えば、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4)あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1−uMnuPO4(u<1))などが挙げられる。これらの正極材を用いれば、高い電池容量が得られるとともに、優れたサイクル特性も得られるからである。
[負極]
負極は、上記した図1のリチウムイオン二次電池用負極10と同様の構成を有し、例えば、集電体11の両面に負極活物質層12を有している。この負極は、正極活物質剤から得られる電気容量(電池として充電容量)に対して、負極充電容量が大きくなることが好ましい。負極上でのリチウム金属の析出を抑制することができるためである。
正極活物質層は、正極集電体の両面の一部に設けられており、負極活物質層も負極集電体の両面の一部に設けられている。この場合、例えば、負極集電体上に設けられた負極活物質層は対向する正極活物質層が存在しない領域が設けられている。これは、安定した電池設計を行うためである。
非対向領域、即ち、上記の負極活物質層と正極活物質層とが対向しない領域では、充放電の影響をほとんど受けることが無い。そのため負極活物質層の状態が形成直後のまま維持される。これによって負極活物質の組成など、充放電の有無に依存せずに再現性良く組成などを正確に調べることができる。
[セパレータ]
セパレータは正極、負極を隔離し、両極接触に伴う電流短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータは、例えば合成樹脂、あるいはセラミックからなる多孔質膜により形成されており、2種以上の多孔質膜が積層された積層構造を有しても良い。合成樹脂として例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどが挙げられる。
[電解液]
活物質層の少なくとも一部、又はセパレータには液状の電解質(電解液)が含浸されている。この電解液は、溶媒中に電解質塩が溶解されており、添加剤など他の材料を含んでいても良い。
溶媒は、例えば非水溶媒を用いることができる。非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、1,2−ジメトキシエタン、或いはテトラヒドロフラン等が挙げられる。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種以上を使用することが望ましい。これは、より良い特性が得られるからである。またこの場合、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒を組み合わせて使用するとより優位な特性を得ることができる。これは、電解質塩の解離性やイオン移動度が向上するためである。
電解液は、溶媒添加物として、不飽和炭素結合環状炭酸エステルを含んでいることが好ましい。これは、充放電時に負極表面に安定な被膜が形成され、電解液の分解反応が抑制できるからである。不飽和炭素結合環状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ビニレン又は炭酸ビニルエチレンなどが挙げられる。
また溶媒添加物として、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。これは、電池の化学的安定性が向上するからである。スルトンとしては、例えばプロパンスルトン、プロペンスルトンが挙げられる。
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。これは、電解液の化学的安定性が向上するからである。酸無水物としては、例えば、プロパンジスルホン酸無水物が挙げられる。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種類以上含むことができる。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などが挙げられる。
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.5mol/kg以上2.5mol/kg以下であることが好ましい。これは、高いイオン伝導性が得られるからである。
[ラミネートフィルム型リチウムイオン二次電池の製造方法]
最初に上記した正極材を用い正極電極を作製する。まず、正極活物質と、必要に応じて結着剤、導電助剤などを混合し正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させ正極合剤スラリーとする。続いて、ナイフロールまたはダイヘッドを有するダイコーターなどのコーティング装置で正極集電体に合剤スラリーを塗布し、熱風乾燥させて正極活物質層を得る。最後に、ロールプレス機などで正極活物質層を圧縮成型する。この時、加熱を行っても良い。また、圧縮、加熱を複数回繰り返しても良い。
次に、上記したリチウムイオン二次電池用負極10の作製と同様の作業手順を用い、負極集電体に負極活物質層を形成し負極を作製する。
正極及び負極を上記した同様の作製手順により作製する。この場合、正極及び負極集電体の両面にそれぞれの活物質層を形成する。この時、どちらの電極においても両面部の活物質塗布長がずれていても良い(図1参照)。
続いて、電解液を調整する。続いて、超音波溶接などにより、正極集電体に正極リード22を取り付けると共に、負極集電体に負極リード23を取り付ける(図3参照)。続いて、正極と負極とをセパレータを介して積層、又は巻回させて巻回電極体を作成し、その最外周部に保護テープを接着させる。次に、扁平な形状となるように巻回体を成型する。続いて、折りたたんだフィルム状の外装部材25の間に巻回電極体を挟み込んだ後、熱融着法により外装部材の絶縁部同士を接着させ、一方向のみ解放状態にして、巻回電極体を封入する。次に、正極リード22、及び負極リード23と外装部材25の間に密着フィルム24を挿入する。解放部から上記調整した電解液を所定量投入し、真空含浸を行う。含浸後、解放部を真空熱融着法により接着させる。
以上のようにして、ラミネートフィルム型二次電池20を製造することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
以下の手順により、図3に示したラミネートフィルム型の二次電池20を作製した。
最初に正極を作製した。正極活物質はリチウムコバルト複合酸化物であるLiCoO2を95質量部と、正極導電助剤(アセチレンブラック)2.5質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン:PVDF)2.5質量部とを混合し正極合剤とした。続いて正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン:NMP)に分散させてペースト状のスラリーとした。続いてダイヘッドを有するコーティング装置で正極集電体の両面にスラリーを塗布し、熱風式乾燥装置で乾燥した。この時、正極集電体は厚み15μmのものを用いた。最後にロールプレスで圧縮成型を行った。
次に、負極を作成した。負極活物質を作製するため、まず、金属ケイ素と二酸化ケイ素を混合した原料(気化出発材)を反応炉へ設置し、10Paの真空下で堆積し、十分に冷却した後、堆積物を取出しボールミルで粉砕した。粒径を調整した後、熱CVDを行うことで炭素被膜を得た。このとき、熱CVDにはロータリーキルンタイプの反応炉を用い、炭素源としてメタンガス、炉内の温度を1050℃、圧力を1.0atm、CVD時間を4時間とした。
作製した粉末はプロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートの1:1混合溶媒(電解質塩として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.3mol/kg含む)中で電気化学法を用いバルク改質を行った。得られた材料は炭酸雰囲気下で乾燥処理を行った。
続いて、上記のようにして得られた粉末の一部を取り出し、テフロン(登録商標)製ビーカーに入れ、さらにイオン交換水、エタノールを加えて、テフロン(登録商標)製撹拌棒でよく撹拌した。その後、フッ化水素酸を加えて撹拌し、硝酸を加え、適時イオン交換水を追加し、さらに硝酸を加えて3時間放置した。その後、得られた黒色溶液をろ過することで、単離した炭素被膜をろ取した。続いて、単離した炭素被膜を水で洗浄し、さらにエタノールで洗浄後、200℃で10時間真空乾燥した。このようにして単離した炭素被膜を用いて、X線回折及びラマン分光法による分析を行った。
その結果、単離した炭素被膜から測定されたX線回折スペクトルにおける2θ=25.5°のピークの半価幅が2.7°、ラマンスペクトルにおける散乱ピークの強度比I1330/I1580が1.0であった。図4に単離した炭素被膜から測定したX線回折スペクトルを示す。
続いて、上記のような炭素被膜を有するケイ素系粉末をケイ素系活物質粒子とし、このケイ素系活物質粒子と負極結着剤の前駆体(ポリアミック酸)と導電助剤1(鱗片状黒鉛)と導電助剤2(アセチレンブラック)とを80:8:10:2の乾燥質量比で混合した後、水で希釈してペースト状の負極合剤スラリーとした。この場合には、ポリアクリル酸の溶媒として水を用いた。続いて、コーティング装置で負極集電体の両面に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させた。この負極集電体としては、電解銅箔(厚さ=15μm)を用いた。最後に、真空雰囲気中で90℃×1時間乾燥した。
次に、溶媒(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC))を混合したのち、電解質塩(六フッ化リン酸リチウム:LiPF6)を溶解させて電解液を調製した。この場合には、溶媒の組成を体積比でFEC:EC:DMC=10:20:70とし、電解質塩の含有量を溶媒に対して1.2mol/kgとした。
次に、以下のようにして二次電池を組み立てた。最初に正極集電体の一端にアルミリードを超音波溶接し、負極集電体にはニッケルリードを溶接した。続いて正極、セパレータ、負極、セパレータをこの順に積層し、長手方向に巻回させ巻回電極体を得た。その捲き終わり部分をPET保護テープで固定した。セパレータは多孔性ポリプロピレンを主成分とするフィルムにより多孔性ポリエチレンを主成分とするフィルムに挟まれた積層フィルム12μmを用いた。続いて、外装部材間に電極体を挟んだのち、一辺を除く外周縁部同士を熱融着し、内部に電極体を収納した。外装部材はナイロンフィルム、アルミ箔、及びポリプロピレンフィルムが積層されたアルミラミネートフィルムを用いた。続いて、開口部から調整した電解液を注入し、真空雰囲気下で含浸した後、熱融着し封止した。
(実施例1−2〜実施例1−5、比較例1−1、比較例1−2)
SiOxで表わされるケイ素化合物において、酸素量を調整した以外は、実施例1−1と同様に、二次電池を作製した。
また、実施例1−1〜実施例1−5、比較例1−1、比較例1−2における、ケイ素系活物質粒子はいずれも以下の物性を有していた。ケイ素系活物質粒子に含まれるケイ素化合物の29Si−MAS−NMRによるピーク面積比A/B=0.6、(A+B)/C=0.32であった。また、ケイ素系活物質粒子のメディアン径D50は5.1μmであった。また、ケイ素系活物質粒子のX線回折により得られるSi(111)結晶面に起因する回折ピークの半値幅(2θ)は1.85°であり、その結晶面Si(111)に起因する結晶子サイズは4.62nmであった。
また、実施例1−1〜実施例1−5、比較例1−1、比較例1−2におけるケイ素系活物質粒子の、炭素被膜の含有率は5%、炭素被膜の平均厚さは110nm、炭素被膜の平均被覆率は90%、炭素被膜の真密度は1.6g/cm3であった。また、単離した炭素被膜から測定されたX線回折スペクトルにおける2θ=25.5°のピークの半価幅が2.7°、ラマンスペクトルにおける散乱ピークの強度比I1330/I1580が1.0であった。また、炭素被膜はTOF−SIMSによって、y=2、3、4、z=2y−3、2y−1、2y+1であるCyHz系化合物のフラグメントが検出された。また、炭素被膜で検出されるCyHz系化合物のフラグメントのC4H9の検出強度DとC3H5の検出強度Eの強度比D/E(Int(C4H9/C3H5))=0.8であった。
また、ケイ素系活物質粒子から単離した炭素被膜の嵩密度H=5.5×10−2g/cm3であった。また、嵩密度Hとケイ素系活物質粒子の質量に対する、ケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の質量の割合をIとの比H/I=4.8×10−1であった。また、ケイ素系活物質粒子の多点BET法により測定された比表面積は5.1m2/gであった。
実施例1−1〜実施例1−5、比較例1−1、比較例1−2の二次電池のサイクル特性(維持率%)、初回充放電特性(初期効率%)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
サイクル特性については、以下のようにして調べた。最初に電池安定化のため25℃の雰囲気下、2サイクル充放電を行い、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて総サイクル数が100サイクルとなるまで充放電を行い、その都度放電容量を測定した。最後に100サイクル目の放電容量を2サイクル目の放電容量で割り(%表示のため×100)、容量維持率を算出した。サイクル条件として、4.3Vに達するまで定電流密度、2.5mA/cm2で充電し、電圧に達した段階で4.3V定電圧で電流密度が0.25mA/cm2に達するまで充電した。また放電時は2.5mA/cm2の定電流密度で電圧が3.0Vに達するまで放電した。
初回充放電特性を調べる場合には、初期効率(%)=(初回放電容量/初回充電容量)×100を算出した。雰囲気温度は、サイクル特性を調べた場合と同様にした。充放電条件はサイクル特性の0.2倍で行った。すなわち、4.3Vに達するまで定電流密度、0.5mA/cm2で充電し、電圧が4.3Vに達した段階で4.3V定電圧で電流密度が0.05mA/cm2に達するまで充電し、放電時は0.5mA/cm2の定電流密度で電圧が3.0Vに達するまで放電した。
尚、下記表1から表9に示される維持率及び初回効率は、天然黒鉛(例えば、メディアン径20μm)等の炭素系活物質を含有せず、炭素被膜を有するケイ素系活物質粒子のみを負極活物質として使用した場合の維持率及び初回効率、すなわち、ケイ素系活物質粒子による維持率及び初回効率を示す。これにより、ケイ素系活物質粒子の変化又は炭素被膜の変化のみに依存した維持率及び初回効率の変化を測定することができた。
表1に示すように、SiOxで表わされるケイ素化合物において、xの値が、0.5≦x≦1.6の範囲外の場合、電池特性が悪化した。例えば、比較例1−1に示すように、酸素が十分にない場合(x=0.3)初回効率が向上するが、容量維持率が著しく悪化する。一方、比較例1−2に示すように、酸素量が多い場合(x=1.8)導電性の低下が生じ維持率、初回効率とも低下し、測定不可となった。
(実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3)
ケイ素系活物質粒子の表面の炭素被膜の状態を変化させ、炭素被膜を単離して測定したラマンスペクトルにおける、1330cm−1と1580cm−1の散乱ピークの強度比I1330/I1580、及び炭素被膜を単離して測定した測定したX線回折スペクトルにおいて、2θ=25.5°のピークの半価幅を変化させたこと除き、実施例1−3と同様に、二次電池の製造を行った。なお、散乱ピークの強度比I1330/I1580及び2θ=25.5°のピークの半価幅の調節は、熱CVDによる炭素被膜の被覆時のCVD温度及びガス圧力を変化させることによって行った。
実施例2−1〜実施例2−3、比較例2−1〜比較例2−3の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた
表2に示すように、炭素被膜を単離して測定したラマンスペクトルにおける、散乱ピークの強度比I1330/I1580が2.0未満である場合は、表面にI1330に由来する乱雑な結合様式をもつ炭素成分が少なく、電子伝導性が高いため、維持率及び初回効率が向上する。また、I1330/I1580が0.7より大きい場合は、表面にI1580に由来する黒鉛等の炭素成分が少なく、イオン電導性及び炭素被膜のケイ素化合物のLi挿入に伴う膨張への追随性が向上し、容量維持率が向上する。
また、炭素被膜を単離して測定したX線回折による、2θ=25.5°のピークの半価幅が1.5°以上4.5°以下である場合は、電解液の含浸性と粒子の導電性が適度に調節された状態となり、初回効率および容量維持率が向上する。
(実施例3−1〜実施例3−6)
ケイ素化合物内のSi成分とSiO2成分の比(Siとシリカの比)及び不均化度を変化させたことを除き、実施例1−3と同様に、二次電池の製造を行った。Si成分とSiO2成分の比は、SiO作成時の金属ケイ素及びシリカの仕込み量を変更させることによって、実施例3−1〜実施例3−6で変化させた。また、ケイ素化合物(SiOx)において、29Si−MAS−NMR スペクトルから得られるケミカルシフト値として、−20〜−74ppmで与えられるアモルファスシリコン(a−Si)領域のピーク面積Aと−75〜−94ppmで与えられる結晶性シリコン(c−Si)領域のピーク面積Bとの比率A/Bは熱処理によって不均化度を制御することによって調整した。
実施例3−1〜実施例3−6の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3からわかるように、5.0≧A/B≧0.01、6.0≧(A+B)/C≧0.02の範囲を満たす場合(実施例1−3、3−3、3−4)、維持率、初回効率ともに良い特性となった。a−Si成分が増加すると初回効率が低下するが、維持率は向上する。そのバランスが、5.0≧A/B≧0.01の範囲で保たれるためである。また、Si成分とSiO2成分の比(A+B)/Cが6以下であれば、Li挿入に伴う膨張を小さく抑制できるため、維持率が向上する。また、(A+B)/Cが0.02以上であれば、導電性が向上し、維持率、初回効率ともに向上する。5.0≧A/B≧0.01のみを満たす場合(実施例3−1、3−6)では、A/B及び(A+B)/Cの上記範囲を両方とも満たす場合に比べ、維持率が若干低下する。6.0≧(A+B)/C≧0.02のみを満たす場合(実施例3−2、3−5)では、A/B及び(A+B)/Cの上記範囲を両方とも満たす場合に比べ、維持率が若干低下する。
(実施例4−1〜実施例4−5)
ケイ素化合物の結晶性を変化させた他は、実施例1−3と同様に二次電池の製造を行った。結晶性の変化は非大気雰囲気下の熱処理で制御可能である。実施例4−1では結晶子サイズを1.542と算出しているが、解析ソフトを用いフィッティングした結果であり、実質的にピークは得られていない。よって実施例4−1のケイ素化合物は実質的に非晶質であると言える。
実施例4−1〜4−5の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
表4からわかるように、ケイ素化合物の結晶性を変化させたところ、それらの結晶性に応じて容量維持率及び初回効率が変化した。特にSi(111)面に起因する結晶子サイズ7.5nm以下の低結晶性材料で高い維持率が可能となる。特に非結晶領域では最も良い維持率が得られる。また、初期効率は結晶性が低くなるにつれて若干低下するが、問題とならない程度の初期効率が得られた。
(実施例5−1〜実施例5−5)
熱CVDの条件を変化させ、炭素被膜を単離して測定した嵩密度Hとケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の質量の割合Iとの比H/Iを変化させたことを除き、実施例1−3と同様に、二次電池の製造を行った。なお、単離した炭素被膜の嵩密度Hとケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の質量の割合Iの比H/Iは、CVD温度、時間及びCVD時の粉末材料(ケイ素化合物粉体)の攪拌度及びCVDガス流量を調節することによって行った。
実施例5−1〜5−5の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
表5に示すように、炭素被膜を単離して測定した嵩密度が1.0×10−2g/cm以上1.2×10−1g/cm3以下である場合は、充放電時の電子伝導性が適当なため、Liの析出等が起こりにくいと同時に負極の導電性がより均一となりやすい。その結果、維持率、初回効率が向上する。また、単離した炭素被膜の嵩密度Hとケイ素系活物質粒子に含まれる炭素の質量の割合Iの比H/Iが1.0×10−1g/cm3以上1.0g/cm3以下である場合は、ケイ素系活物質粒子表面での結着剤が適切に吸着するため、初回効率および容量維持率が向上する。
(実施例6−1〜実施例6−10)
ケイ素系活物質粒子の比表面積、炭素被膜の含有率、平均厚さ、平均被覆率、及び平均密度を変更したこと以外、実施例1−3と同様に二次電池の製造を行った。ケイ素系活物質粒子の比表面積、炭素被膜の量、厚さ、被覆率、及び炭素被膜の密度の変化はCVD温度、時間及びCVD時のケイ素化合物紛体の撹拌度を調節することで制御可能である。
実施例6−1〜実施例6−10の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
表6からわかるように、炭素被膜の含有率は、0.1質量%から25質量%の間、特に4質量%から20質量%の間で維持率、初回効率ともに良い特性となる。炭素被膜の含有率が0.1質量%以上であれば、十分な炭素被膜の量となり、ケイ素系活物質粒子の電子伝導性が向上する。また、炭素被膜の含有率が25質量%以下であれば、炭素被膜の量が適正値となり、イオン導電性が向上する。また、炭素被膜の厚さは5nm以上500nm以下であれば、十分な導電性を付与できるとともに、ケイ素化合物の割合を高くすることができる。
また、炭素被膜の平均被覆率が30%以上であれば、炭素成分が導電性向上に有効に働く。また、炭素被膜の真密度が、1.9g/cm3以下であれば、ケイ素化合物の表面の炭素被膜が緻密になり過ぎないため、内部のケイ素化合物まで電解液が含浸しやすく、サイクル特性や初期充放電特性などの電池特性が向上する。また、真密度が1.2g/cm3以上であると、ケイ素系活物質粒子の比表面積が適切な値となり、負極を製造する際に結着剤を適切な量だけ吸着して結着剤の効果を向上させ、電池特性が向上する。ケイ素系活物質粒子の比表面積が、上記範囲であれば、電池を構成したときの電解液の含浸性と、結着性をともに優れたものとすることができ、電池特性が向上する。
(実施例7−1〜実施例7−5、比較例7−1)
ケイ素化合物表面の炭素被膜の状態を調整したこと以外は、実施例1−3と同様に、二次電池を作製した。すなわち、実施例7−1〜実施例7−5では、TOF−SIMSによって炭素被膜から検出されるCyHzフラグメント、TOF−SIMSにおけるC4H9の検出強度DとC3H5の検出強度Eの強度比D/Eを変化させた。この場合、ケイ素化合物へのCVDの際に用いるガス種、CVD温度、及びCVD後処理温度を調整している。また、比較例7−1では炭素被膜の被覆を行わなかった。
実施例7−1〜7−5、比較例7−1の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
表7に示すように、CyHz系化合物のフラグメントが検出された場合、及び2.5≧D/E≧0.3の関係を満たす場合は、電池特性が向上した。また、比較例7−1のように、炭素被膜が無い場合は、負極での電気伝導性が悪化するため、維持率、初回効率が悪化する。また、6≧y≧2、2y+2≧z≧2y−2の範囲を満たすCyHz系化合物のフラグメントが検出された場合、電池特性が向上した。特に、yの値が小さい場合、すなわち、y=2、3、4のCyHz系化合物のフラグメントのみが検出される場合、電池特性がより向上した。
(実施例8−1〜8−5)
ケイ素化合物のメディアン径を調節した他は、実施例1−3と同様に二次電池を製造した。メディアン径の調節はケイ素化合物の製造工程における粉砕時間、分級条件を変化させることによって行った。実施例8−1〜8−5の二次電池のサイクル特性、初回充放電特性及びSiO初回効率%を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
表8からわかるように、ケイ素化合物のメディアン径を変化させたところ、それに応じて維持率および初回効率が変化した。実施例8−2〜8−4に示すように、ケイ素化合物粒子のメディアン径が0.5μm〜20μmであると容量維持率がより高くなった。特にメディアン径が0.5μm以上12μm以下の場合、維持率の向上がみられた。
(実施例9−1〜9−2)
ケイ素化合物にLiドープを行うことで、ケイ素系活物質粒子の少なくとも一部にLiを含有させたこと以外は、実施例1−3と同様に、二次電池を作成した。実施例9−1では熱ドープ法を用いて、実施例9−2では電気化学的手法を用いてLiドープを行った。
実施例9−1〜9−2の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表9に示した結果が得られた。
表9からわかるように、ケイ素系活物質粒子にLiを含有させたことによって、維持率が向上した。また、実施例9−2のように、電気化学的改質法によりLiをケイ素系活物質粒子にドープした場合、初回効率が向上する。また、非水電解質二次電池とした場合の負極の初回効率が上昇するため、サイクル試験時の正極と負極のバランスずれが抑制され、維持率が向上する。
(実施例10−1〜実施例10−6)
実施例10−1〜実施例10−6では、基本的に実施例1−3と同様に二次電池の製造を行ったが、負極活物質として、さらに、炭素系活物質粒子(人造黒鉛と天然黒鉛を1:1の質量比で混合したもの)を加え、負極中のケイ素系活物質粒子と炭素系活物質粒子の質量の比(ケイ素系活物質粒子(酸化ケイ素材)の質量の負極活物質全体の質量に占める割合)を変化させ、その割合に応じて結着剤も変更した。実施例10−1〜10−3では、結着剤として、スチレンブタジエンゴム(表10では、SBRと表記)とCMCを混合したものを使用した。実施例10−4〜10−6では、結着剤として、ポリイミド(表10では、PIと表記)を使用した。
(比較例10−1)
ケイ素系活物質粒子を含有せず、実施例10−1〜実施例10−6でも使用した炭素系活物質粒子のみを負極活物質とし、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を正極材として使用した他は、実施例1−3と同様に二次電池を製造した。
実施例10−1〜10−6、比較例10−1の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べた。また、実施例10−1〜10−6、比較例10−1の二次電池の電力容量密度(mAh/cm3)を測定し、比較例10−1の二次電池の電力容量密度を基準とした場合の、相対的な電力容量密度を各々の場合で算出した。これらの結果を表10に示す。
表10からわかるように、ケイ素系活物質粒子の割合を増やすと負極の容量は増加するが、初回効率、維持率の低下がみられる。また、表10中に示す相対電力容量密度は、上記のようにケイ素系活物質粒子の割合が0、かつNCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物)正極材と組み合わせ、電池での放電カットオフ電圧を2.5Vとした場合の電力容量密度(比較例10−1)を基準としている。ケイ素系活物質粒子の割合を減らすと、初回効率、維持率は向上するが、電力容量密度が小さくなる。特に、比較例10−1のように炭素系活物質のみを負極活物質として使用する場合、高い電力容量密度のリチウムイオン二次電池を得ることはできない。特に、ケイ素系活物質粒子の割合が5質量%以上であると、十分な電力容量密度の向上が見られる。
(実施例11−1〜実施例11−8)
負極活物質層中の炭素系活物質の平均粒径G(炭素活物質粒子のメディアン径D50)とケイ素系活物質の平均粒径F(ケイ素系活物質粒子のメディアン径D50)を変化させて、これらの比G/Fを変化させたことを除き、実施例10−2と同様に、二次電池の製造を行った。
実施例11−1〜11−8の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表11に示した結果が得られた。
表11からわかるように、負極活物質層中の炭素系活物質粒子は、ケイ素系活物質粒子に対し同等以上の大きさであること、すなわち、G/F≧0.5であることが望ましい。膨張収縮するケイ素化合物が炭素系負極材に対して同等以下の大きさである場合、合材層の破壊を防止することができる。炭素系負極材がケイ素化合物に対して大きくなると、充電時の負極体積密度、初期効率が向上し、電池エネルギー密度が向上する。また、特に、25≧G/F≧0.5の範囲を満たすことで、初回効率、及び維持率がより向上する。
(実施例12−1〜実施例12−4)
炭素系活物質粒子の種類を表12のように変化させたことを除き、実施例10−2と同様に、二次電池の製造を行った。
実施例12−1〜12−4の二次電池のサイクル特性及び初回充放電特性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
表12からわかるように、負極活物質層中の炭素系活物質粒子としては、人造黒鉛や天然黒鉛などの黒鉛系材料が含まれていることが望ましい。これは、黒鉛系炭素材の初回効率、維持率が高いため、ケイ素系活物質粒子と混合して負極を作製した際、電池特性が相対的に向上するためである。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。