JP6495262B2 - オーバーインジェクションによるタービンエンジン部品のコーティング - Google Patents

オーバーインジェクションによるタービンエンジン部品のコーティング Download PDF

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Description

本発明は、通常、ガスタービンエンジン、およびより詳細には、この種のエンジン、特に複合材料で作られるベーンまたはケーシングに属する部材の表面に保護コーティングを施すことに関する。
ガスタービンエンジンは、通常、確定した気流がエンジン自体に入ることができるようになっている開口を形成するナセルを含む。ターボジェットは、エンジンに入る空気の初期圧縮を行うのに適したファン、およびエンジンに入ることができる空気を圧縮する1つまたは複数のセクション(通常、低圧セクションおよび高圧セクション)を備える。このように圧縮された空気は、燃焼室に入ることができ、その中で燃焼される前に燃料と混合される。次いで、この燃焼から生じる高温燃焼ガスは、異なるタービン段(通常、低圧セクションおよび高圧セクション)で減速させられる。
エンジンの一定の部材は、環境からそれらを保護するために保護表面コーティングを含む。一般的には、たとえばポリマーマトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られた部材は、通常、エンジンの環境に対する耐性の要求を満たすために保護コーティングでそれらの表面が覆われる。この種の複合材料部材は、複雑な形態を有する場合があり、それらのコーティングの塗布を複雑にする、特に静翼(ファンのガイドベーン)、動翼(ファン翼)、あるいはケーシングを備える場合がある。
現在、これらの異なる部材に表面コーティングを施すための方法は、再現するのが困難である。詳細には、これらの方法は、通常、保護されるべき表面に、保護フィルム、たとえば加硫性ポリウレタンフィルムを接着することにある。しかしながら、フィルムおよび接着剤の厚さは、特に部材の複雑な形態のために制御するのが非常に困難であり、したがって、最終部材の寸法は、1つの部材からすぐ次の部材まで非常に変化する場合がある。そのうえ、それらの表面は、特にこれらの部材を形成する材料のために、表面剥離によってフィルムを接着するために予め準備されなければならず、これは、部材を局所的に劣化させ、さらにもっと方法の再現性を低下させ、方法のコストおよび持続期間を増大させる傾向を有する。
そのうえ、使用されるべき接着剤の選択は、接着剤が時には相反する2つの条件を遵守しなければならない限りにおいて困難である。第1の条件は、接着剤が、部材を損傷しないために低温で使用されることができ、かつ通常ポリマーで作られるマトリックスが熱劣化しないようにするために100度よりも小さい、全体にわたる使用温度を有さなければならないということである。第2の条件は、接着剤が、付着が適切な機械的性質を示すために可能な最高の性質、すなわち、ある程度の架橋アプローチング100%を有さなければならないということである。したがって、最終部材の最適性能を得るように、部材の保護(最も低い可能な使用温度)と接着剤の性質(高温)との間の妥協を見出すことが必要であり、これは、実際には困難であると分かっている。
最後に、これらの知られている方法は、操作者の保護、大気などの中の揮発性物の制限に関して環境規制を遵守するために、多くの高価な嵩張る工具を汚染し、それらを必要とする欠点を有する。
また、塗料の形の材料を吹き付けることによって部材にコーティングを施すことが提案されている。しかしながら、この方法は、保護されるべき部材の表面が予め調製される必要があり(表面剥離、表面気孔などを塞ぐことを目的としている生成物の塗布による表面欠陥の低減)、次いで部材表面の塗料の付着を改善するために塗布されるべきプレ層を必要とする。しかしながら、これらのステップの各々は、適合したスプレーガンの使用を必要とする。そのうえ、さまざまな処理の乾燥時間が、遵守されなければならず、部材表面は、各塗布の間にサンディングされなければならない。最後に、方法は、温度、湿度測定、および大気中の揮発性物質のレベル、ならびに汚染のリスクを制御するために、制御された条件で行われなければならない。
それに対し、文献米国特許第5057257号明細書は、請求項1の導入による工具を提案している。しかしながら、この工具では、容易に再現性のある部材の表面への保護コーティングを施すことができない。
米国特許第5057257号明細書
したがって、本発明の目的は、容易に再現性を有することができ、特にコーティングのための所与の厚さを得ることができ、部材の損傷の危険にさらすことなく、同時に作るのに適度のコストであり、より簡単で、より時間がかからず、より環境に優しい、保護されるべき部材とそのコーティングとの間の良好な密着を保証する、部材の表面に保護コーティングを施すための方法を提案することである。
これを行うために、本発明は、具体的にはマトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られる部材を射出成形することによって部材を製作するための工具を提案し、工具は、
部材の第1の面を成形するのに適した第1のインプレッションと、
部材の第2の面を成形するのに適した第2のインプレッションと、を備える。
工具は、
部材の繊維補強材を工具の中の適切な位置に保持するのに適した部材を保持するための要素であり、第1のインプレッション、第2のインプレッション、および保持要素が、工具の内部容積を一緒に画定する要素をさらに備え、
保持要素、ならびに第1のインプレッションおよび第2のインプレッションのうちの少なくとも1つが、部材が工具の中に作られる成形位置と、コーティングがこのように製作される部材の上に前記工具の中に射出されるコーティング位置との間で工具の内部容積を変更するように互いに対して移動可能であり、部材の繊維補強材が、どんな成形位置でも工具の中に保持要素によって適切な位置に保持されることを特徴とする。
上述の工具のいくつかの好ましいが非限定的な特徴は、次の通りである。すなわち、
保持要素は、どんな成形位置でも第1のインプレッションおよび第2のインプレッションと密封接触し、第1のインプレッションおよび第2のインプレッションは、互いに対して移動可能であり、保持要素は、工具の内部容積を変更するように工具の中に固定され、
第1のインプレッションは、少なくとも第1の密封面を備え、第2のインプレッションは、少なくとも第2の密封面を備え、保持要素は、第1の密封面および第2の密封面に向かって延在する少なくとも壁を備え、
第1の密封面および第2の密封面は、どんな保持要素および前記インプレッションの相対位置でも、保持要素に面する壁と連続的に接触しており、
工具は、各密封面と保持要素に面する壁との間に延在する少なくとも1つのシールをさらに備え、
第1のインプレッションおよび第2のインプレッションのうちの少なくとも1つは、工具の内部容積が最小であるように前記インプレッションが保持要素に当接する部材の成形の位置と、工具の内部容積がその最小容積よりも大きく、インプレッションの軌跡が外側エンドストップによって制限されるように前記インプレッションが保持要素から離れるように移動される部材のコーティングの位置との間で、保持要素に対して移動可能であり、
工具は、その成形位置からそのコーティング位置まで前記インプレッションを変位させるために、保持要素に対して移動可能であるインプレッションに力を加えるのに適した復帰手段をさらに備え、
第1のインプレッションおよび第2のインプレッションは、それぞれ、保持要素を少なくとも部分的に収容するのに適したハウジングを備え、復帰手段は、保持要素に対して移動可能なインプレッションのハウジングのオリフィスに収容されるばねであり、
工具は、保持要素に対して移動可能なインプレッションに力を加えるように構成される部材をさらに備え、前記力は、そのコーティング位置からその成形位置まで前記インプレッションを変位させるために、復帰手段の力に対して反対方向である。
また、本発明は、特にマトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られる部材の、上述のように工具における射出成形によって部材を製作するための方法を提案し、本方法は、次のステップを含む。すなわち、
工具の中に射出成形することによって部材を製作するステップであり、第1のインプレッション、第2のインプレッション、および保持要素が、部材の製作に適切な位置にあるステップと、
工具の内部容積を変更し、製作ステップに続いて得られる部材と工具との間に非ゼロ空間を作り出すために、第1のインプレッションおよび第2のインプレッションのうちの少なくとも1つ、および/または保持要素を変位させるステップと、
コーティングの構成材料を空間において部材の上に射出するステップとを含む。
下記に記載される方法の好ましいが非限定的な特徴は、変位ステップ中に、第1のインプレッションおよび/または第2のインプレッションが変位され、保持要素および部材が工具の中に固定されたままであるということである。
本発明の他の特徴、目的、および利点は、次の詳細な説明を読み、非限定的な実施例を介して与えられる添付の図面を参照すると、より明らかになるであろう。
部材を製作するために初期位置における工具の例示的な実施形態の概略断面図である。 部材にコーティングを施すために最終位置における、図1の工具の例示的な実施形態の概略断面図である。 本発明により部材を製作するための方法について例示的な実施形態の異なるステップを示す構成ブロック図である。
下記においては、本発明は、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料を含む、ガスタービンエンジンの部材2の射出成形による製作ステップという文脈においてより詳細に説明され、その1つの表面は、保護コーティング3で覆われる。しかしながら、これは、部材2が射出成形方法によって工具の中に射出され得るもう1つの熱成形材料を含む場合、ならびにガスタービンエンジンの中に統合されることを必ずしも目的としていない部材2の製作ステップSに、本発明がまた適用される範囲では限定されるものではない。
部材2は、特に、静翼(ガイドベーン、ノズルベーン)、動翼(ファン翼)、あるいはケーシングであってもよい。
この場合は、部材2は、複合材料で作られ、すなわち、その構成部品材料は、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える。部材2の繊維補強材は、特に炭素、ガラス、アラミド、またはセラミックの繊維を含む。それに対し、マトリックスは、通常、たとえばエポキシ、ビスマレイミド、ポリイミドで作られるポリマーマトリックスである。
部材2がケーシングである場合は、繊維補強材は、たとえば、仏国特許出願第2913053号明細書の説明により可変厚さを持つ3次元製織によって作られる繊維組織のマンドレルに巻き付けることによって形成されることができ、この場合、繊維補強材は、フランジに対応する補強片を持つ単一部材2で形成されるケーシングの完全な繊維プリフォームを形成する。
コーティング3は、射出可能なポリウレタン材料または多硫化ゴムのエラストマー材料、自己粘着性シリコーン、アジプレンなどのポリウレタンなどの熱硬化性材料、あるいはエポキシプライマー、エポキシ系塗料、ポリウレタンまたはエポキシ樹脂ワニス、または熱可塑性材料を含むことができる。
これらの部材2は、複雑な形態を有し、通常、繊維補強材が予め配置されている適合した工具の中へのポリマーマトリックスの射出によって作られる。これを行うために、部材2は、特に、次のステップS2に従って行われ得る。すなわち、
工具1の中へ射出されるべき材料の導入および加熱ステップ、たとえば、材料は、造粒物の形を取り、回転する可塑化スクリューの中に供給されることができ、そのバレルは、適合した温度まで加熱される。
圧力下での工具1の中への材料の射出、次いで、冷却時にいかなる材料の除去も回避するために工具の中への圧力を維持するステップ、
部材2の冷却し、次いで除去するステップ、である。
これらのステップは、当業者に知られており、下記でこれ以上は詳述されない。
ロバストで再現性のある方法で適合した厚さのコーティング3の層を完成部材2に施すことができるために、本発明は、前記部材2を製作するために使用される工具1の中の部材2に直接にコーティング3をオーバーインジェクションすることを提案する。この目的のために、工具1は、
部材2の第1の面を成形するのに適した第1の成形部材、すなわちインプレッション10と、
部材2の第2の面を成形するのに適した第2の成形部材、すなわちインプレッション20と、
方法を通じて部材2を適切な位置に保持するのに適した保持要素30と、を備える。
保持要素30により、部材2上のコーティングのオーバーインジェクション中に、どんなインプレッション10、20のそれぞれの位置でも工具の中に部材2を配置することができる。したがって、各インプレッション10、20と部材2との間の隙間を介して工具1の中に、部材に施されるコーティングの厚さe、e’を容易に制御することができる。このために、保持要素30は、特に、少なくとも部分的に部材2を掴持し、工具1の中の適切な位置にこれを保持するために協働するように構成される2つの部品30a、30bを備えることができる。たとえば、図に示される例示的な実施形態においては、保持要素30の部品30a、30bは、部材2を形成する繊維補強材の1つの端部と係合するのに適したジョーを備える。このように、繊維補強材は、工具1の中の適切な位置に保持されるが、その第1および第2の面は、それぞれ第1および第2のインプレッション10、20に面している。
第1のインプレッション10、第2のインプレッション20、および保持要素30は、部材2を収容することができる工具1の内部容積を一緒に画定する。
そのうえ、保持要素30は、さらに、インプレッション10、20と密封接触になるように形成され得る。用語「密封接触」とは、部材2を作るために工具1の使用中に、射出される材料が、インプレッション10、20と保持要素30との間に漏れなしに工具1の中に閉じ込められたままであることを意味すると理解されるべきである。
したがって、工具1の内部容積は、部材2と、部材2の保護コーティング3を受け入れることを目的としている工具1のインプレッション10、20との間の空間eおよび/またはe’を作り出すために変更され得る。このために、保持要素30ならびに/または第1のインプレッション10および第2のインプレッション20のうちの少なくとも1つは、部材2が工具の中に作られる成形位置と、人がこのように製作される部材2の上に前記工具1の中にコーティング3を射出するコーティング位置との間で互いに対して移動可能である。以下の文章においては、用語「可動部材」とは、保持要素30および工具1の内部容積を変更するために配置されるインプレッション10、20の間の部材(複数の部材)を意味すると理解されるべきである。
問題の保持要素30およびインプレッション10、20の相対的な変位の際に、保持要素30と2つのインプレッション10、20との間の接触は、いかなる漏れも回避し、部材2のコーティング3を最適化するために密封されたままであることが好ましい。
射出成形によって部材2を製作するための工具1として使用され得るように、工具1は、射出成形用の工具の通常の手段を備えることに気が付くであろう(図には示されていない)。特に、工具1は、工具1の中に射出されるべき材料を柔らかくし駆動するように構成される可塑化スクリューおよびバレルを備える射出チャネル、可塑化スクリューを回転駆動するように構成されるモータタイプ(たとえば、油圧)の駆動部材14、24、あるいは工具1の内部圧力を加え、制御するのに適応したプレス(たとえば、油圧)を備えることができる。
可動部材2を引き剥がし、コーティング3を受け入れることを目的としている空間(複数の空間)e、e’を作り出すことができるように、部材2と接触している工具1の成形壁にシリコーンまたは離型生成物を塗布することができる。しかしながら、これらの生成物は、汚染し、さらに、コーティング3の射出のステップS4の前に、部材2の上に生成物のマイクロ移送によって部材2上のコーティング3の付着を低減する危険を冒す場合がある。したがって、可動部材の成形壁、すなわちインプレッション10、20および/または保持要素30は、テフロンなどの自己離型性材料で作られることが好ましい。
少なくとも1つのインプレッション10、20および/または保持要素30の相対運動を実現するために、工具1は、このインプレッション10、20と保持要素30との間に延在する復帰手段12、22を備えることができる。復帰手段12、22は、インプレッション10、20および保持要素30を互いから離れるように(または、選択された復帰手段12、22のタイプに従ってそれぞれ互いに向かって)付勢するように構成される。工具1は、インプレッション10、20または保持要素30に力F1、F2を加え、またはこれらを互いに向かって(または、選択された復帰手段12、22のタイプに従ってそれぞれ互いから離れるように)付勢するのに適した部材14、24をさらに備える。
工具1の可動部材のそれぞれの変位は、部材2の各面に一定の厚さe、e’のコーティング3を得るために、並進移動であることが好ましい。たとえば、復帰手段12、22は、インプレッション10と保持要素30との間に延在し、変位の方向Xに沿ってこれらを互いから離れるように付勢するように構成される圧縮ばねであってもよいが、部材14、24は、変位のこの同じ方向Xに沿ってこれらを互いに向かって付勢するように構成される油圧または空気圧シリンダであってもよい。
ここに、保持要素30は固定されるが、少なくとも1つのインプレッション10、20は移動可能である。したがって、ばね12、22は、保持要素30から離れるようにインプレッション10、20を移動させる傾向があるが、シリンダ14、24は、保持要素30に向かってこれを移動させる傾向がある。
一実施形態によれば、第1のインプレッション10および第2のインプレッション20は、互いに対しておよび保持要素30に対して移動可能である。たとえば、保持要素30は、固定され得るが、2つのインプレッション10、20は、保持要素30に対して移動可能である。この実施形態は、工具1の残部に対して固定される保持要素30を保持し、かつ工具1に、およびインプレッション10、20、およびしたがってコーティング3の厚さe、e’に対して繊維プリフォームの正確な位置決めを保証するという利点を有する。
この実施形態においては、工具1は、この場合、インプレッション10、20毎に1つの復帰手段12、22および1つの部材14、24を備える。次に、両方のインプレッション10、20は、部材2の各面上にコーティングに求められる厚さe、e’に等しい距離に関して保持要素30に対して互いから離れるようにかつ互いに向かって移動可能である。たとえば、第1および第2のインプレッション20は、同じコースXに沿ってであるが、反対方向に変位することができる。図の線図においては、インプレッション10、20上に部材14、24によって加えられる力は、矢印F1、F2によって符号で表されている。
第1および第2のインプレッション10、20は、保持要素30に面している少なくとも1つの壁36と接触するのに適した、それぞれ少なくとも第1の密封面16および第2の密封面26を備える。インプレッション10、20と保持要素30との間の接触を密封するために、工具1は、各密封面16、26と保持要素30に面している壁36との間に延在する少なくとも1つのシール18、28を備えることができる。このように、例示的な実施形態においては、工具1は、第1の密封面16と壁36との間の3つのシール18、および第2の密封面26と壁36との間の3つのシール28を備えることができる。したがって、工具1は、どんなインプレッション10、20および保持要素30のそれぞれの位置でも密封される。
インプレッション10、20の各々は、保持要素30を少なくとも部分的に収容するのに適したハウジング15、25を備えることができる。保持要素30は、この場合、2つのインプレッション10、20の間に延在する。この実施形態においては、密封面16、26は、この場合、ハウジング15、25の面のうちの1つから成ることができる。そのうえ、保持要素30の各部品30a、30bは、インプレッション10、20のうちの1つに面して延在する。
たとえば、図1および図2は、保持要素30に対して移動可能な2つのインプレッション10、20を備える工具1を示しており、前記インプレッション10、20は、保持要素30を収容するのに適したハウジング15、25をそれぞれ備える。ハウジング15、25の各々は、分離壁15a、25aによって分離される異なる容積の2つのキャビティを形成し、連続して、第1の底部壁16、26、および第1の内部容積を有する第1のキャビティを形成する第1の側壁、分離壁15a、25a、次いで第2の底部壁、および第1の内部容積よりも広い、第2の内部容積を有する第2のキャビティを形成する第2の側壁を備える。同様に、部材2の保持要素30は、第1のキャビティの壁に当接するのに適応している第1の膨らみ、および第2のキャビティの壁に当接するのに適応している第2の膨らみを備え、第2の膨らみは、第1の膨らみよりも広い。
各キャビティの第1の底部壁16および/または第2の底部壁26は、対応するインプレッション10、20の密封面を形成することができる。
実施形態のこの形態においては、復帰手段12、22は、この場合、ハウジング15、25に配置され得る。たとえば、各ハウジング15、25は、インプレッション10、20の変位の方向Xに沿って延在し、かつ復帰手段12、22のうちの1つを収容するのに適応しているその第1のまたはその第2の側壁に形成されるオリフィスを備えることができる。
変形においては、インプレッション10、20のうちの1つのみが、この種のハウジング15、25、および該当する場合は復帰手段12、22を収容することを目的としているオリフィスを備えることができる。
部材2の各面に工具1の中に射出される材料の厚さを調整するために、可動部材(これが保持要素30および/またはインプレッション10、20のうちの1つまたは他のものであろうとなかろうと)の軌跡は、部材2と可動部材10、20との間の所望の空間e、e’に達すると、可動部材の変位を停止するように構成される少なくとも1つの外側エンドストップ40によって制限され得る。実際、可動部材の変位により、コーティング3の材料を収容することを目的としている前記部材10、20の各々に面している空間e、e’を作り出すことができる。可動部材の変位を機械的に制御することによって、コーティング3の材料を収容することを目的としている容積、およびしたがってコーティング3の厚さが、正確にかつ再現性よく制御される。
したがって、第1のおよび第2のインプレッション20が保持要素30に対して移動可能である場合は、工具1は、部材2が成形されるその初期位置とコーティング3が既に成形された部材2上に射出されるその最終位置との間のインプレッション10、20の軌跡が、コーティング3のためのそれぞれ所望の厚さe、e’に等しいように構成される、インプレッション10、20の各々に外側エンドストップ40を備えることができる。
たとえば、複合材料で作られるファン翼の場合、コーティング3の所望の厚さe、e’は、0mmと3mmとの間にある。したがって、インプレッション10、20の軌跡は、0mmと3mmとの間にある。
示された例示的な実施形態においては、工具1の各インプレッション10、20は、保持要素30に対しておよび部材2の上に移動可能であり、この部材2は、工具1の中に固定されたままである。したがって、外側エンドストップ40は、保持要素30に対して固定されることができ、各々は、対応するインプレッション10、20の突出部44を収容するのに適した凹部42を備える。たとえば、突出部44は、凹部42の底部壁42aに当接するのに適した前面44aを備えることができる。前面44aおよび底部壁42aは、可動部材の変位の方向に平行であり、この変位を可能にするために隙間を有する。突出部44は、凹部42の側壁42bに面して延在し、かつ、可動部材がコーティング3を受け入れるのに適応している空間を作り出すように互いから離れるように移動される場合に前記側壁42bに当接するのに適応している、側面44bをさらに備える。したがって、側面44bおよび側壁42bは、方向Xに対して全体的に垂直に延在する。
次いで、部材2の製作、およびこの工具1を用いた部材2上への保護コーティング3の塗布Sが、次のように行われ得る。
第1のステップS1においては、工具1が、部材2の製作のために適切な位置に置かれる。これを行うために、可動部材(インプレッション10、20のうちの少なくとも1つ、および/または保持要素30)が、部材2を形成するのに適したキャビティを画定するために位置決めされる。たとえば、図に示される実施例においては、インプレッション10、20は、部材(複数の部材)14、24を用いて圧力を方向Xに加えることによって工具1の内部容積を減少させるために互いに向かって付勢される。
変形においては、工具1は、既に適切な位置にあってもよい。この場合、インプレッション10、20または保持要素30を変位させることは必要でない。
そのうえ、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られる部材2の場合は、部材2の繊維補強材は、2つのインプレッション10、20の間に、ステップS1中に工具1の中に予め位置決めされる。このために、部材2の繊維プリフォームは、前記部品30a、30bがプリフォームを工具1の中の適切な位置に保持するように、保持要素30を形成する2つの部品30a、30bの間に特に位置決めされ得る。
第2のステップS2においては、部材2は、工具1の中へのその構成部品材料の射出成形によって従来通り製作される。
部材2の製作およびその冷却ステップS2に続いて、これは、保護コーティング3を受け入れるために型の中に留まることができる。変形においては、部材2は、関連している作業を受けるように取り除かれ、次いで工具1の中に再導入され得る。
一実施形態においては、部材2のマトリックスは、部材2と、受け入れることを目的としているコーティング3との間の密着を保証するために、100%よりも小さい、たとえば射出されるマトリックスによって60%と100%との間の重合度で射出され得る。この場合は、部材2の重合は、本方法の第4のステップS4中にコーティング3を施すと完了される。有利なことに、2つの作業における部材2の重合により、特に工具1のインプレッション10、20の表面が低粗度を有する場合に、部材2の上のコーティング3の付着を改善することができる。
次いで、第3のステップS3においては、工具1は、部材2にコーティング3を施すために適切な位置に置かれる。
可動部材は、工具1の内部容積を増加させ、コーティング3の材料を収容することを目的としている空間(複数の空間)eおよび/またはe’を作り出すために、変位される。他方では、保持要素30および部材2は、工具1の中に固定されたままであることが好ましい。このために、部材14、24によって可動部材に加えられる圧力は、復帰手段12、22が可動部材を変位させることができるように、十分に低減されるか、または除去さえされる。復帰部材14、24によって加えられる力F1、F2は、この場合、ばねによって可動部材に加えられる力よりも小さい。同時に、部材2は、保持要素30を用いて工具1の中の適切な位置に保持され、それにより、非常に正確なコーティング厚さe、e’を得ることができる。
一実施形態によれば、可動部材に接する部材14、24の力F1、F2の除去の前に、保持要素30に対してそれらを適切な位置に保持し、軸線Xに沿ってフランジが付けられる保持要素30を保持するために、外側エンドストップに対して力Fを加えることができる。実際、この力Fにより、復帰手段12、22によって発生される可動部材の変位にもかかわらず、保持要素30に対する外側エンドストップ40、およびしたがって工具1の中の部材2の相対位置、およびしたがってコーティング3のためにうまく規定された厚さを保証することができる。詳細には、力Fにより、オーバーインジェクションステップS4時に部材2に対する力を相殺することができる。
工具1は、この場合、部材2上にコーティング3の層を塗布するように適切な位置にある。インプレッション10、20と保持要素30との間の密封接触、および特にシール18、28により、工具1は、閉鎖され密封され、それにより、材料のいかなる漏れも回避し、安定な所与の圧力を加えることができる。
第4のステップS4においては、コーティング3は、従来通りの射出成形方法に続いて、工具1の中に部材2上に均一にかつ再現性よく施される。
したがって、コーティング3の材料は、好ましくは部材2のマトリックスに使用されるそれと同じ射出チャネルを介して、工具1の中に導入され、加熱される。変形においては、工具は、工具の複雑さを低減するために二重射出チャネルを備えることができる。コーティング3の材料は、この場合、密封的に閉鎖される、部材2を備える工具1の中に高圧下で射出される。射出すると、材料は、部材2の各面を均一に覆い、かつ、特に工具1のプレスによって加えられる圧力により部材2の表面凹凸の中に入り込むように、工具1の可動部材の変位によってそれぞれ部材2とインプレッション10、20との間に作り出される空間e、e’の中に射出チャネルを介して入り込む。
任意選択的に、圧力は、この場合、冷却ステップ中にコーティング3の材料の回収を回避するために、工具1の中に決定された持続時間の間は維持され得る。
該当する場合は、部材2の重合度が第1のステップにおいて100%よりも小さかったのなら、部材2の重合は完了されるS5。
最後に、コーティング3は、冷却されS6、次いで、従来の手段によって工具1から除去されるS7。
該当する場合は、そのコーティング3が行われる部材2は、次に、たとえば射出成形方法の製造公差によるいかなる過度の厚さも除去するために、機械加工、バリ取り、等の作業などの、仕上げ作業を受けることができる。
工具1は、次いで、新しい部材を作るために部材(複数の部材)14、24によって可動部材に力F1、F2を加えることによって、その初期位置S1に戻されることができる。
したがって、上述の方法Sおよび工具1により、従来の方法を用いるよりも均一な厚さおよびより良好な品質の表面外観を有する、規則的なコーティング3を得ることができる。そのうえ、これらは、環境により優しい(揮発性物質のいかなる発散もなく、使用される消耗品の数が減少する)と同時に、製造工具1を除いていかなる付加的な装置も必要としない(いかなる表面前処理または塗装も必要としないので、引き続く通常の手動操作の最小化)。

Claims (16)

  1. 射出形成によって部材(2)を製作し且つ射出形成によって前記部材(2)にコーティング(3)を施すための工具(1)であって、部材は、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られている、工具(1)にして、
    部材(2)の第1の面を成形するのに適した第1のインプレッション(10)と、
    部材(2)の第2の面を成形するのに適した第2のインプレッション(20)と、
    部材(2)の繊維補強材を工具(1)の適切な位置に保持するのに適した部材(2)を保持するための要素(30)であって、第1のインプレッション(10)、第2のインプレッション(20)、および保持要素(30)が、工具の内部容積を一緒に画定する要素(30)と、を備える工具であって、
    保持要素(30)、ならびに第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)のうちの少なくとも1つは、部材が工具(1)の中に製作される成形位置と、コーティング(3)がこのように製作される部材(2)の上に前記工具(1)の中に射出されるコーティング位置との間で工具(1)の内部容積を変更するように、互いに対して移動可能であり、部材(2)の繊維補強材が、どんな成形位置でも工具(1)の中に保持要素(30)によって適切な位置に保持されることを特徴とする、工具(1)。
  2. 第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)が、互いに対して移動可能であり、保持要素(30)が、工具(1)の内部容積を変更するように工具(1)の中に固定される、請求項1に記載の工具(1)。
  3. 保持要素(30)が、どんな成形位置でも第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)と密封接触する、請求項2に記載の工具(1)。
  4. 保持要素(30)は、少なくとも部分的に部材(2)を掴持し、工具(1)の中の適切な位置にこれを保持するために協働するように構成される2つの部品(30a、30b)を備え、保持要素(30)の部品(30a、30b)は、繊維補強材が工具(1)の中の適切な位置に保持されるが、繊維補強材の第1および第2の面がそれぞれ第1および第2のインプレッション(10、20)に面しているように、部材(2)を形成する繊維補強材の1つの端部と係合するのに適したジョーを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の工具(1)。
  5. 第1のインプレッション(10)が、少なくとも第1の密封面(16)を備え、
    第2のインプレッション(20)が、少なくとも第2の密封面(26)を備え、
    保持要素(30)が、第1の密封面(16)および第2の密封面(26)に面して延在する少なくとも壁(36)を備え、工具が、各密封面(16、26)と保持要素(30)に面する壁(36)との間に延在する少なくともシール(18、28)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具(1)。
  6. 保持要素(30)および/またはインプレッション(10、20)の成形壁は、自己離型性材料で作られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の工具(1)。
  7. 工具(10)の内部容積が最小であるように前記インプレッション(10、20)が保持要素(30)に当接する部材(2)の成形の位置と、
    工具(1)の内部容積がその最小容積よりも大きく、インプレッション(10、20)の軌跡が外側エンドストップ(40)によって制限されるように前記インプレッション(10、20)が保持要素(30)から離れるように移動される部材(2)のコーティングの位置との間で、第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)のうちの少なくとも1つが、保持要素(30)に対して移動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の工具(1)。
  8. インプレッション(10、20)の軌跡は、0mmと3mmとの間にある、請求項7に記載の工具(1)。
  9. 外側エンドストップ(40)は、保持要素(30)に対して固定され、各外側エンドストップ(40)は、対応するインプレッション(10、20)の突出部(44)を収容するのに適した凹部(42)を備える、請求項7または8に記載の工具(1)。
  10. その成形位置からそのコーティング位置まで前記インプレッション(10、20)を変位させるために、保持要素(30)に対して移動可能であるインプレッション(10、20)に力を加えるのに適した復帰手段(12、22)をさらに備える、請求項9に記載の工具(1)。
  11. 第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)がそれぞれ、保持要素(30)を少なくとも部分的に収容するのに適したハウジング(15、25)を備え、復帰手段(12、22)が、保持要素(30)に対して移動可能なインプレッション(10、20)のハウジング(15、25)のオリフィスに収容されるばねである、請求項10に記載の工具(1)。
  12. 保持要素(30)に対して移動可能なインプレッション(10、20)に力(F1、F2)を加えるように構成される部材(14、24)をさらに備え、前記力(F1、F2)が、そのコーティング位置からその成形位置まで前記インプレッション(10、20)を変位させるために、復帰手段(12、22)の力に対して反対方向である、請求項10または11に記載の工具(1)。
  13. 部材(2)は、ガスタービンエンジンの部材であり、部材(2)はケーシングであり、繊維補強材は、部材(2)の完全な繊維プリフォームを形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の工具(1)。
  14. 請求項1から13のいずれか一項に記載の工具(1)に射出成形することによって部材(2)を製作するための方法(S)であって、部材(2)は、マトリックスによって稠密化された繊維補強材を備える複合材料で作られ、
    方法(S)は、次のステップ、すなわち、
    工具(1)の保持要素(30)に部材(2)の繊維補強材を位置決めするステップ(S1)と、
    工具(1)の中に射出成形することによって部材(2)を製作するステップ(S2)であって、第1のインプレッション(10)、第2のインプレッション(20)、および保持要素(30)が、部材(2)の製作のために適切な位置にある、製作するステップ(S2)と、
    工具の内部容積を変更し、製作するステップ(S2)に続いて得られる部材(2)と工具との間に非ゼロ空間(e、e’)を作り出すために、第1のインプレッション(10)および第2のインプレッション(20)のうちの少なくとも1つ、ならびに/または保持要素(30)を変位させるステップ(S3)と、
    コーティング(3)の構成材料を空間(e、e’)において部材(2)の上に射出するステップ(S4)と、
    を含む、方法(S)。
  15. 変位ステップ(S3)において、第1のインプレッション(10)および/または第2のインプレッション(20)が変位され、保持要素(30)および部材(2)が工具(1)の中に固定されたままである、請求項14に記載の方法(S)。
  16. コーティング(3)の材料は、工具(1)の中に導入且つ加熱され、コーティング(3)の材料は、密封的に閉鎖される、部材(2)を備える工具(1)の中に高圧下で射出され、材料は、部材(2)の各面を均一に覆い、かつ、部材(2)の表面凹凸の中に入り込むように、部材(2)とインプレッション(10、20)との間に作り出される空間(e、e’)の中に射出チャネルを介して入り込む、請求項14または15に記載の方法(S)。
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