本実施形態では、操作受付装置が、車両(自動車)における自動変速機のシフトレンジの切り替え(シフトチェンジ)に用いられる場合を例として説明する。本実施形態の操作受付装置は、シフトレンジを切り替えるための操作者による操作を受け付ける装置であって、操作部の操作状態を電気信号に変換して出力する、いわゆるバイワイヤ方式の操作受付装置である。さらに、この操作受付装置は、操作部に反力を生じさせることにより操作者に対して力覚を提示する、いわゆるハプティックデバイスである。なお、ここでいう自動変速機はCVT(無段変速機)も含む。
(1)操作受付装置の基本構成
図1は、本実施形態に係る操作受付装置の概略構成を示す図である。すなわち、操作受付装置1は、図1に示すように、固定ブロック2と、可動ブロック3と、回路ブロック4とを備えている。なお、図1は、操作受付装置1の概略構成を概念的に表した模式図であって、図1にて各部の形状や寸法、位置等を限定する趣旨ではない。また、以下では、可動ブロック3の操作部31に外力が作用していない状態、つまり操作部31が中立の位置にある状態での操作部31の連結部311(後述する)の長手方向を上下方向として説明する。ただし、この方向は操作受付装置1の使用状態を限定する趣旨ではない。
固定ブロック2は、ハウジング21を有している。ハウジング21は、上面の一部が開口した箱状に形成されている。さらに固定ブロック2は、センサ部22および駆動コイル23をハウジング21内に有している。
センサ部22は、可動ブロック(操作部31)3の位置(以下、「操作位置」という)を検出する検出部5を、後述する永久磁石33と共に構成する。センサ部22は、操作位置を検出して、操作位置に応じた電気信号を位置信号として回路ブロック4へ出力する。センサ部22は、たとえばホール素子やコイル、磁気抵抗素子などの磁気センサを含み、永久磁石33からの磁束の変化を検出することにより、操作位置を検出する。なお、センサ部22は、操作位置を表す位置信号を出力する構成に限らず、操作位置の変化、つまり可動ブロック(操作部31)3の変位を表す電気信号を位置信号として出力する構成であってもよい。ここでいう操作位置は、ハウジング21に対する操作部31の位置に限らず、操作部31の操作に伴って変位(位置の変化)が生じる情報であればよい。たとえば操作部31が自転するような構成において、操作位置は操作部31の回転角などであってもよい。
駆動コイル23は、可動ブロック(操作部31)3に力(以下、「駆動力」という)を作用させる駆動部6を、永久磁石33と共に構成する。駆動コイル23は、励磁電流が流れることによって励磁され、永久磁石33に磁力を作用させて、可動ブロック(操作部31)3に駆動力を与える。本実施形態では、駆動コイル23は複数設けられており、複数の駆動コイル23のうちのいずれの駆動コイル23が励磁されるかによって、可動ブロック3に作用する駆動力が変化する。
可動ブロック3は、複数の操作状態を切り替えるように操作者によって操作される操作部31と、略球体状に形成された支持部32とを有している。可動ブロック3は、操作部31の少なくとも一部がハウジング21外に露出し、かつ支持部32の少なくとも一部がハウジング21内に収まるように、ハウジング21の開口内に配置されている。ここでは、操作部31は、ジョイスティックタイプのシフトレバー(セレクトレバー)である。操作部31は、支持部32から上方に突出する連結部311と、連結部311の先端部(上端部)に設けられ操作者の手(手の指を含む)が触れるシフトノブ312とを有している。支持部32は、たとえば合成樹脂等の非磁性材料にて形成されている。可動ブロック3は、支持部32を構成する球体の球心を中心として、回転自在となるように固定ブロック2に支持される。
本実施形態において、可動ブロック3は、支持部32を構成する球体の球心を通りかつ上下方向に直交する平面内に設定された第1の回転軸(X軸)、および第2の回転軸(Y軸)の各々を中心に回転可能である。ここで、第1の回転軸と第2の回転軸とは互いに直交する。このように可動ブロック3が二軸(第1の回転軸および第2の回転軸)周りで回転することにより、操作部31は、第1の回転軸(X軸)と第2の回転軸(X軸)との二軸周りで傾倒可能となる。以下では、操作部31が傾倒することによる生じる操作部31の変位を、上下方向に直交する平面内での操作部31の変位とみなして説明する。つまり、操作部31は、互いに直交するX軸およびY軸を含む平面(XY平面)上で移動可能である。そのため、操作部31の位置(以下、「操作位置」という)は、互いに直交するX軸およびY軸を座標軸とした直交座標系を基準座標系とし、基準座標系の座標位置(x,y)で表されることになる。
また、可動ブロック3の支持部32内には、上述した永久磁石33が設けられている。永久磁石33は、センサ部22と共に検出部5を構成する検出用磁石、および駆動コイル23と共に駆動部6を構成する駆動用磁石を別々に有していてもよいし、1つの磁石を検出用磁石および駆動用磁石で共用してもよい。
上記構成によれば、操作者が操作部31を操作する、つまり操作者が操作部31に力(以下、「操作力」という)を与えることにより、支持部32が回転して操作部31が移動する。このとき、検出部5は、可動ブロック3に設けられている永久磁石33からの磁束の変化をセンサ部22にて検出し、この磁束の変化から操作後の操作部31の位置(操作位置)を検出して、操作位置に応じた位置信号を回路ブロック4へ出力する。一方、駆動部6は、回路ブロック4からの駆動信号を受け、駆動コイル23で生じる磁力を、可動ブロック3に設けられている永久磁石33に作用させる。このとき、支持部32を回転させるような駆動力が、可動ブロック(操作部31)3に作用し、操作者に対して操作部31から反力が与えられることになる。要するに、操作者においては、操作部31を操作する際に操作部31からの力のフィードバックを受けることになり、結果的に、操作者に力覚が提示されることになる。
回路ブロック4は、マイコン(マイクロコンピュータ)41と、アンプ42と、駆動出力回路43とを有している。アンプ42は、センサ部22からの位置信号を増幅して、マイコン41へ出力する。駆動出力回路43は、マイコン41からの制御信号に基づき、駆動信号を生成して駆動コイル23へ出力する。なお、アンプ42はマイコン41に含まれていてもよい。
マイコン41は、A/D変換器411と、記憶部412と、制御部415とを含んでいる。制御部415は、信号処理部413と、駆動制御部414とを含んでいる。A/D変換器411は、アンプ42にて増幅されたアナログの位置信号をデジタル信号に変換し、信号処理部413へ出力する。
信号処理部413は、操作位置を表す位置信号に基づいて操作部31に対する操作を認識し、当該操作に応じて複数のシフトレンジの中から1つのシフトレンジを選択する。信号処理部413は、選択したシフトレンジを使用レンジとして記憶部412に記憶する。さらに、信号処理部413は、使用レンジに対応するシフトポジション信号を、車両のECU(Electronic Control Unit)等へ出力する。シフトポジション信号は、車両の変速機のシフトレンジを切り替える信号である。つまり、信号処理部413は、車両側の装置(ECU等)を介して、間接的に、変速機のシフトレンジを切り替える。具体的には、信号処理部413は、複数の操作状態に一対一に対応する複数の判定領域のうち、いずれの判定領域に操作位置が属するかを判定し、判定結果に応じてシフトポジション信号を出力する。操作状態および判定領域については、「(2.1)判定領域」の欄で詳しく説明する。また、信号処理部413は、後述する制御マップを選択する機能も有している。
駆動制御部414は、信号処理部413から入力される操作位置、および使用レンジに基づいて制御信号を生成し、駆動出力回路43へ制御信号を出力する。駆動出力回路43は、制御信号に基づく駆動信号を生成し、この駆動信号にて駆動部6を駆動する。つまり、駆動部6から操作部31に作用する駆動力の大きさおよび向きは、駆動制御部414で生成される制御信号によって決定されることになる。
具体的には、駆動制御部414は、目標位置と操作位置との差分に応じて駆動部6を制御する。ここでいう目標位置は、駆動部6が操作部31に駆動力を作用させるに当たり、操作位置の目標となる位置である。言い換えれば、駆動制御部414は、操作位置を目標位置へ誘導するように、駆動部6から操作部31に駆動力を作用させる。これにより、操作位置が目標位置へ収束するように、操作部31が駆動されることになる。ここで、駆動制御部414は、複数の判定領域の各々に設定された制御点に操作位置を引き寄せる駆動力が操作部31に作用するように、駆動部6を制御する。制御点については、「(2.2)制御点」の欄で詳しく説明する。本実施形態では、駆動制御部414は、操作位置が目標位置から遠くなるほど、操作部31に作用させる駆動力を大きくする。なお、駆動制御部414からの制御信号は、必要に応じて記憶部412へ出力されて記憶部412に記憶される。
マイコン41は、記憶部412に記録されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、制御部(信号処理部413および駆動制御部414)415としての機能を実現する。プログラムは、予め記憶部412に記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。ここでいうプログラムは、操作受付装置1に用いられるコンピュータ(ここではマイコン41)を、制御部(信号処理部413および駆動制御部414)415として機能させるためのプログラムである。
ただし、上述した構成は操作受付装置1の一例に過ぎず、操作受付装置1の構成は適宜変更が可能である。たとえば操作部31は、一軸方向あるいは二軸方向に変位可能なジョイスティックやスライダ、一軸周りで回転可能なダイヤル、または球心周りで回転可能なトラックボールなどであってもよい。
(2)操作受付装置の動作
図2は、本実施形態の操作受付装置1における、操作部31の移動経路300と、操作部31の移動経路300上に設定される操作状態301〜305とを概念的に表すイメージ図である。操作状態301〜305には、ホームポジション(以下、「H」という)と、自動変速機の各シフトレンジに対応するシフトポジションとがある。シフトレンジには、リバース(以下、「R」という)、ドライブ(以下、「D」という)、ニュートラル(以下、「N」という)、回生ブレーキ(以下、「B」という)の4つのレンジがある。そこで、図2では、ホームポジション“H”、および自動変速機のシフトポジション“N”,“R”,“D”,“B”のそれぞれに対応する操作状態を“H”,“N”,“R”,“D”,“B”で表している。なお“H”は特定のシフトレンジに対応したポジションではなく、操作部31が“H”にあるとき、自動変速機のシフトレンジは“N”,“R”,“D”,“B”のいずれかである。ここで、「シフトレンジ」は自動変速機の状態を表しており、シフトレンジを決定するための操作受付装置1の操作状態を「シフトポジション」と呼ぶ。
本実施形態の操作受付装置1は、基本的な動作として、図2に示すような移動経路300に沿って、操作状態301〜305のいずれかに操作部31を移動させるような操作者の操作を受け付けて、操作者の操作に応じた電気信号を出力する。ただし、この操作受付装置1は、そもそも操作部31の移動経路300が図2に示す形状に制限されている訳ではなく、駆動部6から操作部31に与える駆動力を制御することにより、上述のような操作を擬似的に実現する。つまり、操作者は、操作受付装置1から力覚が提示されることで、操作部31の移動経路300が制限され、かつ操作時の操作感が得られる結果、上述した移動経路300および操作状態301〜305が存在するように感じる。
ところで、本実施形態の操作受付装置1は、操作の有効性を判定するのではなく、無効な操作(異常操作)についてはそもそも認識しないようにすることで、異常操作を回避することができる。しかも、操作受付装置1は、異常操作についてはクリック感が生じないようにすることで、操作者の行った操作が異常操作であることを操作者に認識させることが可能である。この点について、以下に詳しく説明する。
(2.1)判定領域
図3は、操作部31の移動をXY平面内での移動とみなした場合の操作状態を、基準座標系を用いて模式的に表している。検出部5で検出される操作位置は、基準座標系の座標位置(x,y)として認識される。
図3に示すように、基準座標系において操作位置が移動可能な領域(以下、「可動領域」という)200は、複数(ここでは5つ)の領域201〜205に区分される。これら複数の領域201〜205の各々は、上述した複数の操作状態301〜305のいずれかに対応付けられ、操作位置を判定するための判定領域を構成する。つまり、複数の領域201〜205は、それぞれホームポジション“H”、および“N”,“R”,“D”,“B”の4つのシフトポジションのいずれかに対応する判定領域を構成する。そこで、以下では、“H”に対応する判定領域を“h”というポジションコードで表すこととする。同様に、“N”に対応する判定領域を“n”、“R”に対応する判定領域を“r”、“D”に対応する判定領域を“d”、“B”に対応する判定領域を“b”というポジションコードで表すこととする。なお、図3の例では、複数の領域201〜205は、それぞれ複数の操作状態301〜305と一対一に対応する判定領域を構成している。
図3では一例として、判定領域“h”となる第1の領域201は、基準座標系において「x<α1」かつ「y>β2」を満たす範囲に設定されている。判定領域“n”となる第2の領域202は、基準座標系において「x>α1」かつ「β2<y<β1」を満たす範囲に設定される。判定領域“r”となる第3の領域203は、基準座標系において「x>α1」かつ「y>β1」を満たす範囲に設定される。判定領域“d”となる第4の領域204は、基準座標系において「x>α1」かつ「y<β2」を満たす範囲に設定される。判定領域“b”となる第5の領域205は、基準座標系において「x<α1」かつ「y<β2」を満たす範囲に設定される。
信号処理部413は、基準座標系での操作位置が、複数の判定領域“h”,“n”,“r”,“d”,“b”のうちのいずれの判定領域に属するかを判定する。そして、信号処理部413は、判定領域の判定結果や、現在の使用レンジ等に応じて、操作部31に対する操作を認識し、使用レンジを選択して、シフトポジション信号を出力する。要するに、信号処理部413は、複数の操作状態301〜305に一対一に対応する複数の判定領域のうち、いずれの判定領域に操作位置が属するかを判定し、判定結果に応じてシフトポジション信号を出力する。ここで、信号処理部413は、最新の判定結果(現在、操作位置が属する判定領域)だけでなく、過去の判定結果も用いて操作部31に対する操作を認識するように構成されていてもよい。
(2.2)制御点
図3に示すように、複数の領域201〜205内には、それぞれ制御点101〜105が設定されている。複数の制御点101〜105は、それぞれ複数の操作状態301〜305と一対一に対応して設定されている。つまり、複数の制御点101〜105は、それぞれ複数の判定領域“h”,“n”,“r”,“d”,“b”と一対一に対応して設定される。制御点101〜105は、それぞれ対応する判定領域内における目標位置を規定する。ここでいう目標位置は、駆動部6が操作部31に駆動力を作用させるに当たり、操作位置の目標となる位置である。
すなわち、駆動制御部414は、操作位置が属する判定領域の制御点101〜105と操作位置との差分に応じて駆動部6を制御する。言い換えれば、駆動制御部414は、操作位置が位置する判定領域内の制御点101〜105へ操作位置を誘導するように、駆動部6から操作部31に駆動力を作用させる。要するに、駆動制御部414は、複数の判定領域の各々に設定された制御点101〜105に操作位置を引き寄せる駆動力が操作部31に作用するように、駆動部6を制御する。これにより、操作位置が制御点101〜105へ収束するように、操作部31が駆動されることになる。たとえば判定領域“h”となる第1の領域201内に操作位置がある場合には、この第1の領域201内に設定された制御点101に操作位置を引き寄せるように、操作部31に駆動力が作用することになる。
ここで、制御点101〜105の位置は、対応する操作状態301〜305に応じて一意に決められている。すなわち、図2に示すような操作状態301〜305が設定されている場合、複数の判定領域“h”,“n”,“r”,“d”,“b”に対応する複数の制御点101〜105は、図3に示すような位置に設定される。なお、制御点101〜105は、基準座標系の一点に限らず、ある程度の広さ(面積)を持つ範囲であってもよい。
そして、このような制御点101〜105が設定されることにより、操作位置が複数の判定領域間を移動する際に、操作状態の切り替えに伴い、操作者にクリック感を与えることができる。たとえば判定領域“h”となる第1の領域201から、判定領域“n”となる第2の領域202に操作位置が移動する場合、操作部31に作用する駆動力が、制御点101に引き寄せる駆動力から、制御点102に引き寄せる駆動力に切り替わる。そのため、第1の領域201と第2の領域202との境界において、操作部31に作用する駆動力の向きが反転し、操作位置は制御点102に収束する。その結果、操作者は、操作位置が第1の領域201と第2の領域202との境界を越えて、操作状態を“H”から“N”へ切り替える際に、クリック感を得る。
(2.3)制御マップ
本実施形態においては、複数の操作状態301〜305のうちのいずれの操作状態を有効にするかを規定した制御マップが、複数、記憶部412に記憶されている。複数の制御マップの各々においては、有効と規定された操作状態に対応する判定領域、および制御点が設定されている。本実施形態では、可動領域200が区分された複数の領域201〜205は、必ずいずれかの操作状態に対応付けられる。言い換えれば、複数の領域201〜205の各々にはいずれかの操作状態が割り当てられるため、各判定領域の範囲(形状および大きさ)は、制御マップによって異なる場合がある。これに対して、各操作状態に対応する制御点の位置は一意に定められているため、各判定領域の範囲が変わっても、各判定領域に対して設定される制御点の位置は不変である。すなわち、複数の制御マップは、設定される判定領域の範囲が互いに異なる一対の制御マップを含み、かつ設定される制御点の位置については不変である。つまり、異なる制御マップにおける同一のポジションコードの判定領域間では、制御点の位置が同じになる。そのため、操作位置の可動領域200を区分した複数の領域201〜205のうち、制御マップにおいて有効でない操作状態に対応する制御点を含む領域については、同制御マップにおいて有効な操作状態に対応する判定領域として利用可能である。このような制御マップが、本実施形態では複数用意され、記憶部412に記憶されている。
そして、制御部(信号処理部413および駆動制御部414)415は、複数の制御マップのうちのいずれか1つの制御マップを適用し、この制御マップに従って動作する。つまり、制御部415の信号処理部413は、制御マップで有効と規定された操作状態に対応する判定領域に従って、検出部5で検出された操作位置が属する判定領域を判定する。そして、信号処理部413は、操作位置が属する判定領域に対応する有効な操作状態に基づいて、シフトポジション信号を出力する。制御部415の駆動制御部414は、制御マップで有効と規定された操作状態に対応する制御点に従って、駆動部6を制御して操作部31に駆動力を与える。
本実施形態においては、複数の制御マップはそれぞれ、複数の操作状態301〜305のうち、相互の切り替えが制限された特定の組み合わせの操作状態については、同時に有効とならないように設定されている。たとえば、“H”に対応する操作状態301から、“R”に対応する操作状態303への切り替えが制限されていると仮定すると、これら操作状態301,303の組み合わせが特定の組み合わせとなる。そして、複数の制御マップはそれぞれ、このような特定の組み合わせの操作状態(ここでは操作状態301,303)が同時に有効とならないよう設定されている。
これにより、たとえば“H”,“N”,“B”にそれぞれ対応する判定領域“h”,“n”,“b”のみが設定された制御マップを用いれば、判定領域“h”からの操作位置の移動先を、判定領域“n”,“b”のみに限定することが可能である。その結果、判定領域“h”から、判定領域“r”,“d”への移動は制限され、“H”に対応する操作状態301と、“R”,“D”に対応する操作状態303,304との相互の切り替えが制限される。同様に、“n”からの移動先を“h”,“r”,“d”のみに限定したり、“r”からの移動先を“n”のみに限定したり、“d”からの移動先を“n”のみに限定したり、“b”からの移動先を“h”のみに限定したりすることが可能である。
ところで、図3は、制御点101〜105の位置関係を示すための概念図であって、図3のように全ての操作状態301〜305が有効となる制御マップは存在しない。そのため、本実施形態で用いる制御マップにおいては、複数の操作状態301〜305のうちのいずれかの操作状態に対応する判定領域および制御点は、存在しない(設定されない)ことになる。
たとえば、図4Aに示す制御マップ100Aでは、“H”と“N”との2つの操作状態301,302のみが有効である。そのため、制御マップ100Aでは、操作状態301,302に対応して、2つの判定領域“h”,“n”、および2つの制御点101,102が設定されている。なお、図4Aの例では、第1,3〜5の領域201,203〜205が判定領域“h”を構成し、第2の領域202が判定領域“n”を構成している。つまり、制御マップ100Aでは、第1〜5の領域201〜205のうち、有効でない操作状態“R”,“D”,“B”に対応する制御点103〜105を含む第3〜5の領域203〜205は、有効な操作状態“H”に対応する判定領域として利用されている。
一方、図4Bに示す制御マップ100Bでは、“H”と“N”,“R”,“D”との4つの操作状態301〜304のみが有効である。そのため、制御マップ100Bでは、操作状態301〜304に対応して、4つの判定領域“h”,“n”,“r”,“d”、および4つの制御点101〜104が設定されている。なお、図4Bの例では、第1,5の領域201,205が判定領域“h”を構成し、第2の領域202が判定領域“n”、第3の領域203が判定領域“r”、第4の領域204が判定領域“d”をそれぞれ構成している。つまり、制御マップ100Bでは、第1〜5の領域201〜205のうち、有効でない操作状態“B”に対応する制御点105を含む第5の領域205は、有効な操作状態“H”に対応する判定領域として利用されている。
また、図4Cに示す制御マップ100Cでは、“N”,“D”の2つの操作状態302,304のみが有効である。そのため、制御マップ100Cでは、操作状態302,304に対応して、2つの判定領域“n”,“d”、および2つの制御点102,104が設定されている。なお、図4Cの例では、第1,4,5の領域201,204,205が判定領域“d”を構成し、第2,3の領域202,203が判定領域“n”を構成している。つまり、制御マップ100Cでは、第1〜5の領域201〜205のうち、有効でない操作状態“H”,“B”に対応する制御点101,105を含む第1,5の領域201,205は、有効な操作状態“D”に対応する判定領域として利用されている。同様に、制御マップ100Cにおいて、有効でない操作状態“R”に対応する制御点103を含む第3の領域203は、有効な操作状態“N”に対応する判定領域として利用されている。
(2.4)制御マップの切り替え
本実施形態の操作受付装置1は、制御部(信号処理部413および駆動制御部414)415で適用する制御マップを、記憶部412に記憶された複数の制御マップの中で、所定の切替条件に従って切り替えるように構成されている。つまり、駆動制御部414は、所定の切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に制御マップを選択し、選択した制御マップにおいて有効と規定された操作状態のみを用いて動作するように構成されている。また、信号処理部413は、切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に制御マップを選択し、選択した制御マップにおいて有効と規定された操作状態のみを用いて動作するように構成されている。切替条件は、操作受付装置1の用途等に応じて適宜設定可能であり、マイコン41を動作させるためのアルゴリズム(プログラム)に組み込まれて記憶部412に記憶されている。
本実施形態においては、制御マップを切り替えるための切替条件は、シフトポジション信号(使用レンジ)、および操作位置を用いて規定されている。なお、シフトポジション信号は使用レンジと一対一に対応して定まるので、切替条件が使用レンジ、および操作位置を用いて規定されることは、切替条件がシフトポジション信号、および操作位置を用いて規定されることと同義である。
すなわち、操作受付装置1は、シフトポジション信号(使用レンジ)、および操作位置を所定の切替条件に当て嵌めて定まる制御マップを、制御部415に適用するように構成されている。本実施形態では、制御部415で適用される制御マップの切り替えは、信号処理部413にて行われることとする。ただし、制御マップの切り替えは、駆動制御部414にて行われてもよし、または制御部415以外で行われてもよい。
たとえば、図4Aに示す制御マップ100Aを適用している状態において、使用レンジが“N”である場合に、操作位置が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、信号処理部413は、制御マップを、図4Bに示す制御マップ100Bに切り替える。また、制御マップ100Bを適用している状態において、使用レンジが“N”である場合に、操作位置が判定領域“n”から判定領域“d”に移動すると、信号処理部413は、制御マップを、図4Cに示す制御マップ100Cに切り替える。
信号処理部413は、複数の制御マップのうちいずれの制御マップを適用中であるかを把握している。そこで、信号処理部413は、現在適用中の制御マップからいずれの制御マップに切り替えるかを、使用レンジ、および操作位置に基づいて決定している。ここで、信号処理部413は、現在適用中の制御マップと現在の操作位置とから、現在の操作位置がいずれの操作状態に対応する判定領域に属するかを判定可能である。以上のことから、信号処理部413は、使用レンジ、および操作位置に加えて、現在の操作位置が属する判定領域に対応する操作状態を用いれば、適用する制御マップを、現在適用中の制御マップによらずに決定することができる。
(2.5)復帰機能
本実施形態の操作受付装置1は、操作者が操作部31から手を離すと、操作部31を自動的に“H”に移動(復帰)させる復帰機能を有している。厳密には、復帰機能により、操作位置が“H”に対応する制御点101に移動(復帰)するように操作部31が移動する。
たとえば、操作状態が“D”または“R”にある状態で、操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“D”または“R”から“N”を経由して“H”に自動的に移動する。また、操作状態が“N”または“B”にある状態で、操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“N”または“R”から“H”に自動的に移動する。
具体的には、制御部415が、“H”の操作状態301のみが有効な制御マップを適用することにより、操作部31を“H”に自動的に移動させることが可能である。すなわち、この制御マップが適用されると、“H”に対応する判定領域“h”および制御点101のみが設定されるので、操作位置にかかわらず、制御点101に操作位置を引き寄せるような駆動力が操作部31に作用する。同様に、制御部415が、“N”の操作状態302のみが有効な制御マップを適用することにより、操作部31を“N”に自動的に移動させることが可能である。すなわち、この制御マップが適用されると、“N”に対応する判定領域“n”および制御点102のみが設定されるので、操作位置にかかわらず、制御点102に操作位置を引き寄せるような駆動力が操作部31に作用する。
なお、復帰機能を実現するための構成は、上述したように“H”または“N”のみが有効な制御マップを適用する構成に限らず、たとえば不要な制御点を制御マップから一時的に消去する構成であってもよい。たとえば、図4Aに示すように“H”と“N”との2つの操作状態301,302が有効な制御マップ100Aにおいて、“N”に対応する制御点102が消去されると、制御点101のみが残る。これにより、制御点101に操作位置を引き寄せるような駆動力を、操作部31に作用させることができる。
(2.6)具体例
以下、操作者が操作部31を操作しいずれかのシフトポジション(“R”,“D”,“N”,“B”)に移動させて、シフトレンジを切り替える場合の操作受付装置1の動作について説明する。なお、操作者が操作部31から手を離した後で操作部31を自動的に“H”に移動(復帰)させる復帰機能については、上記「(2.5)復帰機能」の欄で説明した通りであるから、ここでは詳しい説明は省略する。
(2.6.1)“N”から“D”への切り替え
ここではまず、自動変速機のシフトレンジを“N”から“D”に切り替える場合の操作について、図4A〜図4Cを参照して説明する。シフトレンジを“N”から“D”に切り替える場合、操作者は、操作状態が“H”から、“N”を経由して、“D”に移動するように、操作部31を操作する。このときの操作受付装置1の動作について詳しく説明する。
たとえば操作受付装置1の起動時点(車両の始動時点)など、初期状態においては、操作位置310は、“H”に対応する判定領域“h”の制御点101にあり、使用レンジとしては“N”が選択されている。このとき、制御部415は、図4Aに示す制御マップ100Aを適用している。
制御マップ100Aにおいては、“H”と“N”との2つの操作状態301,302のみが有効である。そのため、制御マップ100Aでは、操作状態301,302に対応して、2つの判定領域“h”,“n”、および2つの制御点101,102が設定されている。要するに、制御マップ100Aでは、“R”、“D”、“B”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“H”から“R”、“D”、“B”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“R”、“D”、“B”に対応する制御点103,104,105も存在しないので、操作者が、無理に“H”から“R”、“D”、“B”のいずれかの操作状態に操作部31を直接移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“N”に対応する判定領域“n”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“h”を構成する第1,3〜5の領域201,203〜205のいずれかから、判定領域“n”を構成する第2の領域202への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“n”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、目標位置が制御点101から制御点102に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点102に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“h”と判定領域“n”との境界を越えて、操作状態が“H”から“N”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
また、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図4Bに示す制御マップ100Bに切り替わる。
制御マップ100Bにおいては、“H”と“N”,“R”,“D”との4つの操作状態301〜304のみが有効である。そのため、制御マップ100Bでは、操作状態301〜304に対応して、4つの判定領域“h”,“n”,“r”,“d”、および4つの制御点101〜104が設定されている。この状態では、判定領域“n”にある操作位置310の移動先は、判定領域“h”,“r”,“d”のみに限定され、判定領域“b”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Bでは、“B”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“N”から“B”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“B”に対応する制御点105も存在しないので、操作者が、無理に“N”から“B”の操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“D”に対応する判定領域“d”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“n”を構成する第2の領域202から、判定領域“d”を構成する第4の領域204への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“d”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“d”に移動すると、目標位置が制御点102から制御点104に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点104に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“n”と判定領域“d”との境界を越えて、操作状態が“N”から“D”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
そして、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“d”に移動すると、信号処理部413は、使用レンジを“N”から“D”に切り替える。これにより、信号処理部413は、シフトポジション信号を“N”から“D”に切り替えて、自動変速機のシフトレンジを“N”から“D”に切り替える。さらに、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“d”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図4Cに示す制御マップ100Cに切り替わる。
制御マップ100Cにおいては、“N”,“D”の2つの操作状態302,304のみが有効である。そのため、制御マップ100Cでは、操作状態302,304に対応して、2つの判定領域“n”,“d”、および2つの制御点102,104が設定されている。この状態では、判定領域“d”にある操作位置310の移動先は、判定領域“n”のみに限定され、判定領域“h”,“r”,“b”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Cでは、“H”,“R”,“B”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“D”から“H”,“R”,“B”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“H”,“R”,“B”に対応する制御点101,103,105も存在しないので、操作者が、無理に“N”から“H”,“R”,“B”のいずれかの操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“D”から“N”を経由して“H”に自動的に移動する。操作部31が“H”に復帰した状態でも、使用レンジは“D”のままであるから、シフトポジション信号は“D”を維持し、自動変速機のシフトレンジは“D”を維持する。
また、復帰機能により、操作位置310が判定領域“d”から判定領域“n”を経由して判定領域“h”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップは、図5Aに示す制御マップ100Dに切り替わる。なお、復帰機能により、操作位置310が判定領域“h”に復帰する際、制御部415にて適用される制御マップは、制御マップ100Bを介して、制御マップ100Dに切り替わってもよい。
以上説明したように、自動変速機のシフトレンジを“N”から“D”に切り替える操作において、操作位置310は、判定領域を“h”,“n”,“d”,“n”,“h”の順に移動することになる。このときの判定領域と使用レンジとの関係は表1の関係になる。
(2.6.2)“D”から“B”への切り替え
次に、自動変速機のシフトレンジを“D”から“B”に切り替える場合の操作について、図5Aおよび図5Bを参照して説明する。シフトレンジを“D”から“B”に切り替える場合、操作者は、操作状態が“H”から“B”に移動するように、操作部31を操作する。このときの操作受付装置1の動作について詳しく説明する。
「(2.6.1)“N”から“D”への切り替え」の欄で説明した操作後においては、操作位置310は、“H”に対応する判定領域“h”の制御点101にあり、使用レンジとしては“D”が選択されている。このとき、制御部415は、図5Aに示す制御マップ100Dを適用している。
制御マップ100Dにおいては、“H”と“N”,“B”との3つの操作状態301,302,305のみが有効である。そのため、制御マップ100Dでは、操作状態301,302,305に対応して、3つの判定領域“h”,“n”,“b”、および3つの制御点101,102,105が設定されている。この状態では、判定領域“h”にある操作位置310の移動先は、判定領域“n”,“b”のみに限定され、判定領域“r”,“d”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Dでは、“R”,“D”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“H”から“R”,“D”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“R”,“D”に対応する制御点103,104も存在しないので、操作者が、無理に“H”から“R”,“D”の操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“B”に対応する判定領域“b”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“h”を構成する第1,3,4の領域201,203,204のいずれかから、判定領域“b”を構成する第5の領域205への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“b”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“b”に移動すると、目標位置が制御点101から制御点105に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点105に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“h”と判定領域“b”との境界を越えて、操作状態が“H”から“B”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
そして、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“b”に移動すると、信号処理部413は、使用レンジを“D”から“B”に切り替える。これにより、信号処理部413は、シフトポジション信号を“D”から“B”に切り替えて、自動変速機のシフトレンジを“D”から“B”に切り替える。さらに、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“b”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図5Bに示す制御マップ100Eに切り替わる。
制御マップ100Eにおいては、“H”と“B”との2つの操作状態301,305のみが有効である。そのため、制御マップ100Eでは、操作状態301,305に対応して、2つの判定領域“h”,“b”、および2つの制御点101,105が設定されている。この状態では、判定領域“b”にある操作位置310の移動先は、判定領域“h”のみに限定され、判定領域“n”,“r”,“d”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Eでは、“N”,“R”,“D”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“B”から“N”,“R”,“D”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“N”,“R”,“D”に対応する制御点102.,103,104も存在しないので、操作者が、無理に“B”から“N”,“R”,“D”のいずれかの操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“B”から“H”に自動的に移動する。操作部31が“H”に復帰した状態でも、使用レンジは“B”のままであるから、シフトポジション信号は“B”を維持し、自動変速機のシフトレンジは“B”を維持する。
また、復帰機能により、操作位置310が判定領域“b”から判定領域“h”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップは、図5Aに示す制御マップ100Dに切り替わる。
以上説明したように、自動変速機のシフトレンジを“D”から“B”に切り替える操作において、操作位置310は、判定領域を“h”,“b”,“h”の順に移動することになる。このときの判定領域と使用レンジとの関係は表2の関係になる。
(2.6.3)“B”から“R”への切り替え
次に、自動変速機のシフトレンジを“B”から“R”に切り替える場合の操作について、図6A〜6Cを参照して説明する。シフトレンジを“B”から“R”に切り替える場合、操作者は、操作状態が“H”から、“N”を経由して、“R”に移動するように、操作部31を操作する。このときの操作受付装置1の動作について詳しく説明する。なお、図6Aに示す制御マップ100Dは図5Aに示す制御マップ100Dと同一であり、図6Bに示す制御マップ100Bは図4Bに示す制御マップ100Bと同一である。
「(2.6.2)“D”から“B”への切り替え」の欄で説明した操作後においては、操作位置310は、“H”に対応する判定領域“h”の制御点101にあり、使用レンジとしては“B”が選択されている。このとき、制御部415は、図6Aに示す制御マップ100Dを適用している。
制御マップ100Dにおいては、“H”と“N”,“B”との3つの操作状態301,302,305のみが有効である。そのため、制御マップ100Dでは、操作状態301,302,305に対応して、3つの判定領域“h”,“n”,“b”、および3つの制御点101,102,105が設定されている。この状態では、判定領域“h”にある操作位置310の移動先は、判定領域“n”,“b”のみに限定され、判定領域“r”,“d”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Dでは、“R”,“D”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“H”から“R”,“D”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“R”,“D”に対応する制御点103,104も存在しないので、操作者が、無理に“H”から“R”,“D”の操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“N”に対応する判定領域“n”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“h”を構成する第1,3,4の領域201,203,204のいずれかから、判定領域“n”を構成する第2の領域202への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“n”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、目標位置が制御点101から制御点102に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点102に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“h”と判定領域“n”との境界を越えて、操作状態が“H”から“N”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
また、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図6Bに示す制御マップ100Bに切り替わる。
制御マップ100Bにおいては、“H”と“N”,“R”,“D”との4つの操作状態301〜304のみが有効である。そのため、制御マップ100Bでは、操作状態301〜304に対応して、4つの判定領域“h”,“n”,“r”,“d”、および4つの制御点101〜104が設定されている。この状態では、判定領域“n”にある操作位置310の移動先は、判定領域“h”,“r”,“d”のみに限定され、判定領域“b”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Bでは、“B”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“N”から“B”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“B”に対応する制御点105も存在しないので、操作者が、無理に“N”から“B”の操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“R”に対応する判定領域“r”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“n”を構成する第2の領域202から、判定領域“r”を構成する第3の領域203への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“r”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“r”に移動すると、目標位置が制御点102から制御点103に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点103に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“n”と判定領域“r”との境界を越えて、操作状態が“N”から“R”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
そして、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“r”に移動すると、信号処理部413は、使用レンジを“B”から“R”に切り替える。これにより、信号処理部413は、シフトポジション信号を“B”から“R”に切り替えて、自動変速機のシフトレンジを“B”から“R”に切り替える。さらに、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“r”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図6Cに示す制御マップ100Fに切り替わる。
制御マップ100Fにおいては、“N”,“R”の2つの操作状態302,303のみが有効である。そのため、制御マップ100Fでは、操作状態302,303に対応して、2つの判定領域“n”,“r”、および2つの制御点102,103が設定されている。この状態では、判定領域“r”にある操作位置310の移動先は、判定領域“n”のみに限定され、判定領域“h”,“d”,“b”への操作位置310の移動は禁止される。要するに、制御マップ100Fでは、“H”,“D”,“B”に対応する判定領域は存在しないので、操作者は、“R”から“H”,“D”,“B”の操作状態に操作部31を直接移動させるような操作が禁止されることになる。さらに、“H”,“D”,“B”に対応する制御点101,104,105も存在しないので、操作者が、無理に“N”から“H”,“D”,“B”のいずれかの操作状態に操作部31を移動させたとしても、この操作に対応してクリック感は生じない。
この状態で操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“R”から“N”を経由して“H”に自動的に移動する。操作部31が“H”に復帰した状態でも、使用レンジは“R”のままであるから、シフトポジション信号は“R”を維持し、自動変速機のシフトレンジは“R”を維持する。
また、復帰機能により、操作位置310が判定領域“r”から判定領域“n”を経由して判定領域“h”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップは、図4Aに示す制御マップ100Aに切り替わる。なお、復帰機能により、操作位置310が判定領域“h”に復帰する際、制御部415にて適用される制御マップは、制御マップ100Bを介して、制御マップ100Aに切り替わってもよい。
以上説明したように、自動変速機のシフトレンジを“B”から“R”に切り替える操作において、操作位置310は、判定領域を“h”,“n”,“r”,“n”,“h”の順に移動することになる。このときの判定領域と使用レンジとの関係は表3の関係になる。
(2.6.4)“N”への切り替え
次に、自動変速機のシフトレンジを“R”,“D”,“B”のいずれかから“N”に切り替える場合の操作について説明する。シフトレンジを“N”に切り替える場合、操作者は、操作状態が“H”から“N”に移動するように操作部31を操作し、かつ操作部31を“N”に所定の保持時間(たとえば1秒)以上、保持する。このときの操作受付装置1の動作について詳しく説明する。
ここでは、一例としてシフトレンジを“D”から“N”に切り替える場合について説明するが、“R”あるいは“B”から“N”に切り替える場合の操作についても、同様である。
「(2.6.3)“N”から“D”への切り替え」の欄で説明した操作後においては、操作位置310は、“H”に対応する判定領域“h”の制御点101にあり、使用レンジとしては“D”が選択されている。このとき、制御部415は、図6A(または図5A)に示す制御マップ100Dを適用している。
この状態で、操作者は、操作部31を操作して、“N”に対応する判定領域“n”に操作位置310を移動させる。このとき、判定領域“h”を構成する第1,3,4の領域201,203,204から、判定領域“n”を構成する第2の領域202への操作位置310の移動をもって、信号処理部413は、操作位置310が判定領域“n”に移動したと判定する。さらに、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、目標位置が制御点101から制御点102に切り替わるため、駆動制御部414は、操作位置310を制御点102に引き寄せる向きの駆動力を駆動部6から操作部31に与える。これにより、操作者は、操作位置310が判定領域“h”と判定領域“n”との境界を越えて、操作状態が“H”から“N”へ切り替わる際に、クリック感を得ることになる。
そして、操作位置310が判定領域“n”に移動後、所定の保持時間(たとえば1秒)に亘り、操作位置310が“N”に対応する判定領域“n”内に止まっていれば、信号処理部413は、使用レンジを“D”から“N”に切り替える。これにより、信号処理部413は、シフトポジション信号を“D”から“N”に切り替えて、自動変速機のシフトレンジを“D”から“N”に切り替える。なお、操作位置310が判定領域“h”から判定領域“n”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップが、図6B(または図4B)に示す制御マップ100Bに切り替わる。
この状態で操作者が操作部31から手を離すと、所定時間の経過後、操作部31は、復帰機能により“N”から“H”に自動的に移動する。操作部31が“H”に復帰した状態でも、使用レンジは“N”のままであるから、シフトポジション信号は“N”を維持し、自動変速機のシフトレンジは“N”を維持する。
また、復帰機能により、操作位置310が判定領域“n”から判定領域“h”に移動すると、制御部415にて適用される制御マップは、図4Aに示す制御マップ100Aに切り替わる。
以上説明したように、自動変速機のシフトレンジを“N”に切り替える操作においては、操作受付装置1は操作部31が保持時間以上“N”(に対応する判定領域“n”)にあることをもって使用レンジを“N”に切り替える。これにより、操作受付装置1は、上述したような“D”や“R”への切替時に操作部31が“N”を経由するだけの操作と、シフトレンジを“N”へ切り替えるための操作とを区別することができる。
(3)効果
以上説明した本実施形態の操作受付装置1は、操作部31と、検出部5と、信号処理部413と、駆動部6と、駆動制御部414と、記憶部412とを備えている。操作部31は、複数の操作状態301〜305を切り替えるように操作される。検出部5は、操作部31の操作位置310を検出する。信号処理部413は、複数の操作状態301〜305に一対一に対応する複数の判定領域のうち、いずれの判定領域に操作位置310が属するかを判定し、判定結果に応じてシフトポジション信号を出力する。駆動部6は、操作部31に駆動力を作用させる。駆動制御部414は、複数の判定領域の各々に設定された制御点101〜105に操作位置310を引き寄せる駆動力が操作部31に作用するように、駆動部6を制御する。記憶部412は、複数の操作状態301〜305のうちのいずれの操作状態を有効にするかを規定した制御マップが、複数記憶されている。ここにおいて、駆動制御部414は、所定の切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に選択される制御マップにおいて有効と規定された操作状態を用いて動作するように構成されている。
この構成によれば、駆動制御部414は、複数の操作状態301〜305のうちのいずれの操作状態を有効にするかを規定した制御マップを、切替条件に従って切り替えながら適用する。すなわち、制御マップで有効と規定された操作状態301〜305間の操作に対しては、制御点によるクリック感を生じさせ、有効でないと規定された操作状態301〜305への操作に対しては、クリック感を生じさせないことが可能となる。これにより、操作者にとっては、自ら行った操作が、有効か無効かを、クリック感の有無によって認識することができる。したがって、本実施形態によれば、警報等を用いなくても、操作者の行った操作が異常操作であることを操作者に認識させることが可能である、という利点がある。
また、本実施形態のように、信号処理部413は、切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に選択される制御マップにおいて有効と規定された操作状態を用いて動作するように構成されていることが好ましい。この構成によれば、信号処理部413は、複数の操作状態301〜305のうちのいずれの操作状態を有効にするかを規定した制御マップを、切替条件に従って切り替えながら適用する。すなわち、信号処理部413では、操作の有効性を判定するのではなく、そもそも異なる制御マップを用いることで、必要な(操作を許容する)判定領域を設定し、不要な判定領域への操作を回避することができる。つまり、不要な判定領域については、対応する操作状態301〜305を制御マップ上で無効にすることで、不要な判定領域への操作位置310の移動が回避されることになる。なお、操作者の行った操作が異常操作であることを操作者に認識させるだけであれば、制御部415のうち駆動制御部414が、切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に選択される制御マップにおいて有効と規定された操作状態を用いて動作すればよい。つまり、信号処理部413が、切替条件に従って複数の制御マップの中から択一的に選択される制御マップにおいて有効と規定された操作状態を用いて動作することは、必須の構成ではない。
また、本実施形態のように、複数の制御マップはそれぞれ、複数の操作状態のうち、相互の切り替えが制限された特定の組み合わせの操作状態301〜305については、同時に有効とならないように設定されていることが好ましい。この構成によれば、たとえば“R”から“D”あるいは“D”から“R”、または“R”から“B”あるいは“B”から“R”などの、特定の組み合わせの操作状態については、操作状態の切り替えを制限(禁止)することができる。したがって、制御マップの設定次第で、特定の組み合わせの操作状態の切り替えを簡単に制限できるという利点がある。しかも、このように特定の組み合わせの操作状態については制御点が設定されないため、操作者は、このような特定の組み合わせの操作状態を切り替える操作をした場合、クリック感が得られず、異常操作であることを認識することができる。
また、本実施形態のように、切替条件は、シフトポジション信号、および操作位置を用いて規定されていることが好ましい。この構成によれば、シフトポジション信号および操作位置の2つの情報から、適用する制御マップが選択されることになるので、制御マップの選択(切替)にかかる処理負荷が、比較的軽く抑えられるという利点がある。
また、本実施形態のように、複数の制御マップの各々においては、複数の操作状態のうち有効と規定された操作状態に対応する判定領域および制御点が設定されていることが好ましい。この構成によれば、制御マップごとに、判定領域および制御点を自由に設定することが可能である。
また、この場合、複数の制御マップ間は、設定される判定領域の範囲が互いに異なる一対の制御マップを含み、かつ設定される制御点の位置については不変であることが好ましい。この構成によれば、制御マップにおいては、不要な判定領域を設定しないようにしながらも、必要な判定領域については、極力広範囲に設定することが可能である。さらに、同一の操作状態に対応する制御点の位置は不変であるので、図2の例のように全ての操作状態301〜305が定位置に配置されているような操作感を操作者に与えることができる。
また、本実施形態のように、シフトポジション信号は、車両の変速機のシフトレンジを切り替える信号であることが好ましい。つまり、操作受付装置1は、車両の変速機のシフトレンジの切り替え(シフトチェンジ)に用いられることが好ましい。この構成によれば、たとえば“R”から“D”または“D”から“R”などの特定の切り替え操作を異常操作とする場合に、車両側の装置が警報等を発生することなく、操作者に異常操作を認識させることができる。
(4)変形例
複数の制御マップを切り替えるための切替条件は、シフトポジション信号、および操作位置に限らず、たとえば車両の走行速度等を組み合わせて規定されてもよい。これにより、たとえば使用レンジ(シフトポジション信号)が“D”の場合であっても、走行速度が一定速度以上のときと、一定速度未満のときとで、異なる制御マップを適用することが可能になる。これにより、使用レンジが“D”で、かつ走行速度が一定速度以上の場合にのみ、“D”から“R”への切り替えを制限するような制御が可能になる。
また、操作受付装置1は、自動車の自動変速機に限らず、たとえば手動変速機(マニュアルトランスミッション)を搭載した車両、二輪車や三輪車等の車両、または船舶や航空機などの変速機のシフトレンジの切り替えに用いられてもよい。さらに、操作受付装置1は、変速機のシフトレンジの切り替えに限らず、種々の用途に適用可能であり、たとえば自動車のナビゲーションシステム、オーディオ、エアコン(エアーコンディショナ)などの操作にも適用できる。
また、上述したように、ホームポジション“H”、および自動変速機の4つのシフトポジション“N”,“R”,“D”,“B”の対応する複数の操作状態301〜305は、一例に過ぎず、操作部31がとり得る操作状態は適宜設計可能である。たとえば操作部31は6つ以上の操作状態を切替可能であってもよいし、あるいは4つ以下の操作状態を切替可能でであってもよい。パーキング(P)のシフトレンジに対応する操作状態が含まれていてもよい。さらに、図2の例とは異なるシフトパターンとなるように、5つの操作状態が配置されていてもよい。
また、信号処理部413と駆動制御部414とが1つの制御部415にて構成されることは必須ではなく、信号処理部413と駆動制御部414とは、別々に設けられていてもよい。