(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るICタグ保護構造10Aについて、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明する場合があるものとし、X方向をタグブロック50Aの長手方向とし、X1側は図1において手前側かつ右側、X2側は図1において奥側かつ左側とする。またZ方向をICタグ保護構造10Aの上下方向とし、Z1側は上側、Z2側は下側とする。またY方向はX方向およびY方向に直交する方向とし、Y1側は図1において奥側かつ右側、Y2側はそれとは逆の手前側かつ左側とする。
<ICタグ保護構造10Aの構成について>
本実施の形態におけるICタグ保護構造10Aは、LPガスタンクや、ガスボンベ等のガス容器の表面に取り付けられ、外部環境に長期に亘って放置される状態となる。しかも、ガス容器は、ガスの漏れや、錆等による腐食を防ぐために、数年ごとに点検される。かかる点検においては、ショットブラストによって、ガス容器から塗装が剥がされるが、ICタグ保護構造10Aは、ショットブラストの砥粒の衝突に対しても、後述するタグブロック50Aを保護する必要がある。そのため、ICタグ保護構造10Aは、以下のような構成となっている。
図1は、ICタグ保護構造10Aの構成を示す斜視図である。図2は、ICタグ保護構造10Aの構成を示す分解斜視図である。図1および図2に示すように、本実施の形態におけるICタグ保護構造10Aは、タグ取付板20Aと、タグ保護カバー30Aと、タグブロック50Aを有している。
タグ取付板20Aは、ガス容器の表面に、接着や溶接、またはネジ止め等により取り付けられる部分である。このタグ取付板20Aは、金属製の板状部材であり、タグブロック50Aの下面側を保護している。このタグ取付板20Aには、平板部21Aと防御板部22Aとが設けられている。平板部21Aは、タグブロック50Aを載置する部分であり、タグブロック50Aが載置されるのとは反対側の面(裏面)がガス容器の取付部位に接触する部分である。
また、タグ取付板20Aには、貫通孔20A1が設けられている。貫通孔20A1には、ボルト等の固定手段が挿通される。それにより、タグ保護カバー30Aをタグ取付板20Aに固定可能となっている。
また、防御板部22Aは、砂や鉄球等のような、ショットブラストの砥粒からタグブロック50Aを防御する部分である。そのため、防御板部22Aは、平板部21Aから上側(Z1側)に向かうように折り曲げられている。なお、この防御板部22Aの上方の縁部および側方の縁部との間には、UHF帯域の電磁波に伴って生じる高周波電流を絶縁するための絶縁スリット35Aが形成される。かかる絶縁スリット35Aの幅は、砥粒の粒径よりも狭く設けられている。絶縁スリット35Aとは、タグ保護カバー30Aとタグブロック50Aおよびタグ取り付け板20Aとを貫通孔20A1を合わせて一体化したとき、防御板部22Aの外縁とこれに合わされる部分のタグ保護カバー30Aの縁部分が金属接触しないように離間される。この離間領域を絶縁スリット35Aとする。
ここでいう砥粒の粒径とは、砥粒の平均粒径のことを指す。かかる砥粒の粒径は、たとえば0.5mm程度とするものがあるが、それには限られない。また、砥粒の粒度部分布は、平均粒径から離れるものが少ない方が好ましい。
次に、タグ保護カバー30Aについて説明する。図1および図2に示すように、タグ保護カバー30Aは、タグ取付板20Aに固着され(取り付けられ)、その固着によってタグブロック50Aを外部衝撃から保護する機能を有している。また、タグ保護カバー30Aは、UHF帯の電磁波のみならず、たとえば13.56MHzといったHF帯の電磁波も通過させて、外部の端末との間で無線通信を行うことが可能となっている。
かかる外部衝撃からタグブロック50Aを保護し、また外部端末との間で無線通信を行うために、タグ保護カバー30Aは、ショットブラストの砥粒が衝突するのに耐えられるだけの強度を有している。また、タグ保護カバー30Aは、外部環境に長期間に亘ってさらされるため、腐食や錆に対する耐性(耐腐食性)も有することが要求される。そのため、タグ保護カバー30Aは、上述したようなステンレス(SUS)やアルミニウム系合金、表面に酸化被膜が形成されたアルミニウム等を材質とすることが可能である。一方、必ず塗装されることを考慮して容器と同じ金属、例えば鉄材であっても構わない。
このようなタグ保護カバー30Aの材質としては、たとえば、縦横の寸法が50mm以下の場合には、厚さが1mm程度のステンレス(SUS)のような鉄合金やアルミニウム系合金を材質とするものがある。ただし、ショットブラストの際の砥粒の衝突に耐えられると共に、耐腐食性を有するものであれば、その他の金属を材質としても良い。
なお、タグ保護カバー30Aの寸法の一例としては、透過保護部31Aの幅(Y方向の寸法)を35mm、タグ保護カバー30A(透過保護部31A)の長さ(X方向の寸法)を40mmとするものがある。また、タグ保護カバー30Aの高さ(Z方向の寸法)を20mmとするものがある。しかしながら、タグ保護カバー30Aの寸法は、これには限られず、適宜変更可能である。
このタグ保護カバー30Aは、透過保護部31Aと、取付フランジ部32Aとを有している。透過保護部31Aは、多数の線材311(電気を通す金属の線状部分)が並べられることで構成されている。ただし、隣り合う線材311の間には、HF帯の電磁波を通過させることが可能な貫通スリット33Aが設けられている。貫通スリット33Aは、HF帯域の電磁波を透過させる機能を有していれば良い。そのため、貫通スリット33Aは、隣り合う線材311の間に存在する空間部であっても良いが、線材311に電気的な絶縁を図るための樹脂が塗布されている場合には、その樹脂が貫通スリット33Aであっても良い。
なお、貫通スリット33Aの幅(線材311の間の隙間)は、ショットブラストの砥粒の粒径よりも狭く設けられている。それにより、貫通スリット33Aからタグブロック50Aに向かって砥粒が入り込むのが防止可能となっている。また、貫通スリット33Aが電気的な絶縁性を有する樹脂から構成される場合には、砥粒によって貫通スリット33Aを構成する樹脂が破壊されて、砥粒がタグブロック50Aに向かって入り込むのが防止される。
ここで、線材311としては、たとえばステーブルの針のような、金属製の線材の表面に絶縁性の被膜がコーティングされたものを利用することができる。しかしながら、線材311としては、それ以外に、エナメル塗料のような絶縁性被膜が塗布された平角線のようなものを用いても良い。
図1および図2に示すように、透過保護部31Aは、その外観が筒状の一部である樋形状(コ字形状)となるように設けられている。そのため、透過保護部31Aの内部にタグブロック50Aを位置させることが可能となっている。ただし、透過保護部31Aの外観は、樋形状に限られるものではない。たとえば、透過保護部31Aが円筒状の一部分となっていても良く、ドーム形状の一部分となっていても良い。
この透過保護部31Aの下方側(Z2側)の端部には、取付フランジ部32Aが一体的に連結されている。取付フランジ部32Aは、複数の線材311に対して、たとえば溶接等の手法により一体的に連結されている。そのため、それぞれの線材311の固定強度が高くなり、ショットブラストを行う場合のような外部衝撃が線材311に加わっても、線材311同士の間隔が広がるように変形しようとするのを防ぐことが可能となっている。
なお、取付フランジ部32Aは、溶接以外の手法によって線材311を固定しても良い。たとえば、所定長さの線材311を複数並べて配置し、それらの線材311の両端部を挟持部材で挟持させる。このとき、挟持部材は、複数の線材311のそれぞれ端部を同時に固定している状態となる。その後、線材311を折り曲げる等して、透過保護部31Aと取付フランジ部32Aとが同時に形成されるようにしても良い。
取付フランジ部32Aには、挿通孔32A1が設けられている。挿通孔32A1は、上述した貫通孔20A1と位置合わせ可能に設けられている。そして、挿通孔32A1と貫通孔20A1とを位置合わせし、その状態でボルトを挿通させ、その後ナットをボルトに捻じ込む等することで、タグ取付板20Aとタグ保護カバー30Aとを一体的に固定可能となっている。
ところで、樋形状の透過保護部31Aのうち、下方側(Z2側)の開口は、上述した平板部21Aにタグ保護カバー30Aが取り付けられることで、閉塞される。一方、透過保護部31Aのうち線材311が並ぶ配列方向の両端側(X方向の両端側)には、開口部分31A1が設けられていて、この開口部分31A1は、透過保護部31Aによっては閉塞されない。
しかし、タグ取付板20Aには防御板部22Aが設けられている。しかも、上述したように、防御板部22Aの上方の縁部および側方の縁部と、透過保護部31Aの間には、UHF帯の電磁波に伴って生じる高周波電流を絶縁するための絶縁スリット35Aが存在しているが、その絶縁スリット35Aの幅は、砥粒の粒径よりも狭く設けられている。そのため、ショットブラスト時の砥粒が、絶縁スリット35Aを通過して透過保護部31Aと平板部21Aとで囲まれた空間(内部空間Pとする)に入り込むのを防止している。
次に、タグブロック50Aについて説明する。図3は、タグブロック50Aの構成を示す側断面図である。図4は、タグブロック50Aの構成を示す平面図である。図3および図4に示すように、タグブロック50Aは、その外観が直方体形状に設けられている。このタグブロック50Aは、樹脂封止部51Aと、UHF帯ICタグ体60と、HF帯ICタグ体70とを有している。樹脂封止部51Aは、誘電性(電気的な絶縁性)の樹脂材料を材質として形成されていて、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とを覆っている。換言すると、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、樹脂封止部51Aの内部に埋め込まれている。
なお、UHF帯ICタグ体60は第1タグに対応し、後述するICチップ642は第1ICチップに対応し、コイルアンテナ643は第1コイルアンテナに対応する。UHF帯域の周波数は第1周波数に対応する。また、HF帯ICタグ体70は第2タグに対応し、ICチップ72は第2ICチップに対応し、コイルアンテナ75は第2コイルアンテナに対応する。また、HF帯域の周波数は第2周波数に対応する。
UHF帯ICタグ体60は、たとえば920MHzといったUHF帯域の電磁波に対応している。そのため、UHF帯ICタグ体60から、たとえば1m以上離れた位置に、UHF帯域に対応した専用端末が存在していても、その専用端末との間で、情報の送受信が可能となっている。一方、HF帯ICタグ体70は、たとえば13.56MHzといったHF帯域(UHF帯域の数十分の1の周波数)の電磁波に対応している。かかるHF帯ICタグ体70は、通信装置との間で、たとえば通信距離が10cm未満等のような近距離の場合に、情報の送受信が可能となっている。
なお、HF帯域の通信装置を搭載しているものとしては、携帯電話端末や、スマートフォン等のような携帯情報端末がある。
ここで、図3および図4に示すように、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、同じXY平面内に並ぶような配置ではなく、上下方向(Z方向)に重なるような配置に設けられている。すなわち、タグブロック50Aにおいては、UHF帯ICタグ体60が存在する高さ位置と、HF帯ICタグ体70が存在する高さ位置とは、異なっている。なお、図3に示すように、タグブロック50Aにおいては、UHF帯ICタグ体60は下方側(Z2側)に位置すると共に、HF帯ICタグ体70は上方側(Z1側)に位置している。
しかしながら、図3および図4に示すように、UHF帯ICタグ体60の中心位置S1とHF帯ICタグ体70の中心位置S2とは、XY平面において同じ位置ではなく、ずれた位置に配置されている。すなわち、UHF帯ICタグ体60のうち、金属製の保護部材63は、HF帯ICタグ体70の動作を阻害する部分となっている。そのため、タグブロック50Aの内部では、XY平面において、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70との重なりが少なくなるように配置されている。
かかる配置の例としては、図4に示すように、UHF帯ICタグ体60をタグブロック50Aの対角方向における一端側に位置させ、HF帯ICタグ体70をその対角方向における他端側に位置させるものがある。このような配置とする場合には、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の重なりを小さくすることができる。しかしながら、タグブロック50AにおけるUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の配置は、図4に示すものには限られない。たとえば、タグブロック50Aの長手方向(X方向)における一端側と他端側にそれぞれUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とを配置するようにしても良い。
<UHF帯ICタグ体60の構成について>
次に、UHF帯ICタグ体60の一例を図5に示す。図5は、UHF帯ICタグ体60の構成を示す側断面図である。図6は、UHF帯ICタグ体60の構成を示す平面図である。図5および図6に示すように、UHF帯ICタグ体60は、本体部61と、ICインレット64(単にインレットともいう;ICチップ体に対応)とを有している。本体部61は、誘電性樹脂材料で形成された樹脂部62を備え、この樹脂部62によりICインレット64が覆われている。すなわち、ICインレット64は、樹脂部62の内部に埋め込まれている。
また、本体部61は、樹脂部62以外に、保護部材63を有している。保護部材63は、たとえばステンレス鋼(SUS304)等の金属を材質としているが、この保護部材63は、樹脂部62を保護する強度を有しており、ICインレット64の動作を助長するようなアンテナの役割を兼ねている。なお、図5に示す構成では、保護部材63は、上方側(Z1側)、下方側(Z2側)、および長手方向の両端側(X1側およびX2側)を覆っている。ただし、保護部材63の幅方向(Y方向)の両端側は開放している。また、長手方向の一端側(図5ではX2側)には、開口部62aが設けられていて、保護部材63の表面を流れるUHF帯の電波で共振状態となるように高周波電流を絶縁している。また、図6に示すように、保護部材63の下方側(Z2側)は、大面積の取付板部63aとなっていて、その取付板部63aには、ボルト等を差し込むための貫通孔63a1が設けられている。
また、ICインレット64は、ICタグ基板641と、ICチップ642と、コイルアンテナ643とを備えている。ICタグ基板641は、略矩形状をなす平板形状に形成されている。ICタグ基板641としては、たとえばPETを始めとした樹脂製のフィルムを用いることができる。かかるICタグ基板641には、ICチップ642と、コイルアンテナ643とが設けられているが、そのうちICチップ642は、各種のデータを記憶する。また、コイルアンテナ643は、電磁誘導方式の場合には、フレミング右手の法則によりコイルアンテナ643に電流を生じさせるが、電波方式の場合には、コイルアンテナ643が受信した電波に基づいて電流を生じさせる。保護部材63が共振状態となることで保護部材63に囲まれた内部で強い電磁結合状態となる。この電磁結合でコイルアンテナ643が動作しICチップ642も動作することになる。
なお、本実施の形態では、ICインレット64がなす平面は、タグブロック50Aの長手方向(X方向)および高さ方向(Z方向)がなす平面(XZ平面)と略平行に設けられている。それにより、樹脂部62のうち金属製の保護部材63で覆われていない側面を電磁波が通過可能としている。ただし、ICインレット64がなす平面は、電磁波が通過可能であれば、タグブロック50Aの短手方向(Y方向)および高さ方向(Z方向)がなす平面(YZ平面)と略平行に設けられていても良く、長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)がなす平面(XY平面)と略平行に設けられていても良い。
ここで、「略平行」とは、厳密な平行も含むが、そのような厳密な平行には限られず、ある程度の角度でずれることを許容する意味である。
なお、タグブロック50Aの長尺方向が、XZ平面と略平行に設けられることで、金属製の保護部材63がICインレット64と電磁的に結合し、保護部材63が外部アンテナの働きをするように構成することもできる。この場合には、共振状態になるため読み取り性能を向上させることが可能となる。
なお、UHF帯ICタグ体60としては、たとえば日立化成株式会社製の「IM5−X07」という製品を用いることができるが、UHF帯ICタグ体60はこれに限られるものではない。また、UHF帯のICインレット64は一例として「IM5−PK2525」という日立化成株式会社製の製品を用いることができる。
<HF帯ICタグ体70の構成について>
次に、HF帯ICタグ体70について説明する。HF帯ICタグ体70は、図3に示すように、平面視したときの外観がコイン型となるように設けられている。図7は、HF帯ICタグ体70の構成を示す側断面図である。このHF帯ICタグ体70は、たとえば樹脂やセラミックス等の誘電性の材料から形成されたケース体71の内部に、ICチップ72が保護材73等を介して収納され、このICチップ72が接続線74を介してアンテナ75に接続された構成となっている。ただし、HF帯ICタグ体70は、かかる図7に示す構成には限られず、円形や方形といった種々の形状のものを採用可能であり、また種々の内部構成が採用可能である。なお、HF帯ICタグ体70としては、たとえば日立化成株式会社製の「LA−P10115」という製品を用いることができるが、HF帯ICタグ体70はこれに限られるものではない。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Aは、ガス容器に取り付けられることを想定している。ガス容器においては、リニューアルの際に、塗装をショットブラストで剥がすが、本実施の形態のICタグ保護構造10Aでは、タグブロック50Aは、タグ取付板20Aに載置され、さらにタグブロック50Aがタグ保護カバー30Aで覆われた状態となる。しかも、タグ保護カバー30Aは、ショットブラストの際に噴射される砥粒材の衝突に対しても耐えることが可能な耐衝撃性を有する厚みを有している。このため、ショットブラストの際に、タグブロック50Aが損傷するのを防止可能となる。
このように、タグブロック50Aをブラスト処理の砥粒材の衝撃から保護することにより、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70を長期に亘り使用することが可能となり、ガス容器のメンテナンス情報を長期に亘り保持することが可能となる。同じく、ICタグ保護構造10Aでは、トレーサビリティを長期に亘り確保することが可能となる。
また、充填業者や配送業者といった業者が保持している専用端末は、UHF帯域に対応していて、1mといった比較的離れた位置でも情報の送受信が可能である。一方で、一般的な消費者や利用者が保持している携帯情報端末は、UHF帯域に対応した通信装置はほとんど搭載しておらず、その代わりにHF帯の近距離無線通信方式(NFC;Near Field Communication)の通信装置を搭載しているタイプが多い。しかしながら、本実施の形態のICタグ保護構造10Aのタグブロック50Aは、UHF帯ICタグ体60と、HF帯ICタグ体70とを内蔵している。
そのため、業者が保持している専用端末での情報の送受信が可能であると共に、一般消費者が保持しているNFC方式に対応した通信装置を有する携帯情報端末での情報の送受信も可能である。そのため、いずれかのICタグ体60,70の故障に対する冗長性を向上させることが可能となり、また利便性も向上させることが可能となる。
また、本実施の形態では、ショットブラストに耐えるだけの強度を有する金属製の保護部材(タグ保護カバー30A)を用いつつも、そのタグ保護カバー30Aには、HF帯域の電磁波に伴う磁力線を通過させることが可能な貫通スリット33Aが設けられている。そのため、ショットブラストの砥粒の衝突からタグブロック50Aを良好に保護しながらも、UHF帯域とHF帯域の2つの周波数帯域での通信を良好に行える構成を実現可能となる。
なお、貫通スリット33Aの幅は、ショットブラストに際して噴射される砥粒材の平均粒径よりも狭い幅に設けられている。そのため、砥粒の粒径の多くは、貫通スリット33Aの幅よりも大きくなり、それによってタグブロック50Aを砥粒の衝突から良好に保護することができる。
また、本実施の形態では、タグ保護カバー30Aは、複数の線材311が並べられ、かつその線材311の端部同士は、たとえば取付フランジ部32Aで互いに一体的に固定されている。そのため、線材311が互いに独立して移動したり変形するのを抑えることが可能となる。しかも、隣り合う線材311の間には、貫通スリット33Aが設けられている。そのため、本数の多い線材311同士の間に、貫通スリット33Aが多数存在することになり、貫通スリット33Aの合計面積が大きくなる。それにより、HF帯域の電磁波に伴う磁界成分の磁力線を良好に通過させることが可能となる。
ここで、本実施の形態では、貫通スリット33Aのスリット幅が、たとえばエナメル塗料のような絶縁性被膜の厚み分存在し、その絶縁性被膜の厚みが10μm程度であり、さらに絶縁スリット35Aのスリット幅が0.5m程度のときには、13.56MHzのHF帯域において10mWの出力の通信装置では、約15mm程度離れた距離でも通信可能となっている。すなわち、約15mm程度離れても、HF帯域では十分な感度が得られている。一方、920MHzのUHF帯域において1Wの出力の通信装置では、約80cm程度離れた距離でも通信可能となっている。すなわち、約80cm程度離れても、UHF帯域では十分な感度が得られている。
なお、上記の感度は、単体のUHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70と比較すると、約半分程度の感度となっている。
さらに、本実施の形態では、図3および図4に示すように、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、タグブロック50Aの内部において、高さ方向(Z方向)で異なる位置に設けられている。しかも、タグブロック50Aを平面視した場合、UHF帯ICタグ体60の中心位置S1と、HF帯ICタグ体70の中心位置S2とは重ならず、かつ平面視した場合にUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70のそれぞれに重ならない領域S41,S42が存在するように配置されている。そのため、HF帯域の電磁波の感度を高めることが可能となる。
すなわち、中心位置S1と中心位置S2とがXY平面で同じ位置に存在する場合には、HF帯域の電磁波に伴ってHF帯ICタグ体70を通過する磁力線は、UHF帯ICタグ体60の金属製の保護部材63により大きく低減されてしまう。しかしながら、中心位置S1と中心位置S2とがXY平面内で同じ位置とはならずに、ずらした配置とする場合には、HF帯域の電磁波に伴ってHF帯ICタグ体70を通過する磁力線が低減されるのを抑えることができる。特に、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とのそれぞれに重ならない領域S41,S42が存在する場合には、磁力線の低減を良好に抑えることができる。
また、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とがXY平面で重なる部分を有する配置とすることにより、タグブロック50Aの寸法を小さくすることが可能となる。すなわち、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とがXY平面において重ならない位置に配置する場合と比較して、タグブロック50Aを大幅にコンパクトにすることが可能となる。
また、本実施の形態では、タグ保護カバー30Aのうち、線材311の配列方向(X方向)の両端側は、開放した開口部分31A1となっている。開口部分31A1には、防御板部22Aが位置して、この開口部分31A1を閉塞するように設けられている。しかも、防御板部22Aと透過保護部31Aの周縁部(上方の縁部および側方の縁部)の間には、絶縁スリット35Aが設けられている。かかる絶縁スリット35Aの存在により、UHF帯域の電磁波に伴って線材311に生じる高周波電流が、防御板部22A側に向かって漏れてしまうのを妨げることができ、また絶縁スリット35Aにより、UHF帯の電磁波が共振状態に保つことができる。そして、このような絶縁スリット35Aの幅は、ショットブラストに際して噴射される砥粒材の平均粒径よりも狭い幅に設けられている。そのため、砥粒の粒径の多くは、絶縁スリット35Aの幅よりも大きくなり、それによってタグブロック50Aを砥粒の衝突から良好に保護することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「B」を附して説明する。図8は、第2の実施の形態に係るICタグ保護構造10Bの構成を示す斜視図である。図9は、ICタグ保護構造10Bの構成を示す分解斜視図である。図8および図9に示すように、本実施の形態におけるICタグ保護構造10Bは、タグ保護カバー30Bと、タグブロック体50Bとを有している。
タグ保護カバー30Bは、上述した第1の実施の形態におけるタグ保護カバー30Aと類似した構成である。具体的には、タグ保護カバー30Bは、透過保護部31Bと、金属台座部34Bとを有している。それらのうち、透過保護部31Bは、多数の線材311(電気を通す金属の線状部分)が並べられることで構成されている。なお、多数の線材311の両端側には、連結部32Bが存在している。連結部32Bは、たとえば溶接等の手法により多数の線材311を一体的に連結した部分となっている。そのため、ショットブラストを行う場合のような外部衝撃が透過保護部31Bに加わっても、線材311同士の間隔が広がるように変形しようとするのを防ぐことが可能となっている。
なお、上述の第1の実施の形態における取付フランジ部32Aと同様に、連結部32Bは、溶接以外の手法によって多数の線材311を固定しても良い。
また、隣り合う線材311の間にも、HF帯の電磁波を通過させることが可能な貫通スリット33Bが設けられており、その貫通スリット33Bも、上述した貫通スリット33Aと同様となっている。
しかしながら、透過保護部31Bのうち、線材311が並ぶ配列方向の両端側(X方向の両端側)には、開口部分31A1が存在していない。その代り、配列方向(X方向)の両端側には、ショットブラストに耐えられる閉塞板部31B1が設けられている。閉塞板部31B1は、たとえば所定形状に打ち抜いた金属板を用いることができる。
なお、貫通スリット33Bは、本実施の形態では、UHF帯ICタグ体60の偏波方向に平行に設けられ、しかもこの貫通スリット33BがUHF帯域の電磁波の共振を妨げないように設けられている。あるいは共振を助長するように設けられている。そのため、貫通スリット33Bの延伸方向は、コイルアンテナ643がなす平面と平行となるように設けられている。
また、金属台座部34Bは、透過保護部31Bが取り付けられる部分であり、透過保護部31Bを支持する部分である。かかる金属台座部34Bに対して、透過保護部31Bは、支持部31B2(後述)を介して支持されている。金属台座部34Bは、後述する金属台座部54Bとで、ICタグ保護構造10Bの下方側(Z2側)を支持している。そのため、本実施の形態では、金属台座部34Bの線材311の延伸方向(Y方向)における長さは、透過保護部31Bの半分程度に設けられている。
なお、金属台座部34Bと、後述する金属台座部54Bとは、上述の第1の実施の形態におけるタグ取付板20Aに対応するものである。
金属台座部34Bには、挿通孔34B1が設けられている。挿通孔34B1は、たとえばボルト等が挿通される孔部分であり、ガス容器等の所定の部位に固定するための部分である。しかしながら、挿通孔34B1は、ICタグ保護構造10Bを図示を省略する支持板等に固定するための孔部分であっても良い。挿通孔34B1はUHF帯ICタグ体60のボルトやネジを差し込むための貫通孔63a1そのものであっても良い。
ここで、透過保護部31Bは、支持部31B2を介して金属台座部34Bに支持されている。支持部31B2は、透過保護部31Bの他の部分よりも下方側(Z2側)に向かい突出している部分である。そのため、図2に示すように、透過保護部31Bの支持部31B2以外の下縁部31B3と、金属台座部34Bとの間には、絶縁スリット35Bが形成されている。この絶縁スリット35Bの幅は、砥粒の粒径よりも狭く設けられている。
なお、絶縁スリット35Bは、金属台座部34Bのみならず金属台座部54Bの間にも存在している。
ここで、タグ保護カバー30Bの寸法の一例としては、透過保護部31Bの幅(X方向の寸法)を14mm、タグ保護カバー30B(透過保護部31B)の長さ(Y方向の寸法)を35mmとするものがある。また、タグ保護カバー30Bの高さ(Z方向の寸法)を11mmとするものがある。また、線材311の厚みを1mmとするものがある。しかしながら、タグ保護カバー30Bの寸法は、これには限られず、UHF帯の電波で共振するのであれば適宜変更可能である。
また、図9に示すように、タグブロック体50Bは、直方体形状のタグブロック50B1と、金属台座部54Bとを有している。タグブロック50B1は、ブロック本体52Bと、蓋受部53Bとを有している。ブロック本体52Bは、上述したタグブロック50Aに相当する構成を有している。これらの構成は、上述した第1の実施の形態における樹脂封止部51A、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70と同様であるので、その説明は省略する。ただし、本実施の形態では、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、第1の実施の形態におけるタグブロック50Aとは異なり、タグブロック50Bの長手方向(Y方向)において、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とが、X方向において同じ位置に位置する(平面視した場合にY方向に沿う同じ直線上に位置する)ように構成しても良い。
また、蓋受部53Bは、ブロック本体52Bからフランジ状に突出する部分である。この蓋受部53Bは、図1および図2に示すように、透過保護部31Bの下端部分が当接する部分である。また、この蓋受部53Bは、透過保護部31Bの下縁部31B3と金属台座部34Bとの間の絶縁スリット35Bにも入り込む。それにより、透過保護部31Bは、支持部31B2以外の部分では、絶縁性が確保されて、透過保護部31B全体がUHF帯の電波で共振を助長するアンテナとして機能することができる。
ここで、樹脂封止部51Bと蓋受部53Bとは、樹脂を材質として形成されている。かかる樹脂としては、たとえば発泡ウレタンのような空気と同等の低誘電率の材質であって、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70に対する防水性を有する材質が好ましい。かかる材質とする場合、例えば上述した保護カバー30Bの寸法の一例で述べた寸法においてUHF帯ICタグ体60の共振の同調を取り易くなる。
また、金属台座部54Bは、上述した金属台座部34Bと共に、ICタグ保護構造10Bの下方側(Z2側)を支持する部分である。そのため、金属台座部54Bのうちタグブロック50B1の長手方向(Y方向)における長さは、このタグブロック50B1の長さよりも短く設けられている。
ここで、本実施の形態のICタグ保護構造10Bでは、貫通スリット33Bは、UHF帯域の電磁波の偏波方向に対し、平行に設けられていて、共振を助長し妨げないように設けられている。しかも、貫通スリット33Bの他に、絶縁スリット35Bも設けられている。絶縁スリット35Bは、線材311の表面を流れる高周波電流が、支持部31B2以外の部分で金属台座部34Bや金属台座部54Bに短絡したり、外部に漏えいするのを妨げる部分である。そして、この絶縁スリット35Bは、絶縁部材として機能する蓋受部53Bと合致し、一体化したとき形成されることになる。
そのため、線材311の表面においては、高周波電流の進行波と、この線材311の端部等から反射する高周波電流の反射との干渉により所定の強度の定在波が形成される。そして、この定在波の形成により、定在波が全く形成されない場合と比較して、遠くまで電波放射を発生させることができる。
なお、UHF帯ICタグ体60のコイルアンテナ643には、高周波電流を変圧器の1次電流として相互誘導された2次電流が流れ、この2次電流によって誘導される高周波の磁力線が絶縁スリット35B(すなわち蓋受部53B)を通過して、ICタグ保護構造10Bの外部の空間から再びもう一方の側の絶縁スリット35Bを経てコイルアンテナ643に戻るようなる閉ループを形成する。この磁力線によっても、線材311の表面にUHF帯の高周波電流が流れ、その電流による進行波および反射波によっても、定在波が形成される。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Bによると、タグ保護カバー30Bは箱体状に設けられている。そして、箱体状のタグ保護カバー30Bは、複数の線材311から構成され、隣り合う線材311の間には貫通スリット33Bが設けられている。しかも、この貫通スリット33Bは、UHF帯域に対応したUHF帯ICタグ体60の偏波方向に平行に設けられている。そのため、線材311の表面においては、高周波電流の進行波と、この線材311の端部等から反射する高周波電流の反射との干渉により所定の強度の定在波が形成を形成することができ、この定在波の形成により、定在波が全く形成されない場合と比較して、遠くまで電波放射を発生させることができる。
また、本実施の形態のICタグ保護構造10Bでは、タグ保護カバー30Bと、タグ取付板20Aに相当する金属台座部34B,54Bとの間には、絶縁部材である蓋受部53Bとで形成される絶縁スリット35Bが設けられている。そして、この絶縁スリット35Bの存在により、UHF帯域の電磁波に伴って線材311の表面に生じる高周波電流を、金属台座部34B,54Bに対して絶縁することができ、強い共振を保つ必要のある定在波が弱まるのを防止可能となる。また、絶縁スリット35Bの幅(すなわち蓋受部53Bの幅)は、砥粒材の平均粒径よりも狭く設けられている。そのため、ショットブラスト時の砥粒が、絶縁スリット35Bを通過して、内部空間Pに入り込むのを防止可能となる。それにより、タグブロック体50Bが砥粒材の衝突でダメージを受けるのを防止可能となる。
なお、本実施の形態のICタグ保護構造10Bでは、1W程度の専用端末で2m程度の距離で情報の送受信が可能となっている。しかしながら、仮にUHF帯ICタグ体60が単体で存在する場合、1W程度の専用端末で1.5m程度の距離で情報の送受信が可能となっている。そのため、電磁波の飛距離は、50cm程度向上している。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「C」を附して説明する。図10は、第3の実施の形態に係るICタグ保護構造10Cの構成を示す斜視図であり、ガス容器80から外された状態を示す図である。図11は、ICタグ保護構造10Cがガス容器80に取り付けられた状態を示す斜視図である。図12は、ICタグ保護構造10Cの構成を示す斜視図である。
図10および図11に示すように、ガス容器80の上部側には、ネック部81が設けられている。このネック部81には、ガスバルブ90が取り付けられるバルブ取付孔82が設けられている。バルブ取付孔82の内周には、図示を省略する雌ネジ部が設けられていて、その雌ネジに対してガスバルブ90の雄ネジ部を捻じ込むことで、ガス容器80にガスバルブ90が取り付けられる。
また、図10に示す構成では、ネック部81の外周側には、雄ネジ部81aが設けられている。雄ネジ部81aは、図示を省略する保護キャップの雌ネジ部が捻じ込まれる部分である。保護キャップは、たとえばガス容器80の運搬時にガスバルブ90を保護するための部材である。さらに、ネック部81の下方側(Z2側)には、逃げ溝81bが設けられている。逃げ溝81bは、雄ネジ部81aを加工する際の逃げとなる部分であり、雄ネジ部81aが形成されていない部分である。そのため、逃げ溝81bの直径は、雄ネジ部81aのネジ山の直径よりも小さく設けられている。
このようなガス容器80に対しては、上述した第1の実施の形態におけるICタグ保護構造10Aや、第2の実施の形態におけるICタグ保護構造10Bを、ガス容器80に取り付ける場合、ガス溶接やアーク溶接といった温度の高い融接はガス容器へのダメージ等から好ましくないため、融接ではなく、温度の低いロウ付けにて取り付けることが考えられる。
しかしながら、ロウ付けにてICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80に取り付けられる場合、ガス容器80の塗装を、たとえば鉄球等を用いたショットブラストで剥がす場合、ICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80から取れてしまう場合がある。これは、ロウ付けに際して用いられる、銀ロウや銅ロウといったロウ材が、ショットブラストで用いられる鉄球等の砥粒よりも強度的に弱く、そのため砥粒が衝突する際の衝撃に抗しきれない場合が想定されるからである。
このような場合でも、ガス容器80から取れたICタグ保護構造10A,10Bを再びロウ付けしたり、またはショットブラストに先立ってICタグ保護構造10A,10Bをガス容器80から外す、といった対応をすることが考えられる。しかしながら、このような再度のICタグ保護構造10A,10Bの取り付けは、非常に手間が掛かるものとなっている。また、ICタグ保護構造10A,10Bがショットブラストによって取れたり、またはショットブラストに先立って取り外した際に、ガス容器80とICタグ保護構造10A,10Bとを確実に対応付けするための管理が必要であるが、ガス容器80の個数が多い場合には、その管理が非常に煩雑となる。
また、ショットブラストを行うのに先立って、ガス容器80からガスバルブ90が取り外され、その後に耐圧検査、容器内部洗浄等の各工程が行われ、その後にドレンボルトがバルブ取付孔82の雌ネジ部に捻じ込まれた状態で、ショットブラストが行われることが多い。そのため、仮にガスバルブ90側にICタグ保護構造10A,10Bを取り付けようとしても、上記のようにガスバルブ90がガス容器80から取り外されてしまうので、ガスバルブ90とガス容器80との対応付けを誤らないようにする等の管理が必要となってしまう。また、場合によっては、ガスバルブ90が所定年数経過した後であり、新品と交換されてしまう場合もある。
以上に鑑みて、本実施の形態のICタグ保護構造10Cでは、ガス容器80へのロウ付けを行わない状態で、ショットブラストに耐えられるといった、難易度の高い取付構成を、簡易な構成で実現している。具体的には、本実施の形態のICタグ保護構造10Cは、図10から図12に示すように、タグ取付部20Cと、リング状部40Cとを備えている。タグ取付部20Cは、図3および図4に示すようなUHF帯ICタグ体60と、HF帯ICタグ体70とを取り付ける部分である。また、ICタグ保護構造10Cは、これらのUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とを保護する部分である。
図13は、タグ取付部20Cの構成を示す側断面図である。図12および図13に示すように、タグ取付部20Cには、タグ設置部21Cと、上方保護部22Cと、側面防御部23Cと、正面防御部24Cと、後面防御部25Cとを備えている。これらのうち、タグ設置部21Cは、UHF帯ICタグ体60が取り付けられる部分である。なお、UHF帯ICタグ体60をタグ設置部21Cに取り付ける取付手法は、種々の手法を用いても良い。たとえば、UHF帯ICタグ体60をリベット留めにより取り付けても良く、ロウ付けを含めた溶接によって取り付けても良く、接着剤や接着シート等を用いて取り付けても良く、その他板バネ等による弾性的な押圧によって取り付けても良い。
また、上方保護部22Cは、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70を設置する空間部SPの上方を保護する部分である。そのため、上方保護部22Cは、タグ設置部21Cと対向するように設けられている部分である。この上方保護部22Cの下方側には、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70が設置されているため、上方保護部22Cは、ショットブラスト時の砥粒の衝突に対して、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70を保護するメインの部分となっている。
この上方保護部22Cには、複数または単数の貫通スリット22C1が設けられていて、この貫通スリット22C1を介して、HF帯域の電磁波を透過させることが可能となっている。この貫通スリット22C1の幅は、ショットブラストの砥粒の粒径よりも狭く設けられていて、この貫通スリット22C1を介して空間部SPの内部に砥粒が入り込むのが防止可能となっている。たとえば砥粒の直径が1mmである場合には、貫通スリット22C1の幅寸法として0.7mmか、またはそれ以下とすることが可能である。なお、貫通スリット22C1には、樹脂等のような電気的な絶縁材料が位置してゴミやチリの侵入を防ぐ構成としても良い。
なお、図13に示すように、上方保護部22Cには、HF帯ICタグ体70が取り付けられている。HF帯ICタグ体70を上方保護部22Cに取り付ける取付手法も、上述したUHF帯ICタグ体60のタグ設置部21Cに対する固定と同様に、種々の手法を用いても良い。
また、側面防御部23Cは、上述した空間部SPの側面側(Y1側、Y2側)を保護する部分であり、一対設けられている。また、正面防御部24Cは、上述した空間部SPを設置する空間部の正面側(X1側)を保護する部分である。さらに、後面防御部25Cは、上述した空間部SPの後面側(X2側)を保護する部分である。なお、後面防御部25Cは、上述したタグ設置部21Cに対して当接せず、所定の隙間を有するように設けられている。なお、かかる所定の隙間は、砥粒の直径よりも小さな隙間であることが好ましい。
なお、かかるタグ取付部20Cは、上述した第1の実施の形態における保護部材63等と同様に、ICインレット64の動作を助長するようなアンテナの役割も兼ねている。すなわち、タグ取付部20Cの寸法は、タグ取付部20Cの表面を流れるUHF帯の電波で共振状態となるように設定されている。また、タグ取付部20Cにおいては、上述した共振状態を実現するために高周波電流を絶縁している。そのため、タグ設置部21Cのうち、ガス容器80と接触する裏面側には、絶縁部材26Cが設けられている。
すなわち、タグ取付部20Cが金属製のガス容器80に直接接触してしまうと、電気的なショートが発生し、それによってアンテナとしての機能が阻害されてしまう。そこで、タグ設置部21Cの裏面側には、絶縁部材26Cが設けられていて、それによってタグ取付部20Cのアンテナとして機能を阻害しないようにしている。
かかる絶縁部材26Cとしては、耐熱性を有する材質であることが好ましく、また砥粒が衝突しても破損しない材質であることが好ましい。このような材質としては、たとえばシリコーンゴム系、ポリイミド系、エポキシ系、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PDAP(ジアリルフタレート)といった耐熱性を有する樹脂が挙げられる。しかしながら、それ以外のゴム系の材質や、樹脂製のフィルム系の材質、あるいはセラミックス等、種々の材質を用いることが可能である。
なお、タグ取付部20Cは、上述した構成には限られない。すなわち、ショットブラスト時に砥粒が空間部SPに入り込まない場合には、側面防御部23Cや後面防御部25Cのうちの少なくとも1つを省略する構成を採用しても良い。また、図13に示す構成では、UHF帯ICタグ体60はタグ設置部21Cに取り付けられると共に、HF帯ICタグ体70は上方保護部22Cに取り付けられる構成を採用している。しかしながら、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の双方をタグ設置部21Cに取り付ける構成を採用しても良く、またこれらの双方を上方保護部22Cに取り付ける構成を採用しても良い。
また、側面防御部23Cや後面防御部25Cを設けるのに代えて、図14および図15に示す構成を採用しても良い。図14は、タグ設置部21Cの一部を切り起こして、側面防御部23Cに相当する板状部分(板状防壁部23C1とする)と、後面防御部25Cに相当する板状部分(板状防壁部25C1とする)を形成した場合を示す斜視図である。なお、板状防壁部23C1と板状防壁部25C1の間の隙間は、砥粒の直径よりも小さいことが好ましい。
また、図15は、図14と同様にタグ設置部21Cの一部を切り起こして、側面防御部23Cに相当する柱状部分(柱状防壁部23C2とする)と、後面防御部25Cに相当する柱状部分(柱状防壁部25C2とする)を形成した場合を示す斜視図である。なお、柱状防壁部23C2と柱状防壁部25C2の間の隙間、隣り合う柱状防壁部23C2の隙間、および隣り合う柱状防壁部25C2の隙間は、砥粒の直径よりも小さいことが好ましい。
かかる板状防壁部23C1,25C1によっても、ショットブラスト時にHF帯ICタグ体70に砥粒が衝突するのを防止可能となる。また、柱状防壁部23C2,25C2によっても、ショットブラスト時にHF帯ICタグ体70に砥粒が衝突するのを防止可能となる。なお、図14および図15に示す例では、HF帯ICタグ体70を保護する場合について図示しているが、UHF帯ICタグ体60についても、図14および図15に図示した構成を用いて保護することは勿論可能である。
なお、上方保護部22CにUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の双方を取り付ける構成を採用する場合、タグ設置部21Cを省略する構成を採用することもできる。この場合には、タグ取付部20Cのうちガス容器80と接触する部位に、上述した絶縁部材26Cと同様の絶縁部材を設ける必要がある。
次に、リング状部40Cについて説明する。リング状部40Cは、環状に設けられている部分であり、その一部にタグ取付部20Cが一体的に設けられている。リング状部40Cは、上述した逃げ溝81bに取り付けられる部分であるが、その取付態様は、逃げ溝81bに対して固定されず、自在に移動可能に取り付けられている。そのため、図11に示すような取付態様では、リング状部40Cのリング孔41の内径は、雄ネジ部81aの外径(ネジ山までの直径)よりも小さくなるように設けられている。
なお、逃げ溝81bにリング状部40Cを容易に取り付けるために、図16に示すような構成を採用しても良い。図16に示す構成では、リング状部40Cは連続的ではなく一部が切り欠かれた合口部42を有する形状に設けられている。そして、その合口部42の近傍には、対向する一対の対向板部43が設けられていて、一対の対向板部43の一方には挿通孔43a、他方にはネジ孔43bが設けられている。そのため、ネジNを捻じ込むことで、リング孔41の内径を狭めることが可能となる。なお、ネジ孔43bを設けずに、ナットにて固定等しても良い。
なお、このような取付手法を採用せずに、別途の取付手法を採用しても良い。たとえば、リング状部40Cに内径側に折り曲げ可能な折り曲げ部位を少なくとも1つ(好ましくは3つ以上)設け、逃げ溝81bに配置した後にその折り曲げ部位を折り曲げることで、リング状部40Cが逃げ溝81bから抜けるのを防止しても良い。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Cによると、ガス容器80に対してショットブラストを行う場合、砥粒はICタグ保護構造10Cにも衝突する。しかし、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70は、タグ取付部20Cによって保護されている。加えて、本実施の形態のICタグ保護構造10Cは、ガス容器80に固定されてはおらず、逃げ溝81bを中心として自在に回転可能に設けられている。そのため、ショットブラストの際には、砥粒が噴射される方向から逃げるように、ICタグ保護構造10Cが回転することが可能となる。たとえば、砥粒の噴射方向に対して、ネック部81を挟んで反対側にタグ取付部20Cが位置するように、ICタグ保護構造10Cは回転することができる。
このため、ショットブラストの際の衝撃を緩和することが可能となる。加えて、ICタグ保護構造10Cが回転することで、タグ取付部20Cが特定の位置に留まらない。そのため、ショットブラストに際して、たとえばタグ取付部20Cの影になる等によって塗装剥がしを行い難い部位が存在しなくなり、ガス容器80の全面に対して漏れなく塗装剥がしを実現することができる。
また、ロウ付けにてICタグ保護構造10A,10Bを固定する方法の場合、ロウ付けに際して用いられる、銀ロウや銅ロウといったロウ材が、砥粒として主に用いられる鉄球等と比較して強度的に弱く、そのためショットブラストの際に、ICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80から取れてしまう場合がある。また、ICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80にロウ付けで取り付ける場合には、法律で定められた点検までの間の長期の使用によって、その取付強度が弱まっていることも多い。その場合、ショットブラストの際に、ICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80から取れてしまう場合がある。
このようなICタグ保護構造10A,10Bがガス容器80から取れてしまうのを防止するためには、ロウ付けの取付強度を、一層強くする必要がある。また、長期に亘って、取付強度を維持するようなロウ付けの工夫も必要となる。
しかしながら、本実施の形態のICタグ保護構造10Cでは、取付強度を強くする等の方向から発想を転換して、ICタグ保護構造10C自体が移動する(回転する)ように構成している。そのため、上述したように、ICタグ保護構造10Cの回転によって衝撃を緩和可能であり、またガス容器80の全面に対してもれなく塗装剥がしを実現することができる。
また、ICタグ保護構造10A,10Bをガス容器80にロウ付け等で取り付ける場合には、ガス容器80の清掃、フラックスの塗布後に、ロウ材を用いてロウ付けを行う必要があり、取り付けの手間が掛かる状態となっている。しかしながら、ICタグ保護構造10Cの取り付けは、逃げ溝81bにICタグ保護構造10Cを位置させた後に、たとえば図16に示すようにネジを捻じ込むだけで、ガス容器80に取り付けられる。そのため、取り付けの工数を大幅に削減することが可能となる。
また、ICタグ保護構造10Cにおいては、ロウ付け等のようなショットブラストの際にガス容器80から外れてしまう不具合を防止可能となる。しかも、長期に亘ってガス容器80を使用しても、リング状部40Cが破損しない限りは、その取付状態を維持可能となる。このように、ICタグ保護構造10Cがガス容器80から外れてしまうのを防止可能となるため、ガス容器80とICタグ保護構造10Cの対応付けのための管理が不要となり、そのような管理工数も削減可能となる。
なお、本実施の形態のICタグ保護構造10Cの発明の要点は、次のようになっている。すなわち、砥粒材を衝突させるショットブラストが実行される環境に取り付けられるICタグ保護構造10Cであって、
第1ICチップ(ICチップ642)および第1コイルアンテナ(コイルアンテナ643)を有し、第1周波数に対応した第1タグ(UHF帯ICタグ体60)と、
第2ICチップ(ICチップ72)および第2コイルアンテナ(コイルアンテナ75)を有し、第1周波数とは異なる帯域の第2周波数に対応した第2タグ(HF帯ICタグ体70)とを取り付けているタグ取付部20Cと、
このタグ取付部20Cに連結されると共に、ガス容器80のネック部81の外周側に対して環状に囲んで取り付けられるリング状部40Cと、を備え、
タグ取付部20Cは金属を材質とすると共に砥粒材の衝突に対する耐衝撃性を有する厚みを備え、かつ電磁波を通過させることが可能な隙間(貫通スリット22C1、上方保護部22Cと側面防御部23Cの間、側面防御部23Cと正面防御部24Cの間、側面防御部23Cと後面防御部25Cの間、側面防御部23Cとタグ設置部21Cの間等)を有するように形成されていて、
リング状部40Cはネック部81に対して固定されずに回転自在に取り付けられる、ことを特徴としている。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「D」を附して説明する。図17は、第4の実施の形態に係るICタグ保護構造10Dのうち、タグ取付部20Dを示す平面図であり、着脱取付部100Dがタグ取付部20Dから外れている状態を示す図である。図18は、同じくタグ取付部20Dを示す平面図であり、着脱取付部100Dがタグ取付部20Dに取り付けられている状態を示す図である。
本実施の形態のICタグ保護構造10Dは、基本的には上述の第3の実施の形態に係るICタグ保護構造10Cと共通である。そのため、以下の説明では、ICタグ保護構造10Cとの相違点について述べることとする。
本実施の形態のタグ取付部20Dは、HF帯ICタグ体70が着脱可能に設けられている。具体的には、タグ取付部20Dの正面防御部24Dには、開口部24D1が設けられている。そして、この開口部24D1を介して、着脱取付部100Dが着脱自在に設けられている。着脱取付部100Dは、HF帯ICタグ体70を取り付けている。すなわち、着脱取付部100Dには、板状のタグ設置部101Dが設けられていて、そのタグ設置部101DにHF帯ICタグ体70が取り付けられている。
また、タグ設置部101Dの正面側(X1側)には、開口部24D1を塞ぐような閉塞部材102Dが設けられている。そのため、閉塞部材102Dは、開口部24D1よりも上下方向(Z方向)および幅方向(Y方向)の長さが長く設けられていて、開口部24D1を十分に閉塞可能となっている。
この閉塞部材102Dの幅方向(Y方向)の両端部には、付勢バネ部103Dが設けられている。図17および図18に示す構成では、付勢バネ部103Dは、閉塞部材102Dの一部を折り曲げることで構成されている。そのため、閉塞部材102Dの材質としては、たとえばSUS304等のようなステンレス鋼や、チタン、アルマイト処理がされたアルミニウム等のような錆び難い金属が好適である。
図19は、付勢バネ部103Dの構成を拡大して示す平面図であり、撓み前の状態を実線で示すと共に撓み後の状態を二点鎖線で示す図である。図19に示すように、付勢バネ部103Dは、空間部SP(図17および図18参照)の内部側に向かって突出する突出部103D1が設けられている。突出部103D1は、タグ取付部20Dの側面防御部23Dに存在する窓状の切欠部23D1に差し込まれ、突出部103D1の差し込み状態では付勢バネ部103D全体の付勢力によって着脱取付部100Dが抜け難い状態となっている。
図19に示す構成では、突出部103D1は、閉塞部材102Dの端部側を折り曲げて構成されている。また、突出部103D1は、付勢バネ部103DのX2側の端部から空間部SPの内部側に向かいつつ、再びX1側かつ空間部SPの外部側に向かうように折り曲げられている。
この付勢バネ部103Dが撓む場合、図17に二点鎖線で示すように、突出部103D1で囲まれた空間部の面積が小さくなるように変形する。また、閉塞部材102Dの端部における付勢バネ部103Dの折り曲げ部位を支点(支点Rとする)として、付勢バネ部103Dは全体的に撓む。それによって、切欠部23D1への突出部103D1の差し込みや、その逆の取り外しが可能となる。
なお、突出部103D1の形状は、図20に示すような形状とすることも可能である。図20に示す構成では、突出部103D1には、抜け止めとして機能する抜止部103D2が設けられていて、103D2が切欠部23D1の縁部に衝突することで、着脱取付部100Dがタグ取付部20Dから容易には外れない構成となっている。
なお、仮に悪意のある第三者が、着脱取付部100Dを強引に外す場合も考えられ、その場合には、当初装着されていたHF帯ICタグ体70とは別のHF帯ICタグ体70を装着することも想定される。しかしながら、本実施の形態のICタグ保護構造10Dには、UHF帯ICタグ体60も存在している。このため、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70との間で、ペアリングを行うことにより、別のHF帯ICタグ体70が装着された場合に、正しいHF帯ICタグ体70が取り付けられていないことを判定することができる。
具体的には、UHF帯ICタグ体60のICチップ642や、HF帯ICタグ体70のICチップ72には、製造時には書き込みが可能であるがその後は書き込みが不能なTID領域が設けられていて、そのTID領域にはチップ固有の番号(固有番号とする)が書き込まれている。そこで、UHF帯ICタグ体60にはHF帯ICタグ体70の固有番号を、たとえばパスワードロックした状態で、ユーザーメモリ領域等に記憶させておく。このようにすれば、UHF帯ICタグ体60に記憶されている真正のHF帯ICタグ体70の固有番号と、現在装着されているHF帯ICタグ体70の固有番号とを読み取って比較することで、正しいHF帯ICタグ体70が装着されているか否かを判定することができる。
なお、次のようなペアリング手法を採用しても良い。すなわち、UHF帯ICタグ体60の固有番号を、たとえばパスワードロックした状態で、HF帯ICタグ体70のユーザーメモリ領域等に記憶させておくようにしても良い。この場合にも、HF帯ICタグ体70に記憶されている真正のUHF帯ICタグ体60の固有番号と、現在読み取りが可能なUHF帯ICタグ体60の固有番号とを読み取って比較することによって、正しいHF帯ICタグ体70が装着されているか否かを判定することができる。なお、UHF帯ICタグ体60の固有番号をHF帯ICタグ体70のユーザーメモリ領域に記憶させ、HF帯ICタグ体70の固有番号をUHF帯ICタグ体60のユーザーメモリ領域に記憶させるようにすれば、一層好ましい。
ここで、HF帯ICタグ体70を交換する場合には、専用の書き込み可能な端末装置を用いて、UHF帯ICタグ体60のユーザーメモリ領域に記憶されているHF帯ICタグ体70の固有番号を新たな固有番号に書き換えても良く、また新たなHF帯ICタグ体70のユーザーメモリ領域に、既に存在しているUHF帯ICタグ体60の固有番号を書き加えても良い。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Dによると、上述した第3の実施の形態におけるICタグ保護構造10Cの作用効果に加えて、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、着脱取付部100Dはタグ取付部20Dに対して着脱自在に設けられている。そのため、HF帯ICタグ体70の寿命が到来する一方で、UHF帯ICタグ体60の寿命が未だ到来していない場合には、HF帯ICタグ体70のみを交換することができる。
すなわち、現状製品化されているUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とを比較すると、ケース体71や保護材73等の材質に起因して、HF帯ICタグ体70の方が、寿命が短い(たとえば寿命が5年等)。一方で、UHF帯ICタグ体60は、金属製の保護部材63で覆われているので、長寿命となっている(たとえば寿命が20年等)。そのため、UHF帯ICタグ体60は未だ使用できるにも拘わらず、HF帯ICタグ体70は交換する必要が生じる。しかしながら、着脱取付部100Dがタグ取付部20Dに対して着脱可能に設けられている。そのため、HF帯ICタグ体70のみを交換することが可能となる。
また、着脱取付部100Dには付勢バネ部103Dが設けられていて、その付勢バネ部103Dには突出部103D1が設けられている。そのため、付勢バネ部103Dの付勢力に抗しながら切欠部23D1に突出部103D1を差し込むだけで、着脱取付部100Dをタグ取付部20Dに容易に取り付けることが可能となる。
また、上述のようなペアリングを実行することにより、装着された着脱取付部100Dに搭載されているHF帯ICタグ体70が、真正のHF帯ICタグ体70であるか否かを判定することも可能となる。
なお、本実施の形態のICタグ保護構造10Dの発明の要点は、次のようになっている。すなわち、砥粒材を衝突させるショットブラストが実行される環境に取り付けられるICタグ保護構造10Dであって、
第1ICチップ(ICチップ642)および第1コイルアンテナ(コイルアンテナ643)を有し、第1周波数に対応した第1タグ(UHF帯ICタグ体60)と、第2ICチップ(ICチップ72)および第2コイルアンテナ(コイルアンテナ75)を有し、第1周波数とは異なる帯域の第2周波数に対応した第2タグ(HF帯ICタグ体70)とを取り付けているタグ取付部20Dと、
このタグ取付部20Dに連結されると共に、ガス容器80のネック部81の外周側に対して環状に囲んで取り付けられるリング状部40Dと、を備え、
タグ取付部20Dは金属を材質とすると共に砥粒材の衝突に対する耐衝撃性を有する厚みを備え、かつ電磁波を通過させることが可能な隙間(貫通スリット22D1、上方保護部22Dと側面防御部23Dの間、側面防御部23Dと正面防御部24Dの間、側面防御部23Dと後面防御部25Dの間、側面防御部23Dとタグ設置部101Dの間等)を有するように形成されていて、
リング状部40Dはネック部81に対して固定されずに回転自在に取り付けられ、
さらに第2タグ(HF帯ICタグ体70)は、着脱取付部100Dに搭載された状態でタグ取付部20Dに取り付けられると共に、この着脱取付部100Dはタグ取付部20Dに対して着脱自在に設けられている、ことを特徴としている。
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図21は、第5の実施の形態に係るICタグ保護構造10Eの構成を示す斜視図であり、ガス容器80から外された状態を示す図である。図22は、ICタグ保護構造10Eがガス容器80に取り付けられた状態を示す斜視図である。図23は、ICタグ保護構造10Eを拡大して示す斜視図である。
図21から図23に示すように、ICタグ保護構造10Eは、第1リングユニット110Eと、第2リングユニット120Eと、タグ保護カバー130Eとを備えている。第1リングユニット110Eは、環状のリング状部111Eを備えていて、そのリング状部111Eの一部にUHF帯ICタグ体60が取り付けられている。同様に、第2リングユニット120Eも、環状のリング状部121Eを備えていて、そのリング状部121Eの一部にHF帯ICタグ体70が取り付けられている。
かかる第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eとは、別個の状態で逃げ溝81bに配置される。そのため、本実施の形態では、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、別個独立して移動可能な状態で、逃げ溝81bに配置されることになる。
なお、第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eとは、リング状部111E,121E以外に、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70を覆うカバー部を有する構成としても良い。しかしながら、このカバー部は、ショットブラストに耐えるだけの強度を有する必要はなく、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70を外部環境から保護することを目的とするものであり、またUHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70に向かう電磁波を十分に通過可能であることが必要である。
また、タグ保護カバー130Eは、第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eとを保護するための部材である。このタグ保護カバー130Eは、筒状の筒状部131Eを備えているが、その筒状部131Eの上底部131E1から下方に向かい、中心軸132Eが延伸している。中心軸132Eは、上述したバルブ取付孔82に差し込まれる部分である。なお、中心軸132Eは、バルブ取付孔82の雄ネジ部には捻じ込まれない。そのため、タグ保護カバー130Eは、中心軸132Eを中心として、自在に回転可能となっている。
また、タグ保護カバー130Eの下方には、図示を省略する抜け止めが設けられている。抜け止めは、たとえば筒状部131Eの下端側に突出部を形成し、その突出部を逃げ溝81bの内径側に折り曲げる等しても良い。しかしながら、抜け止めとしては、その他種々の構成を採用することが可能である。
また、タグ保護カバー130Eには、保護鍔部133Eが設けられている。保護鍔部133Eは、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70を覆う部分である。それにより、ショットブラスト時に、鉄球等のような砥粒がUHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70に直接衝突するのを防止可能としている。
この保護鍔部133Eの両側部の下端側からは、当接突起134Eが突出している。当接突起134Eは、UHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70に衝突する部分となっている。そのため、タグ保護カバー130Eが回転する場合には、当接突起134EがUHF帯ICタグ体60やHF帯ICタグ体70に衝突する。それにより、第1リングユニット110Eおよび第2リングユニット120Eも、タグ保護カバー130Eの回転に伴って回転する。
なお、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とが重ねられる状態で第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eとを配置しても良い。しかしながら、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とが周方向で異なる角度に位置するように配置しても良い。たとえば、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とが、周方向において位置する角度を若干異ならせて、それらの一部が重なる状態で配置しても良く、それらが周方向で全く重ならない状態で配置しても良い。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Eによると、上述した第4の実施の形態におけるICタグ保護構造10Dに加えて、次のような作用効果を生じさせることができる。すなわち、第3の実施の形態におけるICタグ保護構造10Cと比較すると、タグ取付部20Cに対応する部分の構成を簡易化することが可能となる。すなわち、ICタグ保護構造10Cにおいては、金属製のタグ取付部20Cにより、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70を保護する構成を採用しているので、タグ取付部20Cは、ショットブラストに耐えるだけの強度を有する必要がある。
しかしながら、本実施の形態では、第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eは、そのような強度を有する必要がなく、タグ保護カバー130Eがショットブラストに耐えるだけの強度を有していれば良い。そのため、第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eの構成を簡素化することが可能となる。
また、タグ保護カバー130Eがショットブラストに耐えるだけの強度を有する必要はあるものの、そのタグ保護カバー130Eは、特定の第1リングユニット110Eや特定の第2リングユニット120Eに対応付けられている訳ではなく、あるガス容器80のショットブラストが完了した後には、直ぐに取り外して別のガス容器80のショットブラストのために用いることが可能となる。すなわち、1つのタグ保護カバー130Eを使いまわすことにより、多数の第1リングユニット110Eや特定の第2リングユニット120Eの保護に用いることができる。そのため、ICタグ保護構造10Eにおいては、全体的な製造コストを低減することが可能となる。
なお、ショットブラストを実行しているときには、タグ保護カバー130Eは、第1リングユニット110Eおよび第2リングユニット120Eと共に、砥粒の衝突の衝撃によって自在に回転可能となっている。そのため、砥粒の衝突した場合の衝撃を逃がすことが可能となっている。
また、タグ保護カバー130Eを容易に外すことができ、ショットブラストが終了した後にはこのタグ保護カバー130Eを取り外してガスバルブ90をバルブ取付孔82に取り付ける。その場合には、第1リングユニット110Eと第2リングユニット120Eとは、タグ保護カバー130Eで覆われない状態となるので、外部の通信端末との間で電磁波を良好に送受信することが可能となる。
さらに、本実施の形態のICタグ保護構造10Eでは、HF帯ICタグ体70の寿命が到来する一方で、UHF帯ICタグ体60の寿命が未だ到来していない場合には、HF帯ICタグ体70を搭載している第2リングユニット120Eのみを外して、新たな第2リングユニット120Eを取り付けるだけで済む。そのため、第4の実施の形態で述べたような着脱取付部100Dや、その着脱取付部100Dを装着するための開口部24D1が不要となり、構成を簡素化することができる。
なお、本実施の形態のICタグ保護構造10Eの発明の要点は、次のようになっている。すなわち、砥粒材を衝突させるショットブラストが実行される環境に取り付けられるICタグ保護構造10Eであって、
第1ICチップ(ICチップ642)および第1コイルアンテナ(コイルアンテナ643)を有し、第1周波数に対応した第1タグ(UHF帯ICタグ体60)を取り付けていると共に、ガス容器80のネック部81の外周側に対して環状に囲んで取り付けられるリング状部111Eを備える第1タグ取付体(第1リングユニット110E)と、
第2ICチップ(ICチップ72)および第2コイルアンテナ(コイルアンテナ75)を有し、第1周波数とは異なる帯域の第2周波数に対応した第2タグ(HF帯ICタグ体70)を取り付けていると共に、ガス容器80のネック部81の外周側に対して環状に囲んで取り付けられるリング状部121Eを備える第2タグ取付体(第2リングユニット120E)と、
ガス容器80に対して回転自在に設けられているタグ保護カバー130Eと、
を備え、タグ保護カバー130Eは、保護鍔部133Eと、この保護鍔部133Eの下方側から突出する当接突起134Eを備えていて、保護鍔部133Eは第1タグ取付体(第1リングユニット110E)および第2タグ取付体(第2リングユニット120E)を覆い、
当接突起134Eはタグ保護カバー130Eが回転した場合に第1タグ取付体(第1リングユニット110E)と第2タグ取付体(第2リングユニット120E)のうちの少なくとも一方に衝突してこれらを伴った回転を実現する、ことを特徴としている。
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における特有の構成については、符号の後にアルファベット「A」ではなく「F」を附して説明する。図24は、第6の実施の形態に係るICタグ保護構造10Fの分解斜視図である。図25は、ICタグ保護構造10Fの構成を示す斜視図である。
図24および図25に示す構成は、図12等で示したICタグ保護構造10Cの変形例に対応する。本実施の形態のICタグ保護構造10Fも、タグ取付部20Fと、リング状部40Fを有している。また、ICタグ保護構造10Fは、耐候性カバー150Fと、剛体カバー160Fとを有している。タグ取付部20Fは、金属の板状部材から構成されていて、リング状部40Fに対して、たとえば溶接等により一体的に固定されている。
なお、タグ取付部20Fには、上述したUHF帯ICタグ体60と、HF帯ICタグ体70とが取り付けられている。そのうち、UHF帯ICタグ体60は、たとえばボルトや溶接といった手法により、タグ取付部20Fに取り付けられている。また、HF帯ICタグ体70は、取付治具140Fを介してタグ取付部20Fに取り付けられている。
図26は、取付治具140Fの構成を示す斜視図である。図26に示すように、取付治具140Fは、リング状の抑え部141Fを備えている。図25に示すように、抑え部141Fは、HF帯ICタグ体70に当接し、そのHF帯ICタグ体70が、タグ取付部20Fから離れるように移動するのを抑制する部分である。なお、図24に示すように、抑え部141Fは、その一部が切り欠かれた構成を採用しても良い。そのような切欠部を有する構成とすることで、外部の端末との間で、無線通信を一層良好に行うことが可能となる。
また、抑え部141Fからは、脚部142Fが延伸している。脚部142Fは、HF帯ICタグ体70がタグ取付部20Fに取り付けれるためのスペースを確保しつつ、取付治具140Fをタグ取付部20Fに固定するための部分である。また、脚部142Fは、タグ取付部20Fに沿ってHF帯ICタグ体70が移動するのを防止するための部分でもある。この脚部142Fは、図26に示す構成では3本設けられているが、何本設けられていても良い。この脚部142Fは、タグ取付部20Fに設けられている取付孔20F1に挿入される。そして、タグ取付部20Fの裏面側にて、脚部142Fが折り曲げられることで、取付治具140Fがタグ取付部20Fに取り付けられ、その取付治具140Fを介して、HF帯ICタグ体70が取り付けられる。
なお、図示は省略するが、タグ取付部20Fのうち、HF帯ICタグ体70が取り付けられている部位の下面側には、開口部20F2が設けられている。この開口部20F2の存在により、通信距離が短いHF帯ICタグ体70と、外部の端末との間で、無線通信を良好に行うことができる。なお、タグ取付部20Fには、その他の開口部が存在する構成を採用しても良い。
リング状部40Fは、上述したリング状部40Cと同様に、環状に設けられている部分である。なお、図24に示す構成では、リング状部40Fのうちタグ取付部20Fを取り付けている部位には、環状の切れ目である切れ目部41Fが設けられている。この切れ目部41Fの存在により、外部との間で電磁波の送受信を一層良好にしている。
また、図24に示すように、タグ取付部20Fは、耐候性カバー150Fで覆われる。この耐候性カバー150Fは、屋外の環境下から、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70を保護するためのものである。そのため、耐候性カバー150Fは、対向性を有する材質から形成されている。しかも、外部の端末と、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70との間での無線通信への影響を軽減するために、耐候性カバー150Fは、樹脂を材質として形成されている。
なお、ここでの耐候性とは、太陽光中の紫外線、熱、雨水、酸性雨といった酸化のダメージを生じさせるものに、長期に亘って耐性を有する者が挙げられる。そのため、耐候性カバー150Fの材質である樹脂としては、たとえば、テフロン(登録商標)、アクリル、ポリカーボネート、塩化ビニル等が挙げられる。
この耐候性カバー150Fは、図24における奥側(タグ取付部20F側)が開口する箱型に設けられていて、その開口部分からタグ取付部20Fを挿入することにより、タグ取付部20Fに取り付けられているUHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70を保護することを可能としている。
また、タグ取付部20Fおよびリング状部40Fには、剛体カバー160Fが取り付けられる。剛体カバー160Fは、強度が強い、たとえばSUS304等のようなステンレス鋼等の金属を材質として形成されている。そして、剛体カバー160Fは、ショットブラストの際に、鉄球等の砥粒が衝突しても、その衝撃に耐えられるだけの強度を有している。
図25に示す構成では、剛体カバー160Fは、リング状部40Fに取り付けられると共に、円筒状の円筒状部161Fを有している。また、剛体カバー160Fは、円筒状部161Fに連続するように、タグ取付部20Fを覆う箱状部162Fを有している。
なお、箱状部162Fは、ステンレス鋼等の板材を折り曲げて、上方保護部162F1、側面防御部162F2、正面防御部162F3等を形成しているが、たとえば側面防御部162F2と正面防御部162F3の間に、電磁波が通過する一方で、鉄球等のような、ショットブラストの際に用いられる砥粒が通過しない程度の、隙間が存在するように設けられている。ただし、上述したように、切れ目部41Fや取付孔20F1、開口部20F2等のような電磁波が通過可能な部分が存在することにより、このような隙間を設けない構成を採用しても良い。
また、上述した円筒状部161Fには、中心孔161F1が設けられている。この中心孔161F1は、バルブ取付孔82と挿通する部分である。なお、この中心孔161F1は、バルブ取付孔82よりも直径が大きくなるように設けられている。また、図24および図25に示すように、中心孔161F1の内周側には、軸受170Fが取り付けられている。そして、ガスバルブ90は、この軸受170Fの内周孔171Fに挿入される。そのため、軸受170Fを介して、ガスバルブ90の雄ネジ部が、バルブ取付孔82の雌ネジ部に捻じ込まれる。それにより、ICタグ保護構造10Fは、ガス容器80およびガスバルブ90に対して、容易に回転することが可能となっている。
<作用効果について>
以上のような構成のICタグ保護構造10Fによると、上述した第3の実施の形態におけるICタグ保護構造10Cに加えて、次のような作用効果を生じさせることができる。すなわち、第3の実施の形態におけるICタグ保護構造10Cと比較すると、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、耐候性カバー150Fと、剛体カバー160Fとで覆われている。そのため、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とが劣化し難くなり、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の長寿命化を図ることが可能となる。
すなわち、屋外の外部環境に設置されるガス容器80は、太陽光中の紫外線にさらされ、また熱や風雨にもさらされる。また、場合によっては、酸性雨のような酸化によるダメージも及ぶ場合がある。それに対して、本実施の形態では、耐候性カバー150Fでタグ取付部20Fを保護する構成を採用している。そのため、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とは、太陽光中の紫外線、熱、風雨にも長期に亘って耐えることが可能となり、また酸化のダメージからも、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70とを保護することが可能となる。
加えて、本実施の形態では、耐候性カバー150Fの外側に、剛体カバー160Fが設けられている。そのため、UHF帯ICタグ体60およびHF帯ICタグ体70は、剛体カバー160Fによって、ショットブラストの際の衝撃からも保護可能となる。
さらに、本実施の形態では、ICタグ保護構造10Fは、軸受170Fを介してネック部81に取り付けられている。そのため、ショットブラストの際に、砥粒がICタグ保護構造10Fに衝突すると、ICタグ保護構造10Fは容易に回転する。それにより、砥粒の衝突の際の衝撃を逃がし易い構成とすることができる。
なお、本実施の形態のICタグ保護構造10Fの発明の要点は、次のようになっている。すなわち、砥粒材を衝突させるショットブラストが実行される環境に取り付けられるICタグ保護構造10Fであって、
第1ICチップ(ICチップ642)および第1コイルアンテナ(コイルアンテナ643)を有し、第1周波数に対応した第1タグ(UHF帯ICタグ体60)と、
第2ICチップ(ICチップ72)および第2コイルアンテナ(コイルアンテナ75)を有し、第1周波数とは異なる帯域の第2周波数に対応した第2タグ(HF帯ICタグ体70)とを取り付けているタグ取付部20Fと、
このタグ取付部20Fに連結されると共に、ガス容器80のネック部81の外周側に対して環状に囲んで取り付けられるリング状部40Fと、を備え、
タグ取付部20Fは金属を材質とすると共に砥粒材の衝突に対する耐衝撃性を有する厚みを備えていて、
第1タグ(UHF帯ICタグ体60)と第2タグ(HF帯ICタグ体70)とは、ガス容器80が設置される屋外の外部環境にさらされる状況化でも耐候性を備える耐候性カバー150Fにより覆われていて、
さらに、耐候性カバー150F、第1タグ(UHF帯ICタグ体60)および第2タグ(HF帯ICタグ体70)は、ショットブラストの砥粒が衝突した際の衝撃にも耐性を有する剛体カバー160Fにより覆われている、
ことを特徴としている。
<変形例>
以上、本発明の第1から第6の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、第1周波数であるUHF帯域の周波数に対応したUHF帯ICタグ体60と、第2周波数であるHF帯域の周波数に対応したHF帯ICタグ体70とを用いる場合について説明している。しかしながら、第1周波数と第2周波数のうちの少なくとも一方は、その他の周波数に対応したICタグであっても良い。たとえば、LF帯域における周波数やマイクロ波の帯域の周波数に対応するICタグであっても良い。また、それぞれ異なる帯域の周波数に対応した3つ以上のICタグを備える構成を採用しても良い。
また、上述の実施の形態において、タグ取付板20Aや金属台座部34B,54Bの下面側(Z2側)に、さらに次のような構成を追加しても良い。すなわち、タグ取付板20Aや金属台座部34B,54Bの下面側(Z2側)に、アルミ箔や導電性のパテといった、導電性部材を配置しても良い。このように、タグ取付板20Aや、金属台座部34B,54Bの下面側(Z2側)に、導電性部材を配置する場合には、ICタグ保護構造10A,10Bの感度が良好となる傾向がある。
また、上述の実施の形態では、タグブロック50A,50Bと、タグ保護カバー30A,30Bの間には、隙間が存在するものとなっている。しかしながら、タグブロック50A,50Bと、タグ保護カバー30A,30Bの間にスペーサを介在させて、ほとんど隙間が存在しない構成を採用しても良い。
また、上述の実施の形態では、ICタグ保護構造10A,10Bは、ガス容器に取り付けられるものとしている。しかしながら、ICタグ保護構造10A,10Bは、ガス容器以外に取り付けられるものであっても良い。たとえば、各種の鋼製の配管、各種の薬品を貯蔵する容器を始めとして、種々のものにICタグ保護構造10A,10Bを用いることが可能である。
また、上述の第3から第6の実施の形態では、UHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70を取り付けているICタグ保護構造10C〜10Fについて説明している。しかしながら、ICタグ保護構造10C〜10Fは、その他のICタグ体を取り付けても良く、またUHF帯ICタグ体60とHF帯ICタグ体70の少なくとも1つを複数取り付けた構成を採用しても良い。
また、上述の第5の実施の形態のICタグ保護構造10Eでは、第1タグ取付体(第1リングユニット110E)と第2タグ取付体(第2リングユニット120E)という、2つのタグ取付体を備える構成となっている。しかしながら、第5の実施の形態に係る第5の実施の形態のICタグ保護構造は、1つのタグ取付体のみを備える構成を採用しても良く、3つ以上のタグ取付体を備える構成を採用しても良い。
たとえば、1つのタグ取付体のみを備える構成を採用する場合、たとえばタグ取付体がタグ設置部21Cやタグ設置部101D等と同様に複数のタグを搭載可能なタグ設置部を有するものとし、そのタグ設置部に、第1周波数に対応した第1タグ(UHF帯ICタグ体60)と、第1周波数とは異なる帯域の第2周波数に対応した第2タグ(HF帯ICタグ体70)とを搭載する構成としても良い。なお、複数のタグ取付体を採用する場合であっても、少なくとも1つのタグ取付体に、2つ以上のタグ(たとえば第1タグと第2タグ)を搭載する構成を採用しても良い。3つ以上のタグ取付体を備える構成を採用する場合、それぞれが異なる周波数に対応するタグを有する構成としても良い。