JP6489998B2 - プラズマ発生部およびプラズマスパッタ装置 - Google Patents
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Description
標準的な誘導結合プラズマ(ICP:inductively coupled plasma)ジェネレータでは、プラズマを取り囲むコイルを介して流れるRF電流が、プラズマ中に電磁流を誘起する。この電磁流が抵抗加熱により導電性のプラズマを加熱するため、定常状態に維持されるようになる。例えば、特許文献1に示すように、コイルを流れる電流は、インピーダンス整合回路網を介してコイルに結合するRFジェネレータに供給されるため、コイルはトランスの1次巻き線として作用する。プラズマは、トランスの単巻き(シングルターン)の2次巻き線として作用する。
先ずプラズマの発する1)光ダメージ、2)プラズマ電子による電気的ダメージ、3)プラズマの熱電子による熱ダメージがあるが、半導体の場合、1)光ダメージはある程度無視できるが2)、3)のダメージはデバイスに対して大きな不良要因となる。
2)のダメージは、プラズマのフレアの広がりにより電子がデバイスに到達することによりデバイスに電流が流れて破壊することになる。
また3)のダメージについて考察すると、標準的な誘導結合プラズマ(IPC)はプラズマを取り囲むコイルを介して流れるRF電流がプラズマ中に電磁流を誘起する。この電磁流が抵抗加熱により導電性のプラズマを加熱するため半導体基板を加熱してしまう。フィルムなどの基板材料や有機物などの熱に弱い材質で成膜などを行う際に大きな問題となる。例えば、PEN−Filmでは150℃以下、PET−Filmでは80℃以下、有機ELでは80℃以下が加熱温度の上限である。
前記各金属プレートに、一対の前記金属プレートが互いに対極となって両者間に電界を発生させるように、高周波電圧を給電する高周波電源が接続されていることを特徴とする。
図1は、実施形態のプラズマ発生部を有するプラズマスパッタ装置1を示す図である。
プラズマスパッタ装置1は、密閉構造の処理室2を備え、図示しない真空装置によって処理室2内を真空引きすることができる。
処理室2は、天板部2bと底板部2cとを有し、天板部2bよりも底板部2cの幅を小さくして底板部2cに対して傾斜させた両側の傾斜壁2a、2aを有しており、天板部2bおよび底板部2cは同じ幅(図示左右方向)で長さ方向(図示奥行き方向)に伸長している。すなわちこの実施形態では、断面略V型のチャンバーを備えている。
処理室2の天板部2b下面側には基板保持部4を有しており、図6に示すように、基板保持部4に下面を露出した状態で基板110を保持することができる。基板110は被堆積材に相当する。
本願発明では、上記傾斜角度が特定の角度に限定されるものではないが、上記傾斜角度は、鉛直方向でもよく、さらに鉛直方向+20度〜鉛直方向+45度の範囲が望ましく、さらには、鉛直方向+32度±10度の範囲が一層望ましい。
プラズマ発生部5では、板厚0.5〜5mmの二つの導電性の板状プレート50、51が、図4に示すように、第1の端縁E1、E1を向かい合わせにして互いに一定の間隔Gを有して長手方向に沿って並設されており、板状プレート50、51は、同一の平面上に沿った配置状態を有している。間隔Gは、特に限定されるものではないが、例えば10mm〜50mmを示すことができる。板状プレートは導電性を有するものであり、動作時の温度において耐久性を備える金属製の材料が通常使用される。ただし、板状プレートの材質が特定のものに限定されるものではない。
なお、板状プレートの板厚、幅、間隔は例示であって、本願発明を特定するものではない。供給する高周波電流や周波数などによっても異なるが、板厚は、出来るだけ薄く保ち電磁場がプレート表面に集中させたいとの理由で上記範囲が望ましい。また、幅は、厚み端点と表面との比を、電場を失わない程度に大きくしたいとの理由で上記範囲が望ましい。
さらに、間隔は、2枚のプレート間からガスを導入する事や、できるだけプレート表面近傍でプラズマを発生させたいとの理由で上記範囲が望ましい。また、高周波電圧としては、周波数1KHz〜24MHz(電力はプレートの大きさ、プレートの形状のほか、チャンバー内の気圧や、ガス種にも依存する)が好適に使用される。
基台53は、二つの金属プレート50、51の間に、間隔Gよりは幅を小さくした長尺形状の第1窪み部60が形成されており、該第1窪み部60の中央にはさらに窪みを設けた第2窪み部61が形成されている。第1窪み部60および第2窪み部61は、板状プレート50、51の長さと同じ長さを有している。
プラズマガス配管65は、処理室2の外部に伸びて図示しないプラズマガス供給部に接続されている。この実施形態では、プラズマガスとしてArが使用される。ただし、本願発明としては、プラズマガスの種別が特定のものに限定されるものではない。
上記第1窪み部60、第2窪み部61、長尺筒体62、通気スリット63、散気板64、プラズマガス配管65、図示しないプラズマ供給源によって、プラズマガス導入部6が構成されている。
なお、この実施形態では、プラズマ発生部の数を二つとしたが、その数は一つとすることも可能であり、また、チャンバーの構成や使用するアプリケーションにより任意数、位置で配置することが可能である。
本発明の特徴の1つに従ったプラズマ発生部によれば、スパッタリング中におけるマグネトロンの必要性を排除する。高密度プラズマであれば、ワークピースへのターゲット材料の堆積速度を高くするために十分なイオン化を実現することができ、これにより、マグネトロン磁界及びこれに付随するマグネトロン磁石に対する必要性を排除することができる。マグネトロンを排除することにより、ワークピースへの加熱を制御し50℃以下(常温)の成膜が可能となる。またワークピースへのターゲット材料の堆積の均一性も、向上が可能である。加えて、トレンチ状の構造体やコンタクトホール等の側壁カバレージも、向上が可能である。ただし、本発明としては、マグネトロンを利用するものを排除するものではなく、本発明の範囲内である。
ターゲット材保持部3に所望の材料のターゲット材100を保持し、基板保持部4に、所望の基板110を設置する。本発明においては、ターゲット材の材料の種別や基板の種別が特に限定されるものではない。
その後、処理室2内を図示しない真空装置で真空引きし、プラズマガス導入部6からArガスを処理室2内に導入し、反応ガス導入部7からO2ガスを処理室2内に導入する。さらに、高周波電源11によって通電線50a、51aに通電して板状プレート50、51間の空隙に高周波電界を発生させ、バイアス電源10によってターゲット材保持部3にバックバイアスを印加する。
一方、ターゲット材保持部3では、バイアス電圧が印加されており、上記で生成されたプラズマがターゲット材100側に引きつけられてターゲット材100がプラズマで叩かれる。この際に、プラズマの分散が抑えられ、かつプラズマ生成面は、ターゲット材100の表面に対し、鈍角を有する傾斜角度を有しているため、プラズマの流れは遠方には飛びにくくなり、ターゲット材100表面の中央側に偏ることはなく、高密度プラズマ領域がプラズマ発生部5の近傍に限定され、ターゲット材100表面の中央側よりもやや外側へのプラズマの流れが多くなる。
したがって、スパッタ粒子の飛行経路と高密度プラズマ領域を分離できて好ましい。
上記実施形態では、プラズマ発生部とターゲット材とをV型に配置することにより、プラズマによるAr分子のイオン化とスパッタ粒子の発生領域を別けることにより、「プラズマイオンでのAr分子のイオン化」と「スパッタ粒子による成膜」の効率を上げることが可能となる。また、スパッタ粒子に付着した熱電子の影響で基板温度が上がる現象を、より抑えることができる。
1)処理室の外壁にアース接地をする必要がなく、近接した対の電極間でガスの導入によりプラズマが発生するのでガスも効率的に使用することができ、また大電力を印加する必要がない。
2)プラズマの発生が板状プレート上の表面のみで行われ、デバイスに影響を与えないため、プラズマダメージが少ない。
3)プラズマの発生が板状プレート上の表面のみで行われ、デバイス上に影響を与えないため、熱的ダメージが少ない。このことは50℃〜常温域での低温成膜が可能で有ることを意味する。
4)プラズマの発生電極とガスの吹き出す口が近接しているため、ガス分子の存在確率への影響が少ない。
5)中央にスリット状に窪みをもうけ、その最底辺にガス吹き出し口を配置することにより低電力での放電が可能となる。
上記実施形態で説明した本発明のプラズマスパッタ装置を用いた。なお、実験チャンバー容量が30cm3、高周波電力300w入力とした。
基板上にサーモラベルを貼り、プラズマスパッタ装置の動作の結果、1時間の放電では50℃以下、6時間放電で100℃以下となる結果を得た。それに加えプラズマの発生源となっている2枚の板状プレートには当初、冷却のために水を流すためにパイプなどを必要としたが、プラズマの発生源自体の熱発生がほとんどないため冷却機構が不必要になり、よりシンプルな構造となっている。
2 処理室
2a 傾斜壁
3 ターゲット材保持部
4 基板保持部
5 プラズマ発生部
6 プラズマガス導入部
6a 窪み部
6b スリット
7 反応ガス導入部
10 バイアス電源
11 高周波電源
50 板状プレート
51 板状プレート
52 保護板
60 第1の窪み部
61 第2の窪み部
63 通気スリット
65 プラズマガス配管
100 ターゲット材
100a スパッタ粒子
110 基板
Claims (12)
- 少なくとも一対の金属プレートが、互いの第1の端縁間に間隔を有し、かつ前記第1の端縁の端縁側面を向かい合わせにし、互いのプレート表面を同一面方向に沿わせて並設され、
プラズマが発生する空間において、表面側が、プラズマガスが供給される空間に露出し、裏面側が、プラズマガスの供給がない空間または他部材が密着して空間に露出しない状態で配置され、前記第1の端縁間の空隙から前記金属プレートのプレート表面側に向けてプラズマガスを供給するプラズマガス供給部を有し、
前記各金属プレートに、一対の前記金属プレートが互いに対極となって両者間に電界を発生させるように、高周波電圧を給電する高周波電源が接続されていることを特徴とするプラズマ発生部。 - 前記金属プレートに、前記第1の端縁の長手方向に沿った通電部を有し、該通電部の両端が前記高周波電源の給電部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生部。
- 前記通電部が、前記第1の端縁と反対側にある第2の端縁に設けられていることを特徴とする請求項2記載のプラズマ発生部。
- 前記金属プレートにおける前記第1の端縁と前記第1の端縁と反対側にある第2の端縁の距離が10〜50mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- 前記一対の金属プレートが、同一の面上に位置していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- 前記面が平面であることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ発生部。
- 前記第1の端縁間の間隔が10〜50mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- 前記金属プレートは、前記間隔が長手方向において一定であることを特徴とする請求項7記載のプラズマ発生部。
- 前記金属プレートの板厚が0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- 前記プラズマガス供給部は、前記第1の端縁間の空隙から前記金属プレートの裏面側に位置するプラズマガス供給口を有し、該プラズマガス供給口は、前記空隙を通して前記金属プレートの表面側にのみプラズマガスを供給することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- 前記金属プレートの表面側を覆う誘電体からなる保護板を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプラズマ発生部。
- ターゲット材を保持するターゲット材保持部と、
請求項1〜11のいずれか1項に記載のプラズマ発生部と、
被堆積材を保持する被堆積材保持部と、を有することを特徴とするプラズマスパッタ装置。
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