JP6489729B2 - ガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法 - Google Patents

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本発明は、ガソリンエンジンをLPGやCNGなどの非ガソリン燃料用に改造する場合における、ガソリン代替燃料エンジンの点火制御方に関するものである。
組成・気化性等の特性がガソリンとは異なるLPG等の非ガソリン燃料を、火花点火エンジンの燃料に使用することは広く知られており、ガソリンとは特性の異なる非ガソリン燃料をインジェクタから吸気管路に噴射する噴射システムをエンジンに搭載するにあたり、エンジンの運転状態に応じて最適の燃料供給量を与える噴射量としてガソリン噴射システムを構成する電子制御ユニットに設定されているガソリン噴射システムを搭載している既存のエンジンに対しては、例えば特開2003−206773号公報に記載されているように、入力されたガソリン噴射量に基いてこれと同等の混合気を与える燃料噴射量を種々のデータを用いて所定の計算式で算出する、というきわめて簡単な機能をもたせた非ガソリン燃料用の電子制御ユニットを増設することで、既存のガソリン噴射システムをそのまま利用してガソリン代替燃料噴射システムを構築し、使用する燃料に対応したエンジンに改造することができる。
図3は、このような従来のエンジンの燃料噴射システムの配置図を示したもので、ガソリン代替燃料エンジンの点火制御装置を兼ねたガソリン代替燃料噴射制御用の電子制御ユニット3と非ガソリン燃料用のインジェクタ4をエンジン既設のガソリン噴射システムに増設したガソリン代替燃料噴射システムを示す配置図であり、クランク軸回転センサ7、カム軸回転センサ8、吸入空気量センサ9、スロットル開度センサ10、ノックセンサ11、エンジン冷却水温度センサ12により検出したエンジン運転状態を示す各データに基いて算出したガソリン噴射信号を出力し、改造前においてガソリン用インジェクタをこの噴射信号に応じたデューティサイクルで開閉動作させてエンジン要求流量のガソリンを噴射してエンジン1に供給し、且つ、イグナイタ内蔵の点火コイル装置6に最適なタイミングで点火信号を出力する既設のガソリン用電子制御ユニット2を、代替燃料用に改造したエンジン1に対応させるため代替する非ガソリン燃料用の電子制御ユニット3を増設し、ガソリン噴射信号Bを電子制御ユニット3の入力ポートJで受信させ、その内部で代替燃料に適した補正を行い、非ガソリン燃料用のインジェクタ駆動信号Kを出力してインジェクタ4を駆動制御するものとして、改造後においても高精度の排気性能を確保しようとするものである。
しかしながら、この従来技術においてLPGやCNGのようにガソリンとは燃焼速度が顕著に異なる代替燃料の場合は図4のグラフに示すように良好な熱効率を示す点火時期が大きく異なることから、ガソリンエンジンで最適に設定された点火時期T23をそのまま改造後のエンジンに適用すると、代替燃料に最適な点火時期T25に設定した場合と比べて熱効率が悪化するなどの問題がある。
これらの問題に対して、図5に示すように、ガソリン用の電子制御ユニット2と点火コイル装置6とを接続する配線を切断し、その代わりに非ガソリン燃料用の電子制御ユニット3内部で計算した点火時期および通電角を送信する配線を点火コイル装置6に接続することで、エンジン性能を良好に発揮させる手段が考えられる。
ところが、この電子制御ユニット3による点火制御においては、図6の点火制御に関するブロック図に示すように、エンジン負荷情報を検知するための吸入空気量センサ信号Cの入力、適切なタイミングで点火波形を生成処理(図6,322)するためのクランク軸回転センサ信号E,カム軸回転センサ信号F等の入力が不可欠となるため、代替燃料用の電子制御ユニット3に多くの入力ポートが必要となってその構成が複雑となりやすい。また、電子制御ユニット3内で点火時期基本値を演算するために、エンジンのあらゆる運転条件を実験確認に基いて設定する必要が生じる。そのため、実験確認および設定工数が上昇して電子制御ユニット3に関する設定・製造の手間が嵩み、そのためにコストアップを伴うという問題がある。
そこで、ガソリンエンジンをガソリン代替燃料エンジンに改造する場合に、追加する代替燃料用の電子制御ユニットの設定・製造に要する手間を軽減し低コストで点火時期制御を的確に行えるようにする目的で、ガソリンエンジンをガソリン燃料とは最適な点火時期が異なる非ガソリン燃料用のエンジンに改造する場合に、非ガソリン燃料用電子制御ユニットが検知したガソリン用点火信号を基に非ガソリン燃料の特性に応じて決定した点火時期修正時間で点火時期を前後に調整する、という比較的簡易な手段を採用したことにより、非ガソリン燃料に最適な点火制御を比較的容易に実現できるガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法が特開2008−14258号公報に提示されている。
この公報に提示されているガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法は、例えば図7に示すように、最終点火時期修正通電角度(δ)<0の場合には、対象となる一つ前の気筒のガソリン用点火信号(5N1)の立上り・立下り時間tdwを計測し、その立下りタイミング(81)で、t4=−t1、t3=tdwの計算を実行する(603)。そして、対象気筒のガソリン用点火信号(5P0)を立ち上げ、t3時間の間通電させる。これにより、ガソリン用点火信号の点火コイル装置6への通電時間φが一定だとすると、φ=tdwより、ガソリン用点火信号の点火立下り(84)よりも代替燃料用点火信号の立下り(85)が−t1時間遅れるため、狙い通りガソリン用点火信号よりもδ分、遅角側に点火時期を設定することができ、図8に示すように、最終点火時期修正通電角度(δ)>0の場合には、対象となる二つ前の気筒のガソリン用点火信号(5N2)の立下り(91)と、一つ前の気筒の立下り(92)の時間t5と、一つ前の気筒(5N1)のガソリン用点火信号の点火通電時間tdwを計測し、点火立下り(92)のタイミングで、t2=t5−tdw−t1を計算する。そして、この立下りタイミング(92)よりもt2時間経過した後、代替燃料の点火信号(5P0)をtdwの間通電する。これにより、ガソリン用点火信号の点火コイル装置6への通電時間が一定だとすると、φ=tdwより、ガソリン用点火信号の立下り(95)よりもt1時間前に代替燃料用点火信号が立ち下がる(94)ため、狙い通りガソリンよりもδだけ進角側に点火時期をずらして設定することができる。
しかしながら、前記特開2008−14258号公報に提示されているガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法において、エンジン回転数の急激な変化、即ち、前記公報に対しされている点火時期の調整が可能な範囲を超えるような急激なエンジンの回転変動があった場合には代替燃料用点火信号が遅れてしまい失火(ミスファイア)してしまうという問題が生じることになる。殊に、非ガソリ燃料は、気化させたガソリン燃料に比べて燃焼にくいという性質を有しているので点火時期が遅れると失火する原因となる。
特開2003−206773号公報 特開2008−14258号公報
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、特に、従来の非ガソリン燃
料用電子制御ユニットが検知したガソリン用点火信号を基に非ガソリン燃料の特性に応じ
て決定した点火時期修正時間で点火時期を前後に調整する、という手段では非ガソリン燃
料の点火制御が困難な程にエンジンの回転が急激に上昇した場合にもガソリン代替燃料
エンジンの点火制御を行うことが可能なガソリン代替燃料エンジンの点火制御方を提供するものである。
前記課題を解決するための、本発明は、エンジン運転状態に応じてガソリン用電子制御ユニットが出力するガソリン噴射信号を受信し該ガソリン噴射信号を基に非ガソリン燃料の噴射量を算出してインジェクタに駆動信号を出力する非ガソリン燃料用電子制御ユニットをエンジンに既設のガソリン噴射システムに増設するとともに、前記非ガソリン燃料用電子制御ユニットが、前記ガソリン用電子制御ユニットの出力するガソリン用点火信号を受信し、所定の方法で求めた点火時期修正時間で前記ガソリン用点火信号による点火時期のタイミングを前後に調整することにより、非ガソリン燃料に適合させた非ガソリン用点火信号を生成・出力して点火コイルによる点火を制御するガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法においてエンジン回転数の急激な上昇を検知したとき次に訪れるガソリン用点火時期または非ガソリン用点火時期のいずれか先行する点火時期のタイミングで前記非ガソリン用点火信号を生成・出力して点火コイルによる点火を制御することを特徴とする。
また、本発明において、例えば前記非ガソリン燃料用電子制御ユニットが、検知した前記ガソリン噴射信号を用いてエンジン回転数を判別し、このエンジン回転数を基に前記点火時期修正時間を補正することとすれば、エンジンの急激な回転数の上昇を検知することが可能であるばかりか、基準となるガソリン噴射信号を用いることにより、前記最先の点火時期としてガソリン用点火時期を用いることについてはそのまま使用できるなどの利点を有している。
本発明によれば、従来のエンジン運転状態に応じてガソリン用電子制御ユニットが出力するガソリン噴射信号を受信し該ガソリン噴射信号を基に非ガソリン燃料の噴射量を算出してインジェクタに駆動信号を出力する非ガソリン燃料用電子制御ユニットをエンジンに既設のガソリン噴射システムに増設するとともに、前記非ガソリン燃料用電子制御ユニットが、前記ガソリン用電子制御ユニットの出力するガソリン用点火信号を受信し、所定の方法で求めた点火時期修正時間で前記ガソリン用点火信号による点火時期のタイミングを調整することにより、非ガソリン燃料に適合させた非ガソリン用点火信号を生成・出力して点火コイルによる点火を制御するガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法において,エンジンの回転数の変化に伴う前後方向についての点火時期のずれの調整範囲を超えエンジン回転が急激に上昇したとしても直後のガソリン点火時期または非ガソリン点火時期において点火信号が発せられるので遅れることなく回転に合わせて点火することが可能である。
本発明における実施の形態である燃料噴射システムの配置図。 図1に示した実施の形態についての点火波形処理部における補正のための処理を示す波形図。 従来例における燃料噴射システムを示す配置図。 ガソリンと代替燃料との間の点火時期の違いによる熱効率の差を説明するためのグラフ。 従来例における燃料噴射システムを示す配置図。 従来例における非ガソリン用制御ユニットの動作を説明するためのブロック図。 従来例における点火波形処理部におけるδ<0の場合の処理を示す波形図。 従来例における点火波形処理部におけるδ>0の場合の処理を示す波形。
以下に、図面を参照しながら本発明における最良の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のガソリン代替燃料エンジンの点火制御装置を兼ねたガソリン代替燃料噴射制御用の電子制御ユニット3と非ガソリン燃料用のインジェクタ4をエンジン既設のガソリン噴射システムに増設したものであり、ガソリン代替燃料噴射システムを示す配置図である。本発明は、ガソリン用噴射制御装置である電子制御ユニット2とガソリン用インジェクタとを備えたガソリン噴射システムを搭載していた既存のガソリンエンジンを、ガソリン代替燃料エンジンに改造する場合に適用される。
ガソリン用噴射制御装置としての電子制御ユニット2は、クランク軸回転センサ7、カム軸回転センサ8、吸入空気量センサ9、スロットル開度センサ10、ノックセンサ11、エンジン冷却水温度センサ12により検出したエンジン運転状態を示す各データに基いて算出したガソリン噴射信号を出力し、改造前においてガソリン用インジェクタをこの噴射信号に応じたデューティサイクルで開閉動作させてエンジン要求流量のガソリンを噴射してエンジン1に供給し、且つ、イグナイタ内蔵の点火コイル装置6に最適なタイミングで点火信号を出力するものであって、このこと自体は周知の技術である。
そして、改造後において電子制御ユニット2からガソリン噴射信号Bを送信する配線を、非ガソリン燃料用噴射制御装置である電子制御ユニット3の入力ポートJに接続して受信させ、内部で使用する非ガソリン燃料の特性に対応した補正を行ってインジェクタ駆動信号Kを生成・出力し、非ガソリン燃料用のインジェクタ4を開閉制御するものであり、改造車においても高精度の排気性能を実現できる。
これに加えて、電子制御ユニット2から出力した点火信号Aを点火コイル装置6に送信する配線を途中で切断して電子制御ユニット3の入力ポートUに接続し、且つ、点火コイル装置6には電子制御ユニット3から延出された点火信号Rを送信する配線を接続している。
即ち、電子制御ユニット3は、図示しないCPU,ROM,RAM,複数の信号入出力部(インターフェース)等を備えたガソリン代替燃料エンジン噴射制御用の電子制御ユニットであるが、そのROMに以下に述べる本発明の特徴部分となるガソリン代替燃料エンジン用の点火制御プログラムを記憶しており、使用する非ガソリン燃料に適した内容の点火制御方法を実施するガソリン代替燃料エンジン用の点火制御装置を兼ねたものとなっている。
また、本実施の形態では、電子制御ユニット2とノックセンサ11とを接続する配線を途中で分岐させて入力ポートSを介して電子制御ユニット3に接続しノックセンサ信号Gを入力しているが、クランク軸回転センサ7、カム軸回転センサ8、吸入空気量センサ9、スロットル開度センサ10からの配線は接続されておらず、これらの入力ポートを廃しているが、これらのセンサを用いてエンジン回転数を検知してもよく、非ガソリン燃料用電子制御ユニットが受信した前記ガソリン噴射信号を用いてエンジン回転数の上昇状態を判別し、このエンジン回転数の上昇状態を基に前記点火時期修正時間を補正することによりエンジン回転数の急激な上昇を検知することが可能であればよい。
本実施の形態も、前記図5に示した従来例と同様に、図に示すように、ガソリン用の
電子制御ユニット2と点火コイル装置6とを接続する配線を切断し、その代わりに非ガソ
リン燃料用の電子制御ユニット3内部で計算した点火時期および通電角を送信する配線を
点火コイル装置6に接続することで、エンジン性能を良好に発揮させるものである。
図2(a)は図1に示した実施の形態についての通常の連続したエンジン回転の場合の火波形処理部における補正のための処理を示す波形図であり、例えば非ガソリン用点火信号P1の1つ前の気筒のガソリン用点火信号N1のガソリン用点火時期GS1について各種の補正事項により補正されて非ガソリン用に生成され非ガソリン用点火時期LS2
、同じくガソリン用点火時期GS2:非ガソリン用点火時期LS3、ガソリン用点火時期GS3:非ガソリン用点火時期LS4、・・・と所定の点火時間T1に応じてt1だけ非ガソリン用点火信号が送られる。
ところで、図2(a)のように連続してエンジンを運転している場合には問題ないが、エンジンの回転数が上昇した場合には、例えば前記図7や図8に示したように非ガソリン用点火信号の位置を前後に調節することにより対処することができるが、回転数の上昇が極めて大きく、前後に調節する程度では対処できない場合、例えば前記非ガソリン用点火時期LS2の後に急な回転数の上昇があった場合においても次に訪れる非ガソリン用点火時期はLS3であり、エンジン回転数に対して次の非ガソリン点火信号の時期が遅れてしまい失火の原因となっている。
そのため、本実施の形態では、このような場合に図2(b)に示したように次のガソリン用点火時期GS2または非ガソリン用点火時期LS3のいずれか直近のもの、本実施の形態では非ガソリン用点火時期LS2の後に急激にエンジン回転数が上昇した場合に次の非ガソリン用点火時期LS3ではなく直近のガソリン用点火時期GSの時期である非ガソリン用点火時期FS2に非ガソリン用点火信号を、非ガソリン燃料用ECU3から点火コイル装置6に送信することにより、急激なエンジン回転数の上昇にも対応することができるものである。尚、本実施の形態では例えば、ノックセンサ11とを接続する配線を途中で分岐させて入力ポートSを介して電子制御ユニット3に接続しノックセンサ信号Gを入力しているので、ノックセンサ11によりエンジン回転数の急激な上昇を検知して回転数の上昇が予め定めた範囲を超えた場合に定常の制御から本発明の制御に切り替えることが可能であるが、エンジン回転数の急激な上昇を他の各種のセンサーにより検知するものであってもよいことはいうまでもない。
また、エンジンの回転数が定常になった場合には元の図2(a)の制御に戻すものである。
1 エンジン、2,3 電子制御ユニット、4 インジェクタ、6 点火コイル装置、
7 クランク軸回転センサ、8 カム軸回転センサ、9 吸入空気量センサ、10 スロ
ットル開度センサ、11 ノックセンサ、12 エンジン冷却水温度センサ、30 マイ
コン、31 電気的負荷装置

Claims (2)

  1. エンジン運転状態に応じてガソリン用電子制御ユニットが出力するガソリン噴射信号を
    受信し該ガソリン噴射信号を基に非ガソリン燃料の噴射量を算出してインジェクタに駆動
    信号を出力する非ガソリン燃料用電子制御ユニットをエンジンに既設のガソリン噴射シス
    テムに増設するとともに、前記非ガソリン燃料用電子制御ユニットが、前記ガソリン用電
    子制御ユニットの出力するガソリン用点火信号を受信し、所定の方法で求めた点火時期修
    正時間で前記ガソリン用点火信号による点火時期のタイミングを前後に調整することによ
    り、非ガソリン燃料に適合させた非ガソリン用点火信号を生成・出力して点火コイルによ
    る点火を制御するガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法においてエンジン回転数の急激な上昇を検知したとき次に訪れるガソリン用点火時期または非ガソリン用点火時期のいずれか先行する点火時期のタイミングで前記非ガソリン用点火信号を生成・出力して点火コイルによる点火を制御することを特徴とするガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法。
  2. 前記非ガソリン燃料用電子制御ユニットが受信した前記ガソリン噴射信号を用いてエン
    ジン回転数を判別し、このエンジン回転数を基に前記エンジン回転数の急激な上昇を検知
    することを特徴とする請求項1記載のガソリン代替燃料エンジンの点火制御方法。
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