以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による遮断器を示す構成図である。また、図2は、図1の遮断器の要部を模式的に示す構成図である。図において、遮断器1は、ベースである筐体2と、筐体2に設けられている固定接触子3と、固定接触子3に接触したり固定接触子3から離れたりする導電性の可動体4と、可動体4を変位させる駆動力を発生する電磁アクチュエータ5と、可動体4と電磁アクチュエータ5とを連動させるリンク機構6とを有している。固定接触子3、可動体4、電磁アクチュエータ5及びリンク機構6は、筐体2内に配置されている。
筐体2には、筐体2外にそれぞれ露出している電源側端子7及び負荷側端子8が互いに離して固定されている。この例では、電源側端子7が負荷側端子8の上方に配置されている。電源側端子7は、固定接触子3に常に電気的に接続されている。
可動体4は、可動片41と、可動片41に設けられている可動接触子42とを有している。可動片41は、リンク機構6に連結されている。これにより、可動体4は、リンク機構6の動作に応じて筐体2に対して変位可能になっている。
可動片41は、可撓導体43を介して負荷側端子8に接続されている。これにより、可動接触子42は、負荷側端子8に常に電気的に接続されている。可動接触子42は、固定接触子3に対向している。可動体4は、可動接触子42が固定接触子3に接触する接点接触位置と、可動接触子42が固定接触子3から離れる接点開離位置との間で可撓導体43を曲げながら固定接触子3及び筐体2に対して変位可能になっている。遮断器1では、可動体4が接点接触位置に達することにより電源側端子7が負荷側端子8と電気的に接続され、可動体4が接点接触位置から外れて固定接触子3から離れると電源側端子7と負荷側端子8との電気的な接続が遮断される。従って、可動接触子42は、遮断器1の投入時に固定接触子3に接触し、遮断器1の遮断時に固定接触子3から開離する。
電磁アクチュエータ5は、プランジャ51と、筐体2に固定され、筐体2に対してプランジャ51を変位させる電磁石52とを有している。
プランジャ51は、電磁石52内に収容されている可動鉄心部53と、可動鉄心部53から電磁石52外へ突出している突出部54とを有している。また、プランジャ51は、突出部54が電磁石52から一定の突出量で突出する前進位置と、プランジャ51が前進位置にあるときよりも電磁石52からの突出部54の突出量が小さくなっている後退位置との間で筐体2に対して変位可能になっている。この例では、プランジャ51が上下方向に沿った直線上を変位可能になっており、プランジャ51の前進位置が後退位置よりも上方に位置している。また、この例では、プランジャ51の変位を案内する例えばガイド等が電磁石52内に設けられている。
電磁石52は、筐体2に固定されている固定鉄心55と、固定鉄心55に設けられている投入用コイル56とを有している。
固定鉄心55は、プランジャ51が前進位置に達したときに可動鉄心部53を受けてプランジャ51の変位を規制する規制部55aを有している。固定鉄心55の規制部55aと可動鉄心部53との間のギャップは、プランジャ51が後退位置にあるときに最も大きくなり、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かって変位するにつれて小さくなる。
電磁石52は、投入用コイル56への通電が行われることにより、規制部55aに可動鉄心部53を吸引する電磁吸引力を発生する。プランジャ51は、電磁石52の電磁吸引力の発生により、後退位置から前進位置へ変位される。また、電磁石52は、投入用コイル56への通電が停止されることにより、電磁吸引力の発生を停止する。プランジャ51は、電磁石52の電磁吸引力がなくなることにより、例えば自重等によって前進位置から後退位置へ変位される。
リンク機構6は、筐体2に設けられているレバー軸9と、レバー軸9に支持され、レバー軸9を中心として回転可能なレバー61と、筐体2に設けられている支持軸10と、支持軸10に支持され、支持軸10を中心として回転可能な支持可動部材62と、レバー61及び支持可動部材62のそれぞれに回転可能に連結されている絶縁ロッド63と、レバー61及びプランジャ51のそれぞれに回転可能に連結されている連結体64と、レバー61に対する連結体64の回転を制限する制限部材65とを有している。レバー軸9及び支持軸10は筐体2に設けられているので、固定接触子3に対するレバー軸9及び支持軸10のそれぞれの位置は固定されている。
リンク機構6では、プランジャ51の変位に応じて連結体64、レバー61、絶縁ロッド63及び支持可動部材62が変位される。これにより、リンク機構6は、プランジャ51の前進位置への変位により可動体4を接点接触位置へ変位させ、プランジャ51の後退位置への変位により可動体4を接点開離位置へ変位させる。
レバー軸9は、水平方向についてプランジャ51と固定接触子3との間の位置に配置されている。レバー軸9には、レバー61の中間部が取り付けられている。レバー61の一端部には第1のピン11が設けられ、レバー61の他端部には第2のピン12が設けられている。この例では、レバー軸9と第1のピン11との間の距離が、レバー軸9と第2のピン12との間の距離よりも長くなっている。第1のピン11はレバー軸9の電磁アクチュエータ5側に位置し、第2のピン12はレバー軸9の固定接触子3側に位置している。第1のピン11の位置は、水平方向についてプランジャ51よりもレバー軸9から遠い位置になっている。連結体64はレバー61に対して第1のピン11を中心に回転可能になっており、絶縁ロッド63はレバー61に対して第2のピン12を中心に回転可能になっている。
支持軸10は、水平方向についてレバー軸9と固定接触子3との間の位置に配置されている。また、支持軸10は、レバー軸9と平行に配置されている。支持軸10には、支持可動部材62の下端部が回転可能に設けられている。
支持可動部材62の中間部には、第3のピン13が設けられている。可動体4は、支持可動部材62に対して第3のピン13を中心に回転可能になっている。第3のピン13には、可動片41の下端部が設けられている。支持可動部材62及び可動片41のそれぞれの上端部間には、弾性体である接圧ばね66が配置されている。可動片41の上端部は、接圧ばね66を介して支持可動部材62の上端部に接続されている。これにより、支持可動部材62は、接圧ばね66及び可動片41を介して可動接触子42に接続されている。接圧ばね66が発生する弾性復元力の大きさは、支持可動部材62に対する可動片41の回転に応じて変化する。
可動体4は、支持軸10を中心とする支持可動部材62の回転によって接点接触位置と接点開離位置との間で変位される。可動体4が固定接触子3から離れている状態では、可動体4が筐体2に対して支持可動部材62と一体に変位される。可動体4が接点接触位置に達している状態では、支持可動部材62が固定接触子3に近づく方向へ回転されると、支持可動部材62と可動体4との間で接圧ばね66が押し縮められ、接圧ばね66の弾性復元力によって可動体4の可動接触子42が固定接触子3に押し付けられる。
従って、支持可動部材62は、支持軸10を中心とする回転によって、遮断時に可動接触子42が固定接触子3から開離する非投入位置と、投入時の投入動作過程で固定接触子3に対する可動接触子42の接触が開始する投入開始位置と、投入開始位置よりも可動片41及び可動接触子42に近づいて可動接触子42を固定接触子3に押し付ける投入完了位置との間で変位可能になっている。支持可動部材62は、非投入位置、投入開始位置及び投入完了位置の順に変位されることにより固定接触子3に近づく。
この例では、可動接触子42が固定接触子3から離れている状態で、接圧ばね66が、支持可動部材62と可動片41との間で予め一定の力で押し縮められて蓄勢されている。即ち、この例では、可動接触子42を固定接触子3に押し付ける一定の初荷重が接圧ばね66に予め与えられている。これにより、遮断器1では、可動接触子42が固定接触子3に接触したとき、即ち支持可動部材62が投入開始位置に達したときから、固定接触子3に対する可動接触子42の接圧が強くなるようになっている。この例では、支持可動部材62と可動片41との間の距離の拡大を保持具で阻止することにより、接圧ばね66が押し縮められた状態を保持し、接圧ばね66に初荷重を与えている。
絶縁ロッド63の一端部は第2のピン12を介してレバー61に連結され、絶縁ロッド63の他端部は第3のピン13を介して支持可動部材62に連結されている。絶縁ロッド63は、レバー61に対して第2のピン12を中心に回転可能になっており、かつ、支持可動部材62に対して第3のピン13を中心に回転可能になっている。これにより、支持可動部材62に対しては、レバー61が絶縁ロッド63を介して変位可能に連結されている。また、絶縁ロッド63は、例えば樹脂等の電気絶縁性の高い材料で構成されている。レバー61は、絶縁ロッド63によって可動体4から電気的に絶縁されている。これにより、電源側端子7と負荷側端子8との間を流れる電流がレバー61に漏れることが防止されている。
連結体64は、レバー61及びプランジャ51間を連結している。また、連結体64は、レバー61に回転可能に連結されている第1の連結リンク641と、第1の連結リンク641に連結され、プランジャ51の突出部54に回転可能に連結されている第2の連結リンク642と、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保持する保持体643とを有している。
第1の連結リンク641の一端部は、第1のピン11を介してレバー61に連結されている。第1の連結リンク641は、レバー61に対して第1のピン11を中心に回転可能になっている。プランジャ51の突出部54には、第4のピン14が設けられている。第2の連結リンク642の一端部は、第4のピン14を介してプランジャ51に連結されている。第2の連結リンク642は、プランジャ51に対して第4のピン14を中心に回転可能になっている。第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642のそれぞれの他端部は、第5のピン15を介して互いに回転可能に連結されている。
保持体643は、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642のそれぞれに接続されている。保持体643としては、例えば予め蓄勢されたばね又はゴム等の弾性体が用いられている。保持体643は、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保つように保持力を発揮している。即ち、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度は、第5のピン15の周りに作用するモーメントに起因して第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する力(以下、「連結リンク間作用力)」という)が一定の限界値に達するまでは保持体643の保持力によって第1の設定角度に保持される。一方、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力が一定の限界値を超えると、第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して保持体643の保持力に逆らって回転され、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の弾性変形により変化する。この例では、第1の設定角度が90度よりも大きい鈍角になっている。なお、第1の設定角度は、180度以外の角度であればよく、90度であってもよいし、90度よりも小さい鋭角であってもよい。
可動接触子42が固定接触子3から離れている状態、即ち支持可動部材62が投入開始位置よりも非投入位置側にある状態では、連結リンク間作用力が一定の限界値を下回っており、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度に保持されている。
一方、支持可動部材62が投入開始位置に達して可動接触子42が接点接触位置で固定接触子3に接触した後、プランジャ51の前進位置への変位によって支持可動部材62が投入完了位置に達するまでの過程では、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力が一定の限界値を超えており、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなる。即ち、可動体4が接点接触位置で固定接触子3に押し付けられ、支持可動部材62が投入完了位置に達するとともにプランジャ51が前進位置に達している状態では、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなっている。
制限部材65は、レバー61と第1の連結リンク641との間に配置されている。この例では、制限部材65が、レバー61の側面から第1の連結リンク641に向けて突出した状態でレバー61に固定されている。制限部材65としては、例えばレバー61に固定された突起又はピン等が用いられている。
また、支持可動部材62が投入開始位置に達して可動接触子42が接点接触位置で固定接触子3に接触した後、プランジャ51の前進位置への変位によって支持可動部材62が投入完了位置に達するまでの過程でレバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、制限部材65が第1の連結リンク641を受けるようになっている。これにより、制限部材65は、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へのレバー61に対する第1の連結リンク641の回転を制限する。この例では、第2の設定角度が90度よりも小さい鋭角になっている。なお、第2の設定角度は、180度以外の角度であればよく、90度であってもよいし、90度よりも大きい鈍角であってもよい。
即ち、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きいときには、第1の連結リンク641がレバー61に対して第1のピン11を中心に自由に回転されるが、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、レバー61に近づく方向への第1の連結リンク641の回転、即ち図1の反時計回りの方向への第1の連結リンク641の回転が制限部材65によって制限される。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へレバー61に対して第1の連結リンク641をさらに回転させようとすると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を第2の設定角度に保ちながら、第1の連結リンク641がレバー61と一体に変位される。
次に、遮断器1の投入動作について説明する。図3は、図2のプランジャ51が後退位置にあるときの遮断器1の要部を模式的に示す構成図である。図4は、図3のプランジャ51が前進位置に向けて変位されている途中で支持可動部材62が投入開始位置に達したときの遮断器1の要部を模式的に示す構成図である。また、図5は、図4のプランジャ51が前進位置に向けて変位されている途中で第1の連結リンク641が制限部材65に当たったときの遮断器1を模式的に示す構成図である。さらに、図6は、図5のプランジャ51が前進位置に達して可動体4が接点接触位置で固定接触子3に押し付けられているときの遮断器1を模式的に示す構成図である。
プランジャ51が後退位置にあり支持可動部材62が非投入位置にあるときには、図3に示すように、可動体4が接点開離位置にあり、可動接触子42が固定接触子3から離れている。即ち、プランジャ51が後退位置にあるときには、遮断器1の状態が開極状態になっている。
遮断器1が外部から投入指令を受けると、投入用コイル56に電流が流れ、投入用コイル56が励磁される。投入用コイル56が励磁されると、固定鉄心55の規制部55aにプランジャ51の可動鉄心部53を吸引する電磁吸引力が電磁石52に発生する。これにより、後退位置から上方の前進位置に向けた力がプランジャ51に作用し、プランジャ51に作用した上方への力がプランジャ51から連結体64に伝わる。このとき、プランジャ51の変位に逆らうリンク機構6の負荷は、レバー軸9、支持軸10及び第1〜第4のピン11〜14の周りに生じるリンク機構6の各要素61〜64のわずかな大きさの摩擦力のみである。従って、このときには、レバー61はレバー軸9の周りに、支持可動部材62は支持軸10の周りに、絶縁ロッド63は第2のピン12及び第3のピン13の周りに、連結体64は第1のピン11及び第4のピン14の周りに、それぞれ自由に回転することができる。即ち、可動接触子42が固定接触子3から離れているときには、電磁アクチュエータ5が連結体64を変位させるのに必要な力は小さくてよく、連結体64、レバー61、絶縁ロッド63及び支持可動部材62がプランジャ51の変位に応じて変位される。
また、可動接触子42が固定接触子3から離れているときには、プランジャ51が連結体64を変位させるのに必要な力が小さいことから、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力は一定の限界値を下回っている。従って、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かって変位されると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度に保持されたまま、連結体64がプランジャ51及びレバー61のそれぞれに対して一体に回転される。このとき、連結体64は、第1の連結リンク641がレバー61に近づく方向、即ち第1のピン11を中心とする図3の反時計回りの方向へレバー61に対して回転される。これにより、レバー61がレバー軸9を中心として図3の時計回りの方向へ回転され、絶縁ロッド63がレバー61に対して図3の反時計回りの方向へ回転され、支持可動部材62が支持軸10を中心として図3の時計回りの方向へ回転される。これにより、支持可動部材62は非投入位置から投入開始位置に向けて変位され、可動体4は固定接触子3に近づく方向へ支持可動部材62と一体となって変位される。
このとき、レバー61に対してプランジャ51から作用する力f1の方向は、第4のピン14から第1のピン11に向かう方向、即ち図3の力f1の矢印の方向になっている。また、このとき、力f1がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離、即ちレバー61に対するモーメント作用距離は、図3の距離L1、即ち第1のピン11とレバー軸9との間の距離L1になっている。
この後、プランジャ51が前進位置に向けてさらに変位されると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が小さくなりながら、レバー61が図3の時計回りの方向へさらに回転される。プランジャ51の第4のピン14が基準線Aから距離x1だけ離れた位置に達すると、図4に示すように支持可動部材62が投入開始位置に達するとともに可動体4が接点接触位置に達し、可動接触子42が固定接触子3に接触する。このとき、レバー61に対してプランジャ51から作用する力f1’の方向は、第4のピン14から第1のピン11に向かう方向、即ち図4の力f1’の矢印の方向になっている。この後もプランジャ51が前進位置に向けてさらに変位されると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度がさらに小さくなりながら、レバー61がレバー軸9を中心に図4の時計回りの方向へ回転され、支持可動部材62が投入開始位置から投入位置に向けて可動体4に近づく方向へ変位される。これにより、接圧ばね66がレバー61の回転に応じて可動体4と支持可動部材62との間で押し縮められる。このとき、接圧ばね66の弾性復元力に応じた接点反抗力が可動接触子42に対して作用する。第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力は、可動接触子42に対する接点反抗力が負荷として生じることにより増加するが、この時点では、保持体643の保持力を下回っており、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度は第1の設定角度に保持されている。
この後、プランジャ51が前進位置に向けて変位されてプランジャ51の第4のピン14が基準線Aから距離x2だけ離れた位置に達すると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になり、図5に示すように、第1の連結リンク641が制限部材65に当たる。なお、基準線Aは、プランジャ51が後退位置にあるときの第4のピン14の位置を示す直線である。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなることが阻止され、結果として、第1の連結リンク641がレバー61と一体に回転される。また、このとき、連結リンク間作用力は一定の限界値を超えておらず、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度は保持体643によって第1の設定角度に保持されている。これにより、第2の連結リンク642も第1の連結リンク641と一体に回転される。結果として、このときには、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を第2の設定角度に保ち、かつ第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保ちながら、レバー61、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642が一体となってレバー軸9を中心に回転される。従って、プランジャ51の第4のピン14が基準線Aから距離x2だけ離れた位置に達し、第1の連結リンク641が制限部材65に当たると、プランジャ51からレバー61に対して作用する力の方向は、図4のf1’の矢印の方向から、図5のf2の矢印の方向、即ちプランジャ51が後退位置から前進位置に向かう方向に変化する。これにより、レバー61に対するプランジャ51からの力の作用点が第1のピン11の位置からレバー軸9に近づき、力f2がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離が、図4の距離L1よりも短い図5の距離L2に変化する。
この後、プランジャ51がさらに変位され、図6に示すように、プランジャ51の第4のピン14が基準線Aから距離x3(x3>x2)だけ離れた前進位置にプランジャ51が達する。このとき、支持可動部材62は、接圧ばね66を押し縮めながら可動体4に近づく方向へ回転されて投入完了位置に達する。これにより、可動接触子42を固定接触子3に押し付ける接圧が増大し、固定接触子3に対する可動接触子42の接圧が確保される。また、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力は、プランジャ51が前進位置に近づくにつれて増加し、プランジャ51が前進位置に達するまでに保持体643の保持力を超える。即ち、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力は、支持可動部材62が投入開始位置から投入完了位置に近づくにつれて増加し、支持可動部材62が投入完了位置に達するまでに保持体643の保持力を超える。この例では、第1の連結リンク641は制限部材65に当たってから、連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えるまでのプランジャ51及び支持可動部材62の変位距離は短く、第1の連結リンク641が制限部材65に当たるとすぐに連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えるようになっている。連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の回転が保持体643の保持力に逆らって開始され、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が小さくなる。このとき、レバー61に対する第1の連結リンク641の回転が制限部材65によって制限され、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度に保持されたままになっているので、レバー61及び第1の連結リンク641はレバー軸9を中心に一体に回転する。第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって小さくなると、プランジャ51からレバー61に対して作用する力の方向は、図5のf2の矢印の方向から、図6のf3の矢印の方向、即ち第4のピン14から第5のピン15に向かう方向に変化する。これにより、レバー61に対するプランジャ51からの力の作用点がレバー軸9にさらに近づき、力f3がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離が、図5の距離L2よりも短い図6の距離L3に変化する。
プランジャ51が前進位置に達し、支持可動部材62が投入完了位置に達すると、プランジャ51の可動鉄心部53が固定鉄心55の規制部55aに接触し、遮断器1の投入動作が完了する。プランジャ51が前進位置に達し、支持可動部材62が投入完了位置に達しているときには、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が制限部材65によって第2の設定角度に保たれた状態で、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなっている。また、プランジャ51が前進位置に達し、支持可動部材62が投入完了位置に達している状態では、レバー軸9及び第2のピン12を通る直線上に位置する死点、又は死点の近傍に第3のピン13が位置している。
ここで、図7は、図1のレバー61を回転させるのに必要な負荷モーメント[N・mm]と、プランジャ51の後退位置から前進位置までのストローク[mm]との関係を示すグラフである。また、図8は、図1の電磁アクチュエータ5が発生する電磁吸引力[N]と、プランジャ51の後退位置から前進位置までのストローク[mm]との関係を示すグラフである。なお、図7及び図8では、プランジャ51が後退位置にあるときを遮断器1の開極状態として示し、プランジャ51が前進位置にあるときを遮断器1の投入状態として示している。
レバー61を回転させるのに必要な負荷モーメントは、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かって変位されるとき、図7に示すように、可動接触子42が固定接触子3に接触する時点、即ち接点接触の時点までは、レバー軸9、支持軸10、第1〜第4のピン11〜14のそれぞれの周りの各要素61〜64のわずかな摩擦力に起因した大きさになるので、一定の小さな値に維持される。支持可動部材62が投入開始位置に達し、可動接触子42が固定接触子3に接触すると、接圧ばね66に蓄勢された初荷重に応じた接点反抗力が負荷として生じ、レバー61を回転させるのに必要な負荷モーメントが急激に大きくなる。可動接触子42が固定接触子3に接触した後から、プランジャ51が前進位置に達するときまでは、レバー61の回転に応じて支持可動部材62が支持軸10を中心に回転されるので、接圧ばね66に蓄勢される弾性復元力は増加するものの、レバー61及び絶縁ロッド63で構成されるトグル機構が死点に近づくため、トグル機構によるてこの効果によって、レバー61の回転に必要な負荷モーメントの大きさは急激に0へと近づいていく。
一方、電磁アクチュエータ5の電磁石52が発生する電磁吸引力は、図8に示すように、プランジャ51の可動鉄心部53と固定鉄心55の規制部55aとの間の距離に反比例して急激に増加する。このため、電磁石52の電磁吸引力の大きさは、プランジャ51が前進位置に達する時点で最大になる。
レバー61の回転に必要な負荷モーメント(図7)と、電磁石52が発生する電磁吸引力(図8)とのそれぞれの特性に基づいて、レバー61の回転に必要なモーメント作用距離を概算すると、図9に示すグラフになる。図9は、図1のレバー61の回転に必要なモーメント作用距離と、プランジャ51の後退位置(開極状態)から前進位置(投入状態)までのストローク[mm]との関係を示すグラフである。
図9に示すように、プランジャ51の変位が後退位置から前進位置に向けて開始された時点では、レバー61に作用する負荷モーメントに対して電磁石の電磁吸引力が小さいため、レバー61の回転にはある程度の大きさのモーメント作用距離が必要になる。また、プランジャ51の変位が前進位置に向けて開始されてから可動接触子42が固定接触子3に接触するまでの間は、レバー61の回転に必要な負荷モーメントが図7に示すようにほぼ一定で、電磁石52が発生する電磁吸引力が図8に示すように微増することから、レバー61の回転に必要なモーメント作用距離は、図9に示すように、プランジャ51の変位開始時点の距離から微減していく。支持可動部材62が投入開始位置に達し、可動接触子42が固定接触子3に接触した時点では、レバー61の回転に必要な負荷モーメントが図6に示すように急激に増加するため、レバー61の回転に必要なモーメント作用距離も急激に増加する。可動接触子42が固定接触子3に接触した後、プランジャ51が前進位置に達するまでの間は、レバー61の回転に必要な負荷モーメントの大きさが急激に減少する上、電磁石52が発生する電磁吸引力が急激に増加するため、レバー61の回転に必要なモーメント作用距離も、プランジャ51が前進位置に近づくにつれて急激に0に近づいていく。
図10は、図1の遮断器1の投入動作中に生じるレバー61に対するモーメント作用距離[mm]と、図1の遮断器1の投入動作中にレバー61の回転に必要なモーメント作用距離[mm」とを比較するグラフである。図10では、遮断器1の投入動作中に生じるレバー61に対するモーメント作用距離を実線で示し、遮断器1の投入動作中にレバー61の回転に必要なモーメント作用距離を破線で示している。
図10に示すように、遮断器1の投入動作中に生じるレバー61に対するモーメント作用距離は、プランジャ51の変位を開始してから、支持可動部材62が投入開始位置に達して可動接触子42が固定接触子3に接触する接点接触の時点を過ぎるまでは、大きな距離L1になっている。接点接触の時点を過ぎた後、レバー61に対する第1の連結リンク641の回転が制限部材65によって制限されると、レバー61に対するモーメント作用距離がL1よりも短い距離L2に変化する。この後、プランジャ51が前進位置に向けてさらに変位され、支持可動部材62が投入完了位置に向けてさらに変位されると、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間力が保持体643の保持力を超えて、第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して回転され、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度よりも小さくなる。これにより、レバー61に対するモーメント作用距離がL2よりもさらに短い距離L3に変化する。この後、プランジャ51が前進位置に達し、支持可動部材62が投入完了位置に達して遮断器1の投入動作が完了するまでは、リンク機構6の各要素の変位によって、レバー61に対するモーメント作用距離が、わずかに変化するものの、およそL3の近くの値のままとなる。従って、制限部材65及び保持体643によって変化するモーメント作用距離の特性を、遮断器1の必要とするモーメント作用距離の特性に合わせて設定することにより、遮断器1の投入動作に必要なモーメント作用距離の特性に対して電磁石52の能力を効果的に利用することができる。
このような遮断器1では、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくならないように制限部材65がレバー61に対する第1の連結リンク641の回転を制限し、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を保持体643が第1の設定角度に保持しているので、プランジャ51が後退位置から前進位置へ変位されるときに、制限部材65がレバー61に対する第1の連結リンク641の回転を制限したり、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって小さくなったりすることによって、レバー61に対する電磁アクチュエータ5の投入力の作用点をレバー軸9に近づけることができる。即ち、リンク機構6の各要素61〜65の配置、制限部材65で制限する第2の設定角度、保持体643の保持力の設計によって、投入動作中の電磁アクチュエータ5による投入力の作用点を、プランジャ51のストロークに依存することなく、大きくかつ自由に変化させることができる。これにより、プランジャ51の後退位置から前進位置への変位によって増大する電磁アクチュエータ5の投入力に合わせて、レバー61に対するモーメント作用距離を小さくすることができ、遮断器1の投入動作に電磁石52の電磁吸引力を効率良く利用することができる。従って、遮断器1の投入動作に必要なモーメント作用距離の変化に合わせたサイズの電磁石52を用いることができ、電磁石52の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、リンク機構6において摩擦に伴う摩耗が生じにくいことから、遮断器1の投入動作の回数によらず安定した負荷特性を維持することができ、遮断器1の動作の安定性の向上を図ることができるとともに、遮断器1の耐久性の管理を容易にすることができる。
また、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642は、第5のピン15を介して互いに回転可能に連結されており、保持体643は、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642のそれぞれに接続されているので、第1の連結リンク641、第2の連結リンク642及び保持体643を容易に組み立てることができ、連結体64の製造を容易にすることができる。
なお、上記の例では、遮断器1の投入動作において、可動接触子42が固定接触子3に接触した後、即ち支持可動部材62が投入開始位置よりも投入完了位置に近づいた後に、第1の連結リンク641が制限部材65に当たるようになっているが、可動接触子42が固定接触子3に接触する前、即ち支持可動部材62が投入開始位置よりも非投入位置側にあるときに、第1の連結リンク641を制限部材65に当ててレバー61に対する第1の連結リンク641の回転を制限するようにしてもよい。
可動接触子42が固定接触子3に接触する前、即ち支持可動部材62が投入開始位置よりも非投入位置側にあるときに第1の連結リンク641が制限部材65に当たる場合、遮断器1の投入動作は以下のようになる。
即ち、プランジャ51が後退位置から前進位置に向けて変位されると、第1の連結リンク641が制限部材65に当たるまでは、上記の例と同様に、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度に保たれたまま、連結体64、レバー61、絶縁ロッド63及び支持可動部材62がプランジャ51の変位に応じて変位され、可動体4が接点接触位置に向かって変位される。このとき、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度がプランジャ51の変位に応じて小さくなっていく。また、このとき、レバー61に対してプランジャ51から作用する力の方向は、第4のピン14から第1のピン11に向かう方向になっており、レバー61に対するモーメント作用距離は、第1のピン11とレバー軸9との間の距離L1になっている。
この後、プランジャ51が前進位置に向けてさらに変位され、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、支持可動部材62が投入開始位置に達する前に、第1の連結リンク641が制限部材65に当たる。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなることが阻止され、結果として、第1の連結リンク641がレバー61と一体に回転される。また、このとき、連結リンク間作用力は一定の限界値を超えておらず、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度は保持体643によって第1の設定角度に保持されている。即ち、第1の連結リンク641が制限部材65に当たると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を第2の設定角度に保ち、かつ第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保ちながら、レバー61、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642が一体となってレバー軸9を中心に回転される。従って、このとき、プランジャ51からレバー61に対して作用する力の方向は、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かう方向に変化し、レバー61に対するモーメント作用距離も、距離L1よりも短い距離L2に変化する。
この後、プランジャ51が前進位置に向けてさらに変位されると、支持可動部材62が投入開始位置に達し、可動体4が接点接触位置に達する。これにより、可動接触子42が固定接触子3に接触する。この後、プランジャ51が前進位置に向けてさらに変位され、支持可動部材62が投入開始位置から投入完了位置に向けて変位されることにより、接圧ばね66に蓄勢された初荷重に応じた接点反抗力が負荷として生じ、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に作用する連結リンク間作用力が増加する。連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の回転が保持体643の保持力に逆らって開始され、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が小さくなる。このとき、レバー61及び第1の連結リンク641はレバー軸9を中心に一体に回転する。第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって小さくなると、プランジャ51からレバー61に対して作用する力の方向は、第4のピン14から第5のピン15に向かう方向に変化し、レバー61に対するモーメント作用距離も、距離L2よりも短い距離L3に変化する。
この後、プランジャ51は、前進位置に達するまで変位される。このとき、第2の連結リンク642が保持体643の保持力に逆らって第1の連結リンク641に対してさらに回転されながら、レバー61及び第1の連結リンク641がレバー軸9を中心として一体に回転され、絶縁ロッド63がレバー61の回転に応じて変位される。これにより、支持可動部材62が、絶縁ロッド63の変位に応じて、投入完了位置に向けて可動体4に近づく方向へ支持軸10を中心に回転され、接圧ばね66が可動体4と支持可動部材62との間で押し縮められる。これにより、可動接触子42を固定接触子3に押し付ける接圧が増大し、固定接触子3に対する可動接触子42の接圧が確保される。
このように、可動接触子42が固定接触子3に接触する前、即ち支持可動部材62が投入開始位置よりも非投入位置側にあるときに第1の連結リンク641が制限部材65に当たるようにしても、プランジャ51が後退位置から前進位置へ変位されるときに、レバー61に対するモーメント作用距離を小さくすることができる。これにより、プランジャ51の後退位置から前進位置への変位によって増大する電磁アクチュエータ5の投入力に合わせて、レバー61に対するモーメント作用距離を小さくすることができ、遮断器1の投入動作に電磁石52の電磁吸引力を効率良く利用することができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、制限部材65が弾性部材で構成されている。制限部材65としては、例えばばね又はゴム等が用いられている。制限部材65は、図示しない保持具によって押し縮められて弾性変形された状態でレバー61に設けられている。これにより、制限部材65には、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保持する保持体643の保持力を超える初荷重が蓄勢されている。リンク機構6では、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、制限部材65が第1の連結リンク641を受けて、レバー61に対する第1の連結リンク641の回転が制限される。他の構成及び動作は実施の形態1と同様である。
本実施の形態の投入動作では、プランジャ51が前進位置に向けて変位されるときに、第1の連結リンク641が制限部材65に当たるまでは、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力によって第1の設定角度に保持されたまま、第1の連結リンク641がレバー61に対して自由に回転する。
第1の連結リンク641が制限部材65に当たると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を第2の設定角度に保ったまま、レバー61及び第1の連結リンク641がレバー軸9を中心として一体に回転される。このとき、制限部材65が弾性部材であることから、制限部材65が第1の連結リンク641から受ける衝撃が制限部材65の弾性変形により吸収される。また、このとき、レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向は、実施の形態1と同様に、図4の力f1’の矢印の方向から、図5の力f2の矢印の方向へ変化する。さらに、このとき、プランジャ51からの力がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離、即ちレバー61のモーメント作用距離も、図4の距離L1から図5の距離L2に変化する。
この後、プランジャ51が前進位置に近づくにつれて、支持可動部材62が可動体4に近づく方向へ回転されることにより、可動接触子42に対する接点反抗力がリンク機構6の負荷として増加する。このとき、レバー61に対する第1の連結リンク641の回転力は制限部材65の初荷重を超えることはなく、第1の連結リンク641と第2の連結リンク642との間に作用する連結リンク間作用力は保持体643の保持力を超える。これにより、このときには、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を制限部材65によって第2の設定角度に保ったまま、レバー61及び第1の連結リンク641がレバー軸9を中心に回転され、一方で第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して回転されて、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって小さくなる。これにより、このときには、レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向は、実施の形態1と同様に、図5の力f2の矢印の方向から、図6の力f3の矢印の方向へ変化する。また、このとき、プランジャ51からの力がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離、即ちレバー61のモーメント作用距離も、図5の距離L2から図6の距離L3に変化する。
このような遮断器1では、制限部材65が弾性部材であり、第1の設定角度を保持する保持体643の保持力を超える初荷重が制限部材65に蓄勢されているので、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を制限部材65によって弾性的に制限することができ、第1の連結リンク641が制限部材65に当たったときに生じる衝撃力及び騒音を緩和することができる。これにより、遮断器1の動作中のレバー61及び第1の連結リンク641に対する衝撃力を緩和することができ、レバー61及び第1の連結リンク641の必要強度を低下させることができる。従って、遮断器1の小型化をさらに図ることができる。
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、制限部材65がレバー61に固定されているが、レバー61に制限部材65をレバー61の長手方向に沿ってスライド可能に設けてもよい。本実施の形態では、制限部材65が、通常位置と、通常位置よりもレバー軸9に近い作動位置との間でレバー61に対してスライド可能になっている。本実施の形態の制限部材65の素材は、実施の形態1の制限部材65と同様である。また、制限部材65は、レバー61に対して図示しないばね等の弾性体の弾性復元力によって通常位置に保持されている。さらに、制限部材65は、弾性体の弾性復元力に逆らう力が制限部材65に加わることによって通常位置から作動位置へレバー61に対してスライド可能になっている。
制限部材65は、レバー61に対して作動位置に保持されているときに、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へのレバー61に対する第1の連結リンク641の回転を制限する。また、制限部材65が通常位置にあるときには、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きい第3の設定角度になると、第1の連結リンク641が制限部材65に当たる。また、第1の連結リンク641が制限部材65に当たっている状態では、第1の連結リンク641が弾性体の弾性復元力に逆らって制限部材65を押して制限部材65を通常位置から作動位置へレバー61に対してスライドさせることにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第3の設定角度よりも小さくなる方向へ第1の連結リンク641がレバー61に対して回転する。他の構成は実施の形態1と同様である。
次に、動作について説明する。遮断器1が開極状態になっているときには、第1の連結リンク641が制限部材65から離れているとともに、制限部材65が弾性体の弾性復元力によって通常位置に保持されている。遮断器1が投入動作を行うときには、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かって変位されることにより、支持可動部材62が非投入位置から投入開始位置に向かって変位される。支持可動部材62が投入開始位置に達すると、可動体4が接点接触位置に達し、可動接触子42が固定接触子3に接触する。このとき、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度は第3の設定角度よりも大きくなっており、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度は保持体643によって第1の設定角度に保持されている。
支持可動部材62が投入開始位置に達した後、プランジャ51が前進位置に向かってさらに変位されると、支持可動部材62が投入開始位置から投入完了位置に向かって変位され、接圧ばね66が縮められて可動接触子42に対して接点反抗力が作用する。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第3の設定角度になって第1の連結リンク641が制限部材65に当たるとともに、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク641の角度が保持体643の保持力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなる。
この後、プランジャ51を前進位置に向けてさらに変位させて、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第3の設定角度よりも小さくなる方向へレバー61に対して第1の連結リンク641をさらに回転させようとすると、制限部材65は、弾性体の弾性復元力に逆らって、第1の連結リンク641から受ける反力によって通常位置から作動位置に向けて変位し始める。このとき、第1の連結リンク641で制限部材65を押す荷重が、第1の設定角度を保持する保持体643の保持力を超える荷重になると、通常位置から作動位置への制限部材65の変位が開始する。
制限部材65が通常位置から作動位置に向かって変位し始めると、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第3の設定角度よりも小さくなる方向へ第1の連結リンク641が制限部材65の変位に応じてレバー61に対して回転し、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、制限部材65が作動位置に達する。制限部材65が作動位置に達すると、制限部材65の変位が止まる。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へのレバー61に対する第1の連結リンク641の回転が阻止される。
レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向は、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第3の設定角度から第2の設定角度になるまでの間に、実施の形態1と同様に、図4の力f1’の矢印の方向から、図5の力f2の矢印の方向へ変化する。このとき、本実施の形態では、制限部材65が第1の連結リンク641から受ける反力によって通常位置から作動位置へ変位されるため、力f1’の方向及び大きさは、急激に変化せず力f2の方向及び大きさに向かって連続的にかつ緩やかに変化する。
この後、プランジャ51が前進位置に近づくにつれて、支持可動部材62が投入完了位置に向かって変位されることにより、可動接触子42に対する接点反抗力がリンク機構6の負荷として増加する。このとき、制限部材65がレバー61に対して作動位置に保持された状態で制限部材65が第1の連結リンク641を受けている。また、このとき、第1の連結リンク641と第2の連結リンク642との間に作用する連結リンク間作用力は、保持体643の保持力を超えている。これにより、このときには、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度に維持されたまま、レバー61及び第1の連結リンク641がレバー軸9を中心に一体に回転されるとともに、第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して回転されて、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって小さくなる。従って、このときには、レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向は、図5の力f2の矢印の方向から、図6の力f3の矢印の方向へ連続的に変化する。また、このとき、プランジャ51からの力がレバー軸9に対してモーメントとして作用する力線距離、即ちレバー61のモーメント作用距離も、図5の距離L2から図6の距離L3に連続的に変化する。
このような遮断器1では、制限部材65が、通常位置と、通常位置よりもレバー軸9に近い作動位置との間でレバー61に対してスライド可能になっているので、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が小さくなる方向へ第1の連結リンク641がレバー61に対して回転されるときに、制限部材65を押してレバー61に対してスライドさせながら、第1の連結リンク641をレバー61に対して回転させることができ、レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向及び大きさを緩やかかつ連続的に変化させることができる。これにより、第1の連結リンク641が制限部材65に当たった後の電磁石52に必要な負荷の特性に対して必要になるエネルギをさらに少なくすることができる。従って、電磁石52の小型化を図ることができ、遮断器1の小型化をさらに図ることができる。
なお、上記の例では、制限部材65として実施の形態1と同様の制限部材が用いられているが、実施の形態2の制限部材として用いられている弾性部材を本実施の形態の制限部材65として用いてもよい。
実施の形態4.
図11は、この発明の実施の形態4による遮断器1を示す構成図である。第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642は、直接連結されておらず、U字状に曲げられた保持体643を介して互いに連結されている。保持体643としては、例えば板ばね等が用いられている。この例では、保持体643の厚さが第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642のそれぞれの厚さよりも薄くなっており、保持体643が第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642よりも弾性変形しやすくなっている。また、この例では、一体成形体である単一材によって連結体64が構成されている。第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度は、保持体643によって第1の設定角度に保持されている。他の構成及び動作は実施の形態1と同様である。
本実施の形態の投入動作では、プランジャ51が前進位置に向けて変位されるときに、第1の連結リンク641が制限部材65に当たるまでは、レバー61に対してプランジャ51から作用する力の方向が、保持体643の屈曲部分から第1のピン11に向かう方向になっている。
第1の連結リンク641が制限部材65に当たると、レバー61に対してプランジャ51から作用する力の方向は、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かう方向に変化し、レバー61に対するモーメント作用距離が短くなる。この後、第1の連結リンク641と第2の連結リンク642との間に作用する連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えるまでは、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度を第2の設定角度に保ち、かつ第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保ったまま、レバー61及び連結体64が一体にレバー軸9を中心として回転される。
第1の連結リンク641と第2の連結リンク642との間に作用する連結リンク間作用力が保持体643の保持力を超えると、保持体643の屈曲角度が小さくなる方向へ保持体643が弾性変形しながら、第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して回転される。これにより、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が保持体643の保持力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなる。このとき、レバー61に対するプランジャ51から作用する力の方向は、第4のピン14から保持体643の屈曲部分に向かう方向へ変化し、レバー61に対するモーメント作用距離がさらに短くなる。
このような遮断器1では、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642が保持体643を介して互いに連結されているので、第1の連結リンク641と第2の連結リンク642とを連結するためのピンをなくすことができる。これにより、リンク機構6の部品点数を減らすことができ、リンク機構6の組み立て作業の手間の軽減化を図ることができる。また、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642に対する第5のピン15の摩擦による損失をなくすことができ、プランジャ51からの力を可動体4へリンク機構6によって効率良く伝達させることができる。
なお、上記の例では、連結体64が単一材で構成されているが、第1の連結リンク641、第2の連結リンク642及び保持体643を別部材で構成してもよい。この場合、保持体643は、例えば溶接又はねじ等によって第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642に固定される。
また、上記の例では、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642が保持体643を介して連結されている構成が実施の形態1の連結体64に適用されているが、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642が保持体643を介して連結されている構成を実施の形態2又は3の連結体64に適用してもよい。
実施の形態5.
実施の形態4では、保持体643として板ばねが用いられているが、ラッチ機構及び弾性体を組み合わせた構造体を保持体643として用いてもよい。
即ち、保持体643は、ラッチ機構と、弾性体である補助ばねとを有している。ラッチ機構は、第2の連結リンク642に設けられている本体部材と、第1の連結リンク641に変位可能に設けられ、本体部材に掛かっているカム部材と、本体部材に掛かった状態でカム部材を第1の連結リンク641に保持するラッチばねとを有している。本体部材及びカム部材は、剛体になっている。カム部材は、第1の連結リンク641から制限部材65に向けて突出している。レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きいときには、カム部材が本体部材に掛かった状態になっており、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度に保持されている。レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が小さくなる方向へ第1の連結リンク641がレバー61に対して回転されて、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、ラッチ機構では、カム部材が制限部材65に押されることにより、カム部材が本体部材から外れる。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へのレバー61に対する第1の連結リンク641の回転が許容される。
補助ばねは、第1の連結リンク641及び第2の連結リンク642間に設けられている。また、補助ばねは、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度よりも小さくなる方向への第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の回転に逆らう弾性復元力を発生する。第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が補助ばねの弾性復元力に逆らって第1の設定角度よりも小さくなると、プランジャ51の力が第2の連結リンク642から補助ばねを介して第1の連結リンク641に伝わる。即ち、保持体643の保持力は、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きいときに、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度をラッチ機構によって第1の設定角度に強固に保持する大きさになっているが、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、ラッチ機構による保持がなくなることにより弱くなる。他の構成は実施の形態1と同様である。
遮断器1の投入動作では、プランジャ51が後退位置から前進位置に向かって変位されるにつれて、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が小さくなる。この後、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、第1の連結リンク641が制限部材65に当たる。このとき、ラッチ機構のカム部材が制限部材65に押されてカム部材が本体部材から外れる。これにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へのレバー61に対する第1の連結リンク641の回転が可能になる。この後、プランジャ51が前進位置に向かってさらに変位されることにより、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも小さくなる方向へ第2の連結リンク642が補助ばねの弾性復元力に逆らって第1の連結リンク641に対して回転される。
一方、遮断器1の遮断動作では、プランジャ51が前進位置から後退位置に向かって変位されると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が大きくなる方向へ第2の連結リンク642が第1の連結リンク641に対して回転され、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きくなる方向へ第1の連結リンク641がレバー61に対して回転される。これにより、ラッチ機構のカム部材が制限部材65から外れて、カム部材が本体部材に掛かった状態にラッチ機構の状態が復帰する。カム部材が本体部材に掛かった状態にラッチ機構の状態が復帰すると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度が第1の設定角度に再び保持される。他の動作は実施の形態1と同様である。
このような遮断器1では、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると保持体643の保持力が弱くなるので、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度よりも大きいときに、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度に保持し、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になると、第1の連結リンク641に対する第2の連結リンク642の角度を第1の設定角度よりも小さくすることができる。これにより、実施の形態1と同様に、プランジャ51の後退位置から前進位置への変位によって増大する電磁アクチュエータ5の投入力に合わせて、レバー61に対するモーメント作用距離を小さくすることができ、遮断器1の投入動作に電磁石52の電磁吸引力を効率良く利用することができ、電磁石52の小型化及び低コスト化を図ることができる。
なお、実施の形態1、2、4及び5では、制限部材65がレバー61に固定されているが、レバー61に対する第1の連結リンク641の回転が制限されるのであれば、これに限定されない。例えば、第1の連結リンク641に制限部材65を固定してもよいし、レバー軸9に制限部材65を回転可能に設けておき、レバー61に対する第1の連結リンク641の角度が第2の設定角度になったときにレバー61と第1の連結リンク641との間に制限部材65が噛み込むようにしてもよい。
また、各上記実施の形態では、電磁石52が固定鉄心55及び投入用コイル56を有しているが、これに限定されない。例えば、電磁石52が、投入用コイル56とは逆方向、即ち前進位置から後退位置へプランジャ51を変位させる電磁吸引力を発生する遮断用コイルを、固定鉄心55及び投入用コイル56に加えて有していてもよい。このようにすれば、プランジャ51を前進位置から後退位置へより確実に変位させることができ、遮断器1の遮断動作をより確実に行うことができる。また、例えば、電磁石52が、投入用コイル56への通電停止後にプランジャ51を前進位置に保持する磁力を発生する永久磁石を、固定鉄心55及び投入用コイル56に加えて有していてもよい。このようにすれば、投入用コイル56への通電を停止した状態でプランジャ51を前進位置に保持することができ、省エネルギの効果を向上させることができる。さらに、固定鉄心55、投入用コイル56、遮断用コイル及び永久磁石を組み合わせて電磁石52を構成してもよい。