JP6489535B2 - 虚血再灌流障害の防御剤及び臓器の処置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、虚血再灌流障害の防御剤、及び体外に摘出した臓器に水素分子を含有する液体を灌流させる、移植用臓器の処置方法に関するものである。
人間の生命は、心臓、肺、肝臓、腎臓など様々な臓器の働きにより維持されている。しかし、これらの臓器の機能が病気や事故などで失われた場合、生活や生命維持への重大な影響が生じる。そこで、重い病気や事故などにより臓器の機能が失われた人又は低下した人に対し、他人の健康な臓器と取り替えて機能を回復させる臓器移植医療が行なわれている。
一方、生まれつき、または病気、事故、加齢などで欠損、損傷、機能低下した組織や臓器を修復再生するため、患者の体外で培養した細胞や組織を使って行う再生医療が行なわれている。最近では、幹細胞やiPS細胞を利用した再生医療が注目され、臓器移植に置き換わる将来性のある医療技術として位置づけられているが、まだまだ実用化には時間がかかり、代替するまでには至っていない。
近年、臓器移植法の改正により脳死後に臓器移植ができる要件が緩和された。さらに、この法改正に加え、医療技術や免疫抑制薬などの進歩により、以前よりも移植できる臓器が増え、移植の成績も向上している。しかし、我が国で移植を希望する人は多いが、脳死後の臓器提供者の数が欧米諸国に比べて少ないので、我が国で実際に移植を受けられる人の数が非常に少ないという問題がある。
臓器移植を行う上で幾つかの問題が生じる。その中の代表的なものとして虚血再灌流障害がある。これは、臓器移植のためにドナー(臓器提供者)から提供を受けて保存された臓器をレシピエント(臓器受容者)に移植し、血流を再開させた時に起きる。虚血状態にある臓器や組織で虚血状態が解除され、その後、血液の再灌流が起きた時に、その臓器や組織内の微小循環において種々の毒性物質の産生が惹起され誘発される障害が虚血再灌流障害と考えられている。
虚血の時間と程度、臓器の種類などにより障害の程度が異なる。幾つかの原因があり、主要な原因として、虚血状態の組織に対して急激に酸素が供給されることにより、活性酸素やフリーラジカルの産生、好中球の浸潤、血小板活性化をはじめとする種々の生理反応が起こり、臓器障害を増悪させることが知られている。局所だけでなく二次的に全身の主要臓器に障害が起こることもあり、特に脳、肺、肝、腎などが標的臓器となり,多臓器不全を起こす場合もある。
移植に供するドナー臓器が不足するのは、提供される臓器の数だけでなく、摘出した臓器を移植可能な状態で保存する時間が限定され、臓器の損傷が起きることも大きな原因の一つとなっている。現在最も広く用いられている臓器の保存方法は、細胞の代謝を抑制するために臓器内血液を低温の臓器保存液に置き換えてから、低温の保存液に浸漬する冷保存法である。また、保存中の臓器に、酸素や栄養素を持続的に供給し続けることや、老廃物の除去を目的として様々な温度での灌流保存法が開発されている。しかし、これらの方法も高額な医療費、複雑なシステム、運搬性の悪さなどの観点からまだまだ解決すべき課題も多く、普及するには至っていない。
近年、還元剤である水素が、反応性の高い活性酸素種であるヒドロキシルラジカル(・OH)やペルオキシナイトライト(ONOO)と選択的に反応し、これらを還元して消去することが示された。水素ガスを肺から吸入すると、水素は拡散や血液を介して全身に分布し、活性酸素に関連した病気を抑制し、細胞障害を引き起す酸化力の強いフリーラジカルを還元して消去することができることが知られており、ラットの脳梗塞の虚血再灌流モデル、肝臓の再灌流モデルにおいて、虚血再灌流時の臓器・組織障害を水素により低減できることが報告されている(特許文献1)。
特許第5106110号公報
従来の虚血再灌流障害の防御を目的とした水素の適用法は、主として水素が含有された臓器保存液中にドナー臓器を一定期間保存した後、水素を含まない灌流液で灌流する方法が採用されてきた。しかし、この方法は、虚血によるドナー臓器の障害を抑制できても、再灌流障害の抑制には繋がっておらず、虚血再灌流障害のより効果的な防御を目的とした、臓器保存法や臓器灌流法が望まれていた。
本発明が解決しようとする課題は、虚血再灌流障害のより一層効果的な防御剤及び臓器の保存方法を提供することである。
本発明は、水素分子を含有する液体からなる虚血再灌流障害の防御剤、水素分子を含有する液体を、摘出した臓器の血管から体外灌流させる臓器の虚血再灌流障害抑制法、又は体外に摘出した臓器を冷保存したのち、前記臓器の血管から水素分子を含有する液体を灌流させる臓器の処置方法により、上記課題を解決する。
本発明者らは、ラットの肝臓を摘出し、臓器保存液中に冷保存後、門脈及び/又は肝動脈から水素含有液を灌流する水素灌流法(Hydrogen Perfusion After Cold Storage; HyPACS法)により、虚血再灌流障害が顕著に抑制されることを確認した。
肝細胞障害マーカーのトランスアミナーゼ遊離に対する影響を示すグラフである。 肝組織障害マーカーのHMGB−1遊離に対する影響を示すグラフである。 移植肝の血管抵抗(門脈灌流圧)に対する影響を示すグラフである。 類洞内皮細胞機能の指標であるヒアルロン酸クリアランスに対する影響を示すグラフである。 移植肝機能の指標となる胆汁産生量に対する影響を示すグラフである。 移植肝の胆管障害の指標である胆汁中のLDH量に対する影響を示すグラフである。 酸化ストレス障害(チオバルビツール酸反応性物質)に対する影響を示すグラフである。 酸化ストレス障害(DNAの酸化ストレスマーカー)に対する影響を示すグラフである。 グルタチオン総量を示すグラフである。 還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の比(GSH/GSSG)を示すグラフである。 肝の超微細構造解析の結果を示す電子顕微鏡写真(その1)である。 肝の超微細構造解析の結果を示す電子顕微鏡写真(その2)である。 癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM−1)の免疫組織化学染色を行った結果を示す図である。 図9Aの染色結果を画像処理した結果を示すグラフである。
本発明に係る虚血再灌流障害の防御剤は、水素分子を含有する液体からなり、その使用方法は特に限定されないが、臓器の冷保存、温保存、移植用臓器の移植直前の処理に用いることができる。
水素分子を含有する液体は特に限定されないが、臓器保存液を用いることが好ましい。臓器保存液としては、UW液、Ringer液その他の生体に適用される生理塩類溶液が挙げられる。液体に水素分子を含有させる濃度としては、水素分子の飽和濃度(15〜25℃、1気圧の常温常圧で1.6ppm)以下、好ましくは0.5〜1.2ppm、より好ましくは0.8〜1.2ppmである。飽和濃度を超える水素分子を含有する液体を用いると、臓器の血管から体外灌流させる際に水素が気体となって臓器中に混入するので好ましくない。また、溶存水素濃度が低過ぎると、水素分子による虚血再灌流障害の抑制効果が低くなったり、体外灌流に要する時間が長くなったりする。
水素分子を含有する液体を調製する方法としては、生体に適用される液体に水素ガスをバブリングする方法、生体に適用される液体を封入した水素分子透過性バッグを水素分子含有液体に浸漬する方法(たとえば特許第4486157号)、生体に適用される液体を封入した水素分子透過性バッグを水素ガス発生剤ととともに水素ガス不透過性バッグに封入する方法(たとえば特許第5935954号)などを例示できるが、生体に適用される液体に水素分子が溶解されればよいので、これらに限定される趣旨ではない。
また、本発明に係る臓器の虚血再灌流障害抑制法は、水素分子を含有する液体を、摘出した臓器の血管から体外で灌流させるものである。
本発明の対象になる臓器は、動物の体外に摘出して移植可能な臓器であって、肝臓、腎臓、膵臓、肺、心臓、小腸などが例示できる。本発明に係る臓器の虚血再灌流障害抑制法は、臓器を体外に摘出し、水素分子含有液体を、摘出した臓器の血管から体外で所定時間灌流させたのち、移植する。この場合、臓器を体外に摘出してから臓器の血管から水素含有液体を灌流させる間に、臓器を冷保存してもよい。冷保存する場合は、2〜6℃の常用されている保存液に24時間以内、浸漬することができる。
臓器に水素分子を含有する液体を導入する血管は、通常動脈であるが、肝臓は大動脈に加え、門脈から灌流させてもよい。大動脈から灌流する場合(動脈内灌流)と、門脈から灌流する場合(門脈内灌流)とで得られる効果が異なるため、動脈内灌流と門脈内灌流とを併用してもよく、目的に応じて動脈内灌流の量と門脈内灌流の量との割合を調整してもよい。
水素分子を含有する液体の温度は、臓器に悪影響を与えない冷保存の温度から室温の温度であれば、特に制限されない。水素分子を含有する液体を流させる時間は、臓器の種類や大きさにもよるが、5分〜1時間を例示することができる。
《実施例(材料および方法)》
<臓器の調製>
Wistar系雄性ラット(体重270〜320g)から肝臓を全摘出し、UW(University of Wisconsin)液に24時間冷保存(4℃)した。
<水素含有保存液の調整>
非破壊水素含有法(MiZ株式会社、特許第5935954号)を用いて、保存液に水素を溶解させ、水素含有保存液を調製した。具体的には、Ringer液が入った滅菌済みの点滴バッグ(扶桑薬品工業社製、500ml)を、湿らせた水素発生剤(MiZ株式会社製)と共にアルミバッグの中に入れ真空処理した。このアルミバッグを約24時間、室温で放置し、水素を発生させ、点滴バッグ中に無菌的に水素を溶存させた。溶存水素濃度判定試薬(MiZ株式会社製)及び電気化学式水素濃度計(東亜DKK社製DHD1−1型)で水素濃度を測定したところ、保存液中の水素濃度は1mg/L(1ppm)であった。
<臓器の評価>
上記24時間冷保存した肝臓10検体を1群として、下記[1]〜[4]群の灌流処置を施してから、移植用臓器の評価系である酸素化体外灌流(37℃、2時間)を行った後、肝障害や肝機能を測定した。
[1]25℃に保温した、水素を含有しない通常のRinger液40mLを門脈から灌流する群(以下、Control群)、
[2]25℃に保温した、水素を含有するRinger液(1.0ppm)を用いて、門脈から40mLを灌流する群(以下、H2−PV群)、
[3]25℃に保温した、水素を含有するRinger液(1.0ppm)を用いて、肝動脈から40mLを灌流する群(以下、H2−HA群)、
[4]25℃に保温した、水素を含有するRinger液(1.0ppm)を用いて、門脈と肝動脈の両方からそれぞれ40mLと20mLを灌流する群(以下、H2−PV+HA群)。
測定値について統計学的な解析を行った。すなわち、一時点のみのパラメーターの場合はOne−way ANOVA(一元配置分散分析)を行い、統計学的に有意差があれば、さらに多重比較のPost hoc Test(事後検定)を実施して、Control群と、H2−PV群、H2−HA群またはH2−PV+HA群の間の統計学的な有意差を調べた。一方、経時的な変化があるパラメーターの場合はTwo−way repeated measured ANOVA(反復測定二元配置分散分析)を行い、統計学的に有意差があれば、同様に多重比較のPost hoc Test(事後検定)を実施してControl群と、H2−PV群、H2−HA群またはH2−PV+HA群の間の統計学的な有意差を調べた。測定データは平均値±標準誤差を求め、各群間の統計学的有意差はp<0.05の場合を統計学的に有意とした。
《結果》
肝細胞障害マーカーであるトランスアミナーゼ遊離に対する影響を、図1に示した。図示するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳酸脱水素酵素(LDH)の各結果について分散分析を行うと、それぞれp=0.0005、p=0.0011およびp=0.0013でいずれも統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、いずれのマーカーにおいてもControl群と、H2−PV群、H2−HA群またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05、p<0.01、またはp<0.0001)が見られた。この結果は、水素含有保存液で処置した群ではトランスアミナーゼ遊離が抑制され、肝細胞障害が極めて軽微であることを示している。
肝細胞障害マーカーであるHMGB−1(High Mobility Group Box 1)遊離に対する影響を図2に示した。この結果について分散分析を行うと、p<0.0001で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、いずれのマーカーにおいてもControl群と、H2−PV群、H2−HA群またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果も、水素含有保存液で処置した群ではHMGB−1遊離が抑制され、同様に肝細胞障害が極めて軽微であることを示している。
門脈の血管抵抗性とヒアルロン酸クリアランス(HAクリアランス)に対する影響をそれぞれ図3Aおよび図3Bに示した。再灌流後の門脈圧(PVP)について分散分析を行うと、p<0.0001で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、Control群と、H2−PV群、H2−HA群またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.0001)が見られた。また、HAクリアランスについて分散分析を行うと、p=0.0035で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、Control群と、H2−PV群、またはControl群とH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果は、水素含有保存液の門脈灌流が類洞内皮細胞の維持に有効である一方、動脈内灌流は類洞内皮細胞の維持に有効性を示さないことを示している。
胆汁産生量と胆汁中のLDH量に対する影響を図4Aおよび図4Bに示した。胆汁産生量およびLDH量について分散分析を行うと、それぞれp<0.0001およびp=0.0021で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、いずれの測定値においてもControl群と、H2−HA群、またはControl群とH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果は、水素含有保存液の動脈内灌流が胆汁産生量や胆管障害の軽減に有効である一方、門脈内灌流は胆汁産生量や胆管障害に有効性を示さないことを示している。
酸化ストレス障害に対する影響を図5Aおよび図5Bに示した。脂質過酸化のマーカーであるTBARS(チオバルビツール酸反応性物質)について分散分析を行うと、p=0.0094で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、Control群と、H2−HA群、またはControl群と、H2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果は、水素含有保存液による動脈内灌流が脂質過酸化の抑制に有効である一方、門脈内灌流は脂質過酸化の抑制の程度が少ないことを示している。また、DNAの酸化ストレスマーカーである8−OHdGについて分散分析を行うと、p=0.0059で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、Control群と、H2−PV群、H2−HA群、またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果は、門脈内灌流および動脈内灌流の両者がDNAの酸化ストレス軽減に有効であることを示している。
組織の抗酸化ポテンシャルの指標であるグルタチオン総量および還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の比(GSH/GSSG)をそれぞれ図6Aおよび図6Bに示した。グルタチオン総量およびGSH/GSSG比について分散分析を行うと、それぞれp=0.0014およびp=0.0094で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、いずれの測定値においてもControl群と、H2−PV群、H2−HA群、またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。この結果は、門脈内灌流および動脈内灌流の両者が酸化ストレスや酸化還元指標(GSH/GSSG)に有効であることを示している。
肝の超微細構造(電子顕微鏡観察)解析の結果を図7に示した。類洞内皮細胞の観察において(図7の上段のA〜D)、Control群(A)では細胞間隙が大きく、類洞内皮孔が開大し疎であったのに対し、水素含有保存液を灌流させた各群(B〜D)では健常に保たれていた。H2−PV群(B)、H2−PV+HA群(D)、H2−HA群(C)の順に良好な結果が観察された。即ち、移植肝の類洞壁(微小循環、A〜D)は、水素含有保存液の灌流により障害が軽減され、肝動脈よりも門脈からの灌流で、その保護効果はより顕著であった。毛細胆管の微絨毛構造(図の下段のE〜H)の観察でも、Control群(E)に比べて水素含有保存液を灌流させた各群(F〜H)では微絨毛構造が良好に保たれていた。H2−HA群(G)、H2−PV+HA群(H)、H2−PV群(F)の順に良好な結果が観察された。即ち、移植肝の毛細胆管は、肝動脈からの水素含有保存液の灌流により障害が軽減され、門脈灌流の保護効果は明らかでなかった。これらは、肝の類洞内皮細胞保護には水素含有保存液の門脈内灌流が、細胆管の絨毛構造には水素含有保存液の動脈内灌流が良好な保護効果を発揮することを示している。
同様に肝細胞の超微細構造(電子顕微鏡観察)解析の結果を図8に示した。Control群ではミトコンドリア(M)の膨化変性が認められたが、水素含有保存液を灌流させた各群(H2−PV群、H2−HA群、H2−PV+HA群)では比較的良好な観察結果が得られた。水素含有保存液を灌流させた各群(H2−PV群、H2−HA群、H2−PV+HA群)の間の微細構造に明確な差は認められなかった。
癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM−1)の免疫組織化学染色を行った結果を図9Aに示した。CEACAM−1は肝細胞と細胆管、毛細胆管の接着、形態維持に重要な役割を示しており、免疫組織化学染色で茶色に染色される領域が健常な(毛)細胆管である。Control群に比べて、水素含有保存液を灌流させた各群ではより強い染色性が得られた。染色結果を画像解析ソフトにて定量化(図9B)し、この結果について分散分析を行うと、それぞれp<0.0001で統計学的に有意差を示し、さらに多重比較検定を行うと、Control群とH2−PV群、H2−HA群、またはH2−PV+HA群の間に統計学的な有意差(p<0.05)が見られた。
臓器保存の世界標準法は、依然として単純冷保存法である。今回の結果によれば、通常の冷保存後に、門脈または肝動脈から水素含有保存液を灌流するだけで 虚血再潅流障害が顕著に抑制できた。本発明の成果は、肝臓移植だけでなく、その他の臓器移植における虚血再灌流障害の抑制に水素含有灌流液が利用できることを示している。

Claims (5)

  1. 1.6ppm以下の濃度の水素分子を含有する液体からなり、かつ該液体が、移植用臓器の冷保存終了後、冷温で該臓器の血管から体外で灌流され、それによって該臓器の虚血再灌流障害を防御するために使用されるものであることを特徴とする、移植用臓器の虚血再灌流障害の防御剤。
  2. 前記水素分子を含有する液体が、無菌的に水素分子を溶存して得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の防御剤。
  3. 1.6ppm以下の濃度の水素分子を含有する液体を、移植用臓器の冷保存終了後、冷温で該臓器の血管から体外で灌流ることを含むことを特徴とする、移植用臓器の虚血再灌流障害抑制方法。
  4. 移植用臓器を冷保存終了後、冷温で該臓器の血管から1.6ppm以下の濃度の水素分子を含有する液体を体外で灌流ることを含むことを特徴とする、移植用臓器の処置方法。
  5. 前記水素分子を含有する液体が、無菌的に水素分子を溶存して得られるものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
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