JP6489362B2 - 摺動軸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、たとえば、車両用ステアリング装置において操舵力を伝達するインターミディエイトシャフト等として使用される摺動軸の製造方法に関する。
特許文献1は、車両用操舵装置に組み込まれたインターミディエイトシャフトを開示している。このインターミディエイトシャフトは、内軸と筒状の外軸とを軸方向に沿って摺動可能に且つトルク伝達可能にスプライン嵌合させて形成されている。内軸の外周面には、流動浸漬によって樹脂がコーティングされて樹脂層が形成されている。樹脂層には、外軸の内周面に形成されたスプラインに嵌合するスプラインが形成されている。
特開2014−238173号公報
予めスプラインが形成された製品に流動浸漬等によって樹脂コーティングを施しても、製品のスプライン表面に所望の厚さのコーティング層を形成することは困難である。そのため、一般的には、後加工としてブローチ加工が行われている。
しかしながら、樹脂コーティング材料の膜厚や弾性率が増加するに従って、ブローチ加工荷重が増加するという問題がある。ブローチ加工荷重が増加すると、コーティング層をブローチ刃具でスムーズに切削することが難しく、コーティング層の表面が荒れてスプラインの寸法精度が悪くなったり、最悪の場合、コーティング層が剥がれたりするおそれがあるためである。この点、ブローチ加工速度を低下させることによってブローチ加工荷重を低減させてもよいが、そうすると、サイクルタイムが伸びて生産性が低下してしまう。
そこで、本発明の目的は、ブローチ加工中の樹脂コーティング材料の弾性率を十分に低下させ、樹脂層に形成されるスプラインの寸法精度を向上できると共に、当該樹脂層の剥がれを防止することができる摺動軸の製造方法を提供することである。
本発明の摺動軸(5)の製造方法は、スプライン(26)が形成された外軸(22)と、スプライン(25)が形成され、前記外軸(22)と摺動可能に前記外軸(22)に挿入された内軸(21)と、前記外軸(22)の内周面(22a)または前記内軸(21)の外周面(21a)を被覆する樹脂層(27)とを含む摺動軸(5)の製造方法であって、前記外軸(22)の内周面(22a)または前記内軸(21)の外周面(21a)を樹脂材料でコーティングして前記樹脂層(27)を形成する工程と、前記樹脂材料がガラス転移点T以上の状態で、ブローチ加工によって前記樹脂層(27)にスプライン(25,26)を形成する工程とを含み、前記ブローチ加工をするときの前記樹脂材料の温度が、当該樹脂材料の融点T −100℃以下である(請求項1)。
この方法によれば、ブローチ加工中の樹脂材料がガラス転移点T以上の状態であるため、当該加工中の樹脂材料の弾性率を十分に低下させることができる。これにより、ブローチ加工荷重を低減し、当該樹脂材料をブローチ刃具でスムーズに切削することができる。その結果、外軸または内軸の周面上の樹脂層に形成されるスプラインの寸法精度を向上できると共に、当該樹脂層の剥がれを防止することができる。
また、樹脂材料の弾性率を低下させることでブローチ加工荷重を低減できるので、ブローチ加工速度を低減させなくてもよい。そのため、摺動軸の生産性の低下を回避することもできる。
また、樹脂材料の温度が融点T −100℃程度で弾性率の低下が概ね収束するので、樹脂材料の温度を融点T −100℃以下に抑えることによって、耐久性等の樹脂層の物性に与える影響を少なくすることができる。
本発明の摺動軸(5)の製造方法では、前記樹脂層(27)を形成する工程は、流動浸漬によって前記樹脂層(27)を形成する工程を含んでいてもよい(請求項2)。
流動浸漬のように加熱を伴うコーティング方法を採用することによって、コーティング時の熱(熱履歴)を、樹脂材料をガラス転移点T以上の状態にするために利用することができる。加熱を伴うコーティング方法として流動浸漬の他、たとえば、前記樹脂層を形成する工程は、静電塗装によって前記樹脂層を形成する工程を含んでいてもよい
発明の摺動軸(5)の製造方法は、前記ブローチ加工前に、前記樹脂層(27)またはブローチ刃具(29)を加熱する工程を含んでいてもよい(請求項)。
樹脂層またはブローチ刃具を積極的に加熱する工程を設けることで、樹脂材料の温度を精度よく把握することができる。
本発明の摺動軸(5)の製造方法では、前記加熱の対象が、前記樹脂層(27)であってもよい(請求項)。
この方法によれば、樹脂層が直接加熱されるので、樹脂層の弾性率を全体に亘って均等に低下させることができ、ブローチ加工精度を向上させることができる。
本発明の摺動軸(5)の製造方法では、前記樹脂材料が、ポリアミド610またはポリアミド612であってもよい(請求項)。
ポリアミド610およびポリアミド612は、通常時の弾性率が比較的高いため、ブローチ加工中の樹脂材料の弾性率を低下させるという本発明による利益を効果的に享受することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るインターミディエイトシャフトが組み込まれた電動パワーステアリング装置の概略図である。 図2は、前記インターミディエイトシャフトの要部の断面図である。 図3は、図2のIII−III切断線における断面図である。 図4は、図2のIV−IV切断線における断面図である。 図5は、本発明の第1実施形態に係るインターミディエイトシャフトの製造工程の一部を示す図である。 図6は、樹脂層の形成に関連する工程を説明するための断面図である。 図7は、ブローチ加工に関連する工程を説明するための断面図である。 図8は、本発明の第2実施形態に係るインターミディエイトシャフトの製造工程の一部を示す図である。 図9は、本発明の第3実施形態に係るインターミディエイトシャフトの製造工程の一部を示す図である。 図10は、ポリアミド610の弾性率の温度依存性を示す図である。 図11は、ポリアミド610の弾性率とブローチ加工荷重との関係を示す図である。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインターミディエイトシャフト5が組み込まれた電動パワーステアリング装置1の概略図である。
電動パワーステアリング装置1は、ハンドル2と一体回転可能に連結されたステアリングシャフト3、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結されたインターミディエイトシャフト5、インターミディエイトシャフト5に自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7、およびピニオンシャフト7のピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aを有して、自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8を備えている。
ピニオンシャフト7およびラックバー8によって、ラックアンドピニオン機構からなる操舵機構9が構成されている。
ラックバー8は、車体に固定されるラックハウジング10内に、図示しない複数の軸受を介して直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部はラックハウジング10の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド11が結合されている。
各タイロッド11は、図示しないナックルアームを介して対応する操向輪12に連結されている。
ハンドル2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、その回転が、ピニオン歯7aおよびラック歯8aによって自動車の左右方向に沿うラックバー8の直線運動に変換されて操向輪12の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、ハンドル2に連なる入力軸3aと、ピニオンシャフト7に連なる出力軸3bとに分割されており、両軸3a、3bはトーションバー13を介して同一の軸線上で相対回転可能に互いに連結されている。
トーションバー13には、両軸3a、3b間の相対回転変位量から操舵トルクを検出するためのトルクセンサ14が設けられており、トルクセンサ14のトルク検出結果がECU(Electric Control Unit:電子制御ユニット)15に与えられる。
ECU15では、トルク検出結果や、図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路16を介して操舵補助用の電動モータ17を駆動制御する。そして、電動モータ17の出力回転が、減速機18を介して減速されてピニオンシャフト7に伝達され、ラックバー8の直線運動に変換されて操舵が補助される。
減速機18は、電動モータ17により回転駆動される入力軸としてのウォームシャフト19(小歯車)と、ウォームシャフト19に噛み合うとともにステアリングシャフト3の出力軸3bに一体回転可能に連結されるウォームホイール20(大歯車)とを備えている。
図2は、インターミディエイトシャフト5の要部の断面図である。
インターミディエイトシャフト5は、たとえばロアーシャフトである内軸21と、たとえばアッパーシャフトである筒状の外軸22とを備えている。
外軸22の上端は、自在継手4のヨーク4aに連結されており、内軸21の下端は、自在継手6のヨーク6aに連結されている。
外軸22は、開放端である第一端部23および閉塞端である第二端部24を有している。第二端部24は自在継手4のヨーク4aの端部に連結され、閉塞されている。
内軸21は、第一端部23側から外軸22内に挿入されて、軸方向X1に摺動可能に連結されている。具体的には、内軸21、および外軸22がスプライン嵌合されている。
図3は、図2のIII−III切断線における断面図である。図4は、図2のIV−IV切断線における断面図である。
図2および図3を参照して、内軸21の外周面21aは、軸方向X1に平行な内スプライン25を有している。また、図2および図4を参照して、外軸22の内周面22aは、軸方向X1に平行で、かつ内スプライン25と噛み合う外スプライン26を有している。
内スプライン25と外スプライン26の噛み合い、すなわちスプライン嵌合により、内軸21と外軸22は、軸方向X1に相対摺動可能でかつ同伴回転可能とされている。
図3を参照して、内スプライン25を含む内軸21の外周面21aは、樹脂層27によって被覆されている。樹脂層27を設けることによって、内軸21と外軸22の間に所定の摺動抵抗を付与するとともに、当該両軸21,22間のクリアランスを埋めてガタ音を低減したり、ステアリング操作時のハンドル2のガタつきを少なくしたりできる。
図5は、本発明の第1実施形態に係るインターミディエイトシャフト5の製造工程の一部を示す図である。
第1実施形態においてインターミディエイトシャフト5を製造するには、たとえば、樹脂層27の形成工程およびブローチ加工工程が順に行われる。この第1実施形態では、内スプライン25が予め形成された内軸21の外周面21aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われるが、他の実施形態として、予め外スプライン26が形成された外軸22の内周面22aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われてもよい。
樹脂層27の形成工程は、たとえば、流動浸漬工程が採用される。
流動浸漬工程では、まず、内スプライン25を前加熱する。前加熱の温度は、後述する浸漬コーティングで使用される粉体塗料中のベース樹脂の融点T以上である。たとえば、ベース樹脂としてポリアミド610が使用される場合には、240℃〜250℃まで加熱する。加熱方法としては、特に制限されず、たとえば、高周波加熱、ヒータ加熱、熱風加熱等の公知の加熱方法を適用できる。次に、樹脂層27のもとになる粉体塗料を、流動槽内で、空気等を吹き込んで浮遊、流動させた状態とする。そして、浮遊、流動している粉体塗料中に、前加熱された内軸21を浸漬する。
これにより、図6に示すように、塗料が内軸21の外周面21aに被着されると共に溶融流展されて樹脂層27が形成される(浸漬コーティング)。この段階では、図6に示したように塗料を厚づけして、できるだけ連続した樹脂層27を形成することが好ましい。これにより、たとえばポリアミド610等の、溶融時の粘度が高く、被着後のつきまわり性が低いためスムーズに溶融流展されないベース樹脂を含む塗料を使用した場合でも、外周面21aに連続した樹脂層27を形成できる。
なお、ベース樹脂としては、上記ポリアミド610の他、ポリアミド612、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、フッ素樹脂等の(スーパー)エンジニアリングプラスチック、その他の熱可塑性樹脂全般がいずれも使用できる。これらのうち、好ましくは、ポリアミド610およびポリアミド612を使用できる。
ポリアミド610およびポリアミド612は、通常時の弾性率が比較的高いため、後述するブローチ加工中の樹脂材料(樹脂層27)の弾性率を低下させるという本発明による利益を効果的に享受することができる。また、ポリアミド610およびポリアミド612を使用する利点として、耐熱性、耐摩耗性、流動性、コストのバランスにも優れているため、たとえば、エンジンルームのような高温環境下での使用にも耐えることができる。
また、コーティング工程での樹脂層27の厚さは、特に制限されないが、内スプライン25間の歯溝25a内の厚さtが100μm以上であるのが好ましく、1.5mm以下であることが好ましい。
コーティング工程で形成したブローチ加工前の樹脂層27の厚さtがこの範囲未満では、特にポリアミド610等の、溶融時の粘度が高く、被着後のつきまわり性が低いためスムーズに溶融流展されないベース樹脂を含む粉体塗料を使用した際に、歯溝25a内から内スプライン25の歯先25bまで連続した樹脂層27を形成し難くなる。
また、冷却による樹脂層27の収縮率や、内軸21と外軸22の間に設定されるクリアランスにもよるが、ブローチ加工工程およびその後の冷却工程を経て形成される樹脂層27の厚さが小さくなりすぎて、上記のクリアランスを十分に埋めることができず、ガタを生じ易くなる場合もある。
一方、厚さtが上記の範囲を超える場合には、ブローチ加工前の肉厚の樹脂層27内(特に、歯溝25aの樹脂層27内)で、厚さ方向の温度差が大きくなって真空ボイドが発生し易くなる場合がある。
これに対し、厚さtを上記の範囲とすることで、内軸21と外軸22の間に設定されるクリアランスを埋めるのに適した厚さを有し、しかも、歯溝25a内から内スプライン25の歯先25bまで連続した樹脂層27を、真空ボイドを生じることなしに、効率よく形成することができる。
次に、内スプライン25を後加熱する。これにより、外周面21aの半融解状態になった樹脂が完全に溶かされ、樹脂表面が滑らかに仕上げられる。
その後、冷却した後、ブローチ加工工程を行う。冷却は、たとえば、室温で半日程度放置して行う自然冷却であってもよい。
この第1実施形態では、ブローチ加工工程に先立って、少なくとも樹脂層27およびブローチ刃具29の一方を加熱する工程を行う。加熱方法としては、特に制限されず、たとえば、高周波加熱、ヒータ加熱、熱風加熱等の公知の加熱方法を適用できる。加熱温度は、樹脂層27を構成する樹脂材料のガラス転移点T以上であり、好ましくは、ガラス転移点T以上、当該樹脂材料の融点T−100℃以下である。たとえば、樹脂材料としてポリアミド610(T=約50℃、T=約220℃)が使用される場合には、その加熱温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。これにより、冷却して固化した樹脂層27の弾性率を低下させることができる。
そして、樹脂層27を加熱する場合には、樹脂層27の弾性率を低下させた後にブローチ加工に移行することになるが、樹脂層27の弾性率を全体に亘って均等に低下させることができるので、その後のブローチ加工精度を向上させることができる。
一方、ブローチ刃具29を加熱する場合には、樹脂層27の弾性率を低下させた後にブローチ加工に移行と言うよりはむしろ、加熱されたブローチ刃具29によって樹脂層27の弾性率を低下させながら、ブローチ加工を行う。
次にブローチ加工工程では、加熱工程によって軟化した樹脂層27がガラス転移点T以上の状態を保持し、冷却されないうちに、当該樹脂層27をブローチ加工によって薄肉化する。
具体的には、たとえば図7を参照して、あらかじめ用意したブローチ刃具29内に、内軸21を通過させることによって、樹脂層27をブローチ加工して薄肉化する。
ブローチ刃具29としては、筒状の内周面29aに、その断面形状が外軸22の外スプライン26と類似した、内軸21の内スプライン25間の歯溝25aに嵌り合う平行な複数の歯30を有するものを用いる。
そして、内軸21とブローチ刃具29の中心軸を一致させ、かつ内軸21の歯溝25aとブローチ刃具29の歯30の位相を一致させた状態で、当該ブローチ刃具29内に内軸21を通過させる。これにより、樹脂層27がブローチ加工されて薄肉化されて内スプライン25が形成される。
その後、薄肉化した樹脂層27を、内軸21ごと常温まで冷却したあと、外軸22と組み合わせることによって、図1および図2に示すインターミディエイトシャフト5が得られる。
この第1実施形態に係る方法によれば、ブローチ加工中の樹脂材料(樹脂層27)がガラス転移点T以上の状態であるため、当該加工中の樹脂材料の弾性率を十分に低下させることができる。これにより、ブローチ加工荷重を低減し、当該樹脂材料をブローチ刃具29でスムーズに切削することができる。その結果、樹脂層27に形成される内スプライン25の寸法精度を向上できると共に、当該樹脂層27の剥がれを防止することができる。
また、樹脂材料の弾性率を低下させることでブローチ加工荷重を低減できるので、ブローチ加工速度を低減させなくてもよい。そのため、インターミディエイトシャフト5の生産性の低下を回避することもできる。
また、樹脂材料の温度が融点T−100℃程度で弾性率の低下が概ね収束するので、樹脂材料の温度を融点T−100℃以下に抑えることによって、耐久性等の樹脂層27の物性に与える影響を少なくすることができる。
また、加熱してガラス転移点T以上の状態となった樹脂層27を、冷却される前にブローチ加工工程を経て厚さを十分に減じた状態で、次の冷却工程で冷却することができる。そのため、肉厚のまま冷却して冷却完了後にブローチ加工する場合に比べて、冷却工程で樹脂層27内に生じる厚さ方向の温度差を極力小さくして、真空ボイドの発生を抑制できる。
また、樹脂層27を、ブローチ加工工程で薄肉化後に冷却しているため、樹脂層27、および当該樹脂層27で被覆された内軸21の冷却温度を短縮して、インターミディエイトシャフト5の生産性を向上することもできる。
図8は、本発明の第2実施形態に係るインターミディエイトシャフト5の製造工程の一部を示す図である。
第2実施形態においてインターミディエイトシャフト5を製造するには、前述の第1実施形態と同様に、たとえば、樹脂層27の形成工程およびブローチ加工工程が順に行われる。この第2実施形態では、内スプライン25が予め形成された内軸21の外周面21aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われるが、他の実施形態として、予め外スプライン26が形成された外軸22の内周面22aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われてもよい。
樹脂層27の形成工程は、たとえば、静電塗装工程が採用される。
静電塗装工程では、スプレーガン28と、塗装対象である内軸21との間に高電圧を印加し、樹脂層27のもとになる粉体塗料をスプレーガン28から吹き付ける。これにより、前述の流動浸漬工程と同様に、内軸21の外周面21aに樹脂層27が形成される。なお、粉体塗料のベース樹脂としては、前述の各種ベース樹脂を使用できる。
次に、内スプライン25を後加熱する。これにより、外周面21aの半融解状態になった樹脂が完全に溶かされ、樹脂表面が滑らかに仕上げられる。
その後、冷却した後、ブローチ加工工程を行う。冷却は、たとえば、室温で半日程度放置して行う自然冷却であってもよい。
この第2実施形態においても、前述の第1実施形態と同様に、ブローチ加工工程に先立って、少なくとも樹脂層27およびブローチ刃具29の一方を加熱する工程を行う。加熱方法としては、前述の各種加熱方法を適用できる。加熱温度についても、前述の第1実施形態と同様である。
そして、樹脂層27を加熱する場合には、樹脂層27の弾性率を低下させた後にブローチ加工に移行することになるが、樹脂層27の弾性率を全体に亘って均等に低下させることができるので、その後のブローチ加工精度を向上させることができる。
一方、ブローチ刃具29を加熱する場合には、樹脂層27の弾性率を低下させた後にブローチ加工に移行と言うよりはむしろ、加熱されたブローチ刃具29によって樹脂層27の弾性率を低下させながら、ブローチ加工を行う。
次にブローチ加工工程では、加熱工程によって軟化した樹脂層27がガラス転移点T以上の状態を保持し、冷却されないうちに、当該樹脂層27をブローチ加工によって薄肉化する。これにより、図7に示したように、樹脂層27がブローチ加工されて薄肉化されて内スプライン25が形成される。
その後、薄肉化した樹脂層27を、内軸21ごと常温まで冷却したあと、外軸22と組み合わせることによって、図1および図2に示すインターミディエイトシャフト5が得られる。
この第2実施形態に係る方法においても、ブローチ加工中の樹脂材料(樹脂層27)がガラス転移点T以上の状態であるため、前述の第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図9は、本発明の第3実施形態に係るインターミディエイトシャフト5の製造工程の一部を示す図である。
第3実施形態においてインターミディエイトシャフト5を製造するには、たとえば、樹脂層27の形成工程およびブローチ加工工程が順に行われる。この実施形態では、内スプライン25が予め形成された内軸21の外周面21aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われるが、他の実施形態として、予め外スプライン26が形成された外軸22の内周面22aに樹脂層27を形成し、当該樹脂層27をブローチ加工する工程が行われてもよい。
樹脂層27の形成工程は、たとえば、前述の流動浸漬工程、静電塗装工程、その他公知のコーティング工程を含んでいてもよい。コーティング工程を経ることによって、内軸21の外周面21aに樹脂層27が形成される。
次に、内スプライン25を後加熱する。これにより、外周面21aの半融解状態になった樹脂が完全に溶かされ、樹脂表面が滑らかに仕上げられる。後加熱の温度は、樹脂層27を構成する樹脂材料のガラス転移点T以上であり、好ましくは、ガラス転移点T以上、当該樹脂材料の融点T−100℃以下である。たとえば、樹脂材料としてポリアミド610(T=約50℃、T=約220℃)が使用される場合には、その加熱温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。これにより、樹脂層27の弾性率を低下させることができる。
その後、樹脂層27が冷却されて固化する前に、ブローチ加工工程を行う。樹脂層27の形成後の冷却を省略することによって、後加熱工程を、第1および第2実施形態におけるブローチ加工工程に先立つ加熱工程に代えることができる。すなわち、流動浸漬や静電塗装のように加熱(後加熱)を伴うコーティング方法を採用することによって、コーティング時の熱(熱履歴)を、樹脂材料をガラス転移点T以上の状態にするために利用することができる。
そして、樹脂層27が加熱されるので、樹脂層27の弾性率を低下させた後にブローチ加工に移行することになるが、樹脂層27の弾性率を全体に亘って均等に低下させることができるので、その後のブローチ加工精度を向上させることができる。
次にブローチ加工工程では、後加熱工程によって軟化した樹脂層27がガラス転移点T以上の状態を保持し、冷却されないうちに、当該樹脂層27をブローチ加工によって薄肉化する。これにより、図7に示したように、樹脂層27がブローチ加工されて薄肉化されて内スプライン25が形成される。
その後、薄肉化した樹脂層27を、内軸21ごと常温まで冷却したあと、外軸22と組み合わせることによって、図1および図2に示すインターミディエイトシャフト5が得られる。
この第3実施形態に係る方法においても、ブローチ加工中の樹脂材料(樹脂層27)がガラス転移点T以上の状態であるため、前述の第1および第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図10は、ポリアミド610の弾性率の温度依存性を示す図である。また、図11は、ポリアミド610の弾性率とブローチ加工荷重との関係を示す図である。
図10を参照して、ポリアミド610の弾性率は、ガラス転移点T(=50℃)よりも低温側(20℃〜25℃付近)から高温側にかけて急激に低下し、融点T(=120℃付近)で概ね収束し、それよりも高温側でほぼ安定することが分かる。
一方、図11を参照して、ポリアミド610の弾性率(MPa)が上昇するほど、それに比例して樹脂層27のブローチ加工荷重(N)が上昇する傾向がある。
すなわち、図10および図11から、樹脂材料(樹脂層27)がガラス転移点T以上の状態でブローチ加工することによって、当該加工中の樹脂材料の弾性率を十分に低下させることができ、その結果、ブローチ加工荷重を低減し、当該樹脂材料をブローチ刃具29でスムーズに切削できることが分かる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、樹脂層27は、内軸21の外周面21aではなく、外軸22の内周面22aに形成してもよい。ただし、両方に樹脂層を形成する必要はない。
また、インターミディエイトシャフト5が組み込まれたステアリング装置は、図1に示すコラム式の電動パワーステアリング装置(EPS)には制限されず、たとえば、油圧パワーステアリング装置(HPS)等の他の方式のパワーステアリング装置や、操舵補助機能を有しない通常のステアリング装置であってもよい。
また、本発明は、たとえば、ステアリング装置において衝撃吸収ストロークを確保するための伸縮可能シャフト等に適用してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
5…インターミディエイトシャフト、21…内軸、21a…外周面、22…外軸、22a…内周面、25…内スプライン、26…外スプライン、27…樹脂層、29…ブローチ刃具

Claims (5)

  1. スプラインが形成された外軸と、
    スプラインが形成され、前記外軸と摺動可能に前記外軸に挿入された内軸と、
    前記外軸の内周面または前記内軸の外周面を被覆する樹脂層とを含む摺動軸の製造方法であって、
    前記外軸の内周面または前記内軸の外周面を樹脂材料でコーティングして前記樹脂層を形成する工程と、
    前記樹脂材料がガラス転移点T以上の状態で、ブローチ加工によって前記樹脂層にスプラインを形成する工程とを含み、
    前記ブローチ加工をするときの前記樹脂材料の温度が、当該樹脂材料の融点T −100℃以下である、摺動軸の製造方法。
  2. 前記樹脂層を形成する工程は、流動浸漬によって前記樹脂層を形成する工程を含む、請求項1に記載の摺動軸の製造方法。
  3. 前記ブローチ加工前に、前記樹脂層またはブローチ刃具を加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の摺動軸の製造方法。
  4. 前記加熱の対象が、前記樹脂層である、請求項に記載の摺動軸の製造方法。
  5. 前記樹脂材料が、ポリアミド610またはポリアミド612である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動軸の製造方法。
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