JP6487863B2 - バット選択支援システム及び方法 - Google Patents
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Description
具体的には、例えば、以下の(1)〜(4)に示すような重量バランスの異なる種類のバットが知られている。
(1)トップバランス:バットの先端側に重心位置が配置され、慣性モーメントの大きなバット
(2)ライトバランス:バットのグリップ側に重心位置が配置され、慣性モーメントの小さなバット
(3)ミドルバランス:慣性モーメントがトップバランスとライトバランスの中間に位置するバット
(4)トップミドルバランス:慣性モーメントがトップバランスとミドルバランスの中間に位置するバット
(a)バット選択時に、簡単な素振りを行い、その感覚に基づき選択する。
(b)選択者とは体力レベルやスイングスキルの異なる選手の意見だけを参考にして選択する。
(c)販売員の定性的な評価を参考にして選択する。
すなわち、現在のバットの選択方法は、選択者の体力レベルやスイングスキルを定量的に評価した結果に基づく選択ではなく、定性的な評価に基づく選択であるため、各選択者に応じた適切な慣性モーメントを有するバットを選択し難い。
特許文献1、2に記載のシステムのいずれも、打者が慣性モーメントの異なる複数種のバットでボールを打撃し、その際に測定したバットのスイング速度や打撃直後のボールの速度に基づき、その打者に適するバットを選択する構成である。
(1)第1手順:前記測定装置により被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度と、前記母集団の情報に含まれる前記スイング速度とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記スイング速度の前記母集団の中における相対的な評価である第1評価値を算出する。
(2)第2手順:前記測定装置により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記ミート力と、前記母集団の情報に含まれる前記ミート力とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記ミート力の前記母集団の中における相対的な評価である第2評価値を算出する。
(3)第3手順:前記第1評価値及び前記第2評価値に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての評価指標を算出する。
(4)第4手順:前記第3手順で算出した前記各判定用バットについての評価指標のうち、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バットの慣性モーメントを特定し、前記予め記憶されたバットの種類のうち、前記特定した慣性モーメントに関連付けて記憶されているバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する。
上記のスイング速度は、主として被験打者(本発明に係るバット選択支援システムを利用してバットを選択する打者)の体力レベルに相関を有すると考えられる。また、上記のミート力は、スイング速度によるエネルギーを如何に上手にボールに伝えることができるかを示す指標であるため、主として被験打者のスイングスキルに相関を有すると考えられる。そして、打撃したボールを遠くに飛ばすには、スイング速度及びミート力の双方が重要な因子になると考えられる。したがい、本発明に係るバット選択支援システムによれば、被験打者の体力レベルやスイングスキルに相関を有すると考えられる打撃時の物理量(スイング速度及びミート力)が、慣性モーメントがそれぞれ異なる複数種の各判定用バットについて測定され、測定された被験打者の体力レベルやスイングスキルに相関を有すると考えられる打撃時の物理量に基づき、推奨するバットの種類が選択されることになる。
なお、本発明において、「測定」とは、測定対象である物理量を直接測定する場合のみならず、測定対象に関連する物理量を測定し、その測定結果から測定対象である物理量を演算して算出する場合も含む概念である。
また、本発明において、「スイング速度」とは、必ずしも打撃位置(判定用バットがボールに衝突する瞬間の判定用バットの位置)での判定用バットの速度に限るものではない。例えば、スイングを検知してから打撃位置に至るまでの判定用バットの平均速度や、スイングを検知してから打撃位置に至るまでの判定用バットの最大速度など、各判定用バットでボールを打撃する際のスイングに関連する種々の速度を含む概念である。
本発明における「バットの種類」は、各判定用バットの慣性モーメントに関連付けて予め記憶されるが、具体的には、例えば、各判定用バットの慣性モーメントと、各判定用バットの慣性モーメントと同一又は近い慣性モーメントを有するバットの種類とが互いに関連付けて記憶される。また、後述のように、判定装置に予め記憶されている上記のバットの種類の中から、被験打者に対して推奨するバットの種類が選択されることになる。このため、本発明における「バットの種類」としては、製品の品番や長さを例示できる。ただし、本発明はこれに限るものではなく、前述のトップバランスやライトバランス等の慣性モーメントに関するバットの性質をバットの種類として記憶させておくなど、各判定用バットの慣性モーメントと関連するように種類分けされている限りにおいて、種々の形態を採用可能である。
また、本発明における「複数の打者」の人数に特に制限はない。しかしながら、後述のように、被験打者に対して測定した物理量(スイング速度及びミート力)を客観的に評価可能にする(母集団の中における相対的な評価である評価値で評価する)ため、複数の打者について測定された各判定用バットについてのスイング速度及びミート力を含む母集団の情報を予め記憶して利用するので、複数の打者の人数はできるだけ多い方が好ましい。また、複数の打者は、被験打者と身体的特徴が共通する部分を有するように、被験打者と同年代で同性の打者から選ぶことが好ましい。
第1評価値としては、スイング速度の平均値及び標準偏差から算出される標準得点を例示できる。また、第2評価値としては、ミート力の平均値及び標準偏差から算出される標準得点を例示できる。
標準得点としては、例えば偏差値を例示できる。ただし、本発明における標準得点としては、これに限るものではなく、例えば、z得点、Z得点、T得点、偏差IQなどを用いてもよい。
上記のように、被験打者のスイング速度やミート力をそのまま用いて評価するのではなく、母集団の中における相対的な評価である第1評価値及び第2評価値を用いて評価するため、そのまま用いる場合に比べて客観的な評価が可能である。
前述のように、打撃したボールを遠くに飛ばすには、スイング速度及びミート力の双方が重要な因子であると考えられるため、第1評価値及び第2評価値に基づいて算出した評価指標は、被験打者にとって、ボールを遠くに飛ばす上で、各判定用バットのうちいずれの判定用バットが最も適切であるかを総合的に評価する指標であるといえる。
なお、本発明における「評価指標」には、第1評価値(例えば、スイング速度の標準得点)と第2評価値(例えば、ミート力の標準得点)との乗算値や加算値の他、これらの乗算値や加算値に適宜の補正係数を加味した値といった指標が含まれる。加味する補正係数としては、後述のようなスイング速度及びミート力の変動係数の他、「飛距離重視」や「ミート重視」など被験打者の目指すタイプに応じた補正係数を用いる(例えば、「ミート重視」の場合には、ミート力の第2評価値に重きを置いた評価指標が算出されるような補正係数を用いる)ことも可能である。
最も値の大きな評価指標に対応する判定用バットは、各判定用バットのうち被験打者にとって最も適切な判定用バット(被験打者の体力レベルやスイングスキルに合った判定用バット)であると考えられるため、この判定用バットの慣性モーメントに関連付けられて記憶されているバットの種類も、この被験打者にとって適切なバットの種類であると考えられる。このため、判定装置は、被験打者に対して推奨するバットの種類を適切に選択することが可能である。
特に、上記の好ましい構成は、スイング速度の平均値の標準得点とミート力の平均値の標準得点とに、複数回測定した結果のバラツキを示すスイング速度及びミート力の変動係数を加味して評価指標を算出する構成である。ある判定用バットについて複数回測定した結果のバラツキが大きければ、被験打者にとってその判定用バットを用いて打撃したときはスイングの安定性が悪いということになる。このため、例えば、スイング速度及びミート力の変動係数が大きければ(スイングの安定性が悪ければ)評価指標が小さくなるように、変動係数を加味した評価指標を算出すれば、この評価指標を用いることにより、被験打者にとって各判定用バットのうちいずれの判定用バットが最も適切であるかをより一層精度良く判定可能であると考えられる。
上記の好ましい構成によれば、被験打者に関するスイング速度の標準得点(例えば、偏差値)が、複数の打者に関するスイング速度の平均値の標準得点(例えば、標準得点が偏差値の場合には50)未満であり、なお且つ、被験打者に関するミート力の標準得点(例えば、偏差値)が、複数の打者に関するミート力の平均値の標準得点(例えば、標準得点が偏差値の場合には50)未満である場合、特定した慣性モーメントを基準値とする慣性モーメント領域の下側エリアに存在するバットの種類を被験打者に対して推奨するバットの種類として選択することになる。すなわち、最も大きな値の評価指標が得られた判定用バットであるとしても、スイング速度の標準得点及びミート力の標準得点の双方が、複数の打者に関するスイング速度及びミート力の平均値の標準得点未満(例えば、偏差値50未満)であるということは、その判定用バットの慣性モーメントは、被験打者にとっては大き過ぎる慣性モーメントである可能性がある。このため、特定した慣性モーメント領域の上側エリアではなく下側エリアに存在するバットの種類を選択することで、被験打者に対して推奨するバットの種類をより一層適切に選択することが可能である。
逆に、被験打者に関するスイング速度の標準得点(例えば、偏差値)が、複数の打者に関するスイング速度の平均値の標準得点(例えば、標準得点が偏差値の場合には50)以上であるか、又は、被験打者に関するミート力の標準得点(例えば、偏差値)が、複数の打者に関するミート力の平均値の標準得点(例えば、標準得点が偏差値の場合には50)以上である場合には、その判定用バットの慣性モーメントは、被験打者にとって大き過ぎない慣性モーメントであると考えられる。このため、上記の好ましい構成では、特定した慣性モーメント領域の上側エリアに存在するバットの種類を被験打者に対して推奨するバットの種類として選択している。
(1)第1手順:前記測定工程により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度と、前記準備工程により予め記憶された前記母集団の情報に含まれる前記スイング速度とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記スイング速度の前記母集団の中における相対的な評価である第1評価値を算出する。
(2)第2手順:前記測定工程により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記ミート力と、前記準備工程により予め記憶された前記母集団の情報に含まれる前記ミート力とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記ミート力の前記母集団の中における相対的な評価である第2評価値を算出する。
(3)第3手順:前記第1評価値及び前記第2評価値に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての評価指標を算出する。
(4)第4手順:前記第3手順で算出した前記各判定用バットについての評価指標のうち、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バットの慣性モーメントを特定し、前記予め記憶されたバットの種類のうち、前記特定した慣性モーメントに関連付けて記憶されているバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する。
図1は、本発明の一実施形態に係るバット選択支援システムの概略構成を示す図である。図1は、このシステムを利用してバットを選択する被験打者(図示せず)の後方から見た図である。
図1に示すように、本実施形態に係るバット選択支援システム100は、測定装置10と、判定装置20とを備えている。
ドップラー速度計11は、例えば、連続的に測定した速度のうち最大の速度を判定用バット2のスイング速度として制御手段15に出力する。この最大速度は、打撃位置(判定用バット2がボール1に衝突する瞬間の判定用バット2の位置)での判定用バット2の速度に略等しいと考えられる。
或いは、ドップラー速度計11は、連続的に測定した速度のうち、測定値が所定値以上になったときから(判定用バット2のスイングを検知してから)最大速度になるまで(判定用バット2が打撃位置に至るまで)の平均速度を算出し、この平均速度をスイング速度として制御手段15に出力してもよい。制御手段15に入力されたスイング速度は、判定装置20に出力される。
なお、本実施形態では、ドップラー速度計11によってスイング速度を測定しているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、判定用バット2に加速度センサを取り付け、この加速度センサによってスイング速度を測定することも可能である。
照明手段14は、制御手段15によって駆動され、撮像手段12の撮像視野に向けて光を照射するように配置されている。前述のように、本実施形態では、撮像手段12として一対の撮像手段12a、12bが配置されているため、照明手段14としても、各撮像手段12a、12bの撮像視野に向けてそれぞれ光を照射する一対の照明手段14a、14bが配置されている。照明手段14としては、例えば、閃光時間1/20000秒の高速ストロボを採用可能である。照明手段14は、制御手段15により、撮像手段12の撮像周期に同期して光を照射する。
撮像手段12は、所定の時刻(例えば、後述する判定装置20に表示される測定開始用のボタンをクリックしてから所定時間経過後)から連続的に撮像を行い、連続的に撮像された複数の撮像画像は、制御手段15を介して、画像処理手段13に出力される。
本実施形態の画像処理手段13は、判定装置20に内蔵されている。具体的には、本実施形態の画像処理手段13は、判定装置20を構成するパーソナルコンピュータにインストールされた上記の演算を行うプログラムによって構成されている。ただし、本発明はこれに限るものではなく、判定装置20とは別体の画像処理手段13を設けることも可能である。以下、図2を参照して、画像処理手段13が行う画像処理について説明する。
図2に示すように、画像処理手段13は、連続的に撮像した複数の撮像画像4のうち、T=t1のときの撮像画像4からボール1に相当する画素領域を抽出し、その中心位置C1の座標を算出する。また、画像処理手段13は、T=t2のときの撮像画像4からボール1に相当する画素領域を抽出し、その中心位置C2の座標を算出する。そして、画像処理手段13は、中心位置C1と中心位置C2との離間距離Lをt2−t1で除算することにより、打撃直後のボール1の速度を算出する。すなわち、撮像手段12bの撮像方向に直交する面内におけるボール1の速度(2次元的な速度)を算出する。
なお、本実施形態の「打撃直後」とは、判定用バット2からボール1が離れてから0.01秒以内(t2−t1≦0.01秒)のことをいう。
或いは、撮像手段12aによる撮像画像と撮像手段12bによる撮像画像4とを組み合わせることにより、ボール1に相当する画素領域の中心位置C1及び中心位置C2の3次元座標を先に演算し、両者の離間距離をt2−t1で除算することにより、3次元的な速度を算出することも可能である。
また、ボール1の速度を算出するのに用いる時刻T=t1、t2のときの撮像画像は、例えば、連続的に撮像した複数の撮像画像のうち、ボール1に相当する画素領域が静止位置(図2(a)に示す位置)から移動している撮像画像から任意に選択すればよい。ボール1に相当する画素領域が静止位置から移動しているか否かは、ボール1に相当する画素領域の中心位置の座標によって検出可能である。
本実施形態の判定装置20は、推奨するバットの種類を判定するための手順を実行するプログラムがインストールされた汎用のパーソナルコンピュータから構成されている。ただし、本発明はこれに限るものではなく、専用のハードウェアから構成された判定装置を用いることも可能である。なお、本実施形態の判定装置20は、前述のように画像処理手段13としての機能も奏する他、制御手段15を駆動する機能も奏する。
図4は、本発明の一実施形態に係るバット選択支援方法の概略手順を示すフロー図である。
図4に示すように、本実施形態に係る方法では、最初に準備工程(図4のS1)を実行する。この準備工程では、測定装置10によって、複数の打者が静止しているボール1を判定用バット2で打撃するときの判定用バット2のスイング速度及びミート力を、各判定用バット2について測定し、スイング速度の平均値及び標準偏差と、ミート力の平均値及び標準偏差とを判定装置20に母集団の情報として予め記憶する。また、各判定用バット2の慣性モーメントに関連付けてバットの種類を判定装置20に予め記憶する。この準備工程において、測定装置10によってスイング速度及びミート力を各判定用バット2について測定する具体的な手順は、後述の測定工程と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
本実施形態では、好ましい構成として、スイング速度及びミート力をそれぞれ複数回(例えば、3〜5回)測定する。
第1手順では、測定工程により被験打者に対して測定された各判定用バット2についてのスイング速度と、準備工程により予め記憶された各判定用バット2についてのスイング速度の平均値及び標準偏差とに基づき、被験打者に関する各判定用バット2についての第1評価値としてスイング速度の標準得点を算出する(図4のS3)。本実施形態では、スイング速度の標準得点としてスイング速度の偏差値を算出している。すなわち、被験打者に関するスイング速度の偏差値をDv1、被験打者に対して複数回測定されたスイング速度の平均値をx1、予め記憶されたスイング速度の平均値(母集団のスイング速度の平均値)をAVE1、予め記憶されたスイング速度の標準偏差(母集団のスイング速度の標準偏差)をSD1とすると、偏差値Dv1は以下の式(1)で表わされる。
Dv1=50+10・(x1−AVE1)/SD1 ・・・(1)
判定装置20は、上記の式(1)で表わされるスイング速度の偏差値Dv1を各判定用バット2について算出する。
Cv1=(sd1/x1)・100[%] ・・・(2)
判定装置20は、上記の式(2)で表わされるスイング速度の変動係数Cv1を各判定用バット2について算出する。
第2手順では、測定工程により被験打者に対して測定された各判定用バット2についてのミート力と、準備工程により予め記憶された各判定用バット2についてのミート力の平均値及び標準偏差とに基づき、被験打者に関する各判定用バット2についての第2評価値としてミート力の標準得点を算出する(図4のS3)。本実施形態では、ミート力の標準得点としてミート力の偏差値を算出している。すなわち、被験打者に関するミート力の偏差値をDv2、被験打者に対して複数回測定されたミート力の平均値をx2、予め記憶されたミート力の平均値(母集団のミート力の平均値)をAVE2、予め記憶されたミート力の標準偏差(母集団のミート力の標準偏差)をSD2とすると、偏差値Dv2は以下の式(3)で表わされる。
Dv2=50+10・(x2−AVE2)/SD2 ・・・(3)
判定装置20は、上記の式(3)で表わされるミート力の偏差値Dv2を各判定用バット2について算出する。
Cv2=(sd2/x2)・100[%] ・・・(4)
判定装置20は、上記の式(4)で表わされるミート力の変動係数Cv2を各判定用バット2について算出する。
第3手順では、第1手順で算出した各判定用バット2についての第1評価値としてのスイング速度の標準得点(本実施形態では偏差値Dv1)と、第2手順で算出した各判定用バット2についての第2評価値としてのミート力の標準得点(本実施形態では偏差値Dv2)との乗算値に基づき、被験打者に関する各判定用バット2についての第1、第2評価指標を算出する(図4のS4〜S6)。
Index1=Dv1・Dv2 ・・・(5)
そして、各判定用バット2についての第1評価指標Index1(本実施形態では3つの第1評価指標Index1)のうち、最も値の大きな第1評価指標Index1と、次に値の大きな第1評価指標Index1との差が、最も値の大きな第1評価指標Index1の1%以下であるか否かを判断し(図4のS5)、1%を超えていれば(図4のS5でNoの場合)、この第1評価指標Index1をそのまま用い、1%以下であれば(図4のS5でYesの場合)、第2評価指標Index2を算出する(図4のS6)。なお、1%という値は、各判定用バット2についての第1評価指標Index1の差の大小を評価する上での単なる基準値の一例を示すものに過ぎず、2%や3%など、他の値に設定することも可能である。
Index2=Index1・(100−Cv1)/100・(100−Cv2)/100 ・・・(6)
前述のように、第1評価指標Index1の差が1%以下であれば、判定装置20は、上記の式(6)で表わされる第2評価指標Index2を各判定用バット2について算出する(図4のS6)。上記の式(6)から分かるように、スイング速度の変動係数Cv1及びミート力の変動係数Cv2が大きければ(測定結果のバラツキが大きく、スイングの安定性が悪ければ)、その分だけ、第2評価指標Index2も小さくなる。
第4手順では、第3手順で算出した各判定用バット2についての評価指標(第1評価指標Index1又は第2評価指標Index2)のうち、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バット2の慣性モーメントを特定し、この慣性モーメントを基準値とする慣性モーメント領域を特定する(図4のS7)。そして、予め記憶されたバットの種類のうち、特定した慣性モーメントに関連付けて記憶されている(特定した慣性モーメント領域に関連付けて記憶されている)バットの種類を被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する(図4のS8〜S10)。
一方、特定した慣性モーメントを有する判定用バット2について、被験打者に関するスイング速度の標準得点(本実施形態では偏差値Dv1)が、複数の打者に関するスイング速度の平均値の標準得点(本実施形態では偏差値50)以上であるか、又は、被験打者に関するミート力の標準得点(本実施形態では偏差値Dv2)が、複数の打者に関するミート力の平均値の標準得点(本実施形態では偏差値50)以上である場合(図4のS8でNoの場合)、特定した慣性モーメントを基準値とする慣性モーメント領域の上側エリアに存在するバットの種類を被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する(図4のS10)。
(1)判定用バット2a:慣性モーメント=2800kg・cm2、Dv1=44.6379、Dv2=51.3837
(2)判定用バット2b:慣性モーメント=3000kg・cm2、Dv1=46.6084、Dv2=47.5556
(3)判定用バット2c:慣性モーメント=3200kg・cm2、Dv1=39.5793、Dv2=46.4931
上記の場合、第3手順で算出される第1評価指標Index1は以下の通りとなる。
(4)判定用バット2a:Index1=2293.66
(5)判定用バット2b:Index1=2216.49
(6)判定用バット2c:Index1=1840.16
第4手順では、最も値の大きな第1評価指標Index1に対応する判定用バット2aの慣性モーメント(2800kg・cm2)が特定され、この慣性モーメントを基準値とする慣性モーメント領域が特定される。上記の例では、図3に示す慣性モーメント領域Aが特定されることになる。
さらに、上記(1)に示すように、判定用バット2aについてのスイング速度の偏差値Dv1<50であるが、ミート力の偏差値Dv2≧50であるため(図4のS8でNo)、特定された慣性モーメント領域Aの上側エリアに存在するバットの種類が被験打者に対して推奨するバットの種類として選択される。すなわち、図3に示す慣性モーメント領域Aの上側エリアに存在する品番d・長さ82cm、品番e・長さ83cm及び品番f・長さ84cmの3種類のバットが選択されることになる。
本実施形態では、以下の4種類のタイプのうち、被験打者がいずれのタイプであるかを判断する。
(1)タイプ1:Dv1≧50、Dv2≧50
(2)タイプ2:Dv1<50、Dv2≧50
(3)タイプ3:Dv1≧50、Dv2<50
(4)タイプ4:Dv1<50、Dv2<50
(a)タイプ1のコメント「スイングスピードとミート力の偏差値が基準値以上です。高いスイングレベルにあります。」
(b)タイプ2のコメント「ミート力の偏差値が基準値以上です。スイングスピードを高めるとさらにスイングレベルが向上します。」
(c)タイプ3のコメント「スイングスピードの偏差値が基準値以上です。ミート力を高めるとさらにスイングレベルが向上します。」
(d)タイプ4のコメント「スイングスピードとミート力の偏差値が基準値以下です。体力をつけて、スイングレベルを高めましょう。」
また、本実施形態に係る方法では、推奨するバットの種類に加えて、図5に示すような各判定用バット2についての被験打者のスイング速度及びミート力の評価結果(偏差値マトリクス)や、前述のコメント等を出力する(図4のS13)。このような評価結果やコメントを出力することにより、被験打者は自らの体力レベルやスイングスキルの客観的な評価を知ることができるため、単に推奨するバットの種類を出力する場合に比べて、バットを選択する上での有益な情報を得ることができる。
また、被験打者のスイング速度やミート力をそのまま用いて評価するのではなく、母集団の中における相対的な評価であるスイング速度の標準得点(例えば標準偏差)及びミート力の標準得点(例えば標準偏差)を用いて評価するため、そのまま用いる場合に比べて客観的な評価が可能である。
また、打撃したボール1を遠くに飛ばすには、スイング速度及びミート力の双方が重要な因子であると考えられるため、両者の標準得点の乗算値に基づいて算出した評価指標(第1評価指標又は第2評価指標)は、被験打者にとって、ボール1を遠くに飛ばす上で、各判定用バット2のうちいずれの判定用バット2が最も適切であるかを総合的に評価する指標であるといえる。
さらに、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バット2は、各判定用バット2のうち被験打者にとって最も適切な判定用バット(被験打者の体力レベルやスイングスキルに合った判定用バット)であると考えられるため、この判定用バット2の慣性モーメントに関連付けられて記憶されているバットの種類も、この被験打者にとって適切なバットの種類であると考えられる。このため、判定装置20は、被験打者に対して推奨するバットの種類を適切に選択することが可能である。
以上のように、本実施形態に係るバット選択支援システム100及びこれを用いたバット選択支援方法によれば、バットを選択する際に、選択者(被験打者)の体力レベルやスイングスキルに合った適切なバットを選択可能である。
例えば、上述した実施形態における第3手順では、算出した第1評価指標Index1の差の大小を判定するようにしているが(図4のS5)、かかる判定は必須ではなく、第1評価指標Index1の差の大小に関わらず、第2評価指標Index2を慣性モーメント領域を特定するための指標として常時使用するようにしても構わない。
また、上述した実施形態では、第1評価指標Index1の差が小さければ、第2評価指標Index2を算出するようにしているが、必ずしも第2評価指標Index2を算出することは必須ではなく、第1評価指標Index1のみを算出し、それを常時評価指標として使用しても構わない。
また、上述した実施形態では、「第1評価値」及び「第2評価値」として標準得点を使用する例を示したが、標準得点以外にも、例えば、リフト値や、被験打者の測定値を母集団の中央値で除算した値などを使用することができる。
さらに、上述した実施形態では、第1評価指標Index1として、スイング速度の偏差値Dv1とミート力の偏差値Dv2との乗算値を使用する例を示したが、第1評価指標Index1はこれに限らず、例えば、スイング速度の偏差値Dv1とミート力の偏差値Dv2との加算値などを使用してもよい。
Claims (6)
- 静止しているボールを判定用バットで打撃するときの前記判定用バットのスイング速度、及び、前記打撃直後のボールの速度を前記判定用バットのスイング速度で除算した値であるミート力を、慣性モーメントがそれぞれ異なる複数種の各判定用バットについて測定する測定装置と、
前記測定装置により測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度及び前記ミート力に基づき、推奨するバットの種類を判定する判定装置とを備え、
前記判定装置には、前記各判定用バットの慣性モーメントに関連付けされたバットの種類と、前記測定装置により複数の打者に対して測定された前記各判定用バットについての、前記スイング速度及び前記ミート力を含む母集団の情報とが予め記憶されており、
前記判定装置は、
前記測定装置により被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度と、前記母集団の情報に含まれる前記スイング速度とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記スイング速度の前記母集団の中における相対的な評価である第1評価値を算出する第1手順と、
前記測定装置により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記ミート力と、前記母集団の情報に含まれる前記ミート力とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記ミート力の前記母集団の中における相対的な評価である第2評価値を算出する第2手順と、
前記第1評価値及び前記第2評価値に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての評価指標を算出する第3手順と、
前記第3手順で算出した前記各判定用バットについての評価指標のうち、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バットの慣性モーメントを特定し、前記予め記憶されたバットの種類のうち、前記特定した慣性モーメントに関連付けて記憶されているバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する第4手順と、
を実行することを特徴とするバット選択支援システム。 - 前記母集団の情報は、前記測定装置により複数の打者に対して測定された前記各判定用バットについての、前記スイング速度の平均値及び標準偏差と、前記ミート力の平均値及び標準偏差とを含み、
前記第1評価値は、前記スイング速度の平均値及び標準偏差から算出される標準得点であり、
前記第2評価値は、前記ミート力の平均値及び標準偏差から算出される標準得点である、
ことを特徴とする請求項1に記載のバット選択支援システム。 - 前記判定装置は、
前記第1手順において、前記被験打者に対して複数回測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記スイング速度の平均値の標準得点及び変動係数を算出し、
前記第2手順において、前記被験打者に対して複数回測定された前記各判定用バットについての前記ミート力に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記ミート力の平均値の標準得点及び変動係数を算出し、
前記第3手順において、前記第1手順で算出した前記各判定用バットについての前記スイング速度の平均値の標準得点と、前記第2手順で算出した前記各判定用バットに対応する前記ミート力の平均値の標準得点とに、前記第1手順で算出した前記各判定用バットについての前記スイング速度の変動係数と、前記第2手順で算出した前記各判定用バットについての前記ミート力の変動係数とを加味して、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての評価指標を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載のバット選択支援システム。 - 前記判定装置には、前記各判定用バットの慣性モーメントを基準値として、該基準値以上の慣性モーメントの範囲からなる上側エリア及び該基準値未満の慣性モーメントの範囲からなる下側エリアから構成された複数の慣性モーメント領域と、該複数の各慣性モーメント領域の上側エリア及び下側エリアにそれぞれ存在する慣性モーメントを有するバットの種類とが関連付けられて予め記憶されており、
前記判定装置は、前記第4手順において、
前記特定した慣性モーメントを有する判定用バットについて、前記被験打者に関する前記スイング速度の標準得点が、前記複数の打者に関する前記スイング速度の平均値の標準得点未満であり、なお且つ、前記被験打者に関する前記ミート力の標準得点が、前記複数の打者に関する前記ミート力の平均値の標準得点未満である場合、前記特定した慣性モーメントを基準値とする前記慣性モーメント領域の下側エリアに存在するバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択し、
前記特定した慣性モーメントを有する判定用バットについて、前記被験打者に関する前記スイング速度の標準得点が、前記複数の打者に関する前記スイング速度の平均値の標準得点以上であるか、又は、前記被験打者に関する前記ミート力の標準得点が、前記複数の打者に関する前記ミート力の平均値の標準得点以上である場合、前記特定した慣性モーメントを基準値とする前記慣性モーメント領域の上側エリアに存在するバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のバット選択支援システム。 - 前記測定装置は、
前記判定用バットのスイング速度を測定するドップラー速度計と、
前記静止しているボール周辺に撮像視野を有する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像した複数の撮像画像を画像処理することで、前記打撃直後のボールの速度を算出し、該打撃直後のボールの速度を前記判定用バットのスイング速度で除算して前記ミート力を算出する画像処理手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のバット選択支援システム。 - 複数の打者が静止しているボールを判定用バットで打撃するときの前記判定用バットのスイング速度、及び、前記打撃直後のボールの速度を前記判定用バットのスイング速度で除算した値であるミート力を、慣性モーメントがそれぞれ異なる複数種の各判定用バットについて測定し、前記スイング速度及び前記ミート力を含む母集団の情報を予め記憶すると共に、前記各判定用バットの慣性モーメントに関連付けてバットの種類を予め記憶する準備工程と、
被験打者に対して前記各判定用バットについての前記スイング速度及び前記ミート力を測定する測定工程と、
前記測定工程により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度及び前記ミート力に基づき、推奨するバットの種類を判定する判定工程とを含み、
前記判定工程は、
前記測定工程により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記スイング速度と、前記準備工程により予め記憶された前記母集団の情報に含まれる前記スイング速度とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記スイング速度の前記母集団の中における相対的な評価である第1評価値を算出する第1手順と、
前記測定工程により前記被験打者に対して測定された前記各判定用バットについての前記ミート力と、前記準備工程により予め記憶された前記母集団の情報に含まれる前記ミート力とに基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての前記ミート力の前記母集団の中における相対的な評価である第2評価値を算出する第2手順と、
前記第1評価値及び前記第2評価値に基づき、前記被験打者に関する前記各判定用バットについての評価指標を算出する第3手順と、
前記第3手順で算出した前記各判定用バットについての評価指標のうち、最も値の大きな評価指標に対応する判定用バットの慣性モーメントを特定し、前記予め記憶されたバットの種類のうち、前記特定した慣性モーメントに関連付けて記憶されているバットの種類を前記被験打者に対して推奨するバットの種類として選択する第4手順と、
を実行することを特徴とするバット選択支援方法。
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