JP5352805B2 - バット選択システム及びそのセンサーバット - Google Patents

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Description

本発明は、バット選択システム及びそのセンサーバットに関する。
軟式野球、硬式野球やソフトボールは多くの人がゲームを楽しんでおり健康の増進に役立っている。ところが、これらのゲームに用いられるバットは、重量、長さ、大きさ、形状等のちがいにより様々なタイプのものがある。一方、打者についても、体重、身長、身体能力等に応じて、各打者に適したバットがある。
そして、バットが打者に適していない場合には、打者が打球を打撃する際に、バットの芯からずれたり、バットを適正な速度まで加速することができず、その結果、打球が期待通り距離を飛ばなかったり、打球が期待通りの方向に飛ばなかったりする傾向にあった。このため、自己に適したバットを選択することは、期待通りのバッテイングをする上で、極めて重要なことであった。
しかし、従来においては、スポーツ店の店員の経験によるアドバイスに基づきバットを購入することが、一般的であったが、顧客に適したバットを客観的に選択する科学的な手法がなかったため、顧客に適したバットを選択することは店員の経験に左右されることが多かった。
従来技術としては、バットで球を実際に打撃し、その際に、球の打撃位置とバットの芯位置との違い測定することによりこの問題の解決をめざした芯ズレ測定装置が提案されている(特許文献1等参照)。
特開2006−230563号公報
しかしながら、打者の体重、身長、身体能力は千差万別であり、また、市販されるバットの種類も多数あり、単に既存のバットで芯ズレを測定するのみでは、各打者に最も適したバットを提供することは困難であった。
したがって、本発明は、質量、重心位置、慣性モーメント等のパラメータを変更して、打者に最も適したバットを提供する、バット選択システム及びそのシステムに用いるセンサーバットを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題に対して、打者のバットスイングにおけるスイングスピード、バット角速度、バット軌跡、打撃点換算運動量、バット注入エネルギー、スイング時間を算出し、打者のスイングを評価するこれらのパラメータと、打者の目指す打者タイプの意向から、打者に適合するバットを選択することの有用性を見出し、下記の発明を完成するに至った。
(1) 各打者に適合するバットを選択する、センサーバットとデータ解析装置とを有するバット選択システムであって、前記センサーバットはバットの角速度と加速度を検出する運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を備え、前記データ解析装置は、前記打者の目指すタイプを入力するタイプ入力部と、前記センサーバットから送信されたデータを受信するデータ受信部と、受信したデータからバットの角加速度・角速度・姿勢・加速度・速度・位置およびボールインパクト時刻を算出する運動学情報算出部と、算出されたバットの運動学情報およびボールインパクト時刻から、さらに打者のスイングの評価パラメータを算出し、その評価パラメータと目指すタイプに基づき、前記打者に適合するバットを選択するバット選択部と、前記バット選択部において算出した評価パラメータおよび選択されたバットに関連する情報を表示する表示手段と、を備えたバット選択システム。
(1)に記載のバット選択システムは、角速度と加速度を検出する運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を有する前記センサーバットを備えている。バットバランス調整部において、バットの質量、重心位置等を変化させ、何種類かのバットバランスにおいて、打者にティーバッティング等のバットスイングを実施させる。スイングした際のバットの角速度および加速度情報は運動学情報検出部で検出され、そのデータは送信部により送信される。送信されたデータは前記データ解析装置のデータ受信部により受信して、スイング中のバットの角加速度・角速度・姿勢・加速度・速度・位置、およびボールのインパクト時刻を運動学情報算出部により算出する。さらに、バット選択部において、運動学情報算出部において算出されたデータを解析し、打者のスイングの評価パラメータを算出し、その評価パラメータとタイプ入力部により入力された打者の目指すタイプに基づき、打者に適合するバットを選択する。そして、選択されたバットが、パラメータとともに表示手段により表示される。
このようにして、各打者は、自分に適合するバットを感覚的に認識するとともに、打撃した際にバットの選択に必要な情報が解析されたパラメータとして表示される。したがって、各打者に適合するバットを科学的に選択することができる。なお、ここで送信部と受信部は、データの送信及び受信を主におこなうが、制御用の相互の通信も含まれることとする。
(2) 前記センサーバットの初期位置・初期姿勢決め手段をさらに備え、前記センサーバットを該初期位置・初期姿勢決め手段にセットしてスイング軌道の初期値を設定することを特徴とする(1)に記載のバット選択システム。
(2)に記載の発明のバット選択システムは、センサーバットの初期位置・初期姿勢決め手段をさらに備えるので、センサーバットの初期位置および初期姿勢が特定される。この初期位置・初期姿勢から運動学情報算出部によるバットの角加速度・角速度・姿勢・加速度・速度・位置が解析される。
(3) 前記評価パラメータは、打者のバットスイングにおけるスイングスピード、バット角速度、バット軌跡、打撃点換算運動量、バット注入エネルギ―、スイング時間のいずれか一つ以上であり、選択に使用した二つ以上の評価パラメータと、選択されたバットとを前記表示手段により表示する(1)又は(2)に記載のバット選択システム。
(3)に記載の発明のバット選択システムは、バット選択部は、評価パラメータと打者のバットスイングにおけるスイングスピード、バット角速度、バット軌跡、打撃点換算運動量、バット注入エネルギ―、スイング時間のいずれか二つ以上と、入力された打者の目指すタイプとに基づき、打者に適合するバットを選択して、選択されたバットを、用いたパラメータとともに表示手段により表示する。
このようにして、用いられた二つ以上のパラメータと選択されたバットが表示されるので、各打者は目指すタイプのバットを科学的に選択することができる。なお、二つ以上のパラメータとしたのは、一つのパラメータでは、打者に説得性がないからである。
ここで、スイングスピードとは、打者のスイング中の、バットのボール打撃部あるいはヘッドのスピードであり、バット角速度とは、バットの回転スピード(長軸回りではない)であり、バット軌跡とは、バットスイング中のバットの軌跡であり。打撃点換算運動量とは、打球スピードを決定する要素であり、バットの質量、重心位置、バット重心回りの慣性モーメント、バット重心−打撃点間距離、によって決定される、バット打撃点における見かけの質量と、バットのボール打撃点スピードの積で表される。バット注入エネルギーとは、打者がバットにした仕事の結果として現れる、バットの並進および回転の運動エネルギーの和であり、スイング時間とは、バットスイング開始時からボールインパクト時までに要した時間のことである。
(4) 前記運動学情報算出部には、運動学情報の算出精度向上のために、加速度信号の補正を行う加速度補正手段が含まれることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のバット選択システム。
(4)に記載のバット選択システムによれば、運動学情報の算出精度向上のために、加速度信号の補正を行う加速度補正手段が含まれるので、運動学情報の算出精度向上を図ることができる。とくに、センサーバットによる検出は、ノイズを含んでいるため、適正な補正が不可欠であり、適正な補正をすることにより、運動学情報の算出精度向上を図ることができる。
(5) 各打者に適合するバットの選択に用いられるセンサーバットであって、前記センサーバットは運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を備えるセンサーバット。
(5)に記載のセンサーバットによれば、運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を備えるのでバットバランスを調整するとともに、運動学情報検出部により、試打されているバットの角速度、加速度の情報が検出され、データ送信部により外部に送信される。したがって、各打者に適合するバットの選択が科学的に可能になる。
なお、センサーバットの運動学情報検出部には、少なくとも1つ以上の3軸加速度センサおよび3軸ジャイロセンサを備え、加速度センサおよびジャイロセンサは、打球によるバット振動の影響を受けにくいバットのグリップエンド部に搭載され、加速度センサはバットの長軸回りの回転による遠心加速度の影響を除外するため、バットの長軸上に配置することが望ましい。
以上説明したように、本発明によれば、重心位置、慣性モーメント等のパラメータを変更して、各打者に最も適したバットを提供するバット選択システム及びそのセンサーバットを提供することができる。したがって、各打者に適合するバットの選択と打者のスイングの科学的な情報を同時に提供することができる。
本発明の実施例であるバット選択システムを示すブロック図である。 本発明の実施例であるバット選択システムの具体例を示す図である。 本発明のセンサーバットの実施例を表す図である。 本発明のセンサーバットのバランス調整部を説明する図である。 本発明のセンサーバットの運動学情報検出部を説明する図である。 本発明のバット選択システムに使用されるバットの初期位置決め手段であるクレードルの一例である。 本発明のバット選択システムの運動学情報算出フローを説明する図である。 本発明のバット選択システムの解析に用いるバットスペックが考慮された物理量を説明する図である。 本発明のバット選択システムのバット選択フローを説明する図である。 本発明のバット選択システムの入力手段の例を説明する図である。 本発明のバット選択システムのスイング時間算出の例を説明する図である。 本発明のバット選択システムの表示例を説明する図である。 本発明のバット選択システムの初期位置決め手段の別の実施例であるテーブルを説明する図である。 本発明のセンサーバットの別の実施例を示す図である。 本発明のセンサーバットの別の実施例を示す図である。 本発明のバット選択システムの送信部と受信部の別の実施例を説明する図である。 本発明に使用するコンピュータのハードウェアの一例である。
以下、本発明を実施するための形態について、野球を例として図を参照しつつ説明をする。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
〈実施例1〉
図1は、本発明の実施例であるバット選択システムを示すブロック図である。図1に示すように、本発明のバット選択システム1は、センサーバット100とデータ解析装置500とを有する。センサーバット100は運動学情報検出部10と、バットバランス調整部20と、運動学情報検出部10で検出されたデータを送信する送信部19と、が有る。
データ解析装置500は、打者の目指すタイプを入力するタイプ入力部504と、センサーバット100から送信されたデータを受信するデータ受信部510と、受信したデータからバットの角加速度・角速度・姿勢・加速度・速度・位置、およびボールのインパクト時刻を算出する運動学情報検出部520と、算出された運動学情報から、打者のスイングの評価パラメータを算出し、打者に最適なバットを選択するバット選択部530と、バット選択部530により選択されたバットと算出した評価パラメータに関連する情報を表示する表示手段である結果表示部540と、が有る。
図2は、本発明の実施例であるバット選択システム1の具体例を示す図である。図2に示すように、バット選択システム1は、センサーバット100と、データ解析装置500とが、Bluetooth(登録商標)によって無線通信回線で接続されている。また、バットの初期位置・初期姿勢決め手段であるクレードル30とベース60とその上に配置されるボール50の支持柱40と打球されたボールが飛び出すのを防止する保護ネット80が設置されている。
センサーバット100は、図3に示すように運動学情報検出部10と、バランス調整部20と、運動学情報検出部10で検出されたデータを送信する送信部19(図示せず)と、を有する。
運動学情報検出部10は、図5(a)に示すようにセンサーノブ部11の中に2軸のジャイロセンサ12(1)と、2軸のジャイロセンサ12(2)、2軸加速度センサ13(1)と、2軸加速度センサ13(2)と、が収められている。センサーノブの底面には、図5(b)に示すように電源ボタン15と、表示用LED16と、充電コネクタ17と、が配置されており各々が機能を発揮するように内部で設置され、電気的に接続されている。センサーノブ部11は根元部でネジ部が設けられ中空の金属製の接続部18で図3に示すバランス調整部20に連結されている。
センサーバットの運動学情報検出部10には、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロセンサを使用してもよい。加速度センサおよびジャイロセンサは、打球によるバット振動の影響を受けにくいバットのグリップエンド部に搭載され、加速度センサはバットの長軸回りの回転による遠心加速度の影響を除外するため、バットの長軸上に配置するのがよい。
バランス調整部20は、図4に示すように軽金属製のいわゆる金属バット21、あるいはカーボン製のFRPバットにカウンター(C)、ミドル(M)、トップ(T)の3か所のスリットを設け、中の錘27の位置調整ができるようになっている。錘27には図4に示すようにネジ部が設けられ、ネジ部にハンドル29を結合することにより3か所のスリット中の適切な部分に錘27を配置してスイング中にも動かないように強固に固定する。そして、このように錘27の位置を変えることによって、バットの重心位置、慣性モーメントが変化する。
データ解析装置500は、後述する図17に示すようにコンピュータ1000に本願発明に係るコンピュータプログラムをインストールすることにより実現することができる。なお、コンピュータのハードウェアについては、後述する。
センサーバット100の初期位置・初期姿勢決め手段であるクレードル30は、図6に示すように、センサーバット100をセットできる上部に開口部32がある筒36を脚部33と34により床上に背もたれ部37と適切な角度でセンサーバット100が位置決めできるようになっている。
実施例1の本システムの動作について、以下説明をする。
〈ティーバッティング(スイング情報の取得)〉
(1)バットバランス調整部20で錘位置をトップ、ミドル、カウンターのいずれかの位置に設定する(例えばトップに)。(2)センサーバットの初期位置・初期姿勢決め手段であるクレードル30にセンサーバット100をセットする。(3)データ解析装置500で信号の取得開始。打者はピッピッピーという音の合図とともに、ティーバッティングを行う。(4)データ解析装置500で取得した信号を記憶部に記憶する。(5)同じ錘位置で、あらかじめ決めておいた回数、上記2〜4を繰り返す。例えば、3回とする。(6)(1)に戻って、錘位置を別の場所に変更する(例えばトップからミドルへ変更)。(7)再度(2)〜(4)の繰り返しを行う。(8)錘位置を最後の1箇所に変更し、再度2〜4の繰り返し(例えば、トップ→ミドルときたので、最後はカウンター)。
〈データの解析・適合するバットの選択・結果表示〉
(1)データ解析装置500のタイプ入力部504に、図10に示すように日付、ID、目指す打者タイプ、スイング回数、打席(右か左)、ティー高さを入力する。(2)(スタートボタンを押すと、スイングスピード、バット角速度、バット軌跡、打撃点換算運動量、バットへの注入エネルギー、スイング時間のパラメータを各スイングで計算する。計算結果は、各バットバランス(錘位置別)毎に平均化される。(3)図7に示したように、バット軌跡が算出される。(4)図9に示すバット選択部の選択フローチャートにより、適合するバットスペックを抽出する。(5)抽出されたバットスペックと製品(市販の)バットのデータベースを照合し、打者に適合したバット(あるいはバット群)を選定する。(6)選択されたバットと選択に使用したパラメータと図12に示すように、表示手段である結果表示部540に表示する。また、表示内容を印刷することもできる。
バットの角速度・姿勢・加速度・速度・位置の算出は、図7に示すように、ジャイロセンサ12より、角速度(ローカル座標系:局所座標系ともいう)が検出される(S10)。データ解析装置500により受信された角速度データは、まず、運動学情報算出部520により、バットの初期姿勢を用いて角速度(ワールド座標系:絶対座標系ともいう)に座標変換される(S20)。つぎに、算出された角速度(ワールド座標系)からバット姿勢(ワールド座標系)が算出される(S30)。そして、再度、算出されたバット姿勢(ワールド座標系)を用いて、データ解析装置500により受信された角速度データを(ワールド座標系)に座標変換する。このように、角速度(ワールド座標系)とバット姿勢(ワールド座標系)は互いにフィードバックしながら、時々刻々計算される。また、加速度センサ13によりグリップエンド加速度(ローカル座標系)のデータが検出される(S50)。データ解析装置500により受信された加速度データは、運動学情報算出部520により、バット姿勢(ワールド座標系)を用いて、グリップエンド加速度(ワールド座標系)に座標変換される(S60)。
グリップエンド加速度(ワールド座標系)を時間積分することによりグリップエンド速度(ワールド座標系)が算出される(S70)。
角速度(ワールド座標系)とグリップエンド速度(ワールド座標系)よりバッドヘッド(打撃点)速度が算出される(S40)。
算出は、図8に示すような数式に基づいて、バッドスペックが考慮され、且つ打点位置と打点速度に関連する物理量である打撃点換算運動量PHPが計算される。また、バット角速度とバット重心点速度に関連するバットへの注入エネルギーと、バット姿勢とバットのグリップ位置に関連するバット軌跡(S90)とを、解析する。つまり、センサーバット100より送信されたジャイロセンサと加速度センサのデータを受信して各時点での当該センサーバットの絶対座標系における角加速度・角速度・姿勢・加速度・速度・位置を算出する。そして、これらの運動学情報から打撃点換算運動量と、バットへの注入エネルギーと、バット軌跡と、を計算する。
また、グリップエンド速度(ワールド座標系)よりグリップエンド位置(ワールド座標系)が算出される(S80)、そして、バット姿勢(ワールド座標系)とグリップエンド位置(ワールド座標系)よりバットのスイング軌跡が算出される(S90)。
本発明では、運動学情報の算出精度向上のために、加速度信号の補正を行う。ここでは、その方法について説明する。まず、センサの出力加速度ASに一定のノイズΔaが含まれていると仮定すると、補正した加速度ACは数1により表される。
(数1)
Ac=AS−Δa

上記センサの出力加速度ASおよび補正した加速度ACは、センサ座標系(局所座標系あるいはローカル座標系)における加速度である。数1を絶対座標系(あるいはワールド座標系)における関係式に座標変換すると、数2として表される。
(数2)

RAc=RAS−RΔa−g
ここで、Rはセンサ(バット)の姿勢を表す姿勢行列であり、センサのX、Y、Z各軸方向を示す単位ベクトルeiを用いて数3として表される。また、gは重力加速度ベクトルであり、数4として表される。加速度センサは重力加速度を検出するため、絶対座標系における加速度と一致させるためには、重力加速度を差し引く必要がある。
(数3)
R=[ex ey ez]
(数4)
g=[0 0 −9.807]T

絶対座標系における、センサの速度(グリップエンド部の速度)vgripは、数2の時間積分により、数5として表される。ここで、voはセンサの初期速度(グリップエンド部の初期速度)であり、通常はバットをクレードルにセットした静止状態から計測を開始するため、Oである。
(数5)
vgrip=vo+∫RA dt−∫R dtΔa−∫g dt
絶対座標系における、センサの位置(グリップエンド位置)xgripは、数5の時間積分(数2の二階積分)によって、数6として表される。ここで、xoはセンサの初期位置(グリップエンド部の初期位置)である。この位置はクレードルによって決定される。
(数6)
xgrip=xo+∫vo dt+∬Ra dtdt−∬R dtdtΔa−∬g dtdt

ボールインパクトにおけるボール位置xballとセンサ位置(グリップエンド位置) xgripとの関係は数7として表される。
(数7)
xball=xgrip+elong_axis l
ここで、elong_axisはバット長軸方向を表す単位ベクトルを、lはグリップエンド−バット打撃点間距離をそれぞれ示す。なお、ボール位置xballは、あらかじめ計測しておく。
数6および数7から、仮定した一定のノイズΔaが求まる。そして、求めたΔaを数1に代入することによって、補正した加速度ACが求まる。
スイング時間については、図11に示すように、角速度のデータを解析して、急速に角速度が増大し始める点から、ボールインパクトまでの時間を算出することにより求められる。角速度の値の小さい局面は、「構えの局面」である。
次に、図9を参照して、バットの選択部530について説明をする。バット選択部530は、図9に示すようなフローチャートで作成されたコンピュータプログラムをコンピュータのハードウェア1000にインストールすることにより実現することができる。図9に示すように、プログラムがスタートする(S10)と、図10で入力した打者が目指すタイプが「ロングヒッター」か「アベレージヒッタータイプ」を判定する(S20)。ロングヒッターであれば、打撃点換算運動量が最も大きいバランスのバットを選択する(S30)。次に、他のバランスのバットのスイングデータと比較して打撃点換算運動量の値が同等なものがないか、予め記憶されているデータベースより調査する(S40)。同等なバットがあれば、打撃点換算運動量が同等のなかで、注入エネルギ―の最も小さいバットを抽出する(S50)。そして、打撃点運動量が同等のバットのなかで、注入エネルギーの最も小さいバットと同等の慣性モーメントのバットを推奨バットとして選択する(S70)。一方、他のバランスのバットと比較して打撃点換算運動量の値が同等なものがないか予め記憶されているデータベースより調査する(S40)、なければ、打撃点換算量が最も大きいバットと同等の慣性モーメントのバットを推奨バットとして選択する(S60)。
図10で入力した打者が目指すタイプが「アベレージヒッタータイプ」の場合は、スイング時間が最も短いバランスのバットを抽出する(S130)。次に、他のバランスのバットと比較してスイング時間の値が同等なものがないか予め記憶されているデータベースより調査する(S140)。同等なバットがあれば、スイング時間が同等のなかで、打撃点換算運動量/注入エネルギ―の最も大きいバットを抽出する(S150)。そして、スイング時間が同等のなかで、打撃点換算運動量/注入エネルギ―の最も大きいバットを推奨バットとして選択する(S170)。一方、他のバランスのバットと比較してスイング時間の値が同等なものがないか予め記憶されているデータベースより調査する(S140)。なければ、スイング時間が最も短いバットと同等の慣性モーメントのバットを推奨バットとして選択する(S160)。このようにして、本プログラムは終了する(S80)。
図12に示すように、打者が試打したバットの中から、バット選択部530で選択された4パラメータ、すなわち、バット(スイング)軌跡、打撃パワー、スイングスピード、スイング時間が表示される。すなわち、図4のバランス調整部20のカウンター(C)、ミドル(M)、トップ(T)の3ケースの打撃パワー、ヘッドスピード、スイング時間を算出し、前記表示手段である結果表示部540により、推奨するバットカテゴリーと共に表示する。
このようにして、打者は、自分が試打したバットによりどのようなバットのスイング軌跡、打撃パワー、スイングスピード、スイング時間が、どの程度のパラメータが生じたかが分かる。また、現実に市販されている推奨バットが表示される。このようにして、打者は、自分に適合するバットを科学的に選択することができる。
〈バットバランス調整部の別の実施例〉
バットバランス調整部は、以下のような形態でも実施することができる。図14に示すように、バットの中で太くなっているいわゆるバレル部をネジにより取り替える形態である。バレル部を取り替えることにより、各種のバランスのセンサーバットにより、試打することができる。
また、軟式野球の場合は、打球部をウレタン素材で包んで反発係数を調整する場合があるが、その場合は、図15に示すようにバレル部を包む材質を変えて、反発係数を調整して試打することもできる。
〈初期位置決め手段の別の実施例〉
初期位置決め手段は、実施例1では、図6のクレードルにより説明したが、図13に示すようなテーブル32上にセンサーバット100をセットしてもよい。
〈送信部、受信部の別の実施例〉
送信部、受信部は、実施例1では、無線による例で説明したが、図16に示すように有線通信でも可能であるし、メモリーカードにより記憶して、試打した後にデータ解析装置500であるパソコンに取り込んで解析することもできる。
〈コンピュータハードウエア〉
図17は、バット選択システムのデータ解析装置500で使用することができるコンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す。コンピュータ1000は、CPU(Central Processing Unit)1010、バスライン1005、通信I/F1040、メインメモリ1050、BIOS(Basic Input Output System)1060、パラレルポート1080、USBポート1090、グラフィック・コントローラ1020、I/Oコントローラ1070、並びにキーボード及びマウス・アダプタ等1092を備える。I/Oコントローラ1070には、ハード・ディスク1074、光ディスクドライブ1076、半導体メモリ1078、等の記憶手段を接続することができる。これらの記憶手段を記憶装置として使用することができる。グラフィック・コントローラ1020には、表示装置1022が接続されている。
また、バスライン1005には、外部機器と無線通信をすることができる無線部1086と、Bluetooth方式による近距離無線通信による送受信が可能なBluetoothモジュール1084が接続されている。
BIOS1060は、コンピュータ1000の起動時にCPU1010が実行するブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。これにより、図1で示した、コンピュータ1000のハードウェアが実現される。
光ディスクドライブ1076としては、例えば、CD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、DVD−RAMドライブ、BD(Blu−ray Disk)−ROMドライブ等を使用することができる。この際は各ドライブに対応した光ディスク1077を使用する必要がある。光ディスク1077から光ディスクドライブ1076によりプログラムまたはデータを読み取り、I/Oコントローラ1070を介してメインメモリ1050またはハード・ディスク1074に提供することもできる。
コンピュータ1000に提供される本発明によるコンピュータプログラムは、光ディスク1077、またはメモリーカード等の記録媒体に格納されて利用者に提供される。コンピュータプログラムは、I/Oコントローラ1070を介して、記録媒体から読み出され、又は通信I/F1040を介してダウンロードされることによって、コンピュータ1000にインストールされ実行される。
以上の例は、バット選択システムについて主に説明したが、コンピュータに、バット選択システムで説明した機能を有するプログラムをインストールして、そのコンピュータをバット選択システムの解析手段として動作させることにより上記で説明したバット選択システムと同様な機能を実現することができる。したがって、本発明において一つの実施するための形態として説明したバット選択システムは、コンピュータプログラムによっても実現可能である。
以上、本発明について、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。例えば、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。例えば、バット選択システムについては、野球について主に説明したが、その他のバットを使う球技であるソフトボール用のバットの選択にも使用することができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 運動学情報検出部
19 データ送信部
20 バランス調整部
30 初期位置決め用クレードル
32 初期位置決め用テーブル
100 センサーバット
500 データ解析装置
504 タイプ入力部
510 受信部
520 運動学情報算出部
530 バット選択部
540 表示手段(結果表示部)
1000 コンピュータ

Claims (5)

  1. 各打者に適合するバットを選択するセンサーバットとデータ解析装置とを有するバット選択システムであって、
    前記センサーバットは運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を備え、
    前記データ解析装置は、
    前記打者の目指すタイプを入力するタイプ入力部と、
    前記センサーバットから送信されたデータを受信するデータ受信部と、
    受信したデータから、バットスイングの運動学情報を算出する運動学情報算出部と、
    前記タイプ入力部により入力された打者の目指すタイプと、運動学情報を解析して算出した打者のスイングの評価パラメータと、に基づき前記打者に最適なバットを選択するバット選択部と、
    前記バット選択部により選択されたバットと、評価パラメータに関連する情報を表示する表示手段と、
    を備えたバット選択システム。
  2. 前記センサーバットの初期位置・初期姿勢決め手段をさらに備え、
    前記センサーバットを該初期位置・初期姿勢決め手段にセットしてスイング軌道の初期値を設定することを特徴とする請求項1に記載のバット選択システム。
  3. 前記評価パラメータは、打者のバットスイングにおけるスイングスピード、バット角速度、バット軌跡、打撃点換算運動量、バット注入エネルギ―、スイング時間のいずれか一つ以上であり、
    選択に使用した二つ以上の評価パラメータと、選択されたバットとを前記表示手段により表示する請求項1又は2に記載のバット選択システム。
  4. 前記運動学情報算出部には、運動学情報の算出精度向上のために、加速度信号の補正を行う加速度補正手段が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバット選択システム。
  5. 各打者に適合するバットの選択に用いられるセンサーバットであって、
    前記センサーバットは運動学情報検出部と、バットバランス調整部と、該運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、
    を備えたセンサーバット。
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