JP6487703B2 - X線検査装置及びx線検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、X線を用いて対象物の内部を検査するX線検査装置及びX線検査方法に係り、とくに、食品、工業製品、人体の乳房等の人体の一部等の対象物の少なくとも種類或いは性状を、又は、対象物の内部或いは外側に在るかもしれない、当該対象物の組成とは異なる物質の少なくとも種類或いは性状をX線の透過情報から同定(特定又は推定)する物質同定装置及び物質同定方法に関する。
近年、X線を用いて対象物の種類や形状を特定したいという要望は随所でみられる。その一例として、公衆衛生や食品安全の観点から食品の内部に含まれることがある異物の検査に対するニーズの高まりがある。
このニーズに応えるX線検査も様々あるが、脚光を浴びている検査法は、X線を食品に照射して、その透過X線の情報から食品内部の物質の情報を収集する方法である。その一例として、搬送用のベルトを挟んで上下にX線管と検出器を配置し、ベルト上に載せた検査対象の食品をX線で検査する、所謂、インライン形のX線検査装置が知られている。この装置の場合、検査対象の食品はベルト(ライン)に載せられて搬送され、X線管と検出器との間に形成されるX線照射野を通過する。食品を透過したX線は、ベルトの下側の検出器で検出され、その検出データに基づいて画像が作成される。この画像を例えばソフトウェアで処理することで、その画像に写り込んでいる陰影から、その食品の内部に紛れ込んでいることがある異物を発見できる。また、検査対象は異物のみに限定されずに、X線でコントラスト差が生まれるものであって大きさや形状あるいは重量をより正確に求める必要がある対象物であってもよい。
このようなX線検査において、その応用範囲を更に広めることも望まれている。例えば、空港等の施設において鞄や郵便物を開かずに、その不明な内容物の種類及び/形状を特定したい、所謂、手荷物検査がある。また、上述した異物検査において、予め既知の対象物(例えばパン等の食品)に異物(例えば金属片)が紛れ込んでいる場合、その異物の存在及びその種類を発見し特定したいという検査要求もある。つまり、対象物(物質)の種類及び/又はその形状自体をX線により同定したいというニーズも潜在的に高い。
このニーズの高まりに関しては、例えば特許文献1(特開2010−091483)に記載の手法が知られている。この特許文献1に記載の「異物検出方法および装置」は、所謂、デュアルエネルギー法(又はサブトラクション法)と呼ばれる検査法である。この検査法は、2種類のエネルギー(波長)のX線が物質を透過するときのX線透過情報に差があることを利用している。具体的には、低エネルギーと高エネルギーの2種類のX線画像を同時に作成し、それらの画像の相互の差分をとり、その混入異物の成分画像を抽出し、その差分画像から閾値処理して異物を検出することを基本構成としている。この特許公報1に記載の場合には特に、差分演算における最適なパラメータを自動設定によって高感度な異物検出を行うものである。
なお、この特許文献1には、X線の光子(フォトン)の入射をそのエネルギーを弁別した状態で検出可能なX線検出器を用いることもできることが示唆されている。つまり、低エネルギーと高エネルギーの2種類のX線を同時に得る手立てとして、従来知られている光子計数型(フォトンカウンティング型)のX線照射・検出系の利用も示唆されている。
一方、デュアルエネルギー法による検査法として、非特許文献1に記載の検出法も知られている。この非特許文献1によれば、上述したデュアルエネルギー法の基本構成の元で、さらに検査対象物がベルト上で重なっていたりした場合であっても、その重なりと異物とを混同せずに、異物をより高感度に検出可能なシステムが提供される。
特開2010−091483号 特開2013−119000号
アンリツテクニカル No.87, Mar.2012, 「デュアルエネジー方式X線異物検出機の開発」
上述した特許文献1及び非特許文献1に記載のデュアルエネルギー法によれば、対象物又はその中に混入する異物の存在自体は検出可能である。しかしながら、その異物がどのような種類のものであるか、又は、これに加えて、その異物の3次元形状がどのようになっているのか、という異物検査において最も知りたい情報を得ることは困難であった。
つまりは、この異物の種類等を同定(特定、推定)困難であるということは、X線が透過する物質自体の種類、又は、これに加えてその3次元形状がどのようになっているかについて同定困難であるということである。これは対象物自体の種類が不明な検査のときには極めて不都合なことであった。
このような不都合を解消しようとした提案が特許文献2によりなされている。この提案は、ラミノグラフィー法を採用する断層装置等から得られる画像を使って、精度良く且つ簡便に対象物に含まれる物質の種類を同定する手法を提供するものである。具体的には、X線のエネルギーを複数のエネルギー領域に弁別して光子計数した計数値及びその計数値で再構成した被検体画像を用いて、被検体の中の注目部位に在る物質を同定する手法である。この手法によれば、厚さ及び密度の均一な物質を撮像した計数値に基づいて参照画像が作成され、この参照画像の画素値で被検体画像の画素値を画素毎に除算して当該被検体画像の画素値が規格化される。この規格化された画素値から、吸収情報を与えた軸を2次元の一方の軸に、且つ、当該2次元の他方の軸にX線のビームハードニング情報を与えた散布図が作成される。この散布図から、被検体の撮像部分に在る物質の種類を同定するための同定情報が取得される。
しかしながら、この特許文献2に記載の物質同定法の場合、散布図を求めなければならない。散布図を用いることは、視覚的にどのような情報で物質が入り混じっているのかということ捉える分には良い。しかし、エネルギー帯域の情報を原画像の割り算によってビームハードニング軸上の値を求めるため、ノイズが増加すること、最小二乗法の通過点(座標原点を通る条件などの通過ポイント)を規定できていないために近似誤差が大きいこと、散布図の生成に、収集された全データを使っていないこと、など課題が多い。
そこで、本発明は、上述した従来のX線検査が抱える状況に鑑みてなされたもので、その目的は、オブジェクト空間に存在する対象物(被検査品やその対検査品に混入している異物)の種類、又は、これに加えて、その対象物の形状を、その厚さに無関係に、より高精度に、かつ、より少ない演算量で同定(推定、特定)可能なX線検査装置及びX線検査方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係るX線検査装置は、X線焦点を有し、当該X線焦点からファン状の広がりを以ってX線を発生するX線管を備えたX線発生装置と、複数の画素が配置された矩形状のX線入射窓を備え、当該各画素に入射した前記X線の光子の数を、予め定めた複数のX線エネルギー領域のそれぞれにおいて計数し、その計数値に応じたX線強度を画素値とする電気量のフレームデータを一定時間毎に出力する光子計数型のX線検出器と、を備える。このX線検査装置は、前記X線管と前記X線検出器との間に形成されるオブジェクト空間に検査対象を位置させ、当該X線管及び当該X線検出器の対または当該検査対象の何れか一方をその他方に対して相対的に所定のスキャン方向に移動させながら当該検査対象を前記X線の透過状態の情報に基づいて検査するように構成される。このX線検査装置は、前記フレームデータに基づいてラミノグラフィー法に準じて、前記オブジェクト空間において前記検査対象と交差する面の画像を代表像として準備する代表像準備手段(51〜63,65)と、前記代表像に関心領域を設定する関心領域設定手段(23A,23B,23C)と、前記代表像上で前記関心領域により指示された画素それぞれにて、前記複数のX線エネルギー領域のうちの互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域それぞれの前記計数値に基づく前記X線の透過情報から、前記関心領域に位置する物質の少なくとも種類又は性状を同定する物質同定手段(23A)と、を備える
これらの構成のうち、前記代表像準備手段(51〜63,65)は、前記オブジェクト空間において設定された、前記スキャン方向に平行な複数の断層面それぞれのフレームデータを、前記X線検出器が出力した前記フレームデータから、前記X線のファン状の広がりと当該複数の断層面の当該断層面に直交する直交方向における位置とに応じて作成するフレームデータ作成手段(51〜56)と、前記複数の断層面のフレームデータに基づいてラミノグラフィー法により当該複数の断層面の一部の断層面又は全ての断層面の断層像を作成する断層像作成手段(57)と、前記一部の断層面又は前記全ての断層面の断層像
に基づいて、前記オブジェクト空間において前記検査対象と交差する面であり、かつ前記検査対象の前記X線の透過を代表する前記スキャン方向に沿った面の画像を代表像として作成する代表像作成手段(58〜63,65)と、を備える。
本発明によれば、オブジェクト空間において設定された、スキャン方向に平行な複数の断層面それぞれのフレームデータが、X線検出器が出力したフレームデータから、当該X線のファン状の広がりと当該複数の断層面の直交方向の位置の相違とに応じて作成される。前記複数の断層面のフレームデータにラミノグラフィー法に順じて当該複数の断層面の断層像が作成される。その複数の断層面の断層像に基づいて、前記検査対象と交差する面であり、かつ検査対象をスキャン方向に沿って代表する面の画像が代表像として設定される。この代表像に関心領域が設定される。この関心領域は、例えば検査対象に混在する異物の陰影領域である。代表像上で関心領域により指示された、当該代表像の画素それぞれにおける、複数のX線エネルギー領域のうちの互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域それぞれのX線光子の計数値に基づくX線の透過情報の差異情報から、当該関心領域により示された位置に在る物質の少なくとも種類又は性状が推定される。
このように、代表像を使って、例えば異物等の関心領域を設定し、その関心領域により指示された画素それぞれの位置において、互いに異なる2つのX線エネルギー領域に属するX線光子の計数値に基づくX線透過の差異情報を物質同定に用いている。このため、検査対象のオブジェクト空間における厚さが一定又はほぼ一定と見做せる検査条件等、多くの検査条件下において、2つのX線エネルギー領域におけるX線硬化(ビームハードニング)の差異情報を、予め設定しておいた差異情報の既知情報を参照できる。
したがって、オブジェクト空間に存在する対象物(被検査品やその対検査品に混入している異物)の種類、又は、これに加えて、その対象物の形状を、その厚さに無関係に、より高精度に、かつ、より少ない演算量で同定(推定、特定)可能になる。
添付図面において、
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線検査装置をより上位の概念で説明するブロック図である。 図2は、本発明の第2の実施形態に係る、より具体的なX線検査装置を概念的に示す説明図である。 図3は、第2の実施形態に係るX線検査装置におけるベルトコンベアと検出器の配置とを例示する図である。 図4は、X線のエネルギー領域(エネルギービン)を説明する図である。 図5は、検査空間(オブジェクト空間)を通る検査対象の大小と断層取得範囲及び断層面枚数との関係を説明する図である。 図6は、X線検査装置において検出器と一体に作り込まれるデータ処理回路の構成を説明するブロック図である。 図7は、検出器をスキャン方向に斜めに置いたことに伴う、画素の直交座標系への置き直しを説明する図である。 図8は、断層面の高さに応じて、収集したフレームデータを縮小する処理を説明する図である。 図9は、縮小したフレームデータの画素数をそのまま維持した状態で、スキャン方向に直交する方向の各画素のサイズもそのまま維持するが、スキャン方向については各画素のサイズを検出器の画素、所謂、原画像画素のサイズに置き直す処理を説明する図である。 図10は、再構成画像の合成と編集とを説明する図である。 図11は、画像再構成を説明する図である。 図12は、検査空間に仮想的に配置された複数の断層像のデータを説明する図である。 図13は、エッジ検出としてのソーベルフィルタの処理を説明する図である。 図13は、複数の断層像とそれらのソーベルフィルタを掛けた画像から1枚の最適焦点の合成画像を作成する処理を説明する図である。 図15は、ソーベル値の3次元分布及びソーベル値の探索方向を示す、2通りの視線を説明する図である。 図20は、画素毎のソーベル値の断層面位置に対するプロファイルとそのパターン分類を例示するグラフである。 図17は、複数の断層像が形成する再構成空間と1枚の最適焦点の合成画像とにおける異物の位置関係を説明する図である。 図18は、物質同定のための参照データとなる予め設定したデータベースを模式的に説明する図である。 図19は、画像上の検査対象とその中に含まれる異物との位置関係の一例を説明する図である。 図20は、物質同定の処理を説明するフローチャートである。 図21は、異物の輪郭とその輪郭を抽出するためのソーベル値の変化を説明する図である。 図22は、異物が検査対象に重なっている部分の、当該検査対象部分を通るX線光子の計数値を推定するための画素付加処理を説明する図である。 図23は、上記検査対象部分を通るX線光子の計数値の推定処理を説明するフローチャートである。 図24は、本発明の第3の実施形態に係るX線検査装置で実行される物質同定に係る関心領域の確定処理を示すフローチャートである。 図25は、第3の実施形態において実行される物質同定の概要を説明するフローチャートである。 図26は、関心領域の確定処理を説明する図である。 図27は、関心領域の確定処理を説明する別の図である。 図28は、代表像における関心領域を除く背景のX線吸収を推定するフローチャートである。 図29は、背景のX線吸収分を差分する処理を説明する図である。 図30は、背景のX線吸収分を差分する処理を説明する図である。 図31は、作成される2次元散布図を説明する図である。 図32は、2次元散布図における原点とその付近のノイズの集合を説明する図である。 図33は、2次元散布図を用いて物質同定を行うときの途中の処理工程を説明する図である。 図34は、2次元散布図を用いて物質同定を行うときの途中の処理工程を説明する別の図である。 図35は、2次元散布図を用いて物質同定を行うときの途中の処理工程を説明する別の図である。 図36は、2次元散布図を用いて物質同定を行うときの途中の処理工程を説明する別の図である。 図37は、第3の実施形態において物質同定に用いるデータベースを説明する図である。 図38は、第3の実施形態の第1の変形例に係る物質同定の処理の概要を説明するフローチャートである。 図39は、第3の実施形態の第2の変形例に係る物質同定の処理の概要を説明するフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るX線検査装置の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
この第1の実施形態に係るX線検査装置は、本発明に係るX線検査装置の基本的な構成を示す実施形態である。
このX線検査装置は、検査される対象物にX線を照射して得たX線透過データから対象物の内部或いは外表面に存在する異物等の存在をチェックする装置である。
このX線検査装置は、X線を照射するX線管とX線を検出する検出器とを備えたX線検出ユニットを備える。このX線検出ユニットが提供する空間、即ち、X線ビームが通る撮影空間を、検査対象物が通過する。勿論、対象物を撮像空間内に固定状態で存在させて、X線検出ユニットを一定速度で移動させてもよい。このX線検出装置では、例えば上述のように移動中の対象物にX線が照射され、その対象を透過したX線が検出され、その検出したX線のデータからラミノグラフィー法(又はトモシンセシス法とも呼ばれる)に準じた再構成法と画素単位の焦点位置探索の手法とを用いて、その対象物の内部を3次元的に示す画像が再構成される。
このX線検査装置が検査可能な対象物としては、食品、工業製品、人体の乳房等、多岐に渡る。後述する具体例では、食品(ソーセージ、ピーマン等の野菜など)の内部に異物が混入していないかどうかを調べるインライン形の食品検査装置を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。食品としては、この他に、鮮魚内の釣り針等の異物を検査することも可能である。また、異物の意味合いを変更解釈すれば、食肉の内部の油脂分の含み具合、異物や骨の混入、木材の鬆や水分含有量のチェック等にも適用できる。工業製品としては、電子基板部品の実装状態のチェック、ハンダバンプ内の接触状態のチェック等にも適用できる。さらに、人体の乳房を検査するマンモグラフィーにおいては、乳房内に発生する石灰化や腫瘤等の病変部の発見が目的である。
また、このX線検査装置に係る物質の同定(特定、推定)処理を適用可能な検査対象には、その組成構造がX線投影方向において入り乱れて複雑でないこと、或いは、領域を区切るとその構造が推定可能であることが望ましい。さらに、検査対象の中に混入する異物も同様に、その組成構造が場所によりX線投影方向において入り乱れるものでない、あるいは、領域を区切るとそれが推定可能であることが望ましい。このような検査条件は、多くの非破壊検査において容易に満たされる。この物質同定が不向きな検査対象は、例えば、人体のように多様な臓器がX線投影方向において入り乱れるような構成をしているものである。ただ、人体でも比較的構成が単純な口腔部や骨(整形分野)では適用が考えられる。またカップヌードルのような同一素材や弁当のような複数の素材、カール状に複雑に空気層と混ざるような構成でも、レイアウトが予め分かるような対象物は物質同定の対象となり得る。
第1の実施形態に係るX線検査装置の基本構成を図1に示す。このX線検査装置10は、図1に示すように、スキャン方向に所定のコーン角θを有し、且つ当該スキャン方向に直交する断面に沿った直交方向に所定のファン角βを有するX線ビームを発生するX線管11及びコリメータ33を備えたX線発生器12と、2次元に配列された複数の画素を備え、当該各画素に入射した前記X線ビームの強度を示すフレームデータを一定時間毎に出力するX線検出器13と、を備える。このX線検査装置10では、X線管11とX線検出器13とを互いに対向かつ離間させて配置したときに形成される、それらの間のオブジェクト空間に検査対象OBを位置させる。X線管11及びX線検出器13の対(即ち、X線検出ユニット)または当該検査対象OBの何れか一方をその他方に対して相対的に前記スキャン方向に移動させながらX線検出器13から出力されるフレームデータが収集される。このとき、スキャン方向をZ軸とし、それに直交するX軸、Y軸を持つ直交座標系が便宜的に設定される。フレームデータを用いて前記検査対象OBの物質同定(物質の少なくとも種類又は性状の特定)がなされる。
この情報を提供するために、このX線検査装置10は、更に、フレームデータ作成部14、断層像作成部15、代表像設定部16、関心領域設定部17、及び物質推定部18を備える。このうち、フレームデータ作成部14、断層像作成部15、及び代表像設定部16により代表像準備手段が形成される。
このうち、フレームデータ作成部14は、前記オブジェクト空間において設定された、XZ面に平行な複数の断層面それぞれのフレームデータを、X線検出器13が出力したフレームデータから、X線のファン角βに沿ったファン状の広がりと当該複数の断層面の高さ方向(Y軸方向)の位置の相違とに応じて作成する。
断層像作成部15は、前記複数の断層面のフレームデータにラミノグラフィー法に準じた再構成を適用して当該複数の断層面の断層像を作成する。このとき、作成する断層像は、上記複数の断層面の内の2枚以上の、一部の断層面の断層像であってもよいし、全ての断層面の断層像であってもよい。さらに、代表像設定部16は、断層像作成部15が作成する複数の断層面の断層像に基づいて検査対象をスキャン方向にて代表する面の画像(合焦画像)を代表像として設定する。関心領域設定部17は、前記代表像に関心領域を設定する。さらに、物質推定部18は、代表像上で前記関心領域により指示された画素それぞれにて、前記複数のX線エネルギー領域のうちの互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域それぞれの計数値に基づくX線の透過情報の差異情報から、関心領域の位置に在る物質の少なくとも種類又は性状を推定する。
[第2の実施形態]
次に、図2〜図14を参照して、上記第1の実施形態に係るX線検査装置20をより具体的に示す、第2の実施形態に係るX線検査装置を説明する。
図2に、第2の実施形態に係るX線検査装置20の構造の概要を示す。同図に示すように、このX線検査装置20は、一例として、食品の異物を検査するように構成されている。このX線検査装置20は、ラミノグラフィー法(トモシンセシス法とも呼ばれる)を用いて検査対象の食品OBの内部の多断面の画像を作成し、その多断面の画像のデータから様々な内部構造を示す画像情報を提供し、その画像情報から異物の有無の判定、その異物の3次元位置の決定、及び/又は、その異物の種類又は性状を同定(推定、特定)するインライン形のX線検査装置である。
このX線検査装置20は、X線を発生するX線発生装置21と、X線受信側の装置であるX線検出装置22と、このX線検出装置22に接続されて同装置22の出力情報を受けて当該情報を処理するコンピュータ23とを備える。コンピュータ23は、CPU(Central Processing unit)を備える演算装置23A、表示器23B、及び入力器23Cを備える。演算装置23Aは、ROM(Read-Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリ23Mを備える。
X線発生装置21は、点状のX線管焦点(焦点径は例えば1.0mmφ)を有するX線管31と、このX線管31を駆動させるために必要な高電圧を発生して、そのX線管31に供給する高電圧発生器32とを備える。さらに、X線発生装置21はコリメータ33を含む。
X線検出装置22は、入射するX線を検出するとともに、そのX線のデータを、前述した対象OBの内部構造を示す画像情報を生成するまでに必要な処理を一貫して担っている。このX線検出装置22は、X線を検出し、そのX線を電気信号に変換して出力するX線検出器(以下、単に、検出器と呼ぶ)41と、この検出器41の出力端に電気的に接続され、入力した電気信号から前記画像情報を作成するデータ処理回路42とを備える。このデータ処理回路42が行う処理は本発明の特徴の一部を成すもので、これについては後で詳述する。
X線管31及び検出器41は、高さ方向Yにおいて互いに一定距離だけ離間して配置され、その両者が、食品OBを透過するX線を検出するX線検出ユニットを構成している。このX線管31と検出器41(物理的には後述する搬送ベルト)との間には、対象OBを通過させる検査空間(撮影空間又はオブジェクト空間)SPが形成されている。この検査空間SPを、量が大きい/小さい、背丈が高い/低いといった様々な大きさ及び形状の対象OBが通過する。
X線管31から発生したX線は、検査空間SPの所定位置に配置されたコリメータ33により、スキャン方向Zに所定のコーン角θを有し、且つ当該スキャン方向Zに直交する断面に沿った直交方向Xにおいて所定のファン角β(後述する図12参照)を有するX線ビームXBに形成される。
この検査空間SPを搬送ベルト48が通過する。この通過方向を対象OBの搬送方向と呼ぶとすると、この方向は対象OBのスキャン方向Zに相当する。搬送ベルト48のベルト幅方向をXとすると、X軸、Y軸、及びZ軸の直交座標が図2に示すように設定される。
この搬送ベルト48は、複数のローラ49により一定速度S(mm/sec)でスキャン方向Z(対象OBの搬送方向)において循環するように構成されている。ローラ49には、そのローラの回転速度、すなわち搬送ベルト48の移動速度を示す信号を検出するエンコーダ50が設けられている。このように検査すべき食品OBは、搬送ベルト48の移動に伴ってX線ビームXBを横切るように通過する。
X線検出装置22は、搬送ベルト48の上側ベルト部分と下側ベルト部分の間に配置(インライン配置)されており、検出器41のX線入射窓は上側ベルトの下に位置している。このとき、図2に示すように、高さ方向Yにおいて、X線管31の焦点Fから検出器41のX線入射窓までの高さはHに、同焦点Fから搬送ベルト48の上側のベルト部分までの高さはHに設定されている。
検出器41は、図3に示すように、複数のモジュールMをライン状に繋いで構成され、これにより、細長い矩形状の輪郭を持たせている。また、検出器41は、その全体として、細長い矩形状のX線入射窓MD(その幅(検出幅)=W))を有する。
各モジュールMは、CdTe,CZTなどの半導体材料から成る検出層を例えば20×80個の画素(各画素は0.2mm×0.2mmのサイズを持つ)Pに成形した、X線から電気信号に直接変換する、所謂、直接変換型のX線検出要素である。この複数の画素Pを成す検出層の両面には、図示しないが、実際には荷電電極と収集電極とが貼設されている。この両電極間にバイアス電圧が印加される。
このモジュールMを全部で29個、縦列に並べることで、縦方向が約47cm×横方向が0.4cmの、前述したX線入射窓MD(画素数にして例えば、20×2348個の画素)が形成される。このため、複数のモジュールM自体はライン状に並んでいるが、画素配列の点では横方向にも複数の画素Pを有する2次元の細長い直接変換型の検出器として構成されている。
さらに、この検出器41は、X線を様々なエネルギーを有するフォトンの集合であると見做して、それらのフォトンの個数をエネルギー領域別に計数可能な光子計数型(photon counting type)の検出器である。このエネルギー領域としては、例えば図4に示すように、4つのエネルギー領域Bin〜Binが設定されている。勿論、このエネルギー領域Binの数は複数であればよい。
この検出器41では、その画素P毎に、且つ、エネルギー領域Bin毎に、X線強度が一定時間毎にフォトン数のデジタル量の計数値(累積値)として検出される。1個のフォトンがある画素Pに入射すると、そのエネルギー値に応じた波高値の電気パルス信号がその画素Pに発生する。この電気パルス信号の波高値、すなわちエネルギー値は所定のエネルギー領域Bin毎に分類され、その計数値が1つ増える。この計数値は一定時間毎の累積値(デジタル値)として画素P毎且つそのエネルギー領域Bin毎に収集される。このデータ収集回路はASIC層として前述した検出層の下面に積層状態で作り込まれている。
このデータ収集回路におけるサンプリング周波数を高い値に設定することで、例えば6600fpsのフレームレートで、例えば20×2348個の画素それぞれからデジタル量の計数値として、しかも、エネルギー領域Bin毎に収集される。
このような直接変換型検出器は、そのデータ収集回路も含めて、公知であり、例えば欧州特許公開 2 674 787号公報に示されている。
なお、検出器41としては、必ずしも上述した直接変換型検出器でなくてもよく、CeLaCl検出器のように数十μm程度の直径のMicro Column状のシンチレータにSiPM(MPPCとも呼ぶ)を構成したフォトンカウンティング検出器であってもよい。
この検出器41は、図3に示すように、搬送ベルト48の移動方向、即ちスキャン方向Z(及びベルト幅方向X)に対して斜めに配設されている。具体的には、搬送ベルト48の幅(X軸方向の幅)を約45cmとしたときに、その移動方向、すなわちスキャン方向Zに直交するベルト幅方向Xに対してα°(例えば略14.036±0.5°)の傾斜をつけている。この傾き角度αは、1行に並べた、縦横の長さの比が1:1である画素を4個全体の対角線がスキャン方向Zに一致するように設定すると、検出データの補正がより簡便になる。このように、各画素Pの正方形状の輪郭もベルト幅方向X(及びスキャン方向Z)に対して斜めに傾いて配列されている。
この傾けた配置を採用しない、即ち検出器41を、その長手方向がベルト幅方向Xに並行になるように配置した場合、画素P間の隙間(通常、200μm)がスキャン方向Zに向いて、対象OBにデータが収集されない部分が生じる。しかし、上述のように検出器41を傾けて配置することで、かかるデータ収集がなされない部分は無くなる。加えて、後述するようにスキャン時の再構成空間、すなわちオブジェクト空間に合わせた画素の構成する軸を変換(アフィン変換)する際にサブピクセル法に従って近傍の複数画素から画素値を決める。このため、画素間の様々なバラツキ要素(画素の製造精度のバラツキやフォトンノイズなど)を抑える効果を生じる。これにより、ノイズがより少ない画像を作成することができる。
コリメータ33の開口のサイズ及び形状は、図示しないが、検出器41の検出面の有効面積にX線が丁度、照射されるように設計されている。勿論、X線管と検出器と間の距離が可変にできる構成の場合、コリメータ33の開口のサイズ及び形状は、コンピュータ23の指示の元で制御されている。これにより、コリメータ33はX線ビームXBに前述したコーン角θ及びファン角βを与える。その一方で、本実施形態に係る検出器41は、前述したように、スキャン方向Zに対して設定した直交座標系に対して斜めに配置されているため、この斜め配置を考慮したコリメータ33の開口設定がなされる。つまり、検出器41のX線入射窓MDも直交座標系に対して斜めに位置しているので、検出器41への照射野はそのX線入射窓MD上の輪郭に一致するように設定されている。
図5は、スキャン方向Zに沿って、X線ビームXBと検査対象物としての食品OBとの位置関係を模式的に示す。食品OBは、搬送ベルト48に載せられてスキャン方向Zに搬送され、このX線ビームXBを横切るように通過する。食品OBは当然、大なり小なり、高さ方向Yに長さを持つ。X線ビームXBはスキャン方向Zにおいて所定のコーン角θを有している。このため、YZ面に対向する方向から観察すれば、図5に模式的に示すように、X線管31に近づくほど、スキャン方向ZにおけるX線ビームXBの照射幅は小さくなる。
本実施形態に係るX線検査装置20は、検査空間SPにおける対象OBの高さに合わせて、その高さ方向Yにおける検査範囲を示す、断層取得範囲と断層面の枚数とをオペレータが選択的に指定可能になっている。断層取得範囲は、単純に、高さ方向Yにおける撮影範囲とも言い換えてもよい。
なお、ここで言及する断層面とは、ある高さでの面を言う。断層面同士の間隔を狭く設定するほど、後述する異物検出の解像度は上がるが、その分、検出処理を担う回路規模も大きくなる。
図5の例で説明すれば、背丈の低い対象OB1には断層取得範囲H1と断層面枚数M1とを指定できる。また、背丈の高い対象OB2(OB2の高さ>OB1の高さ)には、各断層厚を全ての対象OB(OB1,OB2)に共通とすると、断層取得範囲H2(>H1)と断層面枚数M2(>M1)とを指定できる。この断層取得範囲及び断層面枚数はオペレータがコンピュータ23を介して、その都度の任意の値を選択的に指示してよいし、デフォルト値として設定してもよい。装置20の入り口で対象OBの高さの範囲を自動的に検出・推定し、その値に応じて断層取得範囲及び断層面枚数を自動的に設定してよい。
このように高さ方向Yに多断層面を仮想的に設定するので、検査空間SPにおいて、多断層面夫々を通過するX線ビームXBのスキャン方向Zの幅(つまり照射野)が断面毎に異なる。このX線検査装置20は多断層面それぞれの画像再構成を行うことをベースにしているので、このX線ビームXBの幅が各断層面で異なることを無視してデータ処理はできない。
これを、前述した図2を用いて説明すると、任意の断層面(いま厚さは無視する)Hにおいて後述する画像再構成を行うとき、その断層面の単位長あたりのX線吸収はH/Hの分だけ大きな値になる。これはX線ビームXBがX線管31の点状のX線管焦点F(焦点径:1mm)から検出器41のX線入射窓MDの幅W(例えば4mm)向けて連続的に拡大しているからである。任意の断層面Hにおける実際の検出器投影幅Wは、W=W・(H/H)になるからである。
このため、検出器41により検出されるX線透過データ、即ち、フレームデータ)は高さ方向Yについて補正が必要となる。つまり、高さ方向Yに関して、X線ビームXBが広がっている(即ち、スキャン方向Zにコーン角θを有する)ことに因る拡大投影の影響はそのまま、検出される透過データの画素の濃度値の大小として残る。このため、この影響に関して、収集後に、濃度値の補正が必要であり、具体的には、H/Hに係数を、各断層面の各画素の値に掛ける補正を行う。
一方、スキャン方向Zにおいては、検出されるX線透過データの画素サイズを同じ値に置き直すように処理すれば、各画素の濃度値を断層面高さに応じて補正する必要はない。その理由は、スキャン方向Zの移動速度S(搬送ベルト48の速度)は高さに関係なく一定値であるためである。各断層面における、検出器41により検出される透過データの有効幅は一様にH/Hに圧縮されるだけである。このため、スキャン方向Zについては、高さ方向Yが違っても、検出される透過データの画素の濃度を補正する必要はない。
さらに、このスキャン方向に直交する方向(即ち、図3のベルト幅の方向X)については、画素サイズをX線管31に接近するほど(即ち、高さ方向であるY軸方向において断層面の位置が高くなるほど)、画素サイズが小さくなるように画素を置き直す処理をする。このため、スキャン方向に直交する方向についても画素の値(濃度値)の補正は不要である。このように、本実施形態では、スキャン方向Z及びそれに直交する方向Xについては、画素サイズの調整によって画素の濃度補正が不要になっている。このため、濃度補正は、高さ方向Yについて実行すればよいことになる。
さらに、このX線検査装置20は、搬送ベルト48を用いているので、このベルト48による補正の必要性についても考えてみる必要がある。ある対象OBが厚さ一定の搬送ベルト48で搬送されるとすると、X線束は対象OBと搬送ベルト48の一部とを通過するが、高さ方向Yにおける両者の厚さ(高さ)の関係は、どの断層位置をとっても変わらない。このため、搬送ベルト48が存在することの影響は、高さ方向Yのどの断層面位置をとっても一定になる。したがって、この搬送ベルト48が在ることに因る、高さ方向における影響度に相違はない。つまり、搬送ベルト48に因るX線吸収補正は必要だが、高さによる相違はないということである。
<データ処理回路について>
次いで、図6を参照して、検出器41と一体に形成されるデータ処理回路42を説明する。
このデータ処理回路42は、X線検出装置側の一要素として配設されていることも、本実施例の特徴の1つである。それは、前述した検出器41のデータ収集回路41A(図6参照)の出力段にLSI回路、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で一体に作り込まれる。すなわち、従来多くみられるように、CPUによるソフトウェア処理に依らずに、圧倒的に高速で即時性の高い演算ができるという特徴がある。勿論、CPUの演算負荷が大きくなることが許される環境にあるのであれば、後述する回路群で実行される処理をソフトウェアで実現するようにCPUのプログラムを設定してもよい。
図6に示すように、検出器41とコンソールの一部としてのコンピュータ(PC)23との間に、FPGAで構成されたデータ処理回路42が配設されている。このデータ処理回路42は、検出器41の出力端に接続された信号編集回路51を備え、この信号編集回路51の出力側に、順に、フレームデータ作成回路52、補正回路53、アフィン変換回路54、データセレクタ55、画像縮小回路56、シフト&アッド法に基づく再構成回路(シフト&アッド(shift & add)回路)57、及び対数変換回路58を備える。このシフト&アッド法は、ラミノグラフィー法(トモシンセシス法)に属する再構成法の1つである。
さらに、この対数変換回路58の出力端には表示用バッファ59及び物質同定用バッファ60が併設される。このうち、表示用バッファ59は、異物検出のためのエッジ検出回路61、合成・編集回路62、第1の画像作成回路63、及び第1のデノイズ回路64に至る。
合成・編集回路62の出力は更に第2の画像作成回路65を経て第2のデノイズ回路66に至る経路も併設されている。
第1及び第2のデノイズ回路64,66それぞれの出力(デノイズされた画像データ及び断層面情報)はデータセレクタ67を介して画像出力ポート68に至り、この出力ポート68を介して前述したコンピュータ23に接続されている。さらに、合成・編集回路62とデータセレクタ67との間には、3次元(3D)データ出力回路69及びエッジ情報指標化回路70も介在している。
[本実施形態に独特なデータ処理]
以下、上述したデータ処理回路42を詳述する。
図6に示すように、検出器41のデータ収集回路41Aの出力に信号編集回路51が接続されている。データ収集回路41Aの出力端から、画素P毎であって且つエネルギー領域Bin毎(図4参照)に収集されたX線光子の一定時間毎の計数値(累積値)を示すデジタルデータが高速に(例えば6600FPS)シリアルに出力される。信号編集回路51は、このシリアルのデジタルデータを受信し、検出器41の全画素P分の、エネルギー領域Bin毎のデータに編集して出力する。つまり、全画素Pのそれぞれに対するエネルギー領域Bin、Bin,Bin,及びBinそれぞれにおいて計数されたX線光子の計数値が生のフレームデータとして順次出力される。この生のフレームデータは例えば、20×2348の画素データから成り、エネルギー領域Bin毎に一定時間の周期で順次に出力される。
この生のフレームデータは、次段のフレームデータ作成回路52に出力される。このフレームデータ作成回路52は、順次、受信する生のフレームデータを使って、
・エネルギー領域Bin〜Binまでの4つのエネルギー領域の各対応する画素Pの画素値を画素毎に加算した合成フレームデータFDALL
・下側から2番目のエネルギー領域Binの生のフレームデータの画素値を、下側から1番目のエネルギー領域Binのそれから差分した第1エネルギー領域フレームデータFD、及び、
・下側から4番目のエネルギー領域、即ち一番上側のエネルギー領域Binの生のフレームデータの画素値を、下側から3番目のエネルギー領域Binのそれから差分した第3エネルギー領域フレームデータFDを、それぞれ演算する。
これらのフレームデータのうち、合成フレームデータFDALLがX線検査に用いられる。第1、第3エネルギー領域フレームデータFD及びFDは、異物の種類及び/又は性状を同定(推定又は特定)する、所謂、物質同定に使用されるデータであり、差分を採ることで、各画素Pに入射するX線光子同士の重畳現象(パイルアップ)よって高い方のエネルギー領域で誤計数される誤差分を抑制することができる。
この合成フレームデータFDALL及び第1、第3エネルギー領域フレームデータFD及びFDは、図7(A)に示すように、XZ面の2次元直交座標のX軸に対してα°(この例では略14.036±0.5°)だけ傾いている。
このフレームデータ作成回路52から出力される3種類のフレームデータFDALL、FD及びFDはそれぞれ次段の補正回路53に送られる。この補正回路53は、合成フレーム用補正回路53A、第1の差分用補正回路53B、及び第2の差分用補正回路53Cを個別に備える。これらの補正回路53A〜53Cには、システム側で予め判っている不良画素(dead pixel)に対する補正、濃度(intensity)に関する補正、及び画素値の均一性に関する補正等の補正データがシステム側から供給される。これにより、各補正回路53A〜53Cは、重み付け演算等、公知の手法を使って、フレームデータ毎且つその画素毎に与えられた補正処理を実行する。なお、濃度に関する補正には、フレームデータにX線のエネルギー領域毎に異なる重み付けをして、特定のX線エネルギー領域を強調する等の処理も含まれる。
これらのフレームデータFDALL、FD及びFDはそれぞれ次段のアフィン変換回路54に送られる。このアフィン変換回路54も、その3種類のフレームデータに対応して、合成フレームデータ用、第1、第2の差分フレームデータ用の3つのアフィン変換回路54A〜54Cをハードウェア回路として備える。各アフィン変換回路54A(〜54C)は、図7(A)に示す斜めのフレームデータFDALL(FD、FD)をサブピクセル法に基づいてX−Z軸の直交座標に変換する。
このアフィン変換後のフレームデータFDALL´(FD´、FD´)を図7(B)に模式的に示す。サブピクセル法によれば、直交座標上の各画素P´の画素値は、その画素P´を占有する、斜めのフレームデータFDALL(FD、FD)の関係する複数の画素の画素値とその面積占有率との比の乗算値の合計で表される。すなわち、図7(C)の例の場合、P´=p×r+p×rである。ここで、p、pは画素P1,P2の画素値、r,rは面積値である。同図(C)に示す画素P´の場合、斜めのフレームデータの端部であるので、r+r=r12(<1)となるが、これで代替値とすることとする。
これらのフレームデータFDALL´、FD´及びFD´は変換系毎に順次、一定間隔でデータセレクタ55に送られる。このデータセレクタ55はそれらのフレームデータを一旦、その内部メモリに蓄えつつ、フレームデータのセットを作成する。これにより、合成フレームデータFDALL´、第1エネルギー領域フレームデータFD´及び第3エネルギー領域フレームデータFD´の別に画像再構成のためのフレームデータにセットされる。
このデータセレクタ55は、フレームデータを使用するか(どのエネルギー領域のフレームデータを使用するかも含めて)、又は、画像データを使用するかを示す指令情報を受け取り、その指令情報に基づいて、合成フレームデータFDALL´のセット、又は、第1エネルギー領域フレームデータFD´のセット及び第3エネルギー領域フレームデータFD´のセットを選択的に出力することもできる。例えば、その指令情報が異物検知を示している場合、合成フレームデータFDALL´のセットだけを後段の画像縮小回路56に出力することができる。一方、その指令情報が対象OBの物質同定を指している場合、第1エネルギー領域フレームデータFD´のセット及び第3エネルギー領域フレームデータFD´のセットのみを選択的に出力することができる。勿論、その指令情報が異物検知及び物質同定の両者を指している場合、3つの種類のフレームデータのセットを共に出力することができる。
画像縮小回路56は2つの処理を担っている。その第1の処理は、データセレクタ55から出力される合成フレームデータFDALL´のセット、及び/又は、第1エネルギー領域フレームデータFD´のセット、第3エネルギー領域フレームデータFD´のセットのそれぞれを、予め指定されている断層取得範囲Hと断層面枚数Mから決まる、高さ方向Yにおける各断層面の高さに応じて縮小する処理である。具体的には、図8(A)から同図(B)に示すように、各フレームデータFDbf(FDALL´、FD´、FD´)の各画素のサイズを各断層面の高さに応じてZ軸方向及びX軸方向の等倍圧縮を行ってフレームデータFDafを作成する。画像縮小回路56には、図示しないが、この縮小処理のための回路要素が、かかる3種類のフレームデータのセットの全断層面数分、図示しないが、並列に装備されている。各断層面のX軸方向の幅は、照射されるX線のファン角βが呈する幅に合わせられように構成されている。
画像縮小回路56の第2の処理は、上述の縮小されたフレームデータFDafの画素サイズの置き直し及びマッピングである。すなわち、画像縮小回路56により、そのフレームデータFDafの画素サイズが原フレームデータ、即ち、検出器41の検出面(X線入射窓MD)で検出されたフレームデータの画素サイズ(即ち、検出器41の画素Pそれ自体のサイズであって、原画素サイズとも呼ばれる)に置き直される。この置き直しは、その置き直されたフレームデータの中心に位置する画素、即ち、Z軸方向及びX軸方向それぞれの中心に位置する画素が、かかる検出面の原フレームデータの中心に位置する画素に、XZ面上で位置的に一致するように実行される。
つまり、その置き直し前後のフレームデータ間でZ軸方向及びX軸方向の中心画素の位置が合うように位置決めした上で、置き直されたフレームデータの各画素の画素値が演算される。
これらの第1、第2の処理は画像縮小回路56の各回路要素(図示せず)により実行される。これらの処理を総括的に表すと、フレームデータの各画素に対して以下の数式で表される処理を実行することになる。
fGi(Zj, Xj
ここで、i=1〜N(N:断層面数)、
j=ALL 、 1、又は3
(j=ALLは合成フレームデータのセットに対する処理、
j=1は第1エネルギー領域フレームデータのセットに対する処理、
j=3は第3エネルギー領域フレームデータのセットに対する処理)
この数式は、「Zj, Xj」の位置にある画素に、少なくとも断層面の高さの関数Giで縮小させるとともに、関数fによって各画素を再度、スキャン方向についてのみ原フレームデータの画素サイズに置き直すことを意味している。この関数Giは、指定された断層範囲、断層枚数、及び高さ方向Yにおける濃度補正、更には使用する搬送ベルト48に対するX線吸収補正分のファクタが反映されている。
なお、フレームデータFDafの画素サイズの置き直しは、必ずしも原フレームデータの画素サイズ(原画素サイズ)に置き直す場合に限られない。例えば原フレームデータの画素サイズよりも小さくても、所望の解像度を有する画素サイズであってもよい。置き直しサイズを原画素サイズと同じ値にすることは一例である。
図9は、この画素の置き直し処理を模式的に示している。同図において、原フレームデータを実線FDbfで示し、等倍縮小後のフレームデータを点線FDafで示す。この画素サイズの置き直しは、両フレームデータの重なりに応じて、サブピクセル法の下で、画素サイズの変更と共に画素値が演算される。この画素サイズの置き直しは、両フレームデータのX軸方向及びZ軸方向の中心に位置する画素Pc-bf、Pc-afを相互に合わせて行われる。
このように、画像縮小回路56は、検出器41の検出面(X線入射窓MD)で検出された各フレームデータFDafを指定される複数の断層面の高さに応じてそれぞれ縮小し、かつ、縮小前後のフレームデータの中心画素の位置をXZ面で合わせつつ、縮小前後においてスキャン方向についてのみ原画素サイズと同じ画素サイズのフレームデータに変換される。
これにより、各フレームデータの複数の画素はそれぞれ、一番下の断層面においては原画素サイズと同じ正方形であるが、断層面の位置が高くなるにしたがってスキャン方向に直交する方向には長さが短くなる長方形を成す。断層面の位置が高くなるにつれて、その長方形がより細長くなる。しかし、複数の断層面を成す画素数は断層面相互で同じになる。
この様子を図10(A)に模式的に示す。高さ方向(Y軸方向)において一番下に位置する断層面のフレームデータFDALL1の画素は正方形の原画素サイズ(縦×横=X1×Z1且つX1=Z1)である。これに対し、真ん中付近の高さに位置する断層面のフレームデータFDALL2の画素は長方形の画素サイズ(縦×横=X2×Z1且つX2<X1)である。さらに、これにより高く位置する断層面のフレームデータFDALLNの画素は長方形の画素サイズ(縦×横=X3×Z1且つX3<X2)である。
このように、フレームデータのスキャン方向の画素サイズは互いに同じだが、スキャン方向と直交する(X軸方向)には断層面の位置が高くなるほど(Y軸方向)画素サイズが徐々に小さくなるフレームデータFDALL 2、又は、FD 2及びFD 2は後段の再構成回路57に送られる。この再構成回路57は、例えば指定された複数のフレームデータFDALL 2に対して、エンコーダ50からの搬送速度に同期したシフト量を以って既知のラミノグラフィー法(トモシンセシス法とも呼ばれる)、即ち、シフト&アッド(shift and add)の処理を施す。これにより、その指定枚数のフレームデータFDALL 2から1枚の断層像データIMALL(:IMALL1〜IMALLN)を再構成する(図10(B)(C)参照)。この処理対象のフレームデータは順次入れ替わるので、対象OBの
搬送と伴に、一定時間毎に、再構成された断層像IMALLのデータが生成される。この断層像IMALLは、前述したように、図10の下段、中段、上段と上側に進むほど、高さ方向Yにおける断層面の位置が上がる。このため、同図上で上側に進むほど、再構成された断層像のサイズは縮小処理によって小さくなっている。
同様に、第1、第3エネルギー領域フレームデータFD 2及びFD 2について、後述するように、特定のX線エネルギー領域のフレームデータに基づいて再構成された平面像IM(IM11,…IM1N),IM(IM31,…IM3N)がそれぞれ再構成される。
これらの断層像データIMは対数変換回路58により自然対数の断層像データに変換される。この断層像IMのデータは更に、異物検知の表示用バッファ59及び物質同定用バッファ60に送られる。
この内、表示用のバッファ59及び物質同定用バッファ60は共にダブルバッファの構成を持ち、このダブルバッファへのデータの書込み及び読出し制御によって、再構成された断層像IMの合成・編集を行うように構成されている。この表示用バッファ59及び物質同定用バッファ60には、図11(A)に示すように、断層面の高さに応じて画像サイズが異なる、再構成された断層像IMALL1〜IMALLN(IM11〜IM1N;IM31〜IM3N)それぞれについて、時系列に順次供給される。
このうち、表示用バッファ59は1番目の断層像IMALL1に対してその複数枚をそのメモリ領域に2次元的に並置されるように書き込む。つまり、複数枚の断層像IMALL1が平行四辺形を成す合成断層像IMg1に合成される。次いで、図11(B)に示すように、この平行四辺形の合成断層像IMg1から例えば横軸方向に2(N=1,2、…)単位で1枚または複数枚分の矩形領域画像IMg1´のデータを読み出す。このデータ読出しの単位は必ずしも2(N=1,2、…)に限定されず、所望サイズの単位を選択すればよい。
この合成処理は、2番目〜N番目の断層像IMALL2…IMALLNに対しても同様に並行して実行される。これにより、同様に、それぞれの合成断層像IMg2〜IMgNから、それぞれ、矩形領域画像IMg2´〜IMgN´のデータが作成される。
これらの矩形領域画像IMg1´、IMg2´〜IMgN´のデータは、バッファが仮想的に提供するオブジェクト空間(すなわち検査空間SP)に3次元的に配置される。これにより、図12に模式的に示すように、2次元の矩形領域画像IMg1´、IMg2´〜IMgN´から成る3次元画像IM3D-ALLが形成される。なお、同図において、画像IMg1´、IMg2´〜IMgN´はそれぞれ厚さのないシート状に示されている。
また、物質同定用バッファ60は、再構成断層像IM11〜IM1N;IM31〜IM3Nについて、上述と同様の処理を行う。つまり、これらの断層像について、図12の模式図と同様の、第1及び第3のエネルギー領域Bin1,Binn3それぞれに対する2次元の矩形領域画像IM11´、IM12´〜IM1N´;IM31´、IM32´〜IM3N´から成る3次元画像IM3D-1、IM3D-3が形成される。
図12に示す3次元画像IM3D(IM3D-1、IM3D-3)のデータにおいて、複数の断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´の大きさは高さ方向Yの上側に進むほど、その面積(即ち、ベルト幅方向Xのサイズ)は小さくなる。つまり、X線ビームXBのベルト幅方向Xにおける拡縮効果によりピラミッド状に(正確には段階状に)小さくなる。このうち、一番下の像断層像IMg1´の画素サイズは、原画素サイズ
であって、正方形であるが、これより上側に位置する断層像IMg´,IMg´,…IMgN´はその断層面の位置が上側(Y軸方向)に進むほど、狭くなる長方形を成す。これにより、全ての断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´それぞれの画素数は同じである。しかも、断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´のデータ間においてそれらの像データの中心に位置する画素同士のXZ面上の位置は一致している。
次いで、エッジ検出回路61は、表示用のバッファ59から3次元画像IM3Dのデータを読み出し、各断層像の画素毎にソーベルフィルタを掛ける。このソーベルフィルタは、図13に模式的に示すように、スキャン方向において各画素値Piを中心とした1次元に並ぶ複数の画素Pout(斜線部)の値に対する空間一次微分を計算し、その空間一次微分値(ソーベル値)をエッジ情報として画素毎に演算する。これにより、各断層像IMgN´において画素値が変化する部位、即ち、その断層像IMgN´に写り込んでいる対象OBの領域のエッジ(輪郭)を検出できる。
なお、このソーベルフィルタは2次元のフィルタ或いはソーベルフィルタと他のフィルタの組合せであってもよい。さらに、このエッジ検出において、ソーベルフィルタ以外のエッジ検出回路、例えば1次元のMAX−MINフィルタやプレヴイット(Prewitt)フィルタ、またはそれらと他のフィルタとの組合せであってもよい。
このエッジ検出回路61の出力、即ち、ソーベル値(空間一次微分値:エッジ情報)は、合成・編集回路62に順次送られる。
この合成・編集回路62は、入力するソーベル値を前述した断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´それぞれの画素の位置にマッピングして、2次元のデータ群を複数積み上げた、ソーベル値の3次元分布データを合成するように構成されている。具体的には、この合成・編集回路62の第1の回路62Aは、図14(A)に示す断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´から同図(B)に示すソーベル値を画素値とする2次元の画像SB,SB,…,SBを作成するように構成されている。
さらに、この合成・編集回路62の第2の回路62Bは、それらの2次元の画像SB,SB,…,SBを仮想的に積み上げて、図15(A)に模式的に示すソーベル値を画素値とする3次元分布SB3Dを作成するように構成されている。この3次元分布SB3Dのデータは、合成・編集回路62のメモリ空間に、オブジェクト空間を模したアドレスに対応させて3次元的に記憶される。このソーベル値の3次元分布SB3Dは、3次元(3D)データ出力回路69に一定周期で出力される。
この図15に模式的に示すソーベル値を画素値とする3次元分布SB3Dにおいて、図12で説明したと同様に、各画素のスキャン方向(Z軸方向)のサイズは断層面の位置(Y軸方向の位置)が変わっても同じである。しかし、スキャン方向と直交する方向(X軸方向)においては、断層面の位置が上になるにしたがって小さくなっている。これにより、断層面毎に縦横の画素数は一定に設定されている。
次に、本実施形態に特有の補正処理を図15(B),(C)を参照して説明する。本実施形態では、検出器41を図3に示すように、スキャン方向に対してα°(例えば14.036±0.5°)、傾けて配置し、且つ、ほぼ点と見做すことができる管焦点FからX線がファン角βを以って照射されている。
この幾何学的な配置関係を図15(B)のモデルに沿って説明する。同図において、
D:X線管−検出器間の高さ
Di:検出器−断層面iの間の高さ
L:検出器のスキャン方向の中心Odと再構成画像の中心との乖離距離
S:断層面が検出器面の位置にあるときの乖離距離Lにおける、検出器斜め配置に因る直交座標系からの乖離距離
Si:高さDiの断層面上の乖離距離Lにおける、検出器斜め配置に因る直交座標系からの乖離距離
S=L×tan14.036°
Si=S×(D−Di)/D
とする。これから判るように、検出器41の面上の中心OdではX線照射の「よれじ(又は捻じれ)」は無いが、それ以外の位置ではX線照射がよじれている。このよじれ量(=S−Si)は断層面の高さDiが上がるにつれて大きくなっている。これは前述してきた各種の処理は、検出器の面に相当する断層面においてよじれ=0となるように合わせ込む処理を行っていたためである。
そこで、合成・編集回路62の第3の回路62Cは、高さDiの断層面の距離Lの位置の画素対して、断層面毎に、そのよじれ量S−Siの分だけスキャン方向にシフトする「よじれ補正」を行う。つまり、合成・編集回路62は、図15(A)のように作成したソーベル値を画素値とする3次元分布SB3Dの画素を、断層面毎に且つ画素毎に、上述したよじれ補正量(Ssk=S−Si)の分だけよじれ補正方向(スキャン方向と同じ)にシフトさせる。
これにより、よじれ補正がなされた、ソーベル値を画素値とする3次元分布SB3Dが図15(C)に示すように作成される。同図(C)をY軸方向に沿って見ると、検出器面の位置に相当する最下層の断層像IMg1´はXZ面の直交系に沿った長方形を成している(Z軸=長方形の中心軸)。しかし、2層目、3層目、…、N層目の断層像IMg2´、IMg3´、…、IMgN´の模式図から判るように、Y軸方向においてその断層面IMg1´よりも高くなるにしたがって、よじれ補正量SskがSsk=0から徐々に大きくなる(図10(C)、Ssk=S,S,…Sn−1,S参照)。このため、2層目以降の断層像をY軸方向から見ると、高くなるにしたがってスキャン方向に傾いた平行四辺形を呈し、その平行四辺形の潰れ具合は上層に進むほど大きくなる。
なお、合成・編集回路62において、このよじれ補正は、図15(A)に示す3次元分布SB3Dのデータを作成するときに一緒に実行されるように構成してもよい。また、スキャンと直交する方向のスキャン領域の幅が狭い場合や比較的薄い検査対象物の場合には、このよじれ補正省略することもできるが、ボケ補正の精度確保という観点から実行する方が望ましい。
さらに、この合成・編集回路62の第4の回路62Dは、図15(C)に示すように、よじれ補正がなされた3次元分布SB3Dのデータを、視線Eaで示すように、検出器41の面に相当する最下層の断層像IMg1´の各画素の中心位置からX線管31の管焦点Fに向けた斜めの方向に沿って探索して、その視線Ea上に在るソーベル値の最大値(又は極大値)を探索するように構成されている。このとき、視線Eaが管焦点Fに向かって進むほど、画素サイズは小さくなる(スキャン方向に直交する方向のサイズが小さくなる)。このため、ソーベル値は同じ画素サイズで探索する必要があることから、検出器の面(即ち最下層の断層面)よりも上側の断層面の画素についてはサブピクセル法等で同じ画素サイズを確保し、画素値、即ちソーベル値の端探索を行う。この探索において、視線Eaは斜めに伸びるので、各断層面の位置で、同じ対象物をボケ度の違いだけで判断し、最大値(又は極大値)を決めていけば良い。この斜めの視線Eaに沿ったソーベル値の探索は、X線のファン角βを有する斜めの照射野と一致する。このため、ソーベル値の探索精度がより高くなる。
なお、このソーベル値の探索は、最下層の断層像IMg1´の各画素の中心位置から高さ方向Yに(即ち、垂直に)延びる視線Ebに沿って(図15(C)参照)、その視線Eb上に在るソーベル値の最大値(又は極大値)を探索するようにしてもよい。
この探索の結果、例えば図16に示すように、ソーベル値の様々なプロファイルが視線Ea(Eb)毎、即ちオブジェクト空間における検出器41の画素毎に求められる。図16のプロファイルにおいて、横軸はソーベル値であり、縦軸は高さ方向の位置、即ち断層面の位置を示す。このプロファイルデータは一定周期でエッジ情報指標化回路70に出力される。
さらに、この合成・編集回路62の第5の回路62Eは上述したソーベル値の探索の結果、画素毎に、ソーベル値の最大値(又は極大値)を呈する断層像の高さ方向の位置、即ち断層面の位置を特定する。この特定処理において、ソーベル値の最大値(又は極大値)のみならず、各画素のソーベル値自体及びそのバラツキをも考慮して断層面の位置を特定することが望ましい。この特定情報も一定周期で第1の画像作成回路63、第2の画像作成回路65、及びエッジ情報指標化回路70に出力される。
上述のエッジ情報指標化回路70は、入力したプロファイルデータを画素毎に予め定めた複数種のパターンに分類する。この例では、第1のパターンは、ある画素の位置においてソーベル値のピークが一つであるパターンである。第2のパターンは、ある画素の位置においてソーベル値のピークが複数あるパターンである。第3のパターンは、ある画素の位置においてソーベル値の変化に特定のピークを認められないパターンである。例えば対象OBの中に存在するかもしれない異物を想定すると、第1のパターンは例えば異物が存在している画素である可能性を示し、第2のパターンは高さ方向Yにおいて異物と検査対象が重なって又は異物同士が重なって投影されている画素である可能性を示し、第3のパターンは異物の混入も検査対象物のエッジも無い可能性が大である、つまり、関心の無い領域であることを示している。
なお、プロファイルのこれらのパターンは、ソーベル値を斜め方向(又は垂直方向)に探索した結果得られる曲線をスムージングし、閾値処理するなどして分類される。
そこで、このエッジ情報指標化回路70は、分類したプロファイルデータを2ビットの指標で表す。例えば、プロファイルデータが第1のパターンに属するのであればビット「00」を、第2のパターンに属するのであれば「01」を、更に、第3のパターンに属するのであれば「10」をそれぞれ割り当てて画素毎にソーベル値のプロファイルを指標化する。この指標化された画素毎に2ビットの割り当てデータは、一定周期でデータセレクタ67に送られる。
本実施形態の目的の一つが、検出装置からコンピュータ23に送られる情報量の低減、つまり高速な検出である。このため、ソーベル値のプロファイルデータをそのまま出力するよりも、この指標化データを送る方が遥かに高速化される。
その一方で、第1の画像作成回路63には、画素毎に、その画素を構成する画素値はどの断層像から取得するべきかを指定する情報が入力される。このため、この第1の画像作成回路63は、その指定情報と前述した断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´の画素データとに基づき1枚の合成平面像IMALLを作成する。この第1の画像作成回路63も、他の回路と同様に、FPGAで作り込まれる。
具体的には、この第1の画像作成回路63は、指定情報による指定される画素それぞれについて、前述した複数の断層像IMg1´、IMg´,IMg´,…IMgN´の中の指定された断層像から、その指定画素に位置的に対応した画素を選択し、その画素値を取得する。この処理が、全ての画素それぞれについて実行される。このように取得された全画素は1枚の合成平面像IMALLに合成される。
これを図14(B)の例を用いて、より一般化して言えば次のようになる。ソーベル値SB,SB,…,SBのうち、上側フレームソーベル値SBでは、丸印の画素部分が高さ方向Yにおいて極大値、即ち、輝度がその周辺部から急変するエッジ情報を持ち、真ん中のフレームのソーベル値SBでは矢印の画素部分が高さ方向Yにおいて極大値を持つ。さらに、下側フレームのソーベル値SBに極大値はない。なお、極大値の代わりに最大値を用いてもよい。
そこで、第1の画像作成回路63は、正方形であって最大画素サイズを呈する下側フレームのソーベル値SBを持ち、且つ、その画素毎に、視線Eb(又はEa)に沿ってソーベル値の極大値を呈する画素に位置的に対応する、前記複数の断層像の中の画素のみを選んで、図14(C)に示す1枚の合成平面像(2次元画像)IMALLを作成する。つまり、この平面像IMALLには、2つのフレームのソーベル値SB,SBの双方で極大値(エッジ)を示した画素に対応した、合成画像IMg、IMgの画像部分(丸印と矢印の双方)が写り込む。この合成平面像IMALLは言い換えれば、対象OBを高さ方向Yの上から下へ斜めに(又は垂直に)透視したときに、対象OB(食品)内に存在する対象全体の媒質とはX線透過率が相対的に異なる物質AR(即ち、異物の可能性が大きい物質)がXZ面に最適焦点化されて投影した2次元画像になる。
この平面像は、透視像として機能するので、たとえ1つの又は複数の異物ARが対象OB内で3次元的に位置している場合であっても、そのARを投影した平面像として観測できる。この様子を図17に示す。同図(A)の例の場合、3次元対象OBの中に丸印及び矢印として示される2つの異物ARが存在している。しかし、それら2つの異物ARは、ベルト幅方向Xの位置もスキャン方向Zの位置も異なるが、1枚の平面像の中に全ての部位が最適焦点化されて描出される。つまり、この合成平面像IMALLは、その全ての画素が最適焦点化された画像で、言わば、全画素合焦画像とも言える画像である。
このようにして作成された合成平面像IMALLのデータは、次段の第1のデノイズ回路64でデノイズ処理を受け、データセレクタ67及び画像出力ポート68を介してコンピュータ23に一定周期で送られる。
一方、3次元データ出力回路69に送られた3次元ソーベル値IM3Dもデータセレクタ67及び画像出力ポート68を介してコンピュータ23に送られる。
データセレクタ67の設定具合によっては、合成平面像IMALLのデータ、ソーベル値の指標化データ、及び、3次元ソーベル値IM3Dの何れか1つ若しくは2つ、又は全てを、画像出力ポート68を介してコンピュータ23に送ることができる。
コンピュータ23は、その表示器23Bにそれら合成平面像IMALL及び3次元画像IM3Dを適宜な態様で表示し、オペレータに異物判定のための画像情報を視覚的に提供する。例えば、適宜な処理により異物の存在を発見した場合、コンピュータ23は表示器23Bに異物の存在を告知する処理(告知手段に相当)を行ってもよい。
また、それらの合成平面像IMALL及び3次元画像IM3Dのデータはコンピュータ23
のメモリ23M(記憶手段)に記憶・保管される。このため、オペレータはいつでもそれらの画像データを読み出して、適宜な後処理を実行して関心領域を丹念に観察することができる。例えば、3次元ソーベル値IM3DにROIを設定して特定領域のみを拡大して詳細に表示したり、高さ方向の特定の断層面(ソーベル値)を指定して異物同士や、異物と検査対象物のエッジとの重なりを観察したりする、といった処理が可能になる。
一方、対象OBの物質同定を行うために、前述したように、物質同定用のバッファ60は、前述した第1、第3エネルギー領域フレームデータFD 2及びFD 2に係る断層像データIMを対数変換回路58から受ける。このため、このバッファ60は、それらの断層像データIMを適宜なフォーマットに変換した上で、第2の画像作成回路65に渡す。
そこで、この第2の画像作成回路65は、前述した第1の画像作成回路63と同様に、1枚の合焦平面像である第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMをそれぞれ作成する。つまり、この第2の画像作成回路65には、合成・編集回路62から画素毎の合焦断面の位置情報が与えられているので、この位置情報に基づき、物質同定用バッファ60から供給されている、第1及び第3エネルギー領域フレームデータFD 2及びFD 2に基づいて再構成された3次元画像から合焦画素を画素毎に選択して、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMをそれぞれ作成する。これらの第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMは、それを作成する元フレームデータFD,FDが第1、第3のエネルギー領域Bin,Binから収集されたものである点が、エネルギー領域全体から作成された合成平面像IMALLとは異なる。このため、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMは、模式的には、前述した図14(C)と同様に表される。
このように、本実施形態では、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMも、エネルギー領域全体から作成された合成平面像IMALLと同じ3次元位置の画素から成る平面像である。第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMは物質同定用の、検査対象OBを代表する代表像と見做すことができる。
また、この第2の画像作成回路65には、コンピュータ23から「異物検出か、物質同定か、又はそれら両方か」を示す撮影モード情報が与えられる。このため、第2の画像作成回路65は、その何れか又は両方かに応じて、その選択的な画像を作成(又は準備)してもよい。
この第2の画像作成回路65で作成(又は準備)された第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMは第2のデノイズ回路で所定のデノイズ処理を受けた後、前述と同様に、データセレクタ67、画像出力ポート68を介して、コンピュータ23に送られる。
このため、コンピュータ23は、前述したと同様に異物判定のための第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMを、表示器23Bを通して視覚的に提供することもできる。また、コンピュータ23は、かかる異物判定の画像情報の提供と共に又はそれは別途に、所定のアルゴリズムに基づいて対象OBを形成する1つ又は複数の物質の種類及び/又は性状を同定する処理を実行することもできる。
なお、上述したデータ処理回路42において、回路51〜63,65は、機能的に、検査対象OBにスキャン方向に沿って交差する面の断層像を代表像として準備する代表像準備手段を形成している。
この代表像を準備するための画像再構成法は、必ずしも上述したようにフレームデータを一時、保管してシフト&アッドを伴うラミノグラフィー法(トモシンセシス法とも呼ばれる)でなくてもよい。例えば、データ処理回路は、検出器41のデータ収集回路41A(図6参照)から時系列で出力されるフレームデータを入力させ、それらのフレームデータを順次、遅延させながらコマ送りしてフレームデータ同士の画素を加算する、所謂、TDI(Time Delay Integration)方式の再構成法を行うように構成してもよい。このときに、遅延量を変えることで、再構成される断層像、即ち、代表像のX線照射方向における位置(高さ)が変わる。ここでは、このTDI方式もラミノグラフィー法に準じる再構成法に含まれる。
以下に、この物質同定の構成及び手順を説明する。
[物質同定]
本実施形態に係るX線検査装置20により実施可能な物質同定のスキームには多様なものがあり、例えばその一つは特開2013-119000により知られている。しかしながら、この公報記載の装置場合、対象物の厚さが略一定でなければ物質の種類を同定(推定、特定)できないなどの使用上の制約が多いことから、本実施例に係るX線検査装置20は以下のような独特のスキームを採用している。
コンピュータ23において、入力器23Cを介して、演算装置23Aはユーザから物質同定の指示を受けることできるように構成されている。この指示を受けると、演算装置23Aは、そのCPUに予め格納されている物質同定のためのプログラムを読み出し、そのプログラムを物質同定処理として実行可能に構成されている。
本実施形態では、検査対象の内部又は表面に存在するかもしれない異物の種類を同定(推定、特定)するスキームを例示する。なお、この「同定」と言う用語は、本実施形態においては「推定」又は「特定」と言い換えることもできる。
この異物の種類を同定するスキームの場合、物質同定処理は、前述した対象OBの異物検査と並行して実施してもよいし、オフラインで実行してもよい。並行実施の場合、異物を見つけた場合に、そのことをリアルタイムに表示器23Bに表示したり、アラームを出したりすることができる。これにより、X線検査装置20を止めたりする等、異物発見に対する適切な処置をほぼリアルタイムに実行できる。また、オフラインの場合、X線検査で得られたデータを使って、後処理として、異物に対する物質同定を実行できる。
この物質同定に使用するデータは、前述した第2の画像作成回路65で作成された、それぞれ1枚の合焦平面像である第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMである(図14(C)参照)。
[物質同定の原理]
最初に、この物質同定の原理を説明する。
いま、検査の対象OB及びその中の異物に対する、前述した第1及び第3エネルギー領域Bin1,Bin3のエネルギーを持つX線の吸収係数をμ 13μ 33と表す。後の方の添え字「3」が異物を表している。
一般的に、物質はその比重が大きくなるほど、X線に対する線質硬化(ビームハードニング)現象が強くなる。つまり、より高いエネルギー帯のX線吸収係数が相対的により小さくなる。このため、比重が大きい物質ほど、吸収係数比「μ 13μ 33」(物質の線質硬化現象の傾向を示す情報、つまり傾向情報である)の値は大きくなる。これを、吸収係数比「μ 13μ 33」を横軸に採って示すと、図18に例示するように、その値が、水、プラスチック、アクリル、…、金の順に大きくなる。勿論、このような傾向は一般的に言えることであり、例えば、ビームハードニングが強すぎて、第1エネルギー領域Bin1のX線光子計数値W1が殆どなくなるような条件になった場合、却ってビームハードニングが起こって吸収係数比μ 13μ 33が小さくなる場合も存在する。しかし、この場合も吸収係数比μ 13μ 33は物質固有の値になる。しかし、その検査装置で一度、基準となる各種の物質でキャリブレーションをして、図18に示す吸収係数比の情報をデータベースとして保有しておけばよい。検査物質の吸収係数比「μ 13μ 33」をそのバラツキを含めたデータベースに照合することで、検査物質の種類を同定することができる。
上述のことを踏まえ、物質同定の具体的な手法を説明する。
検査対象OB(食品等の検査対象の物質)に異物ARが混入している場合、図19に例示するように、上述した合成平面像IMALLには検査対象OBと異物ARが重畳して写り込む。いま、この異物ARである関心物体を示す領域BDを構成する画素をpx(i,j)(i=N1〜Nn、j=M1〜Mm)と表し(実際の異物の形状は矩形ではないかもしれないが、いま代表的な形状の一例として矩形で示す)、各画素pxにおける第1エネルギー領域Bin1のX線光子計数値をW1(i,j)、各画素pxにおける第3エネルギー領域Bin3のX線光子計数値をW3(i,j)、及び、関心領域である異物ARを示す領域を成す各画素部分の厚みをt3(i,j)とすると、各画素pxにおける第1エネルギー領域Bin1のX線吸収係数μ 13(i,j)は、
μ 13(i,j) t3(i,j)=−lnW1(i,j)+C1(i,j)、
各画素pxにおける第3エネルギー領域Bin3のX線吸収係数μ 33(i,j)は、
μ 33(i,j) t3(i,j)=−lnW3(i,j)+C3(i,j)
で求められる。
ここで、lnは自然対数を採ることを示し、C(i,j)及びC(i,j)は実際のX線検査と同じ条件の下での搬送ベルト48と検査対象OBの第1、第3エネルギー領域Bin、BinにおけるX線フォトン数であり、予め設定されている既知の値である。勿論、その都度、実際のX線検査条件の変動を考慮して同定時に推定した値であってもよい。
次いで、この両方のX線吸収係数μ 13(i,j)、μ 33(i,j)の間の比を採ることで、X線エネルギーの高低に伴う線質硬化現象の程度差が反映される吸収係数比「μ 13μ 33」が、以下の3通りの演算式のうちの何れかに基づいて演算される。
・演算式1
Figure 0006487703
この演算式1に基づく吸収係数比による解析は、図19に示す関心領域(異物ARの領域)の、オブジェクト空間における高さ、即ち厚さが一定又はほぼ一定のときに成り立つ。
・演算式2
Figure 0006487703
この演算式2に基づく吸収係数比による解析は、関心領域(異物ARの領域)の平均値を対象とするので、関心領域(異物ARの領域)における厚さの変化に依らずに成り立つ。つまり、この演算式2を演算装置23Aが実行するときには、演算装置23Aは傾向情報演算手段として機能し、その機能は平均化手段を伴っている。
・演算式3
Figure 0006487703
ただし、この演算法3の式において、(lnW(i,j)-C(i,j))/(lnW(i,j)-C(i,j))は、各画素pxに隣接する画素で束ねた値である。
この演算式3は、演算式1による解析の発展形であり、関心領域(異物ARの領域)における近隣画素の位置で厚さが同じと見做して行う解析法である。
このように、異物ARの厚さt3(i,j)のファクタを介在させないように、検査対象OBの種類や想定する異物ARの大きさに応じて、何れかの演算式を採用する。この採用が妥当であれば、単純に、C1(i,j)及びC3(i,j)という搬送ベルト48及び対象OBを含む異物以外の既知の物質に対する既知のX線フォトン数を加味しながら、X線の吸収係数の比を演算するだけでよい。この演算結果を予め設定されている、図18に例示する吸収係数比μ 13μ 33のデータベースを参照すれば、異物ARの種類を特定することができる。例えば、検査対象OBが食パンのような食品であって、その中に存在していた異物ARがプラスチックなのか、ガラスなのか、金属なのか、といった具合にその種類を同定できる。また、金属であれば、それはアルミニウムなの、鉄なのかといった具合に、予めデータベースに持っている吸収係数比「μ 13μ 33」の情報の種類に応じて同定できる。
そこで、本実施形態では、演算装置23Aは図20に示すフローに沿って物質同定の処理を実行する。即ち、代表像の設定(ステップS1)、異物の境界の抽出(ステップS2),境界外側の画素の付加(ステップS3)、異物に重なる検査対象を通るX線光子のカウントを推定(ステップS4)、エネルギー領域別の光子数の既知情報を推定(ステップS5)、吸収係数比「μ 13μ 33」の演算(ステップS6)、異物の種類の同定(ステップS7)、及び、同定情報の出力・表示(ステップS8)である。なお、後述するように、簡便的には、ステップS3,S4をスキップするようにしてもよい。
以下、上述した物質同定の処理を順に説明する。
(1)代表像の設定(ステップS1):
最初に、演算装置23Aはオペレータとインターラクティブに物質同定を実行するために、関心ある部位を通ってその部位を代表する面(代表面)の像(代表像)を設定する。関心ある部位が異物を含む部位である場合、この代表像は、検査対象OBの紛れ込んでいるかもしれない異物の領域を決めるための代表面の断面像でもある。この代表面は、物理的に平らな面であってもよいし、必ずしも平らな面ではなくてもよい。この代表面は、本実施形態で採用している1枚の合成平面像IMALLの如く、表示されたときには平面像であるが、物理的には凹凸のある面であってもよい。
このように領域を決めることは物質同定を行う範囲を限定することであり、これにより
、耐ノイズ性も上がるし、演算量も減らせる。さらに、同定範囲を狭めることで、後述するように検査対象OBのX線透過の厚さ依存性を無視した物質同定が可能になる。
本実施形態においては、代表像として、各画素がソーベル値から成る合成平面像IMALLを設定する。
勿論、X線管11と検出器12の間の距離(高さ)に比して検査対象OBの厚さ(高さ)が小さい場合(例えば1/20以下の厚み)、代表面として、オペレータが入力器23Cを介して予め手動で所望断面の高さを指定してもよい。この高さとしては、例えば検査対象OBの中間(1/2)高さの位置である。さらに、搬送ベルト48の搬入口に検査対象OBの高さを例えば光学的に検出する高さ検出器91を設けてもよい(図2参照)。この高さ検出器91の検出情報は演算装置23Aに送られる。この場合、演算装置23Aは、その検出高さが所定値以下である場合、その検出高さの中間(1/2)の高さHdesの断面位置を指定するようにする。このように中間高さHdesの断面位置が指定されると、演算器23Aは、前記合成編集された中間高さの断面位置の画像、例えばIMg2´(図11参照)を使う。この断層像IMg2´は3Dデータ出力回路69、データセレクタ67、画像出力ポート68を介してコンピュータ23に既に出力されている。なお、検出高さが所定値以下である場合、演算装置23Aより、代表面として、合成平面像IMALLが設定されるように構成することが望ましい。
(2)異物の境界を抽出(ステップS2):
次に、演算装置23Aにより、各画素がソーベル値から成る合成平面像IMALLを閾値判定で処理する。一定の閾値を超えた各画素値の部分が異物ARの境界の一部を成すので、演算装置23Aは、この部分を繋ぐことで異物の境界BDを自動的に抽出できる(図20参照)。勿論、一定間隔で出力される合成平面像IMALLに描出される対象OBに異物が無ければ、かかる境界BDは設定できない。この場合、図示していないが、演算装置23Aは「異物無」の判定を行い、その旨を表示器23Bを介してオペレータに知らせる。
ここで重要な点は、画素毎に焦点が合っている全画素合焦画像(即ち、各画素がソーベル値の最大値から成る画像)を用いて異物ARの境界BDを抽出していることである。このため、図21で説明するように、異物ARの境界BDに該当する画素値がその隣接する画素値から峻別されるので、その境界BDが精度良く描出される。いま同定対象としているのは対象OBに紛れ込んでいる異物ARである。このため、境界BDを精度良く抽出できないと、判定対象となる異物ARの画素に周囲の関係ない画素、例えば対象OB自体の画素が紛れ込むことにもなり兼ねない。そのような紛れ込みがあると、対象OBと異物ARが混ざり合った信号になり、それはノイズを含むことになるので、異物ARの種類を同定する精度が低下するという懸念がある。元々、異物ARは微小な金属片や毛髪等であることを想定しているので、この境界抽出の精度確保は重要である。
(3)境界外側の画素の付加(ステップS3):
上述のように異物の境界BDが抽出されると、その境界BDの外側に、当該境界BDに隣接して予め設定した画素PXaddを付加する。この付加画素PXaddは、境界BDに囲まれた、即ち、異物ARに重なる対象OBの部分を通るX線光子の数W,Wを推定するためのものである。この光子数の推定はとりもなおさず、対象OBのX線吸収量を推定することである。この推定により、オブジェクト空間における対象OBの高さ、即ち「厚さ」が不明であっても異物ARの種類を同定しようとすることができる。
例えば、表示器23Bに表示された合成平面像IMALL上でオペレータが境界BDを示すラインをクリックすると、演算装置23Aは、これに応えて、例えば所定数の画素PXadd(例えば2個分:図22(A),(B)参照)が全周に渡って自動的に付加(設定)する。図22(A)の場合、境界BDの各画素位置においてその水平方向に隣接した2画素分の画素PXaddが付加される。同図(B)の場合、境界BDの各画素位置においてその垂直方向に隣接した2画素分の画素PXaddが付加される。
(4)異物ARに重なる検査対象OBを通過するX線光子数W(i,j),W(i,j)を推定(ステップS4):
上述のように境界BDの周囲に画素PXaddが付加されると、その付加画素PXaddを通過した第1、第3エネルギー領域Bin,BinのX線光子の数W,Wを前述した第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMの該当する画素値から推定する(図23、ステップS101)。次いで、各水平方向における付加画素PXaddの画素値の平均値を演算し、これを、境界BDを成す各画素における境界代表値として設定する(ステップS102)。
さらに、それらの境界BDを成す各画素の位置に基づき、関心領域(異物AR)の幾何学的な重心点GRの位置を演算する(ステップS103)。次いで、境界BRを成す各画素の位置から重心点GRを通る直線STを引き、その各直線STの両端に位置する境界代表値を例えば線形補間して、第1エネルギー領域Binにおける関心領域(異物AR)内の各画素(I,j)におけるX線光子数W(i,j)を推定する(ステップS104)。
この推定は、同様に、第3のエネルギー領域Binにおける関心領域(異物AR)内の各画素(I,j)についても、同様、X線光子数W(i,j)が推定される(ステップS105)。
(5)エネルギー領域別の光子数の既知情報を推定(ステップS5):
次いで、演算装置23Aは、予めメモリ23Mに格納していたデータベースDB1から第1、第3のエネルギー領域Bin1、Bin3のX線フォトンに対する搬送ベルト及び対象OBの既知の吸収量C1(i,j)及びC3(i,j)をそのワークエリアに読み出す。ここでは、この吸収量C1(i,j)及びC3(i,j)は、検出されるX線光子数として把握される。
(6)吸収係数比「μ 13μ 33」の演算(ステップS6):
次いで、演算装置23Aは、ステップS4で推定したX線光子数W1(i,j),W3(i,j)の情報とステップS5で推定した吸収量C1(i,j)及びC3(i,j)の情報とを用い、前述した吸収係数比「μ 13μ 33」を演算式(1)、(2)、(3)の何れかに基づいて演算する。この結果、関心領域、即ち異物ARの領域を代表する1つの吸収係数比「μ 13μ 33」が演算される。
(7)異物の種類の同定(ステップS7):
次いで、演算装置23Aは、上述した吸収係数比「μ 13μ 33」の演算値を、図18に例示した物質の種類のデータベースDB2に照合して、異物ARの種類を同定する。このデータベースDB2もメモリMに予め保存されている。この結果、例えば食品に紛れ込んでいた異物ARの形状を少なくとも2次元的に捉えるとともに、その種類をプラスチックか、ガラスかなどと、同定(推定、特定)することができる。
(8)同定情報の出力・表示(ステップS8)
次いで、演算装置23Aにより、上述の同定情報(異物の種類、2次元形状)が表示器23Bに出力・表示される。
以上のステップS1〜S7の処理は、本実施形態に係るX線検査装置20の場合、検査対象OBのインライン検査と並行して実行される。
なお、前述した図6の回路構成において、回路要素51〜56がフレームデータ作成手段を構成し、再構成回路57が断層像作成手段に相当する。
このように、本実施形態に係るX線検査装置20によれば、X線検出器42が検出したX線透過データからオブジェクト空間、即ち対象物が置かれる検査空間SPにおいて、高さ方向に指定された範囲で複数の断層像が作成される。この複数の断層像は、X線管31から照射されるX線の検査空間における広がりとX線検出器42の検出面からのX線投影方向(Y軸方向)における高さの違いとを考慮して作成される。この複数の断層像のそれぞれから、即ち、オブジェクト空間から3次元的に、異物等の物質が存在することに因るエッジ情報が抽出され、その抽出情報に基づいて断層像の画素が、その断層位置を問わずに取捨選択されて合成された1枚の合成平面像IMALLが作成される。この合成画像IMALLは、各断層像の最適焦点の部分の集合を示しているので、対象物の中の異物も良く描出されている。したがって、対象物の中に存在する異物(対象物の組成とは異なる物質)をより高分解能に描出し、その異物の存在をより容易に且つ信頼性高く検出することができる。
さらに、本実施形態によれば、3次元ソーベル値IM3DもX線検出装置22、具体的には検出側の一要素であるデータ処理回路42から出力される。このため、この3次元ソーベル値IM3Dを異物検出の補助の表示データとして、又は、場合によってはメインの処理データとして後処理により活用できる。例えば、上述した合成平面像IMALLにおいて関心のある部分を、3次元ソーベル値IM3Dを使って確認する等の活用が可能になる。
また、本実施形態によれば、X線検出装置22からコンピュータ23に検出データが送られるときには、既に、検出装置側にて、異物検査に必要な画像、即ち、合成平面像IMALL、3次元ソーベル値IM3D、及び/又はソーベル値の指標化データ(パターンの種別を示すデータ)が作られ、それらのデータが検出データに含まれている。つまり、コンピュータ23には、既に前加工されたデータのみが一定間隔で送信されてくる。このため、データ処理回路42(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されたハードウェア回路)によるパイプライン処理の分だけ遅延するものの、一定周期で上述した各種の処理に付された検査データがX線検出装置22から出力される。したがって、検出器41が高速なレートでフレームデータを検出する場合でも、その大量なデータをそのままコンピュータ23に送る必要はない。つまり、X線検出装置22からコンピュータ23へ転送するデータの量を減らすことができる。このため、検出器41が持つ、高速なフレームレート(例えば6,600FPS)の検出能力を、転送時間がネックとなって、発揮することができないということもなく、検出器41の高速な検出動作が活かされる。
一方、本実施形態によれば、代表像上で例えば異物として描出されている領域を例えば画素値に対する閾値処理により関心領域として設定することができる。この関心領域により指定された各画素の位置における、異なるエネルギー領域のX線(光子)による線質硬化現象の差異情報を物質(検査対象OBや異物AR)の同定情報として利用できる。特に、予め既知の物質でデータベース化しておいた参照情報(図18参照)を利用することで簡単に検査物質の2次元の形状及びその種類を同定することができる。
したがって、オブジェクト空間に存在する対象物(被検査品やその対検査品に混入している異物)の種類、又は、これに加えて、その対象物の形状を、その厚さに無関係に、より高精度に、かつ、より少ない演算量で同定(推定、特定)可能なX線検査を提供できる。
特に、前述した実施形態のように、関心領域、即ち異物ARの領域を設定する断面像(代表像)として、全画素合焦画像である1枚の合成平面像IMALLを利用できる。この合成平面像IMALLはその全画素が合焦であるため、異物ARをその背景(検査対象OB)から峻別し易い。つまり、閾値処理によって、異物ARの輪郭を容易に且つ高精度に設定できる。したがって、異物ARの種類及び2D形状も高精度に同定できる。
また、この関心領域を設定することの利点は大きい。厚さがほぼ一定とは言えない検査対象(例えば野菜、魚)であっても、関心領域を設定することで、その領域内の厚さ、即ち、検査対象自体の厚さ又は異物を含む検査対象の厚さはほぼ一定と見做すことができる。これにより、検査対象OBや異物ARの厚さによってX線吸収が変わるというファクタをほぼ無視でき、上述した同定スキームによって物質同定が可能になる。つまり、異物検査の高機能化、汎用性向上につながる。
さらに、封筒等に封入した麻薬の性状(麻薬であるか否か、その量が基準量よりも多いか否か)や、食肉ブロックの霜降りの程度(基準値に照らして霜降り度が高いか否か)などの同定も可能になる。これらの同定においても、代表像上で関心領域(内容物を限定する領域)が重要である。
さらに、上述した各実施形態においてはX線の線質硬化現象の傾向を示す情報(傾向情報)を把握するために、第1、第3のエネルギー領域処理の対象としていたが、これは必ずしもこの2つのエネルギー領域Bin、Binに限るものではない。第2、第3のエネルギー領域Bin、Binを処理の対象にしてもよい。また、3つのエネルギー領域Bin〜Binを対象にし、その内の2つの領域について前述と同様に先に処理、別の組合せで再度、処理するといった2段階の処理であってもよい。
さらに、物質の2次元形状(関心領域で指定される領域の画像)のみならず、3Dデータ出力回路69からの3Dデータ及びエッジ情報指標化回路70の指標化情報を用いて、代表断層面上の関心領域で指定した領域の3次元形状を同定するようにしてもよい。
さらに、前述した実施形態において、1枚の平面上の合成画像のみを得たい場合、簡便的には、エッジ検出回路61、合成・編集回路62、及び第1の画像作成回路63の代わりに、MIP(最大値投影法)処理回路を採用することもできる。
[第3の実施形態]
次に、図24〜図37を参照して、本発明に係るX線検査装置の第3の実施形態を説明する。
この第3の実施形態に係るX線検査装置のハード構成は前述した第2の実施形態に係るX線検査装置20と同一である。このため、本第3の実施形態において引用するハード構成の要素には、第2の実施形態にかかるX線検査装置20のハード構成と同一の符号を用いて説明し、その説明を省略する。
この第3の実施形態に係るX線検査装置は、前述した第2の実施形態に係るX線検査装置と同一のハード構成において物質の別の同定法(推定法、特定法)を実施することを特徴とする。具体的には、コンピュータ23の演算装置23A(図6参照)は、下記の処理を行う。なお、この処理は、X線検査装置の検査と並行して行ってもよいし、後処理として行ってもよい。本実施形態では、後処理で実施するものとする。
まず、最初に、演算装置23Aが実行する物質同定の処理の概要を説明し、その後で、重要な個々の処理を詳述する。
[物質同定の処理の概要]
図24に示すように、後処理で物質同定の処理を行う場合、演算装置23Aは入力器23Cから与えられるオペレータの指令に応じて、一例として、最初にメモリ23Mから検査対象OBの全画素合焦画像である1枚の合成平面像IMALLを読み出し、その合成平面像IMALLを代表像として表示器23Bに表示させる(図24、ステップS21)。この合成平面像IMALLは、前述した第2の実施形態と同様に作成され、メモリ23Mに保存されている。
なお、この代表像は必ずしも合成平面像IMALLに限られない。つまり、検査対象OBがX線透過方向にボケが生じる程の厚みがある場合には、この合成平面像IMALLが代表像として設定されるが、そうでない場合には必ずしも全画素合焦画像でなくてもよく、例えば検査対象OBをスキャン方向に沿って交差する1枚の断層面であってもよい。この断層面のX線透過方向の位置は適宜に設定することができる。
次いで、演算装置23Aは、表示器23Bに表示された合成平面像IMALLにおいて物質同定のための拡大関心領域ROIMAXを確定させる(ステップS22)。この拡大関心領域ROIMAXは、合成平面像IMALLに描出されている異物ARを含む適度な2次元サイズとして設定される。この拡大関心領域ROIMAX確定の仕方は、図25及び図26を参照して後述する。
この後、演算装置23Aは、以下のように処理を行う。
・演算装置23Aは、前述した第2の実施形態で説明したように作成され、メモリ23Mに保存されている第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMの画像データをそのワークエリアに読み出すとともに、それらの画像上で拡大関心領域ROIMAXの設定を行う(ステップS23)。
・次いで、演算装置23Aは、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMそれぞれにおいて、上述のように合成平面像IMALL上で確定させた拡大関心領域ROIMAXを成す複数の画素に位置的に対応する複数の画素それぞれの値から背景(即ち、検査対象OB)分のデータ、即ち背景によるX線吸収値を差し引いたデータを演算する(ステップS24)。このため、後述するが、この差引により残ったデータは異物AR及び検査対象OBのX線吸収値を表している(勿論、異物が存在しない場合、搬送ベルト48及び検査対象OBだけのX線吸収値を表している)。ただし、この残ったデータには背景、即ち、合成平面像IMALL上を推定演算したときの推定誤差(ここでは、この誤差分をノイズと呼ぶ)が混入している。この差引演算は、エネルギー領域合成平面像毎に実施される。
・次いで、演算装置23Aは、ステップS24において処理された第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMの拡大関心領域ROIMAXの画素値に基づいて2次元散布図のデータの演算・表示・処理を行い(ステップS25)、この2次元散布図上での散布点の集合が成す直線の傾きkを演算し(ステップS26)、傾きテーブルを参照して2次元散布図上の直線の傾きkに最も近い傾きk=knを特定し、特定した傾きknに相当する物質の種類又は性状を決定する(即ち、物質同定:ステップS27)。後述するように、この傾きkを特定する過程において、前述した、背景、即ち、合成平面像IMALL上を推定演算したときのノイズ(推定誤差)も除去することができる。
この決定された物質の種類又は性状は、例えば表示器23Bにより表示される(特定情報の出力)(ステップS28)。
これらのステップのうち、ステップS22〜S27は本実施形態の重要な演算過程であるので、図25〜図37を参照して改めて詳述する。
[拡大関心領域ROIMAXの確定(ステップS22)の詳細]
まず、拡大関心領域ROIMAXを確定するための処理を詳述する。
演算装置23Aは、図25に示すように、表示器23Bに表示された合成平面像IMALLにおいて拡大関心領域を設定するための変数iに1を設定する(ステップS221)。次いで、演算装置23Aは、図26に示すように、合成平面像IMALLにおいて、背景BK(即ち、搬送ベルト及び検査対象)の画像の中に、描出される異物ARに外接する矩形ROI:ROIを初期設定する(ステップS222)。この初期設定は、演算装置23Aがオペレータとの間で入力器23Cを介してインターラクティブに行う。次いで、変数iをインクリメントする(i=i+1)(ステップS223)。
さらに、演算装置23Aは、ROIi=(1+α)(i-1)ROIの演算を行って関心領域ROIを演算する(ステップS224)。ここで、αは、0<α<1の値を採る係数である。つまり、この演算により、図26に示すように、初期設定された矩形ROIの4辺が係数αに見合う分、背景BK上を外側に拡大される、これにより、異物ARの外側に位置する領域ROIiexclude=ROI2excludeを隔てた矩形ROIが設定される。なお、それら4辺を必ずしも等しい割合で変えなくても、自動的に又は手動で互いに別の割合で変えてもよい。
次いで、演算装置23Aは、異物ARを除く外側領域ROIiexcludeの最大偏差Dを演算する(ステップS225)。この最大偏差Dmは、その外側領域ROIiexcludeにおける「画素値の最大値MAX−画素値の最小値MIN」として定義される差分値である。さらに、この最大偏差D<βDが成立するか否かを判断する(ステップS226)。いまの場合、D<βDが成立するか否かの判断となる。βは1≦β≦2の値を採る係数として予め設定されている。Dは、合成平面像IMALL上で異物ARを含む極力平坦な関心領域ROIiを採る上で必要な、且つ、取り扱うデータを有意に規定するための目安領域を決めるための閾値である。つまり、D以上には乖離しない偏差を持つ外側領域であって、別の特徴をもつ外側領域を排除するための閾値であるとも言える。
このステップS226の判断は、最大偏差Dを成す画素数が予め定めた十分な統計量を表す閾値よりも小さいか否かチェックすることでもよい。このステップS226の判断でYES,即ち、最大偏差D<βDが成立するときには関心領域ROIを未だ外側に拡張する余地があるとし(このときの外側領域ROIiexclude=ROI2exclude)は、その処理はステップS223に戻される。
これにより変数i=3となって、ROI=(1+α)(3-1)ROIの演算を経て、背景BK上にさらに拡張された関心領域ROIが設定される(ステップS224,S225)。この場合、外側領域ROIiexclude=ROI3exclude(図示せず)の最大偏差Dが演算され、再びD<βDが成立するか否かの判断に処せられる(ステップS226)。この判断でYESとなる場合、ROIを更に拡張するための上述した処理が繰り返されるが、NOの判断になると、その時点のROIi-1=ROIMAXと設定される(ステップS227)。いまの例の場合、i=3であるから、ROIi-1=ROI=ROIMAXである。
なお、演算装置23Aは、異物ARとその背景BKとの境界線BD上に存在する画素数を所定値Nborder_lineとして演算する(ステップS228)。この所定値Nborder_lineは、後述する物質同定の処理に置いて1つの閾値として使用される。
これにより、図26に示すように、初期設定された矩形ROIをその外側に拡張しながら、合成平面像IMALL上で異物ARを包含した極力平坦な部分であって、その且つその周辺に十分な統計量の画素数を持つ拡大関心領域ROIMAXが確定する。勿論、この拡大関心領域ROIMAXを必要以上に大きく採ることは演算量が必要以上に増大するので、無駄である。この拡大関心領域ROIMAXは後述する「背景の差分演算」に用いるためのものであるから、この差分を高精度に行うことができればよく、その拡大関心領域ROIMAXの大きさは係数βの選択によって適宜に可変設定できる。
[画像データの読出し(ステップS23)の詳細]
上述のように、ステップS22では、全てのエネルギー領域のX線光子が混合したフレームデータに基づいて作成された1枚の合焦画像、即ち合成平面像IMALLを使って拡大関心領域ROIMAXが確定される。これが終了すると、演算回路23Aは、メモリ23Mに保存されている第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMの画像データをそのワークエリアに読み出す。さらに、その合成平面像IM,IMのそれぞれから、拡大関心領域ROIMAXを構成する複数の画素に位置的に対応する複数の画素を特定する。これにより、図27に模式的に示す如く、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMのそれぞれにおいて、合成平面像IMALLにおける拡大関心領域ROIMAXと同じ位置に拡大関心領域ROIMAXが設定される。このため、合成平面像IM,IMのそれぞれにおいても、異物ARの外側に領域ROIiexcludeの分だけ離れて拡大関心領域ROIMAXが設定される。
[背景分のX線吸収値を差し引く処理(ステップS24)の詳細]
前述したように、ステップS23において読み出された第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMのそれぞれにおいて、拡大関心領域ROIMAXを成す複数の画素それぞれの値から背景BK(即ち、検査対象OB及び搬送ベルト)分のX線吸収値を差し引いたデータが演算される(ステップS24)。なお、この差分処理は、その処理の対象となる画素の値の自然対数を採った後になされる。
この差分演算の物理的な意味を図28〜図29を参照して説明する。図28(A)に示すように、ステップS22において確定させた拡大関心領域ROIMAXは異物ARとして合成平面像IMALLに写り込んでいる領域よりも広い。この拡大関心領域ROIMAXを横断する線J−J´に沿った画素値を表すと、図28の示すようになる。同図において横軸は線J−J´の位置を示し、縦軸は画素値を示す。
図28(A)において、J−J´線が異物ARと交差している場合、横軸方向の領域は、X線吸収(即ち画素値)の観点からみれば、異物ARが存在する領域である異物領域AARとその両側の外側領域ROIiexcludeを示す背景領域ABKとに分かれる。つまり、背景領域ABKにおいてはX線が透過する物体は検査対象OB(搬送ベルトを含み、異物ARからみれば背景BKとなる)しか存在しないため、これに相当した画素値の変化をします。この変化は、背景BK、又は、背景BK+異物ARを透過するX線量曲線SLと、このX線量曲線SLに重畳したノイズ曲線NZとで表される。このノイズ曲線NZが示すノイズは、前述したように、背景BKを成す合成平面像IMALLを推定演算するときの推定誤差分である。異物領域AARにおいては、X線は背景BKとこれに重畳する異物ARとを透過するので、その両者でX線吸収が生じることから、その画素値は減少する。このため、図28(A)の実線SLは、背景BK、及び、背景BK+異物ARを透過するX線量の変化を模式的に表す曲線である。このノイズ曲線NZの最大触れ幅の位置が最大偏差D(異物ARと拡大関心領域ROIMAXとの間の外側領域ROIiexcludeにおける画素値の最大値MAX−最小値MIN)である。
次に、背景BKの偏差を推定する。上述のようにX線量曲線SLにはノイズ(曲線NZで示す)が重畳してノイズ有のX線量曲線SNCOMを形成しているため、ノイズを除去する必要がある。そこで、演算装置23Aはインターラクティブに又は自動的に拡大関心領域ROIMAXの1つの初期ラインJ−J´を指定し(図30、ステップS241)、その1ラインJ−J´に沿ったノイズ有の曲線SNCOMを1次元または2次元のローパスフィルタ又は7点から9点の移動平均処理に掛け、ノイズを除去又は抑制した極力元の状態に近いX線量曲線SLを抽出する(ステップS242:図28(A)参照)。
次いで、演算装置23Aは、この抽出したX線量曲線SLのうち、異物領域AARに画素値=0を便宜的にマップする(ステップS243)。この画素値=0のマップにより、図28(A)の仮想線Sで示す如く、異物領域AARの画素値はその両隣の背景領域ABKの画素値から段階状に低下して、その差が明瞭になる。この差により、演算装置23Aは、ここでは横軸方向(一次元)における異物領域AARの両端を認識できる。
さらに、演算装置23Aは、この異物領域AARの両端がその両側の背景領域ABKとスムーズに繋がるように直線近似、多項式近似、スプライン近似などの近似処理を掛ける(ステップS244)。このようにフィルタ処理及び近似処理を受けた曲線SLBK/ARは図28(B)のように模式的に表される。この曲線SLBK/ARは、異物ARの領域を含む拡大関心領域ROIMAXを通る1次元の方向における背景BKのX線吸収を表わす推定情報である。
次に、演算装置23Aは、図28(A)に示す生のノイズ有のX線量曲線SNCOMから、同図(B)に示すフィルタ処理及び近似処理を受けた曲線SLBK/ARを画素毎に差し引く(ステップS245)。つまり、生データから背景BKに相当するデータが差し引かれ、図29に模式的に示すように、異物領域AARを含む拡大関心領域ROIMAXを横断する1次元方向に並ぶ画素値の変化情報が得られる。この結果、両側の背景領域ABK及びその間の異物領域AARにおいて、背景BKのX線吸収成分が差し引かれる。このため、背景領域ABKでは、画素値=0又はその近傍の値を中心に正側又は負側に振れる、ノイズ曲線NZで洗わされるノイズ成分(背景画像の推定時の誤差)だけが残る。また、異物領域AARでは、演算上、画素値=マイナス値であって上下に振れる変化曲線が得られる。
以上の処理は、図26の最大領域ROIMAXを横断する1次元のラインJ−J´に沿って実行された(ステップS246)。このため、この横断するラインJ−J´を順次移動させて上述した処理を繰り返すことで、最大領域ROIMAXの全域、つまり全画素に対して、図29に示す異物ARの2次元領域を明瞭に知ることができる。
なお、上述した1次元のラインJ−J´により繰り返しに代えて、その繰り返しを2次元フィルタとして行う2次元近似推定法を採用してもよい。
[2次元散布図データの演算(ステップS25)の詳細]
次いで、演算装置23Aは、ステップS24で背景分のX線吸収値が差し引かれた、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMのそれぞれの拡大関心領域ROIMAXの画素値から2次元散布図のデータを演算する。つまり、各合成平面像IM(IM)を成す拡大関心領域ROIMAX内の画素値から−μt(−μt)を演算する。ここで、μはX線エネルギー領域Binに属するエネルギーを持つX線光子をX線吸収係数であり、μはX線エネルギー領域Binに属するエネルギーを持つX線光子を代表するX線吸収係数であり、tは異物ARの未知の一定厚さを表す。つまり、−μt(−μt)は積分値であり、X線吸収量の概念を示す。
さらに、演算装置23Aは、拡大関心領域ROIMAX内の各画素に対して、第1エネルギー領域合成平面像IMから演算されたX線吸収量−μtを縦軸に、第3エネルギー領域合成平面像IMから演算されたX線吸収量−μtを横軸にとって、それらを図31に示すようにマッピングする。同図における各点が各画素の散布状態を示す。
[2次元散布図上で近似曲線の演算(ステップS26)の詳細]
図31から判るように、この2次元散布図において、図27に示すノイズ曲線NZを成すノイズに因る散布点が原点Oの周辺に固まってマッピングされてノイズ成分群Gを構成し、このノイズ成分群Gから図上で左下に向かって観察したい散布点を含む散布点から成る信号群Gsigが流星の如く延びる。この信号群Gsigには、異物ARによるX線吸収を反映したデータが含まれている。
ここで、重要なことは、ノイズ成分群Gの重心位置GRが座標軸−μt、−μtの原点(0,0)と一致しているかどうかという点である。仮に、これらが一致している場合はそのままでよいが、図32に示すように、背景成分の推定の誤差が起因して一致していないこともある。同図においてノイズ成分群Gの重心位置は×印で示すように、原点(0,0)から何れかの象限にずれていることもある。
このずれは、図27(B)で示した背景BKの推定に誤差があり、この誤差分を引きずったまま背景分のX線吸収分のデータを差し引きしたことに因る。この場合、散布図にマッピングされたデータ全体を、かかるずれ=0となるように、即ち、ノイズ成分群Gの重心位置=原点(0,0)となるようにオフセットさせる。勿論、背景BKの推定の推定、即ち、この例の場合には合成平面像IMALLの推定の誤差は理想的には零であるが、実際問題として、推定誤差は不可避である。このため、オフセット等の対策が必要になる。
つまり、演算装置23Aは、ノイズ成分群Gの重心位置を演算し(図24:ステップS261)、その重心位置が座標軸−μt、−μtの原点(0,0)と一致しているか否かを判断する(ステップS262)。この判断で不一致となった場合、その不一致分のオフセット量(μ、μ)を演算し(ステップS263)、そのオフセット量(μ、μ)を以って全散布点を座標上でオフセットさせる(ステップS264)。これにより、前述した図31と同様に、ノイズ成分群Gの重心位置=原点(0,0)にオフセットされるとともに、座標上の全サンプル点もそのノイズ推定の誤差に因る分だけオフセットされる。この結果、全散布点は、かかるノイズ推定の誤差の影響を排除又は著しく軽減させたマッピングとなる。
一方、ステップS262の判断がYESであって、ノイズ成分群Gの重心位置=原点(0,0)を示した場合、図33に示すように、演算装置23Aは最小二乗法近似法に基づいて全散布点と原点(0,0)を通る仮の近似直線STproを演算する(ステップS265)。この演算の対象になるのは、第1及び第3エネルギー領域合成平面像IM,IMの拡大関心領域ROIMAX内の全画素、即ち異物ARの領域も含んだ画素である。
この物質同定において重要なもう1つの処理は、異物ARに依存した散布点とノイズを含むそれ以外の不要な散布点との峻別である。物質同定の精度をより高めるには、極力、この異物ARに依存した散布点のみを抽出することが望まれる。通常、散布図上でノイズ成分群Gと信号成分群Gsigが区分けされているわけではなく両者の境界が曖昧である。そこで、ノイズを示す散布点と観察したいデータを示す散布点とを峻別するための閾値を設定する必要がある。そこで、本実施形態では、ノイズ閾値と異物閾値との2つの閾値を用いる。
まず、演算装置23Aは、ユーザとの間でインターラクティブに又は自動的に、散布図上においてノイズ閾値を設定する(ステップS266)。図34に示すように、ノイズ成分群Gの−μt軸に沿ったノイズ分布のノイズ上限閾値Noiseupperを設定する。これは散布図の各散布点の座標値を読み取ることで容易に求められる。さらに、このノイズ上限閾値Noiseupperを−μt軸上で原点(0,0)を介して逆転させたノイズ下限閾
値−Noiseupperを設定する。また原点(0,0)の−μt軸上方のみのノイズの分散から3σあるいは4σの閾値で自動的に、上下の閾値を決定することもできる。これらのノイズ上限閾値Noiseupper及びノイズ下限閾値−Noiseupperがノイズ閾値と機能する。これにより、ノイズ上限閾値Noiseupper及びノイズ下限閾値−Noiseupperの間に存在する散布点はノイズを示す点であることを認識できるので、後述する物質同定のための真の近似直線STtrueを演算するときに、それらノイズに相当する散布点は物質同定の処理から外すことができる。
次いで、演算装置23Aは、ユーザとの間でインターラクティブに又は所定のアルゴリズムに従って自動的に、異物閾値を設定する(ステップS267)。散布図上においてノイズ成分群Gを含むノイズによる散布点は、上述したノイズ閾値で排除できる。つまり、信号群Gsigの中のノイズ閾値、特にノイズ下限閾値−Noiseupperによりカットされるノイズ成分群Gを含む散布点を使用すれば良い、とも考えられる。
しかし、ここで考慮しなければならないことは、異物ARとその背景BK(すなわち搬送ベルトを含む検査対象OB)との境界面(画像上では境界線BD)から検出される信号に因る散布点は、異物ARと背景BKとの両者に依るものが混在している。このため、その情報は信頼性に劣るため、この情報をカットすることが物質同定の精度向上からは必須と言える。かかる境界面に応じた散布点は、図35に示すように、散布図上において、ノイズ成分群Gを含むノイズに因る散布点の領域RGnoiseと異物ARに因る散布点の領域RGARとに挟まれた中間領域Rmidに離散的に分布することが特徴的である。
そこで、演算装置23Aは、ユーザとの間でインターラクティブに又は自動的に仮の近似直線STpro上でノイズ下限閾値−Noiseupperが示す点を通り、且つ、この近似直線STproに直交する異物閾値THobject -numberを初期閾値として設定する。次いで、演算装置23Aは、この初期異物閾値THinitialを所定幅ずつ近似直線STpro上に沿って下方に移動させる。各移動位置において、ノイズ下限閾値−Noiseupperと異物閾値THinitialとの間に存在する散布点の数を演算する。更に、その演算数が所定値Nborder_lineに到達したか否かを判断する。この所定値Nborder_lineは図26に示す異物ARとその背景BKとの境界線BD上に存在する画素数である。この演算数の判断は、演算数=所定値Nborder_line又は演算数≒所定値Nborder_lineの判断を繰り返す。この繰り返しの中で、かかる判断条件を満たした位置において仮の近似直線STproに直交する最終異物閾値THfinalを設定する。この最終異物閾値THfinalを超えた領域RGARに属する散布点が異物ARに因る殆ど真の散布点になる。これにより、不安定な挙動を示す境界の画素値の物質同定への混入を殆ど確実に回避又は軽減できる。
ここで、初期異物閾値THinitial及び最終異物閾値THfinalは共に仮の近似直線STproに対して直交するように線状ROIとして設定される。このため、座標軸−μtに対して直交する線状ROIよりも散布点の弁別の誤差が少ないという効果がある。理由は、仮の近似直線STpro自体がある程度の物質同定情報を有して座標軸に対して傾斜しており、散布点がその直線STproに沿って分布しているためである。
次いで、演算装置23Aは、散布図上で最終異物閾値THfinalを超える散布点を特定し収集する(ステップS268)。つまり、図35に示す異物ARに因る散布点の領域RGARに在る散布点の集合と座標原点(0,0)とを通る最小二乗近似直線を演算し、これを真の近似直線STtrueとして設定する(ステップS269)。この真の(最終の)近似直線STtrueを図36に例示する。この真の近似直線STtrueを図35の仮の近似直線STproと比較すると、その傾きは、中間領域Rmidの散布点等を除外している分、変化する。しかし、その変化は不安定な挙動を示す散布点を除外したことに因るもので、その分、近似曲線ktrueの演算精度は上がっている。
この真の近似直線STtrueは異物ARを成す物質の種類や性状に固有の傾きを持つ。そこで、演算装置23Aは、真の近似直線STtrueの座標上で傾きktrueを演算する(ステップS270)。
メモリ23MのテーブルDB3には、図37に示すように、この近似曲線STtrueの様々な傾きk(k1,k2,…)が格納されている。傾きktrueの値に対して、物質の種類(アルミ、鉄、…)及び/又は性状(リューマチの疑いあり、なし)が割り当てられている。このため、演算装置23Aはこの輝DB3を参照して、真の近似直線STtrueの傾きktrueが何れの種類又は性状に合致するかを検索する(ステップS27)。この検索により異物ARの種類又は性状が特定される。そこで、演算装置23Aは、この特定結果、即ち物質の種類又は性状を示す情報を表示器23Bに表示させるなど、その情報提供を行う(ステップS28)。
このように、本第3の実施形態に係る物質同定によれば、第2の実施形態で説明したそれとは異なり、異物ARまたは検査対象OBを代表する面としての合成平面像IMALLにおいて、異物ARまたは検査対象OBの関心部分を含むように拡大関心領域ROIMAXを適宜なサイズで且つ極力平坦な部分に設定する。この合成平面像IMALL上の拡大関心領域ROIMAXに基づいて、異物AR(又は、検査対象OBの関心部分)の境界を意識することなく、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMのそれぞれにおける拡大関心領域ROIMAXのデータを処理できる。つまり、第1、第3エネルギー領域合成平面像IM,IMのそれぞれの拡大関心領域ROIMAXにおいて、背景成分を除去した異物AR(又は検査対象OBの関心部分)の画素値の変化情報を求める。この情報から図31に示すように、2次元の散布図を作成し、この散布点を代表する傾きが物質の種類や性状に固有のものであるとの着眼点に従って、その傾きを求める。この傾きを求めるときに、前述したように、各種の閾値を使って、真の近似直線STtrueの傾きktrueを求めている。この傾きktrueから異物AR(又は検査対象OBの関心部分)を構成する物質の種類又は性状を同定できる。
つまり、画素値の変動が大きく誤差成分が混入し易い異物ARまたは検査対象OBの関心部分の境界のデータを直接、処理する必要がない。このため、物質同定の精度が格段に向上する。さらに、各種の閾値を前述した如く使用することで、かかる同定精度は飛躍的に向上する。
[第1の変形例]
続いて、図38を参照して、上述した第3の実施形態に係る物質同定法の第1の変形例を説明する。
なお、この第1の変形例において、前述した拡大関心領域ROIMAXの演算(図26参照)、2次元散布図の演算(図31参照)、及び、この2次元散布図上で真の近似直線STtrueの傾きktrueの演算(図36参照)までの処理は、第3の実施形態に記載のものと同じである。このため、図38において、それらの処理をステップS41、S42、及びS43で代表させ、それらの説明を省略する。
演算装置23Aは、真の近似直線STtrueの傾きktrueを演算した後(ステップS43)、図37に模式的に示す如く、メモリ23MのテーブルDB3に保存してある各種の物質の種類や性状に関する、2次元散布図上の固有の傾きk1〜knを参照する(ステップS44)。次いで、演算装置23Aは、それらの傾きk1〜knと前述した真の近似直線STtrueの傾きktrueとを逐一比較し、傾きktrueに最も近い傾きki(i=1〜n)を特定する(ステップS45)。さらに、この特定した傾きkiに相当する物質の種類又は性状を同定(特定)し、その同定結果をユーザに提示する(ステップS46)。
この第1の変形例によっても、前述した第3の実施形態で説明した物質同定と同等の作用効果が発揮される。
[第2の変形例]
続いて、図39を参照して、上述した第3の実施形態に係る物質同定法の第2の変形例を説明する。
なお、この第2の変形例において、前述した拡大関心領域ROIMAXの演算(図26参照)及び2次元散布図の演算(図31参照)は、第3の実施形態に記載のものと同じである。このため、図39において、それらの処理をステップS51、S52で代表させ、それらの説明を省略する。本変形例は、2次元散布図上で真の近似直線STtrueの傾きktrueを求める方法が異なる。
演算装置23Aは、前述したように2次元散布図を演算した後(ステップS52)、図37に模式的に示す如く、メモリ23MのテーブルDB3に保存してある各種の物質の種類や性状に関する、2次元散布図上の固有の傾きk1〜knを参照する(ステップS53)。次いで、演算装置23Aは、散布図上で、参照したk1〜knそれぞれが呈する直線ST〜STと、各種の閾値条件に合致した複数の散布点PT〜PTそれぞれとの間の直線距離Liの総和「シグマLi」を求める(ステップS54)。この直線距離Liは各散布点PTnを通る線分が各直線STに直交する長さである(図39、ステップS54に付随させた説明図を参照)。
次いで、演算装置23Aは、それらの直線距離Liの総和「シグマLi」の最小値を呈する傾きkiを特定する(ステップS55)。このようにして決めた傾きkiは前述した2次元散布図上で真の近似直線STtrueの傾きktrueに等しいか又は近似したものになる。
次いで、この特定した傾きkiに相当する物質の種類又は性状を同定(特定)し、その同定結果をユーザに提示する(ステップS56)。
この第2の変形例によっても、前述した第3の実施形態で説明した物質同定と同等の作用効果が発揮される。このように、2次元散布図上での真の近似直線STtrueの傾きktrueを様々な方法によって演算することができ、装置設計の選択の幅が広がる。
[第3の変形例]
次に、第3の変形例を説明する。この第3の変形例は前述してきた各実施形態及び各変形例の構成を発展させることができる可能な例である。
一般的に、物質が複数の物質の様々な混合比で存在している場合、特定の管電圧を有するX線を照射してフォトンカウンティング検出器で捉えた場合、前述した散布図化したエネルギー領域Bin、Bin,Binの吸収係数μ、μ、μ3を指標にした3次元の散布図も可能である。これは、この3次元空間で3次元最小二乗近似直線より傾きを求め、指標にする方法である。これは、物質毎のX線吸収による差を画像で見る以外の別の手法の1つと言える。
X線透過画像におけるコントラストの差は言わば、厚みと吸収によって決まるので、物質を特定する指標にはなり得ないが、3次元散布図上で求めた傾きも2次元散布図上のそれと同様に物質固有のものである。このため、例えば吸収画像としては物質間の差が見えない場合でも、散布点の集合の傾きとしては差が出る可能性が高い。このため、この3次
元散布図を用いる手法も、より本来の診断の目標に即した指標、或いは、吸収画像を大いに補い得る情報になる。
そこで、この第3の変形例では、3つのエネルギー領域Bin、Bin,Binを使用したフォトンカウンティング型のX線検査装置において、X線管31の管電圧を通常している値よりも上げることを特徴とする。
ここで、「通常している値(管電圧)」とは、フォトンカウンティング型ではない通常の積分型検出器における管電圧であって、使用するユーザによって異なる値である。
管電圧を上げるのは、エネルギー領域間のX線エネルギー差が増すために、平均的な吸収係数の差が増し、物質同定をする上での精度が増すためである。一例として、
・異物検査の場合、通常、40〜60kVで使用していた管電圧を、例えば60〜80kVに上げることで物質同定精度の向上とX線量の低減も可能になる。
・マンモグラフィーの場合、35kV〜50kV程度に上げる。
その上で、3つのエネルギー領域Bin、Bin,Binで検出したフォトン数に基づくフレームデータから、前述した2次元散布図作成と同様に、吸収係数μ、μ、μ3を指標にした3次元散布図を作成し、この3次元散布図から3次元的に散布点の集合の傾きを求め、物質の種類は性状を同定するように構成する。また図示しないが、おのおの散布点を3次元散布図の(0,0,0)からのベクトルと考え、そのベクトル長さが同じになるように、散布点を再マップし、球面上に分布する分布位置に応じて物質を特定するような手法にも拡張し得る。
このための構成として、演算装置23Aは、機能的に下記の構成を有する。すなわち、物質同定手段として機能する演算装置23Aは、3つのエネルギー領域それぞれの前記計
数値に応じた前記X線の透過情報に基づいた前記代表する面の第1〜第3の代表像を準備する画像準備部(図24のステップS23により機能的に構成される)と、設定された関心領域の位置に応じた、前記第1〜第3の代表像それぞれの領域を構成する画素を通過する前記X線の透過情報から3次元散布図を作成する散布図作成部(図24のステップS24、S25より機能的に構成される)と、3次元散布図の散布点の散布状態の特性を指標化する指標化部(図24のステップS26:S261〜S270より機能的に構成される)と、散布点の散布状態の特定の情報を予め既知の物質についてデータ化して保持しているデータベースに、前記指標化手段によって指標化された前記散布状態の特性を照合して前記物質の少なくとも種類又は性状を特定する照合部(図24のステップS27により機能的に構成される)とを有する。
このため、物質のX線吸収差が出る(又はある)ならば、従来よりもX線管電圧を上げて、フォトン数を上げることで、信頼性の高い傾きを求めことができ、結果としてより信頼性の高い物質同定が可能になる。よって、特にX線吸収差が少ないために、コントラスト差が少なく、乳腺含有率の高い腫瘤検出やリューマチ、非破壊検査においては、このX線管電圧を通常使用値よりも上げることが有効である。さらに、封書の中に入っている麻薬の検査や、製品の組成のような非常に微妙な吸収差しかない検査の場合、このようにX線エネルギーをより高く設定して、検出器で検出するフォ トン数を増やした方が、診断能(識別能)が上がると同時に副次的に透過X線量の増加からX線量を低減させることも可能である。
なお、本発明に係る物質同定の手法は、異物の種類を特定することで説明されているが、異物の物質同定ではなく、被検査対象物そのものの物質同定、例えば調合された薬の調合具合など、異種の物質を混ぜて商品化するような用途で、その混ぜ具合を調べる用途にも使える可能性がある。また木材や石炭などの水分保有量を検出したりする応用、牛肉、まぐろなどの脂の乗り具合を検査する用途にも適用できる可能性がある。医療用途では、従来、X線画像では判別が付き辛かったリューマチなどの軟組織の変化など、微妙な差を検出するような用途に適用し得る。勿論、その場合は、同定精度を上げるために、時間を掛けてX線量を増やすとか、エネルギー帯域を2つではなく更に増やして総合的に精度をあげるなどの工夫も出来る。
したがって、本手法の応用事例として下記のような応用が考えられる。
1)検査対象物が立体的な又は平面状と見做すほどの平たい構造を持つ、工業製品、食品のインラインX線異物検査機器
2)検査対象物が立体的な又は平面状と見做すほどの平たい構造を持つ、工業製品、食品のオフラインX線異物検査機器
3)異種混合物の混合割合を検査するX線検査機器
4)各種組成分析機器(成分の種類を同定するX線装置)
5)歯科用口外撮影装置(金属補綴物の種類の同定)
6)整形用スキャナー装置(骨塩定量機能付きX線診断装置)
7)軟組織や関節部皮質骨変化が同定可能なリューマチなどの診断装置
8)乳腺と腫瘤の識別が可能なマンモグラフィー装置
なお、本発明は必ずしも前述した実施形態及び変形例の構成に限定されるものではなく、更に様々な態様に展開して実施できる。
10、20,80 X線検査装置
12,21 X線発生器
11、31 X線管
18、22 X線検出装置
13、41 X線検出器
14 フレームデータ作成部
15 断層像作成部
16 エッジ情報作成部
16A エッジ情報出力部
16B エッジ情報指標化部
17 合成画像作成部
17A 合成画像提示部
22 データ処理回路(LSI回路)
23 コンピュータ
33,33A コリメータ
42 データ処理回路
51〜70 データ処理回路に含まれる回路要素
OB 検査対象

Claims (33)

  1. X線焦点を有し、当該X線焦点からファン状の広がりを以ってX線を発生するX線管を備えたX線発生装置と、
    複数の画素が配置された矩形状のX線入射窓を備え、当該各画素に入射した前記X線の光子の数を、予め定めた複数のX線エネルギー領域のそれぞれにおいて計数し、その計数値に応じたX線強度を画素値とする電気量のフレームデータを一定時間毎に出力する光子計数型のX線検出器と、を備え、
    前記X線管と前記X線検出器との間に形成されるオブジェクト空間に検査対象を位置させ、当該X線管及び当該X線検出器の対または当該検査対象の何れか一方をその他方に対して相対的に所定のスキャン方向に移動させながら当該検査対象を前記X線の透過状態の情報に基づいて検査するようにしたX線検査装置において、
    前記オブジェクト空間において設定された、前記スキャン方向に平行な複数の断層面それぞれのフレームデータを、前記X線検出器が出力した前記フレームデータから、前記X線のファン状の広がりと当該複数の断層面の当該断層面に直交する直交方向における位置とに応じて作成するフレームデータ作成手段(51〜56)と、
    前記複数の断層面のフレームデータに基づいてラミノグラフィー法により当該複数の断層面の一部の断層面又は全ての断層面の断層像を作成する断層像作成手段(57)と、
    前記一部の断層面又は前記全ての断層面の断層像に基づいて、前記オブジェクト空間において前記検査対象と交差する面であり、かつ前記検査対象の前記X線の透過を代表する前記スキャン方向に沿った面の画像を代表像として作成する代表像作成手段(58〜63,65)と、
    前記代表像に関心領域を設定する関心領域設定手段(23A,23B,23C)と、
    前記代表像上で前記関心領域により指示された画素それぞれにて、前記複数のX線エネルギー領域のうちの互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域それぞれの前記計数値に基づく前記X線の透過情報から、前記関心領域に位置する物質の少なくとも種類又は性状を同定する物質同定手段(23A)と、
    を備えたことを特徴とするX線検査装置。
  2. 前記互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域は、当該少なくとも2つのX線エネルギー領域の内のX線エネルギーの高い領域及び低い領域の2つのエネルギー領域であり、
    前記フレームデータ作成手段は、前記複数のX線エネルギー領域のうちの全てのX線エネルギー領域における前記光子の第1の種類の計数値と、前記高い領域及び前記低い領域のX線エネルギー領域それぞれにおける当該光子の第2及び第3の種類の計数値とに基づ
    いて、当該第1〜第3の種類の計数値それぞれに対応した第1〜第3の種類の前記フレームデータを作成するように構成され、
    前記断層像作成手段は、前記第1〜第3の種類のフレームデータからその種類別に前記複数の断層面の断層像を作成するように構成され、
    前記代表像作成手段は、前記第1の種類のフレームデータに応じた前記複数の断層面の断層像から1枚の前記代表像を作成するように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
  3. 前記物質同定手段は、
    前記第2及び第3の種類のフレームデータからその種類別に、前記オブジェクト空間における前記代表像の各画素と同じ3次元位置に在る前記計数値に応じた画素値を有する画像をそれぞれ作成する作成手段と、
    この作成手段によりそれぞれ作成された画像を成す前記画素値に基づく前記X線の透過情報の差異情報を求め、この差異情報から前記関心領域により示された位置に在る物質の少なくとも種類又は性状を同定する物質同定手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
  4. 前記代表像作成手段は、
    前記複数の断層像それぞれにおける前記画素値の変化に応じたエッジ情報を、当該複数の断層像それぞれの画素毎に演算し、そのエッジ情報の3次元分布を作成するエッジ情報作成手段(58〜61)と、
    前記エッジ情報の3次元分布を前記関心領域の画素毎に、前記複数の断層面を貫く方向に探索して当該エッジ情報の最大値を検出するエッジ情報探索手段(62)と、
    前記複数の断層像又は当該複数の断層像から作成される断層像の中で前記探索されたエッジ情報の最大値を呈する画素のみを選択して合成した1枚の合成画像を前記代表像として作成する合成画像作成手段(63)と、
    を備えたことを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。
  5. 前記合成画像作成手段が作成した前記1枚の合成画像を可視化して提示する合成画像提示手段(23)を備えたことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
  6. 前記物質同定手段により同定された前記物質の少なくとも種類又は性状を示す情報を提示する物質情報提示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のX線検査装置。
  7. 前記関心領域設定手段は、前記提示された合成画像を目視してオペレータが手動で前記関心領域を設定するように構成したことを特徴とする請求項5に記載のX線検査装置。
  8. 前記関心領域設定手段は、前記合成画像から自動的に当該合成画像に映り込んでいる検査対象の中の関心物体の輪郭を前記関心領域として設定するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
  9. 前記物質同定手段は、
    前記合成画像上で前記関心領域により指示された、当該合成画像の画素(i,j)それぞれにおいて、前記2つのX線エネルギー領域の各X線エネルギー領域における前記光子の計数値(W1(i,j),W3(i,j))と、前記オブジェクト空間に存在する検査対象の当該各X線エネルギーに対する固有情報(C1(i,j), C3(i,j))とに基づいて当該各画素における前記X線の透過情報(μ13(i,j), μ33(i,j))を演算する透過情報演算手段と、
    前記合成画像の画素(i,j)それぞれにおける前記X線の透過情報(μ13(i,j), μ33(i,j))から前記2つのX線エネルギー領域に対する線質硬化現象の傾向情報(μ13(i,j)/μ33
    (i,j))を演算する傾向情報演算手段と、
    予め種類が既知の物質に対して前記傾向情報を取得して格納されている傾向情報格納手段と、
    前記傾向情報格納手段に格納されている前記傾向情報を参照して前記傾向情報から前記物質の種類又は性状を特定する物質種類・性状特定手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
  10. 前記傾向情報演算手段は、前記画素毎の前記傾向情報を前記関心領域全体で平均化する平均化手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載のX線検査装置。
  11. 前記傾向情報演算手段は、予め種類又は性状が既知の物質又は物質の状態に対して前記傾向情報を取得して、当該傾向情報を格納しているデータベースを有し、
    前記物質種類・性状特定手段は、前記データベースに格納されている前記傾向情報を参照して前記傾向情報から前記関心領域に位置する前記物質の種類又は性状を特定するように構成したことを特徴とする請求項9に記載のX線検査装置。
  12. 前記物質種類・性状特定手段は、前記関心領域を成す前記合成画像の画素(i,j)毎にデータベースに格納されている前記傾向情報を参照するように構成したことを特徴とする請求項9に記載のX線検査装置。
  13. 前記傾向情報演算手段は、前記合成画像上の前記関心領域の周辺画素の前記計数値から前記予め種類が既知の物質に対して前記傾向情報を同定するように構成したことを特徴とする請求項11記載のX線検査装置。
  14. 前記物質種類・性状特定手段が特定した前記物質の種類又は性状と、前記関心領域設定手段が設定した前記関心領域としての当該物質のサイズとを表示する物質表示手段を備えたことを特徴とする請求項12に記載のX線検査装置。
  15. 前記物質表示手段は、前記検査対象と当該検査対象の中に存在する前記物質と相互に色相又は輝度を違えて表示するように構成したことを特徴とする請求項14に記載のX線検査装置。
  16. 前記物質同定手段は、前記X線のエネルギー領域のうちの前記光子を検出する上で有意なエネルギー領域を複数のエネルギー領域に分けたときの少なくとも2つのエネルギー領域それぞれの前記計数値に基づく前記X線の透過情報の差異情報から、前記関心領域に位置する前記物質の少なくとも種類又は性状を含む情報を同定するように構成したことを特徴とする請求項1〜15の何れか一項に記載のX線検査装置。
  17. 前記複数のエネルギー領域は、2つのエネルギー領域又は3つ以上のエネルギー領域であり、
    前記物質同定手段は、その2つのエネルギー領域それぞれ、又は、その3つ以上のエネルギー領域うちの低位及び高位の2つのエネルギー領域それぞれの前記計数値に基づく前記X線の透過情報の差異情報から、前記関心領域により示された位置に在る前記物質の少なくとも種類又は性状を含む情報を同定することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のX線検査装置。
  18. 前記関心領域設定手段は、
    前記代表像上で関心ある部位に外接する初期領域を設定する初期領域設定手段と、
    この初期領域を所定刻み分ずつ外側に拡大させる領域拡大手段と、
    この領域拡大手段により拡大される外側の領域とその内側に位置する初期領域との間に
    位置する画素の数が所定値に達したか否かを判断する領域判断手段と、
    この判断手段により前記画素の数が前記所定値に達したと判断されたときの前記外側の領域を前記関心領域として最終的に設定する領域最終設定手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項17に記載のX線検査装置。
  19. 前記物質同定手段は、
    前記2つのエネルギー領域それぞれの前記計数値に応じた前記X線の透過情報に基づいた前記面の第1及び第2の代表像を準備する画像準備手段(S23)と、
    前記領域最終設定手段により設定された前記関心領域の位置に応じた、前記第1及び第2の代表像それぞれの領域を構成する画素を通過する前記X線の透過情報から2次元散布図を作成する散布図作成手段(S24、S25)と、
    前記2次元散布図の散布点の散布状態の特性を指標化する指標化手段(S26:S261〜S270)と、
    前記散布点の散布状態の特定の情報を予め既知の物質についてデータ化して保持しているデータベースに、前記指標化手段によって指標化された前記散布状態の特性を照合して前記物質の少なくとも種類又は性状を特定する照合手段(S27)と
    を備えたことを特徴とする請求項18に記載のX線検査装置。
  20. 前記散布図作成手段(S24、S25)は、
    前記第1及び第2の代表像それぞれの前記関心領域の位置に応じた前記領域における検査対象の背景による前記X線の透過情報を、当該領域全体の前記X線の吸収情報から差分する差分手段(S24:S241〜S246)と、
    この差分手段による差分を受けた前記領域の各画素の前記X線の透過情報を散布点として前記2次元散布図を演算する散布図演算手段(S25)と、
    を備えたことを特徴とする請求項19に記載のX線検査装置。
  21. 前記差分手段(S24:S241〜S246)は、
    前記第1及び第2の代表像それぞれの前記関心領域の位置に応じた前記領域に前記検査対象とは異なる物質が存在するときには、その物質による画素値は0であると仮定して当該領域の前記背景による前記X線の吸収情報を推定する推定手段(S241〜S244、S246)と、
    この推定手段により推定された前記X線の吸収情報を前記領域全体の前記X線の吸収情報からの差分演算を行う差分演算手段(S245、S246)と、
    を備えたことを特徴とする請求項20に記載のX線検査装置。
  22. 前記指標化手段(S26:S261〜S270)は、
    前記散布図上での前記推定手段による推定誤差による誤差情報(ノイズ)の重心位置を演算する重心演算手段(S261)と、
    前記重心位置が前記散布図の原点からオフセットしているか否かを判断するオフセット判断手段(S262)と、
    このずれ判断手段によりオフセットが判断された場合、そのオフセット量を演算するオフセット量演算手段(S263)と、
    前記オフセット量に基づいて前記散布図上の散布点の全体を前記重心位置が前記原点と一致するように補正する補正手段(S264)とを
    を備えたことを特徴とする請求項21に記載のX線検査装置。
  23. 前記指標化手段(S26:S261〜S270)は、
    前記散布図上の前記散布点の前記散布状態の特性を示す情報として、当該散布状態を近似する仮の近似曲線を演算する第1の近似曲線演算手段(S265)と、
    前記仮の近似曲線にノイズを弁別するためのノイズ閾値を設定するノイズ閾値設定手段
    (S266)と、
    前記仮の近似曲線に前記ノイズ閾値よりも絶対値として大きい物質閾値を設定する物質閾値設定手段(S267)と、
    この物質閾値により弁別される前記散布点を用いて前記散布状態を近似する真の近似曲線を演算する第2の近似曲線演算手段(S267,S268)と、
    この真の近似曲線の傾きを前記特性として演算する傾き演算手段(S270)と、
    を備えたことを特徴とする請求項21に記載のX線検査装置。
  24. 前記ノイズ閾値設定手段(S266)は、前記推定手段による推定誤差による前記散布図上の誤差範囲を設定し、この誤差範囲を所定値だけ上回る前記ノイズ閾値を設定するように構成されている請求項23に記載のX線検査装置。
  25. 前記ノイズ閾値及び前記物質閾値は前記仮の近似曲線に直交して設定される線上のROIであることを特徴とする請求項23又は24に記載のX線検査装置。
  26. 前記2次元散布図の散布点は、前記X線検出器の各画素において検出され、かつ前記検査対象を透過する前記X線の吸収係数μに当該検査対象の未知の厚さtを勘案した物理量であるX線吸収値のファクタを持つμtであることを特徴とする請求項18〜25の何れか一項に記載のX線検査装置。
  27. 前記オブジェクト空間に前記検査対象を成す検査対象物をベルトコンベアで搬送する搬送機構を備え、
    前記関心領域設定手段は、前記検査対象物の中に含まれることがある異物の輪郭を前記関心領域として設定するように構成した、
    ことを特徴とする請求項1〜26の何れか一項に記載のX線検査装置。
  28. 前記オブジェクト空間に前記検査対象を成す検査対象物をベルトコンベアで搬送する搬送機構を備え、
    前記関心領域設定手段は、前記検査対象物の予め定めた所望領域を前記関心領域として設定するように構成した
    ことを特徴とする請求項1〜17の何れか一項に記載のX線検査装置。
  29. 前記エッジ情報の3次元分布のデータを出力するエッジ情報出力手段(64,67,68)を備えたことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
  30. 少なくとも前記フレームデータ作成手段、前記断層像作成手段、前記エッジ情報作成手段、前記エッジ情報探索手段、及び、前記合成画像作成手段は、LSI回路により前記X線検出器の出力段に一体に作り込まれていることを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
  31. X線焦点を有し、当該X線焦点からファン状の広がりを以ってX線を発生するX線管を備えたX線発生装置と、
    複数の画素が配置された矩形状のX線入射窓を備え、当該各画素に入射した前記X線の光子の数を、予め定めた複数のX線エネルギー領域のそれぞれにおいて計数し、その計数値に応じたX線強度を画素値とする電気量のフレームデータを一定時間毎に出力する光子計数型のX線検出器と、を備え、
    前記X線管と前記X線検出器との間に形成されるオブジェクト空間に検査対象を位置させ、当該X線管及び当該X線検出器の対または当該検査対象の何れか一方をその他方に対して相対的に所定のスキャン方向に移動させながら当該検査対象を前記X線の透過状態の情報に基づいて検査するX線検査方法において、
    前記オブジェクト空間において設定された、前記スキャン方向に平行な複数の断層面それぞれのフレームデータを、前記X線検出器が出力した前記フレームデータから、前記X線のファン状の広がりと当該複数の断層面の当該断層面に直交する直交方向における位置とに応じて作成し、
    前記複数の断層面のフレームデータに基づいてラミノグラフィー法により当該複数の断層面の一部の断層面又は全ての断層面の断層像を作成し、
    前記一部の断層面又は前記全ての断層面の断層像に基づいて、前記オブジェクト空間において前記検査対象と交差する面であり、かつ前記検査対象の前記X線の透過を代表する前記スキャン方向に沿った面の画像を代表像として設定し、
    前記代表像に関心領域を設定し、
    前記代表像上で前記関心領域により指示された画素それぞれにて、前記複数のX線エネルギー領域のうちの互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域それぞれの前記計数値に基づく前記X線の透過情報の差異情報から、前記関心領域に位置する物質の少なくとも種類又は性状を同定する、
    ことを特徴とするX線検査方法。
  32. 前記互いに異なる少なくとも2つのX線エネルギー領域は、当該少なくとも2つのX線エネルギー領域の内のX線エネルギーの最も高い領域及び最も低い領域の2つのエネルギー領域であり、
    前記フレームデータを作成するステップは、前記複数のX線エネルギー領域のうちの全てのX線エネルギー領域における前記光子の第1の種類の計数値と、前記高い領域及び前記低い領域のX線エネルギー領域それぞれにおける当該光子の第2及び第3の種類の計数値とに基づいて、当該第1〜第3の種類の計数値それぞれに対応した第1〜第3の種類の前記フレームデータを作成し、
    前記断層像を作成するステップは、前記第1〜第3の種類のフレームデータからその種類別に前記複数の断層面の断層像を作成し、
    前記代表像を作成するステップは、前記第1の種類のフレームデータに応じた前記複数の断層面の断層像から1枚の前記代表像を作成する、
    ことを特徴とする請求項31に記載のX線検査方法。
  33. 前記複数のエネルギー領域は、3つのエネルギー領域であり、
    前記X線管に印加する電圧は、前記複数のエネルギー領域が2つの場合の当該電圧より高い値に設定され、
    前記物質同定手段は、
    前記3つのエネルギー領域それぞれの前記計数値に応じた前記X線の透過情報に基づいた前記面の第1〜第3の代表像を準備する画像準備手段(S23)と、
    前記領域最終設定手段により設定された前記関心領域の位置に応じた、前記第1〜第3の代表像それぞれの領域を構成する画素を通過する前記X線の透過情報から3次元散布図を作成する散布図作成手段(S24、S25)と、
    前記3次元散布図の散布点の散布状態の特性を指標化する指標化手段(S26:S261〜S270)と、
    前記散布点の散布状態の特定の情報を予め既知の物質についてデータ化して保持しているデータベースに、前記指標化手段によって指標化された前記散布状態の特性を照合して前記物質の少なくとも種類又は性状を特定する照合手段(S27)と
    を備えたことを特徴とする請求項18に記載のX線検査装置。
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