JP5942099B2 - 物質同定装置及び撮像システムの作動方法 - Google Patents

物質同定装置及び撮像システムの作動方法 Download PDF

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本発明は、対象物に含まれる物質の種類を同定する物質同定装置及び撮像システムの作動方法に係り、とくに、光子計数型(フォトンカウンティング型)と呼ばれるX線検出器を用いて収集した対象物のX線吸収データに基づいて物質の種類を同定する物質同定装置及び撮像システムの作動方法に関する。
近年、X線やガンマ線などの放射線を用いて対象物の内部構造や機能を診断・撮影する装置における技術進歩は目覚しいものがある。この種の装置には放射線を検出する検出器が必須であり、この放射線検出器の性能向上も上述の技術進歩の一翼を担っている。とくに、検出信号をデジタル形式で出力する、いわゆるデジタル化を始め、画素の精細化及び検出面の大形化が進んでいる。
この放射線検出器の検出法についても、従来からの積分法(積分モード)に加え、光子計数法(フォトンカウンティング法)と呼ばれる検出法も注目されている。この光子計数法は、従来では、核医学の分野におけるガンマ線検出器に採用されていたものである(例えば特許文献1:特開平11−109040を参照)。一方、近年、画像のエンハンス能の向上、メタルアーチファクトの削減、ビームハードニングの影響を軽減などの効果を得るために、この光子計数法をX線検出器に適用する事例も報告されている。
この種の事例の1つとして特許文献2:特開2006−101926で提案されたものが知られている。つまり、「複数の収集画素のそれぞれに入射した放射線を光子と見做して当該粒子のエネルギに応じた電気信号を出力する光子計数型検出器を備え、この検出器が出力した各収集画素の信号に基づいて放射線のエネルギスペクトル上の複数のエネルギ領域に分類される当該放射線の粒子数の計数データを演算し、この演算された収集画素毎の複数のエネルギ領域それぞれの計数データに当該エネルギ領域別に与えられた重み係数の重み付けを施し、この重み付けされた収集画素毎の複数のエネルギ領域それぞれの計数データを互いに加算し、この加算データを収集画素毎の放射線画像生成用データとして出力する放射線検出装置」である。
このように、光子計数型のX線検出器の場合、入射するX線光子のそれぞれが持つエネルギを弁別する閾値が1個以上(好適には複数個)、用意される。この閾値によりエネルギの範囲が規定されるので、各X線光子のエネルギがどのエネルギ範囲に属するかを判定することができる。この判定の結果、それぞれのエネルギ範囲に弁別されたX線光子数が計測される。この計測数の情報が画像の画素値として反映される。
一方、近年、X線装置を用いて測定対象に含まれる物質の種類を同定(又は識別、特定)しようとする試みもなされている。この同定の試みとして、上述ように、エネルギ帯に分けたエネルギ情報が出力できる光子計数型X線平面検出器を用いるものがある(例えば、論文「Material separation in x-ray CT with energy resolved photon-counting detectors Xiaolan Wang et al. Med. Phys. 38 (3), March 2011」や「MicroCT with energy-resolved photon-counting detectors Xiaolan Wang et al. PHYSICS IN MEDICINE AND BIOLOGY 56 (2011)」を参照)。具体的には、この光子計数型X線平面検出器をCTスキャナに搭載し、検出したエネルギ情報を用いて物質の同定(識別)を行うものである。この同定法の場合、研究レベルでは興味深い結果が出ている。しかし、本技術は研究レベルに留まり、性能面のバランスの悪さと生産性の点で実用化には至っていない。
また、CTスキャナを用いて物質同定を行う手法も知られている。この場合には、別々の管電圧を供給するX線管と、これらのX線管とそれぞれ対を成す2つの検出器とが搭載される。そこで、2つの検出器で検出されるX線エネルギの相違を利用して、物質の識別を行う。また、X線管と検出器の対は必ずしも複数である必要はなく、1対のX線管と検出器でもよい。この構成の場合、X線管に供給する管電圧を例えば2つの間で、収集のスピードよりも速いスピードで高速に切り換え、2つの管電圧の元で収集される2種類の画像を切り分けて取り出し、物質同定を行うこともできる。
このようなCTスキャナを用いた物質同定の背景には、CTスキャナがいわゆるCT値を求める装置であることがある。つまり、物質の種類が異なれば、CT値は異なり、また、同じ物質であっても、与えるX線エネルギ(管電圧)が異なれば、CT値が異なるので、この違いを利用して物質を特定しようというものである。
特開平11−109040 特開2006−101926
しかしながら、異なる2つの管電圧を印加する2つのX線管を搭載する手法の場合、既に製品化されているが、精度の高い物質同定には限界がある。そのために比較的識別の容易なCT値の差の大きな識別に応用されているのが現状で微妙な物質の差を同定するには精度が不十分である。その理由は、X線が連続スペクトラムであるため、2つのX線エネルギ帯にオ−バーラップが存在してエネルギ帯の情報が正しく取り出せない。このため同定精度の限界があるからである。
また、3つ以上の管電圧を切り替えようと思えば、管球を一個追加するか、さらに高速に管電圧を切り替える必要がある。一方、S/N比を保とうと思えば、X線量が増え、X線被曝の点で好ましくない、もちろんこのような手法の場合、CTスキャナの場合はある程度実現できたとしても、平面画像の場合、現状では、物質のX線透過パスの厚みが不明なために物質同定が根本的に無理である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、CTスキャナはもちろんのこと、トモシンセシス法を採用する断層装置や、X線スキャナシステムから得られる画像を使って、精度良く且つ簡便に対象物に含まれる物質の種類を同定(又は識別、特定)可能な物質同定装置及び撮像システムの作動方法を提供することを、その目的とする。
最初に、本発明に係る物質同定の趣旨、及び、本発明者等が目指している物質同定の位置づけを説明する。
本発明において「物質を同定(識別、特定)する」とは、対象とする物質の種類を同定することを意味し、その対象となる物質の厚さ(相対的、絶対的な厚さ)を知ることも含まれる概念である。この物質の同定には、X線を粒子、すなわち光子として捉え、そのX線光子をそのエネルギ領域の毎に計数した計数値に基づくX線透過情報と、X線粒子が呈するビームハードニングと呼ばれる線質硬化の情報とを用いる。ビームハードニングとは、X線の高エネルギ成分の方がその低エネルギ成分の方より相対的に大きくなり、線質が固くなる現象を言うが、この線質硬化の現象は、通常、物質の厚さが大きいほど、また物質の密度が高いほど強く(大きく)なる。
また、X線吸収データを用いて観察部位の物質の種類や状態を様々な手法で同定可能である。その一つの手法に係る物質同定の前提条件は、対象における物質同定のスポットが実質的に同定したい物質のみから構成され且つその厚みが位置に応じて変化していること、又は、そのような同定したい物質と少なくとも厚さのほぼ均一な物質あるいは均一と見なせる物質が互いに重畳されていること、である。この場合、2種類以上の物質が互いに重畳して成る物質であって、それぞれの物質が位置毎に異なる厚さを呈する物質は対象ではない。この前提条件を元に物質同定を行う場合には、撮像時に、後述するコンパートメントモデルという概念を念頭に置くことが便利である。
なお、均一と見なせる物質の事例として、X線パノラマ撮像装置により再構成される画像には、トモシンセシス法の原理上、歯列に沿った目的の断面の画像の中に各種のぼけや障害陰影も写り込むのような事例で、これらの障害陰影を含む背景物質は、トモシンセシス法による再構成の都合上、局所領域では厚さのほぼ均一な物質と看做すことできる場合が多い。
なお、本発明において実施可能な物質同定は必ずしも上述した1つの前提条件に拘束される訳ではなく、後述する1次元、2次元、3次元といった散布図を用いるものであればよい。例えば歯周病の検出などでは前述した前提条件は不要である。上述した前提条件がなくても、散布図化することで、半定量的な物質同定として、応用できる事例は多くある。後述する実施形態においてはその幾つかを例示する。
また、物質同定にトモシンセシス法を用いる場合において、距離計測を三次元的に把握することを事前に行うような手法が提案されている(PCT/JP2011/60731:放射線撮像装置及び同装置に用いるファントム)。これを用い予め定められた複数の仮想断層面を想定し、各キャリブレーションと計算で求められた想定面の吸収体とそれ以外の仮想断層面の吸収体の影響度を理論的あるいはキャリブレーションで割り当てることで、各仮想断層面の吸収値を計算で解くことも可能である。このような場合、CTスキャナで得られるような3次元空間上の断層面での吸収値を近似的に求めるようなことも出来る。この場合には、トモシンセシス法でありながら、より正確な物質同定を行える可能性がある。この点は今後の開発に期待するものである。それは、精度の如何にもよるが、後述するコンパートメントモデルで表す条件すら不要にし、応用分野は格段に拡大するものと期待される。
勿論、本発明に係る物質同定装置及び撮像システムの作動方法をCTスキャナに適用する場合、それぞれの物質の厚みが正確に分かるので、コンパートメントモデルで表される条件すら不要であると同時に精度の高い同定が可能になる。
このような状況にあって、本発明の具体的な構成は以下のようである。
前述した目的を達成するために、本発明は、その1つの態様として、1次元又は2次元の配列の複数の画素を形成し且つ当該画素のそれぞれにX線源から入射したX線を光子と見做して検出し当該光子のエネルギに応じた電気量のパルス信号を出力する複数の検出素子を有する光子計数型の検出器と、前記複数の検出素子の出力側に配列され且つ当該複数の検出素子それぞれからの前記パルス信号の計数値を2つ以上のエネルギ領域の夫々について収集する複数のデータ収集回路と、前記X線により被検体を撮像して前記パルス信号の前記計数値に基づいて前記X線の吸収情報からなる被検体画像を作成する被検体画像作成手段と、を備えた撮像システムにより作成された前記被検体画像を用いる装置が提供される。この装置は、前記検出器及び前記複数のデータ収集回路を介して、厚さ及び密度の均一な物質を撮像して前記パルス信号の前記計数値に基づいた参照画像を作成する参照画像作成手段と、前記参照画像の画素値で前記被検体画像の画素値を画素毎に除算して当該被検体画像の画素値を規格化する規格化手段と、この規格化手段により規格化された画素値から、前記吸収情報を与えた軸と、前記X線のビームハードニング情報を与えた1つ以上の軸からなる散布図を作成する散布図作成手段と、この散布図作成手段により作成された前記散布図から、前記被検体の撮像された部分に在る物質の種類を同定するための同定情報を取得する同定情報取得手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、X線のエネルギを複数のエネルギ領域に弁別して光子計数した計数値及びその計数値で再構成した被検体画像を用いて、被検体の中の注目部位に在る物質が同定される。この装置では、厚さ及び密度の均一な物質を撮像した計数値に基づく参照画像の画素値で被検体画像の画素値が規格化され、この規格化された画素値を持つ画像とエネルギ領域毎の光子計数値とから2次元散布図が作成される。散布図は、一方の軸に画素毎のX線吸収情報を持ち、他方の軸にビームハードニング情報を持つ。何れの情報も、厚さ及び密度の均一な物質からのデータ収集及び被検体の対象部位からのデータ収集を1回ずつ行って、その後処理を行えばよい。これにより、本発明者等が見出した、吸収情報とビームハードニング情報との組み合わせが成す特徴を利用した物質同定が可能になる。これにより、従来の様々な物質同定機能を有する装置に比べて、精度良く簡便に、注目部位に在る物質の種類を同定(識別、判別)できる。
添付図面において、
図1は、本発明の一実施形態に係る物質同定装置及び物質同定方法(撮像システムの作動方法)を実施した歯科用パノラマ撮像装置の外観の概要を示す部分斜視図、 図2は、複数の検出モジュールを用いた検出器の概要を説明する斜視図、 図3は、パノラマ撮像装置に搭載された光子計測型X線検出器の電気的な構成の概要を示すブロック図、 図4は、X線光子が生じさせる検出信号としての電気パルスの波高値(エネルギ)と、検出器においてエネルギ弁別のために設定される閾値との関係を説明する図、 図5は、X線のエネルギ、弁別されるエネルギ領域、及び光子計数値の関係を説明する図、 図6は、パノラマ撮像装置の電気的な構成の概要を示すブロック図、 図7は、本実施形態に係るパノラマ撮像装置が機能的に実施する物質同定のための処理を示すフローチャート、 図8は、パノラマ撮像における断面の設定位置を説明する図、 図9は、最適焦点で撮像された顎部のパノラマ画像(被検体画像)を示す図、 図10は、図9に示すパノラマ画像にROI(関心領域)を設定した様子を示す図、 図11は、2次元散布図の作成の概要を示すフローチャート、 図12は、2次元散布図を例示するグラフ、 図13は、2次元散布図上でデータの分散を代表近似するように設定した直線を重畳表示させたグラフ、 図14は、2次元散布図上で物質毎に異なる傾きを持つことを説明するグラフ、 図15は、X線の吸収とビームハードニングの関係を説明する実験例のグラフ、 図16は、本発明者等がコンパートメントモデル1と呼ぶ物質の重なりモデルを説明する図、 図17は、図16のコンパートメントモデル1に従った、X線の吸収とビームハードニングの関係を説明する図、 図18は、本発明者等がコンパートメントモデル2と呼ぶ物質の重なりモデルを説明する図、 図19は、図18のコンパートメントモデル2に従った、X線の吸収とビームハードニングの関係を説明する図、 図20は、本発明者等がコンパートメントモデル3と呼ぶ物質の重なりモデルを説明する図、 図21は、図20のコンパートメントモデル3に従った、X線の吸収とビームハードニングの関係を説明する図、 図22は、変形例1に係る、パノラマ画像上で複数のROIを設定したときの散布図の作成状況を説明する図、 図23は、変形例2に係る、散布図からパノラマ画像に情報をフィードバックする処理を説明する図、 図24は、変形例3に係る、散布図からパノラマ画像に情報をフィードバックする別の処理を説明する図、 図25は、変形例4に係る、複数の患者の固体差を比較しながら、X線の吸収情報とビームハードニングとの関係を提示するための処理を説明する図、 図26は、変形例5に係る、本発明の散布図を利用した歯周病判断の処理の概要を説明するフローチャート、 図27は、変形例5に係る歯周病判断の一例を説明する図、 図28は、変形例6に係る3次元の散布図を説明する図、および、 図29は、変形例7に係る1次元の散布図を説明する図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図21を参照して、本発明の第1の実施形態に係る物質同定装置及び物質同定方法(機能的に、撮像システムの作動方法に相当する)を説明する。
本実施形態では、物質同定装置及び物質同定方法(撮像システムの作動方法)は一つ以上のエネルギ領域に分割したX線光子数を出力できる光子計数型(フォトンカウンティング)のX線検出器を搭載した、トモシンセシス法の下に画像再構成するX線パノラマ撮像装置(以下、パノラマ撮像装置と呼ぶ)として実施されている。しかしながら、本発明に係る物質同定装置及び物質同定方法(撮像システムの作動方法)は、パノラマ撮像装置で実施する形態に限られるものではない。光子計数型のX線検出器を用いて被検体のX線透過データを2次元的に収集できる装置であれば、その収集データを本発明に基づいて処理するスタンドアロン方式のコンピュータであってもよい。勿論、このコンピュータは、そのデータ収集と並行して稼動させてもよいし、ポストプロセッサとして稼動させてもよい。つまり、収集後に記憶装置に一旦格納させたデータを後から呼び出して処理するプロセッサであってもよい。
また、本実施形態に係るパノラマ撮像装置は歯科用の医療装置であり、その撮像対象は被検体の顎部である。このため、この顎部を形成している種々の物質の種類を同定(又は識別、特定)することが、本発明に係る物質同定に対応している。
本発明者等は、物質のX線吸収とビームハードニングとの関係に着目し、これをトモシンセシス法により再構成された画像に適用し、歯列のみならず頸椎などの顎部の画像において、その画像中の所望の位置に在る物質の種類、厚みを同定することを試みた。そのような物質の同定には、時系列的に変化する過程の物質の種類の同定も含まれる。発明者等の研究によれば、エネルギ範囲毎計測したX線光子数に基づく画像から得たX線吸収とビームハードニングとの関係から、上記前提条件に合致する限り、物質の少なくとも種類や特性を特定できることが判明した。これをパノラマ撮像装置として実施した実施形態を以下に詳細に説明する。
図1に、パノラマ撮像装置1の概要を示す。このパノラマ撮像装置1は、被検体Pからデータを収集するガントリ(データ収集装置)2と、収集したデータを処理して画像などを作成するとともにガントリ2の動作を制御するコンソール3とを備える。
ガントリ2は、支柱11を備える。この支柱が伸びる長手方向を縦方向(又は上下方向:Z軸方向)と呼び、この縦方向に直交する方向を横方向(XY面に沿った方向)と呼ぶ。支柱11には、略コ字状を成す上下動アームユニット12が縦方向に移動可能に備えられる。上下動アームユニット12は、支柱11に沿って移動可能な縦アーム12Aと、この縦アーム12Aの上下端のそれぞれから横方向に延びる上側横アーム12B及び下側横アーム12Cを備える。上側横アーム12Bの所定位置には、支柱11に直交する横方向の平面内で回動可能な状態で、回動アームユニット13が取り付けられている。下側横アーム12Cの先端部は被験者Pの顎を載せるチンレスト14として構成されている。このため、撮像時には、被験者Pが図中の仮想線のように顎を載せて撮像に臨む。上下動アームユニット12の縦方向の位置は、図示しない駆動機構により、被験者Pの背丈などに応じて調整される。
回動アームユニット13は、下向きで略コ字状を成す横アーム13Aと、この横アーム13Aの両端のそれぞれから下向きに伸びる線源側縦アーム13B及び検出側縦アーム13Cとを備える。横アーム13Aが回転軸13Dにより垂下され、図示しない電動モータなどの駆動機構により回転軸13Dを中心に回動(回転)する。線源側縦アーム13Bの下端部にはX線管21が設置され、このX線管21から例えばパルスX線として曝射されたX線は、同下端部に設けられたコリメータ(図示せず)でコリメートされた後、被験者Pの顎部を透過して検出側縦アーム13Cに伝播する(仮想線を参照)。検出側縦アーム13Cの下端部には、X線入射窓W(例えば、横5.0mm×縦145mm)を有したX線検出器22(以下、検出器と呼ぶ)が設置される。なお、検出器22の検出面のサイズは、例えば横6.4mm×縦150mm)である。
この検出器22は、図2に示すように、X線撮像素子を2次元に配列した複数の検出モジュールB1〜Bnを有し、この複数の検出モジュールB1〜Bnの全体で検出部分が構成される。複数の検出モジュールB1〜Bmは互いに独立したブロックとして作成され、それらを基板(図示せず)上に所定形状(例えば矩形状)に実装して検出器22の全体が作成される。個々の検出モジュールB1(〜Bm)はX線を直接、電気パルス信号に変換する半導体材料で作成される。このため、検出器22は、半導体による直接変換方式の光子計数型X線検出器である。
この検出器22は、上述したように、複数の検出モジュールB1〜Bmの集合体として形成され、その全体として、2次元に配列された収集画素Sn(n=1〜N:画素数Nは例えば50x1450画素)を有する(図2参照)。各収集画素Snのサイズは、例えば200μm×200μmである。
このため、検出器22は、入射X線に応じた光子(フォトン)を、検出器22の検出面を構成する画素(収集画素)Sn(n=1〜N)毎に計数して、その計数値を反映させた電気量のデータを例えば300fpsの高いフレームレートで出力する。このデータはフレームデータとも呼ばれる。
この複数の収集画素Snそれぞれは、テルル化カドミウム半導体(CdTe半導体)、カドミュームジンクテルライド半導体(CdZnTe半導体)、シリコン半導体(Si半導体)、臭化タリューム、ヨウ化水銀を含む、直接変換型の半導体を用いた半導体セル(センサ)Cにより構成される。これに代えて、CsIなどのシンチレータ素材に光電変換器を組み合わせたセル(センサ)Cで構成してもよい。
この半導体セルCは、それぞれ、入射するX線を検出して、そのエネルギ値に応じたパルス電気信号を出力する。つまり、検出器22は、半導体セルCの複数が2次元に配列されたセル群を備え、その半導体セルCのそれぞれ、すなわち、2次元配列の複数の収集画素Snそれぞれの出力側にデータ収集回路51n(n=1〜N)が備えられている。ここで、収集画素Snのそれぞれ、すなわち半導体セルCのそれぞれから各データ収集回路51(〜51)に至る経路を必要に応じて、収集チャンネルCNn(n=1〜N)と呼ぶ。
なお、この半導体セルSの群の構造は、特開2000−69369号公報、特開2004−325183号公報、特開2006−101926号公報によっても知られている。
ところで、前述した各収集画素Snのサイズ(200μm×200μm)は、X線を光子(粒子)として検出することが可能な十分小さい値になっている。本実施形態において、X線をその粒子として検出可能なサイズとは、「放射線(例えばX線)粒子が同一位置又はその近傍に複数個連続して入射したときの各入射に応答した電気パルス信号間の重畳現象(パイルアップとも呼ばれる)の発生を実質的に無視可能な又はその量が予測可能なサイズ」であると定義される。この重畳現象が発生すると、X線粒子の「入射数対実際の計測数」の特性にX線粒子の数え落とし(パイルアップカウントロスとも呼ばれる)が発生する。このため、X線検出器12に形成する収集画素Snのサイズは、この数え落としが発生しない又は実質的に発生しないとみなせる大きさに、又は、数え落し量が推定できる程度に設定されている。
続いて、図3を用いて、検出器22に電気的に繋がる回路を説明する。複数のデータ収集回路51n(n=1〜N)のそれぞれは、各半導体セルCから出力されたアナログ量の電気信号を受けるチャージアンプ52を有し、このチャージアンプ52の後段に、波形整形回路53、多段の比較器54〜54(ここではi=4)、エネルギ領域振分け回路55、多段のカウンタ56〜56(ここではi=4)、多段のD/A変換器57〜57(ここではi=4)、ラッチ回路58、及びシリアル変換器59を備える。
各チャージアンプ52は、各半導体セルSの各集電電極に接続され、X線粒子の入射に応答して集電される電荷をチャージアップして電気量のパルス信号として出力する。このチャージアンプ52の出力端は、ゲイン及びオフセットが調整可能な波形整形回路53に接続されており、検知したパルス信号の波形を、予め調整されているゲイン及びオフセットで処理して波形整形する。この波形整形回路53のゲイン及びオフセットは、半導体セルCから成る収集画素Sn毎の電荷チャージ特性に対する不均一性と各回路特性のバラツキを考慮して、キャリブレーションされる。これにより、不均一性を排除した波形整形信号の出力とそれに対する相対的な閾値の設定精度とを上げることができる。この結果、各収集画素Snに対応した、即ち、各収集チャンネルCNnの波形整形回路53から出力された波形整形済みのパルス信号は実質的に入射するX線粒子のエネルギ値を反映した特性を有する。したがって、収集チャンネルCNn間のばらつきは大幅に改善される。
この波形整形回路53の出力端は、複数の比較器54〜54の比較入力端にそれぞれ接続されている。この複数の比較器54〜54それぞれの基準入力端には、図4に示す如くそれぞれ値が異なるアナログ量の閾値th(ここではi=1〜4)が印加されている。これにより、1つのパルス信号を異なるアナログ量閾値th〜thに各別に比較することができる。この比較の理由は、入射したX線粒子のエネルギ値が、事前に複数に分けて設定したエネルギ領域のうちのどの領域に入るのか(弁別)について調べるためである。パルス信号の波高値(つまり、入射するX線粒子のエネルギ値を表す)がアナログ量閾値th〜thのどの値を超えているかについて判断される。これにより、弁別されるエネルギ領域が異なる。なお、最も低いアナログ量閾値thは、通常、外乱や、半導体セルS、チャージアンプ42などの回路に起因するノイズ、或いは、画像化に必要のない低エネルギの放射線を検出しないようにするための閾値として設定される。また、閾値の数、すなわち比較器の数は、必ずしも4個に限定されず、上記アナログ量閾値thの分を含めて1個であってもよいし、2個以上の何個であってもよい。
上述したアナログ量閾値th〜thは、具体的には、コンソール3のキャリブレーション演算器38からインターフェース32を介してデジタル値で収集画素Sn毎、即ち収集チャンネル毎に与えられる。このため、比較器54〜5それぞれの基準入力端は4つのD/A変換器57〜57の出力端にそれぞれ接続されている。このD/A変換器57〜57はラッチ回路58を介して閾値受信端T(〜T)に接続され、この閾値受信端T(〜T)がコンソール3のインターフェース32に接続されている。
ラッチ回路58は、撮像時に、閾値付与器40からインターフェース31及び閾値受信端T(〜T)を介して与えられたデジタル量の閾値th´〜th´をラッチし、対応するD/A変換器D/A変換器57〜57にそれぞれ出力される。このため、D/A変換器57〜57は指令されたアナログ量の閾値th〜thを電圧量として比較器54〜54それぞれに与えることができる。各収集チャンネルCNnは、D/A変換器57i(i=1〜3)から比較器54i(i=1〜3)を介してカウンタ55i(i=1〜3)に至る1つ又は複数の回路系につながっている。この回路系を「弁別回路」DS(i=1〜3)と呼ぶ。
図5に、このアナログ量閾値th(i=1〜3)に相当するエネルギ閾値TH(i=1〜4)の設定例を示す。このエネルギ閾値TH(i=1〜3)は勿論、離散的に設定されるとともに、ユーザが任意に設定可能な弁別値である。
アナログ量閾値thは、各弁別回路DSにおいて比較器54iに与えるアナログ電圧であり、エネルギ閾値THはエネルギスペクトラムのX線エネルギ(keV)を弁別するアナログ値である。図5に示す波形は、通常に使用されているX線管球から曝射されるX線のエネルギの連続スペクトルを示す。なお、縦軸の計数値(カウント)は横軸のエネルギ値に相当するフォトンの発生頻度に比例する量であり、横軸のエネルギ値はX線管21の管電圧に依存する量である。このスペクトルに対して、第1のアナログ量閾値thを、X線粒子数を計数不要領域(計測に意味のあるX線情報がなく、かつ回路ノイズが混在する領域)、と低目のエネルギ領域1と弁別可能なエネルギ閾値TH1に対応して設定する。また、第2及び第3のアナログ量閾値th、thを、第1のエネルギ閾値THより高い値となる、第2、第3のエネルギ閾値TH,THを順に供するように設定している。これにより、エネルギのスペクトル波形の特性や設計値に基づいた適宜な弁別点が規定され、エネルギ領域ER1〜ER3が設定される。
また、これらのエネルギ閾値THは、基準となる一つ以上の被写体を想定し、エネルギ領域毎の所定時間の計数値が概略一定になるように決定される。
このため、比較器54〜54の出力端は、図3に示すように、エネルギ領域振分け回路55に接続されている。このエネルギ領域振分け回路55は、複数の比較器54〜54の出力、すなわち、検出したX線粒子のエネルギ値に相当するパルス電圧とアナログ量閾値th(〜th)との比較結果を解読し、そのエネルギ値がどのエネルギ領域ER〜ERに分類されるかという振分けを行う。例えば、1つの比較器54の出力がオン(検出値閾値)であり、残りの2つの比較器54,54の出力がオフ(検出値<閾値)であれば、エネルギ値は低い方のエネルギ領域ER1に弁別される。また、2つの比較器54、54の出力がオンであり、残りの1つの比較器54の出力がオフであれば、エネルギ値は中程度のエネルギ領域ER2に弁別される。3つの比較器54〜54の出力が共にオンであれば、エネルギ値は高い方のエネルギ領域ER3に弁別される。エネルギ領域振分け回路55は、カウンタ56〜56の何れかに弁別結果に応じたパルス信号を送る。例えば、エネルギ領域ER1に弁別される事象があれば、1段目のカウンタ56にパルス信号を送る。エネルギ領域ER2に弁別される事象があれば、2段目のカウンタ56にパルス信号を送る。エネルギ領域ER3についても同様である。
このため、カウンタ56〜56のそれぞれは、エネルギ領域振分け回路55からパルス信号が入力される度にカウントアップする。これにより、担当するエネルギ領域に弁別されるエネルギ値のX線粒子数を一定時間毎の累積値として計測することができる。なお、カウンタ56〜56にはコンソール3のコントローラ33からスタート・ストップ端子T2を介して起動及び停止の信号が与えられる。一定時間の計測は、カウンタ自身が有するリセット回路を使って外部から管理される。
このようにして、リセットされるまでの一定時間の間に、複数のカウンタ56〜56により、検出器12に入射したX線の粒子数W(又は、Uと表記)が、収集画素Sn毎に且つエネルギ領域毎に計測される。このX線粒子数Wの計数値は、カウンタ56〜56のそれぞれからデジタル量の計数データとして並列に出力された後、シリアル変換器59によりシリアルフォーマットに変換される。このシリアル変換器59は残り全ての収集チャンネルのシリアル変換器59〜59とシリアルに接続されている。このため、全てのデジタル量の計数データは、最後のチャンネルのシリアル変換器59からシリアルに出力され、送信端T3を介してコンソール3に送られる。コンソール3では、インターフェース31がそれらの計数データを受信して第1の記憶部34に格納する。
そこで、データプロセッサ35は、入力器37からの操作者の指令に応じて、第1の記憶部34に格納されている計数データを読み出し、この計数データを用いて画像、例えば歯列に沿ったある断面のX線透過画像(パノラマ画像)を例えばトモシンセシス法の元で再構成する。各収集画素Snから複数のエネルギ領域ER1〜ER3の計数データが得られている。このため、このパノラマ画像の再構成において、データプロセッサ35は、エネルギ領域毎の計数データに適度な高い重み付けを施し、これを相互に加算する。これにより、収集画素Sn毎に、収集されたデータが作成される。これにより、全収集画素Snから収集したX線スキャンに伴うデータが揃うので、これらの収集データをトモシンセシス法で処理してパノラマ画像を再構成する。このパノラマ画像は例えば表示器36で表示される。勿論、重み付けを施さずにパノラマ画像を再構成してもよい。
なお、本実施例では、上述したN個の収集画素Snに対応した半導体セルS及びデータ収集回路51nはASICによりCMOSで一体に構成されている。勿論、このデータ収集回路51nは、半導体セルSの群とは互いに別体の回路又はデバイスとして構成してもよい。
コンソール3は、図6に示すように、信号の入出力を担うインターフェース(I/F)31を備え、このインターフェース31にバス32を介して通信可能に接続されたコントローラ33、第1の記憶部34、データプロセッサ35、表示器36、入力器37、キャリブレーション演算器38、第2の記憶部39、ROM40、及び閾値付与器41を備えている。
コントローラ33は、ROM40に予め与えられたプログラムに沿ってガントリ2の駆動を制御する。この制御には、X線管21に高電圧を供給する高電圧発生装置42への指令値の送出、及び、キャリブレーション演算器38への駆動指令も含まれる。第1の記憶部34は、ガントリ2からインターフェース31を介して送られてきた収集データであるフレームデータ、及び、後述する参照画像のデータを保管する。また、この第1の記憶部34には、後述する物質同定のためのデータベースDBも格納されている。
データプロセッサ35は、コントローラ33の管理の下に、ROM40に予め与えられたプログラムに基づいて、第1の記憶部34に保管されたフレームデータを公知のシフト・アンド・アッド(shift and add)と呼ばれる演算法に基づくトモシンセシス法で処理し、被験者Pの口腔部の歯列のX線透過像(断層像を作成する。表示器36は、作成される透過像の表示や、ガントリ2の動作状況を示す情報及び入力器37を介して与えられるオペレータの操作情報の表示を担う。入力器37は、オペレータが撮像に必要な情報をシステムに与えるために使用される。
また、キャリブレーション演算器38は、コントローラ33の管理の下に、ROM40に予め内蔵されているプログラムの下で動作し、後述するデータ収集回路で収集画素Sn毎のエネルギ弁別回路毎に与える、エネルギ弁別のためのデジタル量の閾値をキャリブレーションする。
閾値付与器41は、コントローラ33の制御の下で、撮像時に第2の記憶部39に格納されているデジタル量の閾値を収集画素毎に且つ弁別回路毎に呼び出して、その閾値を指令値としてインターフェース31を介して検出器22に送信する。この処理を実行するため、閾値付与器41はROM40に予め格納されたプログラムを実行する。
コントローラ33、データプロセッサ35、キャリブレーション演算器38、閾値付与器41は共に、与えられたプログラムで稼動するCPU(中央処理装置)を備えている。それらのプログラムは、ROM40に事前に格納されている。
次に、本実施形態において、例えばコントローラ33の制御下において、データプロセッサ35により実行される物質同定の処理を説明する。
データプロセッサ35は、図7に示す物質同定のための処理を行う。この図7に示す処理は、パノラマ撮像装置を用いて被検体の顎部を撮像し、その結果得られたパノラマ画像から顎部の中の所望の部位の物質の種類を同定するために実行される。
図7に示す処理は、以下の手順で実行される。
ステップS1: オペレータは、顎部の組織に非常に近い物理的性質を有する参照部材RM(図1参照)を撮像空間の撮影位置に設置する。コントローラ33は、パノラマ撮像装置を駆動させ、この参照部材RMの複数のフレームデータを検出器22により前述したように高速で収集する。このフレームデータの夫々を成す画素の値は参照部材RMを透過したX線の透過量を示すデータである。この透過データはエネルギ領域ER1、ER2,ER3(図4参照)の夫々における光子計数値(以下、単に計数値)U1,U2,U3を示す。
参照部材RMは、一定厚さで一定密度をなし、そのCT値が顎部のCT値に調整された素材で、例えば、株式会社京都科学製のタフボーンファントム7cm相当などの部材が使用される。収集された画素毎の光子計数値U1,U2,U3は、検出器22の検出素子同士の検出特性上のバラツキを減らすために使用する参照データとして第1の記憶部34に格納される。
この参照データの収集は、物質同定を行う度に、又は、適宜なタイミングで定期的に又は不定期に行うようにすればよい。
ステップS2: 次いで、参照部材RMを用いて収集した複数のフレームデータを用いてトモシンセシス法に依る参照画像を再構成し、その画像データを得る。具体的には、かかる複数のフレームデータのそれぞれについて、画素毎の計数値U1,U2,U3を相互に加算し、その加算値(=U1+U2+U3)を画素値とする複数のフレームデータに変換する。この変換した複数のフレームデータにトモシンセシス法を実施して、顎部の所望の断面のパノラマ画像を再構成する。これにより、各画素の画素値=U1+U2+U3となるフレームデータにシフト&アッド法(つまりトモシンセシス法)を実施した参照画像のデータが、後述する規格化処理のために得られる。この参照画像のデータは、参照部材RMを撮像したときの計数値の加算値=U1+U2+U3を反映した画素値(この画素値を便宜的に「U1+U2+U3」と表記する)を画素毎に有している。この参照画像データは第1の記憶部34に保管される。
上述した所望断面は、図8に示すように、顎部の歯列THに沿った断面D1でもよいし、また前歯に障害陰影として映る頸椎KTなどの歯列以外の部位を通る断面D2であって頸椎に焦点を合わせた画像であってもよい。また頸椎はパノラマ画像の左右両側面にも映像化されるので、D3のように前歯と頸椎を結ぶ中心線に沿った焦点断層面を選択してもよい。この場合、左右両側面の頸椎を鮮明に且つ安定して映し出して解析することができる。
この所望断面は、オペレータとコントローラ33との間でインターラクティブに設定することもできる。例えばデフォルト値として設定されている断面に沿って再構成したパノラマ画像を一度、表示器36に表示させる。その上で、オペレータがコントローラ33との間でインターラクティブに断面を選択することができる。トモシンセシス法によれば、周知のように、フレームデータを重ねて加算するときのシフト&アッド量を変えることで、再構成する断面の位置を変えることができる。
ステップS3: 次に、被検体Pの顎部を実際に撮像する。オペレータは、被検体Pの顎部をチンレスト14に置き且つ顎の角度など極力緻密な位置決めを行う。次いで、オペレータからの指令に呼応して、パノラマ撮像装置は、X線管21及び検出器22の対を顎部の周りに回転させる。X線管21から曝射されたX線は顎部を透過し、その透過X線が検出器22により検出される。この検出は、かかる回転の間に高速レート(例えば300fps)で実行され、検出器22により検出されるX線透過データが2次元のフレームデータとして高速に収集される。この透過データも、画素毎の、エネルギ領域ER1、ER2,ER3の夫々における計数値W1,W2,W3として収集される。収集された画素毎の透過データ(光子計数値W1,W2,W3から成る)も例えば第1の記憶部34に一時的に保管される。
ステップS4: 次いで、ステップS2と同様に、被検体Pの顎部に対して収集した複数のフレームデータを用いてトモシンセシス法に依る実際の画像を再構成し、その画像データを得る。
つまり、参照画像データの取得と同様に、複数のフレームデータのそれぞれについて、画素毎の計数値W1,W2,W3を相互に加算し、その加算値(=W1+W2+W3)を画素値とする複数のフレームデータに変換する。この変換した複数のフレームデータにトモシンセシス法を実施して、参照画像を撮影したときの所望断面と同一の断面のパノラマ画像を再構成する。これにより、各画素の画素値=W1+W2+W3となるフレームデータにシフト&アッド法を施した実際の画像のデータが得られる。この画像データは、計数値の加算値=W1+W2+W3を反映した画素値(この画素値を便宜的に「W1+W2+W3」と表記する)を画素毎に有する。この画像データも、画素毎の生の計数値W1〜W3を示すデータと共に、第1の記憶部34に保管される。
なお、被検体Pの実際の再構成に付す断面は、上述したように、参照画像データを収集したときの断面と同一であるか又は近い位置であることが望ましたい。
ステップS5: 次に、検出器22における半導体セルS〜Sから処理回路51〜51、すなわち検出素子群同士の検出特性のばらつきを抑えるための処理(以下、規格化(又は正規化)処理と呼ぶ)が行われる。これは、顎部の実際のパノラマ画像の各画素値を参照画像の各画素値で除算をすることで、規格化された顎部のパノラマ画像が得られる。
この規格化処理は、具体的には、
(W1+W2+W3)/(U1+U2+U3)
の除算が画素毎に実行される。これにより、規格化されたパノラマ画像データが作成される。
なお、この規格化処理については、
W1/U1+W2/U2+W3/U3
の除算を行うようにしてもよい。
この規格化されたパノラマ画像のデータも第1の記憶部34に保管される。
ステップS6: このように規格化されたパノラマ画像が表示器36に表示される(図9参照)。なお、本実施形態において図9に示すパノラマ画像の絵は実際に撮影した画像を示すものではなく、単に白黒の濃淡を付して顎部の一断層面の画像を模式的に表したものである(以下の説明においても同様である)。
ステップS7: さらに、規格化された顎部のパノラマ画像の統計的なノイズを減らす処理(以下、ノイズ低減処理と呼ぶ)が実行される。本実施形態では、後述するように、ビームハードニングの程度を示す情報を求めるための除算が行われる。このため、フォトンノイズを含む統計的変動要素が助長されると、この除算値の精度が下がる。そこで、ここでは、そのような統計的変動要素を低減させるノイズ低減処理が行われる。このノイズ低減処理としては、複数の画素を一つの画素に束ねる処理、多点スムージング処理、ガウシアンフィルタリング処理などの公知の処理である。特に、画素を束ねる処理は、例えば隣接する4つの画素値(X線透過データ)を束ねて(つまり相互に加算・平均して)、その束ねた画素値を持つ1つの画素で置換する処理である。
上記ステップS6及びS7の処理を経ると、表示器36に表示されている顎部のパノラマ画像は絶対値化されて画素間の検出特性のばらつきの影響が排除されるともに、その統計的なノイズも低減される。
ステップS8: 次いで、コントローラ33は、オペレータとの間でインターラクティブに、パノラマ画像(被検体画像)上の所望位置に所望のサイズ及び形状のROI(第1の関心領域)を1つ又は複数、設定する(図10参照)。このROIの形状及び位置の採り方は重要である。その理由は、後述するコンパートメントモデルとして、本発明を好適に適用可能なようにすることが重要であることに因る。このROIは、オペレータが入力器37を操作して指令する指令信号に応じて手動で行ってもよいし、半自動で行ってもよい。
ステップS9: 次いで、オペレータの指示に応じて、コントローラ33は、ビームハードニング情報を演算するためのパラメータの情報を受け付ける。このパラメータとしては、図4に示すエネルギ領域ER1、エネルギ領域ER2、及びエネルギ領域ER3それぞれの範囲において計数されるX線光子の数、すなわち計数値W1,W2,W3に対する、W2/W1,W3/W1,W3/W2のうちの少なくとも1つである。このパラメータは例えばW3/W1など、1つであってもよい。この場合は、後述するように、X線吸収情報を縦軸とし、且つ、ビームハードニング情報を例えばW3/W1として表す1つの横軸からなる2次元散布図となる。これに代えて、後述するように、2つ又はそれ以上のパラメータを指定することもできる。
なお、上述したビームハードニング情報の与え方を一般化して表現すると、複数のエネルギ領域それぞれにおけるパルス信号の計数値をWi(iは前記複数のエネルギ領域のうちの、撮像に使用可能な最も低いエネルギ領域からの順番を示す(iはi≧1で正の整数))としたときに、ビームハードニング情報として、W(j)/W(i)(j>i:jは正の整数)の何れか1つ又は複数として与えられる。
ステップS10: いま表示されているパノラマ画像上で指定した1つ又は複数のROI内の、上記2次元散布図のデータを作成する。この散布図データは、上述したように、エネルギ領域毎に計数された計数値W1〜W3に基づくX線吸収情報(X線透過情報でもある)を縦軸にとり、指定したパラメータに応じたビームハードニングを示す情報(ビームハードニング情報)を横軸にとった2次元散布図である。ビームハードニング情報は例えばW3/W2、又は/及び、W2/W1である。
この散布図データの作成を詳述する。データプロセッサ35は、いま表示されているパノラマ画像上の各ROIを構成する複数の画素夫々の画素値:(W1+W2+W3)/(U1+U2+U3)を第1の記憶部34から読み出す(図11のステップS101)。次いで、この読み出した画素値の自然対数を演算する(同図、ステップS102)。つまり、Ln{(W1+W2+W3)/(U1+U2+U3)}が画素毎に演算される。
さらに、第1の記憶部34に格納されている計数値W1〜W3に基づいてビームハードニング情報としてのパラメータW3/W2の値を、各ROIを構成する複数の画素それぞれに対して演算し(ステップS103)、その自然対数Ln(W3/W2)を同様に画素毎に演算する(ステップS104)。これにより、2次元散布図のデータが作成されたことになる。
ステップS11:そこで、作成した散布図データを使って表示器36に2次元散布図を表示する。図12に、その一例を模式的に示す。この2次元散布図の横軸はビームハードニング情報Ln(W3/W2)の値であり、その縦軸はX線吸収情報{Ln(W1+W2+W3)/(U1+U2+U3)}の値である。このため、2次元散布図には、ROIを構成する複数の画素それぞれが有するX線吸収情報が、横軸、すなわちビームハードニング情報Ln(W3/W2)に応じてマッピングされている。
この2次元散布図において、その横軸の右側に進むほど、ビームハードニングが強くなることを示している。つまり、ビームハードニング情報(W3/W2)の値が大きくなる。これは物質を厚くするほど、そこを通るX線に対する吸収はより大きくなる。つまり、ビームハードニングがより強くなる。さらに、物質の厚さは同じでも、その密度が高いほど、そこを通るX線のビームハードニングがより強くなる。
ステップS12:次いで、表示されている2次元散布図のマップされた点を通る近似直線を設定し、その近似直線を2次元散布図に重畳表示する。この近似直線は、X線吸収情報及びビームハードニング情報を示すマップ点の分布の、散布図上の位置を代表するもので、その分布の特徴量を表している。この近似直線は、例えば最小二乗法で設定される。縦軸及び横軸とも自然対数目盛で表示しているので、ビームハードニングの程度の違い応じて散布しているマップ点は直線で近似できる。この重畳表示の様子を図13に模式的に示す。
なお、上記分布の重心位置を演算し、その重心位置をその分布の特徴量として用いるようにしてもよい。
ステップS13: 設定した傾きの値を予め用意してあるデータベースDBに参照させる。この参照により、上記設定した直線の傾きが同一の傾きを持つ物質の種類が同定される。データベースは例えば第1の記憶部34に置かれており、ユーザが予め物質の種類毎に2次元散布図から決まる直線の傾きを示すデータが参照用として格納されている。このデータベースDBを、複数種類の物質A〜Eについて図14に模式的に例示する。
この直線の傾きが物質毎に異なるという事実は、本発明者等の研究により知見されたものである。この事実は、X線パノラマ撮像装置による物質同定の場合、後述する最適条件のコンパートモデルが成立する状況にあれば、確実に、その傾きで物質の種類を同定することができる。
ステップS14: この参照の結果、判明した物質の種類を表示器36に表示せる。これにより、ROIにより指定された部位に存在する物質の種類が同定され、その同定結果がユーザに提供される。例えば、ROIで指定した部位は、エナメル質である、などの情報が提供される。
[X線吸収とビームハードニングとの関係について]
図15に、本発明者等が行ったX線吸収とビームハードニングの関係を示す。同図は、BE−N(顎部の内骨の物性に相当するタフボーン(登録商標))、BE−H(顎部の緻密骨の物性に相当するタフボーン(登録商標))、及び、アルミニウムの3種類の材料それぞれの厚さを変えて、X線の吸収とそのビームハードニングの関係をグラフ化したものである。縦軸及び横軸は、前述した図12,13と同様の次元を採っている。この結果、それぞれにプロット点は直線になることが分かった。つまり、直線の傾き自体が物質固有のものであることが分かった。なお、グラフにおける直線の位置は、観察対象の物質に重畳する一定厚さ及び一定密度の他の物質によって移動(オフセット)する。このため、直線がグラフ上のどこに現れても直線の傾きを求めれば物質は同定可能である。
このことから、本実施形態に係るX線パノラマ撮像装置で撮像される画像の性質を理解して、この画像を物質同定に利用すればよい。つまり、X線でスキャンしたときにボケた一定厚と見なせる障害陰影と最適焦点化した断面の位置に存在する、同定したい物質とが重畳しているという被写体側の条件を近似的でも満たすときに、物質同定が可能なる。この条件下であれば、X線を物質に照射してエネルギ領域毎の光子計数値(W1〜W3)に基づく画像から、物質を同定することができる。本実施形態で得られるパノラマ画像の場合、例えば顎部については下記のような部位が上記条件を満たす。
(1)パノラマ画像の左右両側面に写る図8の断面D3で再構成した頸椎部(この場合、障害陰影は皮膚・筋肉)、
(2)金属充填物も含む歯列部とその周辺の歯根膜、歯槽骨(この場合、障害陰影は口腔部筋肉、舌、皮膚、空気層、反対側の顎骨など)、
(3)下顎部(この場合、障害陰影は皮膚、筋肉、反対側の顎骨)、
(4)頸動脈が石灰化を起こしている場合(この場合、障害陰影は皮膚、筋肉)、
などである。
上記のような部位では、画像内には様々な物質が複雑に重なって写り込むので、上記被写体側の条件が成立するようにROIを設定し、そのROI内の注目物質を同定することが望まれる。逆に言えば、そのような被写体側の条件が成立する部位については、本発明に基づく物質同定の手法は非常に有効である。
このため、対象となる物質がどのような内部状態にあるときに、上述した被写体側の条件を満足させることができるという事実をモデル化することは重要である。そこで、そのことを、本発明者等はコンパートメントモデルということでまとめたので、これを以下に記す。但し、このコンパートメントモデルの考えは、トモシンセシス法に依るパノラマ撮像のときに有効であり、本発明に必須という訳ではないことは前述した通りである。
[コンパートメントモデルについて]
ここで、本発明者等が知見し実証した物質同定のためのコンパートメントモデルについて説明する。
最適条件のコンパートメントモデルは、図16に示す物質A又は物質Bが単独に存在するモデル1である。このコンパートメントモデル1は、パノラマ画像の場合には、そのトモシンセシス法の原理から、障害陰影がない場合に相当するが、パノラマ画像では実際には、このような状況はあまりない。しかし、この場合には、その物質A(又は物質B)の厚さ又は密度がその部位の位置(例えば図16中の横方向の位置)により変化していることが殆どである。このような変化があれば、喩え、その厚さが未知であっても、図17に示すように、前述した2次元散布図にマッピングすると、一定の直線AL,BLによる近似が可能であることが分かった。しかも、それらの直線AL,BLの傾きθA,θBは物質A,Bに固有のものであることが実験などにより判明した。
最適条件に適うコンパートメントモデル2は、図18に示すように、2種類の物質A,B(のみ)が互いに重なって存在しているモデルである。つまり、厚さそのものの値は未知だが厚さ及び密度が一定な物質Aに、厚さ及び密度の少なくとも一方が部位に因り変化する物質Bが重なっているか(ケース1)、その反対の状況で、物質Bに物質Aが重なっている場合である(ケース2)。このコンパートメントモデル2の場合、背景に障害陰影があるパノラマ画像に喩えることができ、上記(1)〜(4)のような部位がコンパートメントモデル2で説明できる。ケース1で言えば、例えば、歯列が物質Bであり、口腔部筋肉、皮膚、空気層などが物質Aである。この場合、背景は小さな領域を考えればトモシンセシス法の性質(所望断面以外はぼかす(焦点を当てない))からほぼ厚さ及び密度が一定な物質の写り込みであると想定可能である。つまり、顎部のパノラマ画像の場合、このコンパートメントモデル2をベースに、その顎部に存在する所望部位の物質(セメント質、骨部、骨部に存在する別物質など)を同定できる。
このコンパートメントモデル2の場合、図19に示すように、2次元散布図上で設定される直線は、ケース1の場合には物質Bを示す直線BLであり、ケース2の場合には物質Aを示す直線ALである。つまり、厚さ及び密度の少なくとも一方が部位に因り変化する物質B(ケース1)、物質A(ケース2)の直線が重なった物質を代表する。しかしながら、厚さ及び密度が一定な物質A(ケース1)及びB(ケース2)がビームハードニングに全く関与しない訳ではない。図19から分かるように、ケース1の場合、厚さ及び密度が一定な物質Aの関与がオフセット分として表れるので、その重なり物質全体の直線はAL´となる。一方、ケース2の場合も、厚さ及び密度が一定な物質Bの関与がオフセット分となり、その重なり全体の直線はBL´となる。このため、このコンパートメントモデル2では、直線AL´又はBL´の傾きを求めれば、物質B(ケース1の場合)又は物質A(ケース2の場合)の種類を同定することができる。
なお、コンパートメントモデル3を考えることができる。このモデル3は、図20に示すように、物質A,Bが互いに重なっているのであるが、物質A,Bの最厚部の厚さもトータルの厚さも未知である。つまり、厚さが不定の多重構造の物質は、図21に示すように、ビームハードニング情報を示す直線が一意に定まらないので、同定は困難である。
以上のことから、パノラマ画像の場合、顎部に存在する様々な物質(材料)の厚さは未知であるので、上述したコンパートメントモデル1〜3のうち、コンパートメントモデル1,2に置換し又は近似させて物質同定可能な部分、領域は多い。つまり、顎部には頸椎や顎骨などの大きな部位があるが、それらはトモシンセシス法に依る断層効果でボケるため、パノラマ画像上で局所の領域(特に、横長の領域)に限定して考えると、それらの部位は厚さ一定の障害陰影であると近似できる。逆に、パノラマ画像には、そのように厚さ一定の領域でると近似できる部分は多いので、その領域を適切に選択すれば、そのような厚さ一定の障害陰影に重なっている物質を同定できるのである。
なお、オペレータが本実施形態に係るX線パノラマ撮像装置を利用して物質同定を行うときには、上述したコンパートメントモデル1,2を念頭において同定部位を選択すると便利である。そこで、コンパートメントモデル1,2に適した顎部の同定部位をまとめてみると以下のようになる。
(11)コンパートメントモデル1に基づいた下顎左右辺縁上の顎骨から骨質と骨量測定。
(12)コンパートメントモデル2に基づいた歯に詰めた詰め物の材料名の特定。
(13)コンパートメントモデル2に基づいた歯の治療充填材の材料名の特定。
(14)コンパートメントモデル2に基づいた上顎洞炎の検出。
(15)コンパートメントモデル2に基づいたエナメル質の強度測定。
(16)コンパートメントモデル2に基づいた上顎洞内も含めた骨質と骨の構造の画像化。
(17)コンパートメントモデル2に基づいた歯の質とその構造の画像化。
(18)コンパートメントモデル2に基づいた頸椎の骨質の解析と骨粗鬆症のレベルの判定。
(19)コンパートメントモデル2に基づいた歯周病などにおける顎骨の質変化の判定。
(20)コンパートメントモデル2に基づいた頸動脈石灰化の有無の判定。
このように本実施形態によれば、パノラマ撮像装置を使って、予め定めた複数のエネルギ領域ER1〜ER3それぞれに飛び込むエネルギを有するX線の光子が計数される。この計数値W1〜W3に基づいて再構成される、規格化された、即ち、画素間の検出特性の均一化が図られたパノラマ画像のデータが得られる。この規格化されたパノラマ画像のデータを使って、同パノラマ画像の注目部位、つまり、ROIで指定した部位の画素毎の吸収情報及びビームハードニング情報が2次元散布図として作成される。
この散布図から、画素毎の吸収情報及びビームハードニング情報が成す特徴量が抽出される。つまり、2次元散布図の縦横の軸は対数(例えば自然対数)を採った量で表現されているので、その散布特性の特徴は直線で近似できる。このように特徴量が直線で表されるので、参照用のデータベース管理や同定処理が簡単化される。
このことは、近似した直線の傾きは物質独特のものであるという、本発明者等の知見及び検証の結果に基づくものである。このため、本実施形態の場合には、前述したコンパートメントモデル1,2が成立する部位である限り、注目部位(ROIの位置)に存在する物質の種類や性質を同定できる。この同定処理は、従来からも使用されている、エネルギ弁別方式を採用した光子計数型のパノラマ撮像装置で収集したデータを用いて行うことができる。これにより、上述した各種の応用を可能にするなど、精度良く且つ簡便に対象物に含まれる物質の種類を同定(又は識別、特定)できるので、かかるX線パノラマ撮像装置の有効性は一段と高まる。
また、本実施形態では、予め物質の厚さ(又は密度)を変えた複数種類の物質を表す直線近似値(傾き)に関するデータベースDBを参照データとして保有している(図14参照)。このため、2次元散布図上で画像が近似される直線の傾きから簡単な処理で物質の種類が特定される。なお、直線近似が済めば、オペレータはその直線の傾きを画面上で観察できるので、視覚的に直感で物質の種類を推定することも可能である。
また、この二次元散布図をベースにして、画像表示方法を工夫することで、様々な物質を画像で分かり易く表示できるようにすることもできる。
さらに言えば、平面像の場合、従来では吸収量の差は求められても、違う物質でも厚みが違えば、吸収量が同じに見える状況があり、吸収量だけでは物質の種類の特定が困難であった。しかし、本実施形態の場合、吸収量の情報とビームハードニングの情報とを組み合わせ、事前のデータベース化した近似直線の傾きデータを参照するだけで、パノラマ画像、すなわち平面像から簡単に物質の種類を同定できる。
但し、本発明の場合、適用可能なコンパートメントモデルは前述した如く限定されており、全く内部構造が想像できない対象(物質の組合せ、重なり具合、X線を透過しない物質があるなど)の内部の物質を同定することは未だ難しい。
しかし、多くの医療用途や、非破壊検査においては、組合せの微妙な違いや、その中に混じる異物を検査するなど、検査がある程度標準化されデータベース化可能な検査が多い。このような対象には本発明の物質同定の手法は非常に有効であり、CTスキャナを用いた方法より簡便で、X線の線量が少なく、処理時間も短いので、その応用範囲は広い。
特に、本装置の利点が発揮できる応用例は多数ある。例えば、整形、審美整形などの骨の解析ができる画像装置、骨塩定量+画像化装置、歯科用パノラマ撮影装置、歯科用X線透視装置、歯科用セファログラム撮影装置、歯科用口内撮影装置、マンモグラフィーや肺がん検診用のスキャナ(所望の断層面以外はボカすことが可能なトモシンセシス型の装置が特に適用範囲が広い)、動物用のスキャナ、動物実験用スキャナ、工業用製品のスキャナ(トモシンセシス型の装置が特に適用範囲が広い)などが挙げられる。
本実施形態の特徴及び利点を箇条書きにすれば以下のようになる。
(31)従来の積分型検出器では実現できなかった平面検出器(ライン検出器も含む)で物質の簡易的な同定が実現できる。これは物質の厚みが分からなくても物質を特定できる利点をもたらす。
(32)CTスキャナに比べて、圧倒的にX線線量が少なくても物質の識別が可能である。
(33)機構部が簡素でデータ収集部も簡素化できるためにコストが安価で実現できる。
(34)演算が複雑でなく、データベース化が可能なために、特徴抽出までの時間が短く高速でスループットが高い。
(35)CTスキャナと違い、小型で検査でき、検査機器の設置場所の自由度が高い。
(36)物質の同定のみでなく、高分解能の画像も同時に得られるという画期的な利点が得られる。従来イメージング機能を有し、かつ骨量、脂肪量などの物質同定が可能な装置はあるが、分解能が悪く、形態的な精査には耐えられないが、本装置では形態的な診断も併せて出来る。
また、本装置をトモシンセシス法の原理を応用した歯科用パノラマ装置に適用した場合には下記のような応用及び利点がある。
(41)歯のエナメル質、歯根膜、歯槽骨をクラスター解析により、歯周病の程度や部位をパノラマ画像にマッピングして表示することができる。
(42)パノラマ画像の左右両脇に投影される頸椎や、パノラマ画像の前歯に障害陰影として重畳する頸椎に本解析を施すことで、頸椎の骨密度の推定が可能である。またトモシンセシスの原理にて、頸椎側に焦点断層面を移動することで、頸椎の骨密度解析を行ったりもできる。
(43)歯の治療に用いる金属埋設物がどのような金属、セラミックス、ファイバー素材の同定することができる。
(44)顎骨の強度(骨密度)の推定、皮質骨と海綿骨の割合や、厚みを(42)と合わせて行うことで推定できる。
(45)上顎洞炎などの推定を左右差の比較と、膿のエネルギ情報の特徴を把握することで可能になる。
(46)歯のエネメル質の強度の推定。
(47)ウ蝕(虫歯)部の推定。
(48)歯石が付着している部分を推定し、色分けして表示。
(49)頸動脈の石灰化を図8のD3に沿った軌道上での再構成で特定する。
(50)パノラマ画像全体の全体の散布図の形と値ならびに部位別の特性から、統計的な手法を用いて複数の病変、例えば、歯周病と頸動脈石灰化の傾向を解析。
また、前述したもの以外にも、本発明に係る物質同定装置及び物質同定方法(撮像システムの作動方法)を以下のものに応用してもよい。
(61)トモシンセシスを採用したマンモグラフィー装置(カルシウム、腫瘤の同定)。
(62)トモシンセシスを採用した骨スキャナ(骨密度、腫瘍、金属種別の同定)。
(63)各種スキャナ型のインライン検査装置(異物の種別、実装物、内容物の妥当性判定)。
(64)空港などのセキュリティーやテロ対策用の危険物同定用のスキャナ(トモシンセシス断層撮影も含む)(液体爆弾、金属物などの同定)。
(65)ペット検査用のスキャナ(トモシンセシス断層撮影も含む)(体脂肪量、骨密度測定)。
(66)競走馬の足の検査用スキャナ(骨密度、疲労骨折の可能性測定)。
また本発明は、通常の連続スペクトラムを有するX線管のみならず、複数の単色X線を用いた場合は、複数のエネルギを持つガンマ線源でも同じような効果を得ることが可能である。
コンパートメントモデルの条件下での物質同定を記したが、トモシンセシス法においては、歯科用パノラマ装置で距離計測を三次元的に把握することを事前に行うような手法が提案されている(PCT/JP2011/60731:放射線撮像装置及び同装置に用いるファントム)が、これを用い予め定められた複数の仮想断層面を想定し、各キャリブレーションと計算で求められた想定面の吸収体とそれ以外の仮想断層面の吸収体の影響度を理論的あるいはキャリブレーションで割り当てることで、各仮想断層面の吸収値を計算で解くことも可能である。このような場合、CTスキャナで得られるような3次元空間上の断層面での吸収値を近似的に求めるようなことも出来る。このような場合はトモシンセシスでありながら、より正確な物質同定を行える可能性があり、精度の如何にもよるが、コンパートメントモデルで表す条件すら不要になるという画期的な効能をもたらし、応用範囲が格段に増える。本手法のメリットとしては下記が考えられる。
まず、CTスキャナではなく、トモシンセシスで3次元的な吸収値とビームハードニング情報を得ることができるために、検査に必要なX線量を大幅に減らせる。
また、CTスキャナのように回転構造体に同定対象物を入れる必要もなく、スキャナ構造を採用できるので、検査の自由度が高い。
さらに、CTスキャナでは金属が混在するような場合は、画像上においてメタルアーチファクトが金属物を中心に四方に現れるために、同定精度が得られない領域が大きいが、トモシンセシスでは金属を通過する領域に限定される。
(変形例)
上述した実施形態に係る構成は更に様々な形態に変形可能である。
(変形例1)
前述した実施形態では、図9に示す被検体画像、すなわち、再構成されたパノラマ画像の上に設定するROI(第1の関心領域)は1個として説明したが(図10参照)、必ずしも、これに限定する必要はない。このROIは2個以上であってもよい。この変形例を図22に示す。同図22は、パノラマ画像上で顎部に注目する2つの部位の2つのROI:ROI1,ROI2を設定するものである。この場合には、前述した図7及び図11の同定処理が、この2つのROI1,ROI2のそれぞれに対して実行される。この結果、図22に模式的に示すように2次元散布図が生成され、ROIの相対的な位置関係に応じて物質の特性が同定される。なお、ROIの数は3個以上であってもよい。
(変形例2)
また、例えば図23(A)のように、表示器36に表示された2次元散布図上で線状の関心領域(ROI:第2の関心領域)を設定するようにしてもよい。この場合、この線状の関心領域に相当する、被検体画像、すなわち例えば図23(C)に示すパノラマ画像上の画素の位置を特定し、この特定された画素から成る領域をカラー及び/又は輝度で変調し、この変調された画素の領域をパノラマ画像に重畳して表示してもよい。これにより、例えば図23(A)の線ROIに相当する部分が、同図(C)の画像部分I1,I2として表示される。図23(B)はデータプロセッサ35により実行される処理を示す。なお、第2の関心領域は複数個、設定し、各関心領域について上述した重畳表示を行ってもよい。これにより、2次元散布図上で興味ある吸収情報及びビームハードニング情報の領域が被検体の撮像部位のどこに相当するのか、フィードバックさせて確認させることもできる。
(変形例3)
さらに、図24(A)に示すように表示された散布図上で、当該散布図が描出する画像の階調を決める直線又は曲線を基準線R1として設定し、この基準線R1を散布図上で当該基準線R1に対して平行にシフトしてラインL1〜L4を設定する。ライン同士の間には同一諧調を割り当てる。例えばラインL1−L2間には諧調90(相対値)を、ラインL2−R1間には諧調100を、ラインR1−L3間には諧調110を。ラインL3−L4間には諧調120をいった具合である。これらの諧調は色相であっても輝度であてもよい。次いで、同一の諧調が割り当てられた散布領域の位置を特定し、その特定した散布領域に相当する被検体画像上の複数の画素の位置を特定する。特定された画素毎に設定されている諧調で表示する。この結果、図24(C)の画像部分I3〜I6として被検体画像に重畳された状態で表示される。これにより、散布情報に階調変化を与えた画像を表示でき、この場合も、散布図から被検体画像に情報をフィードバックして被検体部位を確認できる。図24(B)は、データプロセッサ35により実行される処理を示す。
この場合、基準線は、予め厚みを様々に変化させて取得した前記物質の傾きを表すデータから推定して設定するようにしてもよい。また、予め決められた直線、曲線、又は直線の組み合わせにしたがって最小二乗法の下で基準線を推定するようにしてもよい。
(変形例4)
図25に変形例4を示す。この変形例は、複数の患者の同一箇所における物質の状態の個人差を比較できるようにしたものである。例えば同図(A)に示す被検体画像の全体又は一部について同図(B)に示すように散布図を作成する。これには例えば顎骨の骨密度に関する物質状態などが好適であり、例えば同図(A)に示すROIの部分が選択される。このように複数の患者A〜Dの同一部位の散布図が用意される。この後、各散布図上で分散の絶対的な最大及び最小の座標値を決定し、その決定値を、X軸(ビームハードニング情報)及びY軸(吸収情報)の2次元グラフ上に表示する(この処理は例えばデータプロセッサ35により行われる:図25(C)参照)。この結果、図25(D)に示すように、統計値として予め決めてある基準領域と共に、患者A,B,C,Dの同一部位の物質の状態を比較しながら表示できる。
(変形例5)
次に、コンパートメントモデルに依らない物質状態の認識(同定)の手法として、歯周病の判断に供する同定情報を提供する例を説明する。
この場合、データプロセッサ35はオペレータとの間でインターラクティブに操作情報を受け付けながら、図26に示す処理を行う。最初に、データプロセッサ35は、図27(A)に示すように、被検体画像上で注目する歯の一部において、3つの細長い矩形状のROI:ROIAB、ROPDL,ROITRを歯槽骨、歯根膜、及び歯(セメント質)にそれぞれ設定する(ステップS31)。これら3つのROI:ROIAB、ROPDL,ROITRで画定される3つの領域について前述したと同様に散布図を作成する(ステップS32:図27(B)参照)。次いで、散布図上で、3つのROI:ROIAB、ROPDL,ROITRに対応するデータ分散の重心位置GAB、GPDL,GTRを演算して表示する(ステップS33:図27(B)または図27(C)参照)。次いで、2つの重心位置の間の距離DAB−PDL及びDPDL-TRを演算する(ステップS34)。すなわち、1つ目の距離DAB−PDLは、歯槽骨と歯根膜との重心位置GAB、GPDLの相互間の距離であり、2つ目の距離DPDL-TRは歯根膜と歯(セメント質)との重心位置GPDL,GTRの相互間の距離である。次いで、この2つの距離情報のうち、1つの距離DAB−PDLが予め基準値α(例えば0.8)よりも小さいか又は等しいか否かを判断する(ステップS35)。この判断でYESとなる、つまり、DAB−PDL αとなるときには、歯周病の疑いがあると判断し、その旨の情報を表示する(ステップS36)。反対に、DAB−PDL>αとなるときはそのような懸念は今のところ無いとの情報を出力する(ステップS37)。なお、この閾値αは統計的に決定できる。
このように処理することで、歯周病の疑いがある場合、分散図上では、歯槽骨と歯根膜の分散が互いに十分に離間しておらず、少なくとも一部重なって表示される(図27(B)参照)。つまり、距離DAB−PDLが予め基準値α以下である場合、歯槽骨と歯根膜が全体に又は部分的に近い性質を持つ物質として検出されることを意味する。
反対に、距離DAB−PDLが予め基準値αを上回る場合、分散図上で歯槽骨と歯根膜の分散が分離している(図27(C)参照)。この場合、現時点では歯周病の懸念はないか又は少ない。これは、歯槽骨と歯根膜を互いに異なる物質として同定していることになる。なお、歯周病の懸念が無いとの判断に、歯根膜の方の吸収が歯槽骨のそれよりも多いかどうかという情報を加えるとよい。
なお、このように、コンパートメントモデルを用いずに物質の同定や識別、変化などを同定する手法は種々考えることができる。
(変形例6)
前述した実施例では、ビームハードニング情報を示すパラメータを1つ設定する場合を中心に説明した。しかし、これに代えて、後述するように、2つ又はそれ以上のパラメータを指定することもできる。この場合、縦軸がX線吸収情報を示す、第1の横軸が例えばW3/W1からなる第1のビームハードニング情報を示し、且つ、第2の横軸(第1の横軸に直交)が例えばW2/W1からなる第2のビームハードニング情報を示す3次元散布図となる。この3次元散布図の概念を図28に示す。このようにビームハードニングを示す横軸を複数設けることで、3次元散布図は立体的な図として表される。
図28において、分布1及び分布2は共に、吸収情報Ln(A)と第1、第2の2つのビームハードニング情報Ln(W3/W1)、Ln(W2/W1)との3次元空間(Ln(A):Ln(W3/W1):Ln(W2/W1)と表記)における散布図を示す。ここで、値Aは、前述のように参照部材で正規化された吸収値を示し、詳細には、前述した図12〜図15などにおいて占示した値である。
この分布1及び分布2を一方の2次元空間(縦軸をLn(A)とし、横軸をLn(W3/W1)とする面)で見ると、同じに角度の直線で近似される分布3であるが、他方の2次元空間(縦軸をLn(A)とし、横軸をLn(W2/W1)とする面)で見ると、互いに違う形状で分布しているものとする。この場合、一方の2次元空間(Ln(A):Ln(W3/W1)で見ると分布1及び分布2は共に分布3のように同じ形状で表示されて差異は分からない。しかし、他方の2次元面(Ln(A):Ln(W2/W1)で観察すると、と互いに異なった形状で表示される。つまり、ビームハードニング情報に関して、分布1及び分布2は互いに異なる物質情報を有している。このため、第2の横軸Ln(W2/W1)を追加することで、ビームハードニング情報をより緻密に知ることができる。したがって、ビームハードニング情報から得られる物質の種類に関する情報を豊富化できる。
勿論、ノイズとの関係にも依るが、ビームハードニング情報を示す軸を3つ以上に増やした多次元空間での観察も可能である。
(変形例7)
なお、散布図は前述した2次元及び3次元のものに限らず、図29に示すように、1次元、つまりX線吸収情報だけでも物質を判断することができる。X線吸収情報を示す軸上での分布がどこにあるかに応じて、物質の種類や状態を判断するものである。これは、光子計数型のX線撮影である必要がないことを意味するが、本来、光子計数型はX線量に応じてより線形な出力特性を示すためにより積分型のX線検出器よりも定量的な評価が可能である。
(その他の変形例)
第1の関心領域、すなわち、再構成されたパノラマ画像上に設定するROIは、そのパノラマ画像上で、特定部位を別手段の画像処理で自動又は半自動で特定領域を決定し、この特定領域をROIとして設定するようにしてもよい。
また、2次元散布図上に設定する第2の関心領域(ROI)については、その散布図の画像上で2次元散布の類似グループを自動検出するクラスター技術を用いて自動または半自動で特定領域を決定し、この特定領域をその第2の関心領域として設定するようにしてもよい。
第1の関心領域は、被検体画像上で、特定部位を別手段の画像処理で自動又は半自動で特定領域を決定し、この特定領域を第1の関心領域として設定するようにしてもよい。
また、前述した実施形態は、物質同定の機能をパノラマ撮像装置に搭載して、この装置が物質同定装置及び物質同定機能を発揮するものとして説明した。しかし、本発明に係る物質同定装置及び物質同定方法(撮像システムの作動方法)は、X線CTスキャナ、トモシンセシス法を採用した各種の断層撮影装置、更には、X線スキャナと呼ばれるシステムで得られた画像を使って実施する装置及び方法であってもよい。図7に示すステップを、それらのX線CTスキャナ、各種の断層撮影装置、X線スキャナシステムの中で処理するように構成し、機能的に一体型の装置を提供することができる。
また、それらのX線CTスキャナ、各種の断層撮影装置、X線スキャナシステムによりデータ収集を行う場合、図7に示すステップを実行可能なコンピュータ装置を物質同定装置として採用することもできる。このコンピュータ装置は画像収集側の装置と通信可能に接続された別体であり、収集データをオンラインで受信することがよい。勿論、収集データを可搬型の記録媒体に収めて、スタンドアロン式のコンピュータ装置で処理するようにしてもよい。
1 歯科用のパノラマ撮像装置(物質同定装置を機能的に含む装置)
21 X線管(放射線源)
22 検出器
33 コントローラ
34 第1の記憶部
35 データプロセッサ
36 表示器
37 入力器
40 ROM
51 データ収集回路
54 比較器
55 エネルギ領域振分回路
56 カウンタ
57 D/A変換器
58 ラッチ回路
59 シリアル変換器
C 半導体セル(画素)
Sn 収集画素
DSi 弁別回路
CNn 収集チャンネル

Claims (10)

  1. 1次元又は2次元の配列の複数の画素を形成し且つ当該画素のそれぞれにX線源から入射したX線を光子と見做して検出し当該光子のエネルギに応じた電気量のパルス信号を出力する複数の検出素子を有する光子計数型の検出器と、
    前記複数の検出素子それぞれからの前記パルス信号の計数値を2つ以上のエネルギ領域の夫々について収集する複数のデータ収集回路と、
    被検体を撮像したときの前記パルス信号の前記計数値に基づいて前記X線の吸収情報に応じた被検体画像を作成する被検体画像作成手段と、
    を備えた撮像システムにより作成された前記被検体画像を用いる装置であって、
    前記X線により厚さ及び密度の均一な物質を撮像して前記パルス信号の前記計数値に基づいた参照画像を作成する参照画像作成手段と、
    前記参照画像の画素値で前記被検体画像の画素値を画素毎に除算して当該被検体画像の画素値を規格化する規格化手段と、
    この規格化手段により規格化された画素値から、前記吸収情報を与えた軸と、前記X線のビームハードニング情報を与えた1つ以上の軸とからなる散布図を作成する散布図作成手段と、
    この散布図作成手段により作成された前記散布図から、前記被検体の撮像された部分に在る物質の種類を同定するための同定情報を取得する同定情報取得手段と、を備えたことを特徴とする物質同定装置。
  2. 前記散布図作成手段は、前記複数のエネルギ領域それぞれにおける前記パルス信号の計数値をWi(iは前記複数のエネルギ領域のうちの、撮像に使用可能な最も低いエネルギ領域からの順番を示す(iはi1で正の整数))としたときに、前記ビームハードニング情報として、W(j)/W(i)(j>i:jは正の整数)を与えることを、特徴とする請求項1に記載の物質同定装置。
  3. 前記複数のエネルギ領域は3つのエネルギ領域から成り、前記ビームハードニング情報はW3/W2又はW3/W1又はW2/W1の何れかであることを特徴とする請求項1〜2の何れか一項に記載の物質同定装置。
  4. 前記規格化手段により規格化された前記被検体画像に含まれる統計的ノイズを軽減させるための処理を行うノイズ軽減手段を備える、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の物質同定装置。
  5. 前記散布図作成手段は、前記吸収情報を与えた1つの軸と、前記X線のビームハードニング情報を与えたもう1つの軸からなる2次元の散布図を作成する手段であり、
    前記散布図作成手段は、前記2つの軸が示す前記吸収情報及び前記ビームハードニング情報それぞれを示す値の自然対数を演算する手段を含み、前記吸収情報及び前記ビームハードニング情報それぞれの自然対数値で前記散布図を作成するようにしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の物質同定装置。
  6. 前記被検体画像作成手段が作成した前記被検体画像を表示する被検体画像表示手段と、
    この被検体画像表示手段により表示された前記被検体画像に第1の関心領域を設定する第1の関心領域設定手段と、
    前記被検体画像に前記第1の関心領域を重畳して表示する第1の関心領域表示手段と、
    前記散布図作成手段は、前記第1の関心領域内のみに対応する前記散布図を作成するようにしたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の物質同定装置。
  7. 前記散布図作成手段は、
    前記散布図を表示する散布図表示手段と、
    この散布図表示手段により表示された前記散布図上に第2の関心領域を設定する第2の関心領域設定手段と、
    前記被検体画像上に前記第2の関心領域のみに相当する画素を演算する画素演算手段と、
    この画素演算手段により演算された画素から成る部分を変調して前記被検体画像に重畳表示する重畳表示手段と、を備えた請求項1〜6の何れか一項に記載の物質同定装置。
  8. 前記散布図作成手段は、
    前記散布図表示手段により表示された前記散布図に、当該散布図が描出する画像の階調を決める直線又は曲線を基準線として設定する基準線設定手段と、
    この基準線設定手段により設定された基準線を、前記散布図上で、当該基準線に対して平行にシフトして階調変化を与えた画像を表示する階調変化画像表示手段と、を備え、
    前記同定情報取得手段は、前記階調変化画像表示手段により表示された前記画像に基づいて前記同定情報を取得するように構成したことをと特徴とする請求項7に記載の物質同定装置。
  9. 前記検出器は、前記2次元の配列の複数の画素を形成した検出器であり、
    前記撮像システムは、この検出器を用いてトモシンセシス法で前記被検体の断層撮影を行うX線撮像装置であり、
    前記物質同定装置は前記X線撮像装置に機能的に一体に組み込まれていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の物質同定装置。
  10. 1次元又は2次元の配列の複数の画素を形成し且つ当該画素のそれぞれにX線源から入射したX線を光子と見做して検出し当該光子のエネルギに応じた電気量のパルス信号を出力する複数の検出素子を有する光子計数型の検出器と、
    前記複数の検出素子の出力側に配列され且つ当該複数の検出素子それぞれからの前記パルス信号の計数値を2つ以上のエネルギ領域の夫々について収集する複数のデータ収集回路と、
    前記複数のデータ収集回路から、被検体を撮像した前記パルス信号の前記計数値を受信するプロセッサと、を備えた撮像システムの作動方法であって、
    前記プロセッサにおける被検体画像作成手段が、受信した前記計数値に基づいて前記X線の吸収情報からなる被検体画像を作成し、
    前記プロセッサにおける参照画像作成手段が、厚さ及び密度の均一な物質を前記X線により撮像して前記パルス信号の前記計数値に基づいた参照画像を作成し、
    前記プロセッサにおける規格化手段が、前記参照画像の画素値で前記被検体画像の画素値を画素毎に除算して当該被検体画像の画素値を規格化し、
    前記プロセッサにおける散布図作成手段が、前記規格化された画素値から、前記吸収情報を与えた軸と、前記X線のビームハードニング情報を与えた1つ以上の軸からなる散布図を作成し、
    前記プロセッサにおける同定情報取得手段が、前記作成された前記散布図から、前記被検体の撮像された部分に在る物質の種類を同定するための同定情報を取得する、ことを特徴とする撮像システムの作動方法
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