本明細書内では、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を総称して「光安定剤類」と呼び、分子内にポリエーテル基を持つカチオン界面活性剤を「ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤」と呼ぶ。
本発明の繊維用機能性付与剤は、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤のいずれか若しくは両方、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤及び水を含有することを特徴とする繊維用機能性付与剤である。本発明の紫外線吸収剤、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤及び水を含有する繊維用機能性付与剤は、皮膚に悪影響を与える紫外線から肌を守る紫外線防止効果を繊維に付与することができ、本発明のヒンダードアミン系光安定剤、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤及び水を含有する繊維用機能性付与剤は、光による変色や強度の低下を防ぐ光劣化防止効果を繊維に付与することができ、本発明の繊維用機能性付与剤に、紫外線防止剤及びヒンダード系光安定剤の両方を使用した場合は、上記両者の効果を繊維に付与することができる。
本発明で使用可能な紫外線吸収剤は、公知の紫外線吸収剤であれば得に問題はなく、限定されることはない。例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−t−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−オクチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−t−ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アセチルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビスフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジt−ブチルフェニル−3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ステアリル(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等のオキザニリド系紫外線吸収剤;N,N'−ジフェニル−N'−(4−エトキシカルボニルフェニル)ホルムアミジン、N'−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N−メチル−N−フェニルホルムアミジン、N,N'−ビス(4−エトキシカルボニルフェニル)−N−メチルホルムアミジン、N'−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N−(2'−メトキシフェニル)−N−メチルホルムアミジン、N−(4−n−ブトキシカルボニルフェニル)−N'−(4'−エチルカルボニル)−N−メチルホルムアミジン等のホルムアミジン系紫外線吸収剤;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル系紫外線吸収剤、クロム塩系紫外線吸収剤、又はキレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に現れることから、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤及びベンゾエート系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。また、上記に列挙した紫外線吸収剤を本発明の繊維用機能性付与剤に配合する際、必要に応じて1種又は2種以上を使用することができ、使用状況に応じて水に分散させた水分散物の形態で用いてもよい。尚、上記の紫外線吸収剤は、公知物質であることから、公知の方法で製造されたものであればよく、一部市販品として購入することも可能である。
本発明で使用可能なヒンダードアミン系光安定剤は、公知のヒンダードアミン系光安定剤であれば得に問題はなく、限定されることはない。例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルベンゾエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−〔(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジt−−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−[2−{3−(3,5−ジ−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、2−t−オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−t−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸/1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジール/β,β,β',β'−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノール縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸/2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/β,β,β',β'−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノール縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸/1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジール/トリデシルアルコール縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等が挙げられる。また、上記に列挙したヒンダードアミン系光安定剤を本発明の繊維用機能性付与剤に配合する際、必要に応じて1種又は2種以上を使用することができ、使用状況に応じて水に分散させた水分散物の形態で用いてもよい。尚、上記のヒンダードアミン系光安定剤は、公知物質であることから、公知の方法で製造されたものであればよく、一部市販品として購入することも可能である。
更に、本発明の繊維用機能性付与剤に配合する光安定剤類は、紫外線吸収剤を1種又は2種以上、ヒンダードアミン系光安定剤を1種又は2種以上、紫外線吸収剤を1種又は2種以上とヒンダードアミン系光安定剤を1種又は2種以上の3つの形態のうちいずれでもよいが、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用した形態の方が、紫外線防止効果と光劣化防止効果が相乗的に高まるため好ましい。光安定剤類の使用量は、特に制限されないが、本発明の効果が得られやすいことから、使用する光安定剤類の全合計量(すなわち、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤のいずれか若しくは両方の合計量)が、本発明の繊維用機能性付与剤に配合する水100質量部に対して0.01〜1.0質量部となるよう配合することが好ましく、0.03〜0.8質量部となるよう配合することがより好ましく、0.04〜0.5質量部となるよう配合することが更により好ましく、0.05〜0.3質量部となるよう配合することが尚更に好ましく、0.06〜0.2質量部となるよう配合することが最も好ましい。0.01質量部未満では、繊維に光安定剤類を付着させた際十分な効果が得られない場合があり、また、1.0質量部より多いとその量に見合った効果が得られない場合がある。
また、本発明の繊維用機能性付与剤の使用時における、光安定剤類の全合計量の濃度は、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.03〜0.8質量%がより好ましく、0.04〜0.5量%が更により好ましく、0.05〜0.3質量%が尚更に好ましく、0.06〜0.2量%が最も好ましい。
本発明で使用するカチオン界面活性剤は、分子内にポリエーテル基を持つ、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤でなければならない。本発明の繊維用機能性付与剤におけるポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の役割は、光安定剤類である紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を繊維に効率的に吸着させるという働きを示すことにある。分子内にポリエーテル基を持たないカチオン界面活性剤では本発明の効果は得られにくく、本発明の繊維用機能性付与剤に使用するには不適切と言える。また、カチオン界面活性剤には、アミンと酸性化合物から得られる塩及び第4級アンモニウム塩等が挙げられ、ゆえに、本発明で使用するカチオン界面活性剤としては、分子内にポリエーテル基を持つアミンと酸性化合物から得られる塩及び分子内にポリエーテル基を持つ第4級アンモニウム塩が挙げられるが、本発明の効果が得られやすいことから分子内にポリエーテル基を持つ第4級アンモニウム塩であることが好ましく、下記一般式(1)で表されるポリエーテル基含有第4級アンモニウム塩であることがより好ましい。
(式中、R1〜R3は、それぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R4は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表す。n(平均値)は1〜100の数を表し、Xはアニオン性原子、又はアニオン性基を表す。)
一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩のR1〜R3は、それぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、炭素数1〜4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられる。中でも、光安定剤類を繊維に吸着させる効果が大きいことから、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基が更により好ましい。
次に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩のR4は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、例えば、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基等が挙げられる。
また、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩のn(平均値)は1〜100の数を表し、中でも、光安定剤類を繊維に吸着させる効果が大きいことから、5〜80が好ましく、10〜50がより好ましく、14〜40が更により好ましく、25〜40が尚更に好ましく、40が最も好ましい。尚、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩の−(R4−O)n−HのR4は、前述した炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、n(平均値)個存在する−(R4−O)−は、単独の重合体であっても、前述した炭素数2〜4の2価の炭化水素基から選択される2種以上のブロック若しくはランダムの重合体であってもよい。中でも、単独重合体である場合、光安定剤類を繊維に吸着させる効果が大きいことから、R4がエチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基であることが好ましく、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基であることがより好ましく、プロパン−1,2−ジイル基であることが更により好ましい。ブロック若しくはランダムの重合体である場合、光安定剤類を繊維に吸着させる効果が大きいことから、R4がエチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基から選択される2種以上であることが好ましく、エチレン基とプロパン−1,2−ジイル基であることがより好ましく、エチレン基が5〜40mol%でプロパン−1,2−ジイル基が60〜95mol%であることが更により好ましい。
更に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩のXはアニオン性原子、又はアニオン性基を表し、アニオン性原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、アニオン性基としては、例えば、メチル硫酸基、エチル硫酸基等の炭素数1〜4のモノアルキル硫酸基、硫酸水素基、アセトキシ基、リン酸水素基、硝酸基及びグリコール酸基等が挙げられる。中でも、光安定剤類を繊維に吸着させる効果が大きいことから、ハロゲン原子、炭素数1〜4のモノアルキル硫酸基及び硫酸水素基が好ましく、塩素原子、臭素原子、メチル硫酸基及び硫酸水素基がより好ましく、塩素原子、臭素原子が更により好ましく、塩素原子が最も好ましい。
また、上記ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤を本発明の繊維用機能性付与剤に配合する際、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて1種又は2種以上を使用することができ、使用状況に応じて水に分散させた水分散物の形態で用いてもよい。更に、上記ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の製造・合成方法については、公知の方法であればどのような方法で製造・合成したものであってもよく、一部市販品として購入することも可能である。
本発明の繊維用機能性付与剤に使用するポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の使用量は、特に制限されないが、本発明の効果が得られやすいことから、本発明の繊維用機能性付与剤に配合する水100質量部に対して、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が0.01〜1.0質量部となるよう配合することが好ましく、0.03〜0.8質量部となるよう配合することがより好ましく、0.04〜0.6質量部となるよう配合することが更により好ましく、0.06〜0.4質量部となるよう配合することが尚更に好ましく、0.08〜0.2質量部となるよう配合することが最も好ましい。0.01質量部未満では、繊維に十分量の光安定剤類を付着させることができない場合があり、また、1.0質量部より多いとその添加量に見合う効果が認められない場合があり、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が高価であることから経済上好ましくなく、更には効率的に繊維へ光安定剤類を吸着させることができない場合がある。
また、本発明の繊維用機能性付与剤の使用時における、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の濃度は、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.03〜0.8質量%がより好ましく、0.04〜0.6量%が更により好ましく、0.06〜0.4質量%が尚更に好ましく、0.08〜0.2量%が最も好ましい。
また、本発明の繊維用機能性付与剤において、光安定剤類の使用量とポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の使用量は特に制限されないが、効率的に繊維に光安定剤類を吸着させることができることから、光安定剤類の使用量とポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の使用量をある一定のバランスで保つことが好ましい。本明細書にて、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する水に対する光安定剤類の好ましい使用量、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する水に対するポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の好ましい使用量はそれぞれ前述したが、ここで、光安定剤類とポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の使用割合について述べる。使用する光安定剤類の全合計量(すなわち、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤のいずれか若しくは両方の合計量)100質量部に対して、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤を10〜250質量部使用することが好ましく、50〜220質量部使用することがより好ましく、90〜200質量部使用することが更により好ましい。ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が10質量部未満であると、繊維への光安定剤類の吸着性の低下が起こる場合があり、これは処理廃液中の添加剤残量を増加させることにもなるため、環境への負荷が増大する恐れがある。また逆に、ポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が250質量部を超えると、繊維へ光安定剤類を吸着させる効果が低下する場合がある。
なお、本発明の繊維用機能性付与剤を製品として流通させる場合、又は保管する場合は、水の配合量が非常に少ない、すなわち、光安定剤類とポリエーテル基含有カチオン性界面活性剤が濃縮された組成物であってもよい。ただし、その場合でも、上記の配合比の範囲であることが好ましい。係る濃縮された組成物に使用時に水を添加して光安定剤類とポリエーテル基含有カチオン性界面活性剤の濃度を調整してよい。係る濃縮された組成物における、光安定剤とポリエーテル基含有カチオン活性剤の合計量の濃度は、通常、20〜90質量%であり、好ましくは50〜80質量%である。
更に、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する水は、その使用量に関して特に制限はないが、本明細書にて、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する水に対する光安定剤類の好ましい使用量、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する水に対するポリエーテル基含有カチオン界面活性剤の好ましい使用量をそれぞれ前述しており、これらに合わせた使用量で水を使用することが、本発明の効果が得られやすいため好ましい。水の使用量が少なすぎると本発明の繊維用機能性付与剤のエマルションの粘度が高くなりすぎ、処理剤として適さなくなる場合があり、また多すぎると、エマルションの長期安定性が低下したり、本発明の効果が得られない場合がある。
また、本発明の繊維用機能性付与剤で繊維を処理する際、生地の重さに対する繊維用機能性付与剤の使用量は、本発明の効果が得られる使用量であれば特に制限されないが、本発明の効果が得られやすいことから、生地1gに対して5〜100gの繊維用機能性付与剤を使用することが好ましく、10〜80g使用することがより好ましく、20〜50g使用することが更により好ましく、25〜35g使用することが尚更に好ましい。生地1gに対して繊維用機能性付与剤の使用量が5g未満であると、十分な有効成分を生地に吸着させることが困難となる場合があり、また、100gを超えると、添加量に見合った効果が得られない場合がある。
本発明の繊維用機能性付与剤は、公知の方法で製造したものであればどのような方法で製造しても問題はなく、特に制限はない。例えば、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する光安定剤類とポリエーテル基含有カチオン界面活性剤を同じ系中に加え撹拌しながら、徐々に水を加えていくことにより、光安定剤類を水中に乳化分散させ、目的の繊維用機能性付与剤を得ることができる。また、本発明の繊維用機能性付与剤に使用する光安定剤類とポリエーテル基含有カチオン界面活性剤を同じ系中に加えそこに水を一気に加え、ホモジナイザー等を用いて水中に乳化分散させ、目的の繊維用機能性付与剤を得ることもできる。
本発明の繊維用機能性付与剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、酸化防止剤、耐水化剤、防腐防菌剤、殺虫殺菌剤、分散剤、消泡剤、消臭剤、香料、増粘剤、粘性調整剤、染料、及び顔料等を含有又は混合してもよい。
また、本発明の繊維用機能性付与剤で処理した繊維とは、紫外線を防止する効果を示す繊維や光による劣化を防止する効果を示す繊維のことを指し、使用することができる繊維としては、例えば、植物繊維(セルロース高分子)である綿(コットン)及びカポック等の種子毛繊維;亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)及び黄麻(ジュート)等のじん皮繊維;マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻及び羅布麻(ロープーマ)等の葉脈繊維;ヤシ等の果実繊維;その他いぐさや麦わら等が挙げられ、動物繊維(タンパク質高分子)である羊毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル及びビキューナ等の獣毛繊維;絹(シルク)等の繭繊維;ダウン、フェザー及びその他の羽毛等の羽毛繊維;石綿及びアスベスト等の鉱物繊維等が挙げられ、無機繊維である金糸、銀糸及び耐熱合金繊維等の金属繊維;カーボン繊維及びシリコンカーバイド繊維等の炭素繊維;ガラス繊維、鉱さい(スラグ)繊維及び溶岩繊維等のケイ酸塩繊維等が挙げられ、精製繊維(天然高分子)であるリヨセル及びテンセル等のセルロース系繊維等が挙げられ、再生繊維(天然高分子)であるレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック、キュプラ(ベンベルグ)及び銅アンモニアレーヨン等のセルロース系繊維;カゼイン繊維、落花生タンパク繊維、とうもろこしタンパク繊維及び再生絹糸等のタンパク質系繊維;その他アルギン繊維、キチン繊維、マンナン繊維及びゴム繊維等が挙げられ、半合成繊維(半合成高分子)であるアセテート、トリアセテート及び酸化アセテート等のセルロース系繊維;プロミックス等のタンパク質系繊維;その他塩化ゴム、塩酸ゴム等が挙げられ、合成繊維(合成高分子)であるナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン及びアラミド等のポリアミド系繊維;ビニロン等のポリビニルアルコール系繊維;ビニリデン等のポリ塩化ビニリデン系繊維;ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系繊維;ポリエステル等のポリエステル系繊維;ポリアクリロニトリル繊維及びモダクリル繊維等のポリアクリロニトリル系繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維及び等のポリオレフィン系繊維;レクサ及びサクセス等のポリエーテルエステル系繊維;ポリウレタン、ポリクラール及びスパンデックス繊維等のポリウレタン系繊維等が挙げられる。中でも、植物繊維、動物繊維、半合成繊維及び合成繊維が好ましく、植物繊維、半合成繊維及び合成繊維がより好ましく、植物繊維及び合成繊維が更により好ましく、植物繊維が最も好ましい。また、使用状況に応じて、上記繊維にあらかじめ酸化防止剤、耐水化剤、防腐防菌剤、殺虫殺菌剤、分散剤、消泡剤、消臭剤、香料、増粘剤、粘性調整剤、染料、及び顔料等が付与された繊維であってもよく、本発明の効果に影響を及ぼすことはない。
更に、本発明の繊維用機能性付与剤で上記繊維を処理する際、糸の状態で処理してもよく、上記繊維を使用し生地とした状態で処理してもよい。生地には、たて糸とよこ糸が直角に交わり隣の糸と密着して平面的に連なった織物や、一本あるいは数本の糸がループを作りそのループに次の糸を引っかけて連続的に新しいループを作った編物等が挙げられるが、いずれの場合であっても本発明の繊維用機能性付与剤を使用することができる。
また、本発明の繊維用機能性付与剤で処理した繊維の具体的な処理方法としては、公知の方法であればどのような方法を用いてもよく、例えば、本発明の繊維用機能性付与剤に繊維を浸し、熱加工処理を行うことによって、繊維に紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を吸着させる等の加工方法が簡便かつ安価であるため好ましい。
例えば、上記の熱加工処理を行う場合、本発明の繊維用機能性付与剤に繊維を浸し、通常、30〜60℃で10〜120分間加熱して行う。
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。しかしながら、これによって本発明は何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
◎繊維用機能性付与剤の原料
(紫外線吸収剤について)
紫外線吸収剤A
2,2'−メチレンビス(4−t−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)
紫外線吸収剤B
2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
(ヒンダードアミン系光安定剤について)
ヒンダードアミン系光安定剤C
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
ヒンダードアミン系光安定剤D
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
(カチオン界面活性剤成分について)
カチオン界面活性剤E
カチオン界面活性剤F
カチオン界面活性剤G
カチオン界面活性剤H
カチオン界面活性剤I
カチオン界面活性剤J
カチオン界面活性剤K
カチオン界面活性剤L
(ノニオン界面活性剤成分について)
ノニオン界面活性剤M
ノニオン界面活性剤N
ノニオン界面活性剤O
◎繊維用機能性付与剤の調製
表1及び表2に、今回配合した繊維用機能性付与剤の実施例及び比較例を示す。また今回、紫外線吸収剤として使用した紫外線吸収剤Aは、あらかじめ水に分散させ、紫外線吸収剤A40質量%、残りが水である水分散物A’の形態で使用した(例えば、実施例1においては、紫外線吸収剤Aとしては0.06g配合されていることになる)。同じく紫外線吸収剤Bも、あらかじめ水に分散させ、紫外線吸収剤B40質量%、残りが水である水分散物B’の形態で使用した。更に、ヒンダードアミン系光安定剤として使用したヒンダードアミン系光安定剤Cも、あらかじめ水に分散させ、ヒンダードアミン系光安定剤C25質量%、残りが水である水分散物C’の形態で、ヒンダードアミン系光安定剤Dも、あらかじめ水に分散させ、ヒンダードアミン系光安定剤D47質量%、残りが水である水分散物D’の形態で使用した。他にも、カチオン界面活性剤として比較例に使用したカチオン界面活性剤I、J、K、Lも、あらかじめ水に分散させ、それぞれ、カチオン界面活性剤I27質量%、残りが水である水分散物I’、カチオン界面活性剤J30質量%、残りが水である水分散物J’、カチオン界面活性剤K28質量%、残りが水である水分散物K’、カチオン界面活性剤L75質量%残りが水である水分散物L’の形態で使用した。
◎評価用生地の作製
表1の繊維用機能性付与剤1〜15(実施例1〜15)、表2の繊維用機能性付与剤16〜34(比較例1〜19)を使用し、下記に示す各試験布に紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を吸着させる有効成分吸着処理を行い、評価用の生地を作製した。その処理方法は以下の通りである。
試験布I:
染料Kayacion Red P−2B(日本化薬株式会社製)で染色された布(綿100%の織物)
試験布II:
染料Sumifix Supra Blue BRF(住化ケムテックス株式会社製)、Sumifix Supra Red 3BF(住化ケムテックス株式会社製)、Sumifix Supra Yellow 3RF(住化ケムテックス株式会社製)で染色された布(綿100%の編物)
試験布III:
染色処理をしていない布(綿100%の織物)
試験布IV:
染色処理をしていない布(綿100%の編物)
処理条件:
上記の各試験布1.5gを50cc蓋付きガラス容器に入れ、表1及び2で配合した各繊維用機能性処理液45gを同じ50cc蓋付きガラス容器に入れ、試験布が処理液に完全に浸っていることを確認した後、40℃で60分浸漬熱処理を行い、生地を容器から取り出し、水分を飛ばす乾燥処理を行った。
上記の各試験布と繊維用機能性処理液1〜34を使用し得られた、評価用の生地を表3〜9に示す。表3は試験布Iに紫外線吸収剤Aを単独で吸着させた生地を示し、表4は試験布Iに紫外線吸収剤Bを単独で吸着させた生地を示し、表5は試験布Iにヒンダードアミン系光安定剤Cを単独で吸着させた生地を示し、表6は試験布Iに紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤両方を吸着させた生地を示し、表7は試験布IIに光安定剤類を吸着させた生地を示し、表8は試験布IIIに光安定剤類を吸着させた生地を示し、表9は試験布IVに光安定剤類を吸着させた生地を示す。尚、繊維用機能性処理液にて処理していない試験布I〜IVをそれぞれ生地39〜42とする。
◎耐候性試験(i)
試験布Iを用いて得られた表3〜6に記載の生地1〜12、生地18〜34及び繊維用機能性処理液にて処理していない試験布Iである生地39について、以下条件で耐候性試験を行い、生地の光に対する安定性について調査した。
試験布:生地1〜12、生地18〜34及び生地39
試験機:Q−Lab Corporation社製 QUV促進耐候性試験機
光源:UVA−340
照射量:0.68W/m2
試験条件:各生地をQUV促進耐候性試験機にセットし、紫外線(UV光)を48時間照射した。
評価方法:紫外線照射前に、分光測色計(コニカミノルタ社製 CM3700d)を用いて各生地のL1値を測定した。続いて照射完了後、QUV促進耐候性試験機から各生地を取り出し、同様の分光測色計にて再度各生地のL2値を測定し、その差ΔL値から耐光堅牢度(退色防止性能)を評価した。ここで、耐光堅牢度(退色防止性能)とは、生地が光(日光等)等の照射により変色や退色を示すその度合いのことを示し、ΔL値はその耐光堅牢度(退色防止性能)を表す指標の一つである。一般的に、ΔL値が小さい生地の方が変色や退色の度合いが小さく、光に安定な生地であることを示し、逆に、ΔL値が大きい生地は光によって変色や退色が進行しやすい光に対して不安定な生地であることを示す。また、本試験は使用する紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤自体の光に対する安定性に大きく影響する。そのため、本結果の比較は、同じ紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を用いたもの同士で行った。
上記方法で行った耐候性試験評価結果を表10〜13に示す。表10は、紫外線吸収剤Aを単独で使用したもの、表11は、紫外線吸収剤Bを単独で使用したもの、表12は、ヒンダードアミン系光安定剤Cを単独で使用したもの、表13は、紫外線吸収剤Aとヒンダードアミン系光安定剤Cを併用したものの結果を示した。
結果、紫外線吸収剤Aを用いた本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地1〜4は、比較品である生地18〜25及び39に比べ、ΔL値が小さく、光による劣化が小さいことがわかった。これは、本発明の繊維用機能性処理剤を使用することで、生地に効率的に紫外線吸収剤Aを吸着させることができたことを示しており、カチオン界面活性剤の中でもポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が、紫外線吸収剤Aを生地に効率的に吸着させることが明らかとなった。また、紫外線吸収剤Bを用いた本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地5〜7においても、比較品である生地26〜31及び39に比べ、格段にΔL値が小さく、光による劣化が小さいことがわかった。本結果からも、カチオン界面活性剤の中でもポリエーテル基含有カチオン界面活性剤が、紫外線吸収剤Bを生地に効率的に吸着させることが明らかとなった。
続いて、ヒンダードアミン系光安定剤Cを用いた本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地8〜10においては、ヒンダードアミン系光安定剤C自体の光に対する安定性が紫外線吸収剤AやBと比較して若干劣るため、紫外線吸収剤AやB程の低いΔL値は得られなかったが、比較品である生地32及び39に比べると、ΔL値が低く、光による劣化が小さい生地が得られていることがわかった。更に、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用した本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地11及び12においても、比較品である生地33、34及び39に比べ、格段にΔL値が低く、光による劣化が小さい生地が得られていることがわかった。尚、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用した場合、併用による相乗効果が得られていることから、結果的に、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を単独で使用した時に比べ、より光に対する安定性が良好な生地が得られる結果となった。
◎耐候性試験(ii)
続いて、試験布IIを用いて得られた表7に記載の生地13、14、35及び繊維用機能性処理液にて処理していない試験布IIである生地40について、紫外線(UV光)の照射時間を88時間に変更した以外は全て耐候性試験(i)と同条件で耐候性試験を行い、生地の光に対する安定性について調査した。
試験布:生地13、14、35及び生地40
試験機、光源、照射量、照射時間以外の試験条件及び評価方法は、耐候性試験(i)と同条件
本耐候性試験評価結果を表14に示す。
結果、試験布IIを使用した場合であっても、試験布Iを使用した場合と同様の傾向が確認でき、具体的には、紫外線吸収剤Aを用いた本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地13は、比較品である生地35及び40に比べ、ΔL値が低く、光による劣化が小さいことがわかった。更に、紫外線吸収剤Aとヒンダードアミン系光安定C剤を併用した本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地14においては、併用による相乗効果が得られていることから、結果的に、紫外線吸収剤Aを単独で使用した時に比べ、より光に対する安定性が良好な生地が得られる結果となった。
◎紫外線透過率の測定
試験布III及び試験布IVを用いて得られた表8及び9に記載の生地15〜17、生地36〜38、繊維用機能性処理液にて処理していない試験布IIIである生地41及び繊維用機能性処理液にて処理していない試験布IVである生地42について、以下の条件で紫外線透過率の測定を行い、生地の紫外線のカット率について調査した。
試験布:生地15〜17、生地36〜38、生地41及び生地42
測定機器:日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計V−660
測定波長:280〜400nm
試験条件:各生地を紫外可視分光光度計V−660にセットし、波長280〜400nmの紫外光を照射し、紫外線透過率を測定した。
評価方法:測定によって得られた紫外線透過率は、各評価用の生地がどれだけ紫外線を通すか通さないかを示す指標となる。例えば、紫外線透過率10%の生地は、照射した紫外線の90%を吸収し、残りの10%が透過していることを示す。よって、紫外線透過率が低い生地であればある程、衣服として着用した際等、肌への紫外線による影響を軽減することができると言える。
上記方法で行った紫外線透過率の測定結果を表15及び16に示す。表15は、試験布IIIでの測定結果、表16は、試験布IVでの測定結果を示した。
結果、試験布III、試験布IVどちらを使用した場合であっても、本発明の繊維用機能性付与剤で処理した生地は、比較品に比べ、低い紫外線透過率を示した。このことは、本発明の繊維用機能性処理剤を使用することで、生地に効率的に光安定剤類を吸着させることができたことを示している。